【練習問題11】(産婦人科研修の必修知識2007)
重症妊娠高血圧症候群の母体検査所見で認められるのはどれか、2つ選べ。
a. ヘマトクリット値の低下
b. 血糖値の上昇
c. 血小板数の減少
d. 尿酸値の上昇
e. 動脈血酸素分圧の上昇
解答:c、d
妊娠高血圧症候群の検査所見:
①血液濃縮(Ht ↑)、
②水、Naの貯留、
③腎機能低下(GFR ↓、BUN ↑、尿酸 ↑)、
④アシドーシス、
⑤慢性DIC(血小板 ↓、過凝固)、
⑥尿蛋白(+)、低蛋白血症、
⑦脂質 ↑、
⑧PGI2/TXA2比の低下 (TXA2優位)
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【国試過去問】
妊娠高血圧症候群の病態として正しいのはどれか。
a. ヘマトクリット値の低下
b. 血小板数の増加
c. 血液凝固能の低下
d. 血管透過性の亢進
e. 腎血流量の増加
解答:d
妊娠高血圧症候群では、血管透過性の亢進から血漿成分の血管外漏出をきたし、ヘマトクリット値は脱水により高値となる。血小板数は低下、血液凝固能は亢進、腎血流量は低下する。
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【国試過去問】 25歳の初妊婦。妊娠36週の妊婦健診で高血圧、下腿浮腫を指摘されて紹介、入院。胎児発育は週数相当と言われていた。血圧146/94mmHg。子宮口の開大はなく、展退も認めない。尿蛋白(-)。Ht33%、血小板20万。
まず行うべき検査はどれか。2つ選べ。
a. ノンストレステスト(NST)
b. 超音波検査による羊水量計測
c. 羊水鏡検査
d. マイクロバブルテスト
e. 胎児血液ガス分析
解答:a、b
妊娠高血圧症候群では、まず胎児機能不全の検査(NST、羊水量計測など)を行う。
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【正誤問題】
(1)癒着胎盤は妊娠高血圧症候群(PIH)において起こりやすい。
(2)常位胎盤早期剥離はPIHにおいて起こりやすい。
(3)子宮内胎児発育遅延(IUGR)はPIHにおいて起こりやすい。
(4)仰臥位低血圧症候群によるショックはPIHにおいて起こりやすい。
(5)重症PIHでは羊水過多症がみられる。
(6)PIHではヘマクリット値の低下がみられる。
(7)PIHでは血小板増加がみられる。
(8)PIHでは血液凝固能低下がみられる。
(9)PIHでは血管透過性亢進がみられる。
(10)PIHでは循環血液量が減少する。
解答 ――――――
(1)X 絨毛が子宮筋層に侵入し、胎盤と筋層が癒着するもの。
(2)O
(3)O
(4)X 妊娠子宮による下大静脈圧迫のために起こる。左側臥位に体位変換すれば軽快する。
(5)X 重症PIHでは羊水過少症を起こすことが多い。
(6)X PIHでは血液は濃縮状態でヘマトクリット値は上昇する。
(7)X 血小板減少がPIHの重症化の目安となる。
(8)X 血液凝固能は亢進状態である。
(9)O 血管内皮の障害に基づく血管透過性の亢進が浮腫の一因となる。
(10)O
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【正誤問題】
(1)PIHは双胎妊娠に合併しやすい。
(2)PIHは糖尿病妊婦に合併しやすい。
(3)甲状腺機能亢進症が妊婦に及ぼす影響としてPIHがある、
(4)PIHは一般に妊娠28週以降に発症するものをいう。
(5)PIHは初産婦に多い。
(6)妊娠高血圧腎症(PE)では次回妊娠で再発しやすい。
(7)PEの症状の多くは分娩後早期に消失する。
(8)妊娠30週以前に発症するものは加重型妊娠高血圧腎症が多い。
(9)加重型妊娠高血圧腎症は、妊娠回数を重ねると重症化する。
(10)PIHでは正期産で低出生体重児が生まれやすい。
解答 ――――――
(1)O
(2)O
(3)O
(4)X 妊娠高血圧症候群(PIH)は、妊娠20週以後、分娩後12週までに高血圧がみられる場合、または高血圧に蛋白尿を伴う場合のいずれかで、かつこれらの症候が偶発合併症によらないものをいう。
(5)O
(6)X PEでは次回妊娠での再発はあまりない。加重型妊娠高血圧腎症は再発しやすい。
(7)O PEの症状の多くは約1カ月で消失する。
(8)O 加重型妊娠高血圧腎症は比較的早期に症状が現れ、慢性の経過をとる。
加重型妊娠高血圧腎症とは、妊娠前、または妊娠20週前より高血圧、蛋白尿のいずれか、もしくは両方の症状を呈し、妊娠20週以降に増悪を見た場合をいう。
(9)O 加重型妊娠高血圧腎症は、妊娠回数を重ねると、子癇、肺水腫などへの移行が多い。
(10)O
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【正誤問題】
(1)重症PIHの判定基準として収縮期血圧160mmHg以上は正しい。
(2)重症PIHの判定基準として拡張期血圧100mmHg以上は正しい。
(3)PIHは全妊娠の2~4%にみられる。
(4)PIHは一般に胎盤病とされている。
(5)PIHには妊娠偶発合併症による高血圧を含める。
(6)妊娠偶発合併症による高血圧で症状が増悪した場合を、加重型妊娠高血圧腎症という。
(7)PIHの症候による亜分類では、収縮期血圧が140mmHg以上、160mmHg未満、拡張期血圧が90mmHg以上、110mmHg未満を軽症とする。
(8)PIHの症候による亜分類では、収縮期血圧が160mmHg以上、拡張期血圧が110mmHg以上を重症とする。
(9)24時間尿の蛋白尿が300mg/日以上、2g/日未満を蛋白尿軽症、2g/日以上を蛋白尿重症とする。
(10)重症PIHは全妊娠の1~2%に発生する。
解答 ――――――
(1)O
(2)X 拡張期血圧110mmHg以上が重症PIHの判定基準である。
(3)X PIHは全妊娠の4~7%にみられる。
(4)O
(5)X
(6)O
(7)O
(8)O
(9)O
(10)O
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【正誤問題】
(1)32週未満の発症を早発型、32週以後の発症を遅発型とする。
(2)早発型では遅発型に比較してIUGR減少する。
(3)PIHでは一般に血液希釈が認められる。
(4)PIHでは一般に循環血液量の増加が認められる。
(5)PIHによるIUGRはsymmetrical IUGR(均衡型発育遅延)になる。
(6)PIHの治療の基本は安静・食事療法である。
(7)PIHでは一般に高カロリー療法を行う。
(8)PIHでは一般に食塩摂取量を5g/日に制限する。
(9)PIHでは一般に厳重な水分制限を行う。
(10)PIHの薬物療法ではACE阻害薬が第一選択である。
解答 ――――――
(1)O
(2)X 早発型では遅発型に比較してIUGRが増加する
(3)X PIHでは血液濃縮が認められる。
(4)X PIHでは一般に循環血液量の減少が認められる。
(5)X asymmetrical IUGR(不均衡型発育遅延)
(6)O
(7)X PIHでは一般に軽度の低カロリー療法を行う。
(8)X PIHでは一般に食塩摂取量を7~8g/日に制限する。極端な塩分制限はしない。
(9)X PIHでは循環血液量の減少が認められるため、極端な水分制限はしない。口渇を感じない程度に摂取させる。
(10)X PIHではACE阻害薬は禁忌である。PIHの降圧剤としてはヒドララジン(アプレゾリン)やメチルドーパ(アルドメッド)を用いる。