キネマ旬報ベスト1をはじめ、2014年度の各映画賞総なめの感があるこの作品、41歳で自ら命を絶った作家、佐藤泰志氏の小説が原作。監督は三重県伊賀市出身で、大阪芸大の映像学科卒業という経歴を持つ、呉美保(お・みぽ)。「酒井家のしあわせ」「オカンの嫁入り」に続く長編映画3作目の本作で、モントリオール世界映画祭最優秀監督賞受賞。主演は今乗りに乗っている綾野剛とくれば、これはもうぜひとも見なくては!!
舞台は北海道函館。過去に鉱山で体験した大きな事故の記憶がトラウマになって、定職にもつかず独りアパートで暮らす主人公達夫。パチンコ仲間の拓児に誘われ、拓児の家を訪れた達夫はそこで姉の千夏と出会い、抜き差しならぬ関係へと陥っていく。この拓児一家が置かれた状況がすごい。老いた父親は寝たきりで、不随の身体ながらも性欲だけはしっかり残っていて、妻や娘にそのはけ口を請う。千夏は父親の介護と腐れ縁の中島との生活に疲れ切っていたが、弟とともに現れた達夫に救いを求めるかのように身を委ねる。
千夏を演じる池脇千鶴のまさに体当たりの演技が見もの。愛を確かめ合うシーンはR-15指定とあって・・・濃厚。かつて北野シネマや京一会館で見たATGの作品を思い出してしまった。綾野剛はそこに映っているだけで観客の目を釘付けにしてしまう強い引力の持ち主。これは天性のものであろうか。夜明けの浜辺でかすかな希望を抱きながら、まぶしい太陽を迎えるラストシーンが頭に焼きつく。
実はこの作品、2月7日に行われた「第88回キネマ旬報ベスト・テン第1位映画鑑賞会&表彰式」で見る機会を得た。今後京都シネマをはじめ全国の“選ばれた劇場”で凱旋上映の予定。この機会をどうぞお見逃しなく。
(HIRO)
監督:呉 美保
脚本:高田 亮
撮影:
出演:綾野剛、池脇千鶴、菅田将暉、高橋和也、火野正平、伊佐山ひろ子、田村泰二郎