日本と英米諸外国とでは胎児の位置に関する用語の使い方に相違があり、日本では、胎児の位置は、胎位、胎向、胎勢で表現されるのに対して、英米諸国では、胎児の位置は、Lie、Presentation、Positionで表現されます。産科関係の英語文献を読む際には、英米諸国での用語の用い方を理解しておく必要があります。
****** 日本の定義(日独式)
● 胎位
胎位とは胎児縦軸と子宮縦軸の位置関係をいう。両者の縦軸が一致するものを縦位といい、このうち児頭が母体の骨盤に向かうものを頭位、胎児の骨盤端が母体の骨盤に向かうものを骨盤位という。胎児縦軸と子宮縦軸が直角に交わるものを横位といい、斜めに交わるものを斜位と呼ぶ。臨床的に横位と斜位の区別は必ずしも明確でない。妊娠末期の胎位は約95%が頭位である。頭位以外は胎位異常とされる。
● 胎向
胎向とは胎児の母体左右・前後側に対する向きをいい、頭位と骨盤位の場合は児背の向きで表現し、横位の場合は児頭のある方向で表現する。頭位と骨盤位の場合は、児背が母体の左側を向くものを第1胎向、右側を向くものを第2胎向、児背が母体の前方に傾くものを第1分類、後方に傾くものを第2分類とする。横位の場合は、児頭が母体の左側にあるものを第1横位、右側にあるものを第2横位とする。
● 胎勢
胎勢とは胎児各部分の位置的相互関係(すなわち胎児の姿勢)をいう。頭位の場合の胎勢には屈位と反屈位とがある。
?屈位(正常の胎勢): 児の脊柱が軽く前彎し、頤部が胸壁に近く、後頭が先進し、肘関節、股関節、膝関節で四肢が屈曲する姿勢。
?反屈位(異常の胎勢): 児の頤部が次第に胸壁を離れ、児頭や脊柱が伸展・後彎する姿勢。先進部により前頭位(経度反屈)、額位(中等度反屈)、顔位(強度反屈)に分けられる。
****** 英米など諸外国の定義(英米式)
● Lie
Lieとは、母体と胎児の長軸における位置関係と定義され、縦位、横位、斜位とに分類される。縦位は頭位と骨盤位に分類される。
●Presentation
Presentationとは、産道における胎児の先進部のことをいう。頭位(cephalic presentation)、骨盤位(breech presentation)、肩甲位(shoulder presentation)などがある。
●Position
Positionとは、胎児先進部の基準点と母体骨盤との関係を示す。例えば、頭位の基準点は後頭部(occiput)で、児の後頭部が母の恥骨結合の方にある時、その児は OA(occiput anterior) である。児の後頭部が母体の背面を向いている時、児はOP(occiput posterior) で、その中間は、LOA/ROA、LOT/ROT、LOP/ROP となる。 児の後頭部が母体の背面を向いている時、日本においては先進部を考慮して後方後頭位や前方前頭位という表現を使うが、英米諸国では先進部にかかわりなくOP と表現する。