ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

後期研修医の新規採用状況

2009年03月31日 | 地域周産期医療

どうやら今春は、産婦人科の後期研修医が増加傾向にあるような気配です。産科医療に対する逆風が吹き荒れて、産婦人科医が減少し続けて、全国的にお産難民が大量発生しそうな状況となってきて、『何とかして産婦人科医を増やさないことには、もはやどうにもならないぞ!』という国民的なコンセンサスが形成されつつあるように感じます。今春は当科も新人後期研修医を迎えることができました。新人の若い先生たちが、途中でドロップアウトしないで、数年後には県内各地の産科の医療現場で目を輝かせて大活躍しているように、我々ロートルも彼らと共に頑張って成長していきたいと思います。

長野県内の後期研修医新規採用状況:

信州大病院:54人(産婦人科:8人、循環器内科:8人、整形外科:8人、内科第2:6人、内科第3:3人、小児科:3人、放射線科:3人、脳神経外科:3人、内科第1:2人、外科:3人、耳鼻咽喉科:2人、臨床検査部:1人、麻酔科蘇生科:1人、形成外科:1人、泌尿器科:1人、皮膚科:0人、高度救命救急センター:0人など)

県厚生連佐久総合病院:13人(内科:3人、地域医療部3人など)

長野赤十字病院:8人(循環器内科など8診療科)

相澤病院:7人(外科:2人、消化器内科2人など)

諏訪中央病院:5人

飯田市立病院:3人(産婦人科:1人、内科:1人、麻酔科:1人)

県厚生連篠ノ井総合病院:3人(産婦人科:1人など)

県厚生連安曇総合病院:3人(精神科:1人、整形外科:1人、内科:1人)

諏訪赤十字病院:2人(循環器科:1人、消化器科:1人)


医師偏在問題についての解決策の一つの提言

2009年03月29日 | 医療全般

現在の医師不足の問題を解決するためには、単に医師養成数を増やすだけではなく、医師の計画的配置が必要であるとの提言です。

****** NHKニュース、2009年3月25日

医師偏在問題 国研究班が提言

 医師が特定の診療科や一部の病院に偏るなどして医師不足の問題が深刻になっていることから、厚生労働省の研究班は、医師が専門の診療科を自由に選べる現状を見直し、診療科ごとに必要な医師の数を割り出して計画的に育てていくべきだとする提言をまとめました。

 この提言は、国民が安心して医療を受けられる体制を作ろうと、厚生労働省が設置した研究班が25日に開いた会合でまとめたものです。医療現場では、一部の診療科や病院に医師が偏る「偏在」が問題となっていて、産科や小児科、救急などの診療科や、地方の病院などで必要な数の医師を確保できない深刻な医師不足の状態が続いています。研究班では、医師の数を増やすだけではこうした問題は解決しないとして、専門の診療科を自由に選べる現状を見直し、国民のニーズにあった新たな仕組み作りを検討していました。25日にまとまった提言では、患者の数や手術件数といった医療のニーズを基に、診療科ごとに必要な医師の数を割り出し、新たに育てる医師の数を決める第三者機関を設置するよう求めています。また、日ごろの健康を管理したり、軽い症状の病気を幅広く診たりする医師を新たに「家庭医」として認証し、高度な医療を提供する「専門医」と役割分担して、地域医療の体制を充実させるとしています。研究班の班長で国立がんセンター中央病院の土屋了介院長は「国民の安心につながるよう、計画的に医師を育てる仕組みを早急に実現する必要がある」と話しています。一方、診療科ごとに医師の数を決める方法については、医師の意欲をそぎ、逆に医療の質の低下を招くおそれがあるとして反対の意見もあり、厚生労働省は、提言をどう具体化するか慎重に検討することにしています。

(NHKニュース、2009年3月25日)


栃木県の産科医療(佐野厚生総合病院、国立病院機構栃木病院)

2009年03月29日 | 地域周産期医療

****** 毎日新聞、栃木、2009年3月31日

佐野厚生総合病院:12月から産科休止 

周産期医療機関、栃木病院も返上

 リスクの高い妊娠に対応する地域周産期医療機関に認定されている佐野厚生総合病院(佐野市)が、12月から産科を休止することが分かった。また、国立病院機構栃木病院(宇都宮市)も2月に地域周産期医療機関の認定を県に返上していたことが分かった。07年の分娩(ぶんべん)数は、佐野厚生総合病院は540件、国立栃木病院は135件に上る。いずれも産科医の不足による対応で、地域の産科医療に深刻な影響を及ぼしそうだ。

 佐野厚生総合病院は現在3人いる産科医が4月から2人に減る。11月まで予約が入っている分娩には対応するが、それ以降の新規出産は受け入れない。国立栃木病院も医師が減少し、産科は継続するもののハイリスク分娩には対応しない。

 県医事厚生課によると、07年の県内医療機関での分娩は1万8335件。最も多いのは済生会宇都宮病院(宇都宮市)で1248件に上る。

 比較的高度な医療設備とスタッフを抱え、異常妊娠に対応する地域周産期医療機関に認定されているのは、08年度で県内8病院。両病院の産科休止や認定返上により、認定病院は6病院に減り、宇都宮市内では済生会宇都宮病院、両毛地域では足利赤十字病院(足利市)のみになる。【葛西大博】

(毎日新聞、栃木、2009年3月31日)

****** 読売新聞、栃木、2009年3月28日

周産期医療センター 国立栃木認定返上

佐野厚生総合、出産休止へ

 母体や胎児へのリスクが高い出産に対応する「地域周産期母子医療センター」が、現在の8病院から2減となる見通しであることが27日、わかった。国立病院機構栃木病院(宇都宮市中戸祭)が認定の返上を県に申し出たほか、佐野厚生総合病院(佐野市堀米町)が11月末で出産の扱いを休止する方針。いずれも医師不足を理由に挙げている。今後、緊急時や県南部の出産受け入れ体制に大きな影響が出る可能性がある。

 県によると、国立栃木病院は現在2人いる産科常勤医が4月から1人となる見込みで、「医師不足のためハイリスク分娩に対応できない」と2月に返上の申し入れがあった。

 認定返上は2007年11月の佐野市民病院、宇都宮社会保険病院に続いて3件目。

 佐野厚生総合病院は、現在入っている11月までの予約には対応するが、新規の出産受け入れは休止する。同病院によると、2007年度に5人いた産科常勤医が08年度に3人に減少。3月末にはさらに1人が退職することになり、休止を決断したという。今後、新たな医師を確保できない場合は「センター認定を返上するしかない」と話している。

 それぞれの病院の認定返上、出産休止は、27日に開かれた県周産期医療協議会で報告された。

 国立栃木病院は、07年度から出産受け入れを縮小している。

 一方、佐野厚生総合病院は年間約400件の出産を扱っており、佐野市内で出産を扱う医療機関3か所のうち救急搬送に対応できるのは同病院だけ。周辺の病院が受け入れを大幅に拡大しなければ、地元で出産施設が見つからない「お産難民」が発生する可能性もある。

 協議会では、「小児救急や高度な周産期医療を担う足利赤十字病院の負担増は避けられないのではないか」と懸念する声が上がった。

(読売新聞、栃木、2009年3月28日)

****** 下野新聞、2009年3月28日

佐野厚生病院、12月から産科休止 周産期機関返上へ

 合併症などリスクの高い妊婦を受け入れる地域周産期医療機関に認定された佐野厚生総合病院(佐野市)が十二月から産科を休止する方針であることが二十七日、分かった。現在三人の産科常勤医が四月から二人に減るためで、十一月までのお産と産科救急も当面対応する予定という。出産前後の周産期医療体制を支える地域拠点病院がこのまま離脱すれば、弱体化は必至だ。

 同日の県周産期医療協議会で病院関係者が報告した。

 下野新聞社の取材に対し、現在診療している妊婦は責任を持ってお産まで担当するが、四月以降に常勤医が三人に戻らなければ、十一月いっぱいでお産を休止せざるを得ないという。

 佐野厚生のお産件数は、年間四百件近くに上る。産科救急は四月から対応できる範囲が縮小する見通し。また地域周産期医療機関の認定も産科が休止すれば、返上するという。

 県保健福祉部によると、県内でお産に対応する医療機関は減少する一方。三年前には五十カ所だったが、昨年四月には下都賀総合病院(栃木市)のお産休止などで四十四カ所に減った。

 地域拠点病院も今年二月に国立病院機構栃木病院(宇都宮市)が地域周産期医療機関の認定返上を申し出たばかりだった。

 県保健福祉部の担当者は「きょう初めて聞き、えっと思った。救急の対応など今後の状況を、きちんと確認したい」と、驚きを隠さなかった。

(下野新聞、2009年3月28日)

****** 下野新聞、2009年4月6日

周産期搬送受け入れ改善 「3回以上拒否」減少 県内08年

 出産前後の周産期救急搬送で、県内医療機関に三回以上受け入れを断られた事例は2008年1年間に9件あったが、前年(12件)より改善したことが5日までの、県消防防災課の調査で分かった。受け入れ円滑化を目指した周産期医療連携センター事業が一定の効果を挙げた、と同課はみている。しかし医療機関が断った最多回数は前年(5回)を上回る7回。かかりつけ医のいない「飛び込み出産」が、救急搬送を難しくしている実態が県内でも顕在化した。

 周産期の救急搬送は08年一年間で236件。うち3回断られたのが計6件で4、5、7回は各1件だった。

 最多の7回断られた事例は、小山市消防本部管内で起きた。女性は腹痛を訴えたが、救急隊は明らかな陣痛と判断。かかりつけ医はなく、近くの産科医療機関に照会したが、受け入れ先は見つからない。結局、最後のとりでの総合周産期母子医療センターを置く大学病院に搬送した。駆け付けた救急車が現場から動けず、最長の一時間待機した事例も、かかりつけ医がいなかった。

 鹿沼市の30代女性が昨年4月、自宅で出産。搬送先が見つからない上、へその緒の処置などでも時間がかかった。最終的に赤ちゃんと共に別の大学病院に搬送された。こうした飛び込み出産は「妊娠週数が分からず、感染症や母体の合併症、未熟児などの問題もあり、地域の病院で受け入れにくい」と、大学病院関係者は指摘する。

 奈良県で07年夏、妊婦の受け入れ先が見つからず、救急車内で死産したのも同様の事例だ。

 県内市町は無料で妊婦健診が受けられるよう公費負担の回数を引き上げ、国も08年度第2次補正予算で出産までに必要な計14回分を財政措置した。

 だが別の大学病院関係者は「お産なんて陣痛が来たら、どこかで産める、と考える人に妊婦健診の公費負担が何回でも関係ない」と悲観的だ。

(下野新聞、2009年4月6日)


愛育病院、日赤医療センター: 労働基準法違反で是正勧告

2009年03月26日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

日赤医療センターの産科常勤医は24人、愛育病院の産科常勤医は15人とのことですが、それでも労働基準法を遵守するような勤務体制を維持するのは難しく、労働基準法違反で是正勧告を受けたとの報道です。

地方の病院で、産科の常勤医数が2桁というのは、大学病院以外ではあまり聞いたことがありません。少ない常勤医を何とか綱渡り的にやりくりして、周産期医療提供体制をギリギリで維持している病院がほとんどです。労働環境は、一人医長が多かった時代と比べると徐々に改善されつつありますが、多くの病院が労働基準法遵守には未だに程遠いと思われます。

****** 産経新聞、2009年3月28日

愛育病院の「指定返上」波紋広がる 

医師不足と労基法の溝深く

 リスクの高い妊婦を24時間体制で受け入れる「総合周産期母子医療センター」の指定を受けている愛育病院(東京都港区)が、指定返上を都に打診した問題について、波紋が広がっている。返上の理由は労働基準監督署から医師らを長時間働かせた労働基準法違反で是正勧告を受けたため。周産期医療の維持が、過酷な医師の勤務実態の上に成り立っていることを改めて浮き彫りにした格好で、病院側は「国が医師の労働環境を改善しないのに、労基法を守れというのには無理がある」と訴えている。

 24日夕、愛育病院から都に一本の電話が入った。「総合周産期母子医療センターから地域周産期母子医療センターの指定に変更したい」。「総合」の指定返上をこう切り出した。

 都の基準では「総合」は新生児集中治療室(NICU)などを備え、24時間体制で複数の産科医が勤務することが必要。一方、「地域」では夜間、休日での複数医師勤務は求められていない。

 同病院によると、15人の産科医のうち4人が子育てなどのため夜間勤務ができないという。三田労基署は17日、労働基準法に基づく労使協定を結ばず、医師に長時間労働をさせていたとして、是正を勧告。病院側は「各医師に法定の労働時間を守らせると、常勤医師1人を含む医師2人による当直は難しい」と判断したのだ。

 「搬送調整など他病院が代わりを務めることは難しい」。都は26日、愛育病院に対して「総合」の指定継続を求めた。

 愛育病院は、周産期医療のあり方などを検討する「都周産期医療協議会」のメンバーだ。都内の周産期医療体制について熟知しているだけに「指定返上」の打診は医療関係者の間でさまざまな憶測を呼んだ。

 愛育病院の中林正雄院長は記者会見で、「産科医不足の中では国からの資金支援などがなければ、病院側も産科医の過酷な労働環境を改善することはできない。悪条件が改善されないのに労基法だけを守れというのは現実的ではない」と反発した。

 愛育病院側は現在、都の意向を受け、条件付きで指定継続を検討しているが、「社会全体で周産期医療のあり方について考えてほしい」(中林院長)と訴えている。

 労働基準法に詳しい伊藤博義・宮城教育大名誉教授は「労働基準法を守れないほど長時間労働をしなければならない医療現場の実情に対し、行政側も自らの責任について考え、対応していく必要がある」と話した。

(産経新聞、2009年3月28日)

****** 読売新聞、2009年3月27日

当直医非常勤だけの日も

5月から、愛育病院 

 重症妊産婦や新生児の緊急治療にあたる「総合周産期母子医療センター」に指定されている愛育病院(港区)は26日、これまで常勤医が必ず勤務していた夜間の当直業務について、5月からは非常勤の医師だけの日が生じると発表した。都は「要件を満たしている」としており、同病院は今後も、総合周産期センターとして継続する見通し。

 発表によると、同病院は今月17日、三田労働基準監督署から、医師の当直について、「宿直」ではなく、「残業」として扱うよう、是正勧告を受けた。勧告に従うと、残業時間に上限があるため、常勤医が当直できない日が出るという。

 同病院は、秋篠宮妃紀子さまが、悠仁さまを出産されるなど、設備の整った専門病院として知られる。

(読売新聞、2009年3月27日)

****** 毎日新聞、2009年3月27日

東京・愛育病院:「周産期」指定返上打診 継続含め検討--会見

 東京都の総合周産期母子医療センターの指定を受けている愛育病院(東京都港区)が指定返上を都に打診した問題で、同病院は26日、都や都周産期医療協議会の回答を待って、継続も含め今後の対応を決めると発表した。

 愛育病院は夜間、常勤医と非常勤医の2人体制で対応している。勤務実態の改善を求めた三田労働基準監督署の是正勧告に基づく対応を取ると、常勤医が足らないケースが生じる。救命救急センターもなく、総合周産期母子医療センターの継続は難しいと判断した。

 会見した中林正雄病院長は「悪条件が改善されないのに、労働基準法だけを守れと言うのは現実的でない。人を増やして過重労働をなくすような対策のロードマップ(道筋)を行政が作ってほしい」と訴えた。【河内敏康】

(毎日新聞、2009年3月27日)

****** ロハス・メディカル、2009年3月26日

(速報)日赤医療センターにも是正勧告

 東京都渋谷区の日赤医療センター(幕内雅敏院長)が、渋谷労働基準監督署から、36協定を締結していないことなどを理由に、労働基準法違反で是正勧告を受けていたことが分かった。同センターは、心臓病など緊急の救命処置が必要な妊婦を必ず受け入れることを目的に、東京都から指定を受けた3つの「スーパー総合周産期センター」の1つで、今月25日から稼働が始まったところだ。愛育病院が是正勧告を受けたことに続き、全国的にも注目を集めている「スーパーセンター」にも同様の指摘が入ったことで、都の周産期医療体制の維持を危ぶむ声も上がっている。【熊田梨恵】

 同センターは今月13日、36協定を締結していなかったことや職員の休憩時間が短かったこと、昨年10月に研修医の宿直業務について時間外労働時間に対する割増賃金を払っていなかったことの3点について労基署から指摘を受けており、改善を求められていた。同センターはこの指摘について、36協定については職員代表と既に合意できているとして4月中に締結し、休憩時間についても就業規則を改定して対応するとしている。また、研修医の時間外労働時間の割増賃金については4月の給料日に振込みを予定しているという。労基署への改善報告の期日は特に指定されていないが、病院側の対応が整い次第順次報告し、4月半ばには対応を終えるとしている。

 今回の是正勧告については、「『スーパー総合』が始まるのに、労基法を遵守できるような体制が取れるのか」と危惧を示す病院関係者もいるものの、同センターの竹下修管理局長は、「今回の勧告についてはすべて対応できる。(同センターに)医師が多過ぎるということはないが、潤沢に働いていただいていると思うので、『スーパー総合周産期センター』としてやっていくことに、今回の件が影響するとは思わない」と話している。同院の産科医は研修医を含めて24人。

 「スーパー総合周産期センター」は、国内で相次いだ妊婦の救急受け入れ不能問題の解消を図るために東京都が今月25日から始めたシステム。脳や心臓に重篤な疾患があるなど緊急の救命処置が必要な妊婦に限定して、指定を受けた3つの総合周産期母子医療センターが輪番を敷き、24時間体制で受け入れる。地域の周産期医療ネットワークでの受け入れが難しい場合、かかりつけ医などが東京消防庁を通じて受け入れを要請する仕組みだ。同センターのほか、昭和大病院(品川区)、日大医学部附属板橋病院(板橋区)が指定を受けており、全国の医療関係者から注目を集めている。

 稼動初日となった25日は、日赤医療センターが午前9時から翌朝9時までを受け持った。「スーパー総合周産期センター」の受け入れに該当する搬送ケースはなかったという。

 日赤医療センターは、総合周産期母子医療センターの指定を受けており、年間分娩件数は約2500件。総病床数は733床で、このうち新生児集中治療管理室(NICU)は12床、母体・胎児集中治療室(MFICU)は6床。

(ロハス・メディカル、2009年3月26日)

**** m3.com医療維新、2009年3月26日

「法令違反」と言われては現場のモチベーションは維持できず 愛育病院院長と事務部長が労基署による是正勧告で取材に応じる

 3月26日、愛育病院(東京都港区)院長の中林正雄氏と、事務部長の大西三善氏は、今回の労働基準監督署による是正勧告の件でm3.comの取材に応じた。また、16時か ら報道各社へ向けた合同説明会が開かれた。ポイントは以下の通り。

労働基準監督署勧告の経緯と問題点

 大西氏によると、労基署による最初の調査があったのは今年1月20日。労基署は、医師の勤務体制(特に当直とその翌日の勤務)、看護職員の勤務体制について、一部の医師 の勤務予定表と実施表、給与台帳、時間外・休日労働に関する協定(36協定)などの資料を持ち帰った。2月19日に再調査が行われ、全医師の2008年12月分給与と11 月分の勤務実態、手当ての支払い状況などを確認し、それらの内容を踏まえて3月17日に愛育病院への是正勧告・指導がなされた。
労基署より指摘があったのは、主に以下の点。

◎医師の時間外労働について、36協定が締結されていなかった
 愛育病院でも、36協定そのものは締結されていた。しかし、時間外労働の規定があったのは医師を除く他の職種のみだった。この理由について、大西氏は「事務手続きのミス」と説明している。

◎時間外労働、休日労働が法定基準を超えていた
 総合周産期母子医療センターは、常時複数の医師がいることが要件となっている。愛育病院では、常勤医1人、非常勤医1人、オンコール1人という夜間体制を取っている。
 現在愛育病院の産科常勤医は15人。しかし、このうち女性医師5人は、現在、妊娠・出産・育児のため、時間外勤務を免除されている。さらに1人は厚生労働省の要請を受けて福島県の病院に出向しており、もう1人は専門医取得のため現在他院で研修中だった。院長、部長、医長、後期研修医などを除くと、事実上5人の常勤医が当直を担っており、それらの医師の時間外勤務が法定の時間を超過していた。ただし、中林氏は、「一時的にオーバーワークが出てしまったものであり、常態的なものではない」と説明している。
 また、検査技師1人についても、36協定で合意された時間外勤務時間を超過した月が1カ月あった。

◎時間外勤務についての割増賃金が支払われていなかった
 労基署の見解では、当直とは夜間の見回り程度の宿直業務であり、原則として睡眠時間が確保される状態のもの。しかし、周産期医療現場では夜を徹して分娩などの医療行為に当たることが常態であると言える。この点について労基署は、当該業務は事実上、宿直ではなく夜間勤務であるとし、それに伴う時間外勤務への賃金を支払うよう求めた。
 なお、愛育病院では、「当直手当」は支払っていた。金額は、対応した母体搬送数、分娩数などにより3万-6万円。一方、法定の時間外割増賃金(基準賃金の25%増)では、中堅-上級クラスの医師では8万-9万円になる見込みだという。

“看板”が外れても、病院には特段の問題なし

 労基署の是正勧告を受け、3月25日、愛育病院は東京都に総合周産期母子医療センター(以下「総合周産期センター」)の指定返上を打診した。理由は2つ。(1)総合周産 期センターの要件では、常時複数の医師を置くことが必要である。しかし、労基署の是正勧告に従うと、常勤医がすべての当直に加わることはできず、非常勤医2人での当直体制 (その場合オンコールを2人とすることを検討)となる日も生じる、 (2)東京都には総合周産期センターは9施設あるが、愛育病院以外はすべて大学病院などの総合病院で、救命救急センターなども併設されている。そのような機能のない愛育病 院は、総合周産期センターとして適切か否か、という点。

 中林氏は「地域の周産期医療を担う病院のduty(義務)として一生懸命やっている状況を『法令に反している』と言われては、現場のモチベーションが維持できない」と語 る。「法定基準は将来的には適正に守れるようにすべき。しかし、現在のように赤字の病院が多い、産科医療に携わる医師も不足している、という状況で、すべてを一度に解決す るのは不可能。実態に合うよう法の弾力的解釈を行いつつ、中長期的な解決が図られるよう全国的な問題として行政にきちんと取り組んでもらいたい」と要望した。

 総合周産期センターという“看板”については「どちらでも良いと考えている」という。「総合周産期センターを返上し、地域周産期センターとなった場合も、現在行っている医療の質を落とすわけではなく、実質的な変化はない。しかし、規制が外れる分、より柔軟な対応が可能になるとは思う。当院から『こうしたい』と言うことはできない。このような状況でも“総合”としてやっていった方が良いと東京都が判断するのであれば、続けないわけにはいかない」と述べた。なお、地域周産期センターとなった場合でも、NICUの病床数などは減らさない考えを示している。経営的な面でも、総合周産期センターには年間約2000万円の補助金が支給されているが、診療報酬による加算などを含めて試算しても全体で1000万円程度の減収であり、分娩費用が60万-70万円と他施設よりも高い愛育病院は、「分娩費用を1万円上げれば十分賄える」という。

 今日(26日)の午後、東京都からは「(総合周産期センターを)続けてもらいたい」との意向が伝えられたとのこと。中林氏は、「“担当部長の意向”だけでは、今後 人事移動などにより判断が変わる可能性もある。周産期医療協議会で検討を行った上、文書で回答をいただきたい」としている。

(m3.com医療維新、2009年3月26日)

****** 時事通信、2009年3月26日

愛育病院が返上申請=総合周産期センター指定-医師不足、労基署勧告に従えず

 リスクの高い妊婦に24時間対応する「総合周産期母子医療センター」に指定されている愛育病院(東京都港区)が、東京都に指定の返上を申し出ていたことが26日、分かった。医師の勤務状況について労働基準監督署から是正勧告を受けており、勧告に沿って医師の勤務時間を減らした場合、総合センターの要件である複数当直体制を維持できないと判断した。

 医師の過重労働に支えられている産科医療の実態が浮き彫りになった形。総合センターでなくなると、地域の救急患者受け入れなどに影響が出かねず、都と協議を続けている。

(時事通信、2009年3月26日)

****** 朝日新聞、2009年3月26日

愛育病院が総合周産期センター返上申し出 当直維持困難

 危険の大きい出産に24時間態勢で対応する総合周産期母子医療センターに東京都から指定されている愛育病院(港区)が、都に指定の返上を申し出たことがわかった。今月中旬、三田労働基準監督署から受けた医師の勤務条件についての是正勧告に応じるためには、医師の勤務時間を減らす必要があり、総合センターに求められる態勢が確保できないと判断した。

 総合センターでなくなると、救急の妊婦の受け入れが制約されたり、近隣の医療機関の負担が増したりするおそれがある。都は愛育病院に再検討を求めている。厚生労働省によると、総合センターの指定辞退を申し出るケースは初めてという。医師の過重労働で支えられている周産期医療の実情が露呈した形だ。

 病院関係者によると、三田労基署から、医師の勤務実態が労働基準法違反に当たるとする是正勧告書を受け取った。勧告書は、時間外労働に関する労使協定を結ばずに医師に時間外労働をさせ、必要な休息時間や休日、割増賃金を与えていないと指摘。4月20日までに改善するよう求めている。

 愛育病院は、同法などに沿って時間外勤務の上限を守るには、現在の人員では総合センターに求められる産科医2人と新生児科医1人の当直を維持できないため、指定を返上することにした。

 同病院は周産期医療が中心。99年4月に総合センターに指定された。常勤の産科医は昨年10月現在で研修医も含め14人、新生児科医7人。年間千数百件の出産を扱う。「自然出産」がモットーで、皇室との関係が深く、皇族や有名人の出産も多い。

 病院関係者は「勧告に沿うには医師を増やすしかないが、月末までに新たに医師を探すのは不可能。外来だけしかできなくなる恐れもある」と話す。

 都は25日、「労基署の勧告について誤解があるのではないか。当直中の睡眠時間などは時間外勤務に入れる必要はないはず。勧告の解釈を再検討すれば産科当直2人は可能」と病院に再考を求めた。

 東京都では昨年10月、脳出血の妊婦が8病院に受け入れを断られ、死亡した問題があった。都は「ぎりぎりの態勢で保っている周産期医療のネットワークが揺らぎかねない」と衝撃を受けている。

 一方、同様に総合センターに指定されている日赤医療センター(渋谷区)も渋谷労基署の是正勧告を受け、労使協定などの準備を急いでいる。【大岩ゆり、大隈崇】

(朝日新聞、2009年3月26日)

****** 毎日新聞、2009年3月26日

総合周産期母子医療センター:東京・愛育病院が「指定返上」

 東京都港区の愛育病院(中林正雄院長)が、都の総合周産期母子医療センターの指定を返上すると都に申し入れたことが25日分かった。労働基準監督署が、医師らの夜間の勤務体制について是正勧告したのを受け、「改善は難しく、センター機能を継続することは困難」と判断した。【河内敏康、江畑佳明、永山悦子】

 ◇労基署は勤務改善と言うが… 医師数足りず現状維持が限界

 申し入れの背景には、危険性の高い妊産婦に対応する医師の人手不足がある。現在、都と病院の間で指定解除を回避する協議が続いているが、実際に指定が解除されれば全国初。同様に人手不足の事情を抱える全国の他のセンターにも影響が及びそうだ。

 愛育病院によると、三田労働基準監督署が1月、同病院の勤務実態を調査。今月17日、労働基準法に基づく是正勧告を出した。勧告は、医師が労基法上の労働時間(週最大44時間)を大幅に超えて働く実態や、夜間勤務中の睡眠時間を確保していないなど適切な勤務体制を取っていないことに改善を求めた。

 99年に同センターの指定を受けた愛育病院は、センター機能を確保するため、夜間は2人体制で対応してきた。

 しかし労基署は「夜間も昼間同様の勤務実態がある」として、要員増の必要性を指摘。これに対して愛育病院は「夜間勤務が可能な常勤医師は5人しかおらず、労基署が求める体制は難しい。現在と同水準での夜間受け入れが継続できないので、センター指定の返上を決めた」と話す。

 都は「労基署は『こうしたらいい』と求めているのであって、センターの看板を下ろすほどではない。今後も協議を続けたい」と話している。

 愛育病院は恩賜財団母子愛育会が運営し、38年開業。皇室とのゆかりが深く、06年には秋篠宮妃紀子さまが長男悠仁さまを出産した。

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 ■解説

 ◇現場負担、放置のツケ

 愛育病院が、妊産婦や新生児にとって「最後のとりで」である総合周産期母子医療センター指定の返上を東京都に申し入れた問題は、安心な医療体制を維持しようとすれば労働基準法を守れない過酷な医師の勤務実態を浮き彫りにした。

 多くの産科施設では医師の夜間勤務を、労基法上は労働時間とみなさない「宿直」としている。宿直とは巡回などの軽い業務で、睡眠も取れる。だが実際の夜間勤務は、緊急の帝王切開手術をするなど日中の勤務と変わらない。厚生労働省は02年3月、こうした実態の改善を求める局長通達を出していた。

 しかし、全国周産期医療連絡協議会が08年、全国の同センターを対象に実施した調査では、97%が「宿直制」をとっていた。77%は夜間勤務明けの医師が翌日夜まで勤務し、翌日を「原則休日」としているのはわずか7%しかなかった。

 労基法を守ろうとすれば、医師を増やし、日勤-夜勤で交代する体制を実現するしかないが、産科医は減り続けている。06年末の厚労省の調査では、産婦人科医は1万1783人で、96年から約12%減っている。全国の同センターも、少ない医師でやりくりせざるをえないのが実情だ。愛育病院のような動きが広がれば、日本の周産期医療は崩壊の危機に直面する。

 産科の医療体制整備に詳しい海野信也・北里大教授は「医療現場は患者に迷惑をかけないように無理してきたが、労基署の勧告は『医療現場に過度の負担をかけるべきではない』との指摘だ。事態を放置してきた国の責任は重い」と批判する。【河内敏康、永山悦子】

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 ■ことば

 ◇総合周産期母子医療センター

 危険度の高い出産の「最後のとりで」として、未熟児や新生児、母体の救命を目的に設置された産科施設。母体・胎児集中治療室(MFICU)や、新生児集中治療室(NICU)を備え、複数の医師が24時間体制で患者を受け入れる。昨年8月現在、全国に75施設ある。

(毎日新聞、2009年3月26日)

****** 共同通信、2009年3月25日

「総合周産期」返上を打診  医師確保困難で愛育病院

 東京都から早産などハイリスクの妊産婦を24時間体制で受け入れる「総合周産期母子医療センター」に指定されている愛育病院(中林正雄院長)が、複数の医師による当直が困難なことなどから、都に指定の解除を打診したことが25日、都や病院への取材で分かった。

 愛育病院は必要な医師数が少なくて済む「地域周産期母子医療センター」への指定見直しを希望し24日、都に意向を伝えた。都は医療体制に大きな影響が出るため、病院側と協議している。

 愛育病院によると、15人の産科医のうち3人が子育てなどのため夜間勤務ができないという。

 今月中旬、三田労働基準監督署は労働基準法に基づく労使協定(三六協定)を結ばず、医師に長時間労働をさせていたとして、是正を勧告。これを受け病院側は「各医師に法定の労働時間を守らせると、医師2人による当直は難しい」(中林院長)と判断した。

(共同通信、2009年3月25日)


小諸厚生総合病院、4月以降の分娩の取扱いを休止

2009年03月23日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

年間450件程度の分娩を取り扱っていた小諸厚生総合病院が、突然、来月以降の分娩の取り扱いを中止し、分娩予約していた妊婦さん達を周辺の医療機関に紹介し始めたそうです。

近隣の浅間総合病院において、産婦人科の常勤医数が倍増して6人体制に強化され、この4月より分娩取り扱い数を増やす予定との報道が最近ありました。また、分娩取り扱いを休止していた県立須坂病院も、産婦人科の常勤医が4人の体制になり、この4月から分娩の取扱いを再開するとの報道が最近ありました。

これらの近隣の医療機関とも協力し、地域の力を結集して、何とかこの未曾有の危機を乗り越えていっていただきたいと願っています。

佐久市立浅間総合病院:産科医6人に増強 分娩予約も月60件超--4月から

産科復興に向けた長野県各地域の取り組み

**** 医療タイムス、長野、2009年3月26日

4月以降の分娩一時休止 

小諸厚生総合病院

 県厚生連 小諸厚生総合病院(小泉陽一 院長)は、2人いる産婦人科医のうち1人が今月中旬から病気療養しているのに伴い、4月以降の分娩予約について佐久市内の病院などへの紹介を進めている。残る医師1人では、従来通りの分娩数に対応できないための緊急措置。

 こうした事態を受けて、佐久保健所は東信地方の産科関係の医療機関を集めて26日に同院で会合を開き、今後の対応の協議や情報交換などを行う予定だ。

 同院によると、4~9月の分娩予約は18日現在で168件あり、小諸市民が56人を占める。このうち、紹介によって転院が決まっているのは71人。転院先では県厚生連 佐久総合病院の41件が最も多く、浅間総合病院の20件、上田市内の医療機関など7件、県厚生連 篠ノ井総合病院3件と続く。

 同院は分娩を早期に再開したい考えだが、病気療養中の医師の復帰は、早くて数ヶ月後。医師の確保は、現時点でめどが立っていない。

 当面、産婦人科外来で新患や紹介患者の受け入れを休止するほか、第2・第4土曜日も休診とする。

(医療タイムス、2009年3月26日)

****** 信濃毎日新聞、2009年3月19日

小諸厚生総合病院、医師入院で出産扱い見合わせ

 県厚生連小諸厚生総合病院(小諸市)が、4月以降入っていた分娩(ぶんべん)予約の大半を断り、近隣医療機関への紹介を進めていることが18日、分かった。産婦人科医2人のうち1人が病気入院するなどしたため。出産受け入れ継続に向け病院は態勢づくりを急いでいるが、医師確保のめどは立っていない。

 同病院によると、医師は手術のため11日に入院。早ければ5月に復帰するが、すぐには従来のような受け入れはできない。残る1人だけでは正常分娩しか扱えず、負担を考えると時期的にも4月いっぱいが限度という。

 同病院が年間に扱う出産は450件前後。4月以降は9月までに168件の予約がある。外来に訪れた妊婦には事情を説明し、別の医療機関を紹介。18日までに、71人が佐久市立国保浅間総合病院や県厚生連佐久総合病院(佐久市)、同篠ノ井総合病院(長野市)などへ転院が決まった。ほかの妊婦にも順次連絡を入れている。

 佐久総合の産婦人科医は常勤5人、非常勤2人。基本的に予約制限は設けず、高リスクの出産も扱うため、余裕のない状態が続く。浅間総合は4月から産婦人科医が6人に倍増。分娩予約枠を月10件増やし60件にする予定で、一定の受け皿になる見通しだ。

 6月に小諸厚生総合で出産予定だったが、浅間総合へ転院する小諸市内の女性(32)は「産科はどこもいっぱいに近い。産むところがなかったらどうしようと思った」。小諸市内の産婦人科医院で出産すると決めた同市の女性(23)は「万一、リスクを伴う出産になったら怖い」と話す。

 小諸厚生総合の小泉陽一院長は「お産の数を制限する形ででも、再開に向けてできる限り努力したい」と説明。小林良清・県佐久保健所長は「東信地方の医療機関とともに、どう協力態勢がとれるか検討したい」としている。

(信濃毎日新聞、2009年3月19日)

****** 毎日新聞、長野、2009年3月20日

小諸厚生総合病院:医師不足で来月以降の分娩中止

 小諸市の小諸厚生総合病院(小泉陽一院長)が4月以降の分(ぶん)娩(べん)を中止していることが19日分かった。産婦人科医1人が病気で入院し、受け入れ態勢が整わなくなったためで、近隣病院へ分娩を紹介している。

 同病院は、産婦人科医2人で年間約450件の出産を扱っているが、今月上旬、体調不良で60歳代の産科医が休診し、医師1人では対応が難しくなった。

 このため、来月から9月分までの分娩予約168件について、佐久市立浅間総合病院など近隣病院に紹介。約70人が転院している。

 同病院は「医師の復帰後も従来の態勢がとれるか分からないが、新たな産科医確保を含め、再開に向け努力したい」と説明している。【藤澤正和】

(毎日新聞、長野、2009年3月20日)

****** 小諸市オフィシャルサイト

小諸厚生総合病院の産婦人科医療について

平成21年3月18日現在の情報をお知らせします。

 現在、JA長野厚生連小諸厚生総合病院の産婦人科については、医師の体調不良により初回受診の方、紹介状をお持ちの方の受診をお断りしております。

 平成21年5月以降の出産については、予約をされている方についても、紹介状を発行し、他の医療機関で出産予約をするようにご案内しております。

 現在、予約をされている方で、JA長野厚生連佐久総合病院、JA長野厚生連篠ノ井総合病院での出産予約を希望される場合は、小諸厚生総合病院の紹介状を持参しての受入れについてお願いすることとしています。その他の医療機関での出産予約を希望される場合は、希望される医療機関とご相談ください。

 詳細につきましては 小諸厚生総合病院 産婦人科外来 に平日の午後、お問い合わせください。

-お問い合わせ-
保健福祉部 保健課 小諸市保健センター
(保健課保健予防係)

小諸市オフィシャルサイト


地方における医師不足対策

2009年03月18日 | 地域医療

コメント(私見):

地方における医師不足の問題を改善していくためには、『地域の中で若い医師が育ち、やがて巣立っていく。そして大学病院などで更なる研鑽を積んで大きく成長し、やがて指導医としてまた古巣に戻って来て後進の指導をしてくれる。』というような好循環を安定的に創り出すことを目指して、この問題に長期戦で取り組んでいくしかないと思います。

他の県で活躍中の医師が自県に移住して来てくれることを期待し、各県がそれぞれ知恵を絞っています。しかし、これは各県が類似策で張り合うことになってしまうので、入って来る人もいれば出て行く人もいて独り勝ちは難しく、やはり大きな限界があると思われます。

人生いろいろで、例えば、山が大好きで、家族をひき連れて、湘南から信州に移り住みたいと思うような人もいるかもしれませんし、逆に、海にあこがれて、信州から湘南に移り住みたいと思うような人もいるかもしれません。私自身は後者の部類で、生まれも育ちも山国ばかりだったので、一度は海の近くのリゾート地で暮してみたいというあこがれもあります。

長野県の場合、県のドクターバンク事業などで他県から37人ものベテラン医師の招聘に成功し、その中に産婦人科医が7人も含まれていたとのことですから、他の県と比べると医師確保対策は比較的うまくいっている方と言えるかもしれません。

最近も地元紙で、県立須坂病院に産婦人科医2名招聘とか、佐久市立浅間総合病院に産婦人科医3名招聘とか、自治体独自の医師確保対策により産婦人科医の他県からの招聘に成功したいくつかの事例が報道されてました。東北信(長野、上田、佐久など)は、長野新幹線で東京都内からの交通の便が非常に良いので、都内から移り住んで来る人も比較的多いのかもしれません。その点では、南信(諏訪、伊那、飯田など)は東北信と比べて非常に不利な地理的環境にあります。

****** 医療タイムス、長野、2009年3月12日

医師確保 就業先は東北信に集中

 県医師確保対策室は、県のドクターバンク事業と研究資金貸与事業で、11日現在、県内での就業につながっている医師37人について、就業先地域と診療科別の内訳を公表した。37人中28人の就業先が東北信に集まっており、本郷委員と向山公人委員(創志会)は、成果を地域間格差のない医師配置につなげるよう求めた。

 ドクターバンクによる医師確保数は、北信が最も多い12人。次いで東信10人、中信4人、南信1人の合計27人。研究資金の貸与では、東信4人(ドクターバンクと重複する2人を除く)、南信3人(同1人を除く)、北信2人(同1人を除く)、中信1人の合計10人で就業につながっている。診療科別では内科が9人、産婦人科7人、小児科と麻酔科がともに6人、外科5人、皮膚科・眼科・放射線科・形成外科がそれぞれ1人ずつ。

(以下略)

(医療タイムス、長野、2009年3月12日)

****** 中日新聞、長野、2009年3月16日

長野県、山岳誌に医師募集広告 「休みに登山できます」

【要約】 長野県は15日発売の山岳雑誌「山と渓谷」4月号に、県内で就業してくれる医師の募集広告を掲載した。発行元も、「こんな広告は初めて」と驚く奇策で、山好きな医師が集まるのを期待する。広告は、長野県の山並みの写真を背景に、「あなたを必要としています」と医師に呼び掛けるデザイン。掲載費は十数万円という。「仕事をしながら、休みの日に3000メートル級の山に日帰りで登れます」とアピールしている。

(中日新聞、長野、2009年3月16日)


臨床研修制度の見直しについて

2009年03月15日 | 医療全般

当院では定員を満たした場合、毎年8名の初期研修医(自前6名と大学病院とのたすき掛け2名)が採用されます。1年半の必修研修期間以外に、半年程度の自由選択の研修期間が設けられています。

当院の場合、産婦人科の必修研修期間は9週間と設定されています。今年度は、産婦人科研修をオプションで選択してくれた研修医が2名いましたので、ほぼ年間を通じて常に1~2名の初期研修医が産婦人科で研修してました。来年度も、2年目研修医は計8名の予定なので、ほぼ年間を通じて常に1~2名の初期研修医が産婦人科で研修してくれることになります。

初期研修医といっても、内科、外科、麻酔科、救急、小児科などを一通りローテートしているので、産婦人科に回ってくる頃にはすでにかなりの経験を積んで、非常に頼もしい存在になっています。特に産婦人科入局予定者の場合は、休日や夜間の緊急手術にも、本人の意思でどんどん積極的に参加してくれてます。

2年間の研修期間を終えると、みんな非常にたくましく立派に育っていて、それぞれ希望に胸をふくらませて巣立っていきます。今年度もあと2週間を余すのみとなり、巣立ちの時がだんだん近づいてきました。

現行の臨床研修制度への世間の批判が多いことは承知してますが、研修医自身の現行制度に対する満足度は比較的高いと思われます。今回の臨床研修制度の見直しで、地方の医師不足の問題が解消されるとも思えません。むしろ現行制度の方がいいような気がしています。我々末端の者達には、一体全体、今後どう対応していったらいいのやら、さっぱり見当もつきません。

今回の制度見直しによって、地方の医療現場はむしろ相当混乱する可能性もあります。臨床研修制度を有意義なものにする問題と、地方の医師不足を解消する問題とは、全く切り離して考えるべきだと思います。

臨床研修制度の見直し最終案骨子

新卒医師研修、実質1年に 厚労・文科両省が短縮案

医師の計画配置と公共の福祉

医師のキャリアパスを考える医学生の会
http://students.umin.jp/index.html

臨床研修制度改定における計画配置について

         声明文

                  平成21年2月27日

 昨年9月に設置された森喜朗元総理の自由民主党「医師臨床研修制度を考える会」の提言内容どおり、2月18日に最終回を迎えた「臨床研修制度のあり方等に関する検討会」に続き、2月26日の医道審議会医師分科会医師臨床研修部会より公表された新臨床研修制度検討にあたってのたたき台の中に、「研修医の地域的な適正配置を誘導するため、人口分布を始め医師養成規模・地理的条件等を考慮した都道府県別、病院別の募集定員の上限を設定する。」というものがあった。これは教育体制の整わない病院にも未熟な医師を強制的に配置し、国民が将来享受する医療の質の低下を招くものであり、「医師のキャリアパスを考える医学生の会」は、絶対にこれを容認できない。

 そもそも医師不足問題と医師の教育は切り離して扱うものであり、臨床研修の目的が「医師としての人格の涵養」、「基本的な診療能力の獲得」であることを見失ってはならない。膨大な医学知識・技術が日々生まれる現在、地域医療の支えとして望まれているのは研修医ではなく、臨床経験豊富な熟練の医師であるのだから、研修医がよい教育を受けることこそ、日本の将来の医療を担う優秀な医師を育てるために必要である。

「研修医はお金をもらって働いている医者なのだから医師偏在問題に貢献すべきだ」(杉野剛医事課長)と、研修医を単純に労働力としてのみ考えている風潮もあるが、卒後数年間にきちんとした指導医のもと充実した教育を受け経験を積むことが、将来優秀な医師となる上で大変重要であるということは、疑う余地が無い。現在の制度下で、公開されている情報を基に医学生が教育環境の整っていると考える病院を選んだ結果、都会・地方にかかわらず教育に力を入れている病院に研修医が集まったのであり、それに国が介入することは、研修医からよい教育を受ける機会を奪うものである。

 「医師のキャリアパスを考える医学生の会」は、都道府県別募集定員の上限設定と病院別募集定員の設定の撤回を要望する。

医師のキャリアパスを考える医学生の会
http://students.umin.jp/index.html


帝王切開:周産期センター「30分で手術可能」3割

2009年03月08日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

産科診療において、帝王切開の決定から30分以内に実施しなければならない「緊急帝王切開」は日常茶飯事です。しかし、産婦人科医、小児科医、麻酔科医、手術室看護師などが院内に不在で、スタッフを自宅から呼び出さねばならないような場合だと、「帝王切開の方針決定から児娩出までに30分以内」を常に達成することは不可能です。当院でも、平日の日勤帯(昼間)ならば、「必要とあらば30分以内に帝王切開を実施する」のが努力目標となってますが、平日の時間外や休日では、「方針決定から30分以内で児娩出」を常に達成するのは不可能です。

ところが現実には、「緊急帝王切開」の中でも特に緊急性の高い「超緊急帝王切開」も時にあり得ます。「超緊急帝王切開」とは、方針決定後、他の要件を一切考慮することなく、全身麻酔下で直ちに手術を開始し、一刻も早い児の娩出をはかる帝王切開術です。

当院では、産科担当医が「超緊急帝王切開」が必要と判断した場合は、方針決定と同時に、直ちに患者さんを手術室に搬送し、全館放送の緊急呼出しで、院内にいる産婦人科医、小児科医、麻酔科医および手術室勤務の経験があるスタッフを直ちに手術室に召集し、できる限り早く手術を開始する手順が一応決まっています。

当院の場合、例年だと「超緊急帝王切開」はせいぜい年に2~3例程度ですが、今年は年初の2ヶ月間だけで、「超緊急帝王切開」扱いになった症例がすでに2例も発生しました。たまたま運よく2例とも、複数の産婦人科医、小児科医、麻酔科医が院内にいる時間帯で、大勢のスタッフが直ちに手術室に結集し、方針決定から児娩出までおおむね15分以内でした。

「超緊急帝王切開」の症例(臍帯脱出、子宮破裂など)では、帝王切開の方針決定から児娩出までに30分もかかっているようでは完全に手遅れになってしまう場合もあり得ます。「超緊急帝王切開」例で、方針決定から児娩出までに要する時間の主な決定因子は、『産科病棟から手術室へ患者さんを移送するのに要する時間』です。したがって、将来的には、「分娩室で全身麻酔下の帝王切開を実施できるようにすること」、あるいは、「産科病棟と手術室とを隣接させること」などを検討する必要があるのかもしれません。

****** 毎日新聞、2009年3月5日

帝王切開:周産期センター「30分で手術可能」3割

 全国の周産期母子医療センターの約3分の2が、国の整備指針に反して「(必要と診断されてから)30分以内の帝王切開手術」に対応できない場合があることが、厚生労働省研究班(主任研究者、池田智明・国立循環器病センター周産期科部長)の調査で分かった。産科医よりも麻酔科医の不足がネックになっており、厚労省が年度内に見直すセンターの指定基準に麻酔科医の定員を明記するよう求める声が出ている。

 調査は昨年3月、全国の総合周産期センターと地域周産期センターに行い、130施設の回答を調べた。

 国の指針では、地域センターは30分以内に帝王切開ができる人員配置、総合センターにはそれ以上の対応を求めている。だが「いつでも対応可能」と回答したのは総合センターの47%、地域センターの28%にとどまり、48%は「昼間なら対応可能」、17%は「ほぼ不可能」と答えた。

 対応が遅れる最大の理由は「手術室の確保」(43%)だったが、人的要因のトップは「麻酔科医不足」(25%)で、「産科医不足」(17%)、「看護師不足」(14%)より多かった。54%の施設は当直の麻酔科医がおらず、緊急の帝王切開では執刀の産科医が麻酔もかけているセンターが16%あった。

 麻酔科は産科、外科などと並び医師不足が深刻とされるが、帝王切開で通常かける麻酔の診療報酬が全身麻酔の場合より著しく低いため、特に周産期医療の現場に集まりにくいとの指摘がある。

(以下略)

(毎日新聞、2009年3月5日)


飯田市立病院 分娩受け入れ制限を一部解除

2009年03月06日 | 飯田下伊那地域の産科問題

コメント(私見):

絶滅の危機に瀕している地域周産期医療の崩壊を防ぐためには、さまざまな対策を同時並行的かつ強力に推進していく必要があります。

まずは、現役の産婦人科医の離職を防ぎ、病診連携を進めて地域の産婦人科の先生方との協力体制を強化し、新生児科医や麻酔科医との連携を密にすることが基本です。医療現場で、助産師や臨床検査技師などの活躍の場を広げることも重要だと思います。

それらの短期的な対策とともに、中長期的な対策としては、産婦人科を志す若い医師を大幅に増やして、彼らをしっかりと教育し、将来の産婦人科医を増やしていくことが非常に重要です。

今年も、昨年に引き続き当院の初期臨床研修医(たすき掛けを含む)の中から2名が地元大学の産婦人科に入局してくれて、大変うれしく思ってます。噂では、同期の産婦人科入局予定者が十人近くいると聞いてます。

また、当科の後期臨床研修医募集に応募してくれて採用が決定した若い医師もいます。若い仲間が増えてくれたら、我々ロートルもがぜんヤル気が湧いてきます。彼らと一緒に、楽しく頑張っていきたいと思っています。

****** 中日新聞、長野、2009年3月6日

飯田市立病院が産科常勤医を1人増

 飯田市は5日、同市立病院の4月以降の診療体制を発表した。産婦人科の常勤医が1人増えて5人体制となり、飯田下伊那地域在住者と里帰り出産をおおむね月90件を限度に受け入れる。

 昨年4月から月70件程度を目安に出産を受け入れていたが、昨年12月は103件など、実際には月平均80件ほどの実績があった。

 新しく着任するのは、静岡県の病院に勤務する30代前半の後期研修医で、インターネット上で募集を知ったという。

(以下略)

(中日新聞、長野、2009年3月6日)


日立製作所日立総合病院(日製病院)、地域周産期母子医療センターを休止

2009年03月04日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

日立製作所日立総合病院(日製病院)・産婦人科の常勤医が若手1人だけとなってしまうため、来月から地域周産期母子医療センターを休止することが公表されました。これにともない、新生児科医も順次引き揚げられるとのことです。

院内助産所の開設も検討されましたが、産婦人科医の常勤医が1人だけでは対応が難しいということで、結局は院内助産所の開設を断念したようです。

さらに、この地域の産科1次施設(診療所、助産所など)での分娩取り扱いの維持が、今後だんだん厳しくなっていくことも危惧されます。

日立製作所日立総合病院:産科医1人が残留 分娩を継続へ (毎日新聞)

医師確保険しく 来春産科医0の日製病院

日立総合病院 分娩予約一時中止

****** 朝日新聞、茨城、2009年3月3日

日製病院、周産期センターを休止

 日立製作所日立総合病院は4月以降の当分の間、周産期センターを休止すると2日発表した。産婦人科医4人を派遣している東京大が今月末で3人を引き揚げ、産婦人科医が1人になるためだ。また、新生児科でも、医師3人を派遣している筑波大が5月末までに全員を別の病院に移すため、日製病院のNICU(新生児集中治療室)の機能は事実上停止する。

 医師確保のめどがたたないとして、昨年8月に踏み切った新規分娩の受け付け中止は続ける。医師が確保でき次第、開設する予定だった正常分娩対応の院内助産所は先送りされた。

 懸念される県北での産婦人科や新生児科の救急対応については、水戸済生会と県立こども病院が引き受ける。すでに両病院は「限界」に近い患者を引き受けており、負担はさらに重くなりそうだ。

 県北地域にいる産婦人科医がリスクの高い分娩に迫られた場合は、経験のある小児科医がNICUに対応するとしている。このため、同病院は小児救急について「早めに診療時間内に受診、休日の時間外診療は休日救急診療所を利用してほしい。日製病院を時間外受診する際は事前に電話で問い合わせてほしい」と異例の要望を公表した。

(朝日新聞、茨城、2009年3月3日)

****** 読売新聞、茨城、2009年3月3日

日製病院産科施設を提供

来月以降 緊急手術などに対応

 産科医の確保が難航し、「地域周産期母子医療センター」の機能を4月以降、当分の間休止する日立製作所日立総合病院は2日、県北地域のハイリスク出産に対応するため、日製病院の産科医療施設を近隣の産科病院医師などに提供することを決めた。

 容体が急変した場合は、日製病院で近隣病院の医師が緊急手術などを出来るようにするほか、手術には、日製病院の外科や内科、麻酔科の医師も携わる。日製病院は4月以降、産科医が1人残ることから、正常分娩(ぶんべん)を扱う院内助産所の設置も検討してきたが、「何かあれば1人の医師では対応できない」と見送った。病院に残る1人は、婦人科で外来診療などにあたる。

 一方、早産などのリスクの高い出産に連動する新生児集中治療室(NICU)の機能は維持される。5月末までに日製病院を離れる新生児科の医師全3人に代わり、日製病院と北茨城市立総合病院を合わせて5人の小児科医で対応する。

 4月からは、北茨城市立病院の小児科外来を継続しつつ、時間外の小児科救急と入院診療は日製病院に集約するという。北茨城市立病院の小児科医1人は日製病院に異動する。

(読売新聞、茨城、2009年3月3日)

****** 毎日新聞、茨城、2009年3月3日

日立製作所日立総合病院:周産期センター休止へ 分娩予約中止も継続

 日立市の日立製作所日立総合病院(日製病院)は2日、医師確保の見通しが立たないとして、妊婦の救急搬送を24時間受け入れる「地域周産期母子医療センター」の機能を4月から休止すると発表した。昨年夏からの分娩(ぶんべん)予約中止も継続する。これらを受け、小児科の新生児担当医3人が5月までに全員病院を離れることも決まり、県北地域の新生児医はゼロになる。県は水戸地区の周産期医療体制を強化し、県北地区からの救急搬送の受け入れ対応にあたる。

 07年の日製病院の分娩数は1212件で、県内で最も多かった。センター休止の直接の原因は、新年度の人事で常勤産科医が確保できなかったためだ。今年度初めに6人いた常勤産科医は、派遣元の大学病院の意向で4月から若手1人になる。

 病院によると、センターに付属し、リスクの高い新生児を集中的に治療する新生児集中治療室(NICU)は可能な限り活用する。正常分娩が見込まれ、県北の医療機関にかかる妊婦の容体が急変した場合などは、かかりつけ医が日製病院のスタッフと共に同病院で緊急手術などを行うという。この場合、従来は新生児医が行っていた業務は残りの小児科医が対応する。病院側は年間30件程度の妊婦搬送を想定しているというが、地域の医療機関との連携に課題が残る。

 日製病院は、県や市と共に引き続き医師確保に努める。新たな常勤産科医が確保でき次第、院内の助産師を活用して「院内助産所」を開設し、分娩を再開する予定で「速やかに周産期センターの再開を図りたい」とするが、状況は容易ではなさそうだ。

 日立市の樫村千秋市長は「4月の産科診療の再開に向け、医師確保に努力してきたが、このような結果になり残念。日製病院で安心して子どもが産めるようになることを期待して、引き続き医師確保に努力していきたい」とコメントした。【八田浩輔、臼井真】

(毎日新聞、茨城、2009年3月3日)

****** 東京新聞、茨城、2009年3月3日

周産期センター休止へ 日立総合病院 来月から危険な出産、県央へ搬送

 日立製作所日立総合病院(日立市・岡裕爾院長)は二日、常勤産科医の引き揚げに伴い、出産から新生児医療までを担う周産期センターを四月から当面、休止すると発表した。危険性の高い異常分娩(ぶんべん)だけでなく、正常分娩も原則受け入れを中止する。医師確保のめどは立っておらず、県北地域の危険なお産などは水戸市の病院などに救急搬送されることになる。【伊東浩一】

 日立病院は県保健医療計画で比較的高度な出産、新生児医療を受け持つ県北地域の「地域周産期母子医療センター」に位置付けられている。現在、常勤医が産科に四人、新生児科に三人おり、新生児集中治療室を備える。二〇〇七年には異常分娩から通常分娩まで千二百十二件を取り扱った。

 しかし、派遣元の東京大医学部が三月末で産科の常勤医三人を引き揚げることになり、残る一人では対応ができないため四月以降、一切の分娩を休止することを決めた。

 これに伴い、新生児科も不要となり、常勤医を派遣していた筑波大医学部は三月末で同科の常勤医二人、五月末で一人の引き揚げを決めた。

 このため、県は県北、県央を一つの周産期医療圏と位置付け、危険性の高いお産などを水戸済生会総合病院(水戸市)と県立子ども病院(同)などで受け持つとしている。

(東京新聞、茨城、2009年3月3日)


上田市産院の移転改築推進へ準備室

2009年03月03日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

上田市を中心とした「上小医療圏」(人口:約22万人、分娩件数:約1800件)では、国立病院機構長野病院の産婦人科が地域の産科2次施設としての役割を担ってきましたが、2007年11月に派遣元の昭和大学より常勤医4人全員を引き揚げる方針が病院側に示され、新規の分娩予約の受け付けを休止しました。

現在、同医療圏内で分娩に対応している医療機関は、上田市産院、上田原レディース&マタニティークリニック、角田産婦人科内科医院の3つの産科1次施設のみです。ハイリスク妊娠や異常分娩は、信州大付属病院(松本市)、県立こども病院(安曇野市)、佐久総合病院(佐久市)、長野赤十字病院(長野市)、篠ノ井総合病院(長野市)などに紹介されます。分娩経過中に母児が急変したような場合は、救急車で医療圏外の高次施設に母体搬送されています。

産科2次施設が存在しない地域では、産科1次施設での分娩の取り扱いの継続が困難となりますので、上田市は、上小医療圏に産科2次医療が提供されるように最大限の努力をする必要があります。

今この地域で最も必要とされているものは何なのか?をもう一度よく検討し、医療圏全体で一体となって、地域の周産期医療提供体制を再構築するための第一歩を踏み出していく必要があると思われます。

****** 医療タイムス、長野、2009年3月3日

産院の移転改築推進へ準備室 上田市

 上田市は、移転改築方針を打ち出している上田市産院について、2009年度、政策企画局内に「建設準備室」を設け、移転改築事業を推進する。2日の市議会一般質問で、母袋創一市長が表明した。

 市産院は築後40年以上が経過し、老朽化が著しい。市はすでに、移転改築に関する庁内の連絡調整会を立ち上げ、具体的な計画の策定などに取り組んでいる。

 母袋市長は、市産院移転改築に特化した組織の必要性に言及し、「安心して子どもを産み育てる環境整備をすることが、私に課せられた責務。赤ちゃんとお母さんに優しい、安心してお産のできる病院確立に取り組む」と話した。

 また、移転改築に向け「最重要課題」と位置付ける医師の確保については、複数の医師と交渉を進めていると明かす一方、「医師の確保やその道筋をつけることは、極めて困難」との認識を示した。市産院は現在、常勤医1人、非常勤医2人の体制だが、このうち非常勤医1人は大学医局に戻る意向を示しているという。

参考記事:

佐久市立浅間総合病院:産科医6人に増強 分娩予約も月60件超--4月から

産科復興に向けた長野県各地域の取り組み

長野病院の周産期医療回復へ支援制度

長野病院 出産受け付け休止から1年 (信濃毎日新聞)

上田市周辺の周産期医療体制について

東御市民病院が婦人科外来を開設

長野病院 来年3月末で産科医不在に

長野病院の全産科医派遣の昭和大、引き揚げ方針

産科医療 崩壊の危機

迫る限界 お産の現場

産科医療に関する新聞記事

「バースセンター」構想 上田の母親ら「集い」発足 (信濃毎日新聞)

東信地域の厳しい産科医療の状況について

上田でお産の課題話し合う (南信州新聞)

読売新聞: 現実にらみ 産院存続運動

南信州新聞社:「院内助産院」勧める意見も

医療タイムス社:上田市産院・廣瀬副院長 産科の集約化を非難

公的病院での分娩再開を求める運動について

読売新聞: 深刻な産科医不足 集約化加速