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これからも漢方が健康保険で使えるように
去る11月11日(水)の行政刷新会議の事業仕分け作業で、医療用漢方製剤(漢方エキス製剤・煎じ薬)を健康保険から除外する、という案が出されました。
現在、医師の7割以上が漢方薬を使用して、国民の健康に寄与してきました。また、全国の医学部・医科大学でも医学教育の中に漢方教育が取り入れられ、日本東洋医学会で専門医教育も行われ、専門家育成も進んでいます。
わが国が迎えている少子高齢社会の中で、われわれ国民の健康を守るためになくてはならない漢方薬・煎じ薬が健康保険で使えなくなることに、断固反対をします。
平成21年11月20日
社団法人日本東洋医学会 会長 寺澤捷年
日本臨床漢方医会 理事長 石川友章
NPO健康医療開発機構 理事長 武藤徹一郎
医療志民の会 事務局長 木戸寛孝
本趣旨にご賛同いただけます皆様からの
ご署名をお願いいたします。
****** コメント
11月11日(水)の行政刷新会議事業仕分け作業の結果、漢方薬を保険給付からはずすとの財務省案にワーキング・グループ15名のうち11人が賛成しました。今後、12月上旬には行政刷新会議仕分け結果の審議が行われ、そこで決定されると他の案件とともに、執行される危険性が大です。
本日、日本東洋医学会より郵便物が届き、封を開けてみると、「署名活動のお願い」と題する文書と署名用紙が同封されてました。ちょうどお昼休み時で、医局談話室には昼食を食べている同僚医師が大勢いましたので、趣旨を説明して署名を募ったところ、あっという間に数十人の署名が集まりました。
消化器科や外科の医師達にとって「大建中湯」は頻用薬で、これが保険給付からはずされると非常に困ると言ってました。呼吸器科の医師は、「小青竜湯」や「麦門冬湯」などの咳止めの薬は日常的によく処方していると言ってました。産婦人科でも、月経困難症、更年期障害、妊娠中の諸病、化学療法や放射線治療の副作用対策など、漢方薬を処方する機会は非常に多いです。
我々の世代だと、6年間の正規の医学部教育の中で、漢方に関する話題は1回も出てきませんでした。私の場合も、最初は何も知らず、一般向けの漢方に関する入門書から読み始めて、地域で開催される漢方勉強会などにも時々顔を出したりして、独学で少しずつ漢方の勉強をしてきました。漢方薬と言えば「葛根湯」くらいしか知らないという医師の方が圧倒的に多いことは確かです。現在では、医学部教育の中に漢方教育が取り入れられています。
日本東洋医学会のホームページでも、署名募集ホームページが開始され、広く電子署名を募ってます。
****** 参考記事:
がん患者に漢方薬
産婦人科と漢方医学
女性のための漢方セミナー 気になる不調、これって更年期?
漢方医学について
漢方の腹診法
漢方の脈診法
****** 朝日新聞、2009年12月1日
漢方薬の保険除外に反対署名 事業仕分け、医療界が反発
政府の行政刷新会議の事業仕分けに対し、医療現場から反発の声が相次いでいる。公的医療保険の対象から外す候補に漢方薬が挙げられたことから、日本東洋医学会など4団体は1日、保険適用の継続を求める陳情書を、約27万人の署名簿を添えて長妻昭厚生労働相あてに提出。削減対象になったほかの医療関係学会などの間でも戸惑いが広がっている。
事業仕分けで保険から外す対象になったのは、医師の処方箋がいらない市販薬の類似薬。範囲について刷新会議は「今後も十分な議論が必要」と述べるにとどめたが、事業仕分け用に財務省が作った文書には「湿布薬・うがい薬・漢方薬などは薬局で市販されており、医師が処方する必要性が乏しい」と書かれた。
同医学会の寺澤捷年会長(千葉大大学院教授)は患者と記者会見し、「同じ漢方薬でも薬局で販売される薬は、安全性を考慮して、有効成分の量が医療用漢方薬の半分に抑えられている」と述べた。
(以下略)
(朝日新聞、2009年12月1日