全国的に産科施設数はどんどん減少してますから、施設あたりの分娩件数は増加傾向にあり、将来的に産科を維持していこうとする施設では、産科医、助産師、新生児科医、麻酔科医などの必要数を確保することが急務となっています。
また、日本では、産科業務だけに専念している産婦人科医は少なく、産科業務以外にも、子宮外妊娠破裂などの産婦人科救急への対応、子宮筋腫・子宮内膜症などの婦人科良性疾患の診断・治療、婦人科悪性腫瘍の診断・治療、不妊治療、中高年女性医学(更年期障害や子宮脱などへの対応)等も同時に行っています。要するに、地域の基幹病院は、周産期センター的機能と同時に、産婦人科の救急救命センター的機能、婦人科のがんセンター的機能なども同時に担ってます。従って、地域から産科機能が消滅する時には、同時に、地域から婦人科機能も消滅することを意味します。
手遅れになってしまう前に有効な手を打たないと、地域の基幹病院・産婦人科の絶滅速度は今後もどんどん加速されていくばかりでしょう。
地域の周産期医療システムが崩壊する流れを阻止するためには、全県的な協力体制を構築していく必要がありますし、産婦人科医の再配置(集約化)、地域住民の理解、国や県の強力な支援なども必要だと思います。この問題は、もはや、一医師、一病院、一地域で対応できる問題ではなく、国策によって早急に対応すべき、非常に重要な国家的問題だと思います。
****** 医療タイムス、長野、2008年2月19日
県周産期システム 「今は順調、将来は不安」
県周産期医療対策会議
県周産期医療対策会議は18日、県立こども病院で開き、県周産期医療システムなどについて検討した。同システムは現在のところ、順調に機能しているものの、産科医不足が深刻化していることを背景に、将来的な体制を不安視する声が上がった。
同システムは、こども病院を「総合周産期母子医療センター」とし、「地域周産期母子医療センター」として佐久総合、長野、飯田市立、信大、長野赤十字の5病院、「高度周産期医療機関」として14病院をそれぞれ指定。地域の一般産科医療機関との連携を強化し、最適な医療確保を目指して、2000年に運用がスタートした。しかし、当初20病院あった「高度周産期医療機関」が、現在は産科医不足により14病院に減少し、転換期を迎えている。
同日の会合では長野赤十字病院の菅生元康副院長(産婦人科部長)が、「今までのところは、周産期患者が県外から県内の病院に入ってくる事例はあるが、県内から県外に出て行く事例はない」と県内の周産期医療体制を評価。また、長野市、松本広域の両消防局の担当者からも、奈良県で発生した妊婦の受け入れ先が決まらない事例はなく、「非常にスムーズな状況」との報告があった。
(中略)
このほか、県内の産科医療について飯田市立病院の山崎輝行婦人科部長は、集約化による効果を紹介。同院では集約化によって危険が予測される妊婦の紹介を早期から受けるようになり、その結果、早期からの全身管理が可能になり、早産などによるNICUへの入院患児が大幅に減ったとした。
(以下略)
(医療タイムス、長野、2008年2月19日)