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各県には、総合周産期母子医療センター、地域周産期母子医療センターが整備され、地域の病院や診療所などと緊密に連携して、それぞれの地域の母子の健康を支えるために、多くの医療スタッフが24時間体制で周産期医療に取り組んでいます。
しかし、最近では、地方の医療現場で、この周産期医療の担い手(助産師、産婦人科医、小児科医、麻酔科医、など)が大幅に不足し、各地で非常に大きな問題となっています。
この独立行政法人国立病院機構・高知病院では、ホームページの情報によれば、産婦人科医が(院長先生を含めて)8人、小児科医も9人在籍し、マンパワーもしっかりと整っているようです。
それぞれの地域の状況に応じて、みんなの知恵を絞って、確固とした周産期医療体制を構築していく必要があります。また、将来の地域の周産期医療を支える若手医療人の育成にも力を入れてゆく必要があります。
****** 毎日新聞、2006年9月29日
特集:地域医療を考える 「周産期」医療に取り組む高知病院----福家・産科医長に聞く
◇母子の健康支える、24時間体制で万全ケア
「周産期」と呼ばれる赤ちゃんがお母さんのおなかの中にいる時から出産後の新生児までの総合的な医療に取り組んでいる独立行政法人国立病院機構・高知病院(高知市朝倉西町、森下一院長)。「赤ちゃんが生まれたら終わり」ではなく、母親の心理ケアや万一のハイリスク児に備えた新生児専用の集中治療室も完備し、24時間体制で母子の健康を見守る福家義雄・産科医長(51)に取り組みなどを聞いた。【聞き手は毎日新聞高知支局長・小泉邦夫】
----周産期医療について、説明して下さい。
福家医長 周産期医療とは、妊婦から新生児までの分娩前後の母子に対する医療をさします。妊娠も未熟児を含む新生児も異常ではありませんが、ほんの少しのことで病気になりやすい状態になっています。ただ、この時期の病気の特徴というのは妊娠中から予測、予防が可能であったり、胎児・新生児についても病気になっても早く診断することによって治療できることが多いのが特徴です。母児が安全に妊娠、出産を終えて家庭に戻って子育てをしていけるように社会全体で応援してあげることが大事なんです。歴史を説明すると、1965(昭和40)年に母子保健法が制定され、母体の保護と胎児、新生児への医療が進展してきました。さらに、昭和50年ぐらいから、特に呼吸管理の進歩などによって新生児救急医療体制も全国に整備されてきました。
----周産期医療の必要性を教えて下さい。
福家医長 ほとんどの妊婦さんは順調に妊娠が経過して分娩し、元気な赤ちゃんを産み育てていかれるのですが、中には何らかの異常を来たし、医療の手助けを必要とすることがあります。私たち母子医療にかかわる者は、日ごろからそういう異常が起きないように援助させていただいていますが、怖いのはさっきまで元気だったのに急変するということがしばしばあるということです。急に早産になったり、大量出血したり、胎児の機能が急に悪くなったり、生まれた赤ちゃんについても未熟児で生まれたり、新生児特有の症状が出たりします。この場合、重篤な合併症を持つ妊婦や新生児に適切な医療を行うには産科、小児科のみならず、小児外科、心臓血管外科、脳神経外科、整形外科、形成外科、小児循環器科、小児神経内科、内分泌科など多数の診療科、専門科の協力が必要です。
----あまり聞き慣れないNICU(新生児特定集中治療室)とは、どんな施設ですか。
福家医長 正常新生児や軽い病気の赤ちゃんは分娩した施設で診ていくことができますけれども、病気の状態によっては小児科・新生児科医による治療が必要となります。さらに、未熟児・重症の赤ちゃんの集中的な治療を行うにはNICUで、高度な医療を集中的に行う必要があります。厚生労働省の施設基準がありまして、高知県内では高知医療センターに6床、高知大学付属病院に6床、当病院に3床あります。体調が不安定な未熟児や新生児では秒単位、分単位で病状が急変することがありますので、24時間体制でのケアが必要です。NICU専任の医師、看護師が治療に当たります。
◇他病院と連携、患者情報を共有
----産科医不足が社会問題にもなっていますが、より広い他病院との連携も重要ですね。
福家医長 高知県では平成9年から周産期医療支援システム方式が、平成10年から高知県周産期医療協議会が設けられ、高知医療センターを中心とした医療関係者の研修事業も始まっています。さらに、産婦人科、小児科の各種会合を通して患者情報の共有、医学知識のレベルアップが図られています。平成17年3月から総合周産母子センターが高知医療センターに開設されまして、心配のあるいわゆるハイリスク妊婦、新生児の受け入れ体制が大幅に増加して以前にあったような県外の施設への搬送などは特別な疾患を除いてほとんどなくなっています。ただ、多胎や重症例の入院が重なった場合に、病院間、病院内での調整に戸惑うこともありまして、早めに情報を共有することを目指しています。救急患者の紹介、搬送については、さらに単純明快な手段で連絡しあえる体制をつくるべきだと考えています。新生児ではNICUで急性期の治療が終わっても退院できない児が増加しています。このようなベビーの受け入れ施設が少ないということもNICUの受け入れ能力の低下になっています。いわゆる後方病床の拡張、支援体制の強化が必要です。
◇新生児集中治療室の増床も
----周産期医療に対する高知病院の課題を聞かせて下さい。
福家医長 新生児には特別な病室が必要であり、新生児医療を担うスタッフの確保も厳しい状況にあります。スタッフの労力からも多胎などの早産が重なると、まれに県全体の収容能力を超えることもあります。今後の対応としては病院間での母児移動、県外施設との連携も必要になってくると思います。当病院でもNICUの増床。さらに、母体胎児集中治療室(MFICU)の整備も検討中です。
----現在、妊娠中の人や里帰り出産をされる方もあると思います。何かアドバイスがあれば、聞かせて下さい。
福家医長 産科、小児科の病院間や産婦人科の診療所やクリニックとの間では、日ごろから連携ができています。ですから、いずれの産科施設でもきちんと妊婦健診を受けていらっしゃれば、万一異常があった場合には、症状に応じて対応可能な高次施設への紹介、移動、母体搬送、新生児搬送は可能です。安心して県内で妊娠、分娩、子育てをしてほしいと思っています。
(毎日新聞、2006年9月29日)