コメント(私見):
どの産科施設でも、その施設のスタッフと設備の規模に応じて、自ずと患者受け入れ数の限界が存在します。施設の許容量を超えて無制限に患者を受け入れてしまえば、安全な医療ができなくなってしまいます。分娩の予約数が受け入れ限界に達した場合、その月の予約はそれ以上に増やすことはできませんから、分娩予約の受け付けは一定数で中止せざるを得ません。
スタッフが激務に耐えかねてどんどん辞めてしまうような事態となれば、その施設の産科部門は閉鎖せざるを得ません。いったん閉鎖されてしまった産科施設を、また一から立ち上げて業務の再開までこぎつけるのは至難の業だと思います。
ですから、施設の限界以上に業務量が増え過ぎないように、常に最大限の配慮をしていく必要があります。
もしも、今後、『飛び込み出産』がどんどん増えていき、どの医療機関もその受け入れを拒否できないということになれば、それだけで地域における産科崩壊の大きな要因となり得ます。
****** 東京新聞、2007年10月7日
『飛び込み出産』増加 死産など高リスク 搬送拒否要因にも
妊婦健診を受けないまま、突然病院を訪れて出産する「飛び込み出産」が増えている。神奈川県で昨年は二〇〇三年に比べ倍増、東京都内でも増加傾向だ。八月に奈良県で救急搬送を拒否され救急車内で死産した妊婦も同様のケースだった。背景には、産科医不足や健診費の負担感があるとみられる。出産費を踏み倒すケースもあるという。こうした出産は死産などリスクが高まることから医療機関は敬遠しがちで、救急搬送先がみつからない「たらい回し」に拍車をかける要因にもなっているようだ。
神奈川県産科婦人科医会の集計によると、妊婦健診を受けないまま、同県内の基幹病院(八施設)に飛び込んで出産した件数は、〇三年は二十件だったが、昨年は四十四件と倍増した。今年は四月までに三十五件と百件を突破する勢いだ。若年層や外国人、経産婦に多く、約半数が救急車で搬送されたという。
日本医科大学多摩永山病院(東京都多摩市)の集計でも一九九七-二〇〇一年には十六件だったが、〇二-〇六年には二十三件と増加傾向で、今年も五月までに二件の飛び込み出産があった。
集計した四十一件の妊婦のうち二十九歳以下が約六割を占めた。経産婦が二十六件と六割を超え、うち四件は前回の出産時にも受診していなかった。十一件で入院費が支払われず、四件で子どもを置き去りにした。
受診しなかった理由は多い順に▽経済的問題▽妊娠に気づかなかった▽家庭の事情▽放置した▽不安だった-など。
飛び込みだと、妊娠週数や合併症などの妊娠状況がわからず、適切な医療行為ができない懸念もあり、早産や死産のリスクも高くなる。
こうした出産が増える背景について、横浜市立大学医学部の平原史樹教授(産婦人科)は「産科医不足で身近な健診施設や産める施設が減ったため」と分析、「健診費(一回五千円程度から)の負担も大きいようだ」と話す。出産後に入院費を支払わないケースも「珍しくない」という。医療機関側は、高リスク出産による訴訟リスクを回避するため、飛び込み出産を断る施設も出ている。
<メモ>妊婦健診 妊娠6カ月まで月に1度、その後2週間に1度、妊娠10カ月以降は1週間に1度のペースで受ける。費用は自己負担で1回当たり5000円程度だが、血液検査などを行うと1万円以上になる場合もある。国は本年度から5回分を公費で負担するよう、自治体に通知を出している。
(東京新聞、2007年10月7日)
****** 東奥日報、2007年10月7日
県病の未受診緊急分娩死亡率23%
医療機関を未受診のまま出産間近に医療機関に駆け込む、いわゆる“飛び込み分娩(ぶんべん)”が、県立中央病院(青森市)では過去五年半で二十六例あり、そのうち約23%(六例)の赤ちゃんが死亡していたことが同病院の調べで分かった。未受診妊婦から生まれた赤ちゃんは通常より体重が軽く、リスクが高い傾向があり、同病院は「かかりつけ医をもって、健診を受けるようにしてほしい」と訴えている。
同病院によると、未受診妊婦は増える傾向があり、〇六年度は七例あった。本年度はすでに五例あるという。
今年十月までの過去五年半の未受診二十六例のうち約半数が早産。
体重別では約半数が二〇〇〇グラム以下で、約三割が一〇〇〇グラム以下の「超低出生体重児」と、赤ちゃんが小さい傾向が明らかになった。
死亡率は23%で、通常よりも約二百倍のリスクがあった。
未受診妊婦の年齢や結婚経験を調べると、二十代後半の未婚者、三十五歳以上の未婚・既婚者が多かった。さらに三十五歳以上の未受診妊婦の多くが前回の妊娠でも「受診なし」だった。
(東奥日報、2007年10月7日)
****** 中日新聞、2007年10月5日
静岡県内の「飛び込み出産」 昨年は61人 04年から3年間で受け入れ拒否は62件
妊娠中に医療機関で一度も受診しないまま、救急車で搬送されて出産する「飛び込み出産」が、静岡県内で2006年に61人いたことが、県厚生部の調べで分かった。医療機関から受け入れを拒否されたケースは、04年からの3年間で62件あった。
かかりつけ医がいないと出産リスクが大幅に高まるため、医療機関が受け入れをためらう傾向があり、県こども家庭室は「母子の命を守るため、妊娠段階で受診してほしい」と話している。
奈良県で8月、妊婦が救急車で搬送中に医療機関からの受け入れを拒否され死産した問題を受け、静岡県は産科のある県内30病院に対し実態調査を実施、23病院が回答した。
その結果、61人が産科病院や診療所、助産所で一度も受診せず、出産が迫って救急車で搬送され、出産していた。
妊婦の健診は健康保険の適用外で、原則として全額が自己負担となるため、経済的理由から受診しない例もあるとみられる。
現在、県内の各市町は2回の無料健診を実施しており、国は08年度から最低5回に増やす方針を示している。
県は「未受診の場合、受診した妊婦に比べ、死産や出生直後の新生児の死亡が約25倍になるとの研究結果がある。危険性を広く周知していきたい」と話した。
一方、県消防室が県内の27消防本部を対象に実施した調査によると、04-06年で妊婦の救急搬送は2636件。うち62件が医療機関から1回以上受け入れを拒否されていた。理由は産科医の不在や多忙、ベッドが満床など。搬送中に容体が悪化したケースはなかった。
菊川市消防本部では06年に20代女性を搬送中、菊川市と周辺の4病院から延べ7回の受け入れ拒否や、回答保留を受けたケースがあった。市消防本部は「菊川市のような小さな市には総合病院が一つしかなく、かかりつけ医に受診していないと救急で受け入れてもらえないのが現状。病院との連携システムを確立していく必要がある」と話した。
県は今後、医療機関と救急との連携強化を目指し、担当者レベルの協議を重ねる方針。
(中日新聞、2007年10月5日)
****** 読売新聞、2007年9月18日
急増する「飛び込み出産」
妊婦健診受けず、受け入れ拒否の一因に
陣痛や腹痛を覚えて初めて救急車を呼んで医療機関に駆け込み、いわゆる「飛び込み」で出産する事例が増えている。
その多くが、妊婦健診を一度も受けたことのない「未受診妊婦」という。各地で救急搬送中の未受診妊婦が受け入れを拒否されるケースが相次いでおり、専門家は「赤ちゃんと自分の健康のためにも、妊婦健診を受けて」と呼びかけている。
医師不足が影響
「今年になってすさまじい増え方です」。横浜市大付属病院産婦人科教授の平原史樹医師は、「飛び込み出産」がこのところ急増していると指摘する。
神奈川県産科婦人科医会がこのほどまとめた調査によると、同県内8か所の基幹病院で扱った飛び込み出産は、2003年に20件だったのが04年28件、05年39件、06年44件と年々増加。今年は4月までで既に30件を超えており、年末には100件を超えると推計している。平原医師によると、飛び込み出産のほとんどが未受診妊婦だという。「産科病院や分娩(ぶんべん)施設が減り、医師不足のため健診を受ける機会も減っているため」と分析する。
未受診妊婦は救急搬送されても妊婦・胎児の健康状態が把握しにくいため、受け入れを拒否されることが多い。8月末に奈良県で妊娠中の女性が病院に受け入れを断られ死産した事例では、かかりつけ医がいなかったことがわかっている。その後、北海道、宮城、千葉などでもかかりつけ医のいない妊婦の受け入れ拒否のケースが明らかになっている。
9月7日、日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会の幹部が厚生労働省を訪れ、産科救急医療体制の整備や産婦人科医師不足への対策を舛添要一厚生労働大臣に陳情した。陳情書では未受診妊婦についても言及し、救急医療での対応を検討する必要がある、と指摘している。
同学会の産婦人科医療提供体制検討委員会の委員長で北里大医学部教授の海野信也医師は「未受診妊婦の『飛び込み出産』は全国的に増えている。産科医療の現場では非常に困惑している」と指摘する。
日本助産師会専務理事の加藤尚美さんによると、飛び込み出産につながる未受診妊婦は以前は出産を経験したことのある女性に多かったが、最近は〈1〉若年妊婦〈2〉外国人女性〈3〉経済困窮家庭――などに多い傾向があるという。「自分自身の健康へ関心が低いのも特徴」と指摘する。
「命にかかわる」
加藤さんは「健診を受けないことはお母さんの健康を損い、赤ちゃんの命にかかわる恐れがある。健診は必ず受けてほしい」と話す。そして「未受診妊婦を減らすためには、無料健診をさらに拡充するほか、若いころからの健康教育を充実させる必要があるでしょう」と話している。
妊婦健診 流産や早産などを予防するため、妊娠週数に応じて問診や内診、胎児の超音波検査などを行う。出産までに13~15回受け、費用は自己負担で1回約5000円、血液検査や超音波検査を行うと1万~1万5000円かかる場合もある。国は原則2回分の健診費用を負担しているが、独自に負担軽減に取り組む自治体もある。
(読売新聞、2007年9月18日)
****** 読売新聞、2007年9月12日
教育と経済的支援を…大阪・愛染橋病院 村田雄二院長
月間約150件。大阪市浪速区の愛染橋病院は、西日本では有数の“お産病院”。約100件は通常の手続きでのお産で、残りは高度な治療が必要なために緊急搬送されて来たリスクの高いお産が中心だ。この中には医療関係者が「飛び込み出産」と呼ぶ、未受診のまま救急車などで運び込まれるケースも含まれている。
同病院によると、飛び込み出産(死産も含む)は2003年38件、04年21件、05年16件、06年10件で、今年は7月までに6件あった。また、妊娠後期で初めて健診に来る妊婦もいる。未受診の理由としては、経済的な問題や家庭の事情を挙げる人が多く、経産婦の占める割合が高い。
村田雄二院長は「飛び込み出産は珍しくない。いつ何が起きるかわからない妊娠で、健診を受けないことが、どれほど危険かということを考えてほしい」と訴える。
それでは、なぜ医療機関での健診が必要なのか。
医療機関で受診しないと、まず妊娠週数がわからない。その後の健診で、妊娠初期には子宮の中に妊娠しているか、胎児が発育しているかを調べ、中期には胎児に異常がないかを確認、後期には妊婦に感染症がないか、胎児の下がり具合などを診る。未受診だと、こうした情報が一切わからず、場合によっては急きょ、帝王切開になり、小児科医が必要になることもある。
「それぞれの健診には意味がある。異常があれば治療し、予防にもつなげる。健診を受けないと、妊婦と赤ちゃんへのリスクは一挙に高まる」と村田院長は指摘する。
同病院の医師は9人。医師不足を理由に、周辺で産科が相次いで閉鎖したため妊婦が集中し、さらに周産期医療の基幹病院としてリスクの高い妊婦を受け入れている。飛び込み出産は、激務の医師に一層の負担を強いる結果となる。
村田院長は「健診は必ず受けるという教育と、健診費用の補助など、行政の経済的支援が必要だ。医療は進歩しているが、『出産イコール安全』という考え方は大きな間違い。妊婦は、おなかの赤ちゃんと、自分の体を大切にしてほしい」と呼び掛けている。
広がる負担軽減策
母子保健法によると、妊娠が判明したら「速やかに」市区町村に妊娠届を出し、市区町村は母子手帳を交付する。医療機関で定期健診や指導を受けた時は、そのつど母子手帳に内容の記載を受けなければならない、と定めている。
同法は健診回数や内容にまで触れていないが、厚労省の通知(1996年)では「望ましい」とされる健診回数は、妊娠初期~6か月末は4週間に1回、7~9か月は2週間に1回、臨月には1週間ごと。しかし、実際は妊娠の経過によってさらに増えることも多い。
妊娠・出産は病気ではないので健康保険が使えず、健診は自費診療となる。基本的には医療機関が独自に価格を定める。おおむね1回5000円前後で、内容や医療機関によっては数万円になることもあるという。
経済的な理由で受診できない人が出ないよう、国は今年度中をめどに原則2回だった公費負担による無料健診を5回に増やすことに決めた。
自治体レベルで負担軽減の取り組みも始まっている。福島市は昨年度から、年間1億6800万円の予算で、県外健診を含め最多15回の公費負担を始めた。週数に応じて15回分の健診受診票を母子手帳交付時に渡し、妊婦が受診したら1枚ずつ医療機関に提出する仕組み。県外で出産した時は後日、申請する。
同市健康推進課の担当者は「経済的な支援になるほか、妊婦が健診について理解し、子どもへの愛着や関心を高めることにも役立つ」と話した。
国が進める集約・重点化 7都県でモデル事業
産科医師不足を解消する手段の一つとして、国が進めているのは地域の拠点となる病院に医師を集めてリスクの高い出産を扱い、その他の病院でリスクの低い出産を扱うという「集約化・重点化」だ。
その一環として、健診は診療所などで行い、出産する際は診療所の医師が連携する病院に出向いて立ち会う「オープンシステム」や、出産は病院だけに任せる「セミオープンシステム」をそれぞれ取り入れる病院が出てきた。ともに妊婦が医療機関で定期的に健診を受け、出産する際のリスクを医療機関が把握することで成り立つシステムであり、国は三重、岡山など7都県でモデル事業を進めている。
(読売新聞、2007年9月12日)
****** 朝日新聞、2007年8月26日
悩まし「飛び込み出産」 費用踏み倒しも
妊娠してから一度も検診にかからず、陣痛が来てはじめて救急車をよんで病院に運ばれてくる――。産科医のあいだで「飛び込み出産」とよばれる事例が、最近、基幹病院で増えている。胎児の情報が少ないうえ、中には出産費用を踏み倒す妊婦もおり問題も多く、基幹病院も頭を悩ませている。県産科婦人科医会も実態把握のため調査に乗り出した。【大貫聡子】
横浜市南区の横浜市大センター病院で05年に受け入れた飛び込み出産は7件だったが、06年は一挙に16件に増えた。
「以前は年に数件だったが、最近は月に数件のペースでやってくる。基幹病院の産科医は本来だったらリスクの高い妊婦を診なければならないのに、飛び込み出産は大きな負担だ」と横浜市大センター病院の高橋恒男医師。
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一番多いのは陣痛がきておなかが痛くなり、119番通報するケース。中には「破水してしまった」といって深夜に病院の守衛室にあらわれた妊婦もいたという。
横浜市南区の県立こども医療センターでも、昨年まで年数件ほどだった飛び込み出産が、今年は7月段階ですでに11件に上っている。
山中美智子医師は「基幹病院でなくても診ることができるのに、最近は産科医が減っているためか、飛び込み出産を断る町中の病院が多い。救急隊が、何軒電話しても断られたと困り果て、基幹病院に連絡してくる」と話す。
多くの医師が飛び込み出産を敬遠するのは、身体的、精神的な負担が大きいからという。山中医師は「赤ちゃんが逆子なのか、どれぐらいの大きさか、どんな感染症をもっているのかも分からない。ふつうなら検診を通して時間をかけて把握すべきことを大急ぎで判断するしかない」と、現場の苦労を語る。
超音波診断でおおよその赤ちゃんの大きさは把握するが、自然分娩(ぶんべん)ができない場合は、急きょ帝王切開などの手術になることもある。
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病院にとっては経済的なリスクも高い。県立こども医療センターによると、1~4月に来た飛び込み出産の妊婦8人のうち、出産費用を払ったのはわずか2人しかいなかった。なかには生まれた赤ちゃんをおいていってしまった女性もいたという。
「出産の予約をとろうと思って何軒も病院に電話をしたが見つからなかった」「妊娠に気づかなかった」「第1子も飛び込みで産んだので」という妊婦もいたという。
県内の市町村は、出産費用を払うのが経済的に難しい人のために児童福祉法に基づき、「助産制度」を設けている。提携した病院で出産すれば自治体が出産費用を支払ってくれる制度だ。しかし飛び込み出産の場合は支払いの対象にならないことが多い。妊婦が費用を踏み倒せば、そのまま全額が病院の負担になってしまう。
しかも医師法により費用未払いを理由に診療を断ることはできない。
以前は不法滞在の外国人や、10代で妊娠したため親に相談できなかったなど、病院に通えない事情のある妊婦が多かったが、最近はほとんどが成人した日本人という。
こうした状況を受け、県産科婦人科医会も県内八つの基幹病院で飛び込み出産の実態調査に乗り出した。医会副会長で横浜市大付属病院産婦人科教授の平原史樹医師は「どこが飛び込みを診るのか、どこが費用を負担するのか、県にも実態を報告し対応を話し合っていきたい」と話している。
(朝日新聞、2007年8月26日)
****** 東奥日報、2007年4月3日
県内の「飛び込み分娩」増加
妊婦健診を受けずに出産直前に医療機関を受診する「飛び込み分娩(ぶんべん)」が県内の医療機関で目立っている。八戸市民病院では二〇〇六年、十二件で前年の四倍となった。妊婦の意識の問題、社会・経済的問題などが要因として挙げられるが、「医療事故を懸念する民間医療機関から“飛び込み”を断られた妊婦が、公立病院に集中する」という指摘もある。また、一部関係者は「一回の健診費用が六千円前後と妊婦の経済負担が重く、それが健診を受けないままの“飛び込み”の一因になっている。自治体は補助拡大を」と訴える。
八戸市の飛び込み分娩の現状は三月、青森市で開かれた産科医療フォーラムで八戸市民病院の助産師が報告した。同病院の〇六年の飛び込み分娩は十二件で、〇五年度の三件から、大幅に増えた。〇七年も三月十一日現在で既に四件とハイペースで推移している。
この理由について、八戸市内の複数の医療関係者は「飛び込みで民間医療機関を受診しても、医療事故を避けるため、受け付けない。断られた人たちが市民病院に流れているのではないか」と分析。現に八戸市内の開業医は「福島県・大野病院の逮捕事例などで産科医は委縮している。リスクが高いケースは受け付けず、総合病院へ送るようになった」と話す。また「四月から産婦人科を休診した青森労災病院の影響で、さらに“飛び込み”が市民病院へ集中するのでは」と危惧(きぐ)する医療関係者の声もある。
青森市民病院は年五-十件の“飛び込み”はあるが、特別、増える傾向はないという。ただ、関係者は「社会的・経済的に許されない妊娠のため、飛び込みで来るケースがある」と言う。
一方、弘前市の公立病院でも年間十件前後の飛び込みがあり、同病院の医師は「ほとんどが経済的な問題。妊婦健診はお金が掛かる。弘前市の無料券は二回だけ。もっと補助を拡大してほしい」と説明する。
(東奥日報、2007年4月3日)