human immunodeficiency virus
・ ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は、一本鎖RNAよりなるウイルス核酸をもつレトロウイルスである。以下の2つが存在する。
HIV-1(Human Immunodeficiency Virus type1)
HIV-2(Human Immunodeficiency Virus type2)
・ HIVは、人の免疫細胞に感染して免疫細胞を破壊し、最終的に後天性免疫不全症候群(AIDS)を発症させるウイルスである。
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後天性免疫不全症候群(AIDS)
acquired immunodeficiency syndrome
・ 後天性免疫不全症候群(AIDS)は、HIVがCD4陽性T細胞に感染し、CD4陽性T細胞が破壊されて後天的に免疫不全に陥った状態である。
・ HIV感染が成立しAIDS発症前の状態はHIV感染症と呼ばれ、AIDSとは区別されている。
・ 現在のところHIV感染が成立したあとに完全に体内よりウイルスを除去する方法はなく、薬物によりウイルスの複製を抑制することによりAIDSの発症を可能な限り遅らせることが治療の主眼である。
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CD4陽性T細胞(リンパ球)
・ CD4陽性T細胞は、細胞表面にCD4抗原を発現しているT細胞の亜集団である。
・ CD4陽性T細胞は、他のT細胞の機能発現を誘導したりB細胞の分化成熟、抗体産生を誘導したりするヘルパーT細胞として機能する。
・ CD4陽性T細胞は、HIV(AIDSの原因ウイルス)やHTLV-1(ATLの原因ウイルス)が感染する細胞である。
****** HIV(エイズ)検査完全ガイドより引用
HIV増殖の過程
【1】HIVがCD4レセプターに取り付く
【2】HIVのDNAと逆転写酵素を放出
【3】逆転写酵素の働きによってHIVのRNAからDNAが作られる
【4】CD4陽性T細胞の核内へ入る
【5】HIVの部品を作りはじめる
【6】HIVの部品を組み立てる、新しいHIVが次々とコピーされる
【7】新しいHIVは、CD4陽性T細胞をから外に飛び出し、次の感染先を見つける。
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妊産婦の取り扱い
・ HIVは3つのルート(経胎盤感染、産道感染、母乳感染)で母子感染する。
・ HIVの母子感染は母体血漿中のHIV RNA量に相関しているため、妊婦に関してはCD4陽性リンパ球数にかかわらず治療を開始する。
・ 薬剤として妊婦には禁忌とされているものがあり、その選択には留意する。
・ 分娩は選択的帝王切開で行われるべきであり、出産後の授乳は禁止する。
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産婦人科診療ガイドライン・産科編2011
CQ610 HIV感染の診断と感染妊婦取り扱いは?
Answer
1. 妊娠初期にHIV検査を行う。(B)
2. スクリーニング検査陽性の場合、以下を行う。(A)
・ 「偽陽性が多いので、本検査陽性であっても95%の妊婦は感染していない」と説明する。
・ 確認検査は、ウェスタンブロット法とPCR法の両者を同時に実施する。
3. HIV感染の疑いがある場合は、各地域のHIV-AIDS拠点病院に相談する。(C)
4. HIV感染妊婦には母子感染予防を目的に、①妊娠中の抗HIV薬投与、②選択的帝王切開術、③人工栄養、④新生児に抗HIV薬予防投与のすべてを行う。(B)