ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

新型インフルエンザ・ワクチン: 接種の実施スケジュール

2009年10月28日 | 新型インフルエンザ

新型インフルエンザ: 重症化率が高い小児へのワクチン接種順位の前倒しの検討を提言 (日本ウイルス学会)

新型インフルエンザワクチン 1回接種、当面は医療従事者限定 妊婦や基礎疾患のある人の接種回数は再検討

新型インフル: 感染中の分娩では産後すぐに母子を1週間隔離

新型インフル: 妊婦向けに防腐剤が入ってないワクチンが100万人分供給される見込み

「新型インフルエンザに感染した妊婦はまず内科受診を」 日本産科婦人科学会が注意喚起

****** 南信州新聞、2009年10月28日

新型インフルワクチン 接種は来月9日から

妊婦や持病患者など優先

 県は26日、新型インフルエンザワクチンの優先接種スケジュールを発表した。妊婦や基礎疾患(持病)のある患者は11月2日から医療機関で予約を受け付け、最も早い人は同9日から接種を始める。接種を行う医療機関は今月29日に県ホームページなどで公表する。

接種の実施スケジュール(長野県)
優先接種対象者  予約開始日  接種開始日

医療従事者                  10月19日
妊婦:バイアル製剤   11月2日    11月9日
         シリンジ製剤  11月2日    11月18日
基礎疾患を有する者:
     最優先分   11月2日    11月9日
     その他    11月2日    12月9日
乳幼児(1~6歳)   11月16日   12月9日
小学1~3年      12月2日     12月22日
1歳未満児の保護者など  12月17日  1月13日
小学4~6年    12月後半~1月前半 1月後半
中学生       12月後半~1月前半 1月後半
高校生(輸入ワクチン)   12月または1月 1月中
65歳以上(輸入ワクチン) 12月または1月 1月中

 国の定めるワクチン接種の標準的なスケジュールに沿った内容だが、国が接種回数を2回から1回に見直す可能性もあるため、変更となる場合がある。接種は原則予約制で、個々の医療機関によって予約開始日が異なることもあるという。

 県のスケジュールによると、妊婦のうち、保存剤を含む「バイアル製剤」の希望者や、基礎疾患のある患者で「最優先」とされた人は11月9日から接種を開始。続いて、妊婦のうち、保存剤を含まない「シリンジ製剤」の希望者が同18日から接種を受けられる見込み。

 基礎疾患のうち「その他」と1~6歳の乳幼児は12月9日、小学1~3年生は12月22日、1歳未満児の保護者などは来年1月13日からの接種開始を予定。小学4~6年生と中学生は来年1月後半、輸入ワクチンの使用を見込む高校生と65歳以上は1月中の開始を予定している。

 基礎疾患者は1歳から小学3年相当の低年齢者を最優先としているが、さらに疾患ごとに優先基準が定められている。県は「国の基準を参考に総合的に判断するため、主治医に問い合わせてほしい」としている。

 限られたワクチン接種を円満に実施するための注意点として「1人で複数の医療機関へ予約することは避けてほしい。ほかの人への接種が遅れてしまう可能性がある」と指摘し、協力を呼び掛けている。

(南信州新聞、2009年10月28日)

****** 信濃毎日新聞、2009年10月27日

新型インフルのワクチン優先接種 県がスケジュール

 県は26日、新型インフルエンザワクチンの優先接種対象者の接種スケジュールを決めた。原則予約制で、妊婦や、慢性の心疾患、腎疾患、糖尿病などの基礎疾患(持病)のある人は11月2日から医療機関で予約を受け付け、同9日に接種を始める。

 国が示した接種スケジュールに沿った内容。国が接種回数を見直す可能性もあるため「今後、変更する場合もある」(県健康づくり支援課)。医療機関によって予約開始日が違うこともあるとしている。

 県のスケジュールでは、妊婦(県内約1万8千人)のうち、保存剤を含まない「シリンジ製剤」を希望する人には、出荷日程に合わせて11月18日に接種を開始。基礎疾患のある人のうち、疾患の程度などで「最優先」(約9万8千人)とされた人は接種開始が同9日、「その他」(約4万9千人)は12月9日とした。

 1~6歳の乳幼児(約10万8千人)も12月9日に接種が始まり、小学1~3年生(約6万3千人)は同22日、1歳未満児の保護者(約3万6千人)は来年1月13日の開始予定。小学4~6年生(約6万3千人)と中学生(約6万3千人)は1月後半となる。

 輸入ワクチンを使う見通しの高校生(約6万3千人)と65歳以上(約55万4千人)は1月中の開始予定。優先対象者以外のワクチン接種は今のところ未定としている。

 接種費用は全国一律で1回目が3600円。2回目を同じ医療機関で接種すれば2550円。県は、接種を受けられる医療機関名を29日に公表する方針だ。

 また県は26日までに、重症患者の受け入れ態勢を確保するため、入院患者数や受け入れ可能病床数を把握する「医療情報ネットワーク」の運用を始めた。医療機関からの報告を県が集約、医師会や医療機関などに提供するという。

(信濃毎日新聞、2009年10月27日)


新型インフルエンザ: 重症化率が高い小児へのワクチン接種順位の前倒しの検討を提言 (日本ウイルス学会)

2009年10月28日 | 新型インフルエンザ

新型インフルエンザ・ワクチン: 接種の実施スケジュール

新型インフルエンザワクチン 1回接種、当面は医療従事者限定 妊婦や基礎疾患のある人の接種回数は再検討

****** 毎日新聞、2009年10月26日

新型インフル:小児のワクチン接種前倒し…学会が提言

 日本ウイルス学会は26日、新型インフルエンザに関するパネルディスカッションを開き、重症化率が高い小児へのワクチン接種順位の前倒しの検討などを提言した。

 ディスカッションには7人の専門家が出席。押谷仁・東北大教授(ウイルス学)は、国内で小児の重症化率が高いことや、米国で入院患者の5割以上が未成年であることを説明。現在の優先順位で小学校低学年は医療従事者、妊婦、基礎疾患のある人、幼児に続いて来年1月中旬となっていることについて「接種しないまま流行のピークを迎えることになるかもしれない。この順位のままでいいのか早急に議論が必要だ」と訴えた。

 座長の河岡義裕・東京大医科学研究所教授(ウイルス学)は「輸入ワクチンは製造方法や接種方法が異なり、簡単に小児に接種できないが、基礎疾患のある人全員の接種回数が2回のままなら、小児まで国産ワクチンが回らない。ワクチンの接種回数を早急に議論し、政策に専門家の意見が反映される仕組みが必要」とまとめた。【関東晋慈】

(毎日新聞、2009年10月26日)

****** 共同通信、2009年10月28日

「専門家の意見反映を」 ワクチン接種回数で議論

 新型インフルエンザワクチンをめぐり、日本ウイルス学会が26日夜、都内で開いたパネルディスカッションで「予防接種について専門家の意見が反映される仕組みを作るべきだ」などの意見が相次いだ。

 新型ワクチンをめぐっては、厚生労働省が16日の専門家意見交換会で「1回接種」でいったんは合意したが、足立信也厚生労働政務官(民主)が異を唱え「医療従事者のみ1回、ほかは当面2回」と方針が変更された。

 パネルディスカッションで神谷斉(かみや・ひとし)・三重県予防接種センター長は「専門家が1回接種と決めた事を政治的に変える問題ではない」と指摘。1回でも効果があることを確認した臨床研究を担当した三重病院(津市)の庵原俊昭(いはら・としあき)院長は「2回するかは(2回目で)どのくらい効果を上乗せできるかにかかってくる。接種できない人を増やすのがいいのか、多くの人に1回接種するのがいいのかの議論になる」と述べた。

 押谷仁(おしたに・ひとし)東北大教授は「今のままでは(重症化しやすい)小学校低学年に接種できるのは12月中旬以降。その子たちは流行時期に接種を受けられない」と指摘。神谷センター長は「接種の順位を変える議論を早急にやるべきだが、厚労省に動きが無く、現場は不満を感じている」と批判した。

(共同通信、2009年10月28日)

****** 読売新聞、2009年10月27日

脳症50人…7~10月 7歳児最多10人

 新型インフルエンザに感染し、インフルエンザ脳症を発症した患者が7月からの3か月間に計50人に上ったことが、国立感染症研究所の調査でわかった。最も多かった年齢は7歳。5歳以下に多い季節性インフルエンザに比べて年齢が高く、感染研は注意を促している。

 調べたのは、7月6日~10月11日に16都道府県から報告された脳症。年齢は1歳~43歳で、最も多かった7歳児は10人だった。

 感染研は、症例を報告した医療機関に調査票を送り、回答を寄せた20症例をさらに詳しく分析した。その結果、全員に意識障害がみられ、11人に熱性けいれんや気管支ぜんそくなどの基礎疾患(持病)や既往症があった。

 このうち15人は回復したが、1人が死亡。3人に精神神経障害、まひなどの後遺症が確認された(1人は無回答)。全員がインフルエンザ治療薬を服用しており、発熱当日が3人、1日後が12人、2日後が3人と、治療薬の効果があるとされる発症48時間以内の投与が大半だった。

(読売新聞、2009年10月27日)

****** 毎日新聞、2009年10月27日

新型インフル:「元気な幼児」急変 感染死増加

 幼い子どもの新型インフルエンザ感染死が増えている。一体何が起きているのか。自治体の記録などから読み取ると--。 【國枝すみれ、山寺香】

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 新型インフルエンザ感染による10歳未満の死亡例

 26日までに、新型インフルエンザ感染により10歳未満で死亡したのは全国で6人。そのうち5人にはぜんそくなどの基礎疾患がなかった。厚生労働省のまとめでは7月28日から10月13日までの新型インフルエンザによる入院患者は2146人。10歳未満は約6割の1234人に上る。

 死亡例が3件の東京都。男児(3)は19日に38度の熱を出し、医療機関でかぜと診断された。20日、熱が39.6度に上昇、午前9時過ぎに再受診。インフルエンザA型陽性で、昼前にタミフルを1回飲んだ。自宅ではアイスクリームを食べるなど比較的元気だったが、午後5時過ぎに嘔吐(おうと)していたのを発見された。呼びかけに反応がなく救急搬送された。異変に気づいて30分で病院に着いた時には心肺停止状態。午後6時50分に死亡した。

 男児(4)は4日夜39.9度の発熱。翌朝A型陽性が判明した。帰宅途中にけいれんし、病院でタミフルを投与。だが6日早朝、意識障害から呼吸停止に。13日に死亡した。

 男児(5)は、2日朝発熱し、診療所でかぜと診断された。3日午前中に熱は40度に。タミフルを飲んだが、夕方に嘔吐、意識がもうろうとし白目をむいた状態となり、午後4時すぎに病院に搬送された。「おなかの動きが悪い」との記載が残り、タミフルが吸収されなかった可能性もある。同日夜には多臓器不全に陥り、6日午後8時前に死亡した。

 東京都福祉保健局の大井洋参事は「3例とも重症化や死亡までの経過が早く、治療で他に何かできたという選択肢は少ないのではないか」と話す。

 兵庫県西宮市の女児(8)は11日に微熱、12日朝に38.8度に上昇した。同日午後5時には意識障害がみられ、同市の病院に運ばれたが、全身状態が悪く、薬も飲めなかった。同日午後9時40分、神戸市の医療機関に転送された時にはショック状態に。直接の死因は多臓器不全と記載されたが、脳炎を疑われるケースだった。

 横浜市の男児(5)はウイルスが肺で増殖したウイルス性の重症肺炎で15日に死亡した。12日に発熱、13日にタミフルを飲んでいた。

 東京慈恵会医科大の浦島充佳准教授は「オーストラリアやニュージーランドでも、5歳未満の子どもの死亡率が最も高かった。小さい子どもは体力がない。幼いということ自体が基礎疾患を持っているのと同じくらい危険だ」と話す。

 また、季節性インフルエンザに罹患(りかん)した経験が少ない子どもは、大人より新型インフルエンザに感染しやすく、重症化しやすい。

 病状は(1)タミフル投与のタイミング(2)本人の体力(3)侵入したウイルス量などで変わる。

 新型インフルエンザは発症から12時間で感染が判明し、48時間以内にタミフルを投与すれば重症化を防げるとされていたが、死亡例ではタミフルを飲んだ時には手遅れのケースもあった。「小児科医の間には、新型インフルエンザが疑われたら、感染判明を待たずにタミフルを投与するという方針が広まりつつある」(浦島准教授)。日本ウイルス学会は重症化率が高い小学生へのワクチン接種時期の前倒しを検討すべきだと提言した。

 親がすぐ病院に連れて行くべき兆候は。インフルエンザ脳症と脳炎は、呼びかけても反応しないなど意識障害の症状が出たら危険。ウイルス性肺炎は、息が長く続かず会話が途切れる、子どもが「息苦しい、胸が痛い」と訴えるなどだ。

(毎日新聞、2009年10月27日)

****** 朝日新聞、埼玉、2009年10月27日

新型インフル 基礎疾患ない中2女子死亡

県 「重症化 兆候に注意」

 県は26日、入間市の中学2年生の女子生徒(13)が、新型インフルエンザによるウイルス性心筋炎で死亡した疑いがある、と発表した。女子生徒に基礎疾患はなかったという。新型インフルエンザによる県内の死者(疑い含む)は、基礎疾患があった川口市の67歳の女性に次いで2例目。全国では33例目。県は「重症化のサインを見逃さないよう心がけて」と呼びかけている。

 県疾病対策課によると、女子生徒は22日、38・8度の熱が出て中学校を早退し、自宅近くの診療所で受診しリレンザの投与を受けたが、翌日も熱が下がらず胸の痛みを訴えた。24日、診療所で受診し解熱剤を服用した。その後嘔吐(おうと)を繰り返すようになり、25日夜、救急車で市外の病院へ搬送したが、搬送先で死亡が確認されたという。

 PCR検査(遺伝子検査)では新型インフルエンザの感染は確認されなかったが、簡易検査で新型感染が疑われるA型の反応が出ていること、PCR検査がリレンザによる治療後であったこと、心筋炎の状況などから、県は新型インフルエンザによる死亡例と考えられると判断した。全国で10代の死亡例は女子生徒が3例目で、基礎疾患がなく死亡したのは初めてという。

 県内の1週間の新型インフルエンザの患者数(10月12~18日)は1医療機関あたり22・97人。ひとケタ台が続いていた9月までに比べ、10月に入り患者数が急増している。地域別では、入間市を含む所沢保健所管内が37・29人で最も多く、川口、越谷、朝霞市などでも流行発生警報レベルの30人を超えている。

 同課は「発熱後2日以内の受診や、健康でも容体が急変しやすい10代までの子どもは、呼吸や脈の速さ、反応の鈍さのほか、嘔吐を繰り返すといった重症化のサインを見逃さないよう心がけて」と呼びかけている。

(朝日新聞、埼玉、2009年10月27日)


新型インフルエンザワクチン 1回接種、当面は医療従事者限定 妊婦や基礎疾患のある人の接種回数は再検討

2009年10月20日 | 新型インフルエンザ

新型インフル: 13歳以上は1回接種の見通し(厚生労働省)、自治体は「寝耳に水」

新型インフルエンザ: ワクチン接種を前に自治体悲鳴 「準備間に合わない」

新型インフルエンザ: ワクチン接種の基本方針決定

新型インフル: 感染中の分娩では産後すぐに母子を1週間隔離

新型インフル: 妊婦向けに防腐剤が入ってないワクチンが100万人分供給される見込み

「新型インフルエンザに感染した妊婦はまず内科受診を」 日本産科婦人科学会が注意喚起

****** 読売新聞、2009年10月19日

新型ワクチン1回接種、当面は医療従事者限定

 厚生労働省の足立信也政務官は19日夜、新型インフルエンザ用ワクチンの接種回数について、原則1回にするとした方針は拙速だったとして、専門家との意見交換会で再検討した。

 その結果、優先接種対象者のうち1回接種とするのは当面、医療従事者に限るとする案で合意した。20日に政務三役で正式決定するとしている。

 国産ワクチンを20代から50代の健康な成人200人に実施した臨床試験の結果では、1回の接種で有効性が確認された。海外でも1回接種で十分とする知見が相次いで出されているため、16日に開かれた先の意見交換会では、13歳以上は原則1回接種とする意見で合意していた。

 しかし、この結論に足立政務官が難色を示したため、今回は別の専門家からも意見を聞き、健康な成人以外の1回接種は科学的根拠に乏しいとの結論に至った。妊婦や基礎疾患(持病)のある人たちが1回接種のみで免疫がつくかどうかについては、「まだ結論づけることはできない」との意見が相次いだ。

 「小規模でも妊婦や基礎疾患のある人を対象にした臨床試験も実施すべきだ」とする意見も大勢を占めたため、足立政務官は政務三役で改めて具体策を詰めるとしている。

(読売新聞、2009年10月19日)

****** 共同通信、2009年10月20日

妊婦ら接種回数を再検討 新型インフルで厚労省

 新型インフルエンザワクチンの接種回数をめぐり、厚生労働省の足立信也政務官は19日夜、専門家らとの意見交換会を開き、先に別の専門家メンバーらが示した13歳以上は妊婦や基礎疾患(持病)のある人たちを含めて1回接種にするとした方針は拙速だったとして、引き続き検討することを決めた。

 一方、健康な成人である医療従事者については1回接種で良いとの方向性を確認。政府として早急に結論を出すという。

 国産ワクチンの接種回数については、尾身茂自治医大教授ら政府の新型インフルエンザ対策本部専門家諮問委員会のメンバーが出席した16日の会合で、従来の2回ではなく1回でも十分な効果を期待できるという臨床研究結果が報告された。

 これを受けて同会合では、13歳未満の子どもと著しく免疫が低下している持病のある人を除いては、1回接種とすることで合意していた。

 しかし、あらためて開かれたこの日の会合では「健康な成人を対象にした研究結果を基に、医療従事者以外について1回で良いと結論づけることはできない」など、合意を疑問視する意見が相次いだ。

 席上、足立政務官は「(先の専門家による)合意は言い過ぎだった。医療従事者は1回接種もあり得る。その上で、妊婦や持病のある人の1回目の接種開始を早めたい」と述べた。

 厚労省は今後、妊婦や持病がある人、中高校生を対象にした小規模な臨床研究の実施を検討、医療従事者以外の接種回数を慎重に決める考えだ。

(共同通信、2009年10月20日)

****** 毎日新聞、2009年10月19日

新型インフルエンザ:予防接種始まる まず医療従事者 妊婦・子ども、来月以降に

 新型インフルエンザの予防接種が19日、医療従事者を対象に始まった。11月以降、妊婦や基礎疾患のある人、小児らに順次接種される。対象者は計5400万人。7月以降の新型インフルエンザ感染者は推計234万人に上っており、流行の本格化に備え、死亡や重症者の増加を食い止める効果が期待される。

 厚労省によると、19日に接種を始めるのは大阪、千葉、山梨など23府県。残りは、23道県が週内に、実施医療機関の取りまとめに時間がかかった東京都が26日から、それぞれスタートする。

 接種対象の医療従事者は、インフルエンザ患者の診察にかかわる医師や看護師、救急隊員ら約100万人。厚労省はこのうち国立病院機構の病院にいる2万人を対象に詳細な副作用調査を行い、安全性評価に活用する。

 一般の接種開始は11月からで(1)妊婦、ぜんそく・糖尿病・肝硬変などの基礎疾患のある人(2)1歳~小学校低学年の小児、児童(3)1歳未満の乳児の保護者ら--などの順に、リスクの高い層から優先される。厚労省は近く、当初2回としていた接種回数を「13歳以上は原則1回」と改めたうえで、スケジュールの目安を公表する。

 接種費用は1回3600円。厚労省は今のところ、13歳未満は免疫効果を高めるため2回接種とする方針で、同じ医療機関なら2回目は2550円に減額される。 【清水健二】

(毎日新聞、2009年10月19日)

****** 毎日新聞、2009年10月19日

新型インフルエンザ:予防接種開始 医療現場に安心感 予約制、保険証提示も

 新型インフルエンザの本格的な流行に備え、19日、医療従事者へのワクチン接種が始まった。日常的に感染の危険性にさらされている関係者からは「これで安心できる」と歓迎の声が上がった。ワクチンは製造分から順次供給され、11月以降、重症化の危険性が高い人から順に接種が受けられるようになる。どの程度の効果と副作用が見込まれるのか、接種の手続きは……。大流行の恐れが指摘される中、関心が集まる。 【清水健二、沢田勇】

 甲府市朝日1の井上内科小児科医院には10人分のワクチンが届き、この日午前9時半過ぎから、井上利男院長(70)が同院の看護師に注射した。

 最初に接種を受けた看護師の長沼和子さん(61)は「患者と接するので、いつも感染の不安はありました。これでひと安心しました」と話した。同院では、医師、看護師、事務員15人に接種を予定している。

 7月以降、新型インフルエンザに感染したとみられる患者五十数人を診察してきた井上院長は「ワクチンで大きな危機は乗り越えられると思う。不安を挙げるとすれば、基礎疾患のある人に接種した場合の副作用だ」と話した。

 医療従事者以外への接種は、11月から始まる。時期の目安は厚生労働省が示すが、流通の時間などを勘案して具体的な日程は都道府県が決めることになっており、自治体のホームページなどで公開される。

 接種を受ける場所について厚労省は、かかりつけの医療機関が望ましいとしている。基礎疾患(持病)がある場合、それが優先接種対象になるかどうかを判断してもらえるからだ。予約制で、16歳未満は保護者同伴が原則。予防接種は保険診療ではないが、年齢確認などで保険証の提示を求められることもある。

 かかりつけ医がワクチン接種をしていなかったり、かかりつけの医療機関がない人は、市町村に照会して接種できる医療機関を調べることになる。勤務先の近くなど、居住地と異なる地域の医療機関を選んでもいい。接種対象者であることを示すため、妊婦は母子手帳、持病がある人は、かかりつけ医に発行してもらう証明書が必要。

重症化防ぐ効果期待 「季節性」同時接種で負担減

 医療従事者を対象に、新型インフルエンザのワクチン接種が始まった。ワクチンは、感染自体を防ぐことはできないが、感染後の重症化を防ぐ効果が期待される。一方、厚生労働省は副作用の発生状況を監視するため、医療機関から国に直接報告する制度を設ける方針だ。

 厚労省によると、後遺症が残る重い副作用は、毎年流行する季節性のインフルエンザワクチンでは100万人に1人に起きるとされる。新型の国産ワクチンについて、厚労省は今月、46%に副作用があったとする治験結果を公表した。大半は注射した場所が腫れるなど軽いものだったが、治験対象者200人のうち急なアレルギーショックと全身の発疹(はっしん)が各1例あったという。

 専門家は新型、季節性の2ワクチンの同時接種も、医療機関や接種対象者の負担を減らすことができるとして勧めている。一方、高齢者は新型、季節性を問わずインフルエンザウイルスに感染すると、免疫力の低下で肺炎球菌による肺炎を発症しやすい。このため、肺炎球菌ワクチンの接種も勧めている。 【山田大輔】

(毎日新聞、2009年10月19日)

****** CBニュース、2009年10月20日

国産ワクチン接種始まる 医療従事者を優先 まず100万人 準備整わず出遅れも 新型インフルエンザ

 新型インフルエンザワクチンの接種が19日、医療従事者を対象に全国各地で始まった。医療従事者は、ワクチンの供給量に限りがあるとして政府が設定した優先接種対象の順位1位。主に新型インフルエンザ患者の診療にかかわる医師や看護師らで、約100万人を対象に国産ワクチンを接種する。

 ただ、接種に向けた準備状況は都道府県や地域によってまちまちで、初日のこの日に開始できない所も出た。共同通信が今月16日時点で実施した調査では、47都道府県のうち16都道県が「19日の接種開始は難しい」と回答している。こうした地域でも、近日中に接種が始まる見通しだ。

 医療従事者に続き、来月には重症化のリスクが高い妊婦や基礎疾患(持病)を持つ人への接種が始まり、その後、1歳から小学校低学年までの子ども、乳児の保護者らに順次接種される。

 厚生労働省は、従来2回としていた国産ワクチンの接種回数を13歳以上は高リスク者も含め原則1回に変更する方向で、対象ごとの接種時期は当初の予定より前倒しになる可能性がある。新たな接種スケジュールは今週中にも示される。

 また、厚労省は医療従事者のうち2万人について、副作用の発生頻度などを調べる方針。

 この日、甲府市の井上内科小児科医院では午前10時ごろ、井上利男(いのうえ・としお)院長(70)が看護師の長沼和子(ながぬま・かずこ)さん(61)の右腕に0・5ミリリットルのワクチンを注射した。接種後、長沼さんは「副作用の不安はない。(医療従事者を最優先とするのは)患者と接触するので良いことだと思う」と話した。

 同医院には16日に1ミリリットル入りのワクチンが5本(10人分)届いた。追加分も含め、最終的に15人のスタッフが接種を受ける予定。井上院長は「持病のある人に打つのは(副作用の面で)不安はあるが、危機は乗り越えられると思う」と、ワクチンの効果に期待した。

(CBニュース、2009年10月20日)


新型インフル: 13歳以上は1回接種の見通し(厚生労働省)、自治体は「寝耳に水」

2009年10月17日 | 新型インフルエンザ

10月16日に厚生労働省が開催した「新型インフルエンザワクチンに関する意見交換会」において、国内で製造された新型インフルエンザワクチンの臨床試験の結果が報告され、13歳以上への新型インフルエンザワクチン接種回数を見直し、1回とする意見がま とめられたそうです。新型インフルエンザワクチンは当初、効果を得るためには2回の接種が必要とされていましたが、1回の接種でも効果があるとの結果が出たことで、数に限りがあるワクチンを大幅に節約でき、より多くの人に接種できる可能性が出てきました。厚生労働省は来週中にも接種の回数を正式に決めるそうです。

新型インフルエンザ: ワクチン接種を前に自治体悲鳴 「準備間に合わない」

新型インフルエンザ: ワクチン接種の基本方針決定

新型インフル: 感染中の分娩では産後すぐに母子を1週間隔離

新型インフル: 妊婦向けに防腐剤が入ってないワクチンが100万人分供給される見込み

「新型インフルエンザに感染した妊婦はまず内科受診を」 日本産科婦人科学会が注意喚起

****** NHKニュース、2009年10月16日

国産ワクチン 接種1回で効果

 国内で製造された新型インフルエンザワクチンの臨床試験について、16日、中間報告がまとまり、2回必要だとされていた接種は1回でも十分に効果があることがわかりました。これによって、13歳未満の子どもを除いて接種は基本的に1回となる見通しで、当初の計画よりも多くの人に国産ワクチンが接種できる可能性が高くなりました。

 厚生労働省は、国内メーカーが製造したワクチンの効果などを確認するため、先月、健康な成人の男女200人を対象に臨床試験を行いました。中間報告は16日にまとまり、厚生労働省は1回の接種で十分に効果があることがわかったとして、ワクチンの専門家を集めた会議で報告しました。これを受けて、会議では、これまで2回必要だとしてきたワクチンの接種を、13歳未満の子どもを除いて1回とする意見をまとめました。一方、13歳以上でも感染すると重症になりやすい持病のある人で、医師が免疫がつきにくいと判断した患者は、2回目のワクチン接種を行うとしています。これによって、輸入ワクチンの対象となっていた中学生や高校生などにも国内産のワクチンを接種できる可能性が高くなり、厚生労働省は来週、接種の回数を正式に決めることにしています。

(NHKニュース、2009年10月16日)

****** 産経新聞、2009年10月17日

新型インフル: 1回接種、自治体は「寝耳に水」

 新型インフルエンザワクチンの接種開始を19日に控え、厚生労働省の専門家会議が従来の「2回接種」から「1回接種」に方針転換したことで、自治体や医療機関に混乱が広がっている。当初のスケジュールでも休日返上で準備に追われていたのに、1回接種となれば準備の態勢を変える必要があるからだ。厚労省は来週中にも接種回数を決定するが、関係者は「なぜ今ごろ」と不満を隠さない。

 厚労省が各自治体に具体的な供給計画を示したのが今月2日。開始まで2週間程度という厳しいスケジュールに自治体から不満の声が上がっていた。

 さらなる1回接種への方針転換で不満はピークに達している。「1回接種になれば対象者が広がり、周知の方法も変わる。寝耳に水だ」。千葉県の担当者は怒りをあらわにする。

 16日の専門家会議は1回接種でも効果は変わらないとし、これまで2回としていた接種回数を、13歳以上は基本的に1回ということで合意した。厚労省は「9月にできあがった国産ワクチンの接種試験の結果がこの時期になった。これ以上早くはできなかった」と弁明する。

 千葉県は医療従事者の接種が始まる19日の準備に追われている状態。「19日もやっとなのに…」と話すだけに、現段階で態勢を変更するのは容易ではない。11月中旬には医療従事者以外の妊婦や持病のある人の接種を始めなければならないが、接種可能な医療機関のリストがいつ公表できるのかも決まっていないという。

 約11万人が接種を受ける東京都。19日の接種開始は間に合わず、1週間ずれ込む事態となっている。

 「接種回数が変われば、各自治体への配布量が変わる。接種開始の作業が山場を迎えているこの時期に、なぜなのか」と悲鳴を上げる。

 1回接種について、医療関係者は「希望者が接種できる」と歓迎する一方、患者と接種希望者が同時に殺到する懸念もある。

 吉祥院こども診療所(京都市)の今井博之所長は「海外では早い段階で2回目のワクチンの効果は限定的との報告があった。国がこれまで調査してこなかったツケが回った」と指摘。すでに季節性ワクチンで予約が埋まっているといい、「小児は集団接種にするなど工夫がない限り、医療機関がパンクする」と危惧(きぐ)している。 【長島雅子】

(産経新聞、2009年10月17日)

****** 読売新聞、2009年10月17日

新型インフル、国産ワクチン1回接種

優先対象の13歳以上

 新型インフルエンザの国産ワクチンについて、厚生労働省は16日、これまで2回接種としていた方針を見直し、優先接種対象者のうち13歳以上は、原則1回接種とすることを決めた。

 専門家らの意見交換会が同日開かれ、健康な成人に実施した臨床試験の結果、1回の接種で有効性が確認されたとする報告があり、合意に至った。

 厚労省は来週にも接種計画を見直す。対象者のうち、優先順位が低かったグループの接種スケジュールが前倒しになるほか、輸入ワクチンを使用することが前提だった中高生などの接種対象者にも国産ワクチンが使える見込み。

 国産ワクチンの臨床試験は、9月17日から国立病院機構で、20歳以上の健康な成人を対象に実施。通常量のワクチンを接種した96人中72人(75%)で新型インフルに対する免疫物質(抗体)が増加した。

 一方、副作用は接種者全体のうち45・9%に見られ、多くは局所の腫れや痛みだったが、ショック症状など重い副作用が2人に出た。

 1回接種となるのは医療従事者のほか、▽妊婦▽持病のある人▽1歳未満の乳児の保護者▽13歳以上の中高生▽65歳以上の高齢者。

 持病のある人で免疫力が低下している人などは、主治医らの判断で2回接種できる方向で検討している。13歳未満の小児は、通常の季節性インフルエンザワクチンと同様、2回接種を維持する。

          ◇

 厚労省は16日、都道府県ごとの医療従事者への接種開始日を公表した。それによると、47都道府県のうち、大阪、京都、沖縄など23府県が19日に接種を開始。23道県は「19日の週」に、東京都は翌週の26日にそれぞれ開始する。

未成年8割以上、新規患者64万人

 国立感染症研究所は16日、全国約5000医療機関を対象にした定点調査で、今年7月上旬以降のインフルエンザ患者数が累計で、約234万人に上ったと公表した。また、10月5~11日の1週間の新規患者数は約64万人で、これを年代別で見ると、8割以上が未成年だった。内訳は0~4歳が約4万人、5~9歳が約16万人、10~14歳が約23万人、15~19歳が約10万人で、小中学生の世代で特に感染が広がっている。

(読売新聞、2009年10月17日)

****** 共同通信、2009年10月16日

国産ワクチン1回でも効果 新型インフル、臨床研究で より大勢に接種の可能性

 国内メーカーが製造した新型インフルエンザワクチンの有効性と安全性を確認する臨床研究の中間報告がまとまり、1回の接種でも免疫の指標となる抗体価の上昇がみられ、一定の効果が期待できることが分かった。厚生労働省が16日開催した専門家の意見交換会で報告された。

 新型インフルエンザワクチンは当初、効果を得るためには2回の接種が必要とされていたが、1回でも効果があるとの結果が出たことで、数に限りがあるワクチンを大幅に節約でき、より多くの人に接種できる可能性が出てきた。この日の会議では、健康な中高生以上について1回接種とする方向性が示された。これまで、海外メーカーが製造したワクチンでも同様の結果が報告されている。

 臨床研究は、先月中旬から国内4カ所の医療施設で実施。北里研究所(埼玉県北本市)が製造したワクチンを使って、健康な20~59歳の男女200人を対象に、3週間の間隔をあけて2回接種する。1回につき通常量の0・5ミリリットル接種するグループと、2倍の1ミリリットル接種するグループの2グループに分けた。

 中間報告では、2回目の接種前に採血し、抗体価の上がり方などを調べた。すると、採血できた194人のうち、0・5ミリリットル接種のグループでは96人中75人(78・1%)で、1ミリリットルのグループでは98人中86人(87・8%)で、免疫効果が期待できる抗体の保有が確認された。これらの数字は、国際的な評価基準に照らして「効果あり」と判断できるレベルだという。

 副作用は全体の45・9%にみられ、接種部位の発赤や腫れが多かった。このうち2人に、アレルギー反応であるアナフィラキシーなどの「高度の有害事象」が現れた。

 この結果を受け、厚労省は専門家の意見も踏まえて接種回数を決める方針。国産ワクチンは、来年3月までに2700万人分製造される見通しだが、これは2回接種を前提にした数字で、1回の接種で済めば単純計算で2倍の5400万人分になる。

(共同通信、2009年10月16日)

****** m3com医療維新、2009年10月16日

新型ワクチン接種、「13歳以上は1回」で専門家合意

厚労省が意見交換会を開催、決定は大臣が週明けに行う予定

村山みのり(m3.com編集部)

 10月16日、厚生労働省の「新型インフルエンザワクチンに関する意見交換会」において、13歳以上への新型インフルエンザワクチン接種回数を見直し、1回とする意見がまとめられた。

 合意された方針では、(1)13歳未満の小児については2回接種(今後の臨床試験の結果により1回接種に見直す可能性あり)、(2)13歳以上18歳未満は1回接種(今後の臨床試験の結果により2回接種に見直す可能性あり)、(3)18歳以上は1回接種(妊婦、基礎疾患を持つ患者も含むが、これらの接種希望者については希望・主治医の判断により2回接種も可能)となる。この意見は長妻昭・厚生労働大臣へ報告され、来週初めに大臣の決定が発表される予定。

 意見交換会への列席者は厚労省担当者の他に、尾身茂氏(自治医科大学教授)、田代眞人氏(国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター長)、川名明彦氏(防衛医科大学教授)の3人。また庵原俊昭氏(国立病院機構三重病院長)と岡部信彦氏(国立感染症研究所感染症情報センター長)の2人が電話参加した。

 意見交換会では、9月17日から国立病院機構病院4施設で行われた、新型インフルエンザ国産ワクチンの免疫原性についての臨床試験の中間結果が報告された。対象者は200人の健康成人で、北里研究所製造のワクチンを通常量(15μg:皮下注射)と倍量(30μg:筋肉注射)接種した。

 1回目接種の3週間後、15μg1回接種群ではHI抗体価が40倍以上の人が96人中75人(78.1%)、30μg1回接種群ではHI抗体価が40倍以上の人が98人中86人(87.8%)だった。また、抗体価が4倍以上上昇し、HI抗体価が40倍以上の人の割合は、15μg1回接種群では96人中72人(75.0%)、30μg1回接種群では98人中86人(87.8%)。抗体価変化率は15μg1回接種群は14.5倍、30μg1回接種群は35.0倍だった。HI抗体価値の変化率が4倍以上の人の割合は、15μg1回接種群は83.3%、30μg1回接種群は93.9%だった。

 副反応は接種者全体のうち45.9%に見られた。H5N1ワクチンの66.1%に比べて低かったが、15μg皮下注群は58.8%と30μg筋注群33.3%に比べ、発赤、腫脹の頻度が高かった(手技の違いによる差)。高度の有害事象として、アナフィラキシー反応、中毒疹が各1例認められた。

 これらの結果から、治験調整医師は、(1)1回接種後の抗体保有率、抗体陽転率、抗体価変化率とも30μg接種群の方が優れているが、15μg接種群も30μg接種群も1回摂取でEMEAの評価基準(文末を参照)を満たす、(2)CSL(スプリット、アジュバントなし)のデータ、Novartis(スプリット、MF59入り)のデータと比較しても遜色はない(comparable)、(3) 15μg1回接種でEMEAの評価基準を満たすこと等を考慮すると、HAタンパク量15μg1回接種で効果的な免疫反応が期待できる、とコメントしている。

 また意見交換会の議論では、(1)米国やオーストラリアなどで、ワクチン接種は1回で効果があるとの報告がなされている(FDAのホームページ)、(2)先進諸外国では、新しい型のインフルエンザウイルスが出現しない限り、年少児を除いてほとんどの人がインフルエンザに対する基礎免疫を獲得しているため、1回の接種で追加免疫の効果があるとする考えが一般的である、(3)日本におけるインフルエンザワクチンの接種回数に関する近年の研究結果を検討し、65歳以上の高齢者については1回の接種で十分有効であるとの結論に至っている、といった点も考慮された。

 臨床試験は健康成人のみを対象としたものだが、田代氏は13歳以上18歳未満(中高生に該当する年代)への1回接種の効果について「1977年からAソ連型が流行しており、ほとんどの人がこれに暴露している。中学・高校生の年代もソ連型ウイルスにプライミングされており、成人と同様の抗体レスポンスが起こることが十分に予測される」と述べた。

 岡部氏はこれに同意しつつも、「1回で免疫は上がるだろうと思うが、もし時間があるのであればパイロット試験を行い、中学・高校生のデータを取った上で判断した方が確実ではないか」と慎重な対応を促した。この発言を受け、中学・高校生への接種開始が1月後半以降となる見込みであることから、厚労省側は1回接種を前提としつつ、小規模試験を行うことを了承した。

 妊婦については、「免疫状態が極めて異常であるということはなく、健康成人と同様に考えて良い」として1回接種で合意。基礎疾患を持つ人について、庵原氏は「喘息や糖尿病の患者と、白血病、抗がん剤使用者、HIV感染者など、著しい免疫不全患者は分けて考える必要がある」と指摘。免疫不全者は不活化ワクチンでは免疫が付きにくいため、アジュバント入りワクチンの使用も含め検討することが望ましいとした。ただし、今回はアジュバント入りの国外産ワクチンの輸入を待つと接種が遅れるため、まず国内産ワクチンを接種し、今後副反応などの観点も含めて検討する方針とされた。基礎疾患のある患者については医師の裁量でワクチンの2回接種も可能とされ、その具体的基準などについては今後Q&Aなどで示される予定。

 このほか、臨床試験において報告された有害事象がいずれも重篤であることから、詳細をさらに調べることなどが要望された。今回の議論は国産ワクチンに関するものであり、国外産ワクチンの接種回数については輸入・接種がなされる12月-1月頃改めて検討される。なお、ワクチンが1回接種となった場合の費用については、当初の2回接種の場合の1回目の料金3600円が据え置きとなる方針。

******

インフルエンザワクチンの有効性の国際的な評価基準
                                  参考:EMEA評価基準(HI抗体価)

・18-60歳 以下の3つのうち少なくとも一つを満たすこと

1) 抗体陽転率 「HI抗体価が接種前に<10倍かつ接種後40倍以上」または「HI抗体価の変化率が4倍以上の割合 >40%

2) 抗体変化率 幾何平均抗体価(GMT)の接種前後の増加倍率 >2.5倍

3) 抗体保有率 HI抗体価40倍以上の割合 >70%

・60歳以上 以下の3つのうち少なくとも一つを満たすこと

1) 抗体陽転率 「HI抗体価が接種前に<10倍かつ接種後40倍以上」または「HI抗体価の変化率が4倍以上の割合 >30%

2) 抗体変化率 幾何平均抗体価(GMT)の接種前後の増加倍率 >2倍

3) 抗体保有率 HI抗体価40倍以上の割合 >60%

(m3com医療維新、2009年10月16日)


新型インフルエンザ: ワクチン接種を前に自治体悲鳴 「準備間に合わない」

2009年10月10日 | 新型インフルエンザ

10月19日の週から医療従事者への新型インフルエンザのワクチン接種が始まり、11月第1週より妊婦と基礎疾患がある人への接種が始まります。

接種費用は実費負担となり、1回目の接種は3600円、2回目の接種は2550円(ただし、2回目を異なる医療機関で接種を受けた場合は、基本的な健康状態等の確認が再度必要となるため3600円)です。

季節性インフルエンザのワクチンは今回の新型インフルエンザウイルスに対しては有効ではないと考えられています。

これまでの季節性インフルエンザワクチンでは、2回接種した成績によりますと、2回目の接種1~2週後に抗体が上昇し始め、1カ月後までにはピークに達し、3~4カ月後には徐々に低下傾向を示します。したがって、ワクチンの予防効果が期待できるのは接種後2週から5カ月程度と考えられており、新型インフルエンザワクチンでも同程度と考えられます。

インフルエンザワクチンは妊婦に対して特別に重篤な副作用は起こらないと考えられ、一般的に妊娠中の全ての時期において接種可能であるとされています。今回の新型インフルエンザワクチンでは、プレフィルドシリンジ製剤(あらかじめ注射器に注射液が充てんされている製剤)には保存剤の添加は行われておらず、保存剤の添加されていないワクチン接種を希望する妊婦はプレフィルドシリンジ製剤が使用できることになってます。

新型インフルエンザの患者は急増中で11月にも流行のピークを迎えるとの予測があり、ワクチン接種が間に合わない可能性もあります。妊婦は基礎疾患がある患者と同等以上に重症化ハイリスク群と考えられますので、周囲の状況や患者症状からインフルエンザが疑われる場合には簡易検査結果いかんにかかわらず同意後、躊躇なくタミフルを投与することが推奨されてます。

新型インフルエンザワクチンQ&A (厚生労働省)

妊娠している婦人もしくは授乳中の婦人に対しての新型インフルエンザ対応のQ&A (日本産科婦人科学会)

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新型インフルエンザ: ワクチン接種の基本方針決定

新型インフル: 感染中の分娩では産後すぐに母子を1週間隔離

新型インフル: 妊婦向けに防腐剤が入ってないワクチンが100万人分供給される見込み

「新型インフルエンザに感染した妊婦はまず内科受診を」 日本産科婦人科学会が注意喚起

****** 共同通信、2009年10月10日

ワクチン接種を前に自治体悲鳴

「準備間に合わない」

 新型インフルエンザワクチンの接種開始を前に、地方自治体が態勢整備に追われている。2日に国の基本方針が示されてから19日のスタートまでわずか2週間あまり。準備が間に合わず、実施を遅らせる地域も出てきそうだ。

 「国からの情報があまりに少なく、決まっていないことが多すぎる」。千葉県の担当者は頭を抱える。県の相談窓口には1日300~400件の電話が殺到。3分の1はワクチンに関する問い合わせだ。

 「どこで」「いつから」との質問が一番多いが「われわれにもまったく分からない」(担当者)。

 厚生労働省が示した標準的なスケジュールでは、19日以降、医療従事者を皮切りに順次、優先対象者への接種を始める。しかし、県側は接種を行う医療機関の取りまとめや対象者の人数把握、卸業者との納入量の調整などの膨大な作業に追われており、日程通り実施するのは難しいという。

 「県民の不安を取り除くために、早く具体的な日程を示したい」。開始までに、住民に情報を周知できるかどうかも大きな課題だ。

 「段取りを現場に丸投げするなら、もっと時間的な余裕がほしい」とぼやくのは大阪府の担当者。大阪府内で接種を行う医療機関は5千以上になる見込み。「すべての医療機関が一斉に始めるのは無理」といい、準備が整ったところから順次スタートする。

 ワクチン接種が1回で有効なのか、2回必要なのかについても国の最終判断はまだ示されていない。スケジュールが確定しない中、現場の医療機関にも混乱が広がっている。

(共同通信、2009年10月10日)

****** 毎日新聞、2009年10月10日

インフルエンザ:患者最多に 

前週の1.5倍、新たに33万人

 厚生労働省は9日、約5000カ所の定点医療機関を9月28日~10月4日に受診した患者数が、前週(9月21~27日)の約1・5倍の6・40だったと発表した。今シーズン最多で、大半が新型インフルエンザ感染とみられる。この1週間の新たな患者は33万人で5~14歳が過半数の18万人を占めると推計している。

 定点1施設当たりの患者数は、大型連休があった前週に4・25と減少し、流行の拡大に歯止めがかかることが期待されたが、再び増加に転じた。昨冬の季節性インフルエンザに当てはめると、患者数が6を超えた4週間後が流行のピークになっており、今回は11月にピークを迎える可能性がある。

 都道府県別では▽北海道(1施設当たり16・99)▽福岡(同13・41)▽沖縄(同10・47)▽愛知(同10・39)の4道県で、1カ月以内に大流行の恐れがあるとされる「注意報レベル」の10を超えた。東京(9・60)、大阪(8・54)も高い水準のままで、厚労省は「大都市から流行が本格化している」と分析している。 【清水健二】

(毎日新聞、2009年10月10日)

****** 毎日新聞、2009年10月9日

新型インフルエンザ:ワクチン初出荷

 新型インフルエンザの国産ワクチンの出荷が9日始まった。初回出荷は59万人分。19日から医療従事者を対象に予防接種が始まる。

 国内では4社がワクチンを製造中で、この日出荷したのは、北里研究所(埼玉県北本市)▽化学及血清療法研究所(熊本市)▽デンカ生研(東京都中央区)--の3社。阪大微生物病研究会(大阪府吹田市)のワクチンは20日の初出荷を予定している。国産ワクチンは年度内に約2700万人分を製造。接種対象者約5400万人の不足分を補う海外メーカーのワクチンは12月下旬にも輸入が始まる。

 北里研究所生物製剤研究所では、所内の工場で製造され5度に保たれた冷蔵庫で貯蔵されていたワクチンをトラックで初出荷。この日は計約9万4000人分(約18万8000回分)を大阪府や埼玉県の薬品販売会社に届ける。【清水健二、平川昌範】

(毎日新聞、2009年10月9日)

****** 日本産科婦人科学会、お知らせ

妊娠している婦人もしくは授乳中の婦人に対しての新型インフルエンザのQ&A

今回(平成21年9月28日)改定の要旨

① 新生児の厳重観察内容と異常が出現した場合の対応を加えたこと
② 予防投与について記述をまとめて、かつ投与日数10日間を明記したこと

妊婦もしくは褥婦に対しての
新型インフルエンザ(H1N1)感染に対する対応
Q&A (一般の方対象)

         平成21年9月28日(6版)
         社団法人 日本産科婦人科学会

Q1: 妊娠している人は一般の妊娠していない人に比べて新型インフルエンザに感染した場合、症状が重くなるのでしょうか?
A1:妊婦は肺炎などを合併しやすく、基礎疾患がある方と同様に重症化しやすいことが明らかとなりました。

Q2: 妊婦が新型インフルエンザワクチンを受けても大丈夫でしょうか?
A2: 安全かつ有効であると考えられています。季節性インフルエンザワクチンに関しては米国では長い歴史があり、安全性と有効性が証明されています。米国では毎年、約60万人の妊婦さんが季節性インフルエンザワクチン接種を受けていますが、大きな問題は起こっておりません。妊娠中にワクチン接種を受けた母親からの赤ちゃんについても有害事象は観察されていません。新型インフルエンザワクチンも季節性インフルエンザワクチンと同様な方法で作られているので同様に安全と考えられています。ワクチンを受けることによる利益と損失(副作用など)を考えた場合、利益のほうがはるかに大きいと世界保健機構(WHO)も考えており、妊婦に対する新型インフルエンザワクチン接種を推奨しています。また、ワクチンを受けるということは「自分を守る」とともに、「まわりの人を守る」ことにつながります(妊娠中にワクチンを受けると出生した赤ちゃんも数ヶ月間インフルエンザになりにくいことが証明されています)。

ワクチンの安全性に関しては以下を参照して下さい。
http://www.ncchd.go.jp/kusuri/index.html

Q3:妊婦にインフルエンザ様症状(38℃以上の発熱と鼻汁や鼻がつまった症状、のどの痛み、咳)が出た場合、どのようにすればよいでしょうか?
A3:インフルエンザであった場合、症状発現後48時間以内の抗インフルエンザ薬(タミフル)服用開始が重症化防止に最も効果があります。予め医療機関に電話をして早期に受診し、タミフルによる治療を受けます。この際、他の健康な妊婦や褥婦への感染を予防するために、かかりつけ産婦人科医を直接受診することは極力避け、地域の一般病院受診をお勧めします。あらかじめ受診する病院を決めておくと安心です。もし、一般病院での受診が困難な場合には、かかりつけ産婦人科医が対応します。この際にも事前に電話をして受診します。これは他の妊婦への接触を避けるために非常に重要な注意点になります。当然ですが、産科的問題(切迫流早産様症状、破水、陣痛発来、分娩など)に関しては、新型インフルエンザが疑われる場合であっても、重症でない限り、かかりつけ産婦人科施設が対応します。いずれの病院へ受診する際にもマスク着用での受診をお勧めします。これは他の健康な方に感染させないための重要なエチケットとなります。 新型インフルエンザであっても簡易検査ではしばしばA型陰性の結果が出ることに注意が必要です。周囲の状況(その地域で新型インフルエンザが流行しているなど)から新型インフルエンザが疑われる場合には、簡易検査結果いかんにかかわらずタミフルの服用をお勧めします。妊婦は基礎疾患がある方と同様に重症化しやすいことが明らかとなったために、このようなお勧めをしています。

Q4: 妊婦の新型インフルエンザ感染が確認された場合の対応はどうしたらいいでしょうか?
A4: ただちに抗インフルエンザ薬(タミフル、75mg錠を1日2回、5日間)を服用するよう、お勧めします。

Q5: 妊娠した女性が新型インフルエンザ感染者と濃厚接触(ごく近くにいたり、閉ざされた部屋に同席した場合)した場合の対応はどうしたらいいでしょうか?
A5: 抗インフルエンザ薬(タミフル、あるいはリレンザ)服用(予防目的)をお勧めします。ただし、予防される期間は予防薬を服用している期間に限られます。また、予防効果は100%ではありませんので予防的に服用している間であっても発熱が有った場合には受診することをお勧めします。

Q6: 抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)はお腹の中の赤ちゃんに大きな異常を引き起こすことはないのでしょうか?
A6: 2007年の米国疾病予防局ガイドラインには「抗インフルエンザ薬を投与された妊婦および出生した赤ちゃんに有害な副作用(有害事象)の報告はない」との記載があります。また、これら薬剤服用による利益は、可能性のある薬剤副作用より大きいと考えられています。催奇形性(薬が奇形の原因になること)に関して、タミフルは安全であることが最近報告されました。

抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)の安全性については以下を参照して下さい。
http://www.ncchd.go.jp/kusuri/index.html

Q7: 抗インフルエンザ薬 (タミフル、リレンザ) の予防投与 (インフルエンザ発症前) と治療投与 (インフルエンザ発症後) で投与量や投与期間に違いがあるのでしょうか?
A7: 米国疾病予防局の推奨では以下のようになっていますので、日本でも同様な投与方法が推奨されています。
1.タミフルの場合
予防投与:75mg錠 1日1錠(計75mg)10日間
治療のための投与:75mg錠 1日2回(計150mg)5日間
2.リレンザの場合
予防投与:10mgを1日1回吸入(計10mg)10日間
治療のための投与:10mgを1日2回吸入(計20mg)5日間

Q8: 予防投与した場合、健康保険は適応されるのでしょうか?
A8: 予防投与は原則として自己負担となりますが、自治体の判断で自己負担分が公費負担となる場合があります。

Q9: 母親が感染した場合、新生児・乳児への注意点は?
A9: 児への感染が心配されます。児の観察をしっかり行い、発症の早期発見に努めます。児が感染した場合の症状は「活気がない、母乳・ミルクの飲みが悪い、呼吸回数が多くて苦しそうだ、呼吸が止まったように見受けられる時がある、発熱がある、咳・鼻水・鼻閉がある、少しの刺激にも過敏に反応する」などですので、これらの有無に注意します。もし、これらのいずれかが出現した場合には、タミフルの早期投与開始が重症化防止に奏功する可能性があるので、できるだけ早く小児科医を受診します。児が未感染の場合、無防備な児への接触は児への感染危険を高めますので、児のケアや観察時には次Q&Aを順守します。

Q10: 感染している(感染した)母親が授乳することは可能でしょうか?
A10: 母乳を介した新型インフルエンザ感染は現在のところ知られていません。したがって、母乳は安全と考えられます。しかし、母親が直接授乳や児のケアを行なうためには以下の3条件がそろっていることが必要です。
1)タミフルあるいはリレンザを2日間以上服用していること
2)熱が下がって平熱となっていること
3)咳や、鼻水が殆どないこと
これら3条件を満たした場合、直接授乳することや児と接触することができます。ただし、児と接触する前に手をよく洗い、清潔な服に着替えて(あるいはガウンを着用し)、マスクを着用します。また、接触中は咳をしないよう努力することをお勧めします。上記3条件を満たしていない間は、母児は可能なかぎり別室とし、搾乳した母乳を健康な第三者が児に与えることをお勧めします。このような児への感染予防行為は発症後7日~10日間にわたって続けることが必要です。発症後7日以上経過し、熱がなく症状がない場合、他人に感染させる可能性は低い(まったくなくなったわけではない)と考えられていますので通常に近い母児接触が可能となります。

         本件Q&A改定経緯:
         初版 平成21年5月19日
         2版 平成21年6月19日
         3版 平成21年8月4日
         4版 平成21年8月25日
         5版 平成21年9月7日
         6版 平成21年9月28日

******

妊婦もしくは褥婦に対しての
新型インフルエンザ(H1N1)感染に対する対応
Q&A (医療関係者対象)

         平成21年9月28日(6版)
         社団法人 日本産科婦人科学会

Q1: 妊婦は非妊婦に比して、新型インフルエンザに罹患した場合、重症化しやすいのでしょうか?
A1:妊婦は重症化しやすく、また死亡率が高いことが強く示唆されています。

Q2: 妊婦への新型インフルエンザワクチン投与の際、どのような説明が必要でしょうか?
A2: 季節性インフルエンザワクチンに関しては米国では長い歴史があり、安全性と有効性が証明されている。米国では季節性インフルエンザワクチンは毎年、約60万人の妊婦に接種されている。妊娠中にワクチン接種を受けた母親からの児についても有害事象は観察されていない。新型インフルエンザワクチンも季節性インフルエンザワクチンと同様な方法で作られているので同様に安全と考えられている。ワクチンを受けることによる利益と損失(副作用など)を考えた場合、利益のほうがはるかに大きいと考えられている。WHOも同様に考えており、妊婦に対する新型インフルエンザワクチン接種を推奨している。また、ワクチンを受けるということは「自分を守る」とともに、「まわりの人を守る」ことである。以上のようなことを説明し、ワクチン接種の必要性について理解して頂きます。

ワクチンの安全性に関しては以下を参照して下さい。
http://www.ncchd.go.jp/kusuri/index.html

Q3: インフルエンザ様症状が出現した場合の対応については?
A3: 発熱があり、周囲の状況からインフルエンザが疑われる場合には、「できるだけ早い(可能であれば、症状出現後48時間以内)タミフル服用開始が重症化防止に有効である」ことを伝えます。受診する病院に関しては、あらかじめ決めておくよう指導します。妊婦から妊婦への感染防止という観点から妊婦が多数いる場所(例えば産科診療施設)への直接受診は避けるよう指導します。これはあくまでも感染妊婦と健康な妊婦や褥婦との接触を避ける意味であり、「接触が避けられる環境」下での産科施設での感染妊婦の診療は差し支えありません。妊婦には一般病院を受診する際にも事前に電話するよう指導します。また、マスク着用の上、受診することを勧めます。一般病院へのアクセスが種々の理由により時間がかかる、あるいは困難と判断された場合にはかかりつけ産婦人科医が対応します。当然ですが、産科的問題(切迫流・早産様症状、破水、陣痛発来、分娩など)に関しては、新型インフルエンザが疑われる場合であっても、重症でない限り、かかりつけ産婦人科施設が対応します。ただし、院内感染防止対策に関しては最大限の努力を払い、感染妊婦と職員あるいは健康な妊婦・褥婦間に濃厚接触があったと考えられる場合は、濃厚接触者に対して速やかにタミフル、あるいはリレンザの予防投与を考慮します。
A型インフルエンザ感染が確認されたら、ただちにタミフルを投与します。妊婦には、「発症後48時間以内のタミフル服用開始(確認検査結果を待たず)が重症化防止に重要」と伝えます。新型インフルエンザであっても簡易検査でしばしばA型陰性の結果となることに注意が必要です。基礎疾患があり、インフルエンザが疑われる患者には簡易検査の結果いかんにかかわらずタミフルを投与すべきとの意見もあります。妊婦は基礎疾患がある患者と同等以上に重症化ハイリスク群と考えられていますので、周囲の状況や患者症状からインフルエンザが疑われる場合には簡易検査結果いかんにかかわらず同意後、躊躇なくタミフルを投与します。

Q4: インフルエンザ重症例とはどういう症例をさすのでしょうか?
A4: 肺炎を合併し、動脈血酸素化が不十分な状態になった場合、人工呼吸器が必要となりますので、それらに対応できる病院への搬送が必要となります。したがって、呼吸状態について常に注意を払う必要があります。また、若年者ではインフルエンザ脳症(言動におかしな点が出て来ます)や心筋炎もあり、これらも重症例です。

Q5: 妊婦が新型インフルエンザ患者と濃厚接触した場合の対応はどうしたらいいでしょうか?
A5: 抗インフルエンザ薬(タミフル、あるいはリレンザ)の予防的投与(10日間)を行います。予防投与は感染危険を減少させますが、完全に予防するとはかぎりません。また、予防される期間は服用している期間に限られます。予防的服用をしている妊婦であっても発熱があった場合には受診するよう勧めます。

Q6: 抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)は胎児に大きな異常を引き起こすことはないのでしょうか?
A6: 2007年の米国疾病予防局ガイドラインには「抗インフルエンザ薬を投与された妊婦および出生した児に有害事象の報告はない」との記載があります。また、これら薬剤服用による利益は、可能性のある薬剤副作用より大きいと考えられています。催奇形性(薬が奇形の原因になること)に関して、タミフルは安全であることが最近報告されました。

抗インフルエンザ薬 (タミフル、リレンザ)の安全性については以下を参照して下さい。
http://www.ncchd.go.jp/kusuri/index.html

Q7: 抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)の予防投与(インフルエンザ発症前)と治療投与(インフルエンザ発症後)で投与量や投与期間に違いがあるのでしょうか?
A7: 米国疾病予防局の推奨では以下のようになっていますので、本邦妊婦の場合にも同様な投与方法が推奨されます。
1.タミフルの場合
予防投与:75mg錠 1日1錠(計75mg)10日間
治療のための投与:75mg錠 1日2回(計150mg)5日間
2.リレンザの場合
予防投与:10mgを1日1回吸入(計10mg)10日間
治療のための投与:10mgを1日2回吸入(計20mg)5日間

Q8: 予防投与した場合、健康保険は適応されるのでしょうか?
A8: 予防投与は原則として自己負担となりますが、自治体の判断で自己負担分が公費負担となる場合があります。

Q9: 分娩前後に発症した場合は?
A9: タミフル(75mg錠を1日2回、5日間)による治療をただちに開始します。また、母親が分娩前7日以内あるいは分娩後に発症した場合、母児は可能なかぎり別室とし、児も感染している可能性があるので、厳重に経過観察します。児が感染した場合、想定される症状としては「活気不良、哺乳不良、多呼吸・酸素飽和度の低下などの呼吸障害、無呼吸発作、発熱、咳・鼻汁・鼻閉などの上気道症状、易刺激性」があるので、これらの有無に注意します。これらが出現した場合には直ちに簡易検査を行いますが、感染初期には陰性と出やすいので、陰性であっても症状の推移に十分注意し、必要に応じて小児科医(新生児担当小児科医)に相談・紹介あるいはタミフル投与(治療投与:4mg/kg 分2×5日間)を考慮します。一般にタミフルの副作用は下痢と嘔吐とされているが、新生児でのデータはありません。

児から児への感染予防のための隔離法や母児同室の場合の注意点については日本産婦人科医会ホームページに公開されている対応法を参考にします。あわせて、日本小児科学会ホームページの新型インフルエンザ関連情報 も参考にします。

Q10: 感染している(感染した)母親が授乳することは可能でしょうか?
A10: 母乳を介した新型インフルエンザ感染は現在のところ知られていません。したがって、母乳は安全と考えられます。しかし、母親が直接授乳や児のケアを行なうためには以下の3条件がそろっていることが必要です。
1)タミフルあるいはリレンザを2日間以上服用していること
2)熱が下がって平熱となっていること
3)咳や、鼻水が殆どないこと
これら3条件を満たした場合、直接授乳することや児と接触することを母親に勧めます。ただし、児と接触する前の手洗い、清潔な服への着替え(あるいはガウン着用)、マスク着用の励行を指導します。また、接触中は咳をしないよう努力することを指導します。上記3条件を満たしていない間は、母児は可能な限り別室とし、搾乳した母乳を健康な第三者が児に与えるよう指導します。このような児への感染予防行為は発症後7日~10日間にわたって続けることが必要です。発症後7日以上経過し、熱がなく症状がない場合、他人に感染させる危険は低い(まったくなくなったわけではない)と考えられているので、通常に近い母児接触が可能となります。

         本件Q&A改定経緯:
         初版 平成21年5月19日
         2版 平成21年6月19日
         3版 平成21年8月4日
         4版 平成21年8月25日
         5版 平成21年9月7日
         6版 平成21年9月28日


新型インフルエンザ: ワクチン接種の基本方針決定

2009年10月02日 | 新型インフルエンザ

新型インフル: 感染中の分娩では産後すぐに母子を1週間隔離

新型インフル: 妊婦向けに防腐剤が入ってないワクチンが100万人分供給される見込み

「新型インフルエンザに感染した妊婦はまず内科受診を」 日本産科婦人科学会が注意喚起

****** 中日新聞、2009年10月2日

新型インフルエンザ:10月中旬からワクチン接種 2回で一律6150円

 政府の新型インフルエンザ対策本部は1日、ワクチン接種の基本方針を決定した。10月中旬から医療従事者や妊婦、基礎疾患(持病)がある人ら約5400万人を対象に順次接種する。費用は接種2回で全国一律6150円とし、国と地方自治体が分担して生活保護世帯を無料とするなどの負担軽減策を取る。

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 ワクチンは5000万人分の輸入を含め来年3月までに計7700万人分を確保する方針。

 接種対象で優先されるのは、医療従事者▽妊婦と基礎疾患(持病)がある人▽1歳~小学3年までの子ども▽1歳未満の乳児の保護者と、優先対象だがアレルギーなどで接種を受けられない人の保護者-の順。小学4~6年生、中高校生、持病のない65歳以上の高齢者も優先する。

 国産ワクチンは19日の週から接種を開始。輸入ワクチンは12月末~1月に輸入が始まる。妊婦らの最優先対象者は国産ワクチン、次に優先する小学高学年、中高生、持病のない高齢者らには輸入ワクチンの接種も想定されている。

 希望者は、都道府県ごとに決める接種時期や日程に従って医療機関などで2回接種する。費用は1回目が3600円、2回目が2550円となる。

 副作用被害の救済制度の拡充や、輸入ワクチンの副作用被害で訴訟が起きた場合、メーカー側の訴訟費用や賠償金を国が肩代わりする内容の特別立法を臨時国会に提出する。

(中日新聞、2009年10月2日)

****** 読売新聞、2009年10月2日

ワクチン接種、19日から…大半は年明け

 政府の新型インフルエンザ対策本部(本部長=鳩山首相)は1日、ワクチン接種に関する基本方針を正式決定した。接種は10月19日の週から始める。医療従事者と重症化の危険性が高い人など計5400万人に順次接種していくが、児童・生徒や高齢者など大半の対象者は年明けの接種になり、流行のピークに間に合わない恐れもある。

 基本方針では、接種目的として感染者の重症化を防ぎ、医療体制を維持することを明示した。接種するかどうかは対象者自身が決め、接種費用(2回接種で計6150円)は自己負担となる。生活保護世帯を含む市町村民税非課税世帯は、無料にする。

 ワクチンは来年3月までに1385億円をかけ、国産2700万人分と海外産4950万人分(計7650万人分)を確保する。

 副作用が起きた人に対して行う救済措置は、季節性インフルエンザワクチンの定期接種と同等にする新たな制度を作る。また、海外ワクチンメーカーが副作用の免責を求めているため、副作用被害者が企業を相手取って訴訟を起こした場合、企業側の訴訟費用や賠償金を政府が肩代わりする制度創設に向け、特別措置法案を今秋の臨時国会に提出する方針だ。

 ワクチンは、優先順位に従って接種。医療従事者や妊婦など優先接種対象者には国産を、健康な児童・生徒と高齢者は来年1月から海外産を接種する。小学校低学年については重症化する症例が多いため、優先接種対象者に組み入れた。

 厚生労働省は今後、全国の各医療機関と接種に関する委託契約を結び、10月中旬までに医療機関名を公表する。対象者は予約をした上で接種するが、医師が保健所などに赴く形での集団接種もできるようにする。

(読売新聞、2009年10月2日)

****** 毎日新聞、2009年10月2日

新型インフルエンザ:ワクチン2回で6150円--接種19日から

 政府は1日、政権交代後初の新型インフルエンザ対策本部(本部長、鳩山由紀夫首相)の会合を開き、ワクチン接種の基本方針を決めた。19日をめどに接種を始め、(1)医療従事者(2)妊婦と基礎疾患のある人(3)1歳~小学校低学年(4)1歳未満の小児らの保護者(5)小学校高学年~高校生と高齢者--の順に進める。同じ医療機関で2回打った場合、接種費用は計6150円になる。

 9月上旬の厚生労働省案では、小学校低学年の接種順位は最後のグループだったが、10歳未満の小児の入院が多いことなどから引き上げた。優先対象の合計は約5400万人で、(1)~(4)の約2300万人は原則的に国産ワクチンを使う。(5)の約3100万人には輸入ワクチンも使う。

 費用は全国一律で1回3600円。2回目は同じ医療機関ならば初診料分が減額されて2550円になる。住民税非課税世帯の優先接種対象者は、65歳以上が対象の季節性インフルエンザワクチンの定期接種と同様に、無料で受けられる。対象者全体の3割弱が無料になるという。

 政府は年度内に必要な新型インフルエンザ対策費を3000億~4000億円と推計。うち約1380億円はワクチン買い上げ費で、低所得者の接種費用の公費負担は約900億円を見込む。公費負担は国が2分の1、都道府県と市町村が4分の1ずつだが、自治体負担分の約450億円は特別交付税を交付する。【清水健二、江口一】

(毎日新聞、2009年10月2日)

****** 毎日新聞、2009年10月2日

新型インフルエンザ:ワクチン接種、妊婦は来月から 優先対象、基礎疾患は八つ

 政府の新型インフルエンザ対策本部の基本方針を基に決定されたワクチン接種のスケジュール。医療従事者を除いた優先接種対象者のうち、妊婦など最も優先度が高い人たちは、11月から接種が始まることになった。年度内には全優先接種対象者(約5400万人)への接種を終える方針だ。【江口一、清水健二】

 優先接種対象となる基礎疾患(持病)について、厚生労働省は慢性の呼吸器病や心臓病など八つを示した。当初は供給量が限られるため、小児を含め、中でも最優先とする患者の基準を設定。この人たちは11月に接種を始め、それ以外の患者は12月以降接種予定とした。

 接種対象の1歳~小学3年生までのうち、アレルギーなどがあって接種できない子の保護者らも新たに優先接種対象となり、1歳未満の保護者と併せて来年1月以降接種する。

 対象者かどうかは医師が判断し、接種は基本的にかかりつけの医療機関で予約して受ける。しかし自治体の方針などによっては接種対象者の証明書を発行してもらい、別の医療機関や保健所などで接種することもある。

 スケジュールは、対象者に4週間間隔で2回接種することを前提としている。しかし、海外では「健康な成人には1回接種で十分」との臨床試験(治験)結果が出ており、国内の結果も10月中旬には判明するため、今月下旬以降に見直される可能性もある。その場合は、優先接種対象者以外の一般国民も接種を受けられるようになる可能性もある。

 輸入ワクチンは国内の治験などで安全性が確認されれば、来年1月から使用を始める。製薬会社大手のグラクソ・スミスクライン(英)から3700万人分、ノバルティス(スイス)から1250万人分を輸入するとしている。両社は副作用被害に対する免責を販売条件にしており、政府は、訴訟費用などの損失を国が肩代わりするための特別法案を臨時国会に提出する。

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優先接種対象の基礎疾患と、その中でも最優先となる患者の基準

対象の疾患 最優先となる患者の基準

慢性の呼吸器病 治療や綿密な経過観察が必要なぜんそくや肺気腫などの患者。特に呼吸機能の低下している患者

慢性の心臓病 「安静時には無症状だが、日常活動でも疲労や動悸(どうき)、呼吸困難、狭心痛がある」という状態より重い症状の患者

慢性の腎臓病 透析中や透析を始める前の腎不全患者。腎移植を受けた人。腎臓病と他の合併症がある人など

肝硬変 進行した患者

神経・神経筋の病気 多発性硬化症や重症筋無力症など免疫異常性の神経疾患。筋萎縮(いしゅく)性側索硬化症(ALS)などの神経難病で呼吸障害などがある人

血液の病気 白血病、悪性リンパ腫などすべての造血器腫瘍(しゅよう)患者。造血幹細胞移植後、半年以上たった患者

糖尿病 ぜんそくや心臓病、腎不全などを併発した糖尿病患者や妊婦。1歳~高校生までの患者、インスリン療法が必要な患者

病気や治療で免疫抑制状態 HIV感染を含む免疫不全疾患。抗がん剤治療中の人。免疫抑制剤やステロイドを継続して使っている人

小児の病気 長期入院の子ども、ぜんそく、脳性まひ、重症心身障害児。15歳までの染色体異常症、小児がんなど

※最優先ではない患者は、基礎疾患のある人(その他)に分類される。

(毎日新聞、2009年10月2日)


新型インフルエンザ: 感染中の分娩では産後すぐに母子を1週間隔離

2009年09月24日 | 新型インフルエンザ

新型インフル: 妊婦向けに防腐剤が入ってないワクチンが100万人分供給される見込み

「新型インフルエンザに感染した妊婦はまず内科受診を」 日本産科婦人科学会が注意喚起

新型インフルワクチン最終案 1900万人接種最優先

****** 読売新聞、2009年9月23日

「新型」母が発症なら隔離を…新生児対応案

 日本小児科学会(会長=横田俊平・横浜市立大教授)は23日、新型インフルエンザに感染すると重症化する可能性のある新生児に対する治療対応案を公表した。

 出産7日前から母親に症状があった場合、出産後はすぐ母子を1週間隔離し、搾った母乳を第三者が与えるよう推奨した。また、同学会は、小児患者のインフルエンザ脳症の治療指針の改訂版や急速に重症化する肺炎の診療戦略も発表した。

 新生児の対応案によると、母子間で飛沫感染しないように新生児を別の個室などに入れるのが望ましいが、それが無理な場合は1・5メートル以上の距離を置く。新生児の感染の可能性を考慮して他の新生児とも部屋を分ける。新生児が発症した場合は、タミフルを投与する。感染が疑われる母子が他の新生児に接触した場合は、その新生児の両親に十分な説明をし同意を求めたうえでタミフルを予防投与できるようにした。

 この日開かれた同学会緊急フォーラムでは、小児の重症例としてインフルエンザ脳症20例、重症化した肺炎14例が報告された。同学会は今後、全国3000医療機関から脳症や重症化する肺炎について情報収集し、有効な治療法などをさらに検討する方針。

(読売新聞、2009年9月23日)

****** 中日新聞、2009年9月18日

新型インフルエンザ 妊婦は? 

免疫低下し重症化も

 妊婦は新型インフルエンザに感染・発症しやすく、重症化もしやすい。出産を迎えるまでの期間、予防や感染拡大防止に注意点がある。医療機関側も妊婦の出産時の対応策をまとめ、受け入れ準備を進めている。 

 「急な発熱やのどの痛み、せき、頭痛など新型インフルエンザの症状に十分注意してください」

 東京都練馬区の豊玉保健相談所で開かれた妊婦対象の「母親学級」。全国的に感染が広がった九月初旬、当初予定していた妊婦体操に加え、保健師が感染予防策をまとめたチラシを妊婦に渡して、新型インフルエンザの説明を行った。保健師の伊藤可奈子さんは「妊婦さんから問い合わせもきていた」と、感染対策への関心は高い。

 参加者で、来年一月に出産予定の荒木和美さん(32)は「帰宅後のうがいと手洗いを夫と徹底している。感染した人がどこにいてもおかしくないので、できることをしている」。母親学級での同様な取り組みは各地で始まっている。

 【タミフルは?】

 新型インフルエンザにかかると妊婦は重症化しやすい。「妊娠すると免疫機能が低下し、また大きくなったおなかに圧迫されて呼吸器機能が低下するためとされている」と日本産婦人科医会常務理事で横浜市立大付属病院産婦人科部長の平原史樹医師は説明する。

 三八度以上の発熱など症状が現れたら、早く医療機関へ受診することが大切だ。抗インフルエンザ薬タミフルについて、日本産科婦人科学会は「投与された妊婦や出生した赤ちゃんに有害な副作用の報告はない」との米国の報告を基に、妊婦に使用を勧めている。

 【受診は?】

 同学会では、妊婦から妊婦への感染を予防するため、原則として内科など新型インフルエンザ治療を行っている医療機関への受診を勧めているが、一般病院への来院が難しい場合は、かかりつけの産科でも対応することにした。受診する際には、あらかじめ電話で連絡をし、マスクを着けて行くようにする。

 【ワクチンは?】

 数量に限りのあるワクチンは、国の定める優先接種の対象に妊婦も入っている。同医会は「妊娠のどの時期に接種してもかまわない」との見解だ。接種場所は、地域の医師会が医療機関のリストを作成し、国がまとめて十月中旬に公表する。接種希望者は原則、医療機関に予約して受けることになりそうだ。ワクチンは二回接種で、費用は合計約八千円と見込まれる。

感染中分娩 産後は母児別室に

 出産を受ける産科側の感染者受け入れ策もまとまった。同医会が今月まとめた「新型インフルエンザ罹患(りかん)(疑いを含む)の妊産婦の分娩(ぶんべん)施設における対応について」によると、感染・発症した妊婦は医療機関内で常時マスクを着用し、手洗いと手指消毒を徹底し、できるだけ移動させないようにする。

 個室を使用してもらうが、それが難しい場合には常に同じスタッフが対応するなど周囲との接触の機会を減らす。

 出産は、重症化していなければ一般の分娩室で行え、分娩後に室内の十分な消毒を行う。重症化している場合は「救命救急の機能のある総合周産期医療センターなどでないと対応が難しい」と平原医師は言う。

 出産前七日以内に発症していた場合や、感染・発症中に出産した場合は原則一週間、母児別室にし新生児への感染を避ける。同室の場合、くしゃみなどのしぶきがかからないよう一、二メートル以上離すか、新生児を保育器に入れて対応する。この間母乳は直接ではなく、搾乳したものをあげる。

 「いつ患者が出ても対応できるよう医療機関は臨戦態勢の意識が必要だ。限られた医療機関で対応するには、妊婦や家族にも協力してほしい」と平原医師は呼びかけている。

(中日新聞、2009年9月18日)

****** 朝日新聞、2009年9月23日

新型インフル、呼吸不全も注意 急に症状悪化 小児学会

 新型の豚インフルエンザで脳症になった子どもは全国で20人、呼吸ができなくなる重い呼吸不全(ARDS)になった子どもは14人にのぼることがわかった。いずれも15歳以下で、23日に東京都内で開かれた日本小児科学会の緊急フォーラムで報告された。ARDSにつながる恐れのある呼吸障害が季節性インフルエンザより起こりやすいことを示す調査も報告された。

 厚生労働省のインフル脳症研究班代表を務める森島恒雄・岡山大教授は21日までに新型インフルで脳症になった子どもは20人と報告。「脳症の比率は季節性より多い」という。感染者に小学生以上が多いためか、平均年齢は7.3歳と、3歳以下が多い従来の季節性より高かった。

 また、同学会のまとめでは、21日までに14人の子どもがARDSになった。急激に症状が悪化するので迅速な治療が必要とされる。学会は今回、ARDSの治療戦略も発表した。肺がしぼむのを防ぐため、人工呼吸器で従来より高い圧力で酸素を供給するよう推奨している。経験のある医師がいない場合、地域の他の病院に患者を送ることも必要だという。

 ARDSや肺炎の治療に詳しい小児科医11人の名前や連絡先も小児科学会のウェブサイト(http://www.jpeds.or.jp/)で公開した。

 また、都立府中病院の寺川敏郎医師(小児科)によると、都立府中、墨東、荏原の3病院で7~9月に新型インフルで入院した小児は23人。うち19人が呼吸障害と、大半を占めた。これに対して過去2年間に都立府中病院に季節性で入院した小児23人では、19人がけいれんや意識障害などで、神経症状の方が圧倒的に多かった。 【大岩ゆり】

(朝日新聞、2009年9月23日)

****** 朝日新聞、2009年9月22日

新型インフルエンザで小1男児死亡 滋賀

 滋賀県は22日、新型インフルエンザに感染した同県守山市の小学1年の男児(7)が、インフルエンザ脳症で死亡したと発表した。厚生労働省によると、新型の感染が確認か、または疑われた患者の死亡は全国18人目で、今回の男児は最年少。インフルエンザ脳症になったことが確認された新型インフル患者は、この男児を含めて全国で24人いるが死者は初めて。

 滋賀県健康推進課によると、男児は19日朝からせきや熱などの症状を訴え、病院で子どもにも使える解熱剤などの処方を受けた。20日も40度以上の熱が続いたため診療所で診察を受けた。けいれんなどの症状があり、簡易検査でA型インフルエンザと診断された。

 同日に別の病院に入院しタミフルの投与などを受けたが意識不明となったためインフルエンザ脳症を疑い、滋賀医科大医学部付属病院(大津市)に転院。遺伝子検査で新型インフルと確認された。21日に体温が34.6度まで下がり、血圧も低下するなど容体が悪化。同日午後9時25分にインフルエンザ脳症で死亡した。男児には、数カ月に1度程度、熱を出す周期性発熱症候群の疑いがあった。

 男児の通っていた小学校によると、男児は18日まで元気に登校していた。この小学校ではインフルエンザ感染で19日から3年生1クラスが学級閉鎖となり、同日予定していた運動会を中止した。

(朝日新聞、2009年9月22日)

****** 朝日新聞、2009年9月17日

新型インフルエンザに感染の12歳死亡 横浜

 横浜市は17日、新型インフルエンザに感染した同市都筑区の小学6年の男児(12)が死亡したと発表した。頭蓋(ずがい)内出血が死因とみられる。気管支ぜんそくの病歴があるが、新型インフルエンザ感染との因果関係は不明という。厚生労働省によると、新型インフルエンザの感染が疑われる患者の死亡は全国15人目。未成年者で亡くなったのは初という。

 市によると、男児は今月2日午前、39度台の熱と吐き気のため近くの病院を受診。発熱が続き、意識がもうろうとしたため翌3日に市内の別の病院に入院した。ウイルスが原因とされることが多いという「心筋炎」と診断され、集中治療室で治療を受けていた。入院後の血液検査でインフルエンザが疑われ、14日に横浜市衛生研究所でA型が確認されたという。

 死因は頭蓋内の血管腫から出血を起こしたためとみられている。横浜市の修理淳・医務担当部長は「心筋炎で出血を起こしやすくなるが、頭蓋内出血も含め、インフルエンザとの関連も現時点では分からない」と説明した。

 日本アレルギー学会によれば、インフルエンザ感染はぜんそくを悪化させる原因のひとつ。呼吸器へのウイルス感染が発作を起こしやすくするという研究があるという。

 厚生労働省のまとめでは、7月28日~9月1日に新型インフルで入院した患者579人のうち半数弱に持病があり、ぜんそくなど慢性呼吸器疾患は138人と持病の中で最多だった。

 横浜市では夏休み終了後から17日まで、延べ70校82クラスがインフルエンザによる学級閉鎖となっている。

(朝日新聞、2009年9月17日)


新型インフル: 妊婦向けに防腐剤が入ってないワクチンが100万人分供給される見込み

2009年09月20日 | 新型インフルエンザ

「新型インフルエンザに感染した妊婦はまず内科受診を」 日本産科婦人科学会が注意喚起

新型インフルワクチン最終案 1900万人接種最優先

****** 読売新聞、2009年9月20日

新型インフル、妊婦向けに防腐剤なしワクチン

 厚生労働省は、新型インフルエンザに感染すると重症化するリスクが高い妊婦のために、胎児への影響が不明な有機水銀系の防腐剤が入っていないワクチンを供給することを決めた。

 国内の妊婦をほぼカバーできる約100万人分の製造を、国内のメーカーが進めている。11月中旬ごろから、普通のワクチンと選択できるようになる見込みだ。

 通常のインフルエンザワクチンは、10ミリ・リットルか1ミリ・リットルの小瓶に入っている。この小瓶から、13歳以上は1回0・5ミリ・リットル、6歳以上13歳未満は0・3ミリ・リットルなどと、年齢に応じて決められた使用量を注射器で吸い出して使う。そのため、雑菌が混入、繁殖しないよう、エチル水銀系の防腐剤などが使われている。

 新しい妊婦用ワクチンは小瓶を使わず、製造段階で使い捨て注射器に1回分(0・5ミリ・リットル)を封入することによって、雑菌の混入を防ぐ仕組み。

 エチル水銀は重大な健康被害はないとされているが、胎児への影響は不明。国内では従来、妊婦へのワクチン接種を極力避けてきた経緯がある。

(読売新聞、2009年9月20日)

****** 共同通信、2009年9月19日

妊婦にワクチン90%の効果 

インフル免疫、新型も期待

 妊娠中に季節性インフルエンザワクチンを接種した女性には、感染や重症化予防に必要な抗体が90%の確率で生成され、胎児にも十分な免疫力が備わることが19日、国立成育医療センター(東京)の研究で分かった。

 一般の人に比べ、安全面に慎重な配慮が必要で研究対象になりにくい妊婦や胎児について、インフルエンザワクチンの有効性を免疫学的に立証した報告は海外にも例がないといい、研究を主導した同センター母性内科の山口晃史医師は「副作用も認められなかった。新型インフルエンザ用ワクチンも製造法は基本的に同じなので、同様の効果が期待できる」としている。

 研究は一昨年から昨年にかけ、同センターに来院した妊娠15~39週の女性125人(25~41歳)を対象に実施。病原性を除去したA型2種、B型1種のウイルス株を含む不活化ワクチンを使い、接種前と接種1カ月後の血中の抗体価(免疫力を示す指標)を調べた。

 その結果、45人は接種以前に3種すべてのウイルスに免疫があり反応は鈍かったが、残り80人の90%に当たる72人は、ワクチンに明確に反応。免疫のないウイルスに対する抗体が急増し、十分な免疫力の目安とされる「抗体価40倍」を超えた。8人は反応したものの程度が不十分だった。

 研究論文は近く米ウイルス学専門誌「ジャーナル・オブ・メディカル・バイロロジー」に掲載される。

インフルエンザワクチン 国内で製造されているワクチンは、培養したインフルエンザウイルスをエーテルで処理して感染性や病原性を失わせ、表面のタンパクを有効成分として使用する「スプリットタイプ」と呼ばれるもの。国内4社が新型インフルエンザ用ワクチンを製造しているが、これらは従来の季節性インフルエンザ用と製法が同じため、新たな治験や承認は必要ない。インフルエンザワクチンは重症化や死亡を防ぐことに一定の効果があるとされるが、感染防止や流行阻止について効果は保証されていない。また、まれではあるが、重い副作用が起こる可能性もある。

(共同通信、2009年9月19日)

****** 読売新聞、2009年9月19日

新型ワクチン優先接種、ぜんそく・心疾患などに

 厚生労働省は18日、新型インフルエンザワクチンを優先接種する9種類の病気を公表した。

 季節性インフルエンザワクチンとの同時接種についても、国産の新型ワクチンに限って認める方針を示した。持病がある人約900万人を、医療従事者に次ぐ2番目の優先対象としていたが、病名がはっきりしていなかった。

 9種類の内訳は〈1〉慢性呼吸器疾患(ぜんそくなど)〈2〉慢性心疾患〈3〉慢性腎疾患(透析患者も)〈4〉肝硬変〈5〉神経疾患・神経筋疾患(多発性硬化症など)〈6〉血液疾患(急性白血病など)〈7〉糖尿病〈8〉がんなどで免疫が抑制された状態〈9〉小児の疾患(重症心身障害も含む)。

 それぞれの病気の中で、季節性インフルエンザを発症すると重症化しやすい患者を、特に優先する。〈1〉なら、「ぜんそく患者や肺気腫などで継続して治療を受けている人」になる。

 季節性ワクチンとの同時接種は、通院回数を減らせることから、要望が強かった。ただ、現時点で安全性を確認できていない輸入ワクチンについては、判断を見合わせた。

(読売新聞、2009年9月19日)

****** 毎日新聞、2009年9月18日

新型インフル:季節性とのワクチン同時接種を容認 厚労省

 厚生労働省は18日、新型インフルエンザワクチンの専門家会合を開き、医師の判断に基づき、季節性と新型ワクチンの同時接種を認める方針を示した。

 通常、異なるワクチンの同時接種は副作用が生じた場合、原因解明が難しくなるため避けられている。だが、厚労省は季節性、新型ともに流行が拡大する冬季を前に、同時接種を容認する姿勢を示し、医療機関の負担を軽減するとともに、利用者の通院回数を減らし医療機関での感染拡大を防ぐことにした。【江口一】

(毎日新聞、2009年9月18日)

****** NHKニュース、2009年9月18日

感染小児重症化 学会が対策室

17日、横浜の小学6年生の男の子が死亡するなど、国内で新型インフルエンザに感染した子どもが重症化するケースが増え始めていることから、日本小児科学会では専門家による対策室を設置し、全国およそ3000の医療機関から抗ウイルス薬の効果などの情報を集め、治療の遅れが起きないよう医療態勢の整備を進めていくことになりました。

新型インフルエンザをめぐっては、17日、横浜の小学6年生の男の子が死亡し、国内で初めての子どもの死亡例となったほか、各地で重い肺炎や脳炎になった子どもの例が報告されていて、感染の拡大に伴い同様のケースの急増することが懸念されています。このため日本小児科学会では、感染症の専門家11人による「新型インフルエンザ対策室」を新たに設置したもので、意識障害などを引き起こす「インフルエンザ脳症」や「ARDS」と呼ばれる急性の重い肺炎になった場合の最新の治療指針を来週中にまとめ、インターネットなどを通じ、全国の小児科の医師に周知することにしています。また、全国およそ3000の病院に呼びかけて、重症で入院したすべての子どもについて、▽ぜんそくなど基礎疾患の有無や▽症状の進み方、それに▽抗ウイルス薬の効果などの情報を集め、治療の遅れで症状が悪化することがないよう医療態勢の整備を進めていくことになりました。対策室長を務める岡山大学の森島恒雄教授は「情報の共有化が遅れている影響で、医療現場の危機感に温度差がある。対策室が中心となって、重症の子どもの命を救える全国的な態勢づくりを急ぎたい」と話しています。

(NHKニュース、2009年9月18日)

****** 読売新聞、2009年9月17日

新型インフル国産ワクチンの治験始まる

 厚生労働省は17日、新型インフルエンザの国産ワクチンの安全性や有効性を確認する臨床試験(治験)を全国4病院で始めた。

 健康な20~64歳のボランティアの男女計200人に接種し、10月中旬に中間報告を行う。

 被験者は100人ずつ2グループに分かれ、一方は1回あたり0・5ミリ・リットル、もう一方は倍の同1ミリ・リットルを、それぞれ3週間の間隔を置いて2回接種し、抗体がどのくらいできたか調べる。季節性インフルエンザの用量は0・5ミリ・リットルだが、これまでに感染経験のない新型ウイルスのため、2倍の用量を接種した場合の効果を確認する。

 三重県内の病院では、公募で選ばれた被験者に、医師が体温や体調を聞き取りながら、ワクチンを注射した。17、18日で計50人に1回目の接種を行う。

(読売新聞、2009年9月17日)

****** 読売新聞、2009年9月16日

新型インフルワクチン、国内初の治験開始

 新型インフルエンザワクチンの有効性や安全性を確認する臨床試験(治験)が16日、国内では初めて鹿児島市内の治験専門の医療機関で始まった。

 初日は成人男女25人に接種。19日まで成人計100人を対象に効果を試す。

 ワクチンはスイスの大手製薬企業「ノバルティス」が製造。日本法人「ノバルティスファーマ」(東京都港区)が治験を行う。

 100人はそれぞれ、3週間後にもう一度接種し、抗体ができたかどうか血液を調べる。成人の安全性が確認されれば、10月から生後6か月~19歳の120人を対象に治験を実施し、12月にはすべての治験を終える予定。18日からは大阪市の医療機関でも成人への接種を始める。

 同社のワクチンの治験は、すでに英国で18~50歳の100人を対象にして行われており、1回の接種でも80%に効果があったとされている。

(読売新聞、2009年9月16日)

****** 読売新聞、2009年9月16日

新型、軽くてもタミフル早めに…感染症学会

 日本感染症学会は15日、新型インフルエンザの感染が疑われた場合には、軽症でも、タミフルなどの治療薬を早期に投与すべきだとする提言をまとめた。

 世界保健機関(WHO)は、6歳以上の若年者や64歳以下の成人で、かつ軽症の場合、治療薬の投与は不要とする指針を示している。これに対して、今回の提言は「WHOの指針は治療薬の備蓄が少ない国々の事情を踏まえたもの。備蓄が豊富な日本では、感染が少しでも疑われたら、できるかぎり早く治療薬を投与すべきだ」としている。

(読売新聞、2009年9月16日)

****** 読売新聞、2009年9月13日

新型インフル大流行時の沖縄、受診6時間待ちも

 この夏、沖縄県では全国でも突出して早く新型インフルエンザの流行が進んだ。最も多い週には県内58の定点医療機関だけで2686人(定点あたり46・31)と、例年の季節性のピークに近い患者数に達した。医療現場は、どんな状況になったのか。現地で取材した。

 ◆患者が倍々に

 「あっという間に患者が倍々に増えた。(受診数の)天井が全く見えず、毎日のように新しい対策が必要になった」。那覇の新都心・おもろまちの近くに立つ那覇市立病院。宮城とも・副看護部長はそう振り返る。

 沖縄では7月下旬から患者が増え、8月15日に全国で最初の死者が出た。受診が急増したのは、その翌日の日曜からだ。夜間休日診療を受け持つ市立病院には206人が訪れ、一般の急患を合わせると計300人以上であふれ、最高6時間待たされた人もいた。

 県立南部医療センター・こども医療センター(南風原町)にも98人が受診し、一般を含めると計220人が来て3時間待ちの状態。

 次の日曜の23日にはさらに増え、両病院だけで計353人がインフルエンザ症状を訴えて受診した。市立病院は、感染防御のため専用の臨時待合室も設けた。

 ◆自由選択が影響

 問題は、余裕のある病院や診療所がほかにあるのに、両病院を中心に一部施設への集中が続いたことだ。

 5月の兵庫・大阪での流行のあと、政府は特定施設に受診を限る方式をやめ、広く一般の医療機関での診療を認めた。それでも事前に電話してから受診するのが原則だが、受診先を自由に選べることが、特定の病院への集中につながった。

 ◆難しい見極め

 医療機関が機能不全に陥るのを防ぐには軽症者が外来受診を控えたほうがいい。しかし県内の重症者9人(死亡1人)のうち、6人は慢性疾患などのリスク要因がなく、ふだん健康な人だった。現場の医師らは「電話相談で軽症と判断しても、責任を持って『受診を控えて』とは言えない」と口をそろえる。

 県医務課は、県内の子どもの心臓手術を一手に担う南部センターがマヒしないよう、小児用の人工呼吸器を持つ10病院の使用状況を毎日調べ、小児患者を割り振るシステムを構築。もし集中治療室が満床になれば、琉球大病院がバックアップする体制も整えた。

 県医師会の宮里善次・感染症担当理事は「だれがいつ重症化するのか、特徴がわからず、多くの人を受け入れざるを得ないが、軽症者への対応に振り回されてはいけない。診察は少々待ってもらってもいい。大切なのは死者の最少化。重症者が手遅れにならないよう、医療機関の役割分担、受け入れ態勢を整えておくことが肝心だ」と強調した。 【大阪科学部 萩原隆史】

(読売新聞、2009年9月13日)

****** 毎日新聞、2009年9月13日

新型インフル:子どもに重症肺炎

…沖縄で5例 小児科学会

 日本小児科学会(横田俊平会長)は13日、新型インフルエンザを発症した子どもの中で、急激に呼吸困難となる重症の肺炎が起きていることを明らかにした。子どもが感染した場合、保護者らは様子を注意深く見守る必要がありそうだ。

 同学会によると、沖縄県では、これまでに子ども5人の重症肺炎の症例が報告され、人工呼吸器による治療を受けた。症状としては、発熱などインフルエンザと思われる症状が表れてから6~12時間で急激に呼吸状態が悪化し、エックス線写真で肺が真っ白になるほど炎症が進むという。

 また、呼吸困難の兆候には、呼吸が速い▽呼吸の頻度が多い▽息を吸うときに胸の一部が陥没する▽顔や唇が青白くなる--などがあるという。同学会は肺炎や急性脳症などの重症例の把握を急ぐとともに、近く一般向けに症例や治療法をまとめる方針。 【江口一】

(毎日新聞、2009年9月13日)

****** 読売新聞、2009年9月4日

ワクチン、1900万人に優先接種…最終案

 厚生労働省は4日、新型インフルエンザワクチン接種についての最終方針案を公表した。

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 必要としたワクチンは5400万人分。医療従事者と重症化しやすい人の合計1900万人を最優先接種者とし、この中での接種順位も示した。国民の意見を6日から1週間募り、政府の専門家諮問委員会に諮った上で、9月末までに正式決定する。接種は10月下旬から始まる見込みだ。

 ぜんそくや糖尿病など持病のある人の中では1歳~就学前の小児を優先する。ワクチンで免疫がつきにくい乳児は両親に接種する方針で、当初は乳児の年齢を6か月未満としていたが、1歳未満に拡大した。

 年度内に国内メーカーが生産できるワクチンは1800万人分だ。10月下旬から供給が始まり、最優先接種者に接種する。不足する分は輸入し、小中高校生と高齢者に使う。ワクチン到着は12月下旬以降になる見通しだ。ワクチンは2回の接種が必要。1回目の接種から免疫がつくまでには1か月ほどかかる。厚労省の「流行シナリオ」では流行ピークを10月上旬としており、10月下旬から接種が始まるとすれば、ピークに間に合わない可能性もある。

(読売新聞、2009年9月4日)


「新型インフルエンザに感染した妊婦はまず内科受診を」 日本産科婦人科学会が注意喚起

2009年09月13日 | 新型インフルエンザ

新型インフルエンザに感染した場合、妊婦は一般の人に比べ死亡率が数倍~10倍程度になるというデータもあります。妊婦が新型インフルエンザに感染した際に産婦人科医を受診すると、別の妊婦に院内感染を広げてしまう恐れがあります。日本産科婦人科学会は一般病院への受診が困難な場合を除き、原則として一般の内科医を受診するよう求めています。

****** 読売新聞、2009年9月12日

新型インフル「妊婦診療できぬ」 医療機関の4割

 新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)の診療体制について、感染症治療の中核となる全国の主な医療機関に対し読売新聞がアンケートしたところ、妊婦など周産期(妊娠22週以降)の患者を「診療できない」とする施設が4割近くに上った。

 妊婦の治療は国の指針で、他の妊婦への感染を防ぐため、かかりつけの産科以外で受けることを原則としており、妊婦の患者を受け入れる治療体制の整備が急がれそうだ。

 アンケートは、国や都道府県が指定する感染症指定医療機関と日本感染症学会認定研修施設の計668施設に対し8月に行い、352施設(回答率53%)から回答を得た。

 新型インフルエンザの多くは軽症で治るが、妊婦や腎臓病、糖尿病など持病を持つ人は重症化しやすく、国は患者の1・5%で入院が必要と試算している。アンケートで、受け入れ可能な最大病床数を尋ねたところ、1施設平均19・2床で、施設により0~300床まで差があった。0床の施設は8か所あり、人員に余裕がないなどが理由だった。

 周産期の患者の診療を「できない」と答えた施設は132施設(38%)に上った。小児の診療が「できない」も66施設(19%)あった。腎臓病患者に対する人工透析も対応できない施設が91か所(26%)に上った。

 周産期の患者を診療できない理由を尋ねたところ、「産科はなく対応は難しい」などのほか、「産科はあるが医師不足」との声もあった。

 政府・新型インフルエンザ対策諮問委員の川名明彦・防衛医大教授(感染症・呼吸器)は「地域ごとに医療機関が役割分担を話し合うなど、妊婦が行き場を失わないようにする必要がある」と話す。

(読売新聞、2009年9月12日)

****** NHKニュース、2009年9月11日

“感染の妊婦は内科受診を”

 新型インフルエンザに感染すると重症化しやすい妊婦の間で感染が広がるのを防ぐため、日本産科婦人科学会は、新型インフルエンザに感染したとみられる妊婦に対し、産婦人科ではなく内科を受診してほしいと呼びかけるとともに、今後、内科との連携を強めていく方針を示しました。

 これは日本産科婦人科学会の吉村泰典理事長らが11日に記者会見をして明らかにしたものです。この中で吉村理事長は「新型インフルエンザに感染した妊婦が産婦人科を訪れると、ほかの妊婦に感染させるおそれがあるので、まず内科でみていただきたい」と述べて、感染したとみられる妊婦に対し、産婦人科ではなく、事前に電話連絡をしたうえで内科を受診してほしいと呼びかけました。また、吉村理事長は、新型インフルエンザの感染が疑われる妊婦が内科を訪れたところ、診察を断られ、逆に産婦人科で受診するよう戻されたケースがこれまでに複数報告されていることから、日本内科学会に対し、妊婦の診察への協力を文書で求めたことを明らかにしました。今回の新型インフルエンザでは、アメリカの研究機関の報告で、妊婦は一般の人に比べ死亡率が数倍から10倍程度になるというデータもあり、専門家は妊婦の人たちと医療機関の双方がともに適切な対応をとる必要があるとしています。

(NHKニュース、2009年9月11日)

****** 朝日新聞、2009年9月10日

新型インフル感染疑いの妊婦、産婦人科の受診OK

 日本産科婦人科学会(理事長・吉村泰典慶応大教授)は10日までに、妊婦が新型の豚インフルエンザに感染したと疑われる場合、かかりつけの産婦人科医が対応できるようにする項目を指針に加えたことを医療関係者に伝えた。これまでは、他の妊婦への感染予防を重視し、一般病院での受診を勧めていた。

 新たに加えられたのは、(1)一般病院に通うことが難しい地域などでは、かかりつけ産婦人科医が対応(2)新型インフルの症状が重症化しておらず、出産や切迫早産の兆候がある妊婦は、かかりつけ産婦人科を受診する、など6項目。

 学会は、出産間近の妊婦への投薬判断や切迫早産など合併症への対応が予想されるケースでは、産婦人科の専門医でなければ処置が難しいとの指摘を重くみて、指針の修正を決めた。妊婦からは、一般病院に電話で受診の相談をした時点で診療を拒否されるおそれがあるとの不安が寄せられていた。

 海外の新型インフルの感染例をみると、妊婦は一般の人より症状が重くなる傾向がある。指針づくりの責任者を務めた水上尚典・北海道大教授は「妊婦が受診するまで時間がかかってしまうことを避けたかった。重症化を防ぎ、妊婦の死亡をゼロにしたい」と話す。

 新型インフルの感染が拡大した場合、産婦人科の専門医が不足している一般病院で妊婦が受診するのは困難な状況が予想される。そのため、関東地方のある県では、不妊治療などを中心に扱う産婦人科医院にも受診の受け皿になってもらう仕組みづくりを検討している。 【熊井洋美】

(朝日新聞、2009年9月10日)

****** 日本産科婦人科学会、お知らせ

妊娠している婦人もしくは授乳中の婦人に対しての新型インフルエンザのQ&A

今回(平成21年9月7日)改定の要旨

① ワクチンに関するQ&Aを加えたこと
② 一般病院へのアクセスが困難な場合にはかかりつけ産婦人科医が対応すること
③ 当然であるが、産科的問題(分娩や切迫早産症状など)は重症でない限りかかりつけ産婦人科医が対応すること
④ 重症例は肺炎が疑われる患者であり、それら患者は適切な病院への搬送が必要であること
⑤ 新型インフルエンザであっても簡易検査でしばしばA型陰性と出ることがあるので、周囲の状況から新型インフルエンザが疑われる場合は躊躇なくタミフル投与を勧めること
⑥ 母親が分娩前7日以内に新型インフルエンザ発症した場合、母児は別室として児への感染に関して慎重に観察すること

妊婦もしくは褥婦に対しての
新型インフルエンザ(H1N1)感染に対する対応
Q&A (医療関係者対象)

         平成21年9月7日(5版)
         社団法人 日本産科婦人科学会

Q1: 妊婦は非妊婦に比して、新型インフルエンザに罹患した場合、重症化しやすいのでしょうか?
A1:妊婦は重症化しやすく、また死亡率が高いことが強く示唆されています。

Q2: 妊婦への新型インフルエンザワクチン投与の際、どのような説明が必要でしょうか?
A2: 季節性インフルエンザワクチンに関しては米国では長い歴史があり、安全性と有効性が証明されている。米国では季節性インフルエンザワクチンは毎年、約60万人の妊婦に接種されている。妊娠中にワクチン接種を受けた母親からの児についても有害事象は観察されていない。新型インフルエンザワクチンも季節性インフルエンザワクチンと同様な方法で作られているので同様に安全と考えられている。ワクチンを受けることによる利益と損失(副作用など)を考えた場合、利益のほうがはるかに大きいと考えられている。WHOも同様に考えており、妊婦に対する新型インフルエンザワクチン接種を推奨している。また、ワクチンを受けるということは「自分を守る」とともに、「まわりの人を守る」ことである。以上のようなことを説明し、ワクチン接種の必要性について理解して頂きます。

Q3: インフルエンザ様症状が出現した場合の対応については?
A3: 発熱があり、周囲の状況からインフルエンザが疑われる場合には、「できるだけ早い(可能であれば、症状出現後48時間以内)タミフル服用開始が重症化防止に有効である」ことを伝えます。受診する病院に関しては、あらかじめ決めておくよう指導します。妊婦から妊婦への感染防止という観点から妊婦が多数いる場所(例えば産科診療施設)への直接受診は避けるよう指導します。これはあくまでも感染妊婦と健康な妊婦や褥婦との接触を避ける意味であり、「接触が避けられる環境」下での産科施設での感染妊婦の診療は差し支えありません。妊婦には一般病院を受診する際にも事前に電話するよう指導します。また、マスク着用の上、受診することを勧めます。一般病院へのアクセスが種々の理由により時間がかかる、あるいは困難と判断された場合にはかかりつけ産婦人科医が対応します。当然ですが、産科的問題(切迫流・早産様症状、破水、陣痛発来、分娩など)に関しては、新型インフルエンザが疑われる場合であっても、重症でない限り、かかりつけ産婦人科施設が対応します。ただし、院内感染防止対策に関しては最大限の努力を払い、感染妊婦と職員あるいは健康な妊婦・褥婦間に濃厚接触があったと考えられる場合は、濃厚接触者に対して速やかにタミフル、あるいはリレンザの予防投与を考慮します。
A型インフルエンザ感染が確認されたら、ただちにタミフルを投与します。妊婦には、「発症後48時間以内のタミフル服用開始(確認検査結果を待たず)が重症化防止に重要」と伝えます。新型インフルエンザであっても簡易検査でしばしばA型陰性の結果となることに注意が必要です。基礎疾患があり、インフルエンザが疑われる患者には簡易検査の結果いかんにかかわらずタミフルを投与すべきとの意見もあります。妊婦は基礎疾患がある患者と同等以上に重症化ハイリスク群と考えられていますので、周囲の状況や患者症状からインフルエンザが疑われる場合には簡易検査結果いかんにかかわらず同意後、躊躇なくタミフルを投与します。

Q4: インフルエンザ重症例とはどういう症例をさすのでしょうか?
A4: 肺炎を合併し、動脈血酸素化が不十分な状態になった場合、人工呼吸器が必要となりますので、それらに対応できる病院への搬送が必要となります。したがって、呼吸状態について常に注意を払う必要があります。また、若年者ではインフルエンザ脳症(言動におかしな点が出て来ます)もあり、これも重症例です。

Q5: 妊婦が新型インフルエンザ患者と濃厚接触した場合の対応はどうしたらいいでしょうか?
A5: 抗インフルエンザ薬(タミフル、あるいはリレンザ)の予防的投与を開始します。

Q6: 抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)は胎児に大きな異常を引き起こすことはないのでしょうか?
A6: 2007年の米国疾病予防局ガイドラインには「抗インフルエンザ薬を投与された妊婦および出生した児に有害事象の報告はない」との記載があります。また、これら薬剤服用による利益は、可能性のある薬剤副作用より大きいと考えられています。催奇形性(薬が奇形の原因になること)に関して、タミフルは安全であることが最近報告されました。

Q7: 抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)の予防投与(インフルエンザ発症前)と治療投与(インフルエンザ発症後)で投与量や投与期間に違いがあるのでしょうか?
A7: 米国疾病予防局の推奨では以下のようになっていますので、本邦妊婦の場合にも同様な投与方法が推奨されます。
1.タミフルの場合
予防投与:75mg錠 1日1錠(計75mg)
治療のための投与:75mg錠1日2回(計150mg)5日間
なお、本邦の2008年Drugs in Japanによれば、治療には上記量を5日間投与、予防には上記量を7日~10日間投与となっています。
2.リレンザの場合
予防投与:10mgを1日1回吸入(計10mg)
治療のための投与:10mgを1日2回吸入(計20mg)
なお、本邦の2008年Drugs in Japanによれば、治療には上記量を5日間吸入、予防には上記量を10日間吸入となっています。

Q8: 予防投与の場合、予防効果はどの程度持続するのでしょうか?
A8: タミフル、リレンザともに2008年Drugs in Japanによれば、これらを連続して服用している期間のみ予防効果ありとされています。

Q9: 予防投与した場合、健康保険は適応されるのでしょうか?
A9: 予防投与は原則として自己負担となりますが、自治体の判断で自己負担分が公費負担となる場合があります。

Q10: 分娩前後に発症した場合は?
A10: タミフル(75mg錠を1日2回、5日間)による治療をただちに開始します。また、母親が分娩前7日以内に発症した場合、母児は別室とし、児も感染している可能性があるので、厳重に経過観察し、感染が疑われる場合には検査(A型か否か)を行い、できるだけ早期に治療を開始します。

Q11: 感染している(感染した)母親が授乳することは可能でしょうか?
A11: 母乳を介した新型インフルエンザ感染の可能性は現在のところ知られていません。したがって、母乳は安全と考えられます。しかし、母親が直接授乳や児のケアを行うためには以下の3条件がそろっていることが必要です。
1)タミフルあるいはリレンザを2日間以上服用していること
2)熱が下がって平熱となっていること
3)咳や、鼻水が殆どないこと
これら3条件を満たした場合、直接授乳することや児と接触することを母親に勧めます。ただし、児と接触する前の手洗い、清潔な服への着替え(あるいはガウン着用)、マスク着用の励行を指導します。また、接触中は咳をしないよう努力することを指導します。上記3条件を満たしていない間は、母児は可能な限り別室とし、搾乳した母乳を健康な第三者が児に与えるよう指導します。このような児への感染予防行為は発症後7日~10日間にわたって続けることが必要です。発症後7日以上経過し、熱がなく症状がない場合、他人に感染させる危険は低い(まったくなくなったわけではない)と考えられているので、通常に近い母児接触が可能となります。

         本件Q&A改定経緯:
         初版 平成21年5月19日
         2版 平成21年6月19日
         3版 平成21年8月4日
         4版 平成21年8月25日
         5版 平成21年9月7日


新型インフルワクチン最終案 1900万人接種最優先 

2009年09月05日 | 新型インフルエンザ

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****** 読売新聞、2009年9月5日

新型インフルワクチン最終案 1900万人接種最優先

重症化しやすい人 医療従事者

 厚生労働省は4日、新型インフルエンザワクチン接種についての最終方針案を公表した。必要としたワクチンは5400万人分。医療従事者と重症化しやすい人の計1900万人を最優先接種者とし、この中での接種順位も示した。接種は10月下旬に始まる見込みだ。

 ぜんそくや糖尿病など持病のある人の中では、1歳~就学前の小児を優先する。ワクチンで免疫がつきにくい乳児は両親に接種する方針で、当初は乳児の年齢を6か月未満としていたが、1歳未満に拡大した。

 年度内に国内メーカーが生産できるワクチンは1800万人分で、10月下旬に供給が始まり、最優先接種者から実施する。不足分は輸入し、小中高校生と高齢者に使う。

 ワクチンは2回の接種が必要だ。1回目の接種から実際に免疫がつくまでに1か月ほどかかるため、10月下旬に接種した人でも12月以降までは免疫がつかない。厚労省の「流行シナリオ」はピークを10月上旬としており、ピークに間に合わない可能性もある。

 厚労省は方針案への国民の意見を6日から1週間募り、政府の専門家諮問委員会に諮った上で、9月末までに方針を正式決定する。

(読売新聞、2009年9月5日)

****** 読売新聞、2009年9月3日

どうする?新型インフル 

妊婦 重症化に警戒を 発病予防にもタミフル有効

 大阪府内の内科・産婦人科病院の待合室。10月に出産予定の主婦(26)は、「手洗い、うがいを心がけているが、2歳の長女がいるので外出を控えるといっても限度がある」と不安げに話した。

 同病院では先月、インフルエンザに感染した妊婦が4人いたが、タミフルを服用し、重症化することはなかった。家族が感染したケースもあったが、妊婦が予防のためにタミフルを服用し、発症はしなかった。

 海外の報告から、妊婦は新型インフルエンザにかかると重症化する恐れがあると見られている。

 感染を防ぐため、日本産科婦人科学会は、妊婦にインフルエンザが疑われる症状が出た場合は、かかりつけの産婦人科を受診するのは避けるように求めている。

 北大産婦人科の水上尚典(みなかみひさのり)教授は、「インフルエンザにかかったかなと思ったら、まず産婦人科に電話で相談した上で、できるだけ早く地域の内科を受診して下さい」と話す。

 「できるだけ早く」というのは、発症後48時間以内にタミフルを服用することが、重症化防止に最も有効だとされているからだ。そのためにも「発症したらすみやかに受診できるよう、受診する医療機関を、かかりつけ医と相談してあらかじめ決めておいて下さい」

 妊娠中に薬を飲んで、胎児への影響はないのだろうか。

 日本産婦人科診療ガイドラインでは、妊婦・授乳婦への抗インフルエンザ薬投与は「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合に行う」とされている。新型インフルエンザでは、妊婦の重症化が特に懸念されているため、学会は「有益性が危険性を上回る」と判断、タミフルの早期服用を勧めている。

 国内の調査では、妊娠初期にタミフルを使用した90例のうち、流産などが4例あったが、「いずれも薬を飲まなくても発生する自然発生の範囲内だった」としている。

 感染予防が最も大切なのは言うまでもない。予防法は一般の人と同じ手洗い、うがいとマスクの着用。不要不急の外出は控えること。しかし、仕事を持つ人もいる。上の子が感染すれば、妊娠中でも看病せざるを得ない。

 そこで、国立感染症研究所・感染症情報センターの安井良則主任研究官は、ワクチンの接種を勧める。

 季節性インフルエンザのワクチンは、日本産婦人科診療ガイドラインで「母体、胎児への危険性はきわめて低い」とされている。10月に接種が始まる予定の新型ワクチンも、国産のものは季節性と同じ製法なので、同程度に安全とみられている。

 妊婦のほか、乳幼児、高齢者、持病のある人も、新型インフルエンザにかかると重症化しやすいといわれている。「こうした人たちは、機会があればワクチンを打つべきだ」と安井さんは話す。

 また、妊婦の同居家族が感染した場合などには、冒頭のケースのように妊婦が予防のためにタミフルを服用することを学会は勧めている。かかりつけの産婦人科医に相談したい。予防は、保険が適用されないので、7000~1万円(約10日間分)ほどの自費負担になる。

(読売新聞、2009年9月3日)

****** 産経新聞、2009年9月4日

新型用ワクチン、医療従事者を第一優先

厚労省素案発表

 厚生労働省は4日、新型インフルエンザ用のワクチンについて、医療関係者を第一優先とする接種者の順序を示した素案を発表した。6日から厚生労働省のホームページに掲載し、13日正午まで国民からの意見を募集。専門家の意見を踏まえた上で、9月中に正式決定する。

 厚労省は新型用ワクチンについて約5400万人分が必要としている。これまでは年度内の国内製造分を2200万~3000万人分としていたが、ワクチンの原料となるウイルスの増殖力が想定よりも弱く、1800万人分程度と下方修正した。

 厚労省は「死亡者や重症者の発生を減らすこと」と「医療を確保すること」を目的に、限りあるワクチンの接種について、医師や看護師など医療従事者(100万人)を最優先することにした。そのほか、優先接種対象者としてぜんそくや糖尿病など持病のある人(900万人)と妊婦(100万人)▽1歳~就学前の小児(600万人)▽1歳未満の小児の両親(200万人)-の順で接種させる方針。

 小中高生(1400万人)と高齢者(2100万人)は「接種が望ましい」と位置づけた。ただ、重症化するケースが多い10歳未満については「優先接種対象者と同様の対処」を求めている。

 厚労省は不足分のワクチンについては輸入する方針で海外の製薬会社2社と交渉を進めている。優先対象者には10月下旬に出荷が始まる国産を主に使用。小中学生や高齢者には輸入ワクチンが使われる方針。ただ、輸入ワクチンには国産に使われていない免疫補助剤が入っていたり、製法が違うことから安全面で懸念を示す専門家もいる。このため国内で何らかの治験を行う方針。早ければ12月下旬から接種できる見通し。

 素案では接種費用について触れていないが、舛添要一厚労相は同日、「所得制限を設けて低所得者は軽減策を取るのが妥当」との見解を示した。

(産経新聞、2009年9月4日)

****** NHKニュース、2009年9月4日

ワクチン 接種の優先順位発表

来月下旬から始まる新型インフルエンザのワクチンの接種について、厚生労働省は、患者の治療にあたる医療従事者を最優先とするなど、5400万人を対象にした優先順位を発表しました。

新型インフルエンザのワクチンは、ことし7月から国内メーカーで製造が始まっていますが、年内に生産できる量は1300万人分から1700万人分にとどまる見通しです。このため、厚生労働省は優先順位を決めたうえで、ワクチンが出荷される来月下旬から順次接種を進める方針です。

厚生労働省によりますと、▽最優先に接種の対象となるのはインフルエンザの治療などにあたる医療従事者およそ100万人で、医療体制を維持することが大きな目的です。▽次に優先的に接種されるのは感染すると重症になりやすい妊婦100万人と、ぜんそくや糖尿病などの持病がある人900万人のあわせて1000万人で、この中でも持病のある幼児は特に優先されます。次が、▽1歳から就学前の幼児で対象は600万人。そして、▽1歳未満の乳児の両親200万人という順に接種を進める方針です。また、▽小中学生と高校生の1400万人、さらには、▽65歳以上の高齢者の2100万人も接種の対象になっていますが、国産メーカーのワクチンには限りがあるため、足りない分は海外メーカーのワクチンを輸入して接種することを想定しています。こうした接種の対象者はあわせておよそ5400万人で、厚生労働省は来週この方針を重症になりやすい病気の患者団体や医学会などに説明して意見を聞くとともに、ホームページでも公表して意見を募ったうえで、今月中に最終決定することにしています。

東京都内の産婦人科クリニックを訪れていた妊娠中の34歳の女性は「新型インフルエンザに感染すると、おなかの子どもにどんな影響を及ぼすのかがわからず、不安だったのでとても嬉しいです」と話していました。

また2人目の子どもを妊娠している32歳の女性は「幼稚園に通っている上の子どもが感染すると家族が皆感染してしまう可能性もあるので、家族全員がいっしょに接種を受けることも考えています。その場合はワクチンを接種する費用もかなりの金額になるので国に援助してほしいです」と話していました。

東京都内の小児ぜんそくの専門外来に診察を受けに来ていた9歳の女の子の母親は「ぜんそくの場合、ただのかぜでも見ているほうがつらくなるほど症状が重くなるので、新型インフルエンザに感染したらどうなるのか不安がありました。ワクチンの安全性はよく考えないといけないが、優先的に接種できると聞いてほっとしています」と話していました。

厚生労働省がまとめたワクチンの接種方針について腎臓病の患者団体「全国腎臓病協議会」の金子智事務局長は「基礎疾患のある人が優先的に接種を受けられることに感謝するとともに、これからは確実に接種を受けるよう患者に呼びかけていきたい。人工透析を受けている患者の中には年金暮らしの高齢者など経済的にゆとりのない人も多く、所得の少ない患者が接種を控えることのないように引き続きワクチン接種の費用問題も検討してほしい」と話しています。

ワクチンの副作用に苦しむ子どもを持ち、薬害被害者団体「MMR被害児を救援する会」の事務局を務める栗原敦さんは「新型インフルエンザのワクチンは、有効性や安全性が確立していないので、国は副作用の被害が出た場合、速やかに情報を集め公表するシステムを整備するべきだ。また被害者の救済制度も副作用の被害を幅広く対象とし、本来の趣旨どおり運用してほしい。ワクチンを接種するかどうかはこうした情報を踏まえたうえで、それぞれの個人が判断することが重要だ」と指摘しています。

(NHKニュース、2009年9月4日)

******* NHKニュース、2009年9月5日

ワクチン製造量 再び下方修正 

国内メーカーが製造する新型インフルエンザのワクチンについて、厚生労働省は、来年3月までの製造量をこれまでより20%ほど下方修正し、最も少ない場合は1800万人分になると試算しました。

新型インフルエンザのワクチンは、厚生労働省が国内の4つのメーカーに依頼して7月から製造を始めています。しかし、ワクチンの元となるウイルスの増殖力が弱いことから、厚生労働省は来年3月までの製造量を当初の試算のおよそ半分の2200万人から3000万人分と修正していました。ところが、増殖力に加えてワクチンに必要な成分が取り出しにくいことがわかり、製造量はさらに減少する見通しだということです。このため厚生労働省は、来年3月までの製造量を20%ほど下方修正し、最も少ない場合は1800万人分になると試算しました。厚生労働省は、国内メーカーの製造で不足する分は、12月末にも海外から輸入を始めて来年の春までに6000万人分のワクチンを確保したいとしています。

(NHKニュース、2009年9月5日)


妊婦もしくは褥婦に対しての新型インフルエンザ(H1N1)感染に対する対応Q&A (医療関係者対象)

2009年09月03日 | 新型インフルエンザ

新型インフルエンザ流行期のピーク時(9月下旬~10月上旬)には、当然、妊婦や授乳婦で感染する人も多く出ます。インフルエンザの簡易検査の陽性率は50%と言われています。特に発熱1日目の検査ではほとんどの人が陰性です。重症化を防ぐためには、発症直後にタミフル投与を開始することが有効ですから、

新型インフルエンザ流行期に妊婦や授乳婦が発熱(38℃以上)した場合は、検査結果を待たずできるかぎり早期にタミフルを投与し始めること

が重要です。その際、

かかりつけ産婦人科医を直接受診するのではなく、地域の一般病院へできるかぎり早期に受診すること

を地域内で周知徹底しておく必要があります。

もしも、新型インフルエンザに感染した妊婦や授乳婦が産婦人科を受診すると、医療機関を介して、多くの妊婦に新型インフルエンザ・ウイルスが広がってしまうことが危惧されます。また、産婦人科医や助産師で多くの感染者が出現した場合は、その施設では一時的に分娩の受け入れが困難となってしまいます。

地域の一般病院の先生方にも、以下の日本産科婦人科学会からのお知らせを十分に御理解いただく必要があります。

また、流行の状況に応じて、対応方法が変わっていく可能性もあります。政府、自治体、学会、病院からの広報だけでは、正しい情報が十分に浸透しません。新聞やテレビなどでも、繰り返し繰り返し、最新の正しい情報を流していただきたいと思います。

****** 日本産科婦人科学会、お知らせ
http://www.jsog.or.jp/news/html/announce_20090825b.html

妊婦もしくは褥婦に対しての
新型インフルエンザ(H1N1)感染に対する対応
Q&A (医療関係者対象)

         平成21年8月25日(4版)
         社団法人 日本産科婦人科学会

Q1: 妊婦は非妊婦に比して、新型インフルエンザに罹患した場合、重症化しやすいのでしょうか?
A1: 妊婦は重症化しやすいことが明らかとなりました。

Q2: インフルエンザ様症状が出現した場合の対応についてあらかじめ妊婦と相談しておいたほうがいいのでしょうか?
A2: もし、インフルエンザ様症状が出現した場合には、かかりつけ産婦人科医を直接受診するのではなく、地域の一般病院へできるかぎり早期に受診するよう、あらかじめ指導しておきます。これは妊婦から妊婦への感染防止という観点から重要な指導となります。

Q3: 妊婦がインフルエンザ様症状(38℃以上の発熱と急性呼吸器症状)を訴えた場合、どのように対応すればよいでしょうか?
A3: 産婦人科への直接受診は避けさせ、地域の一般病院へあらかじめ電話をして、できるかぎりの早期受診を勧めます。WHOは新型インフルエンザ感染が疑われる場合には医師は確認検査結果を待たずに、ただちにタミフルを投与すべきとしています。妊婦には、「発症後48時間以内のタミフル服用開始(確認検査結果を待たず)は重症化防止に最も有効」と伝えます。

Q4: 妊婦に新型インフルエンザ感染が確認された場合の対応(治療)はどうしたらいいでしょうか?
A4: ただちにタミフル(75mg錠を1日2回、5日間)による治療を開始します。

Q5: 妊婦が新型インフルエンザ患者と濃厚接触した場合の対応はどうしたらいいでしょうか?
A5: 抗インフルエンザ薬(タミフル、あるいはリレンザ)の予防的投与を開始します。

Q6: 抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)は胎児に大きな異常を引き起こすことはないのでしょうか?
A6: 2007年の米国疾病予防局ガイドラインには「抗インフルエンザ薬を投与された妊婦および出生した児に有害事象の報告はない」との記載があります。また、これら薬剤服用による利益は、可能性のある薬剤副作用より大きいと考えられています。催奇形性(薬が奇形の原因になること)に関して、タミフルは安全であることが最近報告されました。

Q7: 抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)の予防投与(インフルエンザ発症前)と治療投与(インフルエンザ発症後)で投与量や投与期間に違いがあるのでしょうか?
A7: 米国疾病予防局の推奨では以下のようになっていますので、本邦妊婦の場合にも同様な投与方法が推奨されます。
1.タミフルの場合
予防投与:75mg錠 1日1錠(計75mg)
治療のための投与:75mg錠1日2回(計150mg)5日間
なお、本邦の2008年Drugs in Japanによれば、治療には上記量を5日間投与、予防には上記量を7日~10日間投与となっています。
2.リレンザの場合
予防投与:10mgを1日1回吸入(計10mg)
治療のための投与:10mgを1日2回吸入(計20mg)
なお、本邦の2008年Drugs in Japanによれば、治療には上記量を5日間吸入、予防には上記量を10日間吸入となっています。

Q8: 予防投与の場合、予防効果はどの程度持続するのでしょうか?
A8: タミフル、リレンザともに2008年Drugs in Japanによれば、これらを連続して服用している期間のみ予防効果ありとされています。

Q9: 予防投与した場合、健康保険は適応されるのでしょうか?
A9: 予防投与は原則として自己負担となりますが、自治体の判断で自己負担分が公費負担となる場合があります。

Q10: 分娩前後に発症した場合は?
A10: タミフル(75mg錠を1日2回、5日間)による治療をただちに開始します。また、新生児も感染している可能性があるので、厳重に経過観察し、感染が疑われる場合には検査(A型か否か)を行い、できるだけ早期に治療を開始します。

Q11: 感染している母親が授乳することは可能でしょうか?
A11: 母乳を介した新型インフルエンザ感染の可能性は現在のところ知られていません。したがって、母乳は安全と考えられます。しかし、母親が直接授乳や児のケアを行なうためには以下の3条件がそろっていることが必要です。
1)タミフルあるいはリレンザを2日間以上服用していること
2)熱が下がって平熱となっていること
3)咳や、鼻水が殆どないこと
これら3条件を満たした場合、直接授乳することや児と接触することを母親に勧めます。ただし、児と接触する前の手洗い、清潔な服への着替え(あるいはガウン着用)、マスク着用の励行を指導します。また、接触中は咳をしないよう努力することを指導します。上記3条件を満たしていない間は、母児は可能な限り別室とし、搾乳した母乳を健康な第三者が児に与えるよう指導します。このような児への感染予防行為は発症後7日間にわたって続けることが必要です。発症後7日以上経過し、熱がなく症状がない場合、他人に感染させる危険は低いと考えられているので、通常の母児接触が可能となります。

         本件Q&A改定経緯:
         初版 平成21年5月19日
         2版 平成21年6月19日
         3版 平成21年8月4日
         4版 平成21年8月25日


新型インフルエンザから妊婦を守れ 海外で死者、不安高まる

2009年09月01日 | 新型インフルエンザ

新型インフルエンザワクチンに対する要望 (日本産科婦人科学会)

厚生労働省 新型インフルエンザ対策推進本部 御中

日本産科婦人科学会では「妊婦(110万人)ならびに産後6ヵ月以内の婦人(55万人)への新型インフルエンザワクチンの優先的な接種」を要望いたします。根拠は以下の通りです。

1.  妊婦は新型インフルエンザに罹患すると重症化しやすく、また死亡率も高い可能性がある。

理由: Lancet誌(Published Online 2009年7月29日)によれば

「米国疾病予防局(CDC、Center for Disease Control)は、2009年4月15日~同年5月18日間に13州で34名の新型インフルエンザ(H1N1)感染妊婦を確認した。うち11名(32%)が入院し、1名(2.9%)が死亡した。また、この1ヶ月間の総感染者数5,469名中、妊婦は34名(0.6%)を占めたが、妊婦での入院率(32.4%、11/34)は妊婦以外での入院率(4.0%、218/5,435)に比してはるかに高いものであった。」 

また、同時に同誌は以下のことも報告している。

「2009年4月15日~同年6月16日間に新型インフルエンザによる45名の死亡を確認した。うち6名(13%)が妊婦であった。これら6名はいずれもタミフル投与を受けたが、その投与開始時期は発症後6日、8日、8日、10日、14日、15日目であった。これらの妊婦はいずれも肺炎とARDSを合併し人工呼吸管理を必要とした妊婦であった。」

ちなみに、妊婦は全米人口の約1.3%である。

2.  WHOは上記Lancet誌の報告を受けて、2009年7月31日に「Pandemic influenza in pregnant women: Pandemic (H1N1)2009 briefing note 5」として、以下を推奨した。

1) 新型インフルエンザ流行地域の妊婦ならびに妊婦の治療に関与する者は妊婦のインフルエンザ様症状に注意を払うべきである。

2) 症状発現後はできるかぎり早期にタミフルによる治療を開始すべきである。

妊娠している婦人もしくは授乳中の婦人に対しての新型インフルエンザ(H1N1)感染に対する対応Q&A (一般の方対象) 、日本産科婦人科学会

発熱患者の受診の流れ 【妊婦の場合】

新型インフルエンザ対策手引書 (厚生労働省)

****** 共同通信、2009年8月29日

新型インフルから妊婦守れ 

海外で死者、不安高まる

 新型インフルエンザの流行がさらに拡大する中、感染すると重症化しやすい妊婦をどのように守るか。ブラジルでは新型の死者の1割強を妊婦が占め、感染防止対策が最も必要なグループであることが浮き彫りになった。最も大切なのは手洗いなどで日常的に感染を防ぐこと。日本産科婦人科学会(日産婦)は、感染が疑われたらほかの妊婦への感染を防ぐために、産婦人科ではなく一般病院を受診するよう呼び掛けている。

 日産婦は治療薬の投与も推奨し、妊婦110万人と産後6カ月以内の女性55万人に、新型用ワクチンを優先接種するよう国に要請。国は9月中に優先接種を正式決定する見通しだ。

 「自分もリスクが高くて心配なのはもちろんだが、産んだ子どもはどうなるのだろうか。生まれたばかりの子どもは薬も飲めないし、分からないことが多く不安だ」。東京都文京区に住む妊娠9カ月の女性(42)は打ち明ける。

 27日の新型用ワクチン接種の優先順位の意見交換会で、日産婦の水上尚典北海道大教授は「妊婦は人口の約1%だが、海外では多くの死者が出ている。危機感を持っている」と訴えた。

(共同通信、2009年8月29日)

****** 毎日新聞、2009年8月28日

新型インフルエンザ:ブラジルの死者、

世界最多557人に

 【メキシコ市・庭田学】AP通信などによると、ブラジル保健省は26日、同国の新型インフルエンザによる死者が22日現在で557人になったと発表した。確認されている統計では、米国の522人(20日現在)を上回り世界最悪になった。死者の1割以上にあたる58人が妊婦だった。ブラジル保健省は、人口比でみると同国の死亡率は世界で7番目だとしている。

(毎日新聞、2009年8月28日)

****** 東京新聞、2009年8月30日

新型インフル家族が感染したら タオルは別々に 朝と晩熱測って

 流行がさらに拡大した新型インフルエンザ。家族が感染したら、ほかの家族はどう対応すればいいのか。厚生労働省や米疾病対策センター(CDC)は、さまざまな注意点を挙げている。

 ▽体調異変時

 熱やせきが出始めても、体力などにより個人個人で症状は異なり、自宅の常備薬で対応できることもある。ただ、妊娠中や持病のある人は、早めにかかりつけ医に相談する必要がある。

 受診する場合、都道府県の発熱相談センターに電話で相談できる。医療機関には行く前に電話を。「患者が多い時期は重症者を優先的に診る大病院より、地域の診療所のほうが待たずに済むことが多い」(厚労省)という。

 ▽自宅療養

 感染者本人はマスクをつけ、できればドアを閉められる個室で療養する。妊婦や持病のある人は感染者の看護を避ける。感染した子どもを抱く時は自分の肩に子どものあごを乗せるなど、面と向かわない工夫をしたい。

 口に手を当ててせきをした際など、小まめにせっけんや消毒液で手洗いを。タオルも家族で色分けをして別のものを使う。

 ▽外出は?

 厚労省によると、感染者の家族は会社や学校などへ行くのは問題ない。ただ朝晩に熱を測るなど体調のチェックを怠らないよう呼び掛けている。CDCは感染者本人について、解熱剤を使わずに熱が下がったとしても、丸一日は外出を避けるべきだとしている。さらに厚労省は「できれば発熱、せきなどの症状が始まった日の翌日から七日目まで避けてほしい」としている。

(東京新聞、2009年8月30日)

****** 読売新聞、2009年9月1日

ワクチン接種、医療従事者を最優先

…厚労省案

 新型インフルエンザのワクチンを接種する際、優先順位を医療従事者、持病がある人、妊婦、小児、乳児の両親とする厚生労働省の基本方針案が31日、明らかになった。

 これら約1900万人への接種が終わった後で、小中高校生、高齢者に接種する。政府の専門家諮問委員会などの意見を踏まえ、国民の意見を募集したうえで、9月中旬にも正式決定する。

 死亡者や重症者の発生を減らすことを目的に、健康に重大な影響を受けるおそれがある人を優先した。

 具体的には、〈1〉医療従事者100万人〈2〉持病(ぜんそく、糖尿病など)がある人1000万人と妊婦100万人〈3〉生後6か月~就学前の小児600万人〈4〉生後6か月未満の乳児の両親100万人――を最優先接種者とし、この順で接種を実施。持病のある人の中では、小児を優先することにした。その後で小学生、中学生、高校生、高齢者の順に接種する。

 年度内に国内で製造できるワクチンは、想定よりも大幅に少ない1800万人分と見積もっており、最優先接種者に使用する見通し。不足分は輸入する方針だが、治験などを実施して安全性を確認し、問題がある場合には使用しない。

(読売新聞、2009年9月1日)

****** 共同通信、2009年8月31日

厚労相、新型ワクチン輸入に意欲 精力的に交渉

 新型インフルエンザ用ワクチンの輸入について舛添要一厚生労働相は31日、「海外メーカーと精力的に交渉している。約束した通りの人数分か、できれば、それを超えるぐらいの量を確保したいと思っている」と述べ、あらためて輸入に強い意欲を示した。

 厚労相はこれまで、国内では最大で5300万人分のワクチンが必要だとし、国内メーカー4社の製造で足りない分を輸入で賄う考えを示している。

 一方、輸入ワクチンについては国内製品と製法が異なるため安全性に対する懸念の声がある上、国際的にワクチン不足が予想される中で、医療態勢が整い、インフルエンザ治療薬も豊富にある日本が輸入することに批判も出ている。このため専門家の間には輸入に慎重な意見があり、具体的な輸入相手や量は決まっていない。

(共同通信、2009年8月31日)

****** 時事通信、2009年8月29日

日本でもワクチン治験

新型インフルでスイス製薬大手

 スイス製薬大手のノバルティスは31日、新型インフルエンザのワクチンの効果や副作用を検証する臨床試験(治験)を、日本でも実施する方針を明らかにした。日本法人のノバルティスファーマ(東京)が成人200人、未成年者120人を対象に、9月中にも開始。日本政府が海外からの輸入を決めれば、年内にも供給できる見通し。

 国内のワクチンメーカーは4社に限られ、ワクチンが不足する恐れがある。このため、政府は海外からの輸入を検討している。

(時事通信、2009年8月29日)

****** 信濃毎日新聞、2009年8月30日

新型ワクチン 輸入は慎重であるべきだ

 新型インフルエンザのワクチン接種が緊急課題となっている。

 国内で年内につくれる量は、1700万人分がやっとという。厚生労働省が目標とする5300万人分には、はるかに届かない。接種の対象者を絞り込まなくてはならない。

 厚生労働省は、重症になりやすい基礎疾患のある人や妊婦、幼児らと、治療にあたる医療従事者に国産のワクチンを優先し、不足分は海外から輸入する考えだ。

 ワクチン接種の目的は重症化を防ぐことにある。リスクが高い人を優先するのは当然である。県内でも重い心臓病の男性が亡くなった。妊婦の死亡率が高いとの海外の報告もある。厚労省はさらに優先度を検討し、広く意見を聞いて社会の合意を得てほしい。

 一方、ワクチンの輸入には問題が多い。慎重に議論を尽くす必要がある。

 ワクチン接種には副作用のリスクがある。まして海外メーカーのワクチンは国産とタイプが異なり、添加物も含まれている。にもかかわらず、舛添要一厚労相は当初、安全性を確かめる国内の臨床試験を省く考えを示した。

 あまりに乱暴である。新型のワクチンは、接種を受けるかどうかを個人の判断に委ねる「任意接種」となる見通しだ。肝心の安全性があやふやでは、受ける側が判断に困ってしまう。

 ワクチンの接種は、安全性と有効性、副作用リスクなどの説明が広く行き渡っていることが前提になる。十分な臨床試験と情報の提供が欠かせない。

 輸入の是非は、国際的な視野からも論議されるべきだ。

 新型のワクチンは世界的に不足している。医療先進国でワクチンの生産設備もある日本が海外からワクチンを買い集める行為は、理解を得られるだろうか。そのツケは結局、医療資源の乏しい途上国に及ぶことになる。

 新型にかかっても、ほとんどの人は軽症で済んでいる。日本には治療薬もあり、公衆衛生の水準も高い。いま緊急に輸入が必要なのか、冷静に検討したい。

 そもそもワクチンに感染を防ぐ力はない。ワクチンに目を奪われて、他の対策がおろそかになるのが心配だ。

 厚労省は年内に患者数が2500万人に達すると予測する。

 あらためて確認したい。大事なのは感染拡大を防ぐ一人ひとりの努力だ。社会全体で新型対策に取り組み、医療態勢を整えることが重症者の命を救うカギになる。

(信濃毎日新聞、2009年8月30日)


新型インフルエンザ: 国民の5人に1人が発症 38万人入院 3万8千人が重症化 9月下旬~10月にピ

2009年08月29日 | 新型インフルエンザ

新型インフルエンザの流行のピークが9月下旬~10月にかけてと予測され、ワクチンの供給は10月下旬以降ということですから、ワクチン接種のタイミングが間に合わない可能性が高いです。

また、いくら発熱していても、陣痛発来している妊婦を産科病棟以外では受け入れることが困難で、流行のピーク時には、多くの妊婦の発症者を院内で隔離することが難しくなってしまうかもしれません。

助産師や産婦人科医などの産科病棟スタッフにも感染者が続出する事態となれば、多くの産科施設で一時的に分娩受け入れが困難となってしまうかもしれません。

地域によっては、大混乱となってしまうかもしれません。各地域で、流行時の感染妊婦の受け入れ方法などについて、よく話し合っておく必要があると思います。

新型インフルエンザ対策手引書(厚生労働省)

妊娠している婦人もしくは授乳中の婦人に対しての新型インフルエンザ(H1N1)感染に対する対応Q&A (一般の方対象) 、日本産科婦人科学会

****** 朝日新聞、2009年8月29日

新型インフル、9月下旬にも発症のピーク

 厚生労働省は28日、新型の豚インフルエンザの今後の患者数の推計を初めて公表した。国民の2割が発症すると想定し、その場合、約38万人が入院し、約3万8千人が重症になり、ピーク時には1日に約76万人が発症する見込み。現在は流行が拡大し始める初期段階にあるとみられる。入院ベッドの確保など、重症化しやすい子どもや持病のある人ら向けの医療態勢の確立が急務だ。

Tky200908280319

 厚労省は各都道府県が医療態勢を整える際の参考にしてもらうために推計した。海外の流行状況などを踏まえ、季節性インフルの2倍程度に当たる国民の2割(約2500万人)が発症するものとしたほか、新型インフルのこれまでの傾向などから入院率や重症化率を試算した。

 ピークの時期は具体的に示していないが、国立感染症研究所の推計にあてはめると、9月下旬から10月にかけてピークを迎えるとみられる。

 ピーク時には全国で約4万6千人が入院していると想定した。世代別では乳幼児(0~5歳)3500人、小児(6~15歳)1万1800人、成年(16~64歳)2万人、高齢者(65歳以上)1万1100人。大半の患者は軽症で回復する見込み。

 流行は9週目でピークになり、19週目にいったん終息するとしている。ピークや終息の時期、発症者数などは変動する恐れがある。ウイルスの病原性が変化したり、薬が効きにくくなる耐性が出たりすると、流行の規模が大きくなる可能性がある。国民の3割が発症した場合も推計しており、約95万人が入院し、19万人が重症化するとしている。

 また、都市部など人口密集地は患者数が多くなり、持病を持つ高齢者の多い地域では重症者が増えるなど、地域ごとに状況は異なってくるとみられる。厚労省の担当者は「感染症の流行には必ず終わりがくるが、正確な予測は難しい」としている。季節性インフルの流行が重なる可能性もあり、注意を呼びかけている。専門家は流行の第2、3波も警戒している。

 試算をもとに厚労省は、都道府県などに対し、各地域の人口や年齢構成を踏まえて、患者の受け入れ態勢を整えるよう求めた。多数の入院患者が出た場合に備え、現在使っていない結核病床などを活用することも盛り込んだ。夜間の外来診療態勢を整えるため、診療所の診療時間延長や輪番制の導入など、地域の中核病院と診療所の連携も求めた。 【権敬淑、野瀬輝彦】

(朝日新聞、2009年8月29日)

****** NHKニュース、2009年8月29日

新インフル対策 手引書で周知

新型インフルエンザの大規模な流行に備えるため、厚生労働省は、医療機関の受診方法や自宅療養の注意点などをまとめた手引書をまとめ、周知を進めていくことになりました。

厚生労働省がまとめた想定によりますと、新型インフルエンザの感染がこのまま拡大すると、国民の5人に1人にあたる2500万人余りが発症し、およそ3万8000人が重症になるということです。このため厚生労働省は、こうした大規模な流行に備えるため、感染が疑われる人や患者を対象とした手引書を作り、周知を進めていくことになりました。手引書では、まず、感染が疑われる場合は、掛かりつけの医師や保健所などに設置されている「発熱相談センター」に問い合わせて受診するよう求めています。また、持病がある人や妊娠している人は、掛かりつけの医師に電話で相談し、受診する医療機関を紹介してもらうよう呼びかけています。さらに、自宅で療養する場合には、家族などとはなるべく別の部屋で過ごして接触を避けるとともに、熱が下がってから2日間は外出を控えるよう求めています。厚生労働省は、この手引書をインターネットのホームページに掲載するとともに、都道府県などを通じて周知していくことにしています。

(NHKニュース、2009年8月29日)

****** NHKニュース、2009年8月28日

3万8000人が重症の想定

新型インフルエンザの感染がこのまま拡大すると、ことし10月をピークに国民の5人に1人に当たる2500万人余りが発症し、およそ3万8000人が重症になるという想定を厚生労働省がまとめました。

この想定は、毎年の季節性インフルエンザの流行や海外における新型インフルエンザの感染動向などをもとに、厚生労働省が推計したものです。それによりますと、新型インフルエンザに感染して発症する人は季節性インフルエンザのおよそ2倍で、国民の5人に1人に当たる2555万人に上るとしています。このうち、1.5%に当たるおよそ38万人が入院し、0.15%に当たるおよそ3万8000人が肺炎やインフルエンザ脳症などを引き起こして、重症になると推計しています。ただし、ぜんそくや糖尿病など重症になりやすい持病がある人やインフルエンザ脳症になりやすい幼児などに感染が広がった場合は、重症になる人の割合は3倍以上の0.5%に高まる恐れがあるとしています。感染のピークを迎えることし10月には、最も多いときで1日76万人が発症し、4万6400人が入院している状態になると見込んでいます。地域によっては、発症者が30%に達し、人口が密集する都市部では、さらに割合が高まるおそれもあるとしています。厚生労働省は、各都道府県に対し、この想定をもとに医療機関のベッド数や人工呼吸器の数などを検証し、必要な医療態勢を整えるよう求めることにしています。

(NHKニュース、2009年8月28日)

****** 読売新聞、2009年8月28日

インフルピーク時、1日76万人発症…厚労省

 厚生労働省は28日、新型インフルエンザの今後の流行に関する試算を発表した。10月の流行ピーク時には1日当たり約76万人の患者が新たに出て、全国の入院患者は最大時で4万6400人に上る可能性があるとした。

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 厚労省は同日、流行に備えた医療体制を早急に整備するよう各都道府県に要請した。

 試算は海外の流行状況や感染率などから、季節性インフルエンザ感染者の約2倍にあたる国民の平均2割、都市部などでは同3割が発症すると想定。今シーズンの入院率を全患者の1・5~2・5%(38万人~64万人)、インフルエンザ脳症や肺炎など重症者の発生率を同0・15~0・5%(3万8000人~12万8000人)として算出した。

 患者数のピークは流行開始8週間後になるとし、国内での流行開始(今月10~16日)に当てはめると、10月上旬ごろに来る。入院患者のピークは患者数のピークから約1週間遅れ、全国の入院患者は4万6400人に達する。国民の3割が感染すると、入院患者は6万9800人に上るという。死者数の試算はしていないが、米国の想定では入院患者の約30人に1人が死亡するとしている。

 都道府県には、診療所での夜間診療延長なども準備するよう指導。ぜんそくや糖尿病など持病がある人は医療機関で感染する恐れがあるため、医療機関に対して電話による診療、持病の薬を長期間使えるよう一度に処方することも求めている。

(読売新聞、2009年8月28日)

****** 毎日新聞、2009年8月28日

新型インフル:1日最大76万人が発症 厚労省試算

 厚生労働省は28日、新型インフルエンザに国民の20%が罹患(りかん)した場合、ピーク時には1日に約76万2000人が発症し、約4万6400人が入院するとの「流行シナリオ」をまとめた。現状をシナリオに当てはめると、9月下旬~10月上旬にピークを迎える恐れがある。患者急増に備え、厚労省は同日、都道府県に夜間診療時間の延長や重症患者の受け入れルール策定などを要請した。

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入院は1日4万6400人

 流行シナリオは、国内外の感染の広がり方や季節性インフルエンザの流行パターンを参考に試算した。罹患率を20%(例年の季節性の2倍程度)と仮定すると、感染者が増え始めてから5週目に1日当たりの発症者が10万人を超え、9週目に最大になる。国立感染症研究所の推計では、今月17~23日の患者数は約15万人で、シナリオの3~4週目に相当し、「9週目」は9月下旬~10月上旬になる。

 入院のピークは10週目。14週目まで1日1万人超の状態が続き、患者の0.15%の約3万8000人が重症化すると試算した。罹患率が30%の場合は、ピーク時の入院患者が6万9800人になる。

 厚労省は、流行ピーク時も医療体制を維持できるよう▽診療所の時間延長や輪番制の夜間外来▽一般病床などを使った緊急時の定員超過入院▽隣県との医師派遣や重症患者受け入れルールの策定▽慢性疾患患者へのファクスによるインフルエンザ治療薬処方--などの準備を医療機関に求めた。【清水健二】

(毎日新聞、2009年8月28日)


新型インフルエンザ・ワクチン: 優先接種対象(合計5300万人)の内訳

2009年08月26日 | 新型インフルエンザ

新型インフルエンザ・ワクチンを優先的に接種する対象者(5300万人)の内訳: 妊婦(100万人)、乳幼児(600万人)、基礎疾患のある人(1000万人)、医療従事者(100万人)、小中高生(1400万人)、高齢者(2100万人)。

これに対して、国内4社が製造するワクチンは、年内で1300万~1700万人分にとどまる見通しで、国内製造で不足する分は、審査を大幅に省いて海外からワクチンを輸入する「特例承認」を適用して緊急調達する方針が、厚生労働省より発表されました。

新型インフルエンザは秋以降の本格流行が予測されますが、新型インフルエンザ用のワクチンが入手可能となるのは10月下旬以降で、しかも免疫効果が出るまでにワクチン接種から数週間を要するため、「ワクチン接種のタイミングが間に合わない」という意見も多いです。

妊娠している婦人もしくは授乳中の婦人に対しての新型インフルエンザ(H1N1)感染に対する対応Q&A (一般の方対象) 、日本産科婦人科学会

****** 読売新聞、2009年8月25日

ワクチン、妊婦・乳幼児らに優先接種

 大流行が懸念される新型インフルエンザ用のワクチンについて、舛添厚生労働相は25日の閣議後記者会見で、妊婦と乳幼児、ぜんそくなどの持病がある人など合計1700万人に優先接種する意向を示した。

 国内で製造したワクチンの供給は10月下旬から始まることも表明。国内供給分では不足する分を海外から輸入する意向も改めて示し、薬事法に基づく「特例承認」を初適用し、国内での臨床試験(治験)を簡略化して供給を急ぐ方針を示した。

 舛添厚労相は、準備するワクチン量を5300万人分とし、その内訳として「(糖尿病やぜんそく、心臓や腎臓の慢性疾患など)持病がある人」1000万人、乳幼児600万人、小中高校生1400万人、妊婦100万人、治療にあたる医療従事者100万人、65歳以上の高齢者2700万人(600万人は持病がある人と重複)などが入るとした。

 舛添厚労相は、このうち優先接種の対象として、「妊婦と乳幼児、持病がある人が計1700万人」と位置づけた。計1700万人分は、国内生産量に当たる量だ。

 不足分について輸入で補う方針については、専門家から安全性を巡って異論や批判が出ていることを踏まえ、「副反応(副作用)が出たときのメーカーの免責をどうするか、予防接種法との絡みで難しい問題がある」と指摘。免責を求める海外メーカーとの契約交渉が難航していることから、「将来的には予防接種法の改正も視野に入れて議論する必要がある」と述べた。

 輸入に向けて検討する特例承認は、国内での臨床試験を実施する前に海外でのデータだけで国内使用を承認する例外的な措置。26日に専門家の会議を開き、正式に決定する。

 一方、ワクチン接種の金銭的負担については、「ワクチン代そのものは基本的には国費の負担にしたい」と述べた。接種にかかる経費については今後検討すると述べたが、低額所得者の負担は全額無料とする方針を示した。

(読売新聞、2009年8月25日)

****** 読売新聞、2009年8月25日

死者最大9万人、ワクチン前倒しを…米勧告

 【ワシントン支局】米大統領諮問委員会は24日、新型インフルエンザによる死者が最大で、通常の季節性インフルエンザの2倍にあたる9万人に上る可能性があると指摘、政府に対してワクチンや薬の供給を9月半ばに前倒しするよう製造業者への働きかけを求める勧告を出した。

 勧告では、米国内の感染者は年内に人口の3~5割に達すると予想。新型インフルエンザを「国にとって深刻な脅威」と位置づけ、米食品医薬品局に対して治験中の注射薬の許認可を迅速に判断するよう求めた。

(読売新聞、2009年8月25日)

****** 毎日新聞、2009年8月25日

新型インフルエンザ:ワクチン確保、小中高と高齢者分も 特例措置で輸入--厚労相

 舛添要一厚生労働相は25日の閣議後会見で、新型インフルエンザのワクチンについて、優先接種の方針が固まっている妊婦や乳幼児、基礎疾患(ぜんそく、糖尿病など)のある患者、医療従事者に加え、小中高生と高齢者の分も確保する意向を示した。合計5300万人で、国内生産で足りない分を輸入する場合は、国内での臨床試験などを省略できる薬事法の「特例承認」を検討するとした。【清水健二】

 舛添氏はワクチンの確保目標を5300万人としていたが、内訳は明らかにしていなかった。

 20日の厚労省と専門家の意見交換会で優先接種の対象とされたのは▽妊婦(100万人)▽1~6歳の乳幼児(600万人)▽基礎疾患のある人(1000万人)▽医療従事者(100万人)で、計1800万人。これに7~18歳の小中高生(1400万人)と基礎疾患のない高齢者(2100万人)が加わる。

 国内4社が製造するワクチンは年内で1300万~1700万人分とされ、生産が順調なら優先接種対象者にはほぼ行き渡る。

 一方、小中高生や高齢者にも接種すると、生産を来年2月まで続けても最大3000万人分のため、不足が確実だ。

 舛添氏は「(ワクチン輸入は)薬事法の特例の適用を検討しており、専門家や薬害被害者の意見を聞きたい」と述べた。

 厚労省によると、特例承認は、緊急性があり、代替策がない場合に大臣が決めることができる。過去に適用例はないという。

 海外で生産される新型インフルエンザのワクチンには、国内生産分には入っていない補助剤などが使われており、副作用リスクなどについて「海外での試験結果などから慎重に判断することになる」としている。

(毎日新聞、2009年8月25日)

****** NHKニュース、2009年8月25日

ワクチン輸入 特例承認の方針

新型インフルエンザのワクチン接種について、厚生労働省は、必要なワクチンをあわせて5300万人分と見込み、国内の製造で不足する分は、審査を大幅に省いて海外からワクチンを輸入する「特例承認」を適用して緊急に調達する方針です。

厚生労働省によりますと、接種する対象者の候補は、▽医療従事者が100万人、▽重症になりやすい病気を持つ人が1000万人、▽妊婦が100万人、▽乳幼児が600万人、▽小中学生と高校生が1400万人、▽高齢者が2100万人で、あわせて5300万人です。

国内では、先月から新型インフルエンザのワクチンの製造が始まりましたが、ワクチンの元になるウイルスの増殖力が弱いことから、年内の製造量は1300万人から1700万人分にとどまる見通しです。

厚生労働省は、国内の製造で不足する分は輸入する方針ですが、海外メーカーのワクチンの安全性について、通常の手続きどおり審査した場合、半年以上かかるということです。

このため、厚生労働省は、現地国での承認があれば国内での審査を大幅に省いて輸入できる「特例承認」という薬事法の規定を初めて適用して、緊急に調達する方針です。

厚生労働省は、専門家らとともにワクチンを接種する対象者などの検討を続けていて、来月中に正式に決めることにしています。

(NHKニュース、2009年8月25日)

****** 産経新聞、2009年8月24日

【新型インフル】安全性、「買い占め」批判…ワクチン輸入に課題山積

 秋以降の新型インフルエンザの本格的流行に備え、政府は24日、不足するワクチンを輸入する方針を固めた。国産と製造方法が異なる海外ワクチンの緊急輸入については専門家から「安全性を担保できない」との異論も出ている。世界的なワクチンの品薄状態の中、日本が大量輸入すれば、「買い占め」と受け取られかねない側面もあり、課題は山積している。

 新型用ワクチンについて、政府はワクチンの必要量を5300万人分と見積もり、製造が追いつかない約2000万人分を輸入したい考えだ。

 ワクチンを含め薬剤を海外から輸入する場合、薬事法.は国内で安全性などを確認する臨床試験(治験)を実施することを製薬会社に義務付けている。通常、治験には5年程度かかるケースが多いが、今回のような緊急時には、海外で承認された薬剤を国内でも認める特例承認の適用が可能だ。

 ただ、海外の新型用のワクチンは免疫力を強める製剤を加えるなど国内ワクチンと製造方法が異なり、安全面から輸入に慎重な姿勢を示す専門家も多い。

 大阪市立大医学研究科の広田良夫教授(公衆衛生学)は「投与から10日~20日後に神経症状などが出てくる可能性もある」と注意を促す。

 国立感染症研究所感染症情報センターの岡部信彦センター長も「海外で使われているからといって、そのまますぐに日本でも承認したのでは安全性は担保されない。少数でもいいから日本人でも調査を行うべきだ」と指摘する。

 政府は輸入に向け欧米の製薬会社との交渉に入っている。しかし、製薬会社は輸入したワクチンで副作用が起きても、責任を取らないことなどを契約の条件に挙げているという。厳しい条件提示の背景には、世界的なワクチンの品薄状態があるとみられる。

 また、医療体勢の整った日本が大量輸入すれば、「途上国向けの調達に影響を与える」などと国際的に非難される可能性もある。

 国の対策本部の専門家諮問委員会委員長を務める自治医科大の尾身茂教授は「輸入したワクチンの一部を途上国に寄付すれば、国内分を確保しながら途上国にも届けることができる。海外の製薬会社などは途上国へのワクチンの寄付を表明しており、日本もそうした配慮をする必要がある」と指摘している。【今泉有美子】

(産経新聞、2009年8月24日)

****** NHKニュース、2009年8月25日

優先接種 妊婦の安全性確認へ

新型インフルエンザが全国的な流行に入ったことを受けて厚生労働省は、感染すると重症になりやすい妊娠中の女性に対するワクチンの優先的な接種を検討するため、ワクチンの副作用など安全性に関する情報収集を急ぐことになりました。

妊娠中の女性は、免疫が低下していることなどから新型インフルエンザに感染すると重症になりやすいとされ、厚生労働省は、ワクチンを優先的に接種する方向で検討を進めています。しかし、季節性インフルエンザの場合、海外では妊婦にもワクチンを積極的に接種している国もありますが、日本ではワクチンの安全性が十分には確立していないとして医師が感染のリスクなどを考慮しながら接種しています。これまで国内ではワクチンの接種によって妊婦に重い副作用が起きたという報告はありませんが、厚生労働省は、あらためて国内でワクチンが接種されている状況を確認するとともに海外での副作用の事例など安全性に関する情報収集を急ぐことになりました。そのうえで厚生労働省は、関係学会からヒアリングを行い、来月までに妊婦を含めて新型インフルエンザのワクチンを接種する優先順位を決めることにしています。

(NHKニュース、2009年8月25日)

****** NHKニュース、2009年8月25日

患者の97%は新型に感染

全国的な流行が始まったインフルエンザの患者の97パーセントは新型のウイルスに感染していたことが、国立感染症研究所などの調査でわかりました。専門家は「簡易検査でA型と判定された場合には、新型インフルエンザだと考えて重症化のおそれがないかなど慎重に対応する必要がある」と話しています。

国立感染症研究所では、インフルエンザの患者が増え始めた先月上旬以降、各地の地方衛生研究所を通じて医療機関を受診したインフルエンザの患者2800人余りがどのタイプのウイルスに感染しているのか詳しく分析しました。その結果、これまで流行していたA香港型に感染していたのは70人にとどまる一方、全体の97パーセントに当たる2774人が新型のインフルエンザウイルスに感染していたことがわかったということです。また、患者を年齢別に見てみると10代が39パーセント、20代が16パーセントと毎年のインフルエンザでは比較的少ない若者が55パーセントを占めており、専門家は免疫がないため、毎年の流行では感染しにくい世代にウイルスが広まっているとみています。国立感染症研究所の安井良則主任研究官は「簡易検査でA型と判定された場合、詳しい検査結果が出ていなくても新型と考えて重症化の危険性がないか慎重に対応する必要がある。この冬の新型の流行は、毎年の流行よりも大きくなる可能性が高いので対策を急ぐ必要がある」と指摘しています。

(NHKニュース、2009年8月25日)

****** NHKニュース、2009年8月25日

ワクチン 途上国にも提供を

新型インフルエンザに有効なワクチンが世界的に不足することが予想されるなかで、WHO=世界保健機関の担当者は日本はワクチンの生産能力を早急に高め、国内だけでなく途上国にも提供するべきだという考えを示しました。

新型インフルエンザのワクチンについては先進国を中心に各国が製造を急いでいますが、当初は世界的に大幅な不足が予想されていて、日本は海外から輸入することも検討しています。これついてWHOでインフルエンザ対策を担当している進藤奈邦子医務官は、NHKのインタビューに応じ、「日本のようにもともとワクチンを作る力があるところはこういう状況を想定してもっとワクチンの生産能力を上げてほしかった」と指摘しました。そのうえで進藤医務官は「まだ遅くないので生産能力を早急に高める国家努力をしてほしい」と述べて、日本が国内向けだけでなくアジアを中心とした途上国にもワクチンを提供するべきだという考えを示しました。一方、進藤医務官は、感染が拡大している各国では、外来診療に患者が押し寄せたり重症患者で集中治療室の設備やスタッフが足りなくなる事態も起きているとして、今後の予測は難しいとしながらも日本でもこうした医療態勢を早急に強化する必要があるという考えを示しました。

(NHKニュース、2009年8月25日)


新型インフルエンザが流行期入り 先週だけで11万人受診

2009年08月22日 | 新型インフルエンザ

****** 朝日新聞、2009年8月21日

新型インフルが流行期入り 

先週だけで11万人受診

 厚生労働省は21日、新型の豚インフルエンザが全国的に流行期に入ったと発表した。国立感染症研究所の推計では、最新の1週間(8月10~16日)にインフルで約11万人が全国の医療機関を受診。全国約5千の医療機関の定点調査では、1週間に受診した1医療機関あたりの患者数は1.69人で、「流行開始」の目安の「1人」を初めて超えたという。夏に流行するのは調査を始めた80年代以降で例のない事態だ。

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 季節性インフルも交ざっている可能性もあるが、ほとんどが新型インフルとみられる。厚労省は「新型インフルの流行シーズンに入った」としている。

 都道府県別では、1医療機関あたりの患者数は、沖縄県(29.60人)が最も多く、次いで奈良県(2.96人)、滋賀県(2.48人)など。「1人」を超えた自治体は26都府県で、前週の6都府県から急増した。前週(8月3~9日)は全国で0.99人。

 季節性インフルでは過去10年、流行開始から5~10週間でピークを迎えたが、1医療機関あたりの報告数の最多は50.07(04~05年)だった。

 新型インフルが大半とみられる今回は、7月から急激に患者数は増えている。厚労省は新型の感染拡大の予想は難しいとするが、秋以降に流行を迎えるとみて準備していた対策の前倒しを迫られる。

 厚労省は感染者の重症化予防を最大の目的にして対策を進めるとしている。9月に、重症化しやすい、ぜんそくなど持病のある小児患者の親らを集め、感染防止策などを説明する予定。

 また、厚労省のまとめでは、7月28日から8月18日までに新型インフルによる入院患者は累計230人で、うち、15人が急性脳症や人工呼吸器が必要な状態に陥った。

 入院患者全体のうち、糖尿病や腎臓、心臓の病気、ぜんそくなどの持病があったり、妊娠したりしていたのは93人で、約4割を占めている。

 年代別では、入院患者のうち19歳以下が8割。21日までに亡くなった3人は、いずれも基礎疾患がある50~80代。

 新型インフルの流行警報が19日に出た沖縄県。県立中部病院内科・感染症科の遠藤和郎医師は「軽症の方が救急病院や総合病院に集中すれば、病院機能がまひしてしまう。まずは、近くの開業医を訪ねて欲しい」と呼びかける。

(朝日新聞、2009年8月21日)

****** 朝日新聞、2009年8月21日

ワクチン確保、国による一括購入も検討 

新型インフルエンザ

 新型の豚インフルエンザワクチンの確保について、厚生労働省は21日、国による一括購入も視野に検討していることを、民主党の新型インフルエンザ対策本部の会合で明らかにした。世界的なワクチン不足が予想される中、社会的な混乱を防ぐため、政府は専門家らから意見を聴き、9月にも接種の優先順位を示すことになっている。

 同省の担当者は、「国の一定の管理下で供給先をコントロールする以上、国で確保することも一つの方法として検討している」としている。通常の予防接種は、企業から医療機関が買う形で流通しており、国による確保は異例のことだ。

(朝日新聞、2009年8月21日)

****** 朝日新聞、2009年8月21日

メタボも死亡リスク高まる恐れ 仏研究所

新型インフルエンザ

 新型インフルエンザで死亡した27カ国の574人を分析した結果、妊娠とメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)は死亡するリスクを高める恐れが確認された。仏公衆衛生研究所のチームが20日付の欧州科学誌ユーロサーベイランス電子版に発表した。

 世界保健機関(WHO)や各国保健省などが公式発表した、新型インフルによる死者は7月16日段階で684人。そのうち患者情報がある574人を分析した。

 もとの健康状態がわかる死者241人の9割で持病があった。持病のある人の比率を年齢別にみると、0~9歳は7割、20~29歳は8割にとどまった。

 持病でもっとも多いのが、肥満や糖尿病を含めたメタボ(3割弱)だった。60歳以上の持病では心臓や呼吸器疾患が多かった。季節性インフルや過去のパンデミック(世界的大流行)の経験では、メタボはリスクとはされていなかった。

 研究チームは、「メタボに多い肥満が治療効果を低めるのか、それとも糖尿病が病状を悪化させるのか、動物実験でみられるように肥満が免疫機能を落とすのか、まだ不明だ」としている。

 妊婦は16人。死亡した20~39歳の女性の3割を占め、季節性インフル同様、妊婦は重症化する恐れが強いことも確認された。

 死者の平均年齢は37歳で、51%は20~49歳。60歳以上の高齢者の比率は平均12%だが、国別ではカナダ(36%)や豪州(28%)のように高い国もあった。研究チームは「高齢者はひとたび感染すると重症化しやすい」と警告する。(大岩ゆり)

(朝日新聞、2009年8月21日)

****** 毎日新聞、2009年8月21日

新型インフル:流行期入り 

厚労省「経験ない状況に直面」

 厚生労働省は21日、新型インフルエンザが全国的な流行期に入ったと発表した。今月10~16日に全国約4600の定点医療機関から報告があった患者数は7750人に上り、1施設当たり、流行水準の「1人」を超える1.69人に達した。インフルエンザの夏場の流行は、国が82年に調査を始めて以来初めて。厚労省は「経験のない状況に直面している」として、新学期を前に感染拡大を防ぐ対策の徹底を呼び掛けた。

 新型インフルエンザ患者は7月後半から増え始め、定点(1施設当たり)の報告は7月20~26日が0.28、同27日~8月2日が0.56、同3~9日が0.99だった。10~16日に全国で受診した推計患者数は、前週より5万人多い11万人で、大半が新型の感染者とみられる。夏場の流行について、厚労省は「免疫がないため感染が広がりやすいが、理由は分からない」としている。

 地域別では、沖縄県が29.60と突出して高く、奈良、滋賀、福島、東京、大阪、茨城、高知の7都府県で2を超えた。保健所単位では北海道、富山、熊本を除く44都府県で1を超える地域がある。

 季節性インフルエンザの場合、定点報告数が1を超えると感染は拡大の一途をたどり、流行開始から6週間前後でピークを迎える。ここ10年のピークは最大が05年の50.07、最少が01年の10.59。感染力や気象条件が異なるため、厚労省は「新型のピークがいつ、どの程度になるかは予測がつかない」と話す。

 新型インフルエンザは、大半の人が感染から数日で回復するが、妊婦や乳幼児、ぜんそくや糖尿病など基礎疾患がある人は重症化しやすい。海外では未成年を中心に、健康な人が肺炎で死亡するケースも報告されている。

 厚労省は、他人に感染を広げないことが重要だとして、急な発熱やせきの症状がある場合、いきなり医療機関に行くのは控え、かかりつけ医や保健所の発熱相談センターにまず電話するよう求めている。【清水健二、江口一】

(毎日新聞、2009年8月21日)

****** 毎日新聞、2009年8月21日

新型インフル:国がワクチンを一括買い上げへ

 厚生労働省は21日、ワクチンメーカーから新型インフルエンザワクチンを一括購入する方針を固めた。

 国は現在、新型のワクチンは、妊婦など重症化の恐れが高い人への優先接種を検討している。年内に確保できるのは最大1700万人分で不足の恐れがある。このため、リスクの高い人に確実に接種するには国による管理が必要と判断した。一括購入の財源や、接種時に国民が負担するかどうかは今後詰める。

 毎年流行する季節性インフルエンザのワクチンは、医療機関が購入している。【江口一】

(毎日新聞、2009年8月21日)

****** 毎日新聞、2009年8月21日

新型インフルエンザ:ワクチン、妊婦・乳幼児ら優先 医療従事者も--厚労省

 新型インフルエンザのワクチン接種を巡り、厚生労働省は20日、専門家らとの意見交換会を開き、妊婦や乳幼児、基礎疾患(ぜんそく、糖尿病、腎機能障害など)のある患者など重症化しやすい人に優先接種することで大筋合意した。患者を診る医療従事者も接種対象とする。学会などからも意見を聞いたうえで、政府が9月中に対象と優先順位を決め、10月下旬にも接種が始まる。

 ワクチンの接種対象について、政府は08年9月、警察や消防など社会機能の維持などに携わる97業種の従事者を5段階に分ける案を示していた。しかし、当時想定していたのは高病原性の鳥インフルエンザ由来だったため、現状に合った方針を改めて考えることになった。

 臨床の医師や患者代表らが参加した意見交換会では、ワクチン接種の第一の目的を、重症化や死亡の防止とすることで一致。そのため、重症化するリスクが高い層と、感染者と接触する医療従事者が、優先的な接種対象に挙がった。重症化しやすい基礎疾患の範囲は、27日に学会などが加わって議論する。

 一方、見解が割れたのが、現在入院患者の約6割を占める未成年者(乳幼児を除く)の扱い。「感染拡大防止が目的ではないので、感染しても数日で回復する人には必要ない」との意見の一方で、「未成年者の入院が相次げば医療機関がパンクする」との懸念も出た。また、ワクチン接種の法令上の位置付けについて、厚労省の上田博三健康局長は、行政が勧奨しない任意接種が適当だとする考えを示した。

 厚労省によると、新型インフルエンザのワクチンは7月中旬から国内生産が始まり、最初のワクチンは10月下旬に完成予定で、年内に最大1700万人分、来年2月までに最大3000万人分を確保できる見通し。不足する場合の輸入も検討している。【清水健二】

(毎日新聞、2009年8月21日)

****** NHKニュース、2009年8月22日

全国的流行入り 警戒呼びかけ

先週医療機関を受診したインフルエンザの患者は、全国で11万人に上るとみられることがわかり、新型インフルエンザが全国的な流行に入りました。厚生労働省は、うがいや手洗いといった感染予防の徹底をあらためて求めるとともに、夏休みを終えた学校で感染が広がるおそれがあるとして警戒を呼びかけています。

厚生労働省によりますと、今月16日までの1週間に医療機関を受診したインフルエンザの患者は、全国で11万人に上ると推計され、そのほとんどは新型インフルエンザとみられるということです。また、定点観測をしている医療機関1か所あたりの平均の患者数は1.69人で、全国的な流行の目安となっている1人を大幅に上回っていることがわかりました。これを受けて厚生労働省感染症情報管理室の中嶋建介室長が21日に記者会見し、「新型インフルエンザが流行に入った」と発表しました。厚生労働省は、うがいや手洗いといった感染予防の徹底をあらめて求めるとともに、症状が出た人は、マスクを着用し、外出を控えるよう呼びかけています。また、夏休みが終わって新学期が始まると感染が急速に拡大するおそれがあるとして、学校に対して、生徒や教職員の体調管理に注意するよう呼びかけるとともに、感染者が出た場合は学級閉鎖や休校などの対策を検討するよう求めています。

(NHKニュース、2009年8月22日)

****** NHKニュース、2009年8月22日

インフルエンザ脳症に注意を

新型インフルエンザに感染した子どもが、インフルエンザ脳症になったという報告が相次いでいることから、厚生労働省は、意識障害などの症状が出た場合にはすぐに小児科を受診するよう注意を呼びかけています。

インフルエンザ脳症は、インフルエンザに感染した患者が突然、高い熱やけいれん、意識障害などを起こすもので、後遺症が問題になっているほか、最悪の場合、死亡することもあります。厚生労働省によりますと、新型インフルエンザの感染の拡大に伴って、これまでに4歳から14歳までの6人の子どもが相次いでインフルエンザ脳症と診断されたということです。このため厚生労働省は、乳幼児などを持つ親に対して、子どもに呼びかけに応えないといった意識の低下や、けいれん、それに意味のわからない言動などがみられた場合にはすぐに小児科を受診するよう呼びかけています。また、強い解熱剤は症状を悪化させるとして使わないよう求めています。インフルエンザ脳症は病状の進行が速いため、厚生労働省は、親や保護者の対応が重要だとして、注意を呼びかけています。

(NHKニュース、2009年8月22日)

****** NHKニュース、2009年8月22日

WHO 治療の指針を勧告 

新型インフルエンザをめぐってWHO・世界保健機関は、慢性の病気を抱える患者や妊娠した女性など、重症化の危険性が高いとされる人たちについては、ウイルスの診断がつく前でも症状が出ていればすぐに治療を始めるよう勧告しました。

WHOは21日付けでタミフルなど抗ウイルス薬の投与について、ガイドラインを公表しました。それによりますと、新型インフルエンザが広く流行している地域で、患者にインフルエンザのような症状が出ていれば、新型に感染した可能性が高いとみるべきだと指摘しています。とりわけ、心臓や肺の疾患、糖尿病、ぜんそくなど慢性の病気を抱える患者や、妊娠している女性など重症化する危険性が高いとされる人たちについては、ウイルスの診断がつく前でも症状が出ていれば、すぐに治療を始める必要があると勧告しています。その一方で、ほとんどの人は感染しても重症化しないで済んでいることから、健康で症状も軽い患者については必ずしも抗ウイルス薬を投与する必要はないとしています。WHOは、その理由として費用がかかることや、薬に対する耐性ウイルスが広がるリスクなどを挙げています。WHOがまとめた最新の集計によりますと、感染による死者は全体で1799人、感染者数は18万人に上っていますが、実際の感染者数はさらに多いものとみられています。

(NHKニュース、2009年8月22日)

****** NHKニュース、2009年8月22日

集団感染 76%は学校などで

新型インフルエンザの集団感染の76%は学校や保育所で起きていることがわかり、厚生労働省は、夏休みが終わると集団感染が急増するおそれがあるとして警戒を呼びかけています。

厚生労働省は、先月24日から今月9日にかけて報告された新型インフルエンザの集団感染1067件について、どのような集団で発生したか分析しました。その結果、最も多かったのは高校の312件で、このほか、中学校が157件、保育所が107件、小学校が97件、大学が92件、短大と専門学校があわせて22件、中高一貫校が14件、それに幼稚園が7件で、学校関係があわせて808件と全体の76%を占めています。この中では、夏休み中のクラブ活動やキャンプなどの行事を通じて感染が広がったという報告が目立っています。また、新型インフルエンザで入院した患者230人のうち、60%以上の146人を5歳から19歳の幼稚園や学校に通う年代が占めています。このため厚生労働省は、夏休みが終わると集団感染が急激に増えるおそれもあるとして、学校側が児童や生徒の体調に十分注意するとともに、感染者が増えた場合は学級閉鎖や休校などの措置をとり、感染の拡大を防ぐよう呼びかけています。

(NHKニュース、2009年8月22日)

****** フジテレビ、2009年8月21日

厚労省、新型インフルエンザの全国的流行が始まったと宣言 全国の推計患者数は11万人

 21日、新型インフルエンザの全国的な流行宣言が出された。スポーツ界でもさらに感染が広がる中、ワクチンが世界中で取り合いになるともみられている。

 20日、新型インフルエンザで主力を欠く日本ハムに、1 - 4で楽天が快勝した。楽天の野村克也監督は20日、「きょうのヒーローは誰? インフルエンザよ」と話した。

 一方、甲子園で、ベンチ入り18人から4人も欠けた14人で3回戦を勝ち抜いた島根県の立正大淞南高校は、さらにキャプテンが感染したとみられ、13人で準々決勝に臨んだが、新潟県の日本文理高校に11 - 3で敗れた。立正大淞南の崎田聖羅投手は「フィールドで戦っているのは9人同士なので、そこは関係なく、自分たちの野球をやり続けました」と語った。太田 充監督は「ここにはいないけれども、心は1つにして、きょうも戦いましたので、本当に申し訳ないという思いとともにですね、『ありがとう』と言いたいです」と語った。

 そんな中、厚生労働省は21日午後、新型インフルエンザの全国的流行が始まったと宣言した。先週1週間で報告された患者数は、全国的な流行開始の目安となる1施設あたり1人を超え、推計患者数は11万人となった。

 さらに21日、長野県では、基礎疾患がない30代の女性が重症となった。

 国内で2009年に生産可能とされるワクチンは、1,300万~1,700万人分。政府は、5,300万人分が必要と見積もる中、足りない分は輸入する意向を示している。しかし、自治医科大学の尾身 茂教授は「輸入した一部は、発展途上国に寄付するとか、貢献するということ」と話した。世界中で取り合いになるとみられるワクチン。WHO(世界保健機関)は18日、ワクチン不足が発生する可能性を警告している。

 厚労省は当初、新型インフルエンザのワクチンを国内で2,500万人分生産できると試算していた。しかし20日までに、国民のおよそ1割に相当する1,300万~1,700万人分と下方修正している。

 一方で、アメリカなどは、国民の30~78%分をすでに発注しているという。

 そんな中、アメリカの研究チームは、ワクチン接種の優先順位について、通学年齢の子どもと、その親の世代にあたる30代の成人を優先的に接種させれば、新型インフルエンザの大流行を抑えることができて、ワクチンの不足も回避できるとの試算結果をまとめている。

(フジテレビ、2009年8月21日)