ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

レジナビフェア2009 for RESIDENT in 東京

2009年05月30日 | 医療全般

レジナビフェア2009 for RESIDENT in 東京」(研修医のための後期研修合同セミナー、主催:民間医局)は、明日(2009年5月31日)12:00~17:00、東京ビッグサイト(西4ホール)にて開催されます。

明日は私も数人の病院職員と一緒に参加する予定です。約250病院が出展する予定です。

全国から大勢の研修医が集まり、人気病院には行列ができます。私は毎年この後期研修合同セミナーに参加してますが、田舎病院の悲哀で研修医からあまり相手にされなくて、1日中手持ち無沙汰のことが多く、帰途の車中は徒労感が漂っていることが多かったです。

一昨年このセミナーの会場で初めて出会った後期研修医のU先生(麻酔科)、昨年初めて出会った後期研修医のM先生(産婦人科)も、今年は当院職員の立場で本セミナーに参加します。1日中、来訪者を待ち続けて、誰からも声をかけてもらえないと非常に辛いです。明日、本セミナーに参加される研修医の皆様、飯田市立病院の拙ブースにもぜひ立ち寄って一声かけてください。

追記(2009年5月31日):
 
本日は拙ブースに例年以上の来訪者があり、当院の後期研修について多くの情報を提供することができました。U先生、M先生も、今回は当院後期研修医の立場から、来訪者のいろいろな質問に対して一つ一つ丁寧にアドバイスをしてくれてました。


新型インフル 国内発生前、82人に症状 東京新聞調査 検疫すり抜け感染

2009年05月30日 | 新型インフルエンザ

コメント(私見):

今回の新型インフルエンザA(H1N1)は弱毒性であり、症状は通常の季節性インフルエンザに似ており、自然治癒するケースがほとんどで、重症化する例はそれほど多くはないことが分かってきました。

今回の新型インフルエンザも、過去の全ての新型インフルエンザの場合と同様に、数年以内にほとんど全ての国民が感染し、その後は通常の季節性インフルエンザの一つとして定着し、十年~数十年間は流行を繰り返すと見込まれます(日本感染症学会緊急提言)。

強毒性新型インフルエンザの流行であれば、国内で最悪64万人の死者が出る可能性があり、その健康被害は非常に甚大となることが予想されるため、国を挙げて厳戒態勢で臨む必要があります。人類とウイルスとの戦いは、人類が存続する限り、これからも果てしなく続きます。犠牲者は必ず出ます。我々は、正確な情報を集めて、万全の準備を整え、健康被害を最小限に食い止めるように落ち着いて行動するしかありません。

今回の国を挙げての大掛かりな水際対策に対しては、厚生労働省・現役検疫官などの専門家からもその効果を疑問視する声が上がっています。

<厚生労働省現役検疫官・木村盛世さん>
「あなたのおうちにゴキブリが1匹発生しました。地方自治体全体があなたの家に行ってゴキブリ発見のために戦うというくらい無駄な検査」

<東京大学医科学研究所・上昌広准教授>
「オバマ大統領が最初に言った言葉は『すでに馬は逃げ出しているのにそれから柵をしても意味が無い』。実態はどんどん入ってきている。国民に大きな誤解を与えてしまった」

新型インフルエンザ: 対処方針改定 事実上「新行動計画」

新型インフルエンザは、いずれ数年後に季節性インフルエンザとなって誰でも罹患しうる病気です (日本感染症学会・緊急提言より)

新型インフル:「水際対策だけで食い止め不可能」WHO

新型インフルエンザで今行われている封じ込め対策は有効なのか?

****** 東京新聞、2009年5月30日

新型インフル 国内発生前、82人に症状 本紙調査 検疫すり抜け感染

 今月十六日に初めて新型インフルエンザの国内発生が確認されたが、その前日までに計八十二人が新型ウイルスによる発熱などの症状を訴えていたことが二十九日、東京新聞の調べで分かった。政府は水際対策に注力していたが、検疫をすり抜け、感染が拡大していたことになる。 

 本紙は二十九日までに厚生労働省に報告された約三百六十人の感染者について、発熱やせきなどの症状が出た日を独自に分析。その結果、九日に兵庫県西宮市や宝塚市などの高校生五人が症状を訴え始め、十日は神戸市など七人、十三日には大阪市や大阪府吹田市など十二人の高校生らに拡大。十五日は三十二人に急増して合計八十二人に。十六日に神戸市で第一例が確認された時点では、発症者は百四人に達していた。

 政府はメキシコや米国などで感染拡大していたことを受け、四月二十五日から成田、関西、中部の三空港に大規模な検疫チームを配置。カナダを含む三カ国からの到着便について徹底的な検疫を実施してきた。

 九日にはカナダから米国経由で帰国した大阪府の男子高校生ら三人が機内検疫などで感染が確認された。

 検疫については、潜伏期で症状の出ていない場合にはほとんど効果がないといった限界が当初から指摘されていた。二十八日の参院予算委員会では、参考人として呼ばれた厚労省の現役医系技官の木村もりよ氏が検疫偏重により、国内対策がおろそかになる問題を批判。まさにその指摘通りの事態が進行していたことになる。

(東京新聞、2009年5月30日)

****** 毎日新聞、2009年5月29日

新型インフル:上陸早かった? 

関西で4月下旬発生か

 国立感染症研究所(感染研)は29日、関西で最初に新型インフルエンザの感染が確認された5月16日より2週間以上前の4月28日ごろ、すでに神戸市、大阪府内で患者が発生していた可能性があるとの見方を示した。また、ウイルスの遺伝子情報を解読する製品評価技術基盤機構と感染研は29日、兵庫県と大阪府で採取した新型の遺伝子を解析した結果、メキシコや米南部での最初の流行と、4月下旬の米東部とカナダでの流行の間に変異して発生したウイルスであることが判明したと発表した。

 感染研は、今年1月から新型の発生を監視するため、全国の薬局のインフルエンザ治療薬の処方状況を例年と比較している。

 感染研感染症情報センターの大日(おおくさ)康史主任研究官によると、例年はシーズン前半に新型と同じA型インフルエンザが流行し、後半から春先までB型インフルエンザが流行する傾向がある。しかし今年は、神戸市と大阪市周辺地域で4月中旬から下旬にB型の流行が終息。その後の4月28日、神戸市中央区の薬局で治療薬(タミフル、リレンザ)の処方が例年を上回って急増し、流行レベルに達した。大阪府内でも5月1日に池田、枚方市、13日に池田市で同様の状態になった。

 同様の現象は茨木市内の高校に通う生徒の感染が確認された翌日の18日に池田、枚方、茨木の3市で起きたほか、京都市右京区に住む専門学校生が発症した20日とその前日にも同区で見られた。このため、感染研は4月末から5月初めの流行も新型だった可能性があるとみている。

 一方、同機構によると、韓国で4月末に確認されたメキシコからの帰国患者から採取された遺伝子と似ており、同機構は「メキシコから直接流入した可能性もある」とみている。

 大日主任研究官は「大阪、神戸の処方せん数の急増は季節性とは違うという印象だ。流行初期にすでに国内に何らかの形で新型ウイルスが入っていた可能性はある」と話す。【関東晋慈、山田大輔】

◇新型インフルエンザ関連の主なできごと

4月下旬 メキシコや米国で新型インフルエンザ患者や死者が明らかに

28日 WHOが警戒レベルをフェーズ4に引き上げ(日本時間)。日本政府が新型発生を宣言

同日 薬局サーベイランスシステムが神戸市中央区でインフルエンザの流行を検知

5月1日 同システムが大阪市周辺でも流行を検知

9日 成田の検疫でカナダから帰国した大阪府の高校生らの感染確認

16日 海外渡航歴のない神戸市の高校生の感染確認

    初の国内感染

17日 渡航歴のない大阪府の高校生らの感染確認

(毎日新聞、2009年5月29日)

****** m3.com医療維新、2009年5月29日

新型インフルエンザ 

「国内初の2次感染」確定の1週間前から流行開始

神戸の積極的疫学調査の中間報告:

5月29日感染研会見

橋本佳子(m3.com編集長)

 国立感染症研究所感染症情報センター長の岡部信彦氏が5月29日の会見(メディア情報交換会)で、神戸市を中心に実施した積極的疫学調査の中間報告をした。

 神戸で渡航歴などがない「国内初の2次感染」の患者が確定されたのは5月16日だが、発症日で見ると、兵庫県内で5月9日、神戸市では同10日から新型インフルエンザが発生していたことが分かった。その後、14日から患者が急増し、16日がピークだった。16日は土曜日であり、18日の月曜日から兵庫県下では小・中・高等学校で学校閉鎖が行われた。「学校閉鎖以降、患者数は減っている。地域での流行を抑えるには、一定の効果があったのではないか」(岡部氏)。

 インフルエンザ患者全体に占める新型インフルエンザの割合は、5月15日から23日までの間で見ると、15歳から17歳までの世代では約60%と高かったが、他の世代では10%以下にとどまった。

 もっとも、神戸市での最初の感染者はまだ同定できず、神戸市、さらには兵庫県内でどんな形で感染が広がったのかは調査・分析を継続中だという。また大阪での感染との関係も現時点では分からないという。

 また患者と2m以内で会話するなどの濃厚接触者は、5月16日から5月19日までで2728人(うち患者は65人)だった。すべてに予防投薬などが検討されたものの、実際に予防投薬を実施したのは患者の家族のみだった。

 潜伏期間は1-4日、中央値は2日

 臨床面を見ると、感染源および最終接触日が特定できる患者を基に潜伏期間を推定したところ、1-4日(中央値2日)という暫定値となった。ただし、今回の調査では、5日以上の潜伏期間については2次感染との区別が付かず、把握はできなかった。

 迅速診断キットが陽性だったのは、PCR陽性の22人(対象者は不明)では7人にすぎない。陽性率は発症から検査までに期間によって大きく異なり、発症当日0%(キット陽性は3人中0人)、1日38%(13人中5人)、2日67%(3人中2人)、4日0%(2人中0人)、5日0%(1人中0人)。

 入院患者は計49人。新型インフルエンザの場合、重症度にかかわらず感染拡大防止の観点から措置入院とされたが、入院時の臨床上は38℃以上の高熱が約90%、60-80%に倦怠感・熱感・咳・咽頭痛、約半数に鼻汁・鼻閉・頭痛、約10%に嘔吐・下痢、7%に結膜炎がそれぞれ見られた。

 入院患者の血液生化学検査の結果は、
白血球数(3200-11400/μL、中央値5100/μL)、
CRP(0-9.2mg/dL、中央値1.2 mg/dL)、
GOT(12-64 IU/dL、中央値17 IU/dL)、
GPT(7-168 IU/dL、中央値11.5 IU/dL)、
BUN(6-15mg/dL、中央値10mg/dL)、
クレアチニン(0.53-0.98mg/dL、0.76mg/dL)
で、いずれもほぼ基準値の範囲内。「CRPが基準値よりもやや高めだが、意味のある数値ではない。検査値から特別言えることはない」(岡部氏)。

(m3.com医療維新、2009年5月29日)

****** 毎日新聞、2009年5月29日

新型インフルエンザ:厚労省職員が機内検疫批判--参院予算委

 28日の参院予算委員会に参考人として出席した厚生労働省職員が、新型インフルエンザ対策で行われた旅客機の機内検疫を「パフォーマンス」と批判する一幕があった。

 「厚生労働省崩壊」という著書がある羽田空港検疫官の木村もりよ氏で、民主党の鈴木寛氏の要請で出席した。木村氏は「マスク、ガウンをつけて検疫官が飛び回る姿は国民にパフォーマンス的な共感を呼ぶ。利用されたのではないかと疑っている」と述べた。機内検疫は22日に終了した。

 厚労省の塚原太郎大臣官房参事官は28日の会見で「機内検疫を始めた4月下旬時点でウイルスの病毒性は不明で、メキシコでも相当数の患者が亡くなっていた。検疫の実施は適切だった」と反論した。【田中成之】

(毎日新聞、2009年5月29日)

****** 読売新聞、2009年5月28日

神戸の新型インフル、初確認の高校生より2日早く2人発症

 神戸市は28日、市が検査した102人の新型インフルエンザ患者のうち、最初に感染が確認された県立神戸高校の男子高校生が発症したとみられる11日より2日前の9日に、2人が発熱などを訴えていたことを明らかにした。

 男子高校生は11日に悪寒を訴えていた。この高校生より早い発症を確認したのは初めてで、市は今後、感染ルートの究明につなげたいとしている。

(読売新聞、2009年5月28日)

****** 毎日放送、2009年5月28日

「水際対策の効果はあったか!?」

神戸で初めて新型インフルエンザへの感染が確認されて以来、国内の感染者数は365人(5月28日現在)にのぼり、いまだ感染ルートもわかっていません。

果たして国をあげての大掛かりな水際対策は何だったのか。

その効果を問い直す声が出始めています。


<厚生労働省現役検疫官・木村盛世さん>
「十分な情報の見直しが行われないまま、検疫偏重が行われたのではないか」

28日、行われた参議院予算委員会で新型インフルエンザに対する日本の検疫体制を痛烈に批判する女性。

厚生労働省の現役検疫官です。

木村さんは今回の感染が問題となる直前の今年3月、「厚生労働省崩壊」という本の中で、すでに検疫の無意味さを批判していました。

<厚生労働省現役検疫官・木村盛世さん>
「あなたのおうちにゴキブリが1匹発生しました。地方自治体全体があなたの家に行ってゴキブリ発見のために戦うというくらい無駄な検査」

先月28日、国はメキシコ、アメリカ、カナダ便の機内検疫を始め、水際対策の強化を打ち出しました。

<舛添要一厚労相>
「ウイルスの国内侵入を阻止するため、水際作戦の徹底をはかる」

そして今月8日、成田空港で感染が確認されます。

<舛添要一厚労相>
「やはり水際で止めたことは確か」

しかし、そのおよそ1週間後。

ついに国内初の感染者が見つかりました。

<神戸市の会見、5月16日午前1時>
「患者は神戸市在住の10代後半の男性」

続いて大阪でも…

<関西大倉高校の校長会見、5月16日>
「生徒の命に対する責任を痛感しております」

水際対策の一方で、国内では渡航歴のない高校生の間で感染が広がっていたのです。

<舛添要一厚労相>
「ある意味、水際対策は時間かせぎ」

果たして水際対策は有効だったのでしょうか?


<水際対策への疑問(1)サーモグラフィー>

北米からのすべての便は検疫官が機内に入り、乗客の体温をチェック、熱のある患者にはインフルエンザの簡易検査を行ってきました。

<乗客>
「赤外線をおでこにやって大丈夫です、みたいな」
「体調に対するアンケート」

国は空港内の検疫所にもサーモグラフィーを設置して、すべての乗客の体温をチェックしていましたが、ニューズウイークはこれを厳しく批判します。

<ニューズウイークの記事より>
「サーモグラフィーに頼るな。インフルエンザはまったく熱がない状態から感染力をもつのだから」

WHOも出入国時の検疫は、「感染拡大を防ぐ効果はない」としています。

ウイルスが入ってから症状が出るまでの潜伏期間が、最長で1週間もあるといわれているのです。

<厚生労働省現役検疫官・木村盛世さん>
「潜伏期間に空港の検疫を通ってしまったら、症状が無いから一般人と同じ、絶対にわからない」


<水際対策への疑問(2)簡易検査>

機内検疫に使われたのは、ウイルス感染を短時間で判断する簡易キットです。

<中村積方医師>
「鼻腔から採取します」

患者の鼻などから採取した検体をキットに入れて、A型ウイルスに感染していれば「A」のところにマーカーが出るのですが、この検査には限界があります。

<中村積方医師>
「症状が出てきても、熱が出て数時間では陽性になることは少ない。時間がたってこないとウイルス量が増えない」

実際、東京で初めて確認された2人の女子高校生は、機内の簡易検査では陰性。

また、神戸市の調査結果では、初期に感染が確認された43人のうち、簡易検査で陽性反応が出たのは23例。

半分近くが検査をすり抜けていました。

<厚生労働省現役検疫官・木村盛世さん>
「行動計画を作ったのは霞が関にいる医系技官といって、医師免許を持ってる官僚集団なんですね。その人たちの知識が足りなかったんでしょうね」

実は政府は当初、新型インフルエンザ感染を調べる対象を海外渡航歴がある人などに限定していました。

水際対策で新型ウイルスが上陸していないと考えたためですが、国内初の感染者となる神戸の高校生を診察した医師は、早い段階で「国の作ったシナリオ」を疑っていました。

<初感染の神戸高校生を診察した医師>
「インフルエンザは潜伏期間がある。心ない人がちゃんと申告しない可能性もある、水際をすり抜けている可能性がある」

役人の頭脳ではなく、現場の勘で感染を見抜くことができたのです。

<初感染の神戸高校生を診察した医師>
「メキシコでインフルエンザが言われだしたのは3月中旬。もう少し前からあったはず。アメリカと日本はビジネスを通じて行ったり来たりの状態。その時点でウイルスは入っていた


東京大学の上准教授は5月上旬のインフルエンザの患者数に注目しています。

去年より今年は患者数が大幅に増えていて、これらがすべて従来の季節性インフルエンザだけだったのか疑問が残るというのです。

<東京大学医科学研究所・上昌広准教授>
「オバマ大統領が最初に言った言葉は『すでに馬は逃げ出しているのにそれから柵をしても意味が無い』。実態はどんどん入ってきている。国民に大きな誤解を与えてしまった」

第一線で指揮にあたった神戸市の桜井局長は、検疫について2つの側面があったと話します。

<神戸市保健福祉局・桜井誠一局長>
「ひとつは私どもが準備をする時間を与えていただいた、これは大きく評価できる点。一方で強毒性の対応のような情報が流れていた、そのギャップはあった」

結局、政府は22日で機内検疫を終了しました。


<記者リポート>
「アメリカ・サンフランシスコからの直行便が到着しました。以前のようなものものしい検疫は、もう行われていません」

<帰国者>
「もっと時間がかかると覚悟して帰国したが、スムーズに終わった」
「アメリカではあまり盛り上がっていないが、日本はだいぶ盛り上がっているみたいで怖いです」

<関空検疫所・高橋仁課長補佐>
(Q.水際検疫は有効だった?)
「我々は有効であるからやるのではなく、国の考え、方針に従って淡々とやった。それだけしか言うことができない。有効かどうだったかは、我々が言える部分ではない」

国も徐々に、検疫に頼ったインフルエンザ対策の問題点を認識し始めています。

<舛添要一厚労相、参議院予算委員会・5月28日>
「国内の感染者の発見が遅れたことについて、水際に目が向いていたことがある。もうひとつ、学級閉鎖の定点観測をもっと強化しないといけない。これは反省なんですが」

義務教育ではない高校の学級閉鎖の状況をチェックしていれば、もっと早い段階で感染に気付いたかもしれません。

このように国は今後、対策を検証して、秋からの第二波に備える考えです。

毎日放送、2009年5月28日

****** スポーツ報知、2009年5月29日

機内検疫は政府のパフォーマンス…厚労相面前で職員痛烈批判

 新型インフルエンザ対策などを集中審議した28日の参院予算委で、参考人で出席した厚労省職員の検疫官が、舛添要一厚労相(60)の目の前で、国際空港に到着した帰国便に行った機内検疫について「(政府の)パフォーマンス」と痛烈に批判した。

 参考人に呼ばれた同省医系技官で検疫官の木村盛世氏は、新型対策が機内検疫などの「水際対策」に偏り過ぎた点を指摘し「毎日毎日、空港でマスクをつけて検疫官が飛び回る姿は国民にパフォーマンス的な共感を呼ぶので、利用されたのではないかと疑っている」と述べた。帰国便への一律の機内検疫は22日で縮小態勢になったが、木村氏は「現場としては大して変わっていない。今もかなりの負担を強いられている」と不満感を示した。

 現役の検疫官に突き上げを食らった形の舛添氏は「本年度は検疫官を10人増やした。相当努力しているつもり」と釈明。「労働条件が変わっていないことは今後の課題としたい」と述べるにとどまった。

(スポーツ報知、2009年5月29日)

****** J-CASTニュース、2009年5月29日

「検疫はパフォーマンス」 言い過ぎか正論か

 「マスクやガウンをつけ飛び回っている姿は、非常にパフォーマンス的な共感を呼ぶので利用されたのではないか」

  新型インフルエンザの感染が沈静化しつつあるが、政府の水際対策に対し現役の検疫官からこんな批判が飛び出した。

   「水際で、というのは当たり前のことだと思う。ただすり抜けるケースもあるので……」(司会のみの)と番組が取り上げた。

   批判したのは木村盛世検疫官(厚生労働医系技官)。5月28日の参院予算委員会で開かれた新型インフルエンザについての集中審議に参考人として出席し、次のように述べた。

   「N95マスクをつけてガウンをつけて飛び回っている姿は非常に国民に対しパフォーマンス的共感を呼ぶ。そういうことで利用されたのではないかと疑っています」

   さらに現在の検疫体制縮小についても「現場としては今もたいして変わっていない。かなりの負担を強いられている状況です」と、不満をにじませた発言を。

   さて、この批判をどう受け取るべきか、国立感染症研究所の森兼啓太主任研究官は……

   「空港検疫は全く無駄ではない。しかし、成田で患者が見つかり、そちらに目が向いてしまったということは事実。それで国内の態勢がワンテンポ遅れてしまった」

   スタジオでは浅野史郎(前宮城県知事)が「水際対策がパフォーマンスだった、わざとやったというのは違うかなと思う。ただ、国内態勢が薄くなったという批判は正論。水際でストップというのはもともとムリで、入ってきた後の国内態勢を重視しなければ……」と。

   吉川美代子(TBS解説委員)も「来るべきもっと大変な時代に万全の態勢を組めるようにすればいい。そのための試練としてはとてもよかった」。共鳴したみのが「吉川さんと同じ」。

   検疫官も水際で食い止めようと必死だったのだろう。が、上手の手から水が漏れた。その挫折感で疲労ドッと出たのかも……

(J-CASTニュース、2009年5月29日)

****** 共同通信、2009年5月28日

インフル水際対策を羽田の検疫官批判

 28日の参院予算委員会で、羽田空港の現役検疫官で厚生労働省医系技官の木村盛世氏が参考人出席した。木村氏は新型インフルエンザ対策で当初、水際対策が重視されたことに関して「マスクやガウンを着け検疫官が飛び回る姿はパフォーマンス的な共感を呼ぶので、利用されたのではないかと疑っている」と批判した。

 木村氏は水際対策の問題点として、国内で患者が発生した場合の対応が遅れがちになると指摘。さらに議論や情報収集が不十分なままインフルエンザ対策の行動計画が策定されたと強調、検疫態勢の縮小後も「人的にかなりの負担を強いられている」と訴えた。

 舛添要一厚労相は「本年度は検疫官を10人増やした。相当努力しているつもりだ」と釈明した。

 民主党の鈴木寛氏が「現場の声を聞くべきだ」と、感染症対策の問題点を指摘した著書も発表している木村氏らの出席を要請。25日の予算委では「政府を代表する立場ではない」と与党が拒否し一時紛糾した。

(共同通信、2009年5月28日)

****** 読売新聞、2009年5月28日

「機内検疫はパフォーマンス」検疫官、参院予算委で批判

 午前の参院予算委員会で新型インフルエンザ対策などに関する集中審議が行われ、参考人として出席した厚生労働省職員で羽田空港の検疫官、木村盛世氏が米本土などからの旅客便を対象に一律に行った機内検疫を「(政府の)パフォーマンス」などと批判した。

 木村氏は、政府の当初対策が機内検疫による「水際対策」に偏りすぎたとし、「マスクをつけて検疫官が飛び回っている姿は国民にパフォーマンス的な共感を呼ぶ。そういうことに利用されたのではないかと疑っている」と述べた。さらに、「厚労省の医系技官の中で、十分な議論や情報収集がされないまま検疫偏重になったと思う」と強調した。

 一律の機内検疫は政府の新たな「基本的対処方針」で22日に終了したが、木村氏は「現場としては大して変わっていない。今もかなりの労力をかけて検疫を行っている」と指摘した。

 木村氏は民主党の要請で参考人に呼ばれ、同党の鈴木寛氏の質問に答えた。

(読売新聞、2009年5月28日)

****** CBニュース、2009年5月28日

「検疫偏重」で議論―参院予算委

 5月28日の参院予算委員会で、新型インフルエンザ対策などに関する集中審議が行われ、参考人として出席した国立感染症研究所・感染症情報センターの森兼啓太主任研究官と、羽田空港で検疫に当たっている木村盛世・厚生労働医系技官がそれぞれ、当初の対策が「検疫偏重」だったとの批判に対する見解を示した。共に鈴木寛氏(民主)の質問に答えた。

 森兼主任研究官は「検疫は、有症状者を見つけることに関しては当然ながら有効」とする一方、「それに要する人手と、お金、時間、手間、そういったところのバランスというところではないか」とした。実際の対応については、成田空港の「水際対策」で日本最初の感染者が4人確認された際に、「皆さん、わたしも含めてそちらの方に目が向いてしまって、国内の態勢がワンテンポ遅れた」と指摘。「これは大きな教訓として、第2波以降に備えるべきだと思う。国内の対策も水際対策も、両方とも大事」と強調した。

 検疫縮小のタイミングについては、「国内例が見つかって最初(の16日)から48時間ぐらいで150人ぐらいの患者が検知された。国内でも既に流行しているということが分かった。この時点で国内の検疫体制を速やかに縮小すべきだったと思う」と述べた。これに関しては、19日に舛添要一厚労相に機内検疫をやめて有症状者のスクリーニングに切り替えるよう提言したといい、3日後の22日に対処方針を改めて機内検疫を中止したことについて、「こういったスピード感を持った対策は非常に良かった」と評価した。

 一方、木村厚生労働医系技官は「現場としては(検疫態勢は)大して変わっていない。今もかなりの労力をかけて検疫を行っている最中。そういう意味では人的にもかなりの負担を強いられている状況」と説明。「検疫偏重」となった理由として、「毎日毎日、マスクを着けて検疫官が飛び回っている姿は、国民に対してアイキャッチ。パフォーマンス的な共感を呼ぶ。そういうことで利用されたのではないか」「検疫では国が主体となる検疫法に基づいて動くが、国内に入ると感染症法で、地方自治体の主導になる。感染症法という“国内お任せ”をある意味、想定外とした厚労省の考え方があったのではないか」「医系技官の中で、十分な議論がされないまま、十分な情報の見直し、収集がされないまま、このような検疫偏重が起こったのではないか」の3点を挙げた。

(CBニュース、2009年5月28日)

****** 日テレニュース、2009年5月28日

参考人招致の検疫官、水際対策に疑問呈す

 28日の参議院予算委員会に、新型インフルエンザの空港検疫に携わった東京検疫所・木村もりよ検疫官が参考人として出席し、「水際対策がパフォーマンスに利用されたのではないか」と疑問を呈した。

 木村検疫官は「毎日毎日、テレビで、主に成田空港で、N95マスクをつけ、あるいはガウンをつけて検疫官が飛び回っている姿は、国民に対してのアイキャッチというか、非常にパフォーマンス的な共感を呼ぶ。そういうことで利用されたのではないかと疑っている。水際対策に偏ると、国内に入ってからのことがおろそかになると思う」と述べた。

 一方、国立感染症研究所・森兼啓太主任研究官は「検疫は有症状者を見つけること、これに関しては当然ながら有効」と述べている。

(日テレニュース、2009年5月28日)


医師配置、新機関で(厚労省研究班が提言)

2009年05月28日 | 医療全般

1人医長で頑張っていた当時(二十年前)は、土日も朝から晩まで働き通しで、夜中もいつ病院から呼び出されのるか全く分かりませんでした。連続勤務で1週間1度も帰宅できないようなこともしばしばありました。当然、夏休みや正月休みを取得することもできませんでした。医師の頭数を増やさない限り、こんな生活が長続きする筈がないと痛感しました。

科を存続させていくためには、科の運営に必要な医師の頭数を維持することが絶対必須条件です。科の総仕事量はほぼ一定ですから、所属する医師の頭数が減れば、それに反比例して医師1人当たりの仕事量はどうしても増えてしまいます。従って、いったん医師数が減り始めたら、医師の労働環境はますます悪化する一方となり、挽回することが非常に難しくなってしまいます。

地域医療の崩壊をくい止めるためには、いかにして地域に必要な医師の頭数を維持していくのか?が最重要課題です。しかし、この課題の解決を現場の医師に押し付けられても大きな限界があります。国家レベルの何らかの対策によってある程度は計画的に医師配置のバランスを適正化する必要があり、医学部入学定員を増やすだけの対策では全く不十分だと思われます。

追記(2009年5月30日)

強制的に医師を配置し、医師本人の意思を無視して、やりたくもないことを無理矢理やらせることはできないと思いますが、産婦人科に関して言えば、最近はやる気満々の若い医師が多く参入し、ちょっと前までの最悪の時期と比べると少し明るい兆しも見えてきました。

周産期医療の現場では、産科医、新生児科医、麻酔科医、助産師、看護師などの多くの専門家で構成される大きなチームで一つの仕事をしています。もしもある日突然、新生児科医が全員いなくなってしまえばチームはいきなり総崩れとなってしまい、チームとしての仕事が何もできなくなってしまいます。麻酔科医が突然いなくなったとしても同じことです。医師の配置を自然の成り行きに任せておくだけでは、全体としてなかなかうまくいかないのは当然です。偶然にも各科専門医がバランスよく集まった地域だけはうまくいくが、そのバランスが崩れたとたんにその地域の医療が突然崩壊してしまうということでは、医療のあり方があまりにも無計画すぎます。必要な専門医を計画的に養成し、必要な部署にバランスよく配置する何らかのシステムが必要だと思います。

****** 読売新聞、2009年5月25日

医師配置、新機関で…厚労省研究班が提言 地域ごとに専門医定数

 医師不足や地域、診療科による偏在を解消するための抜本対策として、医師の計画配置がクローズアップされている。

 多くの先進国が何らかの計画的な医師配置策を取っているなか、厚生労働省研究班(班長=土屋了介・国立がんセンター中央病院院長)もこのほど、日本でも第三者機関が診療科ごとの専門医数などを定める計画的な医師養成を行うべきだとの提言を打ち出し、さらに論議が高まりそうだ。(医療情報部 坂上博、利根川昌紀)

 厚労省研究班は、舛添厚労相の諮問機関である「安心と希望の医療確保ビジョン」具体化検討会が2008年9月、医学部定員の1・5倍増などの提言を打ち出したのを受け、発足。質の高い専門医を養成するための制度改革などについて検討を重ねた。

 報告書では、〈1〉専門医の質の向上を図る〈2〉患者を幅広く診ることができる家庭医・総合医を養成する――ことなどを掲げたが、その具体策として打ち出したのが、専門医の定数を定め、計画的に養成するための第三者機関の設立だ。

 現在の専門医制度は、各診療科の学会が独自に認定。選考基準もまちまちで、定数も決まっていない。これが、産科や小児科、外科など激務の診療科で医師が不足する原因にもなっている。

 研究班は、専門病院や学会、医学部、開業医、自治体らで組織する「卒後医学教育認定機構(仮称)」の設立を提言。地域ごとに、患者数に応じた適正な数の専門医が養成されるよう、研修病院に対し定員枠の策定を求める。

 先進諸国の多くは、診療科や地域ごとに専門医の数を決めるなど、医師を計画的に配置する何らかの仕組みを設けている。フランスなどでは国による専門医数の規制が行われているほか、米国では医師らで作る第三者機関が専門医の養成数を定めている。

 医師に診療科や地域ごとの定数を設けることについては、「職業選択の自由を奪うのではないか」、「居住地の自由もないのか」など、医師の自由意思を無視した強制的な配置ではないかとの誤解に基づく、反発の声も一部に聞かれる。

 研究班では、医師が診療科や勤務場所を自由に選べる日本のように「市場に委ねる方法では、医師の配置は最適化されない」としたうえで、「強制的に行われるものではなく、患者数などに基づいて必要な専門医を養成することで、適正な医師配置に結びつけようとするもの」(土屋班長)と説明する。

 国は今年度の医学部入学定員を昨春より693人増やし、過去最高の8486人に増員。また初期研修について、来年度から都道府県ごとの募集定員の上限を設けるなど、「医師不足対策」を講じているが、いずれも診療科別の定数などを規制するものではなく、医師不足・偏在解消の抜本策とはならない。

 厚労省は、「今回の研究班提言を踏まえながら専門医のあり方を検討していきたい」(医政局総務課)としている。

(以下略)

(読売新聞、2009年5月25日)


長野県・上伊那地域の産科医療

2009年05月25日 | 地域周産期医療

上伊那地域では、従来、町立辰野総合病院(辰野町)、伊那中央病院(伊那市)、昭和伊南総合病院(駒ヶ根市)の3公立病院のそれぞれの産婦人科で分娩を取り扱ってきました。この3病院にはそれぞれ2~3人の常勤の産婦人科医が勤務してました。

ところが、平成17年に町立辰野病院・産婦人科の常勤医がいなくなって、同院での分娩の取り扱いを中止しました。また、平成20年には昭和伊南総合病院・産婦人科の常勤医がいなくなって、同院での分娩の取り扱いを中止しました。さらに、産婦人科の開業医の先生方も、高齢のため次々に分娩の取り扱いを中止しました。

そのため、地域内のほとんどすべての分娩が伊那中央病院に集中するようになりました。同病院は、この地域の産科医療の最後の砦として、幾多の困難を乗り越えて頑張っています。産婦人科の常勤医を6人に増員し、施設も増築して、分娩件数の急増に対応しています。

元来、この地域の産科施設では年間千6百件程度の分娩を取り扱っていたそうですから、伊那中央病院が千2百件程度の分娩を取り扱うにしても、4百件程度の分娩の受け入れ先が地域内で見つからないことになってしまいます。しかし、来春には駒ケ根市内で産科医院開業の予定があるとのことですから、そうなれば現在の危機的状況もある程度は緩和されると思われます。諏訪地域や飯田下伊那地域などの近隣地域の産科関係者もできる限り連携・協力し、一緒にこの危機を乗り切っていきたいと思います。

地方の産科医療にとって、医師の確保は最大の課題ですが、地方の病院が自力で医師を確保するのは非常に難しく、最終的には大学病院の人的支援に頼るしかありません。それぞれの地域の状況に応じて、医師確保、病診連携、助産師パワー活用など、地域産科医療の崩壊をくい止めるための最大限の自助努力を継続してゆく必要があると思います。

****** 信濃毎日新聞、2009年5月23日

伊那中央病院、分娩数過去最多1170件

08年度 昭和伊南扱い休止で

 伊那中央病院(伊那市)が2008年度に扱った分娩の件数は、前年度より149件増の1170件となり、開院した03年度以降で最多だったことが22日、分かった。昭和伊南総合病院(駒ケ根市)が08年度から、医師不足のためお産の取り扱いを休止したことが影響したとみられる。医師数や施設の面から「ぎりぎりの状態が続いている」(事務部)としている。

施設や医師数 「ぎりぎりの状態続く」

 伊那中央病院で03年度に扱ったお産は年間733件で、04年度も700件台だった。だが、05年度は辰野総合病院(辰野町)が医師不足によりお産の扱いを休止したため、940件に増加。伊那中央が上伊那地方のお産の大部分を担っている。

 年間約500件を扱ってきた昭和伊南がお産の扱いを休止したのを受け、上伊那地方の関係機関は、伊那中央が里帰り出産の受け入れを断った上で、年間1000件だった扱いを約1200件に増やすことを確認していた。年間約300件の要望があるとみられる里帰り出産は、今後も断らざるを得ない状況だ。

(以下略)

(信濃毎日新聞、2009年5月23日)

****** 信濃毎日新聞、2009年5月21日

上伊那で助産所の開業相次ぎ6カ所に 

全国的にも珍しい

 上伊那地方でここ数年、助産所の開業が相次いでいる。妊婦が入院してお産できる「有床分娩(ぶんべん)」を扱う助産所は、県内8カ所のうち6カ所が上伊那に集中するようになった。産科医不足は上伊那でも深刻なことから、助産師たちは安心してお産ができる地域にしようと意気込んでいる。

 日本助産師会県支部上伊那地区によると、有床分娩を扱う助産所が1地域に6カ所もあるのは全国的に珍しい。

 駒ケ根市の昭和伊南総合病院の近くに8日、「おひさま助産院」を開業した小林まゆみさん(37)は「母親と赤ちゃんを温かく包み込む助産院にしたい」と抱負を話す。伊那市の伊那中央病院に1993年から14年間勤務。産科医不足が深刻化する中で、助産師がもっと活躍できる場があるはず-との思いから開業に踏み切ったという。

 6カ所のうち、最も早く有床分娩の扱いを始めたのは84年に開業した「幸(さち)助産院」(駒ケ根市)。その後、2005年の「助産所ドゥーラえむあい」(伊那市)、07年の「野ノ花助産院」(駒ケ根市)と開業が続き、08年には伊那市でさらに2カ所が開業した。

(以下略)

(信濃毎日新聞、2009年5月21日)


新型インフルエンザ: 対処方針改定 事実上「新行動計画」

2009年05月24日 | 新型インフルエンザ

新型インフルエンザに対する従来の行動計画は、強毒性の鳥インフルエンザウイルスを前提に作られたものでした。強毒性の新型インフルエンザであれば、国内で最悪64万人の死者が出る可能性があり、その健康被害は非常に甚大となることが予想されるため、国を挙げて厳戒態勢で臨む必要があります。

しかし、今回の新型インフルエンザA(H1N1)は弱毒性であり、症状は通常の季節性インフルエンザに似ており、自然治癒するケースがほとんどで、重症化する例はそれほど多くはないことが分かってきました。そのため、実態に合わなくなってきた今回の新型インフルエンザに対する政府の対処方針が改定されました。

また、世界保健機関(WHO)も今回の新型インフルエンザに対する治療指針を公表しました。慢性疾患合併例や妊婦などの重症化しやすい患者への抗インフルエンザウイルス薬の早期投与を勧めています。

新型インフルエンザに関するQ&A

厚生労働省:新型インフルエンザ対策本部による平成21年5月22日の「基本的対処方針」に関するQ&A

新型インフルエンザは、いずれ数年後に季節性インフルエンザとなって誰でも罹患しうる病気です (日本感染症学会・緊急提言より)

**** 毎日新聞、2009年5月23日大阪朝刊

新型インフル、対処方針改定 

事実上「新行動計画」

 感染の拡大が続く新型インフルエンザに、新たな対策が示された。政府対策本部が22日改定した基本的対処方針は事実上、強毒性のウイルスを前提に作られた従来の行動計画に代わり、今回の新型ウイルスの特性や感染の実態を踏まえた「新行動計画」の意味を持つ。国は自治体の対応に幅広い選択を認める一方、季節性インフルエンザ以上の警戒も求めたが、新方針で社会の混乱を抑えつつ、感染拡大防止を図ることはできるのか。

 ◇独自運用の自治体追認

 「これまで鳥インフルエンザ想定の行動計画に引っ張られ、自治体で混乱もあった。基本的には行動計画にこだわらなくていいと、きちっと書かせてもらった」。内閣官房の担当官は、“脱行動計画”とも言える新たな対処方針の意義を強調した。

 神戸市で国内初の感染者が確認された16日以降、政府や厚生労働省は「弾力的で柔軟な対応を取る」と繰り返してきた。国内で最悪64万人の死者を想定した行動計画が、明らかに実態に合わなかったためだ。対策本部は同日、行動計画の第2段階(国内発生早期)に移行した際、当面の対策として「確認事項」を示した。第2段階の対策の項目の一部を抜き出した内容で、休校措置の対象を限定することも可能にするなど、社会への影響を小さくしようとした。しかし、神戸市や大阪府はこの枠を超え、軽症者の自宅療養など第3段階の「まん延期」に相当する対策を始めた。東京都や川崎市も、感染者が出ても学校の一斉休校などはせず、第2段階で求められた対策でも社会的影響の大きな部分は実施しなかった。新たな対処方針は、行動計画に縛られず独自の運用を始めている自治体の対策を追認したと言える。

 行動計画がなくなったわけではなく、厚労省の担当者は「第3段階への移行は、国際社会へ与えるインパクトなども考慮して判断することになるだろう」と語る。だが、対処方針には、発生初期からまん延の段階までの対応が盛り込まれ、第3段階に入っても使える内容となっており、自治体にとっては対策を大幅に変える必要はない。事実上、新たな行動計画として機能することになる。4月末の発生宣言から、政府が行動計画にとらわれない対応策を打ち出すまで約1カ月かかった。舛添要一厚労相は22日の閣議後会見で、これまでの対応の適切さを強調した。「新型っていうのは(性質が)分からないんです。最初から分かれば苦労はない」【清水健二、内橋寿明】

 ◇糖尿病やぜんそく、重症化防止に力点

 糖尿病やぜんそくなどの慢性疾患のある人が感染すると、重症化する恐れがあるため、政府は重症化防止を対策の柱に位置づける。新たな運用指針で、患者急増地域では(1)慢性疾患を持つ感染者の優先的な入院治療(2)軽症者の家族を持つ慢性疾患者への治療薬の予防投与(3)一般医療機関での慢性疾患者への感染防止--を求めた。

 国内では、これまで死亡や重症化の例はない。だが米国では入院患者の70%にぜんそくなどの慢性疾患や妊娠がみられた。

 米疾病対策センター(CDC)によると、入院した247人のうちカリフォルニア州の30人を分析した結果、▽肺の慢性疾患▽心臓の慢性疾患▽肥満などがあり、5人は妊娠していた。20%は集中治療室でのケアが必要で、13%は人工呼吸器が必要だった。妊婦では症状が急激に悪くなる例もあり、妊娠で肺の動きが抑えられることなどが考えられる。早産もあった。

 押谷仁・東北大教授(ウイルス学)は「重症化例が多発した場合の医療体制を今から考えておく必要がある。特に救急医療や産科医療が維持できなくなっている地域では緊急課題だ」と指摘。国立感染症研究所の岡部信彦・感染症情報センター長は「慢性疾患のある人は大流行前に、症状を管理するため薬などをきちんと用意しておいてほしい」と話す。【関東晋慈、北米総局】

 ◇季節性とは一線「より警戒」は継続

 新型インフルエンザについて、舛添厚労相はこれまで「季節性インフルエンザと変わらない」と説明することが多かったが、22日の記者会見では「まったく同じではない」と言い回しを変えた。新たな対処方針は学校の休校などで自治体に季節性インフルと同様の対応を認めたが、治療や入院、遺伝子検査などでは特別な態勢を続けるよう求めており、重要な部分で一線を画す。

 なぜ新型はより警戒が必要なのか。厚労省は(1)免疫やワクチンがなく感染が広がりやすい(2)糖尿病やぜんそくなど慢性疾患があると重症化しやすい(3)変異して毒性が変わる可能性がある--を挙げるが別の理由としては感染症法の規定がある。

 感染症法は昨年5月の改正で、警戒度が最も低い「第5類」に分類されるインフルエンザと区別して「新型インフルエンザ等感染症」の規定を追加した。感染が疑われる患者の入院や接触者の外出自粛要請は同法に基づく措置だ。厚労省は「毒性にかかわらず、国民に免疫がないことが『新型』指定の条件なので、今回のインフルエンザを季節性とみなすことはできない」と説明する。

 しかし、日本では毎年冬を中心に1500万人前後が季節性インフルにかかり、Aソ連型やA香港型は、遺伝子検査をしなければ新型と区別できない。膨大な患者が発熱外来に押し寄せれば検査も追いつかない。厚労省は「季節性の流行期には、対応を見直す必要がある」と認める。

 実際、多数の感染者が出た大阪では今ですら、新型が疑われる患者だけを抜き出して対応することが難しくなりつつある。発熱相談センターや保健所の電話がつながらず、多くの人が一般の診療所などを訪れているためだ。これを受け高槻市医師会は18日、会員の一般医療機関に、季節性だけでなく新型の疑いがある人も診察するよう文書で要請した。高橋徳副会長は「発熱センターに連絡するよう押し戻せば、たらい回しになる。感染予防をしながら一般診療所などでも診察するしかない」と話す。【渋江千春、清水健二】

(毎日新聞、2009年5月23日大阪朝刊)

****** 毎日新聞・社説、2009年5月23日

新型方針改定 重症化防ぐ手だても

 新型インフルエンザは「恐れ過ぎず、侮らず」という姿勢が、ますます重要になってきた。政府の方針改定に基づき新たに公表された指針の運用にあたっても、そのバランスを忘れないようにすることが大事だ。

 新たな指針では、検疫を縮小し、国内対策に重点を置くことにした。インフルエンザの性質からも、国内で感染が拡大している状況からも、それが妥当な方向だ。地域の状況に応じて柔軟に対策を分けることも、現実的な対応だろう。

 多くの人が軽症で治ることを念頭におけば、感染が拡大している地域で軽症者に自宅療養を勧めることも理にかなっている。学校や保育所などの休業も、効果が期待できる範囲がおのずとあるだろう。

 ただ、ウイルスの病原性が低いからといって、「季節性インフルエンザとまったく同じ対応でだいじょうぶ」と気を緩めるのは早計だ。

 症状が軽くても、これは多くの人が免疫を持たない新型ウイルスである。感染者が増えれば、結果的に重症者も増えるだろう。最終的にどの程度の健康被害が出るか、まだ予測できない部分がある。

 米国のデータでは、高齢者は発病する人も重症化する人も少ない。一方で、入院患者の3割が5~18歳の若者、4割が19~49歳の成人だという。ぜんそくなどの持病のある人や妊婦に加え、健康な人の中にも重症化する人たちがいる。

 この傾向が続くと、日本でも若者や成人に重症者が出るようになる恐れがある。数カ月先まで見越して、重症者の治療体制も今から考えておいた方がいい。

 妊婦を守る対策も重要だ。インフルエンザが疑われる妊婦を感染者が集まる発熱外来に誘導するのではなく、臨床症状に応じて抗ウイルス剤を処方できるよう、医療現場で工夫してほしい。

 侮らないという点で、個人の感染拡大防止策も大事だ。こまめな手洗いはもちろん、せきやくしゃみは手で覆わず、ティッシュなどで覆うことが大切だ。手に付着したウイルスを机やドアノブなどに付けないためだ。症状があったら、学校や会社を休むのも基本だ。

 新型対策の基本方針については、官房長官や厚生労働相らがそれぞれ発言しているだけではない。政府の対策本部には専門家諮問委員会が助言しているが、厚労相はこれとは別に、国内対策について専門家から意見を聞いている。

 多様な意見を聞くことや、迅速な情報提供はもちろん重要だが、政府としての系統立てた意思決定と統一的なメッセージも大事だ。その両方が備わってこそ、国民の信頼感にもつながるのではないだろうか。

(毎日新聞・社説、2009年5月23日)

**** m3.com医療維新、2009年5月22日

新型インフルエンザ

「地域分け」は患者数で一律に線引きできず

政府が新方針、

「医療体制などに応じて柔軟に対応すべき」
と感染研・岡部氏

橋本佳子(m3.com編集長)

 政府の新型インフルエンザ対策本部(本部長:麻生太郎首相)は5月22日、新型インフルエンザ対策について、「基本的対処方針」と「医療の確保、検疫、学校・保育施設等の臨時休業の要請等に関する運営指針」をまとめた(首相官邸のホームページ)

 これまでは政府が定めた「新型インフルエンザ対策行動計画」に基づき、一律な対応を求めてきたが、感染者・患者数に応じて、(1)感染の初期、患者発生が少数であり、感染拡大防止に努める地域、(2)急速な患者数の増加が見られ、重症化の防止に重点を置くべき地域、という2つの地域に分けて対策を講じることが特徴だ。

 ただし、政府の運営指針には、(1)と(2)の基準は明示されておらず、「厚生労働省と相談の上、都道府県、保健所設置市等が判断する」と記載されているのみ。この点について、国立感染症研究所感染症情報センター長の岡部信彦氏(新型インフルエンザ対策本部専門家諮問委員会委員)は、5月22日午後の会見(メディア情報交換会)で、「流行の初期か、まん延地域かの区別は、『感染者が何人以上』などと全国一律に線引きすることはできない。各地域のキャパシティーに応じて柔軟に対応すべき」との見解を示した。「キャパシティー」とは、積極的疫学調査の体制、PCR検査の体制、感染症指定医療機関の数・病床数などだ。

 神戸市などの実態を踏まえ、政府が対応

 政府の「新型インフルエンザ対策行動計画」によれば、現在は第2段階(国内発生早期)。この段階では、積極的疫学調査(患者の行動・臨床情報などの調査と、患者と接触した人の追跡調査)の実施、患者の感染症指定医療機関への措置入院、発熱外来での診察実施など、感染拡大防止のために厳しい対応が求められる。

 しかし、兵庫県や大阪府などでは患者数の増加で事実上、これらの対策が不可能になり、例えば神戸市では既に5月18日から軽症者については自宅静養とするほか、20日から発熱外来以外での患者の診察を始めている。政府の新たな方針は、こうした現状を踏まえ、地域によって柔軟に対応できるようにしたもの。

 (1)の「感染の初期」における医療面での対策は行動計画の第2段階とほぼ同じ。

 (2)の「感染拡大・まん延期」の対策の基本的考え方として岡部氏は、「季節性インフルエンザへの対応、プラスアルファを求めたということ。必ずしも“重装備”を求めているわけではないが、新型インフルエンザの場合は未知の部分もあるため注意は必要」と説明。

 対策としてはまず患者の重症化防止に重点を置く必要性を強調、一方で軽症者については自宅静養を求めている。

 その上で、「対応可能な一般の医療機関においても、発熱外来の機能を果たすとともに、患者の直接受診も可能とする」としている。「発熱外来と言っても、陰圧テントなどを持つ厳重な発熱外来ではなく、求めているのは発熱外来の『機能』。つまり新型インフルエンザ疑いの患者とそれ以外の患者を、スペースあるいは診察時間などで分けるなど、運用面で工夫できる医療機関で対応してほしいということ」(岡部氏)。

 さらに、PCR検査での確定診断は必ずしも必要とはしないとし、患者との接触が強く疑われる人などを優先的に検査すべきだとしている。「患者数が少ないときには、感染拡大の状況などを把握のために正確な患者数を調べることが必要だが、ある程度以上多くなると検査体制のキャパシティーを超える。かつ今回の新型インフルエンザは軽症患者が多いこともあり、新型インフルエンザか季節性かを判断しても治療には相違はない」と岡部氏は述べ、(1)から(2)の段階への移行に伴い、検査体制も季節性インフルエンザの体制に基本的には切り替わるとした。

 こうした運用指針に合わせて、新型インフルエンザの症例定義も改定されている(PDF)

 そのほか、運営方針では、水際対策についても、機内検疫は原則廃止とし、明らかに機内に有症者がいる場合に限るなど、見直しを行っている。

(m3.com医療維新、2009年5月22日)

**** 読売新聞、2009年5月24日2時14分

新型インフル、妊婦などに薬の早期投与を…WHO治療指針

 【ジュネーブ=高田真之】世界保健機関(WHO)は22日、新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)の治療指針を公表した。妊婦などの重症化しやすい患者への抗インフルエンザウイルス薬の早期投与を勧めている。

 WHOには20日現在、41か国から1万人を超える感染者の報告がある。治療指針は、このうち大半を占めるメキシコ、米国、カナダの症例を中心に解析した。

 感染者の約73%は30歳未満。

 症状は、通常の季節性インフルエンザに似ており、自然治癒するケースがほとんどだった。入院が必要になったのは、米国やカナダで約2~5%、メキシコで6%。米国の入院患者とメキシコでの死者の約半数は、ぜんそくや糖尿病などの慢性疾患があったり、妊娠中だったりして、重症化しやすい状態だった。

 指針では、こうした患者の重症化を防ぐため、タミフルやリレンザを早期に投与することを勧めている。

(読売新聞、2009年5月24日2時14分)

**** 読売新聞、2009年5月24日

新型インフル、WHOが治療指針

 【ジュネーブ=高田真之】世界保健機関(WHO)は22日、新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)の治療指針を公表した。妊婦などの重症化しやすい患者への抗インフルエンザウイルス薬の早期投与を勧めている。

 WHOには20日現在、41か国から1万人を超える感染者の報告がある。治療指針は、このうち大半を占めるメキシコ、米国、カナダの症例を中心に解析した。

 感染者の約73%は30歳未満。症状は、通常の季節性インフルエンザに似ており、自然治癒するケースがほとんどだった。入院が必要になったのは、米国やカナダで約2~5%、メキシコで6%。米国の入院患者とメキシコでの死者の約半数は、ぜんそくや糖尿病などの慢性疾患があったり、妊娠中だったりして、重症化しやすい状態だった。

 指針では、こうした患者の重症化を防ぐため、タミフルやリレンザを早期に投与することを勧めている。

(読売新聞、2009年5月24日)

**** NHKニュース、2009年5月23日7時7分

WHO 感染患者治療の手引き

WHO=世界保健機関は、これまでに明らかになった新型インフルエンザの患者のデータを基に初めて治療の手引きをまとめ、慢性の病気がある人や妊娠中の女性など、重症になるおそれのある人には、早めにタミフルなどの抗ウイルス薬を与えることが有効であるなどとしています。

WHOは、今月20日までにメキシコで確認された新型インフルエンザの患者、3700人余りのデータを分析しました。それによりますと、死亡したのは全体の2%に当たる74人で、そのうちの半数近くは、ぜんそくや糖尿病など慢性の病気がある人や妊娠中の女性でした。また、メキシコでは、重症になった人の多くは肺炎から呼吸不全を起こしていて、アメリカに比べ、発症してから治療を受け始めるまでに長い時間がかかる傾向があったということです。WHOは、アメリカをはじめ世界各国のデータが数多く集まり、患者の症状の傾向が明らかになってきたとして、新型インフルエンザの治療の手引きを初めてまとめました。この中では、慢性の病気の人や妊娠中の女性など、重症になるおそれがある人には、早めにタミフルなどの抗ウイルス薬を与えることが有効であるとしています。その一方で、子どもが感染した場合、脳症になるおそれがあるとして、解熱剤の使用はできるだけ避けるよう求めています。WHOでは、今後も新たな情報が明らかになれば、手引きを随時見直していくことにしています。

(NHKニュース、2009年5月23日7時7分)

****** 読売新聞、2009年5月24日

簡易検査すり抜け3割 発症時期で差

…感染研など調査

 新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)かどうかの予備的な判定に多用されている簡易検査キットで、新型なのに「陰性」と誤判定される例が3割前後もあることが、国立感染症研究所(感染研)などの調査で明らかになった。発症からの時間経過によって体内のウイルス量が大きく変わるためで、量がピークになる発症翌日はほぼ問題ないが、発症当日、発症2日後の検査だと、4割前後がすり抜けていた。感染研は「陰性でも簡単に新型を否定すべきではない」と指摘。厚生労働省は時期を考慮して使うよう呼びかけている。

 キットは鼻の奥などから採取した粘液を試験紙にたらし、10~15分後の色の変化でA型(新型、香港型、ソ連型など)、B型のウイルスの有無がわかる。一般的にはキットでA陽性の時だけ、遺伝子検査(PCR検査)に回される。

 感染研によると、PCR検査で新型と確定した神戸市の患者43人のうち、20人(47%)は、キットでA陰性だった。大阪府の確定患者でも、23人中、7人(30%)がA陰性と誤判定。時期別に見ると、発症翌日は13%だが、発症当日と2日後は43%にのぼった。

 西神戸医療センター(神戸市)も独自に調査。確定患者29人中、7人(24%)が誤判定で、発症後24時間以内だと35%、24~48時間なら9%に減った。

 キットは20社以上が発売。どれも同様の特性がある。このため、発熱直後に新型を疑って医療機関に駆け込み、簡易検査が陰性でもあまり信頼できず、翌日に再検査するか、医師が症状などで判断することになる。

 厚労省新型インフルエンザ対策本部は「キットだけで判断は難しく、臨床医の判断に頼る所が大きい。迅速で確実な検出技術の開発が必要だ」としている。

(読売新聞、2009年5月24日)


新型インフルエンザは、いずれ数年後に季節性インフルエンザとなって誰でも罹患しうる病気です (日本感染

2009年05月22日 | 新型インフルエンザ

社団法人日本感染症学会緊急提言より引用

② 新型インフルエンザは、いずれ数年後に季節性インフルエンザとなって誰でも罹患しうる病気です

 今回のS-OIV(swine-origin influenza A H1N1)が出現・流行する以前のわが国では、来るべき新型インフルエンザでは高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)がいずれヒト-ヒト感染性を獲得して主役をなすという想定が支配的であったことや、数年前のSARSで被害が甚大であったことの影響から、どのようなものが出現しても新型インフルエンザは死亡率の高い感染症であり、可能な限り罹患を避けるべき疾患であると大多数の国民から思われてきました。しかし、過去のどの新型インフルエンザでも、出現して1~2年以内に25~50%、数年以内にはほぼ全ての国民が感染し、以後は通常の季節性インフルエンザになっていきます。現在流行している香港かぜもこのようにして季節性インフルエンザとなった歴史を持っており、今回のS-OIVもやがては新たなH1N1亜型のA型インフルエンザとして、10年から数十年間は流行を繰り返すと見込まれます。すなわち、今回の新型インフルエンザ(S-OIV)の罹患を避けることは難しいのです。例えば、1957年のアジアかぜ出現時、全国の保健所職員と家族を調査したところ、同年5月から7月の第1波で26%、9月から11月の第2波では30%が罹患したことが明らかにされています。アジアかぜの流行が始まってからわずか半年間に56%が罹患発病したのです。特に、小児では80~90%が罹患したことも分かっています。しかし、アジアかぜはその後通常の季節性インフルエンザとなり、1968年の香港かぜに代わるまで毎年流行しました。その香港かぜも最初は新型でしたが、今では季節性インフルエンザとなっています。

(以上、社団法人日本感染症学会緊急提言より引用)

****** 読売新聞、2009年5月21日

流行小規模でも油断禁物

…インフル対策、医師向けに緊急提言

 日本感染症学会は21日、医師や医療関係者向けに新型インフルエンザ対策の「緊急提言」を発表した。

 今後のまん延期に備え、各医療機関が準備を怠らないよう呼び掛けている。

 提言は8項目にまとめられ、「最初の流行が小規模に終わっても油断しない」「重症例は細菌性肺炎を併発しており、高齢者には肺炎球菌ワクチンの投与が有効」などと助言。このほか、「数年後に感染者は高齢者中心に移行する」「数年後にはほぼ全国民が感染し、季節性インフルエンザの一種となる」といった予測も盛り込んだ。 (読売新聞、2009年5月21日)

****** 毎日新聞、2009年5月22日

新型インフルエンザ:全医療機関で診察態勢必要

--感染症学会提言

 新型インフルエンザの発生を受けて日本感染症学会(理事長、岩本愛吉・東京大医科学研究所教授)は21日、国内の全医療機関が新型インフル患者の診察を行える態勢を取るよう求めた緊急提言を発表した。「まん延期には、通院患者からも新型インフルエンザの患者が多数出てくると予想され、診察を避けることはできない。すべての医療機関が対策を構築しないと、助かるべき多数の患者が助からない」と訴えている。

 提言では20世紀に起きた3度の新型インフルエンザの世界的大流行(パンデミック)で、国内ではいずれも2回の流行があったと指摘。国内の死者はスペイン風邪(1918年発生)で48万人、アジア風邪(57年発生)、香港風邪(68年発生)で4万~7万人と明記した。【関東晋慈】 (毎日新聞、2009年5月22日)

**** m3.com医療維新、2009年5月21日

新型インフルエンザ 日本感染症学会が緊急提言

「全医療機関が対策を行うべき」「国のガイドランは水際撃退作戦を想定したもの」と指摘

 日本感染症学会は5月21日、「一般医療機関における新型インフルエンザへの対応について」と題する緊急提言をまとめた(提言はこちら)。

 提言ではまず新型インフルエンザの臨床的重症度について、季節性インフルエンザと同程度とされるものの、CDC(米疾病対策センター)の報告を引用し、「今回の新型インフルエンザは、現時点でも軽症であるとは言い切れない」としている。CDCの報告では、4月15日から5月17日までの間に、米国カリフォルニア州では5%以上が入院し、その5分の1(全体の1%)はICUでの治療が必要になったとしている(CDCのホームページはこちら)。

 ただし、新型インフルエンザを恐れる必要はなく、まん延期にはすべての医療機関が対応するよう求めた。新型インフルエンザの内外の流行状況を踏まえ、「N95マスクやゴ ーグルなどを使用する必要はなく、サージカルマスクと手洗いを原則した感染防止策で臨めば問題ない」とした。

 さらに、厚生労働省の新型インフルエンザ対策ガイドラインを問題視しているのも特徴だ。「ガイドラインは、高病原性鳥インフルエンザを想定した、かつ水際撃退作戦を想定 した行政機関向けのものであり、まん延期では一般医療機関における対応は当然異なってしかるべき」とした。医療機関が「検疫で行われているような防護服に代表される対策を目の当たりにして、われわれの病院では新型インフルエンザ対策は困難なので、対応しない」と受け止めることを懸念。また、発熱相談センターや発熱外来は、「水際対策としては有効だが、患者が多数発生すれば対応しきれない。流行の各段階に応じて対応を変える実際的な方策が必要」と指摘している。 (m3.com医療維新、2009年5月21日)

**** NHKニュース、2009年5月22日9時57分

政府 柔軟な対応へ

政府は新型インフルエンザ対策本部を開き、患者の発生状況に応じて地域を2つに分け、急速な患者数の増加が見られる地域では、症状が軽い人の自宅療養や一般の医療機関での診療を認めるなど柔軟な対応をとることになりました。

会議の冒頭、麻生総理大臣は「感染の状況は地域によって偏りがある。急激に感染者が増えた一部の地域では、医療機関の対応に困難が生じているとも聞いている。地方自治体が地域の実情に即した柔軟な対応をとれるようにすることが重要だ」と述べました。そして、会議では国内での感染の動向を踏まえた新たな対処方針を決めました。この中では、新型インフルエンザの患者の多くは、症状が軽いまま回復しているなど季節性のインフルエンザと類似する点が多い一方、糖尿病やぜんそくなどの慢性の疾患を抱えている人を中心に症状が重くなることがあると指摘しており、国民生活や経済への影響を最小限に抑えるため、地域の実情に応じた柔軟な対応が必要だとしています。そのうえで、▽情報収集や国民への迅速で的確な情報提供を行うとしているほか、▽患者が出ている地域の人たちに外出の自粛は要請しないものの人込みをなるべく避け、手洗いやうがい、込み合った場所でのマスクの着用などを呼びかけるとしています。さらに、▽コンサートなどの集会やスポーツ大会などについては、一律に自粛の要請はせず、主催者側に感染の広がりを考慮して開催の必要性を検討してもらうなどとしています。一方、舛添厚生労働大臣は、対処方針に基づく具体的な「運用指針」を決めました。それによりますと、「急速な患者数の増加が見られる地域」と「患者の発生が少ない地域」の2つに分け、大阪府や兵庫県のように、急速な増加が見られる地域では、症状が軽い人は自宅での療養を認めるとしています。また、患者の診療については、指定医療機関の「発熱外来」だけでなく、入り口や時間帯をわけるなど、ほかの患者に感染しないよう最大の注意を払ったうえで、一般の医療機関でも認めるとしています。さらに、学校や保育施設については、季節性のインフルエンザと同様、患者が多く出ているところでは、それぞれの施設の判断で臨時休業や学級閉鎖などの措置をとるとしています。一方、患者の発生が少ない地域では、感染拡大の防止に重点を置くためこれまでと同じように患者は入院させ、感染が疑われる人の診療も「発熱外来」で行うとしています。また、児童・生徒が感染した場合は市区町村の一部や全部、場合によってはその都道府県全体で学校を臨時休業するよう要請し、状況を見ながら1週間単位で対応を検討するとしています。このほか、空港などでの水際対策は、事前にインフルエンザの症状が出ている乗客がいるという通報があった場合は、状況に応じて機内検疫を行うものの、それ以外は健康状態の把握に重点を置いた検疫に切り替え、患者の周辺に座っていた人たちの停留措置も行わないとしています。 (NHKニュース、2009年5月22日9時57分)

**** 読売新聞、2009年5月22日14時11分

一律機内検疫は終了、休校措置も緩和

…政府が新方針

 政府は22日午前、首相官邸で新型インフルエンザ対策本部(本部長・麻生首相)の会合を開き、新たな「基本的対処方針」を正式に決めた。

 全国一律の対応から、感染拡大の度合いに応じて地域ごとに二つの分類で対応する方針に転換し、患者急増地域では一般病院での診療や学級閉鎖などクラス単位での対応を認めるなど従来の対策を緩和した。米本土などからの旅客便で一律に実施してきた機内検疫は終了する。

 新たな対処方針は、今後の対策の目標を、〈1〉国民生活や経済への影響を最小限に抑えつつ感染拡大を防止する〈2〉基礎疾患のある人などの感染・重篤化を防ぐ――の2点とし、詳細な対応策は厚生労働相が定めた「運用指針」に盛り込んだ。具体的には、患者が少数の地域では感染拡大防止に重点を置き、従来の対策を踏襲する。感染者は全員を感染症指定医療機関に入院させ、濃厚接触者にもタミフルなどを予防投与する。学校・保育施設などの休校要請は市区町村単位とする。

 これに対し、急激に患者が増えている地域では、重症者や基礎疾患を持つなど重症化の恐れのある患者の治療を優先する。十分な病床を確保するため、一般の医療機関でも診療などを認め、軽症者の自宅療養もできるとした。休校も効果が薄いとして、患者がいる学校・保育施設単位で設置者が判断するとし、学級閉鎖も認める。個別の自治体をどちらの地域に区分するかは、都道府県などが厚労省と協議し、判断する。

 水際対策は大幅に縮小する。メキシコ、米本土、カナダからの旅客便を対象に一律に行ってきた機内検疫は22日午前で終了し、原則として空港内検疫に切り替える。 (読売新聞、2009年5月22日14時11分)

**** 朝日新聞、2009年5月22日13時36分

新型インフルに地域区分、休校は各校判断 

政府が新指針

 政府は22日、新型インフルエンザ対策本部の会合を首相官邸で開き、国内での感染拡大を踏まえ、対処方針を改定した。症状が季節性インフルエンザと似ていることから対応を弾力化。発生地域を拡大状況に応じて二つに分け、患者の急増地域では学校単位で臨時休校できるようにする。一般病院での受診や軽症患者の自宅療養も認める。機内検疫は原則取りやめ、水際対策は縮小する。

 新しい対処方針によると、新型インフルエンザでは、糖尿病やぜんそくなど基礎疾患を持つ人を中心に、症状が重くなって死亡する例があることを指摘。今後、国民生活や経済への影響を抑えながら、特に基礎疾患を持つ人への感染防止に重点を置き、「地域の実情に応じて柔軟に対応する必要がある」と明記した。

 具体策は、厚生労働省の運用指針で定めた。発生地域を(1)患者発生が少なく、感染拡大防止に努めるべき地域(2)患者が急増し、重症化の防止に重点を置くべき地域――に区分し、(1)の地域はほぼ従来通りの方針で対応するが、(2)の地域は対応を大幅に緩和する。厚労省と相談のうえ、都道府県などがどちらの地域とするか判断する。

 (2)の地域で、学校・保育施設に患者が多数発生した場合は、通常の季節性インフルエンザと同様、県や市など設置者の判断で臨時休校・休業措置をとれるようにする。塩谷文部科学相は22日の閣議後の記者会見で、学級閉鎖も「実情に応じてありえる」と述べた。修学旅行については「自粛を求める状況ではない」とも語った。

 対策本部で麻生首相は「自治体が地域の実情に即した柔軟な対応をとれるようにすることが重要。ただ、今回の新型インフルエンザの特性から、対策の基本は感染拡大を防ぐこと、基礎疾患のある方々の重篤化を防ぐことであることは忘れてはならない」と述べた。

 舛添厚労相は22日の閣議後の記者会見で、「感染初期の段階と(患者が急増した)大阪、兵庫は違う。きめの細かい対応の違いを示した。現場からの情報が一番貴重で、それが判断基準になる」と述べた。

(朝日新聞、2009年5月22日13時36分)

**** 朝日新聞、2009年5月22日3時2分

新型インフル、57年以前生まれには免疫? 

CDC見解

 【ワシントン=勝田敏彦】新型の豚インフルエンザの感染者に若い人が多いのは、1957年より前に生まれた人の一部には免疫があるためらしい。そんな見方を、米疾病対策センター(CDC)インフルエンザ対策部門のジャーニガン副部長が20日、会見で明らかにした。

 同副部長によると、スペイン風邪の流行が始まった1918年以降、世界で流行していたのはH1N1型。アジア風邪の流行が始まった57年以降、H2N2型が流行するようになった。

 今回の新型ウイルスは、57年まで流行していたウイルスとはかなり異なるが、H1N1型。中高年の人の血清を調べたら、今回の新型に対しても何らかの防御反応性があることがわかったという。

 中高年の人に何らかの免疫があるとすれば、新型対応ワクチンが使用可能になった場合、若い人を中心に接種していく方法も考えられる。

 一方、18日付のCDC報告によると、カリフォルニア州で入院した30人のうち、19人に何らかの持病があった。慢性の肺や心臓の病気、糖尿病などが多かったが、肥満も4人いた。米紙ワシントン・ポストによると、CDCの担当者は肥満の人もワクチンの優先接種者の候補にすることを検討しているという。

(朝日新聞、2009年5月22日3時2分)


妊娠している婦人もしくは授乳中の婦人に対しての新型インフルエンザ(H1N1)感染に対する対応 Q&A

2009年05月21日 | 新型インフルエンザ

新型インフルエンザ:妊婦は合併症危険 「抗ウイルス薬を」

****** 共同通信、2009年5月19日

妊産婦のインフル対応公表 

日本産科婦人科学会

 日本産科婦人科学会は20日までに、妊産婦が新型インフルエンザに感染した場合の対応をQ&A方式でまとめ、厚生労働省のホームページで公表した。

 通常の季節性インフルエンザでは、妊婦が感染すると肺炎などを起こす可能性があり、重症化すると胎児にも影響があり得ることを紹介。新型についてはデータが不足しているものの、季節性と同様の影響が推定されるとしている。

 このため、感染した場合は医師と相談の上で、治療薬のタミフルやリレンザを服用することを推奨。2007年の米疾病対策センター(CDC)の指針によると、これらの薬には、妊婦や出生した赤ちゃんに対する副作用の報告がないと解説している。

 薬を服用しながらの授乳も問題はないが、赤ちゃんへの感染を避けるため、頻繁な手洗いやマスクの着用を勧めている。

http://www.mhlw.go.jp/

(共同通信、2009年5月19日)

****** 毎日新聞、2009年5月19日

新型インフルエンザ:「妊婦はタミフルを」 

産科医会が一転、服用推奨

 日本産婦人科医会は19日、会員の開業医らに対し、妊婦や授乳中の女性が新型インフルエンザに感染した場合、治療薬のタミフルやリレンザの使用を勧める通知を出した。季節性インフルエンザでは安全性が確立されていないとして慎重な使用を呼び掛けていたが、一歩踏み込んだ。

 米疾病対策センター(CDC)は新型に感染した妊婦が重症化する恐れがあると指摘。死亡例も報告されているとして、服用を推奨した。このため、医会も有益性が確認できる場合は治療薬の使用をためらうべきではないと判断した。【江口一】

(毎日新聞、2009年5月19日)

****** 日本産科婦人科学会、お知らせ

妊娠している婦人もしくは授乳中の婦人に対しての
新型インフルエンザ(H1N1)感染に対する対応
Q&A (一般の方対象)

Q1: 妊娠している人は一般の妊娠していない人に比べて新型インフルエンザに感染した場合、症状が重くなるのでしょうか?
A1: 妊娠した女性が季節性インフルエンザ(通常のインフルエンザ)に感染すると症状が重くなり肺炎などを引き起こすことがあります。 重症化するとお腹の中の赤ちゃんにも悪影響が出ることがあります。新型インフルエンザに関してはまだデータが不十分ですが季節性インフルエンザと同様であると推定されています。

Q2: 妊娠している婦人に38℃以上の発熱と鼻汁や鼻がつまった症状、のどの痛み、咳などの症状が出た場合、どのようにすればよいでしょうか?
A2: 発熱外来を開設している病院(地域の保健所に連絡することによりわかります)への受診を勧めます。

Q3: 妊娠した女性が新型インフルエンザ感染が確認された場合の対応はどうしたらいいでしょうか?
A3: 米国では妊娠している女性に対して抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)の投与が勧められています。日本においても同様の処置を勧めています。医師と相談の上、抗インフルエンザ薬を使用するかどうか決めてください。

Q4: 妊娠した女性が新型インフルエンザ感染者と濃厚接触(ごく近くにいたり、閉ざされた部屋に同席した場合)した場合の対応はどうしたらいいでしょうか?
A4: 米国では抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)の投与が勧められています。日本においても濃厚接触した妊婦に説明同意を得た上で、それらの予防投与が勧められています。

Q5: 抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)はお腹の中の赤ちゃんに大きな異常を引き起こすことはないのでしょうか?
A5: 2007年の米国疾病予防局ガイドラインには「抗インフルエンザ薬を投与された妊婦および出生した赤ちゃんに有害な副作用(有害事象)の報告はない」との記載があります。

Q6: 抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)の予防投与(インフルエンザ発症前)と治療投与(インフルエンザ発症後)で投与量や投与期間に違いがあるのでしょうか?
A6: 米国疾病予防局の推奨(http://www.cdc.gov/h1n1flu/recommendations.htm)では以下のようになっていますので、日本でも同様な投与方法が推奨されています。
1.タミフルの場合
予防投与:75mg錠1日1錠(計75mg)、
治療のための投与:75mg錠1日2回(計150mg)5日間
なお、日本の2008年Drugs in Japanによれば、治療には上記量を5日間投与、予防には上記量を7日~10日間投与となっています。
2.リレンザの場合
予防投与:10mgを1日1回吸入(計10mg)、
治療のための投与:10mgを1日2回吸入(計20mg)
なお、日本の2008年Drugs in Japanによれば、治療には上記量を5日間吸入、予防には上記量を10日間吸入となっています。

Q7: 予防投与の場合、予防効果はどの程度持続するのでしょうか?
A7: タミフル、リレンザともに2008年Drugs in Japanによれば、これらを連続して服用している期間のみ予防効果ありとされています。

Q8: 予防投与した場合、健康保険は適応されるのでしょうか?
A8: 予防投与は原則として自己負担となりますが、自治体の判断で自己負担分が公費負担となる場合があります。

Q9: 抗ウィルス剤を服用しながら授乳することは可能でしょうか?
A9: 母乳自体による新型インフルエンザ感染の可能性は現在のところ知られていません。季節性インフルエンザでは母乳感染は極めてまれです。授乳期に抗ウィルス薬を使用する場合は、担当の医師と相談の上授乳を続けるかどうか決めてください。なお米国疾病予防局の推奨では抗ウィルス剤を服用しながら、赤ちゃんに授乳することは可能であるとされています。同時に赤ちゃんへの感染リスクを最小限にするため頻繁に手洗いしたりマスクをつけるなどの処置を必要とします。
 母児分離を行なうべきとの勧告は今のところなされていません。

平成21年5月19日

                   社団法人 日本産科婦人科学会

日本産科婦人科学会、お知らせ

****** 日本産婦人科医会、お知らせ

妊婦・授乳婦の新型インフルエンザに対する
タミフルとリレンザの使用について

         社団法人日本産婦人科医会
                  会 長 寺 尾 俊 彦

日本産婦人科医会支部長 殿
日本産婦人科医会会員 各位

 すでに、報道等でご存知の通り、兵庫県、大阪府域において新型インフルエンザの流行の兆しが見られており、妊産婦への感染事例も時間の問題であると思います。現時点では、厚労省のホームページに公表されている新型インフルエンザ対策ガイドラインに従って、冷静に行動していただきたいと思いますが、妊産婦に対しても同様な対応でお願いいたします。

 現在、本邦では抗インフルエンザウイルス薬としてタミフルとリレンザが2001 年2 月から保険適応になり、A 型B 型両方に、初期に効果があるとされています。

 これら薬剤の妊婦、産婦、授乳婦等への投与について、薬剤添付文書には、妊婦や、授乳婦に対する安全性が確立していないとの理由で、
(1) 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人に投与する場合には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
(2) 授乳婦に投与する場合には授乳を避けさせること。
とされています。
 しかし、実際に感染している妊婦や授乳婦を診る臨床の現場では、具体的な対策が必要になります。

 そこで、以下のような実際の対応をお願いいたします。

1. 妊婦や授乳婦が発熱症状で産婦人科を受診してきた時、鑑別診断として、腎盂炎や虫垂炎等のほかに、上気道症状を認めた場合は、インフルエンザの可能性を疑い、地域の保健所に設置されている発熱相談センターと相談したうえで、発熱外来を紹介して、新型インフルエンザに関する診断検査を依頼して下さい。

2. 発熱外来で、新型インフルエンザの診断が確定したら、妊婦や授乳婦に対して抗インフルエンザウイルス薬の処方を躊躇しないことです。

3. 妊婦は、インフルエンザに感染すると重篤化することがあるので、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合には、抗インフルエンザウイルス薬の使用をためらうべきではありません。

4. 授乳婦は、乳汁を介した新生児に対する副作用のエビデンスの報告はないので、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合には、抗インフルエンザウイルス薬の使用をためらうべきではありません。

5. 米国CDC(疾病対策センター)は抗インフルエンザウイルス薬の使用を妊婦や授乳婦に勧めています。

6. 従って、本邦においても妊婦や授乳婦の患者に説明同意を得た上で、タミフルまたはリレンザの投与をお勧めいたします。

参考資料:

妊婦への抗インフルエンザ薬投与に関してCDCからの報告

妊娠中の女性の新型インフルエンザ対策として、アメリカのCDC=疾病対策センターは、治療には抗ウイルス薬が有効だとしたうえで、感染の疑いがある人と接した場合にも抗ウイルス薬を予防的に服用することが必要だとする報告をまとめています。

アメリカのCDC=疾病対策センターの報告によると、「アメリカ国内で新型インフルエンザウイルスに感染したか、感染の疑いがある妊娠中の女性は今月10 日の時点で20 人に上り、3 人が入院した。このうち、喘息などを患っていた33 歳の女性は、抗ウイルス薬による治療を受けないでいたところ、容態が悪化し、赤ちゃんを出産したが、およそ2 週間後に女性は死亡した」とあり、このことから、CDCは、妊娠中の女性は、通常のインフルエンザと同様に新型のインフルエンザでも重症になるおそれがあり、喘息などの病気がある場合には、特にリスクが高いとしています。

CDC による抗ウイルス薬の勧め:
CDCは、妊娠中の女性に対する抗ウイルス薬 の効果や副作用について、情報は少ないが、新型のウイルスに感染したか、感染の疑いがある場合には、症状が出てから48 時間以内に抗ウイルス薬の投与を始め、5 日間続けるべきだとしています。さらに、感染の疑いがある人と接した場合にも、10 日間予防的に服用するべきだとしています。

日本産婦人科医会、お知らせ


新型インフルエンザ 国内対策切り替えに向けて検討を開始 厚生労働省

2009年05月20日 | 新型インフルエンザ

コメント(私見):

新型インフルエンザA(H1N1)の国内の感染確認者数は増え続けてます。

感染拡大が続く神戸市では、発熱外来がパンク状態となり、本日より一般の開業医でも治療を受け付けることになり、迅速診断キットでA型が確認されてもPCR検査は実施しないことになったそうです。

厚生労働省は、新型インフルエンザA(H1N1)の国内対策切り替えに向けて検討を始めており、近日中に感染症法上の扱いが季節性インフルエンザと同じ扱いとなる可能性もあるようです。

追記) 神戸市は新型インフルエンザの患者が急増しているので、独自の現実的対応として、新型インフルエンザと同じA型のウイルスが検出されてもPCR検査は実施しないと取り決めましたが、19時のNHKニュースによれば、迅速診断キットでインフルエンザA型が確認された患者については、できるだけ遺伝子検査を実施するように求める厚労省の方針が示されました。

**** NHKニュース、2009年5月20日19時15分

厚労省 遺伝子検査徹底求める

 神戸市や大阪府を中心に新型インフルエンザの感染が広がっていますが、厚生労働省は、感染が疑われるケースについては引き続きウイルスの遺伝子検査を徹底し、感染者の把握に最善を尽くすよう求めることにしています。

 厚生労働省新型インフルエンザ対策推進室の難波吉雄室長は、20日夕方の記者会見で「現在は感染の広がりや人数を把握すべき時期ととらえており、新型インフルエンザと同じA型のウイルスが検出された患者については、できるだけ遺伝子検査を行ってもらうのが国のスタンスだ」と述べ、引き続きウイルスの遺伝子検査を徹底するよう求めていく方針を示しました。そのうえで、難波室長は「感染症の指定病院ではない一般病院で感染の疑いがある患者が相次いだ場合など、検査態勢に課題があれば相談に応じたい」と述べ、国としても積極的に支援していく考えを示しました。

(NHKニュース、2009年5月20日19時15分)

****** 読売新聞、2009年5月20日

遺伝子検査の対象を限定、「まん延期」対応

…神戸市

 新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)の感染拡大を受けて、神戸市は19日、感染が疑われる患者全員のウイルスの遺伝子検査を行うこれまでの方針を転換して、特定の医療機関だけで定点観測的に遺伝子検査を行うことを決め、近く国との協議に入る。

 同市では、新型インフルエンザの感染者が69人に達しており、「状況はすでに『まん延期』に近い」として、20日から、発熱外来以外の一般医療機関でも診療を始める。今後、感染が疑われる患者が増えた場合、全員のウイルスを検査することは、物理的にも不可能と判断した。新型インフルエンザは弱毒性とされ、症状も通常の季節性インフルエンザと類似していることも考慮した。

 同市は今後、特定の医療機関を受診した患者についてだけウイルスの遺伝子検査を行い、感染を確認する。全体の感染者数は、定点観測の結果から推定する。

 一方、大阪府は19日夜、「簡易検査だけでは感染しているかどうか確認できず、疫学調査が行えない」として感染が疑われる患者全員のウイルスの遺伝子検査を継続することを明らかにした。

 厚生労働省は、神戸市の方針転換は事実確認中としながらも、「手間を考えると、発熱者すべてでウイルスの遺伝子検査を行うのは現実的ではない。ただ、一律な検査をやめると、どれだけ感染が拡大しているのか把握できなくなる恐れがある」と話している。

(読売新聞、2009年5月20日)

**** FNNニュース、2009年5月20日11時54分

新型インフルエンザ 新たに神戸市の1,400の開業医でも治療を受け付け

 新型インフルエンザの感染拡大が続く神戸市では、発熱外来がパンク状態になっていて、20日から新たにおよそ1,400の開業医でも治療を受け付けることになった。

 感染拡大が続く神戸市では、新たに21人の感染が確認され、これで神戸市の感染確認者数は86人にのぼった。

 新たな感染確認の中には、25歳の医療従事者も含まれているが、神戸市では、20日から開業医も治療を行う、まん延期に沿った対応が始まっている。

 20日から新たに新型インフルエンザの治療にかかわるのは、神戸市内のおよそ1,400の開業医。

 これまで感染が疑われる患者は、発熱外来のある9つの病院での診療だったが、感染拡大でパンク状態になったことから、神戸市は19日、医師会に協力を要請していた。

 発熱患者は、発熱相談センターや病院にまず電話して、症状が軽いと判断されれば開業医で、一方、重症患者はこれまで通り、専門の9つの病院で治療を受けることになり、センターにはひっきりなしに電話がかかっている。

 また治療を行う開業医も、一般の患者への院内感染を防ぐために、簡易の発熱外来をつくって入り口を分けるなど、ギリギリの対応を取っている。

 開業医は「今は立ち上がらないといけないと思っています。必ず電話はしてもらわないといけない。さまざまな病気を持った高齢者も来られておるんで、そこに発熱で感染の疑いがある人が来られたら、これは大変なことになる」と語った。

 また神戸市では、これまで行っていたPCR検査を終了することにしていて、新型インフルエンザがまん延していることを前提にした現実的な対応が進められている。

(FNNニュース、2009年5月20日11時54分)

**** 毎日新聞、東京朝刊、2009年5月20日

新型インフルエンザ:「機内検疫、即時中止を」 

専門家、治療方針転換迫る

 新型インフルエンザの国内対策切り替えに向け、舛添要一厚生労働相は19日、感染症の専門家4人から意見聴取した。感染症法上の扱いを季節性インフルエンザと同じにすることや、機内検疫の即時中止など、根本的な方針転換を迫る声が相次いだ。

 4人は厚労相のアドバイザーの立場。新型インフルエンザ患者の治療にあたっている神戸大大学院の岩田健太郎教授は「軽症であれば、インフルエンザは自然に治る病気。重症度を無視して一律の医療サービスを提供するのは理にかなっていない」と、問題点を指摘。その上で「自然に治る病気に入れ込み、命にかかわる心筋梗塞(こうそく)などの治療がおざなりになるのは本末転倒だ」と訴えた。

 自治医大病院の森澤雄司・感染制御部長は「一日も早く感染症法上の『新型インフルエンザ』の類型指定から外して季節性と同じ扱いにし、行動計画を新しく作っていくことが必要」と指摘した。

 森兼啓太・国立感染症研究所主任研究官は、縮小される機内検疫について「国内で広がっている中では意味がない。医療現場に医師を戻すべきだ」と、機内検疫の即時中止を訴えた。【奥山智己】

(毎日新聞、東京朝刊、2009年5月20日)

**** FNNニュース、2009年5月20日0時19分

全国的にA型インフルエンザの感染例増加 

新型が潜在的に混じっていると指摘する声も

 新型インフルエンザの感染者増加を受け、対策の国内シフトが進んでいる。こうした中、全国的にA型インフルエンザの感染例が増加しており、新型が潜在的に混じっていることを指摘する声もある。

 舛添厚労相は「当然、国内にもうウイルスがまん延しているというのを想定していいですね」と述べた。

 感染拡大への懸念。こうした中、気になる現象が現れている。

 それは、季節性インフルエンザの流行。

 東京・江戸川区にある「みやのこどもクリニック」の宮野孝一院長は「5月は(インフルエンザ患者が)ほとんどいなかったはずです、去年は。先週が12~13人ですね、1週間に。新規のインフルエンザ」と話した。

 季節性インフルエンザの流行期間は、例年12月から4月ごろまでだが、2009年はなぜか、流行が長引いているという。

 宮野院長は「4月の上旬、中旬ごろから、徐々にまた増えてきているというのが現状で、ほとんどがA型というのが特徴です。非常に不気味な感じはします」と語った。

 新型インフルエンザと同じA型の流行。

 国立感染症研究所が全国5,000カ所の定点医療機関を対象に行っている集計でも、4月下旬の発生件数は、過去5年間の平均値を上回っている。

 これは、いったい何を意味するのか。

 東京医科大学の松本哲哉主任教授は「検査なしでは新型なのか、いわゆる季節性のものなのか、判別は難しいと。精密検査されてませんから、そういうことは確定はできませんけど、そういう人が中に紛れ込んでたとしても、それはもう全然おかしくない」と指摘した。

 当初、海外渡航歴のある患者に対して行われていた遺伝子レベルでの検査。

 一方、初めての国内感染は、渡航歴のない高校生を診察した開業医が、検体を兵庫・神戸市に提出したことで判明した。

 開業医が季節性インフルエンザと思って検体を提出しなければ、発見が遅れた可能性もある。

 松本主任教授は「新型インフルエンザが都内に現時点で持ち込まれている可能性は、かなり高いと思います。気づかないまま、やっぱり同じようなことが東京でも繰り返されるかもしれないし。今の時点でA型がもし出たとしたら、それはやはり積極的に疑って、検査をやられる方がいいと思いますよね」と語った。

 水面下でまん延しているかもしれない新型インフルエンザ。

 冷静かつ十分な注意が必要となる。

(FNNニュース、2009年5月20日0時19分)

**** NHKニュース、2009年5月20日12時23分

国内の感染確認 236人に

 国内で新型インフルエンザの感染が確認された人の数は、20日、新たに滋賀県で1人が確認され、大阪府と兵庫県、滋賀県であわせて236人になりました。

 新型インフルエンザの感染が確認された人は、20日、新たに滋賀県大津市で23歳の男性の感染が確認されたほか、兵庫県では、神戸市内の病院で事務作業を担当する職員など、あわせて21人の感染が新たに確認されました。また、大阪府内では、大阪市の中学校に通う1年生の男子生徒とその母親など、あわせて21人の感染が確認されました。これで、今月16日からこれまでに感染が確認された人は、兵庫県で132人、大阪府で99人、滋賀県で1人で、今月上旬に成田空港の検疫で確認された高校生など4人をあわせると、国内の感染者は236人になりました。このうち、兵庫県では、神戸市を中心に姫路市や北部の豊岡市、それに阪神地域などのあわせて16の市と町で、大阪府では、北部の高槻市や豊中市、大阪市、それに東部の八尾市など10の市と町で、滋賀県では、大津市で感染が確認されています。また、年代別では、幼児から60代の人まで幅広い年代に感染が広がっていますが、中でも高校生を中心に10代の感染者が圧倒的に多くなっています。

(NHKニュース、2009年5月20日12時23分)

**** NHKニュース、2009年5月20日13時9分

世界の感染確認 1万人余りに

 新型インフルエンザに感染した人は、20日、台湾で初めて1人の感染が確認されるなど世界全体で1万人余りとなり、死亡した人もメキシコで4人、アメリカで1人増えて、あわせて83人となっています。

 台湾の衛生当局は、20日午前、記者会見し、外国籍の52歳の男性1人が新型インフルエンザに感染していることが確認されたと発表しました。これにより、世界全体で新型インフルエンザに感染した人は日本を含む43の国と地域で、あわせて1万359人に上っています。また、感染によって死亡した人は19日、メキシコで、4人増えたほか、アメリカでも、ミズーリ州で男性1人の死亡が確認され、▽メキシコで74人▽アメリカで7人▽カナダとコスタリカでそれぞれ1人の、あわせて83人となっています。感染した人の数を国や地域ごとにみますと、▽アメリカで5469人▽メキシコで3734人、▽カナダで496人、▽日本で236人、▽イギリスで107人、▽スペインで103人、▽パナマで59人、▽フランスで16人、▽ドイツで14人、▽コロンビアで12人、▽コスタリカとチリで10人、▽イタリアとニュージーランドで9人、▽ブラジルで8人、▽イスラエルで7人、▽エルサルバドルで6人▽ベルギーで5人、▽韓国、中国で4人、▽香港、オランダ、スウェーデン、キューバ、グアテマラ、ペルーで3人、▽タイ、マレーシア、ノルウェー、フィンランド、ポーランド、トルコで2人、▽台湾、インド、オーストラリア、ポルトガル、スイス、オーストリア、アイルランド、デンマーク、ギリシャ、アルゼンチン、エクアドルでそれぞれ1人となっています。

(NHKニュース、2009年5月20日6時6分)

**** m3.com医療維新、2009年5月19日

「症例定義」の早急な見直しが必要

「感染症ではスピーディーな対応が重要」と強調:

5月19日感染研会見

橋本佳子(m3.com編集長)

 「症例定義を早急に見直すことが必要であり、現在、厚生労働省に提案している」。

 国立感染症研究所感染症情報センター長の岡部信彦氏は、5月19日午後3時から開かれた会見(メディア情報交換会)で、現状を踏まえた柔軟かつ迅速な対応の必要性を強調した。

 4月29日に定められた新型インフルエンザの「症例定義」(5月9日に追加の事務連絡)では、疑似症患者の条件の一つに、「まん延国への渡航歴」を含めている。岡部氏は厚労省への提案の内容は明らかにしなかったものの、「渡航歴を外すことについてはほぼ合意が得られている」としたほか、(1)神戸や大阪で行われている積極的疫学調査で得られたデータ(患者の感染ルートや臨床データなど)を加味する、(2)検査体制の見直し、の2点を見直しのポイントとして挙げた。

 現在、PCR法などで新型インフルエンザの確定診断を行っている。この「検査体制の見直し」とは、まん延地域などでは全例PCR法での検査を行わないという考えだ。迅速診断キットだけでは、A型陽性であっても、ソ連型、香港型、そして新型インフルエンザA(H1N1)のいずれに該当するかは区別できないが、「まん延期になれば、臨床的には区別する必要はない」(岡部氏)。

 国の新型インフルエンザ対策行動計画では、第1 段階(海外発生期)、第2段階(国内発生早期)、第3段階(感染拡大期/まん延期/回復期)、第4段階(小康期)に分かれている。現在の第2段階での対策には批判が出ており、見直しの余地があるものの、積極的疫学調査を行ったり、感染疑いのある患者を発熱外来に集約するなどの対策は、感染拡大を遅らせると同時に、「新型」のインフルエンザに関する知見を蓄積する時期に当たる。岡部氏のコメントは、まん延期では第2段階までの知見を基に対応することを意味するものでもある。

 ただし、岡部氏は、「季節性インフルエンザでも、1シーズンの死亡者は1万人以上に上る。また新型インフルエンザの場合、免疫がないために感染者数は多数になるため、死亡率は同じであっても、死亡者数の絶対数は多くなる」と釘を刺し、「季節性インフルエンザに近い病原性の新型インフルエンザ」であっても注意が必要だとした。

 さらに、「今の行政の対応は、アクションを切り替えるのに時間がかかっている。慎重さが求められるものの、感染症対策では早い判断が求められる」と岡部氏は述べ、日々刻々と変わる感染動向を踏まえた柔軟かつ迅速な対応の必要性を強調した。

 【記者団からの質問と岡部氏の回答】

質問:今日開催された舛添要一・厚生労働大臣とアドバイザリーボードとの話し合いでは、新型インフルエンザを感染症法上の2類感染症の指定から早く外すべきだという意見が出た。指定から外す基準は何か。
回答:結局、(感染拡大期→まん延期→回復期と3つに分かれている)第3段階のうち感染拡大期が一番決めにくい部分だと思う。まん延期に入ったら隔離入院などをしても意味がなく、隔離しないのであれば2類感染症の指定から外した方がいいというのが一つ。また、患者一人ひとりを追跡するのであれば、全員検査、登録などをすることになるが、何千人、何万人の患者について追跡するよりは、そのエネルギーを効率よく他に使った方がいい。したがって、制度として2類感染症でない方がいいだろう。また、今回のように感染拡大期のスピードが速ければ、早く外した方がいいだろう。
 ただし、2類感染症の指定から外す基準はない。したがって、一つは感染が広がっている、つまり患者の接触歴が追えない状態、そのほか感染が広がって隔離用ベッドが満床になった状態、保健所の職員が手一杯になった状態などが、見極めのポイントになる。ただ、ベッドが満床になった時点で外したのでは遅く、そのすぐ手前でやる必要がある。なかなかスピードのあるアクションが取れないのも一つの問題だと思う。
 また例えば、大阪で2類感染症の指定から外す段階になっても、他の地域で一例もいない地域で指定を外すことは監視の目が緩むことになり、気づいたら「インフルエンザだらけ」になるという問題があり、対応は自治体間で差が出てくることになる。しがたって、法律で一律にするのはどうか。

質問:積極的疫学調査を大阪などで今、実施する意味について。
回答:一つは現状を把握して、対策を立てる意味がある。もう一つは、データの蓄積などをせずに、「患者が増加したから、積極的疫学調査をやめる」となったら、ニューイングランド・ジャーナル・オブメディシン(NEJM)、ランセット(Lancet)などを引用して対応することになる。日本にこれだけの感染者がいるのに、情報を発しなかったら、「ただ大騒ぎして、やめました」となる。対策とは別に、科学的な検証が必要であり、その意味での積極的疫学的調査は必要。

(m3.com医療維新、2009年5月19日)


静岡県立こども病院 「配置転換は不当」 病院機構を提訴

2009年05月20日 | 地域周産期医療

静岡県立こども病院NICU 新規患者は静岡市内のみ受け入れを継続

静岡県立こども病院NICU、新規患者の受け入れを休止

****** 産経新聞、静岡、2009年5月19日

「配置転換は不当」 病院機構を提訴

 静岡県立こども病院(静岡市葵区)で医師不足のため新生児集中治療室(NICU)の新規患者受け入れが制限されている問題をめぐり、病院から不当な退職勧奨や配置転換命令を受けたとして、前新生児未熟児科長の男性が18日、院長と運営する県立病院機構を相手取り、慰謝料550万円の損害賠償などを求める訴えを静岡地裁に起こした。

 訴状などによると、男性が4月1日付で、同科から実体のない新規ポストに不当に配置転換されたことから、病院に不信感を抱いた医師らが相次いで辞職。事態が予想できたにもかかわらず、県中部の新生児未熟児医療の崩壊を招いたとして、配転命令は無効と主張している。

 また、男性は訴状で昨年11月以降、院長が県内の小児科医109人に「(男性が)辞めると公言しており、希望をかなえさせます」と事実と異なるメールを送ったことなども指摘した。「不当な退職勧奨を繰り返し受け、鬱病(うつびょう)を罹患(りかん)するなど精神的苦痛を受けた」とも訴えている。男性は現在、休職中という。

 こども病院は、高度な周産期医療を提供する県中部唯一の医療機関だが、医師の減少でNICUの新規患者受け入れを静岡市内に限定している。県は、ほかの地域の患者は順天堂大付属静岡病院(伊豆の国市)と聖隷浜松病院(浜松市)に対応を要請し、「6、7月をめどに医師を確保したい」としている。

 この日、会見した原告側の家本誠弁護士は「長年地域の新生児医療に貢献してきた原告に対して、信じられない対応」と話した。

 県立病院機構は「訴状を見ていないのでコメントできないが、適切に対応したい」としている。

(産経新聞、静岡、2009年5月19日)

****** 毎日新聞、静岡、2009年5月19日

提訴:こども病院の前科長が病院提訴 

「不当に退職迫られた」

 静岡市葵区の県立こども病院新生児未熟児科の前科長が不当に退職を迫られ、精神的な苦痛を受けたなどとして、同病院の院長と、病院を運営する独立行政法人県立病院機構を相手取り、550万円の損害賠償を求める訴訟を18日、静岡地裁に起こした。

 訴状によると、前科長は08年11月ごろから院長に「院内外からのクレームが多い」などと言われ、退職を繰り返し迫られた。固辞したが、今年4月1日付で県立総合病院(同市葵区)に異動させられたとしている。こども病院と県立病院機構は「訴状を見ておらず、コメントできない」としている。【山田毅】

(毎日新聞、静岡、2009年5月19日)

****** 毎日新聞、静岡、2009年4月24日

損賠訴訟:こども病院の前科長が提訴へ 院長らに慰謝料求め

 県立こども病院(静岡市葵区)の新生児未熟児科の前科長が、不当に退職を迫られたなどとして、院長と、同病院を運営する地方独立行政法人県立病院機構を相手取り、慰謝料などを求める損害賠償請求を静岡地裁に起こすことが23日わかった。県など関係者の説明では、こども病院では、前科長らと病院側が対立。担当医が相次いで辞め、新生児集中治療室(NICU)の新規受け入れを一時、中止する事態に発展した。 【山田毅】

(毎日新聞、静岡、2009年4月24日)

****** 静岡新聞、2009年4月22日

こども病院NICU新患制限 院長が経緯説明

 静岡市内の主要11病院の院長、事務長が集まる公的病院協議会が21日、同市葵区の県立総合病院で開かれた。県立こども病院(同区)の吉田隆実院長が、新生児集中治療室(NICU)が新規患者の制限に至った経緯を説明した。

 吉田院長は「心配、ご迷惑を掛け、おわび申し上げる」と述べ、NICUを担当する新生児未熟児科の常勤医が2人に減員する事態に陥ったことを報告した。院内から医師3人を新たにNICUに配置して5人体制としたものの、当面の受け入れは静岡市内の患者にとどめる方針を説明。「何とか1000グラム以上の子供は他の病院で診るようお願いしたい」などと他病院の理解と協力を求めた。

 今回の対応については「あくまで暫定的」とし、NICUの完全再開に向けて「2カ月の間に医師を確保したい」と述べた。

(静岡新聞、2009年4月22日)

****** 静岡新聞、2009年4月21日

こども病院NICUが5人体制に 院内で3医師確保

 県立こども病院が新生児集中治療室(NICU)の新規患者を制限している問題で、同病院がNICUを担当する新生児未熟児科の医師をこれまでの常勤医2人体制から5人体制に拡充したことが20日分かった。院内で3人の医師を確保して配置した。

 ただ、新患の受け入れ範囲は引き続き静岡市内の患者にとどめる。同病院は6月をめどとしたNICUの再構築に向け、医師確保の努力を継続する。

 新たに配置した3人はほかの診療科の男性医師と男性研修医2人。いずれもNICUの経験があるといい、研修医2人については正規採用した。常勤医2人の負担を軽減し、当直体制を充実できる。

 新生児未熟児科は3月末時点で常勤医4人、研修医3人だったが、人事異動をめぐる混乱で退職意向を示す医師が相次ぎ、現在は常勤医2人体制となっている。このため同病院は当面、院内で支援する方針を示していた。

(静岡新聞、2009年4月21日)


新型インフルエンザ: 政府の対策をより柔軟な内容に見直すことも検討 (舛添厚労相)

2009年05月19日 | 新型インフルエンザ

コメント(私見):

関西地域で新型インフルエンザ感染が多く確認されていますが、これは迅速診断キットでA型陽性の検体に対して積極的にPCR検査を実施し始めたからです。今までは迅速診断キットでA型陽性であっても、メキシコ、アメリカ、カナダなどへの渡航歴がなければ、通常の季節性インフルエンザとして扱われてました。今回は、たまたま神戸市内の開業の先生が迅速診断キットでA型陽性となった(海外渡航歴のない患者さんの)検体をPCR検査に提出したことを契機にして、新型インフルエンザが同地域ですでに蔓延していた事実が判明しました。

迅速診断キットでA型陽性の患者さんは、日本全国いたるところに大勢いらっしゃいますから、それらの検体をかたっぱしからPCR検査に提出すれば、もしかしたら、新型インフルエンザが蔓延している地域が関西地域以外でも判明するかもしれません。今後、新型インフルエンザが全国的に蔓延するような事態となった場合には、ウイルスの毒性や患者数などを勘案して、診療体制の変更を検討せざるを得ないかもしれません。

**** NHKニュース、2009年5月18日19時21分

厚労相“政府対策 見直しも”

 舛添厚生労働大臣は18日夕方、記者会見し、新型インフルエンザについて、政府の専門家諮問委員会から季節性のものと変わらないという報告があったことを受けて、政府の対策をより柔軟な内容に見直すことも検討したいという考えを示したうえで、国民に対し冷静に対応するよう呼びかけました。

 この中で、舛添厚生労働大臣は「政府の対策本部で、専門家諮問委員会から『今回の新型インフルエンザは感染力や病原性などからみて、季節性のものと変わらない』という報告があった。ただ、免疫がないため感染が拡大しやすく、糖尿病などの慢性疾患を持っている人は症状が重くなりやすいので、油断なく対策を進めていくことが重要だ」と述べました。そのうえで、舛添大臣は「政府として1週間の臨時休校の期間に専門家諮問委員会の評価を踏まえ対策の切り替えを検討していきたい。新型インフルエンザに即した新しい対処方針を作ることも選択肢の1つだ」と述べ、政府の対策をより柔軟な内容に見直すことも検討したいという考えを示しました。さらに、舛添大臣は「人的資源を検疫態勢に集中することから国内体制にシフトすることが必要だ。今週中に具体策を決めたい」と述べ、これまで重点を置いてきた水際対策を段階的に縮小する考えを示しました。そして、舛添大臣は「国民の生命と健康を守るため、あらゆる方策を尽くす。国民の皆さんは警戒を怠ることなく、冷静に対応してほしい」と呼びかけました。

(NHKニュース、2009年5月18日19時21分)

**** NHKニュース、2009年5月19日6時34分

検疫態勢 段階的縮小を検討

 新型インフルエンザの国内での感染が相次いでいることを受けて厚生労働省は、感染者の入国を防ぐために強化していた検疫態勢を段階的に縮小し、通常の態勢に戻すことを検討しています。

 厚生労働省は、WHO=世界保健機関が警戒レベルをフェーズ4に引き上げた先月28日以降、新型インフルエンザに感染した人の入国を防ぐために通常の2倍以上の態勢で検疫を強化してきました。具体的には、メキシコ・アメリカ本土・カナダからの到着便を対象に「機内検疫」を行う成田・関西・中部の3つの空港の検疫所に防衛省や国立病院機構などからあわせておよそ200人の応援の職員を派遣してきました。しかし、兵庫県や大阪府で海外への最近の渡航歴がない人の感染が相次いだことを受けて、厚生労働省は、国内での感染拡大の防止に重点を移す必要があるとして、検疫態勢を段階的に縮小し、通常の態勢に戻すことを検討しています。厚生労働省は、今週中にも関係省庁と協議して検疫での具体的な対応を決めることにしています。

(NHKニュース、2009年5月19日6時34分)

**** NHKニュース、2009年5月19日0時25分

感染者 国内で163人確認

 国内で確認された新型インフルエンザの感染者は、兵庫県姫路市に住む高校生1人の感染が新たに確認されこれまでに163人になりました。10代の感染者が多い一方で、5歳の幼児や50代や60代の人もいて、幅広い年代に感染が広がっています。

 都道府県別に見ますと、兵庫県が93人で神戸市の県立高校の生徒やその家族をはじめ、姫路市に住む高校生1人の感染が新たに確認され、神戸市以外の高校の生徒や豊岡市の会社員などにも感染が広がっています。また、大阪府では、茨木市にある私立高校の生徒や教員、大阪市や茨木市の高校の生徒など、感染者はあわせて66人となっています。このほか今月上旬に成田空港の検疫で見つかった4人を加えると、国内で確認された新型インフルエンザの感染者はあわせて163人になりました。年代別に見ますと、高校生を中心に10代の感染者が多い一方で、5歳の幼児や50代や60代の人もいて、幅広い年代に感染が広がっています。

(NHKニュース、2009年5月19日0時25分)

**** m3.com医療維新、2009年5月18日

国は水際対策の誤りを認めるべき

-厚労省検疫官・木村盛世氏に聞く

国が取るべき対策はシンプル、

医療機関は通常対応でも問題なし

木村盛世氏 筑波大学医学群卒業。米国ジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生大学院疫学部修士課程修了(MPH[;公衆衛生学修士号)。内科医として勤務後、米国CDC多施設研究プロジェクトコーディネーター、財団法人結核予防会、厚労省大臣官房統計情報部を経て、厚労省検疫官。専門は感染症疫学。

聞き手・橋本佳子(m3.com編集長)

 新型インフルエンザは、国内での2次感染例が相次いだことで、「水際対策」は奏功しなかったことが露呈した。国の対応は、「国内発生早期」に移ったが、この対策にも問題点があるという。現時点で行政および医療機関が取るべき対策について厚生労働省検疫官(東京空港検疫所支所・検疫医療専門職)で、医師の木村盛世氏に聞いた(2009年5月17日にインタビュー。

――国内で2次感染例が相次いだことをどう見ていますか。

 今回はたまたま開業医の先生が、迅速診断キットでA型陽性の患者のPCR検査を依頼して見付かったわけで、それ以外にもたくさん感染者はいると思います。実際、インフルエンザの定点観測では、今回2次感染が見られた中で、患者数がやや多かった地域もあると聞いています。こうした定点観測の動向把握に力を入れるべきだったのに、これまで国は「検疫オンリー」でやっていました。私は繰り返し言っていますが、インフルエンザの場合、水際対策は無理なのです。

 米国でも検査を始めたから、あれだけ患者数が増えているわけです。日本も同様に、検査を実施すれば、もっと新型インフルエンザの患者は見付かるでしょう。

――今までは、渡航歴がある、あるいは渡航歴のある人と濃厚接触した人などに限って、PCR検査を実施していた。それ以外のインフルエンザ様の患者でも、PCR検査を実施していれば、新型インフルエンザであった可能性があるわけですね。では現在、季節性のインフルエンザの流行もある中、今後はどんな体制にすべきなのでしょうか。国の新型インフルエンザ対策の第2段階、「国内発生早期」では、「感染の疑いのある例についてはすべて検査をする」となっています。しかし、迅速診断キットの在庫は十分とは言えません。衛生研究所も対応可能なのでしょうか。

 本来ならすべての疑い患者に検査すべきでしょうが、それは無駄ではないでしょうか。疫学的見地から言えば、本当は新しい疾患が出た場合には、サーベイランスを徹底したいところです。しかし、今の政府のパニック状態を考えるとサーベイランスだけに労力が費やされ実際の医療現場に手が回らないという状況を生むのではないでしょうか。今後はサーベイランスにお金と人をかけると、「感染者を発見したのはいいけれど、そのあとどうしたらよいか分からない」という状況にもなりかねません。

 感染症対策を考える上で基本になるのが結核対策ですが、結核の場合は発見率と治癒率を指標として見ます。両方を向上させることが一番いいのは確かですが、多くの国においては、「ヒトとカネ」がありませんから、実際には両方はできません。優先すべきは明らかで、治癒率の向上です。

 日本は結核患者も多い「感染症の発展途上国」。ですから、サーベイランスに命をかけても仕方がないと思います。物事の優先順位を決めることこそが、政策の役割でしょう。結核とインフルエンザを同じに考えることはできませんが、すべてできないのなら、何らかの対策を「捨てる勇気」が必要です。今回では、そもそも機能していないサーベイランスを徹底するのではなく医療機関対策を第一義とすべきです。

――では治療のあり方ですが、「国内発生早期」では、「発熱や咳などのインフルエンザ様症状が見られた場合には、まず発熱相談センターに相談の上、発熱外来を受診する」となっています。

 発熱外来で対応できるのでしょうか。それだけの予算が付いているわけでもありません。

 今、国がやることは、「新型インフルエンザ対策行動計画は間違っている」、少なくても今回の新型インフルエンザA(H1N1)には適用すべきではなかったと認めることではないでしょうか。また、H5N1型であっても、インフルエンザの「封じ込め」については難しいのではないでしょうか。

 咳エチケットを徹底して、発熱や咳がひどい時には学校や会社を休む、具合が悪かったら自宅で静養する、それでもどうしても具合が悪かったら、「ここの病院に行ってください」、こうしたことを国は繰り返し国民に訴えればいいだけです。今やるべき対策は非常にシンプルです。 

 また発熱外来も、3次救急、あるいは高次の医療を手がける地域の中核医療機関の場合、抗がん剤で治療中だったり、白血病など、免疫力が低下した患者さんが多いですから、こうした医療機関に設置を求めるのはやめた方がいいと思います。「発熱外来」は、地域と地元の医師会が話し合い、どこに設置すべきかを決めてほしいと思います。

――季節性インフルエンザと同じ対応では、問題があるのでしょうか。

 本来は同じで構わないと思います。ただ、社会的な問題になっている現状を踏まえると、「発熱外来」の設置は、国民の安心の意味でも必要なのだと思います。ですから、国は「何かあったら、発熱相談センター、発熱外来」へと、柔らかい口調で言えばいいだけのことだと思います。 

――発熱外来を持たない医療機関が対応しても問題はないと。

 問題はないと思います。これまで季節性のインフルエンザの診療を行ってきたわけです。しかも、今のH1N1型の場合、SARSのように重篤な肺炎を来す患者が続出するわけではありません。

 本当に、今回は弱毒型のH1N1型での模擬訓練だったと思います。検疫には意味がなかった、では国内対策として何をすればいいのか、ワクチンが完成した場合にどのように流通させ、誰に優先的に接種するのか、副反応の問題はいかに周知徹底するのか、発熱を来した場合にはどう対応すれば、いいのかなどを考えるいい機会にはなったのではないでしょうか。サーベイランスの機能も十分でないのでこれに関しても第二波までに十分議論すべき問題ですが。

(m3.com医療維新、2009年5月18日)

**** m3.com医療維新、2009年5月18日

疫学的リンクが切れたら通常の診療体制に

「地域別の対応が基本」を強調

:5月17日感染研会見

橋本佳子(m3.com編集長)

 国立感染症研究所感染症情報センター長の岡部信彦氏は、5月17日午後6時から開かれた会見(メディア情報交換会)で、5月16日に政府の新型インフルエンザ対策本部専門家諮問委員会がまとめた「基本的対策方針」について説明した。16日に神戸・大阪で国内での2次感染が確認されたことから、国の対策が「第2段階(国内発生早期)」に移行したのを踏まえ、「ゼロには抑えることはできないが、当面として感染拡大をさらに防ぐことが必要」と強調。

 その上で、「医療機関の対応としては、軽症・重症を問わず、すべて検査を行い、感染が強く疑われた場合には措置入院とする、となっている。ただし、どんな患者を措置入院の患者の対象とするかは地域によって異なり、全国一律の実施はできない。バラバラと関係ない地域で発生している場合、隔離入院は意味がない。一方、初めてある地域で発生した場合には、軽症か重症かを問わず、隔離入院の対象になるだろう。さらに、隔離入院のためのベッド数は限られており、現実には入院できない場合もある」と述べた。

 さらに「第3段階(まん延期)」の医療体制については、「すべての医療機関が、新型インフルエンザの治療に対応することになる。ただし、多くの患者が一般の医療機関に殺到した場合、それ以外の一般の患者が感染する可能性が高まる。地域の医療システムや人口などを勘案して、例えば医師会の休日診療センターが外来患者、軽症者を扱い、病院が重症者を診るなどの体制を考えてほしい」と説明、地域の実情に応じて体制を取る必要性を強調した。つまり、第3段階では患者数などを勘案して、新型インフルエンザの患者を重点的に診る拠点は作る必要があるものの、基本的には季節性インフルエンザの診療体制を取ることになる。

 この第3段階への移行は、「疫学的リンク」が切れた場合、つまり感染源の特定が不可能になり、地域で感染が拡大した場合に行う。この移行も、全国一律ではなく、都道府県単位が基本だ。「北海道から沖縄まですべて同一に、第3段階にスイッチするわけではない。したがって、地域の方にも、その地域の情報は自治体に聞いてほしい、ということを徹底する必要がある」(岡部氏)。

 また抗インフルエンザウイルス薬については、第2段階では濃厚接触者などに対して予防的に投与するものの、第3段階では治療薬としての使用を優先するため、予防投薬は基本的には行わないとした。

 【記者団からの質問と岡部氏の回答】

◆診療体制について

質問:第3段階の医療体制は、季節性インフルエンザの場合と基本的には同じだと考えていいのか。
回答:基本的には同じ。ただ患者が多数出た場合に、患者がバラバラに各病院を受診したのでは、スタッフが外来に取られてしまい、病棟の入院患者を診ることができなくなる。だから専門外来を設けるほか、例えば休日診療所などで患者をまとめて診る体制にし、地域の医師が交代で診療することなども考えられる。しかし、これは一つのアイデアであって、地域によっては体制は異なってくるだろう。

質問:第3段階への移行は、どんなタイミングで行うのか。
回答:地域によって異なる。一つは、疫学的リンクが切れた場合。また物理的な問題があり、軽症・重症患者すべてを措置入院させた場合、地域によって対応可能なベッド数が異なる。したがって、数で第3段階に移行する基準を「措置入院患者が20人以上、あるいは100人以上になった場合」などと一律に区切ることはできず、自治体の判断になる。

質問:神戸で最初に生徒を診察した医師に、厚労省は休診するように言ったそうだが。
回答:私は聞いていない。ただ、こうした場合の考え方についてはお話できる。休診する必要は全くないと思う。SARSの時は初期の段階では、休んだ方がいいだろうとなっていた。それは病気の状況も分からず、致死率(約10%)は高いと考えられたため。しかし、今回の場合は、その時の接触の程度にもよるが、通常の季節性インフルエンザとほぼ同じなのだから、休診するメリットは少ない。
 仮に患者を診察した先生から問い合わせがあれば、「休診する必要はない。ただし、まだ感染早期の段階なので、心配であれば予防投与を」と言う可能性はある。ただ、もう少し感染が拡大した場合には、「咳や発熱のある患者を診察する場合には、マスクなどで予防をする。マスクを付け忘れ、具合が悪くなったら早めに薬の服用を」とアドバイスする(予防投与は不要)。

◆診断・治療について

質問:第2段階では「軽症・重症を問わず、すべて検査を行い感染が強く疑われた例はすべて措置入院」とあるが、「検査」を行う対象は何か。「強く疑われた場合」の意味は。
回答:幸い、わが国では迅速診断キットが流通しているので、検査をしやすい状況にある。しかし、多数の検査が必要な事態、感染が拡大した段階では、もう検査はやらなくてもよく、ある程度、症状で判断することになる。つまり、すべての人にキットで検査をやる必要はない。これは季節性インフルエンザの場合と変わらない。
 しかし、今、感染がまだ拡大していない時期であれば、症状、それから疫学的リンク。今までは海外渡航暦だったが、今は「神戸で、大阪で」というのがキーワードになる。したがって、「すべての患者に検査をし」というのが、何らかの疑いがあったらPCR検査をするということ。しかし、衛生研究所や体制のキャパシティーの問題もあるのも事実。

質問:厚労省は今は渡航歴等を前提とする「症例定義」は変えないとしている。今の時点で、神戸、大阪以外で新型インフルエンザの発生をどう捉えるかが課題。季節性と同じ扱いとして考え、クラスターを捕まえ、アウトブレークサーベイランスで捉えていく。どこかの時点で症例定義を変えることはないのか。
回答:今のサーベイランスのシステムで神戸の発生は検知できず、そこから漏れた形になる。別の枠組み、臨床医あるいは衛生研究所の判断でPCR法を行い、陽性になった。今後、ほかの地域でも、今回のようなことはあり得ること。
 では今の症例定義を変えるかということになるが、今の段階で全国一律に、「発熱、呼吸障害を伴う患者で、すべて新型インフルエンザを疑うか」となるが、そこまでは行かないだろう。対象が広がりすぎることになり、実際上こうした患者にすべて検査を行うことは無理だろう。ただ、症例定義の変更は国とのやり取りになるが、このままというわけにはいかないだろう。
 問診の実際上としては、「まん延した国だけではく、まん延した地域(神戸、大阪)」に行ったかどうかを聞き、疑うことになるだろう。

質問:第3期になると、タミフルは予防投与をやめるなど、診療体制は大きく変わることになる。
回答:これは従来から決めていたこと。新型インフルエンザが季節性に近く、抗インフルエンザウイルス薬で治ると分かった場合、治療のために確保しておくことが必要。また第2段階では、濃厚接触者が特定でき、予防投与に意味があるから行うわけであり、(第3段階で)予防投薬を行うのであれば、感染が終息するまで投与することになる。
 なお、国が備蓄している抗インフルエンザウイルス薬は、指定感染医療機関など特定の施設に配布することになる。

◆流行状況について

質問:感染者が高校生ばかりなのはなぜか。その家族は発生していないのか。
回答:家族については確認中で何とも言えない。「高校生でなぜ多いのか」だが、個々人の免疫力などの問題ではなく、社会的に活動しており、集団生活もしている。感染のチャンスの問題ではないか、と思うが、あくまで推測であり、科学的なデータはない。

質問:子供などでは、感染者に対するいじめも起きかねない。どういう段階になった患者では、ウイルスを排出しないと言えるのか。
回答:ウイルス分離が確実な方法だが、数日あるいは数週間かかる。またPCR法ではすぐに結果が分かるが、これはウイルスではなく、遺伝子を見る検査である。幸い、成田で隔離された患者はPCR法で陰性になったからいいが、PCR法で陽性であること、その患者に感染力があることとは別の問題。
 これは私の個人的な意見で全体のコンセンサスが得られているわけではないが、季節性インフルエンザでの経験から言えば、熱を中心とした症状が出て2日くらい経ってくれば、ほとんどの場合、感染力がなくなってくる。ある程度、症状が消失していれば、常識的に考えてうつらないと言える。例えば、エボラ出血熱など致死率が高い疾患では厳密に感染力の有無を見極める必要があるが、今回の新型インフルエンザのような場合は臨床症状を優先して考えていいのではないか。

(m3.com医療維新、2009年5月18日)

**** 読売新聞、2009年5月19日3時9分

機内検疫を週内にも終了

…政府、感染拡大防止に重点

 政府は新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)の国内感染の広がりを受け、これまで重視してきた水際対策から感染拡大防止に重点を移す方針だ。

 旅客便の機内検疫を週内にも終え、医療体制充実などを図ることにしている。同時に、弱毒性と見られることを踏まえ、高齢者や乳幼児、基礎疾患のある患者以外に自宅療養を認めることなどを盛り込んだ、より柔軟な対応策を新たにまとめる考えだ。

 舛添厚生労働相は18日、厚労省で緊急に記者会見し、「検疫に人的資源を集中することから、国内対策にシフトすることは必要だ」と述べた。現在はメキシコ、米本土、カナダからの旅客便で実施している機内検疫を週内にもやめる方針だ。

 厚労相はまた、「政府の専門家諮問委員会から『感染力、病原性等の性質から見て、(新型は)季節性インフルエンザと変わらないという評価が可能』と報告を受けた」と述べた。その上で、「新たなH1N1(新型インフルエンザ)を前提とした新しい対処方針に切り替えた方がいいのではないか」と語った。

 政府の行動計画は、国内発生早期の場合、感染者はすべて指定医療機関に入院すると定めている。新たな対応策には、こうしたケースでの自宅療養も認めるなど柔軟な対応を盛り込む予定で、今後1週間程度をめどにまとめる。

 政府のこうした対応は、地方自治体や企業が強く要請したためだ。政府はすでに強毒性の鳥インフルエンザを想定した行動計画を弾力的に運用し、「外出の自粛要請」「企業への業務縮小要請」などは見送っている。それでも、18日に厚労相を訪ねた大阪府の橋下徹知事が「国が方針を出してくれると自治体はやりやすい」と訴えるなど、政府により柔軟で具体的な対応を示すよう求める声が強い。

 麻生首相は18日、首相官邸で記者団に、「病気をお持ちの方は重篤化する確率は否定されていない。今の状況をきちんと見極めた上で柔軟に、適切に対応していく」と述べた。

(読売新聞、2009年5月19日3時9分)

**** 読売新聞、2009年5月19日3時8分

新型インフル国内感染者数163人に、休校4千校超す

 厚生労働省などによると、国内で確認された新型インフルエンザの感染者数は、大阪、兵庫両府県で増え続け、19日午前1時現在、成田空港の検疫で判明した4人を合わせ計163人となった。

 日本の感染者数は米国、メキシコ、カナダに次ぐ規模にふくれあがったが大半が軽症で回復に向かっている人も多いという。

 大阪府などによると、新たな感染者には、同府八尾市立南山本小の児童4人が含まれている。うち3人は、17日に感染がわかった6年女児と同じクラスで、同府が感染経路などを調べている。

 18日午前に感染が確認された神戸市の5歳男児は、兵庫県芦屋市の私立幼稚園に通っており、16日に発症。4~8日に男児の家族がグアム島旅行をし、家族が一時、体調を崩したという。

 大阪府教委は18日、感染拡大の推移を把握するため、府内の政令市を除く41市町村の全公立小・中学校と府立高校の児童・生徒、教職員の健康調査に乗り出した。中・高校の臨時休校期間が終わる24日まで毎日、各学校で発熱などの症状が出た人数を集約する。

 文部科学省によると、18日夕現在、大阪、兵庫両府県内の小中高校、幼稚園、大学などの休校は、要請中の私立を合わせ、計4043校に上った。

(読売新聞、2009年5月19日3時8分)

**** 読売新聞・社説、2009年5月19日

インフル拡大 過剰に恐れる必要はない

 新型インフルエンザの国内感染者が初めて確認されてわずか3日のうちに、大阪府と兵庫県で100人を超えた。

 先にウイルスが上陸した欧州での感染拡大を上回る勢いだ。すでに1000人規模で国内感染が広がっているのではないかと見る専門家もいる。

 世界保健機関(WHO)は日本の状況を踏まえ、国際的な警戒レベルを最高度の「フェーズ6」に引き上げる可能性がある。

 だが、あまり過剰に恐れることはやめよう。

 これほど短期間に多くの感染者を把握できたことは、日本の診断能力が高いことの反映でもある。そして、感染者の大多数は軽症にとどまっている。

 仮に、感染者の数が桁(けた)違いに増えていけば、肺炎を併発するなどして亡くなる人が出ることも、残念ながら避けられまい。

 しかし、従来の季節性インフルエンザも日本だけで毎年約1000万人が感染し、合併症などで約1万人が死亡している。これに対して、日本の社会は冷静に対処してきた。

 今のところ、「新型」の危険性は「季節性」とあまり変わらないというのが、専門家の一致した見解である。

 危険度の高いウイルスに変異する可能性に警戒を怠ってはならないが、現時点で脅威を過大視する必要はない。社会生活や経済機能への影響は、最小限にとどめるべきだろう。

 厚生労働省は、大阪府と兵庫県に中学、高校を休校とするよう要請した。感染者が高校生を中心に見つかっていることや、学校自体、感染が広がりやすい場所であることを考えれば必要な措置だ。

 ただ、休校対象に小学校や幼稚園・保育所を含めるかどうかは、自治体によって対応が分かれた。親の仕事が制約され、経済活動に影響することをどう評価するか判断が難しかったのだろう。

 どこまでの措置が妥当かについては、感染状況を見極めながら、柔軟に決めることが大切だ。

 大阪、兵庫では、感染者の急増によって医療体制がパンク寸前になっている。同様の状況が他の地域でも起こりうる。

 新型インフルエンザの感染が急拡大した地域では、全員を医療機関で治療することは難しい。軽症の人は自宅療養を原則とするというように、早い段階から治療ルールの転換を図る必要があろう。

 今後は国民一人ひとりの協力が不可欠となる。

(読売新聞・社説、2009年5月19日)


新型インフルエンザ 国内すでに1千人規模か

2009年05月17日 | 新型インフルエンザ

昨日、新型インフルエンザA(H1N1)の国内での人から人への感染が初めて確認されましたが、その後、続々と国内感染事例が報道されています。「日本国内の感染者数は、すでに1000人レベルを超えた可能性がある」と専門家(田代真人・国立感染症研究所・ウイルス研究センター長)が述べています。これから新型インフルエンザの国内感染者数が、千人→1万人→十万人→百万人と拡大していく過程で、現在の厳戒態勢を継続するのが次第に困難となってゆくと思われます。

新型インフルエンザ 国内発生を初めて確認

**** 読売新聞、2009年5月17日21時47分

新型インフル感染、国内すでに1千人規模か

…感染研センター長

 【ジュネーブ=金子亨、高田真之】国立感染症研究所の田代真人インフルエンザウイルス研究センター長は17日、滞在先のジュネーブで記者団に対し、日本国内で新型インフルエンザの感染が確認されたことについて、「(感染者数は)すでに1000人レベルを超えた可能性がある」と述べた。

 田代氏は、新型インフルエンザの警戒レベル引き上げの是非を世界保健機関(WHO)事務局長に提言する緊急委員会の委員。感染は北米地域で広く確認されており、レベルを現行の「フェーズ5」から世界的大流行(パンデミック)を意味する「6」に引き上げるには、北米以外で感染が継続していることが要件になる。

 田代氏は「(今後の日本の状況が)フェーズ6に引き上げる判断材料になる可能性があり、WHOは注視している」と指摘した。

(読売新聞、2009年5月17日21時47分)

**** 毎日新聞、2009年5月17日21時44分

新型インフル:「日本も地域社会へ拡大」

WHO電話会議で

 【ジュネーブ澤田克己】日本での新型インフルエンザ感染拡大を受けて、世界保健機関(WHO)は17日、日本の専門家などを交えた電話会議を開いて状況を検討した。会議に参加したWHO関係者は「日本では既に(ウイルスが地域社会に)出ていってしまっている可能性が高いのではないか」という見方を示した。

 WHOが「地域社会での感染拡大」を認定すれば、米州以外で初めてとなる。「世界の2地域以上で地域社会での感染拡大」が確認されると、新型インフルエンザの世界的大流行(パンデミック)に備える警戒度を現在の「フェーズ5」から最高レベルである「6」へ引き上げる条件がそろうことになる。

 ただ、ケイジ・フクダ事務局長補代理ら幹部は「病気の重さとフェーズは無関係」と繰り返しており、警戒度引き上げに伴って新たな対策が取られるという状況にはない。インフルエンザ対策を担当するWHOの進藤奈邦子医務官は「5と6は単純に地理的な広がりだけの違い。WHO内部では、もうパンデミックが起きているという認識で行動している」と話している。

 警戒度引き上げを巡ってはこれまで、欧州諸国での感染拡大が引き金になると見られていた。特に、英国とメキシコでの感染拡大が注目されていたが、スペインは感染者のほとんどがメキシコ帰りで、英国もメキシコ旅行をした生徒が在籍する学校での感染拡大が多い。WHOは「両国とも感染源を特定できない地域社会レベルの流行とは言えない」(フクダ事務局長補代理)としてきた。

 ただ、日本の場合、大阪と神戸での感染拡大は今のところ海外渡航歴を持つ人との関連が見つかっておらず、英国、スペインとは状況が違いそうだ。WHO勤務経験のある日本人医師は「日本は欧州より人口密度が高く、インフルエンザが流行しやすい」と話しており、WHOはこうした点を重視して日本での感染拡大に警戒感を強めている模様だ。

(毎日新聞、2009年5月17日21時44分)

**** NHKニュース、2009年5月17日19時42分

専門家“週明け以降注意を”

大阪府や兵庫県で新型インフルエンザの感染者が相次いで報告されていることについて、新型インフルエンザ対策に詳しい久留米大学の加地正郎名誉教授は「今は関西だけだが、首都圏など、関西との間で人の行き来が激しい地域にも、今後感染が広がるおそれがあり、注意が必要だ。特に、この週末関西に行っていた人が、感染して症状が出ないまま東京などほかの地域に戻ると、週明けのあす以降、その地域で感染を広げることにもつながりかねない。高熱やせきなどインフルエンザのような症状が出た人は、学校や会社を休んで発熱相談センターに連絡するなど、適切な対応を取ることが大切だ。症状が軽いからといって会社や学校に行ったりすると、ウイルスを排出して感染を広げるおそれがあるし、薬を飲んで熱が下がっていてもウイルスを排出することがあるので、注意してほしい」と話しています。

(NHKニュース、2009年5月17日19時42分)

**** 朝日新聞、2009年5月18日1時37分

新型インフル感染者急増 国内患者、計96人に

 新型の豚インフルエンザの感染者は、兵庫県に続いて大阪府でも相次いで確認されるなど17~18日未明に新たに84人増え、厚生労働省や自治体によると、18日未明までで累計96人(成田空港の検疫で見つかった4人を含む)にのぼった。高校生が9割を占め、感染者が確認された学校は16日の2校から10校以上に拡大した。症状は多くが軽く、快方に向かっているという。大阪府の橋下徹知事は18日未明、「厚労省と協議した結果、府内全域の中学、高校が1週間の休校となる予定」と発表した。期間は18日から1週間。

 日本の感染者数は米国、メキシコ、カナダなどに次ぎ、急激に増えている。世界保健機関(WHO)が、警戒レベルを現在の「フェーズ5」から、世界的大流行(パンデミック)であることを示す「フェーズ6」に引き上げるかどうかの判断をめぐり、日本への注目が高まっている。

 16日に確認された兵庫県立神戸高校(神戸市灘区)と同兵庫高校(同長田区)のほかに、新たに確認されたのは私立関西大倉高校・中学(大阪府茨木市)と関西大学(同吹田市)、兵庫県立高砂高校(兵庫県高砂市)、同八鹿(ようか)高校(同養父(やぶ)市)、同豊岡高校(同豊岡市)、田山高校(同朝来市)、神戸市立工業高専(神戸市西区)、私立神戸村野工業高校(同長田区)、私立六甲高校(同灘区)など。関西大倉高校は、感染が確認された生徒のほかにも、インフルエンザのような症状を訴えている生徒が百数十人いるという。

 感染者は大阪府43人、兵庫県53人。高校生や大学生だけでなく、家族や教員にも感染者が出ている。大阪府八尾市で小学生では初めて6年生の女子が確認された。周囲には、これまでに感染が確認された人が通う高校の関係者はいないとされ、別の感染経路が考えられる。

 厚労省と関係自治体は、感染者の周囲の「濃厚接触者」に関する調査を進めている。濃厚接触者には自宅待機を要請し、健康状態や渡航歴を確認している。

 感染者が神戸市以外でも出たことについて、厚労省の担当者は会見で「(大阪と神戸は)疫学的なリンク(関係性)があるかも知れないし、独立した事象かも知れない。疫学調査の結論調査を見て判断すべきだ」と話し、政府の新型インフルの国内対策を「第2段階」から「第3段階(感染拡大期)」に移すには時期尚早との認識を示した。

 新型インフルは毒性は低いが、感染力は強いとされる。今後、兵庫県や大阪府で患者が増え、関連の病院の病床が不足する可能性がある。厚労省の担当者は、医療態勢については国と地元自治体が協議し、地域ごとに弾力的に対応する方針を明らかにした。

 また、現在は都道府県の検査で新型インフル陽性となった場合、国立感染症研究所で最終確認しているが、厚労省は神戸市、兵庫県、大阪府、大阪市の検査結果について信頼性が確かめられたとして、同研究所での確認を不要とした。

(朝日新聞、2009年5月18日1時37分)

**** 読売新聞、2009年5月18日2時5分

新型インフル国内感染数96人に

…成田検疫4人を含め

 神戸市の兵庫県立高校2校の生徒8人に新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)への感染が確認されたのに続き、18日未明までの厚労省などの発表で、新たに同県や大阪府の高校生や教諭ら84人の感染が確認された。

 海外渡航歴のない高校生が多く、感染者のいる高校では発熱などを訴える生徒も多数いる。高校を中心とした集団感染を食い止めるため、神戸市や大阪府などは大規模な休校措置を取り、休校数は1400校を超えた。「国内感染」はこれで92人となり、成田空港での検疫で判明した4人も含めると、国内の感染者数は計96人となった。

 18日午前1時現在で感染が確認されているのは、大阪府では、関西大倉中高(茨木市)の生徒36人と講師、生徒の家族など。兵庫県では、六甲高(神戸市)の生徒9人、県立神戸高(同)の生徒11人と保護者、県立兵庫高(同)の生徒12人、県立高砂高(高砂市)の生徒3人、県立八鹿(ようか)高【養父(やぶ)市】の生徒1人と教諭、県内の高校生11人など。関西大倉高では、併設の中学も含め、約190人がインフルエンザの症状を訴えたため、大阪府などが調査を進めている。

 さらに、大阪府八尾市の小学6年女児(11)のほか、同府吹田市の大学生らの感染も確認され、広範囲に二次感染が進んでいる可能性が出てきた。

 厚労省と兵庫県などによると、同県内の高校で感染が確認された生徒はバレーボール部員が多く含まれていたが、ほかに文化系などの部活動の生徒もいた。厚労省によると、自治体側は16日に感染が確認された神戸、兵庫高校の生徒8人の「濃厚接触者」として161人をリストアップし、自宅待機要請や健康状態の確認などを進めている。

 大阪府は17日、茨木市など12市町に小中高校・幼稚園などを23日まで臨時休校するよう求め、府内の休校数は計676校に達した。府は全小中高・幼稚園に、児童・生徒にインフルエンザの症状があれば出席停止とするよう要請。茨木、豊中、吹田市の保育所、高齢者介護の通所施設、映画館などにも休業を求めた。

 兵庫県でも、県立高や公立小中などの休校数は743校に上っている。

(読売新聞、2009年5月18日2時5分)

**** 朝日新聞、2009年5月18日5時1分

新型インフル拡大 

「ドクターは戦場にいるような状態」

 「ドクターは戦場にいるような状態だ。能力オーバーになりつつある」

 神戸市保健福祉局の桜井誠一局長は17日午前の記者会見で、新型インフルエンザの感染者の診療にあたっている市立医療センター中央市民病院の現状について語った。

 神戸高校で初の感染者が出た16日以降、電話相談を経ずに発熱外来を直接訪れる市民が急増。ウイルスが病室外に出ないよう工夫された病床が36床あるが、感染した患者らで、すでに「ほぼいっぱい」。別の病棟を空けて検査結果待ちの患者を入れ始めた。

 大阪府北部の発熱外来には17日、発熱相談センターの紹介で17人が訪れ、直接来たのは21人。それぞれ前日の約3倍という。17日朝、市消防本部が病院前に待合用のテントを二つ張って対応した。自家用車で来た人には、車の中で待ってもらった。

 病院職員は「これ以上増えると救急医を発熱外来に回さなければならない。新型は季節性と症状も治療も変わらない。分けないで対応したいのだが……」と話す。

 一方、発熱相談センターも相談の電話が急増している。

 兵庫県と県内の政令、中核市の各発熱相談窓口に16日に寄せられた相談は、前日の6倍以上にあたる計約900件に達した。神戸市の相談センターは16日分は588件。その後もこれを上回る勢いで増え、電話回線を3本から7本に増やした。

 大阪府でも16日、15カ所への相談センターの相談件数が、前日の125件から8倍以上の1039件に跳ね上がった。その6割にあたる651件は本庁の発熱相談センターに集中。前日の65件から10倍増となった。専用電話は鳴りっ放しの状態だ。

 大阪市の発熱相談センターも市内で感染者が出てから相談件数が激増した。中川正・同市保健所長は嘆く。「発熱相談の電話でてんてこ舞い。疫学的な調査に人がさけない。感染者のつながりがどうやねんということはまだ」

(朝日新聞、2009年5月18日5時1分)


新型インフルエンザ 国内発生を初めて確認

2009年05月16日 | 新型インフルエンザ

コメント(私見):

本日、神戸市在住の海外渡航歴のない3人の高校生が、新型インフルエンザA(H1N1)に感染していたことが確認されました。この高校では、5月に入ってからインフルエンザが流行し始めて、多くの生徒が発熱で学校を休んでいたそうです。現在、発熱などの体調不良を訴える生徒が、この3人以外にも17人いるそうです。

新型インフルエンザに感染しても3分の1は発熱しないそうですし、潜伏期間のうちは発熱しませんから、空港などの検疫でウイルスの国内侵入を完全にくい止めることは不可能で、新型インフルエンザウイルスはすでに国内に持ち込まれて、どんどん広がっているはずだと多くの専門家が警告してました。

今年は、今の季節でもインフルエンザの患者さんがけっこう多くいらっしゃいます。今日までは、国内には新型インフルエンザウイルスは存在しない筈という仮定のもとに、インフルエンザの迅速診断キットでA型陽性であっても、海外渡航歴がなければ「通常の季節性インフルエンザ」として扱ってきました。しかし、これからはそういう患者さんの検体の多くが詳細な遺伝子検査にまわされることになり、新型インフルエンザと診断される症例が爆発的に増えていくことも予想されます。

**** 共同通信、2009年5月16日21時34分

拡大か、同じ高校の2生徒確認  新型インフル国内感染3人に

 厚生労働省は16日、神戸市の2人が国立感染症研究所の確定検査の結果、新型インフルエンザ感染が確認されたと発表した。兵庫県立神戸高校(神戸市灘区)の生徒で、初の国内感染事例となった高校3年の男子生徒(17)と同じ学校。「人から人」の感染が広がっている恐れが高まった。

 大阪府も16日、同府茨木市内の高校2年の女子生徒=同府豊中市=がリアルタイム詳細(PCR)検査で新型陽性となったと発表。国立感染症研究所で確定検査する。

 神戸市や兵庫県でも新型の疑いがあるとして市や県が検査を進めている生徒が相次いだ。

 一方、国内での感染例が出たことを受け、政府の行動計画は16日、第1段階(海外発生期)から第2段階(国内発生早期)に移行した。

 厚労省や神戸市によると、新たに感染が確認されたのは神戸高校の2年男子(16)と2年女子(16)。男子生徒は15日に熱があり学校を早退、夕方には体温が39・7度になった。16日未明、簡易検査でA型陽性となった。女子生徒は12日夜、38度の発熱があり、13日に簡易検査でA型陽性が出た。

 神戸市によると、神戸高校と複数の種目で交流試合をしている市内の別の学校の生徒5人が、簡易検査でA型陽性となった。市は詳細検査する。

(共同通信、2009年5月16日21時34分)

**** 時事通信、2009年5月16日18時16分

「既に感染拡大の可能性」=検疫体制、縮小も検討-政府専門家委・新型インフル

 新型インフルエンザに関する政府専門家諮問委員会の尾身茂委員長(自治医科大教授)は16日、政府の対策本部幹事会終了後に会見し、「感染しても軽微な例が多く、国内で既に感染がじわじわ広がっている可能性は否定できない」との見方を示した。その上で、検疫体制の縮小を検討する時期との考えを明らかにした。

 尾身委員長は、今回の新型インフルエンザの特性について「感染力が強い半面、比較的症状が軽い。高齢者よりも、基礎疾患のある感染者が重篤化しやすい」と分析。神戸市の感染例が海外渡航経験のない患者だったことなどから「既に地域での感染が始まっている」と述べた。

 その上で、現時点は感染拡大防止に重点を置くべきだとする一方、感染が拡大してしまったときには、軽症者よりも、基礎疾患のある感染者の重症化防止に重点を移すべきだと指摘した。

(時事通信、2009年5月16日18時16分)

**** 東京新聞、2009年5月16日夕刊

新型インフル 国内発生 政府行動計画 格上げ

 厚生労働省は十六日、新型インフルエンザ感染が疑われていた神戸市在住の県立高校三年の男子生徒(17)について、国立感染症研究所の確定検査で感染を確認したと発表した。検疫でなく、ウイルスの国内侵入による感染が初めて確認された。また、同じ高校の男女二人の生徒についても同市環境保健研究所で詳細(PCR)検査したところ、二人とも新型に陽性反応があり感染が濃厚となった。感染研で確定検査する。三人とも海外渡航歴がなく、人から人への感染が広がっている疑いが強まった。 

 舛添要一厚生労働相は同日午後、緊急会見を開き、「今回のインフルエンザは仮に感染しても早めに治療を受けることで多くの方が回復しているが、油断なく対策を講じていくことが必要。正しい情報に基づきどうか冷静に対応していただきたい」と訴えた。

 新型の患者の国内発生を受け、国の行動計画は第二段階「国内発生早期」に進み、これまでの水際対策から感染防止対策に重点を切り替える。国内初の感染確認となった大阪の高校生らのケースで、厚労省は入国前にウイルスの国内侵入を食い止めたと判断、「『国内発生』には当たらない」としていた。

 神戸市は国の行動計画に基づき、感染の可能性がある濃厚接触者をリストアップ、感染拡大防止のために追跡する積極的疫学調査を開始。同市や兵庫県は同日朝、それぞれ対策本部を設置。市は市内の一部の地域で七日間の市立学校の休校や人が集まるイベントの中止、市民への外出自粛要請などを決めた。

 厚労省や神戸市によると、高三の男子生徒はバレーボール部に所属。周囲でインフルエンザがはやっており、一人目が五月八日に部活動を休んだ。同日に他校と試合し、九日に別の二人が部活動を欠席。十日に神戸市外で試合を行い、別の二人が体調不良を訴えた。感染が確認された男子生徒は十二日に登校後、三七・四度の発熱などの症状が出て、市内の医院を受診した。

 また、高校二年の女子生徒(16)は十二日に三八度の熱を出し、この男子生徒と同じ医院を受診。サッカー部に所属する高校二年の男子生徒(16)は十五日に三九度の発熱で市内の別の医院を受診。いずれも簡易検査でA型が陽性となった。

 神戸市によると、三人のほかに、同じ高校で十七人が体調が悪いと訴えており、市が健康状態を確認中。これらの生徒はいずれも市が休校を決めた灘区や東灘区などでつくる学区に住んでいる。

(東京新聞、2009年5月16日夕刊)

**** 東京新聞、2009年5月16日夕刊

週末急転 街に動揺も 新型インフル感染 『神戸まつり』中止

 「新型は既に広がっているのか」-。神戸市東部の公立高校生が新型インフルエンザに感染していることが確認された十六日、生徒が通う学校は教職員らが慌ただしく出入りし、自宅待機となった生徒らは「まさか」と驚きと不安を口にした。十五日開幕した「神戸まつり」も一部の区まつりやメーン行事が中止になるなど市民らに衝撃と動揺が広がった。東京都なども推移を見守っている。 

 神戸まつりの区まつりのうち中央区など三区は中止に。中央区の「ふれあい中央カーニバル」の会場となる三宮・東遊園地では午前九時前、中止を知らせる張り紙が掲示された。

 出店者への連絡に追われた神戸フリーマーケット協会の堂園光啓さん(56)は「信じられない」と絶句。屋台の撤収も始まり、露天商の黒田慈行さん(21)は「二十万円の仕入れが無駄になった」と肩を落とした。

 十七日のおまつりパレードなども中止となり、市民提案型イベントに参加予定だった男性(59)は「準備をしていたのに残念」と話していた。

◆『手打ったが…』校長沈痛

 新型インフルエンザに感染した生徒が通う神戸市東部の公立高校では、校長が報道陣の取材に「打つべき手は打ってきたが…」と、沈痛な面持ちで答えた。

 校長によると、五月に入り生徒の欠席が増え、十三日から健康観察を始めた。同日からの三日間で計十二人が季節性のインフルエンザと診断され、十五日には発熱で数人が早退したという。五月に海外渡航した生徒はいないというが、家族の渡航までは把握しきれていない。この日、週末の部活動を取りやめ、生徒の自宅待機を決定。生徒約千人に伝える作業に追われた。同校には報道陣が集まる中、教職員らが次々に出勤。自宅待機を知らずに登校する生徒もいた。

 一年の女子生徒(15)宅には十六日午前六時四十分ごろ、自宅待機の電話連絡があった。「欠席が増えていたがみんな一般のインフルエンザだと思っていた。まさか自分の高校で新型感染の疑いなんて」と驚いていた。

◆『渡航歴なし』検査後回し 神戸市 生徒の検体3日放置

 新型インフルエンザに感染した神戸市内の高校三年男子生徒の検体は、診察した医師が十二日に提出していたが、実際に詳細(PCR)検査が行われたのは三日後の十五日だった。神戸市医師会は、対応の遅れを指摘している。

 同市によると、生徒を診察した医師は、生徒に海外渡航歴がなかったことから、季節性インフルエンザのソ連型か香港型か-の検査を要請したという。市は「発熱外来の検査を優先するのでいいか」と医師に確認した上で、検査を後回しにしたとしている。

 市医師会は十二日、新型インフルエンザ対策会議で、複数の学校でA型の季節性インフルエンザが流行しているとの報告を注視。「おかしいと思えば検体を提出し検査を」と医師らに促していた。市医師会は「発熱外来の受診者の検査やノロウイルスの検査もあったのでやむを得ない面はあったが、結果的にタイムラグができてしまった」と対応に課題を残したとしている。

(東京新聞、2009年5月16日夕刊)

****** 共同通信、2009年5月15日

封じ込めはできない 第2波に備えた態勢を 「インタビュー」

 世界で感染が拡大している新型インフルエンザは国内流入が時間の問題とみられている。羽田空港の現役検疫官で、著書「厚生労働省崩壊」で日本の感染症対策の問題点を指摘した医師木村盛世(きむら・もりよ)さんに、国や医療機関の対応について聞いた。

-ウイルスの水際阻止が強調されている。

 「過去のインフルエンザで、発症者や濃厚接触者を隔離して封じ込めに成功した例はない。今回も最長7日の潜伏期間があり、海外で感染、発症しない段階で大勢が検疫をすり抜けている可能性が高い。これだけ世界各国に広がって、日本だけ免れられるわけがない」

-検疫に効果は期待できないのか。

 「検疫の意義は国内発生するまでの時間稼ぎ。世界保健機関(WHO)も感染拡大を抑える機能はないとの見解を示している。秋に予想される第2波に備える時期なのに、強化するべき医療現場から医師を引きはがし、検疫の応援に送り込んでいるのが現状だ。防護服を着た検疫官が走り回る姿がテレビに映ればアピールにはなるのだろうが、現場は混乱し始めている」

-具体的にはどんな混乱が生じているのか。

 「多くの医療関係者から、インフルエンザの簡易検査キットが不足していると聞いた。医師数や設備が不十分な医療機関では、感染の可能性がある患者の診療を断っているところもある。予算措置をとり、感染疑いのある人が受診する発熱外来の整備を急ぐ必要がある。国が支援しなければ自助努力だけでは難しい」

-患者は医療機関を頼るしかないが。

 「一般への啓発活動も必要だ。毒性は従来の季節性と同程度である点を理解してもらい過剰反応が起きないようにする。大勢が不安に陥り、感染の可能性がまったくない人まで押し寄せれば、医療機関がパンクし、必要な人が受診できないケースが出てくる」

   ×   ×

 木村盛世氏(きむら・もりよ) 65年生まれ、米ジョンズ・ホプキンス大公衆衛生大学院疫学部修士課程修了。02年に厚労省入省、統計情報部などを経て羽田空港検疫官。

(共同通信、2009年5月15日)

**** 共同通信、2009年5月14日20時0分

新型インフル3分の1が発熱せず 米医師が報告、早期発見困難に

 メキシコ市の病院で新型インフルエンザの感染者を調べた米国の医師が「患者のうち約3分の1に発熱がなかった」との報告をまとめた。米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)が13日、報じた。

 発熱はインフルエンザの感染を見分ける重要な指標とされる。報告が事実なら、感染の早期発見と拡大防止が、これまで考えられていた以上に困難になる可能性がありそうだ。

 同医師はメキシコ市の2つの病院で5月上旬、4日間にわたって検診に当たった。報告によると、重症者の多くは高熱を出したが、症状が軽い患者の半数ほどは発熱がなかった。せきや倦怠(けんたい)感は、ほぼすべての患者が訴えた。

 また、患者の約12%が激しい下痢を起こしたという。同医師は、患者の便に新型インフルエンザウイルスが含まれているかどうか調べるようメキシコ側に促したと説明。「ウイルスが便を介して伝染すれば、特に発展途上国での感染拡大の抑止は難しくなるだろう」と話した。

(共同通信、2009年5月14日20時0分)


愛育病院、総合周産期母子医療センター継続を決定

2009年05月16日 | 地域周産期医療

****** m3.com医療維新、2009年5月14日

「宿直は夜勤」なら、手当が支払える財源投入を

----愛育病院・中林正雄氏に聞く

“総合周産期母子医療センター”継続決定の経緯

【村山みのり、m3.com編集部】

 4月24日、東京都に総合周産期母子医療センター(以下「総合センター」)の指定返上を打診していた愛育病院(東京都港区)は、非常勤医師の増員などにより医師の勤務体制が整ったとして、総合センターとして継続することを決定した。 3月の労基署勧告後の院内体制の整備、指定返上を取りやめた背景、今回の出来事が医療界に与えた影響などを、愛育病院院長・中林正雄氏に聞いた(2009年5月1日にインタビュー)。

――総合センター指定の返上を取りやめた経緯をお教えください。また、3月に東京都へ返上を打診した際、理由として、非常勤医師のみによる当直体制、母子医療を専門とする病院であり、救急救命センター等を併設していないことなどを挙げていましたが、これらについての東京都や厚生労働省の見解は。

 これらの2点は、東京都としては差し支えないとの見解が出ました。当直体制については、都立墨東病院でも非常勤医師のみによる当直が行われており、医師が2人揃っていれば良いとのことでした。救急救命センターに関しては、厚労省医政局が、総合センターの設置基準について、連携病院を明らかにし、届け出を行えば良いとする文書を追加しました(編集部注:5月中に都道府県へ通知される予定)。愛育病院は以前から東京慈恵医大、日赤医療センターと連携しています。現実に、そのような病院が多くあるため、医政局も実態に沿ったものとなるよう対応を考えたのでしょう。

 東京都周産期医療協議会は、役員の交代時期であるなどの事情からまだ開催されていませんが、岡井崇昭会長(昭和大学産婦人科教授)から「そういうシステムであれば続けてほしい」との話もあり、続けることとなりました。

 むしろ愛育病院として考慮したのは、総合センターとしての十分な対応が、非常勤の医師でも行っていけるかどうかです。医療技術・知識的には問題ありませんが、総合センターにはコーディネーター的な役割があるため、それができるかどうか。非常勤であるが故に対応ができないということになると、病院としては大変責任が取りづらい。

 4月、過去に愛育病院に勤務し、現在大学に戻っている医師を中心に、経験があり、かつある程度上級クラスの医師に非常勤として来ていただいたところ、大変良く業務を行っていただけたため、これならば実質的には問題はないと担当部長が判断しました。

――労基署の是正勧告への対応、勧告後の勤務体制は。

 労基署へは改善後の体制を報告し、承認を受けました。

 愛育病院では、常勤医15人のうち、妊娠・出産・育児中の女性医師や他院へ出向中の医師などを除く5人の医師が夜間勤務に当たっていましたが、これに加え、現在3人の非常勤医師に来ていただいています。いずれも以前愛育病院で働いていたことのある医師で、夜間勤務はそれぞれ週1-2回、月6-8回程度。なお、これは暫定的な体制で、秋からは常勤医が2人増えるため、それ以降は常勤医で夜間勤務を行えるようになります。

 「36協定」も締結しました。あらかじめ時間外勤務時間数を定める必要がありますが、産科では「月45時間、年間360時間」という法定範囲に近い数字を出すことができるものの、NICUの担当医ではこれが全く不可能でした。結局、NICUの基準に合わせて、特例条項の時間数、標準の約2倍近い時間で届け出ています。おおむね常識的な範囲だと思います。

 現在NICUの医師は6人。これを7人にしなければ、どうしても勤務時間が長く、オーバーワークとなってしまいますが、NICUの医師は常勤・非常勤とも、どうにも見つけられません。

――今回の一連の出来事について、勤務している医師の反応はどのようなものでしたか。

 これまで、愛育病院では当直料を、所定の額に搬送数・分娩数などに基づいてランク付けした金額を上乗せする、という仕組みで支払っていました。これを、労働基準法に基づいた時間外手当とした結果、若い医師では以前よりも手当てが下がった状態が生じています。医長クラスも夜間勤務を行っているため、彼らにとっては多少の増額となりましたが、総額では大きな差はありませんでした。

 30代程度までの若い医師にとっては、月6回ほどの当直は、さほど負担・不満ではなく、むしろ収入源になっていました。産科医療従事者としては普通の回数であり、以前から当直の翌日は半日休みにしています。しかも時間外手当は30万円程度の収入になる。愛育病院は公務員準拠なので、基本給はさほど高くない。そこからすると、当直は少し多めの方が、収入が確保され、休みも取れて良かった。自身の勉強にもなることから、愛育病院では若い医師たちは比較的喜んで当直をしていました。

 そのため、今回労働基準法に沿った勤務体制となり、時間外手当が減ったことにより、その減収分が今後どう補てんされるのか、という不安の声の方がかえって聞かれます。今までそれで生活をしていたのだから、何らかの形で減給保障が必要だと考えていますが、非常勤の医師に支払う給与もあり、病院全体の人件費を大幅に上げる訳にはいきません。これはつらいところです。スタッフの給与の維持がどうしても困難であれば、分娩料を上げることも考えていかざるを得ないかもしれません。

――以前の勤務体制についても、院内の医師の間では特に問題視されていなかったということですか。

 愛育病院の勤務環境は、全国的に見れば非常に恵まれています。院内は平和に業務に当たっていたところへ、急に労基署の監査が入ったため、皆が戸惑ったことは事実です。恐らく、全体的に考えれば、今後の方向性を示しているものだろうと私は認識しています。労基署が指摘をしますよ、と示せば、他の医療機関も自主的にある程度の基準に整備していかなければなりません。それを踏まえた指導なのではないかと考えています。

 愛育病院としては、医師の健康・年齢を考慮して勤務体制を考え、どうしてもやむを得ない部分は金銭面で補う、という対策を取ってきましたが、医師の勤務環境の改善が必要だとわれわれが訴えている時に指導が入ったというのはどういうことなのかを、世間に問わなければなりません。

 やはり一番基本となるのは、医療への財源の振り分けです。夜間勤務をしている医師に対して、当直という名目ではなく、きちんとした額が支払えるような医療費を国が出すということにならなければ、第一の段階はクリアしない。勤務状況は厳しくても金銭的にはある程度優遇されるようになれば、人も増えてきます。その上で、労働基準法の時間を少しずつ基準に近づけていくことが必要です。現在の人数ではどうにもなりません。

 今回非常勤で雇った方々も、本来の職は持っています。非常勤なので労働時間の基準には入りませんが、当人の労働時間は増えています。規約上は解決されて見えても、実際に医師の過重労働という点では何も解決されていません。

――労基署の介入が今後の医療に与える影響は。

 労基署が入ったことにより、今後、夜間勤務は「当直」ではなく「時間外勤務」と扱われるようになります。この方向が示されたのは、現実には大きな問題です。どこの病院でもすぐに対応できる訳ではなく、これから集約化、金銭面での対応など各病院が努力していかなければならないということが、実感されるようになったのではないでしょうか。

 今回、愛育病院に立ち入り調査、是正勧告があったが、国としての全体の対策ができていないのでは困ります。医師の働き方については、これまでパンドラの箱的に開けてこなかった。それを開けて、今後はどうするのか。先行きを心配する人も多くいます。しかし、開けたからには国としてきちんとした対応をするきっかけにしてほしいと思っています。国として「夜勤である」と言ったからには、夜勤手当に相当するだけの医療費をきちんと病院サイドに払うようにすることが不可欠であり、従事する医師を育てることが必要となります。女性医師が仕事を継続できるような支援対策を強力に行うといったような、ポジティブな方向へ進めていただきたい。

 また、厚労省には、産科医療だけではなく、全国の「当直」を行っている医師に適切な夜勤手当を支払った場合にどの程度の財源が必要となるのかという試算をしていただきたい。われわれの試算では2000億円程度と考えられ、1兆円はかからない。小泉改革で2200億円が削減されたが、あれを戻せば充填できる程度の金額です。

――2008年度診療報酬改定で創設されたハイリスク妊娠管理加算、ハイリスク分娩管理加算は、財源投入によるバックアップの一環として機能していますか。

 ハイリスク妊娠、分娩管理加算の創設により、収入は上がりました。愛育病院では、増収分の半額を医師全体へ還元しています。この点数は、本来は医師に還元するためのもの。しかし、医師に還元せず、これ幸いと病院の赤字補てんに当ててしまった医療機関も多くあります。また、還元した場合でも、産科医へ少し払っただけで、同様に周産期医療に携わるNICUへは全く支払われないことが多数です。しかし、NICUがなければ、現在の産科医療は成り立たちません。

 もっとも、医師へ還元していない医療機関の中には、当直は皆が行っているのに、産科医だけに手当てを支払う訳にはいかないと考える施設もあります。愛育病院のように母子医療専門で、すべての医師がこれに携わっている病院ではなく、大学病院や総合病院など色々な科があり、それぞれが夜勤も行っている中では、産科医に限るわけにはいかないという判断もあるでしょう。

――NICUの充実、携わる医師の勤務状況改善には何が必要ですか。

 NICUについては、携わる医師を増やさなければどうにもなりません。今回、産婦人科が少し陽の目を見たのは、日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会全体で国と交渉したため。皆にアピールし、入局者も少し増えつつあります。しかし、NICUは小児科の一部であり、少人数である上に、そういった政治的な動きをする時間すらない。親元である日本小児科学会全体が、NICUを何とかしようという動きをすることが必要ではないでしょうか。もっとも、小児科学会でも、NICUに対して理解のある医師がどの程度いるのかという問題はあります。

 行政が対策を行うと、国公立の箱物、病床を増やそうということになりますが、NICUの病床を増やしても診られる医師、コメディカルがいない。それよりも、小児科医になってそこに勤めようという人を増やすことが必要です。箱を作るのは簡単です。しかし、いかに人を育てていくか、また女性医師が就労を続けていけるようにするか。これには社会全体、多方面から対策を行わなければなりません。それが取り組まれていないことが、非常に大きな問題です。

(m3.com医療維新、2009年5月14日)

****** 東京新聞、2009年5月15日

スーパー周産期センター 指定1カ月半 

都民の不安に『応急処置』

 昨年十月、脳出血を起こした妊婦が都立墨東病院など複数の病院に受け入れを断られ死亡した問題を受け、都の周産期医療協議会が、都内三病院を「スーパー総合周産期センター」に指定して一カ月半が過ぎた。救命処置が必要な妊婦は必ず受け入れる全国で初めての方式について、協議会長の岡井崇・昭和大教授に現状と課題を聞いた。 【砂本紅年】

-搬送患者が集中し、パンクするという懸念の声もあったが。

 「まだ始まったばかりだが、対象患者の搬送例はなく、パンクの心配はない。対象患者は多くても年間九十件と見積もっていた。今のところ(患者の)近くの病院が頑張ってくれていると思う」

-妊婦が死亡した問題では、大都市での母体救命救急の危機が浮き彫りになった。

 「母と胎児の両方に対する診療が必要で、産科だけでなく脳神経外科などの関連科、新生児集中治療室(NICU)がそろわないと受け入れは難しい。東京は救急施設の数は多いが、一つ一つの規模が小さい。受け入れ率はもともと全国でも低かったが、高齢出産などでリスクの高い患者が増え、さらに受け入れ率が悪くなった」

-スーパーセンターを発想した背景は。

 「都民の不安に応え“応急処置”として頑張ろうと考えた。本当は、医師が多くてベッドがいつも空いているのが理想だが、今の診療報酬制度では経営が成り立たない。救急医療の診療報酬体系は見直す必要がある」

-センターの医師の態勢は。

 「昭和大病院の場合は産婦人科の当直を三人から四人に増やし、自宅待機が二人。NICU、脳神経外科、整形外科なども自宅待機を置いた。今春、産婦人科の研修医が九人入ったので、一人当たりの当直回数は月四回で増やさずに済んだ」

-産科医不足に必要な対策は。

 「産婦人科が敬遠される理由のトップは当直の多さ。せめて当直の翌日を休みにしたい。いい兆しもある。産婦人科の入局者は今年、全国で五十人増えた。国民が産科医を望み、国も産科を大事にしようとしている雰囲気が学生に伝わり始めたのではないか。今後さらに医療機関の集約を進め、診療報酬改正で手厚くなったハイリスク妊産婦管理加算などが、病院だけでなく医師の収入になるようにすることも必要だ」

スーパー総合周産期センター 昭和大病院(品川)、日赤医療センター(渋谷)、日大板橋病院(板橋)の3カ所。対象患者は脳血管障害や急性心疾患など6種類の妊産婦の救急疾患合併症▽羊水塞栓(そくせん)症など5種類の産科救急疾患の重症▽激しい頭痛や意識障害など6種類の症状があり重篤な疾患が疑われる症例-など。

(東京新聞、2009年5月15日)

****** 共同通信、2009年5月15日

出産費の地域格差1・5倍 所得水準反映、

平均42万円 厚労省研究班が初調査

 赤ちゃん一人当たりの出産費用について、厚生労働省研究班(代表者=可世木成明(かせき・しげあき)・日本産婦人科医会理事)が全国の医療機関を対象に実施した初めての実態調査で、都道府県別の平均額は最大1.5倍の地域格差があることが14日分かった。最も高い東京都が51万5000円、最も低い熊本県は34万6000円で、全国平均は42万4000円だった。

 研究班は、地域格差には住民の所得水準の違いが反映されていると分析。妊産婦と医療機関の双方に対し地域事情に合わせた財政的な支援が必要だとしている。

 調査したのは分娩料や入院料、新生児管理料、部屋代などの総額。今年1月、全国約2900の診療所・病院を対象に実施、59%の約1700カ所から回答を得た。

 通常の出産は保険適用外の自由診療で、価格設定は医療機関に任されている。医療機関別の出産費用をみると、最高の81万円と最低の21万8000円で4倍の格差があった。

 全国平均の約42万円は、公的医療保険から妊産婦に全国一律で支給される出産育児一時金の現行額の38万円を上回った。一時金は、10月から1年半に限り4万円の引き上げが決まっており、全国平均額には見合う水準となる。

 また、医療機関側が「適正と考える出産費用」は平均53万5000円。緊急時に備えた人員配置の経費などは妊産婦側に請求していない。研究班は「真に安全な出産管理には60万円は必要」と結論付けている。

(共同通信、2009年5月15日)


新型インフルエンザ:妊婦は合併症危険 「抗ウイルス薬を」

2009年05月15日 | 新型インフルエンザ

米疾病対策センター(CDC)の専門家の見解:

新型インフルエンザの症例分析から、妊娠中の女性が感染すれば、肺炎などの合併症を引き起こす可能性が高い。妊婦がインフルエンザの症状を示した場合、速やかにタミフルなど抗ウイルス薬を処方することが重要である。

日本産科婦人科学会も、新型インフルエンザではタミフルなどの抗インフルエンザ薬服用を推奨する旨の見解をホームページ上に公表しています。

**** NHKニュース、2009年5月15日19時33分

“妊娠中も抗ウイルス薬を”

 妊娠中の女性の新型インフルエンザ対策として、アメリカのCDC=疾病対策センターは、治療には抗ウイルス薬が有効だとしたうえで、感染の疑いがある人と接した場合にも抗ウイルス薬を予防的に服用することが必要だする報告をまとめました。

 アメリカのCDC=疾病対策センターの報告によりますと、アメリカ国内で新型インフルエンザウイルスに感染したか、感染の疑いがある妊娠中の女性は今月10日の時点で20人に上り、3人が入院しました。このうち、ぜんそくなどを患っていた33歳の女性は、抗ウイルス薬による治療を受けないでいたところ、容態が悪化し、赤ちゃんを出産しましたが、およそ2週間後に女性は死亡したということです。

 CDCは、妊娠中の女性は、通常のインフルエンザと同様に新型のインフルエンザでも重症になるおそれがあり、ぜんそくなどの病気がある場合には、特にリスクが高いとしています。

 CDCは、妊娠中の女性に対する抗ウイルス薬の効果や副作用について、情報は少ないが、新型のウイルスに感染したか、感染の疑いがある場合には、症状が出てから48時間以内に抗ウイルス薬の投与を始め、5日間続けるべきだとしています。さらに、感染の疑いがある人と接した場合にも、10日間予防的に服用するべきだとしています。

 これについて、日本産科婦人科学会の周産期委員会の副委員長で、北里大学医学部の海野信也教授は「妊娠中は免疫の機能が低下するなどの変化があるため、新型に限らず、インフルエンザに感染すると重症になりやすく、注意が必要だ。いちばん大切なのは感染しないようにすることで、ふだんのインフルエンザ対策と同じように予防に努めてほしい。抗ウイルス薬については、赤ちゃんへの影響よりも、インフルエンザの症状が重くなることのほうが問題なので、薬を処方されたら心配せずに飲んでほしい」と話しています。

(NHKニュース、2009年5月15日19時33分)

****** 毎日新聞、2009年5月13日

新型インフルエンザ:妊婦は合併症危険 「抗ウイルス薬を」

 【ワシントン小松健一】米疾病対策センター(CDC)のシュカット博士は12日、記者会見し、新型インフルエンザの症例分析から「妊娠中の女性が感染すれば、肺炎などの合併症を引き起こす可能性が高い」と指摘した。

 そのうえで博士は、感染が確認されなくても妊婦がインフルエンザの症状を示した場合、「速やかにタミフルなど抗ウイルス薬を処方することが重要」と述べ、医療機関に注意を促した。世界の感染者数は34カ国・地域で5936人となった。

(毎日新聞、2009年5月13日)

****** 日本産科婦人科学会ホームページ
http://www.jsog.or.jp/news/html/announce_20090508.html

お知らせ

 妊婦さんはウイルスに感染した場合、基本的に重症化しやすいとされており、今回 の新型インフルエンザについても同様と考えられております。

 ついては、医師からタミフルやリレンザなどの抗インフルエンザ薬を処方された場合には、服用を推奨いたします。

             平成21年5月8日
    社団法人 日本産科婦人科学会
                          理事長  吉村泰典
         周産期委員会委員長 斎藤 滋

(日本産科婦人科学会ホームページ)

****** 東京新聞、2009年5月13日

抗ウイルス薬 投与、大半不要 

新型インフル感染者

 【パリ=清水俊郎】新型インフルエンザの感染拡大で、世界保健機関(WHO)の進藤奈邦子医務官は十二日、ジュネーブでの定例会見で、世界の医療関係者向けの指針を近く公表すると明らかにした。

 指針では、抗ウイルス薬は感染患者の大半には必要ないとし、妊婦やお年寄り、糖尿病や心臓病など慢性疾患のある人、重症者には投与を勧める。

 また、感染の中心のメキシコと米国の症例をWHOが調べたところ、新型インフルエンザは今のところ軽い症状の人が多く、抗ウイルス薬の投与が必要なかった人も多かった。入院が必要だったのは10%程度だった。

 ただ、進藤医務官はこの割合が「通常の季節性インフルエンザよりもはるかに高い」とした上で「ハイリスクの人たちと重症者にだけ抗ウイルス薬の投与を勧めるだろう」と述べた。

 解熱鎮痛剤アスピリンの使用は効果が薄く、肝臓を傷める恐れがあると指摘した。

 さらに新型インフルエンザのウイルスが今後、タミフルなどの抗ウイルス薬に耐性を持つように変異する恐れも指摘した。

(東京新聞、2009年5月13日)


新型インフル:「水際対策だけで食い止め不可能」WHO

2009年05月14日 | 新型インフルエンザ

コメント(私見):

新型インフルエンザの感染確認者数は、34か国・地域で計6121人に達しました。世界の感染確認者の集計数は、ニュースを見るたびにどんどん増えています。

WHOの専門家(進藤奈邦子・医務官)は、「症例数の集計は、もはや正確に感染状況を反映しているわけではない」と述べました。また、「水際対策だけでは食い止められない。もうウイルスが日本国内に入ってきていると思って行動しなければならない」とも述べました。

免疫の有無により、健康被害の状況は大きく左右されます。例えば、日本人の多くが免疫を持つ季節性インフルエンザでは毎年人口の1~2割が感染して、1~3万人が死にます(致死率:0.05~0.1%)。ところが、住民に免疫のないマダガスカル島に季節性インフルエンザが02年に上陸した際は、罹患率は67%、致死率は2%に達しました。

新型インフルエンザの場合、ウイルスに対する免疫がないので、パンデミックとなった場合は全人口の2~4割が感染する可能性があります。日本の全人口の25%の感染と想定した場合、ウイルスの毒性がアジア風邪並み(致死率0.53%)なら、入院患者53万人、死者17万人程度。スペイン風邪並み(致死率2%)の毒性なら、入院患者200万人、死者64万人程度となります。(岡部信彦・国立感染症研究所感染症情報センター長)

人類とウイルスとの戦いは、人類が存続する限り、これからも果てしなく続きます。犠牲者は必ず出ます。万が一、強毒性の新型インフルエンザ・ウイルスが蔓延した場合には、太平洋戦争以上のペースで死者が続出する可能性もあります。我々は、正確な情報を集めて、万全の準備を整え、健康被害を最小限に食い止めるように落ち着いて行動するしかありません。

**** 毎日新聞、2009年5月13日12時5分

新型インフル:「水際対策だけで食い止め不可能」WHO

 【ジュネーブ澤田克己】世界保健機関(WHO)で新型インフルエンザ対策を担当する進藤奈邦子医務官は12日、記者団に「水際対策だけでは食い止められない。もう(ウイルスが国内に)入ってきていると思って行動しなければならない」と述べた。

 進藤氏は、日中などアジア各国が水際対策に力を入れている理由として、「新型肺炎(SARS)やH5N1型高病原性鳥インフルエンザ流行の経験が背景にあるのだろう」との見方を示した。

 進藤氏は「症例数の集計は、もはや正確に感染状況を反映しているわけではない」と述べた。

(毎日新聞、2009年5月13日12時5分)

**** 共同通信、2009年5月13日23時56分

新型インフル、感染者6千人超える  死者は65人に

 新型インフルエンザの感染者数は日本時間13日午後11時半現在、34カ国・地域で計6121人に達した。メキシコで感染確認者が164人増えたほか、スペインの患者数が欧州で初めて100人に達し、中国と香港でそれぞれ2例目となる感染者が確認されるなどした。

 死者はメキシコで2人増え、4カ国計65人。

 先月23日に米疾病対策センター(CDC)が米国内の7人が豚インフルエンザに感染したと発表して以来、各国で新型インフルエンザへの感染疑い例や感染確認が相次いだ。

 世界保健機関(WHO)は同月27日、6段階の新型インフルエンザ警戒水準(フェーズ)のうち、人から人への感染能力が高い新型のウイルスが、地域レベルの集団感染を起こすようになった状態を示す「4」に引き上げ。同月29日には、世界的大流行(パンデミック)が「差し迫っている」と表明、「5」に引き上げた。

 日本や韓国、中国でも感染が確認されているほか、今月12日には東南アジアで初となるタイでの感染者も確認されるなど感染地域は拡大している。

 WHOは、警戒水準をパンデミックを意味する「6」に引き上げる条件として、「地域社会レベルでの持続的な感染拡大」が米州以外で確認されることを挙げており、スペインでの感染状況に注目しているとみられる。(共同)

(共同通信、2009年5月13日23時56分)

**** 毎日新聞、2009年5月13日東京夕刊

新型インフルの「最悪」 冬に再襲?

闘いはまだ始まってもいない

 新型インフルエンザの感染者は13日現在、世界で6000人に迫る勢いで、日本でも発症者が出た。症状は普通のインフルエンザとほぼ同じらしいが、安心して良いのだろうか。最悪の場合に備え、専門家にワーストシナリオを聞いた。【國枝すみれ】

 <専門家が描く悲劇的シナリオ>

 ・免疫なく人口の2~4割が罹患

 ・爆発的感染で戦時並み犠牲

 ・高病原性の出現

 ◇「それでも理性保って」

 ★「スペイン」の悪夢

 慶応大学の速水融名誉教授(歴史人口学)は、新型インフルエンザは1918年から3年間猛威をふるったインフルエンザ「スペイン風邪」に似ていると警告する。スペイン風邪のウイルス構造は今回の新型インフルエンザと同じH1N1型で、やはり弱毒型だった。だが最終的に世界で2500万~4500万人の死者を出した。

 速水氏によれば、スペイン風邪は最初、人々の注意をひかなかった。1918年3月に米カンザス州の軍基地で発生。新兵数千人が罹患(りかん)し、数十人が死んだ。「3日風邪」と呼ばれ症状は軽かった。ところが8月後半までにウイルスが変異。最初の感染爆発が起きた米国の港町ボストンでは病院に死体が積み上がる惨状となった。

 スペイン風邪は日本をどのように襲ったのか。東日本の32紙の報道によると、1918年4月3日に最初の感染報道が、5月中旬には死者が出るが、数件で終わる。はやりの症状は軽かった。「最初は相撲風邪と呼ばれていた。力士が次々と休場したから」

 しかし同年10月から再び死者が発生。11月だけで13万人以上が死亡。翌19年の12月~20年2月にも流行に襲われ、ピークの20年1月には7万人以上が死んだ。死者の総計は45・3万人。「日露戦争の戦死者だって約8万人だったんだよ。いかに多くの国民が短期間に死んだかが分かるでしょう」と速水氏。

 スペイン風邪は2波、3波と襲いかかり、そのたび致死率は高まった。今回も南半球にウイルスが滞在し、日本がウイルスに適した乾いた冬になった時に再襲する可能性はある。ウイルスという概念さえなかった当時に比べ、現代社会は薬やワクチンがあり、情報網も発達している。だがジェット機やエレベーター、全館空調システムのビルなど密閉空間も生まれ、ウイルスに味方するものも増えた。速水氏は言うのだ。「新型インフルエンザとの闘いはまだ始まってもいない」

 ★免疫がない

 免疫の有無で状況は大きく異なる。日本人の多くが免疫を持つ季節性インフルエンザでは毎年人口の1~2割が感染、1万~3万人が死ぬ。致死率は0・05~0・1%。ところが、住民に免疫のないマダガスカル島に季節性インフルエンザが02年に上陸した際は、罹患率は67%、致死率は2%に達した。

 そして我々は新型インフルエンザに対する免疫を持っていないのだ。

 厚生労働省の新型インフルエンザ専門家会議の議長で、国立感染症研究所の岡部信彦・感染症情報センター長は、過去のパンデミックの感染率から推測して、新型のインフルエンザが国内で広がった場合、全人口の2~4割が感染する可能性があるという。25%の感染と想定した場合、57年に流行したアジア型並み(致死率0・53%)の強さなら、入院患者は53万人、死者は17万人。スペイン風邪並み(致死率2%)なら、200万人が入院し、64万人が死亡する計算だという。

 今回の新型インフルエンザの致死率は、メキシコで0・4%だ。医療が進んでいる日本での数字は低くなるとみられる。

 しかし、岡山大大学院医歯薬学総合研究科の土居弘幸教授(疫学・衛生学)は「今回の新型インフルエンザがもっと病原性や感染力を強めて、世界にまん延する可能性がないともいえない」と話す。

 糖尿病、人工透析、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)など基礎疾患を持っている人や妊娠後期の妊婦はインフルエンザが重症化しやすい。

 土居教授はいう。

 「必ず犠牲者は出る。仮に2、3カ月に64万人が死ぬようなことになれば太平洋戦争以上のペースだ。数カ月の間にあの人もこの人も死んだという事態が起きる。その時に冷静な対応をすること。いくら心配しても状況は変わらない。変えられるのは自分の行動だけだ」

 ★強毒性の恐怖

 岡部氏にもワーストシナリオを聞いてみた。

 「H5N1ですね」と迷わず答えが返ってきた。トリの間で流行している高病原性のインフルエンザウイルスだ。人に感染した例は数百件あり、一部では人から人への感染例も出ている。感染した場合、脳、心臓、肝臓、腸、血管内膜など全身にウイルスが広がる。WHO(世界保健機関)統計によれば、致死率は56%、10代に限れば73%にもなる。危険度は今回の新型インフルエンザの比ではない。

 また、地球上には豚とトリと人が一緒に暮らす地域もある。豚の体内でトリと人のウイルスが混じり合い、トリのウイルスの強毒性を保ったまま人間に罹患するタイプの豚インフルエンザウイルスが出現することもありえる。

 新型インフルエンザは今のところタミフルとリレンザが効くが、耐性を持つウイルスが生まれるシナリオも考えられる。

 強毒の新型インフルエンザがまん延したらどうするのか。土居教授が強調するのは理性だ。不要不急の外出はしない、マスクをして、うがい、手洗いをする、症状が出たら病院に行かず発熱外来に電話する、など決められたことを守ることが重要だという。

 「行動は制約されますが、空爆直下、戒厳令下と思えばいいわけです。サンフランシスコ大地震の時は暴動が起きたが、阪神淡路大震災では何も起きなかった。日本人の美徳を発揮すればいい」

 最悪のシナリオは、爆発的な感染で患者が一度に医療機関に押し寄せ、社会がパニックになって経済がストップすることだ。速水氏は「(ピーク時の外出を避けるため)3週間分の食料は備蓄しておきなさい。マスクは使い捨て」という。

 今ですら店頭でマスクは品薄だが、足りない場合は? 「70度以上のお湯で熱湯消毒してもいいよ。ウイルスは熱に弱いから」。マスクにアルコール(エタノール消毒液)をスプレーして、一晩干すという手もあるという。

 情報を集めて準備を整え、万一の場合は落ち着いて行動するしかなさそうだ。

(毎日新聞、2009年5月13日東京夕刊)