コメント(私見):
本日、福島地検が控訴を断念すると発表しました。これによって、9月3日の控訴期限を過ぎれば、加藤先生の無罪が確定し、大野病院事件の裁判は1審で終結することになりました。 まずは、無罪の確定を心から喜びたいと思います。
【追記:8/31】
8月30日付けの毎日新聞の記事からの引用:
県病院局の茂田士郎・病院事業管理者は「医療事故の再発防止に全力を尽くしたい」とコメント。加藤医師を減給1カ月(10分の1)とした05年6月の処分について、同局の林博行次長は「判決を吟味し、(加藤医師の過失を認めた)県事故調査委員会の報告書を含め、懲戒処分取り消しも視野に検討したい」と話した。(引用終了)
8月30日付けの河北新報の記事からの引用:
国立病院機構仙台医療センター(仙台市)産婦人科の明城光三医長も「先週、事件のような難しい症例があった。無罪判決があったので比較的冷静に対応できた」という。それでも「今後も逮捕という同じことが起こる可能性はある。ショックは忘れない」と影響の大きさをうかがわせた。(引用終了)
8月20日付けの共同通信の記事からの引用:
「私も加藤医師の立場だったら、同じ治療をしていた。日本中の医師の思いが共通していたので、これほどの動きが広がった」 千件近い帝王切開手術を手掛けたことがある東京都立府中病院産婦人科の桑江千鶴子部長(56)は、医療現場の反応をそう解説する。(引用終了)
今回の判決で、加藤先生の実施した医療行為が『癒着胎盤に対する現時点における標準治療』であったことが正式に認定され、加藤先生の過失は否定されました。従って、(過失を認めた)県事故調査報告書の記載内容を訂正して、その報告書を根拠にした懲戒処分を取り消すことは当然だと思います。
また、県病院局より、「医療事故の再発防止に全力を尽くしたい」とのコメントがありましたが、癒着胎盤の発生頻度は今後も従来と比べて変わらないでしょうし、もしも癒着胎盤の症例に遭遇した場合は、(現時点の医療水準では)どんなに態勢の整った病院であっても、基本的には今回の加藤先生の実施した医療行為と同じ対応をしていくことになります。
当科においても、大野病院事件後に癒着胎盤の症例に遭遇しましたが、やはり、癒着胎盤と認識した後もそのまま胎盤の用手剥離を継続しました。その後、大量出血が始まり、輸血をしながら全身麻酔下に子宮摘出術を実施しました。その時点ではまだ大野病院事件の裁判が進行中でしたが、現実的にはそのような対応をせざるを得ませんでした。その症例でも、やはり、術前に癒着胎盤とは診断できませんでした。
**** 加藤先生と弁護団のコメント(8/29)
◆ 加藤克彦先生のコメント
心中ほっとしております。2年6カ月は、とても長かったです。支えてくださった皆様に大変感謝しております。これからも、地域医療に私なりに精一杯取り組んでまいります。あらためまして、患者さんのご冥福をお祈り申し上げます。
加藤克彦
◆ 弁護団のコメント
検察官が主張する医療措置について、全く立証されていない本件では、控訴断念が当然の結論であると考えます。
一方、加藤医師について無罪が確定することにより、本件裁判が、産科を中心とする医療現場全般に与えた悪影響が、収束することを期待します。
県立大野病院事件 弁護団
****** 日本産科婦人科学会・声明
福島県立大野病院事件についての福島地方裁判所無罪判決に対する検察当局の控訴断念について
このたびの検察当局の控訴断念は、被告人に過失が無かったとする福島地方裁判所の無罪判決を尊重するものであり、医療現場の混乱を収束する上で産婦人科のみならず医療界全体にとっても妥当な判断であると考えます。
日本産科婦人科学会は、今後も医学と医療の進歩のための研究を進めると共に、関係諸方面の協力も得て診療体制の更なる整備を行い、重篤な産科疾患においても、母児ともに救命できる医療の確立を目指して最大限の努力を続けてゆくことを、改めて表明致します。
平成20年8月29日
社団法人 日本産科婦人科学会
理事長 吉村 泰典
(日本産科婦人科学会・声明)
****** 毎日新聞、福島、2008年8月30日
大野病院医療事故:県、懲戒処分見直しも
地検が控訴断念、医師の無罪確定へ
無罪確定へ--。大熊町の県立大野病院で04年に起きた医療死亡事故の裁判は29日、福島地検が控訴断念を明らかにし、業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた加藤克彦医師(40)の無罪が確定することになった。県は、加藤医師の懲戒処分の見直しを検討している。【松本惇、西嶋正法、今井美津子、石川淳一】
福島地検の村上満男次席検事は「事実関係はおおむね検察官の主張通り認定している」とした上で、「判決は刑罰を科す基準となる医学的準則を、ほとんどの者が従っていると言える一般性を有しなければならないとした。裁判所の要求も考え方としてあり得る」と述べた。加藤医師の起訴については「被告が持っていた医学書に(検察側主張に沿う)記載があり、産婦人科医の鑑定もあったので、違法とは思わない」と正当性を主張した。県警の佐々木賢・刑事総務課長は「法と証拠に基づき必要な捜査をした。医療行為の捜査は今後も慎重、適切に行いたい」と話した。
一方、加藤医師の弁護団は「当然の結論。産科を中心に医療現場全般に与えた悪影響が収束することを期待する」とし、日本産科婦人科学会は「今後も母児ともに救命できる医療の確立を目指し、最大限の努力を続ける」との談話を発表した。
また、県病院局の茂田士郎・病院事業管理者は「医療事故の再発防止に全力を尽くしたい」とコメント。加藤医師を減給1カ月(10分の1)とした05年6月の処分について、同局の林博行次長は「判決を吟味し、(加藤医師の過失を認めた)県事故調査委員会の報告書を含め、懲戒処分取り消しも視野に検討したい」と話した。
保岡興治法相は会見で「医療事故の調査は、専門家らで構成する第三者委員会がリスクなどに専門的判断を下し、刑事司法はそれを尊重し対応する仕組みが必要」と語った。
(毎日新聞、福島、2008年8月30日)
****** 河北新報、2008年8月30日
医療現場に安堵広がる 大野病院事件で地検控訴断念
医療界を震撼(しんかん)させた事件は一審で幕が引かれることになった。産婦人科医が帝王切開中の過失を問われた福島県立大野病院事件。福島地裁が言い渡した無罪判決に福島地検は29日、控訴断念の方針を明らかにした。事件が暗い影を落とした産科医療現場には安堵(あんど)が広がり、捜査関係者らは淡々と結末を受け止めた。
被告の加藤克彦医師(40)には弁護団から地検の方針が伝えられた。加藤医師は「逮捕からの2年6カ月はとても長く、ほっとしている。今後も地域医療に精いっぱい取り組んでいきたい。あらためて患者さんのご冥福をお祈り申し上げます」とのコメントを出した。
福島県は2005年、判断ミスなどを指摘した事故調査結果に基づき加藤医師らに減給などの懲戒処分を科し、加藤医師は起訴に伴い休職となった。無罪が確定すれば休職は解かれる見通しで、県は処分の取り消しも検討する。
茂田士郎県病院事業管理者は、発表した談話で「引き続き県民医療の安全確保に努め、医療事故の再発防止に全力を尽くしていく」との考えを示した。
逮捕には当初から医療界が猛反発し、お産を扱う現場に動揺を与えた。「万が一、控訴されれば、現場はさらに萎縮(いしゅく)しかねなかった」と東北公済病院(仙台市)産婦人科の上原茂樹科長は胸をなで下ろす。
国立病院機構仙台医療センター(仙台市)産婦人科の明城光三医長も「先週、事件のような難しい症例があった。無罪判決があったので比較的冷静に対応できた」という。それでも「今後も逮捕という同じことが起こる可能性はある。ショックは忘れない」と影響の大きさをうかがわせた。
一方、死亡した女性患者の父親渡辺好男さん(58)は取材に対し「無罪有罪は関係なく、1人の命が失われた。医療界には原因を追及し、再発防止に努めてほしいとだけ願っている」と話した。
福島地検の村上満男次席検事は記者会見で「遺族の方にはあらためてお悔やみ申し上げますとしか言いようがない」と述べた。県警の佐々木賢刑事総務課長は「県警としては法と証拠に基づいて必要な捜査をしたと考えている。医療行為をめぐる事件の捜査は本判決を踏まえ、慎重かつ適切に行っていく」と語った。
(河北新報、2008年8月30日)
****** 福島放送、2008年8月30日
大野病院事件、無罪確定へ/地検が控訴断念
大熊町の県立大野病院事件で、業務上過失致死などの罪に問われた産婦人科医・加藤克彦医師(40)に無罪を言い渡した1審の福島地裁判決に対し福島地検は29日、控訴を断念した。加藤医師の無罪が確定する控訴期限は4日午前零時。
検察側は公判で「産科医の基本的な注意義務に違反した」として禁固1年、罰金10万円を求刑。しかし福島地裁は「注意義務」を判断する医学的準則について、臨床例を示さず文献などを根拠とした検察側主張を否定した。加藤医師の行為を「標準的な医療措置」と認定し、過失はないと判断した。
福島地検の村上満男次席検事は29日、断念の理由について「仮に控訴したとしても裁判所の判断を覆すことは困難」と述べた。
大野病院医長の職にある加藤医師は、地方公務員法に基づき起訴された平成18年3月から休職となっているが、無罪が確定すれば休職は解ける。
(福島放送、2008年8月30日)
****** 朝日新聞、2008年8月29日
帝王切開した医師の無罪確定へ
福島地検が控訴を断念
福島県立大野病院で帝王切開手術を受けた女性(当時29)が死亡した医療事故で、業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた執刀医を無罪とした福島地裁判決について、福島地検は29日、「控訴しない」と発表した。これにより執刀医で同病院の産婦人科医、加藤克彦医師(40)=休職中=の無罪が確定する。
控訴断念の理由について同地検の村上満男次席検事は、判決を覆すために必要な証人や鑑定といった「新たな証拠を出すことは不可能」と説明。加藤医師を逮捕・勾留(こうりゅう)したことについては「当時の判断としては、鑑定医の話や医学書の記載に基づいたもので、間違いはなかった」と話した。
同地検は「女性が癒着胎盤で大量出血する恐れがあったにもかかわらず、子宮摘出に移行せずに胎盤をはがし続けて女性を失血死させた」などとして、06年3月に加藤医師を起訴。だが、20日の福島地裁判決は「胎盤をはがしはじめたら、継続するのが標準的な医療」として同地検の主張を退け、異状死の場合、死亡後24時間以内に警察へ届けなければならない医師法違反にも問えないとしていた。
加藤医師の弁護団は「検察の主張はまったく立証されておらず、控訴断念は当然。裁判が産科を中心とする医療現場全般に与えた悪影響が無罪確定で終息することを期待する」とのコメントを出した。
(朝日新聞、2008年8月29日)
****** 読売新聞、2008年8月29日
「帝王切開」大野病院事件、福島地検が控訴を断念
福島県立大野病院で2004年、帝王切開手術を受けた女性(当時29歳)が死亡した医療事故で、業務上過失致死罪などに問われた加藤克彦医師(40)に無罪を言い渡した福島地裁判決について、福島地検は29日、控訴を断念すると発表した。
裁判では、子宮に癒着した胎盤をはがし続けた加藤医師の処置が医学的に妥当だったかが争点になったが、20日の判決は、検察側の立証について「根拠付ける臨床例を何ら示していない」と指摘していた。
控訴断念の理由について、同地検の村上満男次席検事は「控訴しても裁判所の判断を覆すのは困難と判断した」と述べた。
現在、休職中の加藤医師は、「ほっとしています。(逮捕後の)2年6か月はとても長かった。これからも地域医療に私なりに精いっぱい取り組んでまいります。改めて(亡くなった)患者さんのご冥福(めいふく)をお祈り申し上げます」と、弁護団を通してコメントを出した。
一方、死亡した女性の父、渡辺好男さん(58)は、読売新聞の取材に対し、「娘が死ななければならなかった理由は十分明らかになっていないと思う。有罪、無罪に関係なく、それを知りたい」と語った。
(読売新聞、2008年8月29日)
****** 読売新聞、2008年8月30日
「医療事故の捜査 謙抑的な対応を」 保岡法相
保岡法相は29日、大野病院事件で検察当局が控訴を断念したことを受けて記者会見し、「医療事故の真相究明については、第三者機関が専門的な判断を下すようにし、刑事訴追は謙抑的に対応すべきだ。私のこの考えなどもあり、検察や警察では謙抑的な対応が事実上始まると思う」と述べた。個別の事件に絡み、法相が捜査の抑制に言及するのは異例。
また法相は、大野病院事件の刑事立件について「医療事故が多発し、厳しく対応するようにとの世論がある中で、第三者機関がなかったので警察が動いた。これが医療を萎縮させ、医師確保にも重大な影響を与えている」と指摘。厚生労働省が検討している第三者機関「医療安全調査委員会(仮称)」の早期設置が望ましいとの考えを示した。
(読売新聞、2008年8月30日)
****** 読売新聞、福島、2008年8月30日
「新たな立証難しい」大野病院事件
控訴断念で検察側
大熊町の県立大野病院で2004年12月、帝王切開手術を受けた女性(当時29歳)が死亡した医療事故を巡る裁判は、福島地検が29日、控訴断念を表明したことで、無罪判決が確定することになった。業務上過失致死罪などに問われた加藤克彦医師(40)=休職中=について、県病院局では「判決が確定した時点で復職になる。復職後のことについては加藤医師の考えを聞いて検討する」としている。
子宮に癒着した胎盤をはがし続けた処置の妥当性が問われた裁判で、「子宮摘出に移るべきだった」と主張した検察側に対し、20日の判決は立証不足を指摘していた。
福島地検の村上満男次席検事はこの日、「(刑罰を科す基準となり得る)医学的準則には様々な考え方があり、裁判所が要求する程度も考え方としてはあり得る。あり得る以上は覆せない」と立証が及ばないことを認め、「証拠に基づいて過失があると判断したが、裁判所と過失、注意義務のとらえ方に違いがあった」と述べた。また、控訴審は原則として1審の証拠に基づいて審理されるため、新たな立証が難しいと説明した。
ただ、任意捜査でなく、逮捕したことについては「逮捕の要件を慎重に判断して行ったもので、正当だったと思う」とし、起訴したことも「証拠に基づいたもので誤っていない」とした。
今後については「より慎重、適正に捜査をしたい」と語った。
また、県警刑事総務課の佐々木賢課長も、「県警としては、法と証拠に基づいて必要な捜査を行ったものと考えている。今後も本判決をふまえ、慎重かつ適切に行って参りたい」と話した。
これに対し、加藤医師の弁護団は「当然の結論」とするコメントを出し、日本産科婦人科学会も「医療現場の混乱を収束する上で医療界全体にとっても妥当な判断」という声明を出した。
一方、女性の父、渡辺好男さん(58)は読売新聞の取材に対し、「(事故について)まだ疑問に思うことがあり、生涯真実を求めていきたい」と胸の内を語った。判決当日に県に提出した、医療事故の再発防止を求める8項目の要望書にも触れ、「要望書は今の自分にとって希望。患者の視点で変えていける環境を提案しており、順番に変えていってほしい」と話した。
(読売新聞、福島、2008年8月30日)
****** 河北新報、2008年8月29日
検察側が控訴断念 大野病院事件
福島県立大野病院(大熊町)で2004年、帝王切開中に子宮に癒着した胎盤の剥離(はくり)を続けた判断の誤りから女性患者=当時(29)=を失血死させたとして、業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた産婦人科医加藤克彦被告(40)を無罪とした福島地裁判決について、福島地検は29日、控訴を断念する方針を明らかにした。控訴期限の9月3日を過ぎて無罪判決が確定する。
20日の判決で鈴木信行裁判長は「胎盤剥離を中断して子宮摘出に移っていれば大量出血を回避できた」とする検察側主張を認めたが、剥離を続けた判断については「標準的な医療措置であり、直ちに剥離を中止する注意義務はなかった」と過失を否定。「検察側は主張の根拠となる臨床症例を示していない」と証拠不足も指摘し、医師法違反を含め無罪とした。
(河北新報、2008年8月29日)
****** 時事通信、2008年8月29日
産科医の無罪確定へ=帝王切開死、検察が控訴断念-「今後は慎重に捜査」・福島
福島県立大野病院で2004年、帝王切開手術を受けた女性=当時(29)=が大量出血して死亡した事故で、業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた執刀医加藤克彦被告(40)を無罪とした福島地裁判決について、福島地検は29日、控訴の断念を決めた。控訴期限の9月3日が過ぎれば、無罪が確定する。
公判では、癒着した胎盤を子宮から剥離(はくり)した際に大量出血を予見できたのかと、剥離を中止し子宮摘出に移る義務があったのかが主な争点だった。
地裁は20日の判決で、子宮摘出に移るべきだとした検察側主張について「医学的準則だったとは認められない」とし、被告に剥離措置を中止する注意義務はなかったと認定。検察側立証は医学書の記述などにとどまり、主張を裏付ける臨床例を提示していないと指摘していた。
同地検の村上満男次席検事は「違反者に刑罰を科す(医師の)注意義務をどうとらえるかで、裁判所は検察と異なっていた。裁判所は臨床、検察は医学書に基づいており、判決のような考え方もある」とし、控訴しても裁判所の判断を覆すことは困難とした。
加藤医師「ほっとしている」=現場復帰に改めて意欲-帝王切開死
帝王切開死の無罪判決に対する検察側の控訴見送りについて、執刀医の加藤克彦医師(40)は29日、弁護団を通じ、「心中ほっとしています。これからも、地域医療に私なりに精いっぱい取り組んでまいります。患者さんのご冥福を祈ります」とコメントした。
弁護団も「控訴断念が当然の結論」と強調。無罪確定で産科を中心とした医療現場全般に与えた悪影響が収束することを期待するとした。
(時事通信、2008年8月29日)
****** ANNニュース、2008年8月29日
”帝王切開死”で検察側が控訴断念 医師の無罪確定
帝王切開手術をした女性を死亡させたとして、業務上過失致死の罪に問われた福島県の産婦人科医が無罪となった裁判で、検察側は控訴を断念しました。
福島県立大野病院の産婦人科医だった加藤克彦医師は、帝王切開手術中に女性を死亡させたとして逮捕・起訴されましたが、今月20日に1審の福島地裁で無罪が言い渡されました。福島地検は、医師の判断が標準的な医療措置と判決で認定されたことや、1審を覆すような新たな証拠を示すのが難しいとして、控訴を断念しました。これで、加藤医師の無罪が確定することになります。
(ANNニュース、2008年8月29日)
****** TBSニュース、2008年8月29日
法相、医療事故捜査は抑制的対応を
福島県立大野病院で帝王切開手術を受けた女性が死亡し、産婦人科の医師が業務上過失致死などの罪に問われた裁判について、検察当局の控訴断念を受け、保岡法務大臣は記者会見で、「刑事司法は医療事故について抑制的に対応すべきだ」との考えを示しました。
保岡大臣は、大野病院の加藤克彦医師の無罪判決について福島地検が控訴を断念したことを受け、29日午後、臨時の記者会見を開き、「個別事件について所感を述べることは差し控える」とした上で、次のように述べました。
「(医療事故については)国民を代表する方々で構成された第三者委員会が判断し、訴追については、その意見を尊重し謙抑的(抑制的)に判断する仕組みが必要と考えています」(保岡興治 法相)
医療事故に関する調査機関設置については、厚生労働省が9月からの臨時国会への法案提出を検討しています。
保岡大臣は、「医療の萎縮を防ぐために事故についての判断は第三者機関に委ね、刑事司法は抑制的に対応すべき」との考えを示したものです。
(TBSニュース、2008年8月29日)
****** 日テレニュース24、2008年8月30日
“医療事故”第三者機関の設立に協力~法相
福島県立大野病院事件で、検察当局が控訴を断念したことに関連して、保岡法相は29日、医療事故の真相究明を行う第三者機関の設立に協力する意向を示した。
出産後の妊婦の死亡をめぐり、大野病院の産婦人科医に無罪を言い渡した福島地裁判決について、検察当局は29日、控訴を断念することを明らかにした。
これに関連して、保岡法相は記者会見し、「医療事故の責任については、医師や法律家らからなる第三者機関が判断し、刑事事件の起訴については、その判断を尊重して謙抑的に対応する仕組みが必要だ」と述べ、第三者機関の設立に法相として協力する意向を示した。
また、「検察や警察も、第三者機関の設立に向けた今の状況を踏まえた謙抑的な対応が事実上始まると思う」と見通しを述べた。
(日テレニュース24、2008年8月30日)
****** NHKニュース、2008年8月29日
医師無罪判決 検察が控訴断念
4年前、福島県立大野病院で行われた帝王切開手術で女性を死亡させたとして業務上過失致死などの罪に問われ、無罪判決を受けた産婦人科の医師について、検察側は「裁判所が示した判断を覆すのは難しい」として控訴をしないことを決めました。
福島県大熊町にある福島県立大野病院の加藤克彦医師(40)は、4年前の平成16年12月に当時29歳の女性に帝王切開手術を行った際、胎盤を無理にはがし、大量出血で女性を死亡させたとして、業務上過失致死などの罪に問われていました。
今月20日、福島地方裁判所は「医療行為について刑罰を科すのは一般的な医学基準に反した場合に限られる」という判断を示したうえで、手術について「多くの医師が用いる標準的な処置だった」として、無罪の判決を言い渡していました。
これについて、福島地方検察庁では「起訴した当時の検察側の判断がまちがっていたとは思わない」としながらも「医療行為に刑罰を科すケースについて裁判所が示した判断を覆すのは難しい」として控訴しないことを決めました。
これについて、死亡した女性の父親の渡辺好男さんは「判決のことは別として、医療の現場でリスクの高い患者が安心できるよう事故を起こさないための仕組み作りを急いでほしい」と話しています。
(NHKニュース、2008年8月29日)
****** 共同通信、2008年8月29日
大野病院事件、検察が控訴断念
産科医の無罪確定へ
福島県大熊町の県立大野病院で2004年、帝王切開で出産した女性=当時(29)=が手術中に死亡した事件で、業務上過失致死などの罪に問われた産婦人科医加藤克彦医師(40)を無罪とした福島地裁判決について、福島地検は29日、控訴断念を決めた。無罪が確定する。
医療行為をめぐって医師が逮捕、起訴され、医療界の猛反発を招いた異例の事件は1審で終結することになった。
福島地検の村上満男次席検事は「裁判所の判断を覆すのは困難と判断した」と説明。地検は、主張の根拠となる臨床例の提示や、新たな鑑定人確保などは難しいとの結論に達したとみられる。
公判では、子宮に癒着した胎盤をはがし続けた判断が妥当だったかどうかが最大の争点になり、20日の判決は「標準的な措置だった」と過失を否定した。
「直ちに子宮を摘出すべきだった」とした検察側主張に対し、判決は「根拠となる臨床症例を何ら示していない」と退け、立証が不十分と指摘。死亡を警察に届けなかったとされた医師法違反罪も含めて無罪(求刑禁固1年、罰金10万円)を言い渡した。
(共同通信、2008年8月29日)