医師臨床研修マッチング協議会は、10月27日、2011年度研修医マッチング結果を発表し、全国の総定員10550人に対して、希望順位登録者8225人のマッチ率は96.7%でした。
長野県内のマッチング参加病院は26病院、総定員計157人に対し、マッチ者は115人となり、充足率は73.2%でした。
信州大学医学部附属病院は4プログラム合計の総定員54人に対してマッチ者は32人で、充足率は71.4%でした。県内関連病院の統一研修(定員36人)のマッチ者は27人、診療科自由選択研修(同14人)のマッチ者は3人、産婦人科研修(定員2人)のマッチ者は1人、小児科研修(定員2人)のマッチ者は1人でした。信州大学医学部附属病院のマッチ者に対する自学出身者の割合は81%でした。
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今年度の飯田市立病院のマッチ者は3人でした。3人とも顔馴染みの優秀な学生です。臨床実習で何度も当院に足を運んでくれて、すっかり顔馴染みとなった信大の学生が、マッチングでも当院を選んでくれました。おそらく、信大とのたすき掛けで、1年目または2年目を当院で研修する研修医がそれぞれ数名づついる筈です。当院の場合、在籍医師の多くが信大の医局出身者で、研修医マッチングで当院を希望してくれる学生のほとんどは信大生です。また、当院初期研修医の多くが研修終了後は信大のいずれかの医局に入局してます。今後も、信大と一心同体で頑張っていく以外に、この世の中に生き残っていく道はないと考えています。
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長野県内のマッチ者数(計115人)の内訳
定員充足率73.2%(115/157)
信州大学医学部附属病院 32人(定員54人)
県内関連病院の統一研修 27人(定員36人)
診療科自由選択研修 3人(定員14人)
産婦人科研修 1人(定員2人)
小児科研修 1人(定員2人)
県厚生連佐久総合病院 15人(定員15人)
長野赤十字病院 10人(定員10人)
相澤病院 10人(定員11人)
県厚生連長野松代総合病院 7人(定員7人)
諏訪赤十字病院 7人(定員7人)
諏訪中央病院 5人(定員5人)
長野市民病院 5人(定員5人)
長野中央病院 4人(定員4人)
県厚生連篠ノ井総合病院 4人(定員4人)
飯田市立病院 3人(定員5人)
安曇野赤十字病院 2人(定員2人)
県厚生連北信総合病院 2人(定員2人)
国立病院機構信州上田医療センター 2人(定員2人)
佐久市立国保浅間総合病院 2人(定員2人)
松本市立波田総合病院 2人(定員2人)
伊那中央病院 1人(定員2人)
県厚生連安曇総合病院 1人(定員2人)
県立木曽病院 1人(定員2人)
県厚生連小諸厚生総合病院 0人(定員3人)
県厚生連富士見高原病院 0人(定員2人)
県立須坂病院 0人(定員1人)
国立病院機構まつもと医療センター 0人(定員2人)
昭和伊南総合病院 0人(定員2人)
市立大町総合病院 0人(定員2人)
松本協立病院 0人(定員2人)
東京ビッグサイトで開催された研修医対象のレジナビフェアに参加して来ました。当院からこのレジナビフェアには5年連続で参加してます。最初に参加した5年前に、たまたま当院のブースを訪れて、そこでの出会いを契機に、翌年から当院で後期研修(専門研修)を開始した先生(麻酔科)は、3年間の後期研修、国内留学などを経て、今では当院麻酔科の中堅スタッフとして、日々の業務、後輩医師達の指導などで大活躍してます。
しかし、5年前とはだいぶ状況が変化し、このレジナビフェアに参加する病院の数はかなり増えましたが、研修医の参加は激減し、会場内は多くの病院スタッフであふれかえってましたが、研修医の姿はほとんど見かけませんでした。そろそろ作戦を変える必要があると感じました。ただ、何人かの懐かしい旧友と会場内で二十数年ぶりに再会することができて、行ってよかったと思いました。
http://www.pref.nagano.jp/eisei/imu/rinsyosetumei/kaisai23.htm
5月15日(日)13時~16時、長野バスターミナル会館(長野市)にて、全国の医学生、研修医等を対象とした『長野県臨床研修病院等合同説明会』が開催されました。
長野県の病院での臨床研修に興味のある医学生(主に5年生、6年生)が、全国各地から大勢集まりました。飯田市立病院からも、副院長(神経内科医師)、産婦人科医師、1年目研修医2名、事務職2名の総勢6名が参加しました。当院のブースにも大勢の医学生達が訪れてくれて大盛況でした。長野県出身で故郷の病院での研修を希望している学生、信州の山が好きで長野県の病院での研修に興味のある学生、産婦人科の臨床実習などで当院に来てくれた顔見知りの信州大の学生など大勢訪れてくれました。この4月より研修が始まったばかりの1年目研修医の2人も、新人研修医の視点から病院の様子を懇切丁寧に説明してくれて大活躍でした。
信州大附属病院の卒後3年目の後期研修医採用は、今年度(4月1日現在)、過去最高となる64人(昨年度:56人)であったことが判明しました。全国的な傾向についてはよくわかりませんが、長野県においては、専門研修を多くの指導医を擁する大学病院でスタートさせようという機運が再び高まりつつあるようです。県全体の長期的な視野で見れば、これは非常にいい傾向だと思います。
医師不足に悩む地方弱小病院が、それぞれ独自に苦労に苦労を重ねて一から医師集めをしなければならないようでは、1年後、5年後、10年後の見通しは全く不透明で、今後、まともな医療レベルを維持できる筈がありません。
やる気満々の多くの優秀な若い医師達が大学病院に結集し、県全体の医療レベルが向上していくのは非常に望ましい傾向だと思っています。彼らの成長の過程で、県内各地の病院でそれぞれ思う存分に腕を振るって大活躍してもらいたいと思います。
地域基幹病院の医師確保対策としては、大学病院と良好な関係を維持し、大学病院から派遣された若い医師達が思う存分大活躍できる環境を整備していくことが非常に重要だと思います。
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以下、医療タイムス社の調査、4月1日現在
・信州大付属病院 64人
小児科:7人
内科(2):6人、
麻酔科蘇生科:6人
外科(2):5人
産科婦人科:5人
糖尿病・内分泌代謝内科:4人
脳神経外科:4人
皮膚科:3人
整形外科:3人
内科(3):2人
循環器内科:2人
精神神経科:2人
放射線科:2人
外科(1):2人
泌尿器科:2人
耳鼻咽喉科:2人
形成外科:2人
高度救命救急センター:2人
臨床検査部:2人
眼科:1人
・佐久総合病院 14人
・相澤病院 6人
・諏訪赤十字病院 4人
・長野赤十字病院 4人
・長野市民病院 2人
・飯田市立病院 2人
・伊那中央病院 1人
信大病院の卒後3年目の後期研修医採用数の推移:
07年度以前:40人前後
08年度:53人
09年度:54人
10年度:56人
11年度:64人
※ 飯田市立病院で初期研修2年目を終えた医師達(卒後3年目)の進路も、今年度は全員が信州大でした。内訳は、小児科2名、内科1名、産婦人科1名、耳鼻咽喉科1名、形成外科1名などでした。また、昨年度に飯田市立病院麻酔科で後期研修をスタートさせた医師1名が、今年度、卒後4年目で信州大麻酔科に入局しました。
コメント:
専従の救命救急医が、信大27名に対して飯田市立病院は2名と報道されてます。飯田市立病院は信大の関連病院で、各診療科の医師のほとんどは信大から派遣されてます。従って、マンパワーという点だけで両病院を比較したら歴然とした差があるのは当然です。
中日新聞に記載されていた「ドクターヘリ2機配備時の有効活動範囲」の地図を見てみると、半径50kmの有効活動範囲の2つの円は大きく重なり合い、飯田下伊那地域は完全にその有効活動範囲から外れていることがわかります。長野県の面積は広く、特に飯田下伊那地域は陸上交通が未整備の「秘境の地」を多く抱えているので、県内の他の地域と比べて、ドクターヘリの需要と有効性が際立って高い地域であることは確かです。
中信地域では信大病院や県立こども病院などがあり、交通網も整備されてますから、救急車で十分に間に合い、地域住民にとってドクターヘリの需要は全くありません。それに対して、飯田下伊那地域の山間地では救急車で間に合わない場合が多く、ドクターヘリの必要性は非常に高く、地域住民の多くがドクターヘリの配備を切望してました。ドクターヘリの本来の目的を考えれば、救急搬送に最も支障がある地域に配備されるのが本筋だと思います。
ただし、標準的な救急医療体制を構築し維持していくためには、救急医療部門の専従医師を十分確保する必要があります。 今後は、救急医療部門においても信大病院と緊密に連携して専従の救命救急医の数を増やし、ドクターヘリを効果的に運用して地域医療の向上に結びつけていくことが重要だと思います。
******中日新聞、1月30日、長野
2機目ドクターヘリ信大病院に配備 地域バランスに疑問視
検討委の重点は専従医確保に 中山間地の思惑とズレ
長野県内2機目のドクターヘリは、信州大医学部付属病院(松本市)に配備されることが正式に決まった。山間地を抱える飯田下伊那地域は配備を強く望んでいただけに、関係者に落胆が広がる。県の有識者検討委員会は信大病院に対し、南信地区への積極的な医師配置も求めた。2機目のヘリ導入は、県内の救急医療体制を見直すきっかけになるだろうか。 (一ノ瀬千広、柚木まり)
今月26日、飯田下伊那地域の14市町村が加わる南信州広域連合や、地元医療関係者へ検討委の選定経過を説明するため、県の桑島昭文健康福祉部長が飯田市役所を訪問した。
雰囲気は終始重苦しかった。桑島部長は厳しい表情で「苦しい選択だった」と、理解を求める。これを腕組みして聞く牧野光朗南信州広域連合長(飯田市長)ら。落胆と同時に、強い反発がにじんでいた。
広域連合は昨年11月、阿部守一知事に飯田市立病院への配備を求める要望書を提出。山間の地形に囲まれた同地域は、ヘリ配備で短時間の搬送が可能となることなど、地理的条件からの必要性を強調していた。牧野広域連合長は「県土全体の均衡ある発展につなげるため、もう1度県の役割が何かを考えてほしい」と訴えた。
期待への裏返しが、強い反発につながった。飯田医師会の市瀬武彦会長は28日に、阿部知事へ意見書を出したという。「知事は選挙の時、南へ光を当てると言ってくれたのに、裏切られた思いだ」と話す。
だが、検討委は選定で、ヘリ導入後に専従医をどの程度確保できるかに重点を置き、地元の思惑とはずれがあった。県は安定運航に最低5人が必要とするが、飯田市立病院の救急救命医は現在2人。導入後に1人増員する計画を示したが、それ以上は未定で、“落選”の要因となった。
県は信大病院への配備でも、1機目が配備されている佐久総合病院(佐久市)よりも到着時間が5分程度短縮でき、南信全域に相当な利点があると強調する。ただ、20分以内に到着できる有効活動範囲(半径約50キロ)は1号機と重なる部分が多い。飯田下伊那地域や木曽地域南部は2号機配備でも範囲外のままで、検討委でも地域バランスを疑問視する声は出た。
検討委の大西雄太郎委員長が阿部知事へ提出した報告書は、信大病院がヘリ拠点に最適という判断と同時に、同病院へは▽南信地区への医師配備を積極的に行う▽養成した救急専門医の県内定着と、研修を計画的に実行する-といった点を条件とした。県には、県内の救急医療体制の充実や、地元のニーズに対応するよう消防本部と調整を求めた。
阿部知事は28日の会見で「私自身も積極的にかかわり、飯田下伊那地域の医療体制充実を考えたい」と明言した。しかし、具体策は「南信で医師不足への態勢が十分に取れない現状に、早急に対応を考える必要がある」と述べるにとどまった。
(中日新聞、1月30日、長野)
****** 南信州新聞、2011年1月28日
ドクターヘリ 「地域事情こそ考慮すべき」
市立“落選”に疑問や反発
県内で2機目のドクターヘリの配備先について、県の検討委員会が「信州大学附属病院(松本市)が最適」とする検討結果を知事に報告したことを受け、県健康福祉部の桑島昭文部長らは26日、飯田市立病院への配備を要望してきた南信州広域連合長の牧野光朗・飯田市長や飯田下伊那の医療関係者、飯伊選出の県議らに選定結果を報告し、信大病院に至った経緯や理由を説明した。地元関係者からは「地域事情をまったく考慮していない」などの反発が相次ぎ、県の医療行政に対して「今回の検討結果を、全県の均衡ある発展にどうつなげるのか」などの疑問や注文も噴出した。
桑島部長と医療推進課の角田道夫課長らが、県飯田合同庁舎で地元選出の県議らと、飯田市役所で牧野市長と飯伊地区包括医療協議会の唐沢弘文会長、飯田医師会の市瀬武彦会長らと意見を交わした。
県側は「飯伊地域が一番ドクターヘリの要望が強く、ニーズがある」(桑島部長)との認識を伝えながらも、24日の検討委で「ヘリを継続的、安定的に運用するには専従の救急救命医が最低5人は必要」との基準が示されたことを報告。「配備先に決定した場合でも3人の飯田市立では、現在の病院機能の低下も危惧される」との検討委判断を伝え「苦しい選択だが、信大という結論になった」と理解を求めた。
対して唐沢会長は、中山間へき地が多く、救急車の搬送に時間がかかる地理的事情や「安心」を望む住民感情を伝え「マンパワーでは大学病院にかなわない。ほかに考慮すべき要素があったはず」と疑問を呈し「切実にドクターヘリを求める一般住民の意見こそ重要ではないか。検討委の専門家の方々は、地域の実情を理解されていたのか」と訴えた。
「一番要望が多く、必要な所へなぜ配備しないのか。遺憾どころではなく怒り心頭だ」との心情をあらわにしたのが市瀬会長。ドクターヘリの有効活動範囲(半径50キロ、20分以内)を踏まえ「佐久に1機目があり、松本には防災ヘリもある。しかし、こちらは1機もない。本当に不思議だ。ヘリが配備されれば救急医療を望む医師は集まるはず」と首をかしげた。
南信州広域連合議会長の中島武津雄・飯田市議会議長は「地域ニーズに配慮して(知事は2機目を配備する)提案をされたととらえていた。地域住民の期待が大きかった分、失望も大きい」と市民感情を代弁した。
議論にじっと耳を傾けていた牧野市長は結びに「(今回の件は)県政の一つのスタンスとして、今後も語り継がれる」と指摘。「検討委の結果をどう県が受け止め、県土全体の均衡ある発展にどうつなげるかが大きな課題。医師不足の解消こそ、県がセーフティーネット機能として果たすべき役割だが、その点の話が出なかったことが非常に残念」と述べ「県の役割」の再考を求めた。
対談後に桑島部長は「地元の人たちのニーズや気持ちは十分理解しており、今回の内容を知事にしっかりと伝える」と約束。検討委が配備先に選定した信大病院に対し「南信地域への積極的な医師配置」を要望したことを踏まえ「県として、地域医療の向上にどのような支援ができるか考えていく。医師配置の協議、調整には積極的に関与していく」との考えを示した。
(南信州新聞、2011年1月28日)
***** 中日新聞、2011年1月27日、長野
ドクターヘリ選定基準に反発続々 南信の医療関係者ら
県内で2機目のドクターヘリ配備について、「信州大病院(松本市)が最適」とする県の検討委員会の報告書が阿部守一知事に提出されたことを受け、県は26日、南信州広域連合長の牧野光朗飯田市長や飯田下伊那の医療関係者、県議らに、飯田市立病院が事実上配備先から外れたことを報告し、検討委の選定経緯を説明した。医療関係者などからは、選定基準に対する反発の声が挙がった。
県健康福祉部の桑島昭文部長らは飯田市役所で、牧野連合長や飯伊地区包括医療協議会の唐沢弘文会長、飯田医師会の市瀬武彦会長らと面会。桑島部長は「委員会では、ヘリの安定運用には救急救命医5人が必要という基準が示された。市立病院の救命医は2人で、長期運用を考えると市立病院への配備は難しいとの結論になった」と説明した。
これに対し、唐沢会長は「中山間地を抱える飯伊の地理的条件などを考えれば、市立病院に配置するのが自然。医師の体制以外にもっと考慮する要素があったのでは」と疑問を投げかけ、市瀬会長は「松本には防災ヘリもあるがこちらには何もない。飯伊の方が必要性が高いのに配備しないのはおかしい」と不満をぶつけた。
また牧野連合長は「地域医療における医師不足の解消は、セーフティーネットの機能として県が果たしていかなくてはいけない役割」と述べ、南信地域への医師配置に対する県の積極的な取り組みを求めた。
桑島部長は「地元の気持ちは理解できる。県として南信地域の医療向上にどのような支援ができるか、知事と考えたい」と述べた。
県飯田合同庁舎で開かれた地元県議への説明でも、「配備が可能になるように医師を配置するのが県の仕事。医師不足は理由にならない」など、委員会の判断に反発する意見が相次いだ。 (一ノ瀬千広)
(中日新聞、2011年1月27日、長野)
****** 南信州新聞、2011年1月26日
ドクターヘリ2機目は信大病院へ
飯田市立「救急医不足」響く
県ドクターヘリ配備検討委員会(大西雄太郎委員長)は24日、県庁で開き、中南信地区への県内2機目の配備先に信州大学医学部附属病院(松本市)を選んだ。候補の4病院のうち、最終的に信大か飯田市立かに絞られたが「救急医療態勢が充実した信大病院が最適」とした。検討委は25日に阿部守一知事へ選定結果を報告。県は10月の配備を目指しており、来年度当初予算案に半年分の経費として約1億円余を要求している。
中南信の救命救急センターを設置または設置予定の病院のうち、信大と飯田市立のほか、相澤(松本市)と伊那中央(伊那市)の計4病院が配備を希望していた。
会議は冒頭を除き非公開。終了後に会見した大西委員長(県医師会長)は、信大病院を選んだ理由として▽県内唯一の高度救命救急センターであり、救急医療スタッフが充実している▽救急医療を担う人材育成が期待される▽木曽や大北地域への初期診療の開始時間が短縮される―などを挙げた。
飯伊に救急車の搬送に時間を要する山間が多く、ドクターヘリの需要や有用性が高い点を認め、飯田市立を最終候補に残しつつも「落選」としたことには「救急専門医は信大の27人に対し、飯田市立は2人。マンパワーが足りず、運用の安定性、継続性に疑問があった」と説明した。
検討委は配備先に選定した信大病院に対し、南信地区へ積極的に医師を配置することなどを要望。県へは2機体制が十分に生かされるような有効活動範囲(半径約50キロ、20分以内)の検証や関係機関との調整などを求めた。
大西委員長は「結論は全会一致」と話したが、南信の病院関係の委員らは会議終了後、堅い表情で足早に会場を後にした。
委員のうち、飯田市立の神頭定彦救命救急センター長は「委員会としての判断」「当院のスタッフが足りなかったということ」と言葉を選び、今後については「2機の運航や(要望に盛られた)信大からの医師支援などを通じて、飯田下伊那の医療充実につながれば」と話した。
県のドクターヘリは2005年に佐久総合病院に1機目が配備された。昨年8月に当選した阿部知事は選挙公約で中南信地区への2機目の配備を掲げていた。
県健康福祉部によると、佐久総合と信大の両病院へドクターヘリが配備されると、有効活動範囲の県内カバー率は面積で65%、人口で83%を占める。しかし、飯田下伊那地域はこの範囲に含まれない。
(南信州新聞、2011年1月26日)
****** 中日新聞、2011年1月25日、長野
長野 ドクターヘリ 2機目は信州大付属病院
検討委が配備先を決定
長野県内2機目のドクターヘリの配備先を検討する県の有識者検討委員会は24日、県庁で開き、信州大医学部付属病院(松本市)が最適との結論を出した。救命救急医を多く抱え、安定してドクターヘリを運用できることを重視した。25日、阿部守一知事に報告する。県健康福祉部は新年度当初予算案に運航経費など約1億円を要求しており、10月からの運航開始を目指す。(大平樹)
終了後に会見した検討委の大西雄太郎委員長(県医師会長)は、同病院が県内唯一の高度救命救急センターで、27人の救命救急医がいる点のほか、ドクターヘリの配備で「県内の救急専門医のレベルアップなどにもつながる」と説明した。
医師不足の木曽、大北両地域をカバーできることも理由の1つで、県によると、2機目の配備でドクターヘリの両地域への飛行時間は、約10分ずつ短縮される見込み。
配備は、同病院のほか、飯田市立、相沢(松本市)、伊那中央(伊那市)の計4病院が希望していた。
検討委によると、中山間地を多く抱える飯田市立への配備では、安定運用の基準とされる救命救急医5人に対し2人となっている現状に不安視する意見があった。
伊那中央は院内の態勢などで、相沢は信州大との共同運航を前提にしていたためそれぞれ選定から外れたという。
検討委は、ドクターヘリの配備先となる信州大病院に対し、南信地域への積極的な医師配置を求めることも決めた。
大西会長は「全会一致だった」と強調したが、南信地方の病院関係者の委員からは「南信地方にもう少し配慮してくれても良かったのではないか」と不満の声も出た。
効果的な運用が課題
中南信地域の医療関係者にとって悲願だったドクターヘリ2号機の配備先は、信州大医学部付属病院に決まった。「多くの命を救えるようになる」と期待は高まるが、広い県内で2機をどれだけ効果的に運用するかや、カバーしきれない地域へどう対応するかが今後の課題だ。
佐久総合病院(佐久市)に配備されている1号機が中南信地域へ出動した件数は、2009年度は全体の40.3%を占める144件(中信54件、南信90件)だった。
県によると、09年度は天候不良や出動中といった理由で、中南信地域からの出動要請に対応できなかった件数は67件。今後はこうしたケースの多くは解消を期待できる。
県幹部は「ドクターヘリの有効性を知る救急救命医が県内には多くおり、間違いなく救える患者が増える」という。
ただ、複数配備がすべての問題を解決する訳ではない。1号機は性能上、高度2300メートル以上を飛行できない。2号機も同型機とみられ、標高2千メートル級の山々が連なる中南信地域の場合は最短距離で目的地へ向かえない可能性もあり、実効性をどう上げるかが課題になる。
ドクターヘリを含め、県内全域の救命救急医療体制について、地元関係者や隣接県との連携も含めた検討は今後も必要だ。
特に、配備を強く希望していた飯田下伊那地域の医療関係者には落胆が広がっており、救命救急医療が後退しないよう、県の具体的な対応が求められる。(柚木まり)
配置アンバランス 飯伊地方から懸念の声も
中信地域の自治体や医療関係者は信州大病院への配備を歓迎する一方、県南部の飯田下伊那地域からは不満の声も出ている。
信州大病院の地元である松本市医師会の高島俊夫会長は「信大はスタッフも充実しており、一番適している。県の救急医療の充実には良いことだ」と歓迎した。
木曽地域には高度な救命救急措置を行う医療機関がなく、ドクターヘリへの期待はより高い。木曽町の田中勝己町長は「従来より格段に木曽へ近づき、救われる人たちが増えることになり、大変ありがたい」と話した。
これに対し、牧野光朗飯田市長は「希望していた飯田市立病院への配備とならなかったことは残念だが、信州大病院と連携し、当地域の医療向上に結びつけばと期待している」とのコメントを出した。
飯田医師会の市瀬武彦会長は「飯田下伊那地域はヘリの拠点から遠い空白地帯で、愛知県や静岡県へ出動を要請するケースも多い。松本には防災ヘリもあり、(佐久総合病院の1号機を含めて)県中心部にヘリ3機が集中する極めてアンバランスな配置だ」と問題点を指摘。
さらに「中信の天候次第では出動できないリスクもある。ドクターヘリの利用率は、飯田下伊那が一番高い現状が反映されていない」と苦言を呈した。
ドクターヘリ 医療機器を搭載したヘリコプターに医師や看護師が搭乗する。拠点病院に常駐して地域の消防などの要請に応じて出動、重症患者に治療処置をしながら搬送するため救命に有効とされる。県内には2005年7月、厚生連佐久総合病院(佐久市)に1機目が配備された。厚生労働省によると昨年7月現在、長野を含む19道府県に計23機が配備されている。
(中日新聞、2011年1月25日、長野)
昨日は、東京ビッグサイトでレジナビフェア2010 in 東京(医学生向け)が開催され、当院からは、神経内科医(副院長)、外科医(副院長)、産婦人科医、初期研修医2人、事務職員2人が参加しました。予想をはるかに上回る多くの学生が、我々のブースを訪れてくれました。その中には産婦人科志望の学生も複数いました。
先月は同じく東京ビッグサイトで、研修医向けのレジナビフェアが開催され、そこで初めて知り合って、その後に施設見学に来てくれた初期研修医もいました。他に、長野県が主催する県内研修病院の合同説明会(長野市)や、信州大学と県内病院とのたすきがけ研修の病院説明会(松本市)などもありました。
今回のレジナビフェアに我々と一緒に参加した初期研修医の2人は、昨年の合同病院説明会では当院のブースに説明を聞きに来た学生でした。今年は立場が変わって、当院所属の研修医として学生達のさまざまな疑問に丁寧に答えてくれました。すぐに目に見えるような結果がでなくても、常日頃の地道な勧誘・宣伝活動を気長に積み重ねて、いい流れを作っていくことが大切だと思います。
長野県からは20病院が参加しました
いつもと同じライバルの勧誘仲間達が出そろいました
ブースの準備が完了しニコッと笑って記念撮影
今日も一日元気に頑張ろう!
・信州大付属病院 56人
(呼吸器・感染症科:2人、循環器科:4人、内科(2):8人、内科(3):3人、加齢総合診療科:0人、精神神経科:2人、小児科:6人、皮膚科:0人、放射線科:3人、外科(1):2人、外科(2):3人、整形外科:2人、脳神経外科:2人、歯科口腔外科:3人、泌尿器科:1人、眼科:2人、耳鼻咽喉科:1人、産科婦人科:5人、麻酔科蘇生科:2人、形成外科:1人、高度救命救急センター:3人、臨床検査部:1人)
・佐久総合病院 20人
・諏訪赤十字病院 4人
・諏訪中央病院 4人
・長野赤十字病院 4人
・相澤病院 3人
・伊那中央病院 3人
・長野市民病院 3人
・飯田市立病院 2人
医療タイムス社の調査、3月29日現在
****** 朝日新聞、長野、2010年2月13日
後期研修医焦点の医師確保 県新年度から
県は新年度から、医学部卒業後3~5年目の「後期研修医」を一定以上抱える病院に、指導医の待遇を改善したり、研修環境を整備したりするための費用を支援する新規事業を始める。実質的な「戦力」である後期研修医を増やし、県内の医師不足緩和につなげるのが狙いだ。(長谷川美怜)
同事業には、国の基金を充てる。予算は8千万円で、来年度以降4カ年で計3億2千万円を計上する。対象病院の基準は現在検討中だが、8病院程度を選ぶ予定という。
卒業後1、2年目に複数の診療科を回る初期研修を終え、各診療科に分かれて専門的な知識や技術を学ぶ後期研修医は、病院内で「大変な戦力」(村井仁知事)となっている。信大地域医療推進学講座によると、県内では25病院で計約300人弱の後期研修医を受け入れており、研修環境の整備や、研修医の招致に必要な費用の助成によって、県内の後期研修医を更に増やすのが目的だ。
また、これまで信大病院が中心となって県内各地の病院に医師を派遣していたが、2004年度の初期研修必修化に伴い研修先の病院を学生が自由に選べる仕組みができたため、信大病院では以前よりも研修医が減り、派遣できる余力がなくなってきた。このため、信大病院以外の病院間の連携を密にし、医師の派遣が他病院でもスムーズにできるよう、研修の共同実施などの取り組みも支援する。
ただ、信大病院の医局が県内の各病院への実質的な人事権を持つ現在の仕組みに、他病院の派遣機能をどう組み合わせるか、具体的な見通しは立っていないのが実態だ。
「後期研修医確保・養成支援」などの「医師確保対策」は、村井知事が県政の最重要課題に位置づける事業の一つ。新年度予算では、前年度比約2倍だった09年度(5億1827万円)とほぼ同額の5億1051万円を計上した。新年度から独立行政法人化される県立病院にかかわる予算(約5千万円)が含まれない。このため、実際には09年度予算より約4千万円多い計算になる。
県内病院への医師の就職を仲介する「ドクターバンク事業」や、女性医師復職支援などの環境整備、研究資金貸与などの既存事業はほぼ継続する。8日の会見で、村井知事は「医師確保は限られた資源の取り合い。手を緩めた途端に持って行かれるので、やらざるを得ない」と話した。
ただし、ある担当課職員は「環境整備は呼び水程度にしかならない」と限界を認める。村井知事も会見で「(医師増員のため)根本的な政策を国が改変し、医療費をもっと払う必要がある」との問題意識を示している。
(朝日新聞、長野、2010年2月13日)
飯田市立病院は、4月1日付けの常勤医師数が現在よりも8人増えて95人となる見込みです。4月1日付けで新たに加わるのは、腎臓内科、内分泌内科、消化器外科、外科(ローテーター)、小児科、産婦人科、麻酔科(後期研修医)などで、信州大、名古屋大、大阪大、山梨大などから赴任(またはローテート)する医師、後期研修医として直接採用される医師などが含まれます。さらに、7月1日付けで眼科が2人、耳鼻咽喉科が1人増員される予定です。
内科は常勤医師が2人加わり23人体制となります。外科は常勤医師が1人加わり14人体制(消化器外科、乳腺内分泌外科、呼吸器外科、心臓血管外科、救急外科を含む)となります。麻酔科は常勤医師が1人加わり7人体制となります。産婦人科は常勤医師が1人加わり6人体制となります。
眼科は常勤医師不在となっていたため、診察はこれまで事前の予約制でしたが、今回2人の常勤医師が新たに着任することで2年3か月ぶりに通常の診療態勢に戻り、手術や入院にも対応できるようになります。耳鼻咽喉科は南信の拠点病院の位置付けとなり、今回常勤医師が1人増えて3人体制となります。
しかし、整形外科(常勤医師4人)、脳神経外科(常勤医師2人)、心臓血管外科(常勤医師1人)などの医師不足の状況は改善されず、今後の課題となってます。
薬剤師、臨床心理士などの医療技術職は8人増えて、4月1日付けで104人となります。看護職も看護師19人、助産師2人が加わり、4月1日付けで332人となります。助産師は総勢37人の態勢となります。
また、飯田市立病院は2009年度収支で経常黒字となる見通しを発表しました(3月1日)。黒字決算は8年ぶりで、昨年策定した「飯田市立病院改革プラン」の目標より1年早い達成となります。2009年度の入院収益は前年度比10億400万円増の68億7400万円となる見込みで、黒字額は2億1100万円の見込みです。
今や、研修希望者(医学生、初期研修医)が研修先病院を自由に選ぶ時代となった以上、地域中核病院は、研修希望者にとって魅力のある研修先病院に変身していく必要があります。
研修医が集まって来ない病院には、指導医も集まって来ません。とにかく、『研修医に選ばれる病院』に変身していかない限り、病院の未来は決してあり得ません。
一つの研修先病院だけであらゆる疾患や技術の研修をカバーするのは難しいので、若手医師たちは数年ごとに研修先を変えて成長していきます。病院独自で採用した若手医師達が次の研修先病院に転勤する場合には、病院独自で後任者を補充し続けなければなりません。従って、今後、研修医たちの意見を取り入れて、研修内容や待遇を毎年少しずつ改善し、研修先病院としての魅力を高め続けていく必要があると思います。
そうは言っても現実には、地方の病院に研修医を毎年コンスタントに集め続けるのは本当に至難の業だと思います。研修医の海外留学費用を補助してくれるという県の構想は、若い研修医にとっては非常に魅力的な話だと思います。
****** 読売新聞、長野、2009年10月20日
医師派遣 拠点病院を整備 県方針
研修医集めに補助金
県は来年度から、県内の病院に医師を派遣する拠点病院「マグネット・ホスピタル」の整備を始める方針を決めた。一定規模以上の病院に、指導医の人件費などを補助し、後期研修医を集めやすいようにするもの。医師不足に悩む県内各地の病院から派遣要請が集中している信州大病院の負担を減らすことも狙いの一つだ。
マグネット・ホスピタルとは、「磁石のように人材を集める」病院のこと。若手医師の多くは、2年間の初期研修の後、専門的な知識や技術を身につけるため、病院に“即戦力”として勤務しながら後期研修を受ける。全国から後期研修医を集めることができれば、病院や地域の医師不足解消にもつながる。
県は、来年度から4年間で、3億2000万円を事業用基金として積み立て、後期研修1年目から3年目の医師が一定数以上在籍し、今後、医師派遣先を増やす用意がある病院を公募し、補助対象とする方針。地域バランスや病院規模を考慮し、県内8か所程度の病院を選ぶという。
補助金は、後期研修医を指導できる専門性の高い医師の人件費や、研修医の海外留学費用のほか、研修医を集めるためのPR活動などにもあてられるようにする予定。県医師確保対策室では、「後期研修医を全国から集めるため、各病院でぜひ魅力ある指導プログラムを考えてほしい」としている。
(以下略)
(読売新聞、長野、2009年10月20日)
私見(コメント):
「地域医療再生計画」は、国が総額3100億円の基金を設け、市町村をまたいで広域で設定される全国の「医療圏」の中から90カ所程度に、それぞれ25億円か100億円程度を交付するという事業で、これは政府が今年4月27日の臨時閣議で、一般会計規模で13兆9255億円に上る補正予算案を決定し国会に提出したことにさかのぼります。
現在、補正予算の見直し作業が進行中で、3100億円の地域医療再生基金のうち750億円は執行停止が決定され、今後さらに縮小される可能性もあると報道されています。
長野県では、10の二次医療圏(佐久・上小・諏訪・上伊那・飯伊・木曽・松本・大北・長野・北信)がありますが、今回、県医療審議会で、「地域医療再生計画」の交付対象となる医療圏として、上小と上伊那の2医療圏が選定され、今後、この2医療圏の「地域医療再生計画」に対し、25億円づつの交付が受けられる見込みとのことです。
上小と上伊那の2医療圏の医療環境が非常に厳しいことは分かりますが、県内の他の8医療圏もそれぞれ相当厳しい状況に置かれていることは間違いありません。どの医療圏も危機的状況に置かれ、必死にもちこたえているのが現状です。もしも、交付される補助金が一部の医療圏のハード面の整備に使われるだけなら、これが県全体の地域医療の再生につながっていくのかどうか疑問に感じます。
例えば、上小の医療再生計画には、上田市産院を長野病院の近くに新築移転する計画とか、東御市民病院に院内助産所を新設する計画とかが盛り込まれていますが、常識的に考えて、産科一次施設の整備に莫大な公的資金を投入し続けたとしても、もしも地域の基幹病院である長野病院の周産期医療提供体制が現状のまま放置されるのであれば、この計画が地域の周産期医療提供体制の再構築に寄与するのか疑問に感じます。また緊急の課題として、今現在の上小地域における多くの産科救急患者を受け入れている佐久総合病院や篠ノ井総合病院などの周辺医療圏の基幹病院が疲弊して、万が一、次々に機能不全に陥ったら、近い将来、上小だけでなくその周辺の医療圏の周産期医療提供体制も崩壊の危機に陥ってしまう可能性があります。現在ぎりぎりのところで何とかもちこたえて地域の周産期医療や救急医療を支えている医療機関にも、機能不全に陥らないための緊急避難的な救済措置が必要だと思います。
二次医療圏は全国で348ヵ所ありますが、各都道府県に2医療圏づつしか「地域医療再生計画」が認められないのはなぜでしょうか? 国の医療対策として地域医療を再生するために各都道府県に50億円づつの予算が計上されるのであれば、国内のすべての二次医療圏の地域医療の体制強化に寄与するような、もっと合理的な予算の使い方もあったのではないか?と疑問に感じます。
****** 東信ジャーナル、2009年10月15日
長野病院に研修医や指導医 信州大学と連携し安定医師派遣 上小医療圏22億4千万円 長野県上田市
県は13日、地域医療の課題解決に取り組む医療圏を国が支援する「地域医療再生事業」に、上小(坂城町を含む)と上伊那の2医療圏の再生計画を国へ提出することを決めた。上小医療圏は、平成21~25年度の5年間で22・4億円の事業費を投じ、国立病院機構長野病院(上田市緑が丘)の機能回復や、周産期医療体制の整備を図る。
上小医療圏は、ハイリスク分娩を取り扱っていた長野病院が平成20年8月から分娩を休止しており、ハイリスク分娩は他医療圏に依存せざるを得ない状況が続いている。また2次救急医療機関(輪番病院など)の負担が増しており、患者の受け入れに支障が出ているとする。
計画では、信大と連携して長野病院に研修医や指導医の受け入れ体制を整備し、産婦人科医や麻酔科医など安定的な医師派遣につなげる。
救急医療体制では、平日夜間に内科系の軽症患者を受け入れる成人初期救急センターを整備。同センターは当面は長野病院の敷地内にある小児初期救急センターと併設し、25年度までに新たな施設を整備する方向で検討する。成人初期救急センターの受け入れ患者数は平成25年度は約1300人を目標に掲げている。
周産期医療体制の確立では、上田市産院の移転新築の建設費や、東御市民病院の院内助産所の設備費に充てる費用などを盛り、25年度の圏域内の受け入れ分娩数を20年度比23%増の1900件、このうち長野病院の分娩再開でハイリスクは約200件を目標にする。
上小医療圏の再生計画は、上田地域広域連合の5市町村や上田市、小県、歯科の各医師会などと策定した。
同事業は、政権交代後の見直し対象の補正予算に含まれていたが、県によると、厚生労働省は「各都道府県2カ所の再生計画は予定通り進めたい」と説明しているが、政府の最終決定には至っていないとしている。
(東信ジャーナル、2009年10月15日)
****** 伊那毎日新聞、2009年10月14日
地域医療再生事業 上伊那医療圏選定される 県医療審議会で了承
地域医療の課題を解決するため、県が策定する事業を実施する「地域医療再生事業」に、上伊那医療圏が選定された。
これは13日、長野県庁で開かれた県医療審議会で報告され、了承された。
県内で厳しい医療環境にある上伊那と上小の2医療圏が選ばれた。
審議会で示された計画によると、上伊那では伊那中央病院、昭和伊南総合病院、辰野総合病院の公立3病院で新たに「公立病院運営連携会議」を設立し、3病院の将来的な経営統合を見据えて、機能分担と連携のあり方を検討する。
伊那中央病院は、第3次救命救急センターを担う病院と位置づけ、現在ある「地域医療センター」を一部拡充するほか、5年のうちに救命救急センターへの指定を目指す。
昭和伊南総合病院は、「地域医療支援リハビリテーションセンター」を整備し、2次救急から回復期を担う病院に、辰野病院も2次救急から回復期を担う病院として体制を整備する方針。
機能再生を推進するため、電子カルテなどによる診療情報を共有する地域連携ネットワークも整備するとしている。
そのほか、伊那中央病院に「内視鏡トレーニングセンター」を整備し、全国からトレーニング医師を受け入れ、医師不足の解消につなげたい―としている。
これらの事業は国から25億円の補助を受け、5ヶ年計画で実施される予定。
(伊那毎日新聞、2009年10月14日)
信州大学医学部附属病院 58人
県厚生連佐久総合病院 15人
相澤病院 12人
長野赤十字病院 9人
飯田市立病院 6人
諏訪赤十字病院 6人
県厚生連長野松代総合病院 6人
諏訪中央病院 4人
長野市民病院 4人
長野中央病院 4人
県厚生連小諸厚生総合病院 3人
県厚生連篠ノ井総合病院 3人
県厚生連安曇総合病院 2人
安曇野赤十字病院 2人
伊那中央病院 2人
県厚生連富士見高原病院 2人
県厚生連北信総合病院 2人
県立須坂病院 2人
国立病院機構長野病院 2人
佐久市立国保浅間総合病院 2人
市立岡谷病院 2人
波田総合病院 2人
計 150人
****** 医療タイムス、長野、2009年10月7日
6病院が指定取り消し 10年度の県内臨床研修指定病院
県内の2010年度の臨床研修指定病院は、前年度より6少ない22病院となることが、厚生労働省のまとめで分かった。臨床研修制度開始から5年が経過したことに伴う見直しで国は、過去3年間マッチ者がゼロだった病院について、当核病院が主体となる「基幹型臨床研修病院」を取り消す方針を示していた。
今回、指定を取り消されたのは、国立病院機構まつもと医療センター松本、昭和伊南総合、飯山赤十字、県立木曾、県立こども、市立大町総合の6病院。いずれも過去3年間でマッチ者がゼロだった。
ただ、6病院とも信大病院の協力型臨床研修病院にはなっている。
一方、指定病院は、県厚生連佐久総合、国立病院機構長野、諏訪赤十字、飯田市立、信大、長野赤十字、県厚生連北信総合、相澤、県厚生連小諸厚生総合、県厚生連篠ノ井総合、長野中央、諏訪中央、県厚生連長野松代総合、県厚生連安曇総合、長野市民、安曇野赤十字、佐久市立国保浅間総合、市立岡谷、波田総合、県厚生連富士見高原、伊那中央、県立須坂の各病院。
マッチングスケジュールは9日に中間発表を行い、22日に希望順位登録最終締め切り。29日に最終結果が発表される。
(医療タイムス、長野、2009年10月7日)
****** 信濃毎日新聞、2009年10月8日
大町病院存続、医師が市民に呼び掛け
医師不足から経営難に陥っている大町市立大町総合病院の現状を知り、地域を挙げて存続に立ち上がろうと、同病院の医師が市民への呼び掛けを始めた。今後、同病院とともに、市民との対話集会を開く予定だ。
呼び掛けを始めたのは同病院外科科長の高木哲さん(42)。市内のホテルで3日に開かれた同病院の「健康づくりセミナー」では、がん予防の講話を前半で切り上げ、後半は病院の医師不足の現状などをスクリーンに映し出して説明。「署名を集め、県や大学などに医師派遣を訴えることも必要」と訴えた。
(信濃毎日新聞、2009年10月8日)
****** 信濃毎日新聞、2009年10月7日
勤務医らの率直な声 県立木曽病院で意見交換会
木曽広域連合議会福祉環境委員会は5日夜、木曽郡内唯一の病院である県立木曽病院(木曽町福島)存続のための課題を探ろうと、病院側との意見交換会を同病院で開いた=写真。医師不足などについて医師らの率直な声が聞かれた。
広域連合側は、委員長の深沢衿子・木祖村議ら議員に加え、副連合長の瀬戸普・王滝村長らも出席。病院側は、久米田茂喜院長ら約20人が出席した。
医師不足については、医師から「都市部から離れていると研修に行くのも難しく、若い医師は敬遠する」との声や「若い医師は田舎に来たがらない。昔のように半強制的に派遣するシステムにしないと駄目だ」との指摘が出た。
一方で、「木曽に行けと言われたとき、正直『えっ』と思ったが、内視鏡など大学病院と遜色(そんしょく)ない医療機器がそろっていた」「都市部の病院とは診察する疾患も異なり、勉強になる」などの意見もあった。
入院患者もいるため外来に対応する時間が限られる-といった病院側の事情や医療の実態に対する理解を深めてほしいとの訴えも。医師不足の背景を探るには大学に出向いて研修医たちの声も聞くべきだとの提案もあった。
広域連合によると、意見交換会は2006年から続けており、4年目。深沢委員長は「ざっくばらんな話が聞けて良かった」と話していた。
(信濃毎日新聞、2009年10月7日)
****** 中日新聞、長野、2009年10月7日
木曽病院の経営で議論 独立行政法人化控え
来年4月から県立病院が地方独立行政法人化するのを前に、木曽広域連合議会福祉常任委員会は5日、木曽町の木曽病院で病院医師らと意見交換会をした。医師からは「人手が足りず医師も看護師も疲弊している」といった声や、時間外診療の態勢が整わない中で高度な治療を求める患者に、病院の実情を知った上での配慮を求める意見も上がった。
現場で働く医師の率直な意見を聞き、今後の対策に反映させようと、今年で4回目。委員の各町村議や病院関係者ら約40人が参加した。
久米田茂喜院長が慢性的な医師不足が続く現状に「このままでは病棟閉鎖もいずれ考えなければならない」と危機感をあらわにしたのをはじめ、病院関係者からは、診療時間外に訪れ「早くみて」と不平を言う患者の例を報告。「利用者が病院の現状をあまり知らないのでは」とし、「安い料金で高いサービスが受けられる今の状態は長く続かない」との厳しい見方も出た。
同常任委員会の深沢衿子委員長は「住民への説明会などを通し、木曽病院の実情を把握してもらいたい」と話した。 【市川泰之】
(中日新聞、長野、2009年10月7日)
医師の総数は毎年着実に増えているにもかかわらず、医療現場の医師不足は年々深刻化しています。特に、外科医や産婦人科医の数は年々着実に減り続けています。今後の対策として医師の総数を単純に増やすだけでは、問題は決して解決しません。
(2009.8.17付けの産経ニュースより)
夜昼かまわず必死で頑張ってきた急性期病院の勤務医達が、過酷な労働環境に耐えられなくなり、「もうこれ以上頑張れない、もはや力尽きた」という極限状態まで追い詰められ、働き盛りの年代の勤務医達が相次いで戦線離脱しています。
開業の先生方が診ていた患者さんが急変した時に、時間外でもとにかく送り込んでしまえば、何とか対応してくれていた急性期病院の機能が縮小し続けています。
いくら医師の総数が増えたとしても、急性期の患者さんを送り出す側の医師ばかりが増えて、受け入れる側の医師が今後も減り続けるようでは、医療崩壊はこれからもますます進行していくことでしょう。これは特定の地方に限られた問題ではなく、全国各地の住民が困窮している問題です。もはや、個々の病院や自治体の取り組みで解決できる問題ではありません。国が本腰を入れて、この問題に取り組む必要があると思います。
総選挙の前で医療の問題がいろいろと報道されていますが、現在の日本の医療の最大の問題は、急性期医療体制が現場の人手不足のためにどんどん崩壊している点だと思います。
最新技術を駆使して、夜昼かまわず、必死で頑張ってきた急性期病院の勤務医達が、医療現場の実働医師不足で、「もうこれ以上頑張れない、もはや力尽きた」という極限状態まで追い詰められています。燃え尽きるように医師は疲れ果て、退職が相次いでいます。
特に、産科、外科、麻酔科、救急科などの急性期を扱う分野で実働の病院勤務医が減っています。開業の先生方が診ていた患者さんが急変した時に、時間外でもとにかく送り込んでしまえば、何とか対応してくれていた急性期病院の機能が縮小し続けています。
医師の総数を単純に増やすだけでは、この問題は解決しないと思います。いくら医師の総数が増えても、急性期の患者さんを送り出す側の医師ばかりが増えて、受け入れる側の医師がどんどん減っていくようでは、医療崩壊は今後もますます進行していくことでしょう。
****** 毎日新聞、長野、2009年8月7日
医師不足、広域で分担の動きも
松本市和田の主婦(26)は、第1子を妊娠して22週目に入った。健診は塩尻市のクリニックで受け、波田町の総合病院で出産を予定する。波田まで妊娠検査に行った時、検査や健診は別の病院で受ける仕組みと、初めて知った。
松本市、塩尻市などの3市1町5村(松本医療圏)は08年5月、「松本地域出産・子育て安心ネットワーク協議会」を設立。連携する病院やクリニックを受診した妊婦には、カルテと同じ役割を持つ「共通診療ノート」を渡している。分娩(ぶんべん)を扱わない開業医などでも健診を受け易くすることで、分娩可能な特定の病院に集中していた妊婦を分散させ、産科医の負担を軽減する狙いだ。休日は当番医が、夜間は信大病院や相沢病院などで対応する。
主婦は「しっかり診てもらえるし、カルテが手元にあると安心感が大きい」と評価するが、産科医不足には「何か起きた時に診てもらえないかも」と不安を吐露した。高額な出産費も、若い世代が出産に踏み切れない要因の一つだ。
連携制度を考案した信州大医学部の金井誠教授は「地域全体が一つの大きな病院というイメージを描いた」。だが産科医の減少による激務と、出産に伴う事故が訴訟に発展するケースが増え、そもそも「医学生は産科に魅力を感じていない」と指摘する。金井教授は「医師が分娩を積極的に扱えるような社会を」と強調、産科医の待遇改善や産科を志望する学生への奨学金などの必要性も訴えた。
(以下略)
(毎日新聞、長野、2009年8月7日)
****** 中日新聞、長野、2009年8月9日
医療 求められる安心
全国的な医師不足と偏在の流れの中で、特に医師の負担が重い出産を扱う病院は減少傾向にある。県医療政策課によると、2001年に68あった県内の分娩(ぶんべん)医療機関は現在、46まで減少している。
昭和伊南総合病院(駒ケ根市)は、08年4月から出産を扱わなくなった。同じ上伊那地域で、同病院から10数キロ離れた伊那中央病院(伊那市)に産科医を集約するため、2人いた産科医が引き揚げられたためだ。
駒ケ根市など上伊那南部4市町村の多くの妊婦は、移動に20分~1時間以上余分にかかる伊那市で出産しなければならなくなった。「できるならば昭和伊南でお産がしたいのに」。駒ケ根市の妊婦(42)は打ち明けた。
(以下略)
(中日新聞、長野、2009年8月9日)