ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

助産師が足りない 人材、大病院に集中

2006年08月31日 | 飯田下伊那地域の産科問題

助産師になるためには、1年間の助産師養成コースを修了し、助産師国家試験に合格する必要があるが、その1年間の助産師養成コースでは、せいぜい10例程度の分娩介助を実習するだけであるから、免許取りたての新人助産師の段階では、実際の分娩介助の経験は未だほとんどゼロに等しく、実際の臨床の現場ではまだ全く使い物にならない。

従って、免許取りたての新人助産師は、まず先輩助産師の大勢いる大病院に就職して、先輩助産師の厳しい指導の下に鍛えられて、数年かけてだんだん一人前の助産師に成長してゆく。最初の就職先がしっかりとした研修のできる病院でないと、一人前の助産師になれないで終わってしまう。

医師の場合は、最初に就職した研修病院のままずっと職場を変えない人はむしろ少なく、数年ごとに職場を移動する場合が多いが、助産師の場合は、医師と違って、最初の就職先のまま職場を変えず長年勤務し続ける場合が多いと考えられる。

当科所属の助産師たちの場合、ほとんどが地元出身者で、新卒で採用された者が多い。なお、市内の短大に助産師養成の専攻科があり、当科が実習施設となっていて、新人助産師の貴重な供給源となっている。当科で長年活躍し、退職した後にその短大の教員になって、助産学生を教育して後進の地元学生を育てることに専念している者も数名いる。ここで入門し、ここで厳しく鍛えられて成長し、ここで後進を育て上げている、先輩後輩の強い絆で結ばれた、体育会系の、とても頼りになる、最強の女性軍団である。

また、助産師たちが、それぞれのライフサイクルの中で、妊娠、出産、子育てと自分の仕事を両立させてゆくためには、しっかりと産休、育休がとれて、超過勤務のない職場を選択したいと思うのも当然の話であろう。

これらの諸々の事情から、助産師が極端に偏在する結果となっている。この現実の姿を無視した一方的な施策によって、多くの母子の生命が危険にさらされる事態だけは何としてでも回避しなければならない。現実に即した解決策を探っていただきたいと思う。

****** 東京新聞、2006年8月31日

助産師が足りない 人材、大病院に集中

(略)

 助産師は助産、妊婦や新生児などの保健指導を担う。看護師が助産師になるには、主に一年間の助産師養成所を卒業し、国家試験に合格する必要がある。厚生労働省の調査によると、二〇〇四年の看護師・准看護師の就業者数は約百二十二万人。これに対し、助産師は約二万六千人。助産師の勤務場所をみると、病院(二十床以上)が七割近くを占め、開業医も含む診療所(二十床未満)は二割以下だった。

 一方、〇三年に生まれた子どもの出生場所は病院52%、診療所47%、助産所1%。お産の半数近くが小規模施設で行われているにもかかわらず、担うはずの助産師は大病院に集中している。

 約五十人の助産師を抱える大規模病院の助産師長はこう分析する。「大病院に勤めれば、多くのお産にかかわれて勉強になる。勤務も通常の休日はもちろん、産休や育休もとることができる」

 産科医不足同様、いつ始まるか分からないお産に対応するには過酷な勤務が要求される。その割に収入も他科の看護師と大きな開きはない。

(以下略)

(以上、東京新聞、2006年8月31日)


医学部定員増員:10県、10年限定、最大10人

2006年08月31日 | 地域医療

医学部の定員は長年にわたり抑制傾向が続いてきましたが、2008年度より医学部定員増を認める厚労省の方針が発表されました。

****** 朝日新聞、2006年8月31日

地方10県、医学部定員増 10年限定、最大10人

 地域や診療科ごとの医師不足を解消するため、厚生労働、総務、文部科学の3省は31日、新たな医師確保総合対策をまとめた。医師不足が特に深刻な東北や中部地方などの10県について、08年度から最大10年間に限り、大学医学部の入学定員をそれぞれ10人まで増やすことを認めた。医学部の定員は抑制傾向が続いており、暫定的とはいえ24年ぶりの方針転換となる。へき地医療を担う医師を養成する自治医大の暫定的な定員上乗せのほか、医師の集約化推進などの対策も盛り込んだ。

 定員増が認められたのは、人口や面積当たりの医師数が極端に少ないなど一定の基準を満たした青森、岩手、秋田、山形、福島、新潟、山梨、長野、岐阜、三重の10県。各県は、地元に医師を根付かせるための奨学金制度の創設を条件に、県内の大学医学部の定員を増やせる。奨学金を貸与する医師の卒業後の配置計画づくりなども義務づけられた。

 自治医大には、各都道府県から毎年2~3人ずつ入学しているが、08年度から10年間に限り、現在100人の定員を110人まで増やせる。特に医師不足が深刻な地域の学生が対象となる。

 厚労省によると、病院や診療所で働く医師数は毎年約3500~4000人ずつ増えており、2022年には全体で約30万5000人に達して「長期的には医師は足りる」と推計されている。

 医師の過剰は医療費増大につながるとの考えから、政府は82年の閣議決定で医師養成の抑制を打ち出し、97年には「医学部定員の削減」を閣議決定した。ところがこの数年、地方での医師不足や、小児科や産科など特定の診療科での不足が深刻化し、方針転換を決めた。

 ただ、厚労省は今回の定員増は「暫定的な措置」としており、期限の10年を過ぎても医師の定着が進んでいなければ、定員が現在より減らされることもありうる。

 医学部の定員増は、全国知事会など地方を中心に要望が強い半面、医師が現場で活躍するようになるまでには10年近くかかるため、即効性は薄いとの指摘もある。

 このため、3省は短期的な対策として、都道府県ごとに医師を拠点病院に集める集約化・重点化のほか、現在31都道府県で実施されている小児救急電話相談事業を全都道府県に拡大する。さらに医師の負担を軽減するため、出産時の医療事故で障害を負った患者を救済する仕組みを検討するほか、病院内の保育所の利用促進など女性医師の働きやすい環境を整備。離島対策では、ヘリコプターを使った巡回診療や、住民が遠方の産婦人科を受診する際の宿泊費支援なども総合対策に盛り込んだ。

(朝日新聞、2006年8月31日)

****** 東京新聞、2006年8月31日

医学部定員:10県、最大各10人増

 地方の医師不足対策を協議していた厚生労働、文部科学、総務、財務の四省は三十一日、特に不足が深刻な東北、甲信越、中部地方の十県の大学医学部の入学定員を、各県で最大十人まで、二〇〇八年度から最長十年にわたり増やすと認めることで正式に合意した。同日午前、先に署名を済ませた総務相を除く三大臣が確認書にサインした。地域医療を担う医師を養成する自治医大(栃木県下野市)も同期間に最大十人まで増やすことを認めた。

 国は今回の定員増を暫定的なものと位置付け、各省は一九九七年の閣議決定で示された医学部定員の削減方針も併せて確認。歯科医師については各大学に歯学部定員の削減を要請し、歯科医師国家試験の合格基準を引き上げることとした。

 このほか、厚労、文科、総務の三省は産科、小児科の医師確保などを盛り込んだ「新医師確保総合対策」もとりまとめた。

 今回、医学部の定員増が認められたのは、〇四年に人口十万人当たりの医師数が二百人未満で、百平方キロメートル当たりの医師数が六十人未満の青森、岩手、秋田、山形、福島、新潟、山梨、長野、岐阜、三重の各県。

 定員増は医師の地元定着を図ることが条件で、県に対し(1)県内や医師不足の他の県で一定期間働くことを条件にした奨学金の設置(2)奨学金を受ける医師の卒業後の配置計画をつくり、国と協議(3)地域に必要な医師確保策を盛り込んだ医療計画をつくり国と事前協議-などを求める。

 一方、新医師確保総合対策では、分娩(ぶんべん)時の医療事故で訴訟などが多いことが産科医不足の一因、との指摘があるため、事故にあった患者の救済制度(無過失補償制度)を検討し、医師の負担を軽減する方針を明記。

 このほか産科、小児科医の配置を重点化・集約化▽離島の住民が産婦人科を受診する際の宿泊費支援▽女性医師の院内保育所利用基準を緩和-などを盛り込んだ。

 医学部の定員増が認められる大学名は次の通り。

 【国立】弘前大、秋田大、山形大、新潟大、山梨大、信州大、岐阜大、三重大

 【公立】福島県立医大

 【私立】岩手医大、自治医大

****** 産経新聞、2006年8月31日

医学部定員増員へ、24年ぶり方針転換

 厚生労働、文部科学、総務、財務4省は31日、医師不足が深刻な地方の10県について、平成20年度から暫定的に大学医学部の入学定員を増やすことを正式に決めた。また、自治体からの要請に基づき緊急避難的に医師を派遣するシステムの構築など総合的な医師不足対策を盛り込んだ「新医師確保総合対策」を発表した。

 これまで国は医師が増えると医療費も増加するため、医学部の定員を抑制してきたが、医師の都市部への流出・偏在が深刻なことから24年ぶりの方針転換を図った。

 定員増の対象は、青森、岩手、秋田、山形、福島、新潟、山梨、長野、岐阜、三重の各県。平成16年に人口10万人あたりの医師が200人未満で、100平方キロあたりの医師数が60人未満だった。このほか自治医科大学も対象。平成20年度から最長10年にわたり、年間最大10人を限度として増員を認める。

 歯科医師については各大学に歯学部定員の削減を要請し、歯科医師国家試験の合格基準を引き上げる。

 総合対策には、大学医学部の入試について、地元出身者の入学枠の拡充などを明記。定員増は卒業後の地域定着に取り組むことが条件で、地域定着を条件にした奨学金の積極活用などを求めている。

 このほか、医師不足の深刻な小児科、産婦人科の人材や機能の集約化・重点化を進める。小児救急電話相談事業の拡充も図る。産婦人科では助産師との連携も進める。

 離島などの僻地(へきち)医療対策では、ヘリコプターを活用した離島での巡回診療、住民が遠方の産婦人科を受診する場合の宿泊支援も盛り込んだ。

 厚労省内に病院関係者による地域医療支援中央会議を設置し、都道府県からの要請に対応した医師派遣も行う。

 分娩(ぶんべん)時に脳性まひなどの障害が残った場合は医師に過失がなくても患者を救済する制度や医療事故の死因究明制度のあり方など医師の負担の軽減にも取り組むことにした。

 最大の課題となる医師の地域定着について厚労省は「地元大学と連携して県に実効性のある措置を講じてもらう必要がある」としている。

(産経新聞、2006年8月31日)


医療不審死、究明機関設置へ(読売新聞)

2006年08月24日 | 医療全般

コメント(私見)

我が国の妊産婦死亡率の推移を見ると、1950年は10万分娩に対して176でしたが、2000年には6.3となりました。また、周産期死亡率(早期新生児死亡率と妊娠28週以後の死産率との合計)の推移を見ても、1950年は出生1,000に対して46.6でしたが、2000年には3.8となりました。

これらのデータから、この五十年間で分娩の安全性が著しく向上したことがわかります。また、現在の我が国の周産期医療は世界でもトップレベルの水準に達していると考えられます。

しかし、今でも実際には、1,000人に4人の赤ちゃんが、また1万人に1人の母親がお産で亡くなっているわけですから、現在の医療水準であっても、必ずしも、一般に信じられているように『お産は母児ともに安全』とは限りません。(例えば、羊水塞栓症や癒着胎盤などの場合、非常にまれな発症率ながら、いったん発症すれば、発症直後に母体死亡となる可能性も非常に高いです。)

従って、妊婦さんとその御家族に対して、分娩時に起こりうる様々な産科疾患のリスクを事前に説明して、きちんと理解してもらっておくことは非常に重要ですが、実際に分娩時母体死亡が発生した場合には、その原因に関してご遺族に納得していただくのが非常に難しい場合も多く、(福島県立大野病院事件のように)警察が刑事事件として医療に介入してくる事例も増えてきました。

医療関連死の原因をめぐる医療機関側と患者側との紛争を回避するためにも、「第三者機関が医療関連死の原因を究明する制度」を早急に整備してほしいと多くの人が考えています。

参考:

母体死亡となった根本的な原因は?(私見)

読売新聞:日本の制度不備を痛感 大野病院事故 医師逮捕に驚きの声

****** 読売新聞、2006年8月23日

医療不審死、究明機関設置へ

厚労省08年度にも…早期解決後押し

 医療行為中の不審死(医療関連死)について、第三者機関が原因を究明する仕組みを構築する作業が、来年度から本格化することになった。

 厚生労働省が、外部の専門家による検討会を来年度に設置することを決めたもので、早ければ2008年度にも新制度がスタートする。厚労省では昨年から、5年計画で第三者機関による死因究明のモデル事業を進めており、その実績をみて検討を始めることにしていたが、患者、医療機関双方からの要望の高まりに応え、検討作業を前倒しすることにした。

 厚労省では、医療関連死の数を年間1万件前後に上るとみている。しかし、公的に死因を究明する制度はなく、患者側が病院の説明に納得できない場合は、民事訴訟を起こすか、捜査機関が立件するのを待つしかないのが現状だ。

 警察庁によると、05年に全国の警察が送検した医療事故は91件で、1997年の3件に比べ急増している。一方、最高裁によると、医療訴訟の審理は迅速化が進んでいるものの、05年に判決が確定したり和解したりした訴訟の平均審理期間は26・8か月と、訴訟を起こす負担はなお大きい。

 このため厚労省は昨年から5年間の予定で、死因究明のモデル事業を東京など6都府県で開始。第三者の医師が解剖と診療録(カルテ)の分析、医療機関に対する聞き取りなどの調査を行ったうえで、法律家も交えた評価委員会が報告書をまとめ、医療機関と遺族の双方に渡している。検討会でも、このシステムを参考に議論が進む見通しだ。

 このほか調査の実施主体や、費用を公費でもつべきか医療機関の負担とすべきかなど、制度設計の詳細についても検討する。実施主体については、〈1〉厚労省〈2〉新たな公益法人〈3〉学会や医療関係の団体〈4〉当事者以外の医療機関――など様々な可能性を議論する。

 医療機関にとっても、患者側との紛争の回避や早期解決につながるメリットがあり、刑事事件となるケースが減るのではないかという期待もある。

 今年3月には、福島県立大野病院で帝王切開手術を受けた妊婦が死亡した04年の事故をめぐり、産婦人科医が業務上過失致死罪で起訴されたが、「結果が悪ければ医師個人の刑事責任が問われるというのでは、現場の委縮につながる」との反発が医療界から噴出。医療の専門家がかかわる死因究明制度の実現を求める声が医師らの間で強まった。

 医療事故に詳しい鈴木利広弁護士は、「調査に加わる医師に本来の仕事と同様の真剣さがなければ、第三者機関を設けても成功しない。また、中立性を保つため、モデル事業と同じように、調査結果の評価には、医療関係者以外に法律家なども加わることが絶対に必要だ」と話している。

(2006年8月23日  読売新聞)

第4回産科問題懇談会の協議内容

2006年08月22日 | 飯田下伊那地域の産科問題

当医療圏では『産科問題懇談会』を昨年の8月に立ち上げ、当地域の周産期医療のあり方などについて定期的に協議を重ねてきました。今年8月18日に開催された第4回産科問題懇談会の協議内容が地元紙に詳しく掲載されていましたので紹介します。今回の懇談会では、当医療圏の周産期医療体制のこの1年間の歩みについての経過報告、各施設における現状報告、現時点における問題点、今後の方向性などについて、活発に協議されました。この懇談会は今後も定期的に開催され、協議内容は市民にも逐一公開されてゆく予定です。

****** 南信州新聞、2006年8月20日

産科体制 市立病院は順調 第4回産科問題懇談会 開業医は助産師不足も

地域の産婦人科医療について考える「第4回産科問題懇談会」(会長・牧野光朗飯田市長)は18日夜、飯田市大久保町の同市役所で開かれた。市町村や各種団体の代表、産婦人科医ら30人余りが集い、現状報告のほか、新生児搬送用の保育器購入や今後の産科体制について話し合った。

 懇談会に先立ち、牧野市長が「厳しい条件の下で最大限に努力し、(産科体制は)おおむね機能している」とあいさつ。担当者が「産科問題について住民の意見を聞く会」(3月)、「県議会社会衛生委員会の現地調査」(6月)、「産科問題を考えるシンポジウム」(5月)の経過を報告した。

 懇談会でははじめに、飯田市立病院が現状報告。開業医の減少で、分べん数が年間500件から1000件ベースと約2倍に増加しているものの、山崎輝行医師は「予想通り市立病院に集中しているが、正常分べんはほとんど助産師。異常分べんはもともと市立病院が対応していたので、医者の仕事がそれほど大幅に増えているわけではない。今のところ特に問題なくスムーズにできている」と順調な様子を伝えた。

 ただし、今後、許容範囲を超えて分べん件数が増えた場合には、状況に応じて、さらに、病室を増やし、医師、助産師を増員するとともに、外来は開業医に任せ、市立病院は分べんと手術に集中するなどの対応も考えているとした。

 一方、開業医からは「助産師がみつからない。各方面に働きかけているが、開業医での勤務ではいつ呼ばれるか分からないので嫌がられる。スタッフの体力がいつまでもつか...」(椎名一雄医師)と助産師不足に悩む声や、「(市立病院は)依頼したものを全て受けてくれ、恵まれていると感じる」(平岩幹夫医師)、「何かあったら受けてくれるという安心感はあるが、市立病院が新患をやめたので婦人科の外来が増え、患者の待ち時間がが増えている」(羽場啓子医師)、「どうしてもここ(松川日赤病院)という方もおり、予定日ぎりぎりに市立病院へ行くこともある」(高橋正明医師)、「市立病院の非常勤医師として登録している」(西沢春紀医師)など、市立病院との連携体制に関する声があった。

(以下略)

(南信州新聞、2006年8月20日)


医学部定員を一時増員(読売新聞)

2006年08月20日 | 地域周産期医療

医師不足に対する国の打開策:「新医師確保総合対策」の原案が公表されました。この「新医師確保総合対策」の最大の目玉は、『医師不足が深刻になっている県では大学医学部の定員を一時的に増やす暫定処置が容認される』ことにあるようです。

地元国立大学の医学部の定員を増やしたとしても、その効果が実際に表れ始めるのは10年以上先の話です。今現在、急激に悪化しつつある地域医療現場の労働環境を改善する推進力にはなってくれません。

また、全国的に、大学病院自体の人材が枯渇してマンパワー不足に陥っていて、地域中核病院から大学病院に医師を大量に引き揚げているような状況ですから、今後、医学部の定員が増えて、その6年後から卒業生がいくらか増え始めたとしても、その増えた分は、当面の間、大学病院の診療体制の建て直しや維持のために使われるだけになってしまうかもしれません。

ですから、この「新医師確保総合対策」が、末端の地域医療現場の労働環境改善に寄与し始めるのは、一体全体、何十年先になるのかわかりません。

私自身、定年退職まで何とか体力がもって頑張れたとしても、あと十数年しかありませんので、そんなに悠長には待ってられません。やはり、自力でも、自分達の労働環境が改善されるように努力をしていかなければ、状況は今後も悪化の一途をたどるばかりだと思います。

****** 読売新聞、2006年8月19日

医学部定員を一時増員

医師不足対策、深刻な都道府県…政府原案判明

 医師の不足や偏在の問題に対応するため、厚生労働、文部科学、総務の3省で検討していた「新医師確保総合対策」の原案が18日、明らかになった。

 医師不足が特に深刻となっている都道府県に限り、大学医学部の定員増を暫定措置として認めるほか、離島やへき地で勤務する医師を養成している自治医科大学の定員も増員する。また、都道府県の要請に基づき緊急避難的に医師を派遣・紹介するシステムを構築する。3省は近く最終的な対策をまとめ、可能な施策から実施に移す。

 医学部の定員は、1986年以降、削減傾向が続き、97年に「引き続き医学部定員の削減に取り組む」ことも閣議決定された。定員増が認められれば約20年ぶりの方針転換となる。

 原案では、定員を暫定的に増やす条件として〈1〉県が奨学金拡充など卒業後の地域定着策を実施する〈2〉定着する医師が増えた場合に限り、暫定的な増員が終わった後も以前の定員数を維持できる――こととした。

 また、医学部が地元出身者の入学枠を拡充することや、山間へき地で活動する地域医療の志望者を対象に特別入学枠を設けることを推進するとした。卒業後の一定期間は地元の医療機関に勤務することを条件に、都道府県が奨学金を設けることも盛り込んだ。

 政府も、医師が特に少ない都道府県を対象に、医師確保のための補助金を重点配分する。

 一方、結婚や出産を機に退職する女性医師が増えていることから、女性医師が働きやすい環境づくりにも取り組む。具体的には、病院内の保育所の利用促進や、病院経営者への啓発事業を展開する。

 特に医師不足が深刻な小児科、産婦人科では、都道府県ごとに人材や機能の集約化・重点化を進めるほか、現在31都道府県で展開している小児救急電話相談事業(#8000)を全都道府県に拡充する。産婦人科では助産師との連携も進める。

 離島などのへき地医療対策では、ヘリコプターを活用した離島での巡回診療、住民が遠方の産婦人科等を受診する場合の宿泊支援などを盛り込んだ。

医師確保案 実効性ある地域定着策を

 [解説]厚生労働省などがまとめた「新医師確保総合対策案」のポイントは、医師不足で悩む県にある大学医学部の定員増に道を開いたことにある。医師数が増えると医療費も確実に増加することから、政府はこれまで医学部の定員を厳しく抑制する政策をとってきた。部分的にせよ、政策の転換を決めた背景には、医師の大都市への流出・偏在が看過できないほど深刻になっている事情がある。

 ただ、地方の医学部の入学定員を増やしただけでは、問題解決にはつながらない。卒業後も引き続き地元にとどまって活躍する医者を増やさなくては何にもならないからだ。今回の対策案では、暫定的に定員を増やしても地元に定着する医師が増えなかった医学部については、以降の定員を削減する事実上の「ペナルティー」も盛り込んだ。

 しかし、大学が学生の卒業後の進路を完全に縛ることはできないだけに、地域医療への関心を高めるカリキュラムの開発などの真剣な取り組みが伴わなければ実効性は期待できない。

新医師確保総合対策案の要旨

 厚生労働省などがまとめた新医師確保総合対策案の要旨は次の通り。

 ▽小児科医・産科医の広く薄い配置を改善し、病院勤務医の勤務環境の改善、医療安全の確保を図る。他診療科などへの病棟の転換整備への支援や小児科・産科医療体制整備事業を推進する。

 ▽地域医療対策協議会を活用し、地域に必要な医師の確保の調整や医師のキャリア形成を行うシステムを構築する。

 ▽厚生労働省に地域医療支援中央会議(仮称)を設置。従来は大学が担っていた医師派遣(紹介)・キャリア形成システムの構築支援を検討する。

 ▽医学部の入学者選抜で地元出身者のための入学枠(地域枠)を拡充する。地域医療に関する教育の充実を図る。

 ▽医師不足が深刻な県の大学医学部で、現行の医師の養成数に上乗せする暫定的な調整を容認する。自治医科大で、現定員(100人)に上乗せする暫定的な調整を容認する。

 ▽出産、育児などに対応した女性医師の多様な就業支援の推進。女性医師バンク(仮称)を創設する。

 ▽助産師や助産所を活用する体制の整備を進める。

 ▽妊産婦らに小児科医が育児指導・相談を行い、産まれてくる子どものかかりつけ医師を確保する事業を支援する。

(2006年8月19日  読売新聞)


産科施設、適齢期女性が多い大都市も不足

2006年08月19日 | 地域周産期医療

産科施設の数を、出産適齢期の女性の人口比で比べてみると、大都市圏の方が地方よりも少なくなってしまうという調査結果の報道です。

最近、地方での『お産難民』が増加し、地方では出産場所を確保するのが非常に大変になってきたという報道が多いです。しかし、実は、大都市圏でも、出産適齢期の女性の人口比でみれば、むしろ、地方よりも産科施設の数は不足しているとのことですから、大都市圏であっても産科施設数の不足の状況は相当に深刻になってきているようです。

もしかしたら、地方の『お産難民』の出産場所の受け皿として、大都市圏の病院もあまり当てにはできなくなってきているのかもしれません。

****** 読売新聞、2006年8月18日

産科施設、適齢期女性が多い大都市も不足

 出産適齢期(20~39歳)の女性が出産できる病院・診療所の数(人口1万人当たり)は、埼玉県や東京都など大都市圏ほど少ないことが、日本産婦人科医会の調査で明らかになった。

 これまで地方の産科医不足が叫ばれてきたが、適齢期の女性が多い大都市圏も深刻な状況にあると言えそうだ。

 調査は昨年12月から今年2月にかけて、産婦人科のある全国の医療機関6363施設を対象に実施。5861施設(回答率92・1%)から回答を得た。

 その結果、実際に出産を取り扱っている医療機関は、2905施設(病院が1247施設、診療所1658施設)に限られていた。出産適齢期の女性1万人当たりに換算した全国平均は、1・69施設だった。

 都道府県別に見ると、最も少なかったのは、埼玉県で0・98施設。東京都0・99施設、神奈川県1・14施設、大阪府1・25施設、奈良県1・31施設などと首都圏や近畿圏の都府県が続き、全国平均を大きく下回った。

 一方、最も多かったのは長崎県の3・48施設。これに島根県3・41施設、佐賀県3・24施設、山形県3・21施設と続いた。適齢女性の人口で比べると、地方の方が出産できる医療機関数は多かった。

 さいたま市のある区では、産科施設が最近13年間で3分の1に減った。同医会によると、近年産科施設の閉鎖が目立つ大都市では、医師1人が診察する妊婦の数が増え、多くの医師が過労状態になっているという。

 佐藤仁(まさし)常務理事(医療対策担当)は「大都市圏の方が出産環境は深刻であることがうかがえる。ただ、地方でも、産科のある病院は県庁所在地に集中しており、産科不足は全国的な問題だ」と話している。

(読売新聞、2006年8月18日)

****** 参考:

衆議院厚生労働委員会 奥田美加先生発言

読売新聞: “お産難民”深刻に

神奈川県の産科医不足の状況

迫る!お産難民時代 県内約五千人と推計


お産難民、産科セミオープンシステム

2006年08月18日 | 飯田下伊那地域の産科問題

当医療圏において、昨年まで分娩を取り扱っていた施設は計6施設でしたが、昨年秋から今年の春にかけて、3施設で分娩取り扱いを中止し、今年の4月からは分娩取り扱い施設は計3施設に半減してしまいました。

そこで、今年に入ってから、地域の開業の先生方と中核病院の産科(当科)が連携して地域の分娩を担う、『産科セミオープンシステム』を実施し始めました。当科の分娩件数は、予想通り昨年までの実績の倍以上となっています(分娩件数:月80~100件)が、この『地域連携システム』などがうまく稼動し、今のところ特に大きな問題もなく、平穏無事に日常診療をこなしています。

今のところ、分娩制限は一切実施してません。帰省分娩もすべて受け入れていますし、この地域からはまだ『お産難民』は一人も出してません。当科に要請のあった救急母体搬送は当科で100%受け入れています。

全国的にますます厳しくなりつつある周産期医療の状況をみていると、今後、周産期医療の集約化がすすみ、産科医療圏が現状よりも拡大してゆく可能性があります。地域の協力体制をさらに強化して、今後の状況の変化にうまく対応してゆく必要があると考えています。

産科セミオープンシステム 妊婦健診は地域の開業医、分娩は病院という“分業”でお産を担う。開業医のもとで妊娠の診断が下ると、開業医が分娩の予約を入れる。病院で妊娠がわかった場合は、妊婦の自宅近くの開業医を紹介する。欧米では定着しているが、国内ではまだ約40の地域でしか実施されていない。同様の仕組みにオープンシステムがあり、開業医が拠点病院に行き設備を利用してお産を受け持つ。


辞めないで!女性医師(東京新聞)

2006年08月17日 | 地域周産期医療

コメント:

最近の若い産婦人科医では女性医師の占める割合が圧倒的に多くなってきました。産婦人科医の勤務形態も、男性医師ばかりであった時代とは大きく変えてゆかねばならないのは当然です。

女性医師の場合は、若い一時期に、妊娠・出産・育児と仕事の両立が難しくなる時期があります。フルタイムでの勤務が難しくても、数人の女性医師で互いに都合をつけあってワークシェアしたり、育児を互いに助け合ったりできれば、その時期も、比較的無理なく、乗り越えられるかもしれません。今後、いろいろと女性医師の働き方の工夫をしていく必要があります。

****** 東京新聞、2006年8月13日

辞めないで!女性医師

育児で離職者増える

 20-30代の女性医師が増える一方、出産などで仕事をやめるケースが増えている。泊まり勤務などがある病院の厳しい労働環境では、仕事と育児の両立が困難なためだ。こうした中、医師の働く環境を改善しようという動きが出始めている。 (砂上麻子)

 「不規則な勤務が多く、子育てしながら働くには、周囲の助けがないと無理」。千葉県浦安市内の総合病院に勤務する産婦人科医、坂口洋子さん(32)=仮名=は、五歳と三歳と七カ月の三人の子どもの母親だ。

 平日は午前八時から午後六時の日勤に合わせ、三人を市立保育園に預ける。帰宅が遅くなるときは別の私立保育園に連絡して、三人を預け直す。ほかに月五回の泊まり勤務があり、宿直が明けても帰れずに外来診察などをこなす。そのほか緊急の呼び出しに備え、病院に泊まり込むこともある。宿直時などには、東京都内に住む実母が自宅に来て、子どもたちの面倒を見てもらっている。

 夫は別の病院の医師。保育料だけで月十万円以上かかるが、共働きなので経済的には問題ない。が、体力的に限界に近い。「子どもを持つことで、妊婦の気持ちもよく理解できる。仕事は続けたいが、今の常勤では難しい」。洋子さんはいったん離職する予定だ。

   □□

 厚生労働省によると、女性医師の数は二〇〇四年で約四万四千六百人=グラフ参照。日本産科婦人科学会では、会員一万五千五百二十八人のうち、女性の割合は23・5%と四人に一人。これが三十歳未満で70・4%に跳ね上がる。しかしここ数年、出産後、子育てと両立できず、離職する人が増えているという。

 こうした中、同学会は六月、女性産婦人科医師が働きやすい環境を整備しようと、「女性医師の継続的就労支援のための委員会」を設置した。

 女性医師を把握するデータベースを作成するほか、職場環境の調査を行い、働き方の提言を発表する予定。女性医師就労モデル病院の指定や、仕事を継続している女性医師の紹介なども検討中。

 同会員で、東京都立府中病院の桑江千鶴子産婦人科部長は「新しく産婦人科を目指す人の三分の二は女性。女性医師が現場に残るには、現場が変わらないとダメだ」と危機感を募らせる。

 既に女性医師が働き続けるため、工夫をしている病院もある。

 大阪厚生年金病院(大阪市)は二年前から、フレックス勤務や宿直の免除など柔軟な勤務制度を導入。現在、産婦人科、内科など八人の女性医師が利用し、うち七人は別の病院から移ってきた。

 リハビリテーション科医の前田香さん(35)も別の病院で働いていた一人。三年前、第二子を出産し一年間離職したが「仕事を続けたい」と同病院に就職した。現在、午前十時から午後四時までのフレックス勤務で働く。清野佳紀院長は「女性医師を留めたり確保するには、働きやすい職場づくりが必要」と話す。

   □□

 医師らでつくるNPO法人「女性医師のキャリア形成・維持・向上をめざす会」(瀧野敏子代表)は、「女性医師に優しい病院」を評価する事業計画を進めている。

 病院の育児・介護休暇の取得や代替要員対策、復職支援などを審査、評価する。これまで全国二病院が認定を受けた。

 前出の桑江産婦人科部長は「子育て中の女性医師が宿直を免除されるなどした分、別の医師にしわ寄せがいくのでは問題」と指摘し、こう訴える。「ほかの医師も人間らしい生活をし、同等の責任を持って仕事ができる労働環境を早急につくることが必要です」

(以上、東京新聞、2006年8月13日)

****** 参考:

産科 厳しい現実に尻込み

激務と出産・育児 悩む女性医師

産婦人科医不足をどうする 有効な応急対策ない

女性産科医の仕事を支援(学会が委員会を設置)

産科医不足の背景に女性医師の増加?
「どうする・どうなる日本のお産」シンポ


東北大病院「総合産科医」養成ヘ 緊急時の対応習得 (河北新報)

2006年08月15日 | 地域周産期医療

コメント:

小児科や麻酔科との連携が不十分な産科では、いざという時に適切な緊急対応ができず、リスクが非常に高いことは確かだ。従って、産科、小児科、麻酔科が緊密に連携して周産期診療を行うことが重要で、しかも、それぞれの科の医師が最低でも5~6人づつは常勤している必要がある。一人の医師だけで、24時間365日、周産期医療のすべてに対応するのは絶対に無理である。

「総合周産期実践医(GPP)」養成コースでは、3年間で、産科、小児科、麻酔科の中途半端な知識・技能を身につけさせて、産科医、小児科医、麻酔科医の不足している地域の病院に一人で勤務させようという意図なのであろうか?

一人医長体制の産婦人科や、小児科医・麻酔科医の勤務していない病院の産婦人科からは、派遣している産婦人科医を撤退させて、できるだけ産科施設は集約化していこうという全国的な時代の流れであるというのに、このGPP養成コースは、完全に時代の流れに逆行した試みではないだろうか?

****** 河北新報、2006年8月15日

 全国的に産科医不足が深刻化する中で東北大病院(仙台市青葉区)は、小児科と麻酔科に関する知識や技術も備えた産科医「総合周産期実践医(GPP)」の養成に乗り出す。妊娠から出産、新生児期まで母子の健康をカバー、緊急時にも対応できる専門医として、診療科目の枠を超えた人材の育成を目指す。

 研修医が専門技術を身に付ける後期臨床研修(3年)に、GPPのコースを設ける。本年度中に研修プログラムを作り、2007年度から本格始動させる。

 大学病院だけでなく、仙台市内の協力病院の産科、麻酔科、新生児集中治療室(NICU)で研修。新生児の蘇生(そせい)や麻酔時の全身管理などに幅広く対処できる技術を習得する。

 大規模な病院では「周産期母子センター」を設け、産科医と小児科医、麻酔科医が連携して母親や胎児、新生児の異常に対応する体制を整えているが、東北では仙台赤十字病院など仙台市内に3カ所ある宮城県以外は、各県とも1カ所程度しかないのが実情だ。

 センターを設置している病院でも各診療科の医師は慢性的に不足気味。都市部を除く地方では産科医が1人の病院も多く、異常分娩(ぶんべん)など緊急時の対応が課題となっている。

 東北大医学部の岡村州博教授(周産期医学)は「医師が足りない地方で一刻を争うような事態になったときに応急処置ができ、必要に応じて他の病院へ搬送する判断力を持った医師を育てたい。中堅医師の応募も受け入れたい」と話している。

******* (河北新報) - 8月15日7時2分更新


大野病院医療事故:初公判11月以降に 第2回公判前手続き、争点絞り込めず(毎日新聞)

2006年08月13日 | 報道記事

どの妊婦さんも、癒着胎盤の可能性は否定できません。癒着胎盤があっても分娩前には何の症状もありませんし、癒着胎盤の有無を分娩前に判定することはできません。まして、癒着胎盤の程度や範囲を分娩前に判定することは、現代医学をもってしても、未だ不可能とされています。

癒着胎盤の頻度は、一人の産婦人科医が一生に一回遭遇するかしないかのきわめてまれな頻度(1万分娩に1回)ではありますが、どの産婦人科医もそれが一生のうちのいつなのか?全く予測できません。もしかしたら、それは今日なのかもしれません。

(私個人の場合は、産婦人科に入門した直後に、たまたま、癒着胎盤で大量に出血した症例と遭遇しました。もしかしたら、定年退職までにあと1回くらいは同様の症例に遭遇することもあるかもしれません。)

この癒着胎盤の大出血の修羅場を経験している産婦人科医は少なく、大ベテランの百戦錬磨の産婦人科医でもほとんどの人は未経験と思われます。

全癒着胎盤は全く剥離できませんから、そのまま閉創するなり、子宮全摘をするなり、治療方針を患者や家族とゆっくり相談する余裕もあり、どの施設でも救命は十分に可能だと思います。

部分癒着胎盤では、用手剥離で一部は剥離可能で、用手剥離中にいきなり大出血が始まります。癒着胎盤の大出血は、噴水のように吹き上がる大出血で、短時間の間に、5リットル、10リットルとものすごい勢いで失血します。子宮摘出はきわめて困難です。輸血を際限なくどんどんできる病院で、スタッフ(産婦人科医多数、優秀な麻酔科医など)も大勢いるような病院でないと、誰が執刀していても救命はかなり難しい状況となります。

癒着胎盤の診断は摘出子宮の病理検査によってのみなされ、術前診断は不可能ですから、このような事態を術前に予見することはできないし、県立大野病院の当時の医療供給体制下では、誰が執刀医であったとしても、母体を救命することはきわめて困難であったと考えられます。

癒着胎盤について

癒着胎盤の定義について

癒着胎盤に関する個人的な経験談

****** 毎日新聞、2006年8月12日

大野病院医療事故:初公判11月以降に 第2回公判前手続き、争点絞り込めず /福島

 県立大野病院で帝王切開手術中に女性(当時29歳)が死亡した医療事故で、業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた同病院の産婦人科医、加藤克彦被告(38)の第2回公判前整理手続きが11日、福島地裁であった。今回も争点を絞り込むまでには至らず、初公判は11月以降にずれ込む見通しとなった。
 この日も1回目と同様、裁判官3人、検察官3人、弁護人8人と加藤医師が出席し、約1時間行われた。
 弁護側は手続き後の記者会見で、胎盤の癒着の範囲について、「癒着は子宮の後壁部分だけで、胎盤をはがそうとした判断に誤りはない」と話した。これに対し検察側は「(胎盤の癒着は)弁護側が主張する範囲にとどまらない」との見解を示しており、公判では一つの争点となりそうだ。
 また、弁護側は、保存されている子宮の細胞片をカメラで撮影し専門家に鑑定してもらう方針を示すとともに、検察側に対し関係する医師や看護師の供述調書の開示を求めたことも明らかにした。次回は9月15日に行われる。【松本惇】

(毎日新聞、2006年8月12日)

****** 朝日新聞、2006年08月12日

争点整理、進まず

 大熊町の県立大野病院で帝王切開の手術中に女性(当時29)が死亡した事件で、業務上過失致死と医師法違反の罪で起訴された同病院の産婦人科医加藤克彦被告(38)の裁判で、2回目の公判前整理手続きが11日、福島地裁(大澤廣裁判長)であった。検察側と弁護側で争点整理が進まず、当初10月中と見込まれた公判の開始が11月以降にずれ込む見通しとなった。

 弁護側によると、今回は看護師ら病院関係者の供述調書の開示を求めたほか、検察側に押収された女性の子宮の標本をもとにして、弁護側が、胎盤が子宮に癒着する「癒着胎盤」の程度や癒着範囲を調べることも決まったという。

 加藤被告の供述や病理解剖の結果から、弁護側は、「(女性の)子宮の後壁では胎盤が癒着していたが、そこ以外は無理にはがすような部分はなかった」とみている。一方、検察側は「(癒着の程度や範囲は)弁護側が主張する範囲にとどまらない」と主張している。

 弁護側は癒着の程度や場所を具体的に明らかにするよう求めたが、検察側は明確に回答しなかったという。検察側は「癒着胎盤の程度の概念論争をするつもりはない」としている。両者の議論がかみ合わず、争点整理が進まなかったため、公判開始が遅れる見通しとなった。

(朝日新聞、2006年8月12日)

****** 参考

県立大野病院事件、第1回公判前整理手続き、福島地裁 

公判概略について


中国地方の産科医不足の状況

2006年08月10日 | 地域周産期医療

****** コメント

記事を読むと、井原市民病院の昨年度の年間分娩件数が55件しかなかったということですから、分娩が週に1件あるかないかという状況ということになります。週に1件の分娩のために、助産師や産科医を24時間365日病院に配置するというのでは余りに無駄が多すぎます。24時間体制で緊急事態に対応できるような勤務体制を組んでも、緊急事態は1年に1回もないかもしれません。だからといって、人員を大幅に削減すれば、いざという時の緊急事態に全く対応できません。ですから、広域医療圏の中で少ない産科医を適正に配置するという観点で考えれば、この病院の産科への医師派遣は中止せざるを得ないという大学側の事情は十分に理解できます。

****** 中国新聞、2006年8月10日l

9市で病院出産できず 中国地方

Tn20060810001701 井原でも21日から休止

 産婦人科の医師が不足している影響で、中国地方の九つの市でお産を扱う病院がなくなる事態が起きていることがわかった。九日は井原市内で唯一、お産ができた井原市民病院が二十一日から分娩(ぶんべん)を休止することが明らかになり、出産できない市は中国地方五十四市の二割に迫っている。これまで中山間地や離島で目立っていた医師不足は都市部にも広がり、一層深刻になっている。(小畑浩、宮崎智三)

 井原市民病院によると、産婦人科医である副院長が自己都合で退職。後任医師のめどが立たず、当面は「婦人科」に縮小する。産婦人科は現在、院長と副院長の二人体制。出産予定の人には福山市神辺町や笠岡市の病院を紹介している。

 井原市の昨年度の出生届は二百九十三人。県境を挟んで接する福山市などで出産する市民が多いものの、市民病院では昨年度、五十五人が出産している。病院側は「市民に迷惑を掛け申し訳ない。岡山大に後任の派遣を要請し早急に分娩再開できるよう努力したい」と話している。

 中国五県の担当課によると、市内で分娩ができる病院がない市は岡山県が最も多く、井原市のほかに浅口、瀬戸内、備前、美作の四市。広島県内では十五市のうち、従来は江田島市だけだったが、二〇〇五年四月から庄原市、同年七月からは大竹市が加わった。山口県では美祢市で数年前から同様の状態で、それぞれ近隣の市に行かざるを得ない状況に追い込まれている。

 中国地方では島根県の隠岐諸島で今年四月から病院での出産ができなくなり、妊婦は家族と離れて本土でお産せざるを得ない事態も起きている。

 一人勤務を 避ける流れ

 【解説】 人口数万人規模の都市でもお産を扱わない病院が増えてきた背景には、産婦人科医の減少に加え、小さな病院に一人で勤める医師に負担をかけるより大きな病院に医師を集めた方が安全だとの考えが医療サイドで高まっている事情がある。

 二十四時間態勢のハードな勤務を敬遠する若手医師の増加などで、中国地方では五年以上前から減少傾向が続いている。井原市民病院に医師を派遣してきた岡山大の医局も例外ではなく、今回の分娩休止にも「医師の絶対数が足りず、後任を出せない」と強調。一方で「一人だけでの勤務を減らすという国の方針もある」とも打ち明ける。

 厚生労働省は、お産を扱う病院の集約化を各県に打診している。二〇〇四年十二月に福島県の公立病院で帝王切開中の女性が死亡し、一人勤務の医師が逮捕、起訴された事件以来、「一人では安全面のリスクが高い」との考えが高まっている。

 ただ、緊急のときのためにも自宅近くにお産ができる病院がほしいという「もう一つの安全」を願う声を無視したのではバランスを欠く。

 大学の医局任せでは解決は難しい。事態を改善するには、大都市の病院の一部で産婦人科を休止して小都市に医師を回したり、若手の産婦人科医の半数を占める女性が勤め続けやすい環境を整えるなど、踏み込んだ対策を国や自治体が中心になって打ち出す必要がある。(馬場洋太)

参考:消える産婦人科、増える「出産難民」


総数増加も地域・科で格差拡大(毎日新聞)

2006年08月10日 | 地域医療

我が国においては、従来、大学の医局が地域に医師を適正に配置する調整機関の役割を果たしてきた。ところが、新研修制度により、新人医師が自由に勤務先病院を選択できるようになって、新人医師が以前ほどには大学の医局に所属しようとはしなくなってきた。そのため、大学の医局も人のやりくりが大変な状況になってきて、地域に医師を適正に配置する調整機関の役割まで果たすことがだんだん困難な状況となってきているようだ。

従来、地方の公立・公的病院の医師人事はすべて大学の医局任せのことが多かった。新研修制度により、大学病院自体が人手不足に陥り、大学病院の診療体制を維持するために、地方の病院に派遣していた医師を大学に引き揚げ始めているために、地方の病院が一斉に医師不足に陥って、多くの病院で診療体制の維持が困難な状況となりつつある。

このように、この新研修制度は地域医療を崩壊させた元凶!と非常に評判が悪く、事実そうなのかもしれないが、見方によっては、この新制度によって、地域医療を発展させていくための絶好のチャンスが生まれたと言えなくもない。この新しい制度をうまく活用すれば、地域の病院でも、医師の教育・養成に十分貢献できるようになったので、地方の大学病院のない地域であっても、医学生、研修医、若い医師達が以前よりも大勢集まるようになった所もある。

今後の我々の目指すべき方向性としては、広域医療圏内の公立・公的病院を統合・再編成して、地域の基幹病院が、単に医療機関としてだけではなく、(大学病院と緊密に連携して)医師を養成する教育機関としての役割も十分に果たすことができるように、マンパワー・病院の機能を充実させてゆかねばならないと考えている。(問題が大きすぎて、一勤務医の個人的努力だけでは、どうにもならないことばかりであるが...)

****** 毎日新聞、2006年8月9日

<医師不足>総数増加も地域・科で格差拡大

 たった1人の常勤医が当直勤務を毎晩こなす総合病院、出産の受け付けを中止した産婦人科――医師不足が深刻だ。とりわけ不足しているのは、勤務の厳しい診療科や地方の病院。一方で、医師総数は毎年3500人以上も増えている。医師たちは一体どこにいるのか。厚生労働省の検討会は「地域間(診療科間)格差の解消が急務」とする報告書をまとめた。医師不足の現場を訪ね、実態を追った。

 ◇たった1人で毎晩当直…地域医療の現場

 「患者一人一人に時間をかけられず、十分な診療ができないのが一番つらい」。岩手県西和賀町(旧沢内村)の町立沢内病院は今、たった1人の常勤医、藤井大和さん(29)が支える。旧沢内村は1961年4月、全国に先駆け60歳以上の老人医療費を無料にした。昨年の合併で無料制度は終わったが、同病院は村の掲げた「生命尊重行政」の象徴だった。
 藤井さんは今春、外科医として着任した。しかし、現在は内科も担当。病院長職務代理、特別養護老人ホーム嘱託医、5小中学校の学校医といくつもの重責を担う。
 内科担当だった院長(40)が6月末で退職。夜間外来と救急医療をやめ、新たな入院は原則として断っている。一日平均約110人いた外来患者は、減少を続ける。
 非常勤医1人が週3日来るほか、他自治体からの応援も受けるが、藤井さんの当直勤務は1日交代から連夜になった。
 藤井さんは地域医療を志し、沢内病院での勤務を志願した。まだ医師5年目。「高血圧や糖尿病の診察ができる内科医はもちろん、自分を指導してくれる医師が必要です」と漏らす。
 医師不足は都市部でも起きている。
 東京都板橋区の都立豊島病院。JR池袋駅からバスで約20分の好立地であり、NICU(新生児集中治療室)を持つなど産婦人科としては最先端の医療を実施できると評判だった。
 しかし、同病院は7月、出産や産婦人科手術の新規受け付けを休止した。ホームページ(HP)には「安全性の観点から、分娩(ぶんべん)・手術の受け入れを制限させていただいております」と記されている。
 同病院によると、常勤医1人が6月末で退職し、現在は常勤医2人、非常勤医3人。24時間態勢の勤務をこなせる人数ではなくなった。
 産婦人科の医師不足は全国的に慢性化している。最先端の施設があっても、医師がいなくては使いこなせない。豊島病院は医師を懸命に探している。【石川宏、大場あい】

 ◇「幸せな職場」求める若手…臨床研修の現実

 医師不足の原因の一つとされるのが、04年に始まった臨床研修制度だ。医師免許を取った若手医師はそれまで、すぐに専門診療科を決め、卒業した大学の医局に入るのが一般的だった。一方、新制度では、2年かけて複数の診療科を経験する。
 幅広い診察ができる医師の養成が狙いだが、若手医師を管理する医局制度が崩れ出した。中国地方の公立病院で研修中の20代の男性医師は「昔は医局に進路を決められていたが、今は自分で選べる。そのチャンスに挑戦したい」。東北地方の大学を卒業した女性医師は都内の病院で研修中。「首都圏はプライベート面でも魅力的。仕事以外の楽しみがあるのはうれしい」と屈託がない。
 「診療科によって勤務の厳しさに違いがあることを知り、楽な診療科へ流れる医師が増えた」とベテラン産婦人科医は嘆く。「新人が来ない」と言われるのが小児科や産婦人科だ。「楽で人気」とされるのは、勤務時間が規則的な眼科や皮膚科。こうした「若者気質」は、人気とされる科の中でも医師の偏在を生んでいる。
 樋田哲夫・日本眼科学会理事は「コンタクトレンズ外来など、楽に収入が得られる仕事を求め、すぐに開業したがる若者が多い。その分、当直や手術で忙しい大学病院は人手不足の状態だ」と話す。樋田さんによると、都心の病院の眼科に10人以上の新人が集まる一方、地方の大学病院に1人も来ない「診療科内格差」が起きている。
 日本皮膚科学会の塩原哲夫理事は「臨床研修は『青い鳥』を追う若者をつくってしまった。皮膚科でも当直はある。命にかかわる病気もある。そうした現実から逃げ、『もっと幸せな職場』を探す若者が目立つ」と嘆く。【永山悦子】

 ◇総数は増えているのに・・・

 厚労省の調査によると、毎年約8000人の医師が新たに生まれ、退職者などを引いても、年3500~4000人増えている。それでも「医師不足」は起きる。
 同省の「医師の需給に関する検討会」は7月末、報告書を発表した。医師偏在の原因として、臨床研修のほか▽(規模の大きい)病院への患者集中▽若手勤務医の開業志向▽医療事故への訴訟の増加――などを挙げた。対策としては▽地方勤務の魅力を増やす▽医学部定員の調整▽女性医師支援――などを示した。
 偏在解消に取り組み始めた例もある。地方大学の医学部では「地域枠」の創設が相次いでいる。鹿児島大は今年度、医学部の入学定員枠に県内の離島やへき地での勤務を志す「地域枠」2人分を新設。県と市町村は1人あたり6年間で計940万円の奨学金制度を創設した。
 また、国立病院機構は、機構内での医師の配置換えに追われる。診療報酬改定に伴い、医師が医療法で定める標準数の7割以下しかいない病院の診療報酬が今秋、減額されるためだ。矢崎義雄理事長は「医師が足りない東北の病院へ九州から異動してもらう例も出そうだ」と話す。
 西村周三・京都大大学院教授(医療経済学)は「医師偏在は、医学界だけで解決できる問題ではない。経済的な視点も加え、報酬を労働の対価としてきちんと位置付ける必要がある。診療科ごとの必要な医師数を分析し、不足する科の教育を充実させるなど、長期的な配置計画も求められる」と話す。【玉木達也】

(毎日新聞、2006年、 8月9日)

****** 参考:

医師不足、新研修制度のせいではない(読売新聞)

今後の地域医療の目指すべき方向性は?


今後の地域医療の目指すべき方向性は?

2006年08月05日 | 地域医療

広域医療圏内の自治体立、日赤などの公立・公的病院を統合して、地域の基幹病院を、医療機関としてだけではなく、医師を養成する教育機関としての役割も十分に果たすことができるように、マンパワー・病院の機能を充実させてゆくことが今後の目指すべき方向性だと考える。

新研修制度は地域医療を崩壊させた元凶!と非常に評判が悪いが、見方によっては、この新制度によって、地域医療を発展させていくための絶好のチャンスが生まれたと言えなくもない。この新しい制度をうまく活用すれば、地域の病院でも、医師の教育・養成に十分貢献できるようになったので、地方の大学病院のない地域にも、医学生、研修医、若い医師達が大勢集まるようになってきた。

当院でも、大勢の医学部5~6年生が、毎日、各診療科で臨床実習を行っているし、十数名の研修医が各診療科をローテートして初期研修を行っている。

当科でも、医学部5~6年生が2名づつ泊り込みで臨床実習を行っている。来年度からは、医学部の6年生が1ヶ月間病院に泊り込んで、一つの科の実習を行うようなカリキュラムになると聞いている。また、新研修制度によって、研修医達が全員6週間づつ産婦人科研修を行っている。

新研修制度が始まってから、非常に多くの若者達が、我々の診療チームに研修・実習目的で参加してくれるようになった。この新しい流れが、今後、地域医療のマンパワーを充実・発展させてゆく大きな原動力となってくれると期待している。


助産師不足? 適正配置に課題

2006年08月04日 | 飯田下伊那地域の産科問題

最近は病院の産科部門閉鎖が相次ぎ、全国的に問題となっていますが、病院の産科部門閉鎖に伴い産科医が去ったあと病院にとり残された助産師達が、一般看護師として働くケースが増えているのは非常に問題だと思います。

助産師資格を生かせなくなった有資格者がどんどん増えている一方で、産科業務を継続している病院には地域の妊産婦が集中して分娩件数が増えているにもかかわらず、なかなか助産師を集められず、助産師不足で窮地に陥っている病院が増えているという非常に矛盾した現状があります。

経験豊富なベテラン助産師は地域の宝です。その貴重な地域の宝を他業務に就かせて死蔵させておくのは非常にもったいない話です。

助産師を地域内で適正に配置することが非常に大切だと思います。

例えば、当科の場合は、まず妊婦検診の最初の窓口が助産師外来となっていて、諸計測、問診、NST、内診、バースプランなど、一人30分くらいかけて丁寧に対応し、最後に医師が腹部エコー検査して終わりという検診の流れになっています。正常経過の場合は、医師の診察はほんの付け足しという感じですが、一応、助産師と医師とでダブルチェックを行っています。

また、通常の分娩管理は、特に異常がない限り、入院受け入れから分娩修了まで、担当助産師がつききりで管理し、医師は全く手出し口出ししてません。しかし、特に何の異常がなくても、児娩出の直前に呼ばれて、全例で医師が分娩に立ち会っています。

分娩の途中からでも、何か異常が発生した瞬間から、産科医主導の分娩管理に移行します。異常はいつ起こるか全く予測できませんので、分娩当番の医師は交代制で、24時間いつでも異常に即応できるようにスタンバイしてます。必要があれば、新生児科医がいつでも分娩室にかけつけて来てくれますし、母体の急変時には麻酔科医や循環器科医などがいつでも迅速に対応してくれます。

このように、助産師、産科医、新生児科医、麻酔科医などが周産期医療チームを構成し、チームで一体となって取り組んでいますが、実際には、ほとんどの妊婦は正常分娩ですから、外来でも分娩室でも、助産師の果たす役割は非常に大きいです。

地域全体の周産期医療が存亡の危機にある今、1市、1町、1病院の利害にこだわっている場合ではありません。地域の分娩が集中して分娩数がどんどん増えている病院に、産科医を集約するだけではなく、地域の助産師も同時に集約する必要があります。


県立志摩病院:産婦人科の存続求めて要望書(毎日新聞)

2006年08月02日 | 地域周産期医療

****** コメント

広域医療圏にまだ6名の産婦人科医が残っているのであれば、その6名を1つの病院に集約するのは得策だと思われます。この6名を2つの病院に分配したままで放置すれば、早晩、2つの病院が共倒れになってしまい、この医療圏内では分娩できる病院が1つもなくなってしまうかもしれません。ですから、産婦人科医の集約化を早急に実行に移す必要があります。産婦人科医が集約化されて分娩数が従来の2倍になれば、助産師数も当然のことながら従来の2倍必要となります。産婦人科医だけでなく、助産師も同じ病院に集約化することが非常に重要だと思います。

****** 毎日新聞、2006年7月29日

県立志摩病院:産婦人科の存続求めて要望書 /三重

 産婦人科医不足に伴い、県立志摩病院(志摩市阿児町鵜方)の産婦人科が廃止される可能性が高まっている問題で、志摩市の竹内千尋市長と高岡英史議長が28日、同病院を経営する県病院事業庁や、医師を派遣している三重大医学部などに対し、産婦人科の存続を求める要望書を提出した。

 三重大学医学部は、伊勢志摩地区に派遣している産婦人科医6人を山田赤十字病院(伊勢市)に集約する方針を打ち出し、11月以降、志摩病院の産婦人科医が廃止される可能性が高まっている。

 病院事業庁を訪れた竹内市長らは「山田赤十字病院までは、志摩市の最も遠い所から1時間半もかかり、安心して子どもを産めなくなる」などと存続を求める要望書を提出。これに対し、浦中素史庁長は「全国的な産婦人科医不足の流れの中で、非常に厳しい状況だが、存続のため努力していく」と答えた。

 竹内市長らはこの後、県健康福祉部や県議会、三重大医学部にも同様の要望書を提出した。【田中功一】

(毎日新聞、2006年7月29日)