コメント(私見):
今回の新型インフルエンザA(H1N1)は弱毒性であり、症状は通常の季節性インフルエンザに似ており、自然治癒するケースがほとんどで、重症化する例はそれほど多くはないことが分かってきました。
今回の新型インフルエンザも、過去の全ての新型インフルエンザの場合と同様に、数年以内にほとんど全ての国民が感染し、その後は通常の季節性インフルエンザの一つとして定着し、十年~数十年間は流行を繰り返すと見込まれます(日本感染症学会緊急提言)。
強毒性新型インフルエンザの流行であれば、国内で最悪64万人の死者が出る可能性があり、その健康被害は非常に甚大となることが予想されるため、国を挙げて厳戒態勢で臨む必要があります。人類とウイルスとの戦いは、人類が存続する限り、これからも果てしなく続きます。犠牲者は必ず出ます。我々は、正確な情報を集めて、万全の準備を整え、健康被害を最小限に食い止めるように落ち着いて行動するしかありません。
今回の国を挙げての大掛かりな水際対策に対しては、厚生労働省・現役検疫官などの専門家からもその効果を疑問視する声が上がっています。
<厚生労働省現役検疫官・木村盛世さん>
「あなたのおうちにゴキブリが1匹発生しました。地方自治体全体があなたの家に行ってゴキブリ発見のために戦うというくらい無駄な検査」
<東京大学医科学研究所・上昌広准教授>
「オバマ大統領が最初に言った言葉は『すでに馬は逃げ出しているのにそれから柵をしても意味が無い』。実態はどんどん入ってきている。国民に大きな誤解を与えてしまった」
新型インフルエンザ: 対処方針改定 事実上「新行動計画」
新型インフルエンザは、いずれ数年後に季節性インフルエンザとなって誰でも罹患しうる病気です (日本感染症学会・緊急提言より)
新型インフル:「水際対策だけで食い止め不可能」WHO
新型インフルエンザで今行われている封じ込め対策は有効なのか?
****** 東京新聞、2009年5月30日
新型インフル 国内発生前、82人に症状 本紙調査 検疫すり抜け感染
今月十六日に初めて新型インフルエンザの国内発生が確認されたが、その前日までに計八十二人が新型ウイルスによる発熱などの症状を訴えていたことが二十九日、東京新聞の調べで分かった。政府は水際対策に注力していたが、検疫をすり抜け、感染が拡大していたことになる。
本紙は二十九日までに厚生労働省に報告された約三百六十人の感染者について、発熱やせきなどの症状が出た日を独自に分析。その結果、九日に兵庫県西宮市や宝塚市などの高校生五人が症状を訴え始め、十日は神戸市など七人、十三日には大阪市や大阪府吹田市など十二人の高校生らに拡大。十五日は三十二人に急増して合計八十二人に。十六日に神戸市で第一例が確認された時点では、発症者は百四人に達していた。
政府はメキシコや米国などで感染拡大していたことを受け、四月二十五日から成田、関西、中部の三空港に大規模な検疫チームを配置。カナダを含む三カ国からの到着便について徹底的な検疫を実施してきた。
九日にはカナダから米国経由で帰国した大阪府の男子高校生ら三人が機内検疫などで感染が確認された。
検疫については、潜伏期で症状の出ていない場合にはほとんど効果がないといった限界が当初から指摘されていた。二十八日の参院予算委員会では、参考人として呼ばれた厚労省の現役医系技官の木村もりよ氏が検疫偏重により、国内対策がおろそかになる問題を批判。まさにその指摘通りの事態が進行していたことになる。
(東京新聞、2009年5月30日)
****** 毎日新聞、2009年5月29日
新型インフル:上陸早かった?
関西で4月下旬発生か
国立感染症研究所(感染研)は29日、関西で最初に新型インフルエンザの感染が確認された5月16日より2週間以上前の4月28日ごろ、すでに神戸市、大阪府内で患者が発生していた可能性があるとの見方を示した。また、ウイルスの遺伝子情報を解読する製品評価技術基盤機構と感染研は29日、兵庫県と大阪府で採取した新型の遺伝子を解析した結果、メキシコや米南部での最初の流行と、4月下旬の米東部とカナダでの流行の間に変異して発生したウイルスであることが判明したと発表した。
感染研は、今年1月から新型の発生を監視するため、全国の薬局のインフルエンザ治療薬の処方状況を例年と比較している。
感染研感染症情報センターの大日(おおくさ)康史主任研究官によると、例年はシーズン前半に新型と同じA型インフルエンザが流行し、後半から春先までB型インフルエンザが流行する傾向がある。しかし今年は、神戸市と大阪市周辺地域で4月中旬から下旬にB型の流行が終息。その後の4月28日、神戸市中央区の薬局で治療薬(タミフル、リレンザ)の処方が例年を上回って急増し、流行レベルに達した。大阪府内でも5月1日に池田、枚方市、13日に池田市で同様の状態になった。
同様の現象は茨木市内の高校に通う生徒の感染が確認された翌日の18日に池田、枚方、茨木の3市で起きたほか、京都市右京区に住む専門学校生が発症した20日とその前日にも同区で見られた。このため、感染研は4月末から5月初めの流行も新型だった可能性があるとみている。
一方、同機構によると、韓国で4月末に確認されたメキシコからの帰国患者から採取された遺伝子と似ており、同機構は「メキシコから直接流入した可能性もある」とみている。
大日主任研究官は「大阪、神戸の処方せん数の急増は季節性とは違うという印象だ。流行初期にすでに国内に何らかの形で新型ウイルスが入っていた可能性はある」と話す。【関東晋慈、山田大輔】
◇新型インフルエンザ関連の主なできごと
4月下旬 メキシコや米国で新型インフルエンザ患者や死者が明らかに
28日 WHOが警戒レベルをフェーズ4に引き上げ(日本時間)。日本政府が新型発生を宣言
同日 薬局サーベイランスシステムが神戸市中央区でインフルエンザの流行を検知
5月1日 同システムが大阪市周辺でも流行を検知
9日 成田の検疫でカナダから帰国した大阪府の高校生らの感染確認
16日 海外渡航歴のない神戸市の高校生の感染確認
初の国内感染
17日 渡航歴のない大阪府の高校生らの感染確認
(毎日新聞、2009年5月29日)
****** m3.com医療維新、2009年5月29日
新型インフルエンザ
「国内初の2次感染」確定の1週間前から流行開始
神戸の積極的疫学調査の中間報告:
5月29日感染研会見
橋本佳子(m3.com編集長)
国立感染症研究所感染症情報センター長の岡部信彦氏が5月29日の会見(メディア情報交換会)で、神戸市を中心に実施した積極的疫学調査の中間報告をした。
神戸で渡航歴などがない「国内初の2次感染」の患者が確定されたのは5月16日だが、発症日で見ると、兵庫県内で5月9日、神戸市では同10日から新型インフルエンザが発生していたことが分かった。その後、14日から患者が急増し、16日がピークだった。16日は土曜日であり、18日の月曜日から兵庫県下では小・中・高等学校で学校閉鎖が行われた。「学校閉鎖以降、患者数は減っている。地域での流行を抑えるには、一定の効果があったのではないか」(岡部氏)。
インフルエンザ患者全体に占める新型インフルエンザの割合は、5月15日から23日までの間で見ると、15歳から17歳までの世代では約60%と高かったが、他の世代では10%以下にとどまった。
もっとも、神戸市での最初の感染者はまだ同定できず、神戸市、さらには兵庫県内でどんな形で感染が広がったのかは調査・分析を継続中だという。また大阪での感染との関係も現時点では分からないという。
また患者と2m以内で会話するなどの濃厚接触者は、5月16日から5月19日までで2728人(うち患者は65人)だった。すべてに予防投薬などが検討されたものの、実際に予防投薬を実施したのは患者の家族のみだった。
潜伏期間は1-4日、中央値は2日
臨床面を見ると、感染源および最終接触日が特定できる患者を基に潜伏期間を推定したところ、1-4日(中央値2日)という暫定値となった。ただし、今回の調査では、5日以上の潜伏期間については2次感染との区別が付かず、把握はできなかった。
迅速診断キットが陽性だったのは、PCR陽性の22人(対象者は不明)では7人にすぎない。陽性率は発症から検査までに期間によって大きく異なり、発症当日0%(キット陽性は3人中0人)、1日38%(13人中5人)、2日67%(3人中2人)、4日0%(2人中0人)、5日0%(1人中0人)。
入院患者は計49人。新型インフルエンザの場合、重症度にかかわらず感染拡大防止の観点から措置入院とされたが、入院時の臨床上は38℃以上の高熱が約90%、60-80%に倦怠感・熱感・咳・咽頭痛、約半数に鼻汁・鼻閉・頭痛、約10%に嘔吐・下痢、7%に結膜炎がそれぞれ見られた。
入院患者の血液生化学検査の結果は、
白血球数(3200-11400/μL、中央値5100/μL)、
CRP(0-9.2mg/dL、中央値1.2 mg/dL)、
GOT(12-64 IU/dL、中央値17 IU/dL)、
GPT(7-168 IU/dL、中央値11.5 IU/dL)、
BUN(6-15mg/dL、中央値10mg/dL)、
クレアチニン(0.53-0.98mg/dL、0.76mg/dL)
で、いずれもほぼ基準値の範囲内。「CRPが基準値よりもやや高めだが、意味のある数値ではない。検査値から特別言えることはない」(岡部氏)。
(m3.com医療維新、2009年5月29日)
****** 毎日新聞、2009年5月29日
新型インフルエンザ:厚労省職員が機内検疫批判--参院予算委
28日の参院予算委員会に参考人として出席した厚生労働省職員が、新型インフルエンザ対策で行われた旅客機の機内検疫を「パフォーマンス」と批判する一幕があった。
「厚生労働省崩壊」という著書がある羽田空港検疫官の木村もりよ氏で、民主党の鈴木寛氏の要請で出席した。木村氏は「マスク、ガウンをつけて検疫官が飛び回る姿は国民にパフォーマンス的な共感を呼ぶ。利用されたのではないかと疑っている」と述べた。機内検疫は22日に終了した。
厚労省の塚原太郎大臣官房参事官は28日の会見で「機内検疫を始めた4月下旬時点でウイルスの病毒性は不明で、メキシコでも相当数の患者が亡くなっていた。検疫の実施は適切だった」と反論した。【田中成之】
(毎日新聞、2009年5月29日)
****** 読売新聞、2009年5月28日
神戸の新型インフル、初確認の高校生より2日早く2人発症
神戸市は28日、市が検査した102人の新型インフルエンザ患者のうち、最初に感染が確認された県立神戸高校の男子高校生が発症したとみられる11日より2日前の9日に、2人が発熱などを訴えていたことを明らかにした。
男子高校生は11日に悪寒を訴えていた。この高校生より早い発症を確認したのは初めてで、市は今後、感染ルートの究明につなげたいとしている。
(読売新聞、2009年5月28日)
****** 毎日放送、2009年5月28日
「水際対策の効果はあったか!?」
神戸で初めて新型インフルエンザへの感染が確認されて以来、国内の感染者数は365人(5月28日現在)にのぼり、いまだ感染ルートもわかっていません。
果たして国をあげての大掛かりな水際対策は何だったのか。
その効果を問い直す声が出始めています。
<厚生労働省現役検疫官・木村盛世さん>
「十分な情報の見直しが行われないまま、検疫偏重が行われたのではないか」
28日、行われた参議院予算委員会で新型インフルエンザに対する日本の検疫体制を痛烈に批判する女性。
厚生労働省の現役検疫官です。
木村さんは今回の感染が問題となる直前の今年3月、「厚生労働省崩壊」という本の中で、すでに検疫の無意味さを批判していました。
<厚生労働省現役検疫官・木村盛世さん>
「あなたのおうちにゴキブリが1匹発生しました。地方自治体全体があなたの家に行ってゴキブリ発見のために戦うというくらい無駄な検査」
先月28日、国はメキシコ、アメリカ、カナダ便の機内検疫を始め、水際対策の強化を打ち出しました。
<舛添要一厚労相>
「ウイルスの国内侵入を阻止するため、水際作戦の徹底をはかる」
そして今月8日、成田空港で感染が確認されます。
<舛添要一厚労相>
「やはり水際で止めたことは確か」
しかし、そのおよそ1週間後。
ついに国内初の感染者が見つかりました。
<神戸市の会見、5月16日午前1時>
「患者は神戸市在住の10代後半の男性」
続いて大阪でも…
<関西大倉高校の校長会見、5月16日>
「生徒の命に対する責任を痛感しております」
水際対策の一方で、国内では渡航歴のない高校生の間で感染が広がっていたのです。
<舛添要一厚労相>
「ある意味、水際対策は時間かせぎ」
果たして水際対策は有効だったのでしょうか?
<水際対策への疑問(1)サーモグラフィー>
北米からのすべての便は検疫官が機内に入り、乗客の体温をチェック、熱のある患者にはインフルエンザの簡易検査を行ってきました。
<乗客>
「赤外線をおでこにやって大丈夫です、みたいな」
「体調に対するアンケート」
国は空港内の検疫所にもサーモグラフィーを設置して、すべての乗客の体温をチェックしていましたが、ニューズウイークはこれを厳しく批判します。
<ニューズウイークの記事より>
「サーモグラフィーに頼るな。インフルエンザはまったく熱がない状態から感染力をもつのだから」
WHOも出入国時の検疫は、「感染拡大を防ぐ効果はない」としています。
ウイルスが入ってから症状が出るまでの潜伏期間が、最長で1週間もあるといわれているのです。
<厚生労働省現役検疫官・木村盛世さん>
「潜伏期間に空港の検疫を通ってしまったら、症状が無いから一般人と同じ、絶対にわからない」
<水際対策への疑問(2)簡易検査>
機内検疫に使われたのは、ウイルス感染を短時間で判断する簡易キットです。
<中村積方医師>
「鼻腔から採取します」
患者の鼻などから採取した検体をキットに入れて、A型ウイルスに感染していれば「A」のところにマーカーが出るのですが、この検査には限界があります。
<中村積方医師>
「症状が出てきても、熱が出て数時間では陽性になることは少ない。時間がたってこないとウイルス量が増えない」
実際、東京で初めて確認された2人の女子高校生は、機内の簡易検査では陰性。
また、神戸市の調査結果では、初期に感染が確認された43人のうち、簡易検査で陽性反応が出たのは23例。
半分近くが検査をすり抜けていました。
<厚生労働省現役検疫官・木村盛世さん>
「行動計画を作ったのは霞が関にいる医系技官といって、医師免許を持ってる官僚集団なんですね。その人たちの知識が足りなかったんでしょうね」
実は政府は当初、新型インフルエンザ感染を調べる対象を海外渡航歴がある人などに限定していました。
水際対策で新型ウイルスが上陸していないと考えたためですが、国内初の感染者となる神戸の高校生を診察した医師は、早い段階で「国の作ったシナリオ」を疑っていました。
<初感染の神戸高校生を診察した医師>
「インフルエンザは潜伏期間がある。心ない人がちゃんと申告しない可能性もある、水際をすり抜けている可能性がある」
役人の頭脳ではなく、現場の勘で感染を見抜くことができたのです。
<初感染の神戸高校生を診察した医師>
「メキシコでインフルエンザが言われだしたのは3月中旬。もう少し前からあったはず。アメリカと日本はビジネスを通じて行ったり来たりの状態。その時点でウイルスは入っていた
東京大学の上准教授は5月上旬のインフルエンザの患者数に注目しています。
去年より今年は患者数が大幅に増えていて、これらがすべて従来の季節性インフルエンザだけだったのか疑問が残るというのです。
<東京大学医科学研究所・上昌広准教授>
「オバマ大統領が最初に言った言葉は『すでに馬は逃げ出しているのにそれから柵をしても意味が無い』。実態はどんどん入ってきている。国民に大きな誤解を与えてしまった」
第一線で指揮にあたった神戸市の桜井局長は、検疫について2つの側面があったと話します。
<神戸市保健福祉局・桜井誠一局長>
「ひとつは私どもが準備をする時間を与えていただいた、これは大きく評価できる点。一方で強毒性の対応のような情報が流れていた、そのギャップはあった」
結局、政府は22日で機内検疫を終了しました。
<記者リポート>
「アメリカ・サンフランシスコからの直行便が到着しました。以前のようなものものしい検疫は、もう行われていません」
<帰国者>
「もっと時間がかかると覚悟して帰国したが、スムーズに終わった」
「アメリカではあまり盛り上がっていないが、日本はだいぶ盛り上がっているみたいで怖いです」
<関空検疫所・高橋仁課長補佐>
(Q.水際検疫は有効だった?)
「我々は有効であるからやるのではなく、国の考え、方針に従って淡々とやった。それだけしか言うことができない。有効かどうだったかは、我々が言える部分ではない」
国も徐々に、検疫に頼ったインフルエンザ対策の問題点を認識し始めています。
<舛添要一厚労相、参議院予算委員会・5月28日>
「国内の感染者の発見が遅れたことについて、水際に目が向いていたことがある。もうひとつ、学級閉鎖の定点観測をもっと強化しないといけない。これは反省なんですが」
義務教育ではない高校の学級閉鎖の状況をチェックしていれば、もっと早い段階で感染に気付いたかもしれません。
このように国は今後、対策を検証して、秋からの第二波に備える考えです。
(毎日放送、2009年5月28日)
****** スポーツ報知、2009年5月29日
機内検疫は政府のパフォーマンス…厚労相面前で職員痛烈批判
新型インフルエンザ対策などを集中審議した28日の参院予算委で、参考人で出席した厚労省職員の検疫官が、舛添要一厚労相(60)の目の前で、国際空港に到着した帰国便に行った機内検疫について「(政府の)パフォーマンス」と痛烈に批判した。
参考人に呼ばれた同省医系技官で検疫官の木村盛世氏は、新型対策が機内検疫などの「水際対策」に偏り過ぎた点を指摘し「毎日毎日、空港でマスクをつけて検疫官が飛び回る姿は国民にパフォーマンス的な共感を呼ぶので、利用されたのではないかと疑っている」と述べた。帰国便への一律の機内検疫は22日で縮小態勢になったが、木村氏は「現場としては大して変わっていない。今もかなりの負担を強いられている」と不満感を示した。
現役の検疫官に突き上げを食らった形の舛添氏は「本年度は検疫官を10人増やした。相当努力しているつもり」と釈明。「労働条件が変わっていないことは今後の課題としたい」と述べるにとどまった。
(スポーツ報知、2009年5月29日)
****** J-CASTニュース、2009年5月29日
「検疫はパフォーマンス」 言い過ぎか正論か
「マスクやガウンをつけ飛び回っている姿は、非常にパフォーマンス的な共感を呼ぶので利用されたのではないか」
新型インフルエンザの感染が沈静化しつつあるが、政府の水際対策に対し現役の検疫官からこんな批判が飛び出した。
「水際で、というのは当たり前のことだと思う。ただすり抜けるケースもあるので……」(司会のみの)と番組が取り上げた。
批判したのは木村盛世検疫官(厚生労働医系技官)。5月28日の参院予算委員会で開かれた新型インフルエンザについての集中審議に参考人として出席し、次のように述べた。
「N95マスクをつけてガウンをつけて飛び回っている姿は非常に国民に対しパフォーマンス的共感を呼ぶ。そういうことで利用されたのではないかと疑っています」
さらに現在の検疫体制縮小についても「現場としては今もたいして変わっていない。かなりの負担を強いられている状況です」と、不満をにじませた発言を。
さて、この批判をどう受け取るべきか、国立感染症研究所の森兼啓太主任研究官は……
「空港検疫は全く無駄ではない。しかし、成田で患者が見つかり、そちらに目が向いてしまったということは事実。それで国内の態勢がワンテンポ遅れてしまった」
スタジオでは浅野史郎(前宮城県知事)が「水際対策がパフォーマンスだった、わざとやったというのは違うかなと思う。ただ、国内態勢が薄くなったという批判は正論。水際でストップというのはもともとムリで、入ってきた後の国内態勢を重視しなければ……」と。
吉川美代子(TBS解説委員)も「来るべきもっと大変な時代に万全の態勢を組めるようにすればいい。そのための試練としてはとてもよかった」。共鳴したみのが「吉川さんと同じ」。
検疫官も水際で食い止めようと必死だったのだろう。が、上手の手から水が漏れた。その挫折感で疲労ドッと出たのかも……
(J-CASTニュース、2009年5月29日)
****** 共同通信、2009年5月28日
インフル水際対策を羽田の検疫官批判
28日の参院予算委員会で、羽田空港の現役検疫官で厚生労働省医系技官の木村盛世氏が参考人出席した。木村氏は新型インフルエンザ対策で当初、水際対策が重視されたことに関して「マスクやガウンを着け検疫官が飛び回る姿はパフォーマンス的な共感を呼ぶので、利用されたのではないかと疑っている」と批判した。
木村氏は水際対策の問題点として、国内で患者が発生した場合の対応が遅れがちになると指摘。さらに議論や情報収集が不十分なままインフルエンザ対策の行動計画が策定されたと強調、検疫態勢の縮小後も「人的にかなりの負担を強いられている」と訴えた。
舛添要一厚労相は「本年度は検疫官を10人増やした。相当努力しているつもりだ」と釈明した。
民主党の鈴木寛氏が「現場の声を聞くべきだ」と、感染症対策の問題点を指摘した著書も発表している木村氏らの出席を要請。25日の予算委では「政府を代表する立場ではない」と与党が拒否し一時紛糾した。
(共同通信、2009年5月28日)
****** 読売新聞、2009年5月28日
「機内検疫はパフォーマンス」検疫官、参院予算委で批判
午前の参院予算委員会で新型インフルエンザ対策などに関する集中審議が行われ、参考人として出席した厚生労働省職員で羽田空港の検疫官、木村盛世氏が米本土などからの旅客便を対象に一律に行った機内検疫を「(政府の)パフォーマンス」などと批判した。
木村氏は、政府の当初対策が機内検疫による「水際対策」に偏りすぎたとし、「マスクをつけて検疫官が飛び回っている姿は国民にパフォーマンス的な共感を呼ぶ。そういうことに利用されたのではないかと疑っている」と述べた。さらに、「厚労省の医系技官の中で、十分な議論や情報収集がされないまま検疫偏重になったと思う」と強調した。
一律の機内検疫は政府の新たな「基本的対処方針」で22日に終了したが、木村氏は「現場としては大して変わっていない。今もかなりの労力をかけて検疫を行っている」と指摘した。
木村氏は民主党の要請で参考人に呼ばれ、同党の鈴木寛氏の質問に答えた。
(読売新聞、2009年5月28日)
****** CBニュース、2009年5月28日
「検疫偏重」で議論―参院予算委
5月28日の参院予算委員会で、新型インフルエンザ対策などに関する集中審議が行われ、参考人として出席した国立感染症研究所・感染症情報センターの森兼啓太主任研究官と、羽田空港で検疫に当たっている木村盛世・厚生労働医系技官がそれぞれ、当初の対策が「検疫偏重」だったとの批判に対する見解を示した。共に鈴木寛氏(民主)の質問に答えた。
森兼主任研究官は「検疫は、有症状者を見つけることに関しては当然ながら有効」とする一方、「それに要する人手と、お金、時間、手間、そういったところのバランスというところではないか」とした。実際の対応については、成田空港の「水際対策」で日本最初の感染者が4人確認された際に、「皆さん、わたしも含めてそちらの方に目が向いてしまって、国内の態勢がワンテンポ遅れた」と指摘。「これは大きな教訓として、第2波以降に備えるべきだと思う。国内の対策も水際対策も、両方とも大事」と強調した。
検疫縮小のタイミングについては、「国内例が見つかって最初(の16日)から48時間ぐらいで150人ぐらいの患者が検知された。国内でも既に流行しているということが分かった。この時点で国内の検疫体制を速やかに縮小すべきだったと思う」と述べた。これに関しては、19日に舛添要一厚労相に機内検疫をやめて有症状者のスクリーニングに切り替えるよう提言したといい、3日後の22日に対処方針を改めて機内検疫を中止したことについて、「こういったスピード感を持った対策は非常に良かった」と評価した。
一方、木村厚生労働医系技官は「現場としては(検疫態勢は)大して変わっていない。今もかなりの労力をかけて検疫を行っている最中。そういう意味では人的にもかなりの負担を強いられている状況」と説明。「検疫偏重」となった理由として、「毎日毎日、マスクを着けて検疫官が飛び回っている姿は、国民に対してアイキャッチ。パフォーマンス的な共感を呼ぶ。そういうことで利用されたのではないか」「検疫では国が主体となる検疫法に基づいて動くが、国内に入ると感染症法で、地方自治体の主導になる。感染症法という“国内お任せ”をある意味、想定外とした厚労省の考え方があったのではないか」「医系技官の中で、十分な議論がされないまま、十分な情報の見直し、収集がされないまま、このような検疫偏重が起こったのではないか」の3点を挙げた。
(CBニュース、2009年5月28日)
****** 日テレニュース、2009年5月28日
参考人招致の検疫官、水際対策に疑問呈す
28日の参議院予算委員会に、新型インフルエンザの空港検疫に携わった東京検疫所・木村もりよ検疫官が参考人として出席し、「水際対策がパフォーマンスに利用されたのではないか」と疑問を呈した。
木村検疫官は「毎日毎日、テレビで、主に成田空港で、N95マスクをつけ、あるいはガウンをつけて検疫官が飛び回っている姿は、国民に対してのアイキャッチというか、非常にパフォーマンス的な共感を呼ぶ。そういうことで利用されたのではないかと疑っている。水際対策に偏ると、国内に入ってからのことがおろそかになると思う」と述べた。
一方、国立感染症研究所・森兼啓太主任研究官は「検疫は有症状者を見つけること、これに関しては当然ながら有効」と述べている。
(日テレニュース、2009年5月28日)