コメント(私見):
現代の周産期医療は典型的なチーム医療の世界で、産科医、助産師、新生児科医、麻酔科医などの非常に多くの専門家たちが、勤務交替をしながら一致団結してチームとして診療を実施しています。
その周産期医療チームの中で、産科医は少なくとも4~5人は必要で、実際問題としては、産科5人体制であっても十分とは言えません。新生児科医や麻酔科医も、同様にそれぞれ少なくとも4~5人は必要です。また、助産師は各勤務帯に複数配置する必要があり、最近は助産師外来を充実させる社会的ニーズも高まり、基幹病院での正常分娩の件数も増加してますから、助産師も30人~40人程度は必要と思われます。
地域内に周産期医療の大きなチームを結成し、毎年、新人獲得・後進育成などのチーム維持の努力を積み重ねて、この医療チームを十年先も二十年先も安定的に維持・継続していく必要があります。
産科崩壊に対する緊急支援策
****** 毎日新聞、静岡、2008年7月26日
藤枝市立総合病院:産科診療中止へ
「1人で診療不安」 医師が退職願
医師1人体制で、今月から産婦人科の分娩(ぶんべん)受け付けを再開した藤枝市立総合病院の毛利博院長は25日、再び分娩の受け付けを中止したことを明らかにした。着任した男性産科医(56)が1人での診療に難色を示し、退職願を提出したためで、産科の診療も中止になる見通し。
医師引き揚げで一時受け付けを中止した同病院は、医師1人が確保できたことから、今月からリスクの低い分娩に限り再開。だが、毛利院長によると、医師は国からの派遣も含めた2人体制を想定して着任したため、「1人では不安。(手術が)120%安全でなければできない」として、18日に退職願を提出した。
今月の分娩予約はなく、8月以降の22件は他院を紹介する方針。毛利院長は「開業医や他診療科も支援すると説得したが、それでも不安ということだった」と苦渋の表情を見せた。【稲生陽】
(毎日新聞、静岡、2008年7月26日)
****** 読売新聞、静岡、2008年7月26日
藤枝市立病院の産科休止
先月着任の医師退職願
藤枝市の北村正平市長は25日、記者会見し、同市立総合病院の産婦人科に6月に着任したばかりの男性産科医から退職願が出されたことを明らかにした。産婦人科に産科医はこの医師しかおらず、産婦人科は出産の新規受け付けを取りやめ、8月以降の出産をすでに予約した22人については他の医療機関を紹介する。婦人科の診察は継続するが、産科は事実上休止に追い込まれた。
同病院によると、医師は「一人では緊急の際に不安がある。万全の態勢ができなければ辞めたい」として、18日に毛利博院長に退職願を提出した。医師は6月1日に着任し、同月いっぱいでほかの産科医3人が退職してからは一人となっていた。産婦人科は今月から、出産予約を月10人に制限し、危険性の高い出産の受け入れを取りやめたうえで、開業医や他病院からの応援も得て診療に当たってきた。
(読売新聞、静岡、2008年7月26日)
****** 静岡新聞、2008年7月26日
分べん予約を休止、藤枝市立病院
産科医「辞意」で
唯一の産科医が辞意を漏らしていることが分かった藤枝市立総合病院(藤枝市駿河台)の毛利博院長は25日、当面、新たな分べんの予約受け付けを休止する方針を明らかにした。既に来年3月まで、22件の予約を受け付けたが、今後、周辺の病院などに受け入れを依頼する。
院長と、管理者の北村正平市長が会見で明らかにした。両氏は「(医師の)辞職の意向は固い」との感触を示した。新たな医師の確保のめども立っていないため、休止を判断せざるを得なかったという。
院長によると、医師は18日に「退職願」と書いた文書を出してきた。内容は辞職する旨ではなく、診療体制の在り方などが中心で、「120%万全の体制でないと自信がない。医師が2人以上いる所で働きたい」などと理由を述べたという。
院長は「今後、地元住民に迷惑を掛けないようにしたい」と強調し、市長も「医師ともう少し話し合いたい」としている。
(静岡新聞、2008年7月26日)
****** 静岡新聞、2008年7月25日
新任産科医が辞意 藤枝市立総合病院
藤枝市立総合病院(藤枝市駿河台、毛利博院長)に6月1日から赴任している50代の男性産科医が、周囲に辞意を漏らしていることが24日、明らかになった。同院や市は慰留に努めているが、赴任からわずか2カ月弱で辞職する可能性もあり、同院の産科医がゼロになる恐れが出てきた。
複数の関係者によると、24日の市議会6月定例会終了後、毛利院長らが、病院関係の常任委員会や特別委員会の正副委員長らに状況を説明した。医師は「1人では自信がない」と周囲に言い始めているという。
同院は医師を確保できたため、今月から1カ月につき10人限定で分娩(ぶんべん)の予約の受け付けを再開した。今月の予約はゼロだが、8月は2件入っているという。
同院は、3人の常勤の産科医が6月末で退任した。同院は新たな医師を探し、佐賀県内で開業していた男性医師の採用にこぎつけた。厚労省は、同院は産科医確保のめどが立ったとして、医師の派遣を見送ったばかりだった。同市出身の別の産科医とは現在も採用に向けて交渉中という。
(静岡新聞、2008年7月25日)
****** 毎日新聞、静岡、2008年6月26日
藤枝市立総合病院:医学部生Uターンを 産科医不足で市長が手紙郵送へ
藤枝市立総合病院の産科医不足問題で、同市の北村正平市長は25日、全国の大学に通う同市出身の医学部5、6年生全員に、地元での就職を勧める「市長の手紙」を近く出す方針を明らかにした。産科だけでなく幅広い診療科を募る予定だ。
現在分娩(ぶんべん)受け付けを休止している同病院産科は、来月から医師1人体制で再開する。ハイリスク出産は扱わず、月間10人限りなど大幅に規模を縮小する。北村市長は産科医は最低4人は必要として、「将来病院が目指す姿も手紙に書き、何とか郷土愛に訴えたい」としている。また北村市長は、地域内の病院の連携や企画分野を担う「病院局」の創設と、来年度以降に研修医への補助金制度、医学生向け奨学金制度などの創設を検討していることも明らかにした。【稲生陽】
(毎日新聞、静岡、2008年6月26日)
****** 静岡新聞、2008年6月21日
産科受け付け再開へ 藤枝市立病院
藤枝市立総合病院の毛利博院長は20日の市議会全員協議会で、7月1日から産科の受け付けを再開することを明らかにした。今月から常勤産科医を新たに採用し、分娩(ぶんべん)再開の見通しが立ったため。
同病院によると、外来診察は、産科が月、火、木曜の午前、婦人科は水、金曜の午前と木曜の午後。紹介状を持っている人も含め、事前に電話での予約が必要という。
分娩予約は産科医が1人のため、月10人までに制限する。予約対象は、妊娠初期でほかの病院で分娩予約をしていない人と、志太榛原地域以外からの里帰り分娩の人。ハイリスク分娩は行わない。
毛利院長は月10人に制限したことについて、「医師数を考えると、(10人が)1つのポイント。今後、いろいろな方法で医師の確保に努めたい」と答えた。
(静岡新聞、2008年6月21日)
****** 読売新聞、静岡、2008年6月21日
分娩受け付け限定再開へ
藤枝市立病院
産婦人科医の退職で分娩(ぶんべん)の新規受け付けを休止していた藤枝市立総合病院は、7月1日から限定的な形で新規受け付けを再開する。20日の同市議会全員協議会で、毛利博院長が明らかにした。
同病院の産婦人科に浜松医科大から派遣されていた常勤医師3人が今月までで退職することになり、同病院は今月から分娩の新規受け付けを休止。市が医師確保に奔走した結果、佐賀県で開業していた男性産科医1人が今月から同病院に着任。もう1人とも交渉している。
ただ、特例措置としての厚生労働省からの産科医の派遣は、「医師不足改善の見通しが立った」として見送られた。
当面は医師が1人のため、同病院は7月以降、外来診療は完全予約制とするとともに、分娩予約の受付は月10人に限定する。分娩予約を受け付けるのは妊娠初期で、他の病院に分娩予約をしていない人や、志太・榛原地域外からの里帰り分娩に限るという。
(読売新聞、静岡、2008年6月21日)
****** 静岡放送、2008年6月20日
分娩月10人に制限 藤枝市民病院
藤枝市の北村新市長の課題のひとつ、医師の退職によって分娩休止が心配されている藤枝市立総合病院は来月、分娩の数を月10人に制限して、産婦人科の診療を継続する事になりました。
藤枝市立総合病院では、浜松医大から派遣された産婦人科の常勤医師3人が今月末で退職し、来月から後任の常勤医師1人が分娩に当たります。来月1日からは分娩数を月10人とし、受け付ける患者を妊娠初期の患者と、志太榛原地域以外からの里帰り分娩に制限します。
これにより、分娩数はこれまでの年間700人から120人に大幅に縮小されることになります。また、外来診療は完全予約制で、産科が月、火、木曜、婦人科が、水、木、金曜となります。
(静岡放送、2008年6月20日)
****** 朝日新聞、静岡、2008年6月12日
めど立たぬ医師確保/藤枝市・富士市
藤枝市立総合病院と富士市立中央病院の産婦人科医引き揚げ問題をめぐり、医師確保対策が混迷している。県は厚生労働省を通じて、藤枝に医師を派遣してもらう方向で調整を進めていたが、結局、実現せず、富士でも医師確保のめどは立っていない。問題解決の糸口はまだ見えない。(竹田麻衣)
藤枝市立総合病院で問題が表面化したのは今年1月。常勤の産婦人科医3人を派遣している浜松医大が、6月末で3人を引き揚げ、他の地域に移す考えを表明した。
翌2月、厚労省は県に対して医師派遣の調整を打診してきた。これは、政府・与党の緊急対策の一環で、1月に厚労省が行った実態調査の結果、藤枝市立総合病院が「支援措置が必要」と判断された七つの医療機関の一つとされたことを受けたものだった。
県は3月の医療対策協議会で、厚労省との協議に入ることを決めた。ところが、厚労省は5月下旬、同病院が6月1日から産科医1人を採用し、別の医師1人とも交渉段階にあるとして「産科医2人確保の見込みが示され、医師不足改善の見通しが立った」と判断。「派遣不要」との見解を県に伝えた。
これで、協議は白紙に戻り、県も今月6日の医療対策協議会で断念を明らかにした。
病院の独自の人材確保の取り組みが、思わぬ結果を招いた形だが、24時間体制でハイリスク分娩(ぶんべん)への対応も維持するには、常勤医が4人は必要とされている。県は浜松医大から非常勤産科医を週3回派遣する方針を示しているが、具体的な態勢は決まっていない。
県医療人材室は「医師の独自確保や、周辺の病院との連携で、何とかやっていけると判断されたのだろう。全国的にはもっと厳しい地域があるだろうが、(厚労省の)見解が妥当かどうかは、正直わからない」と首をかしげる。
ただし、厚労省の医師派遣は、受け入れ側に大きな負担がかかる。医師1人を受け入れると病院は約3千万円、県は約2350万円を負担しなければならない。県の担当者は「国に踊らされたような結果」と漏らしながら、「仮に派遣を受け入れても、いずれ病院の財政を圧迫する結果になったかもしれない」と話した。
派遣元の東京慈恵医科大から、今年度いっぱいで産婦人科医師全4人を引き揚げる意向を示されている富士市立中央病院でも、医師確保のめどは立っていない。市内でハイリスク分娩や救急患者を受け入れているのは同病院だけで、周辺病院も志太・榛原地区に比べ少ないことから、県の担当者は「このままでは藤枝市立総合病院よりも危機的状況になる」と話している。
藤枝市の松野輝洋市長は「はしごを外されたような心境」と言う。
市は「補正予算で措置しても受け入れたい」として、難色を示す関係者を説得してきた。しかし、厚労省と県との協議では「国の派遣医以外に自助努力で医師を確保」「産婦人科の指導医が必要」など難しい条件が提示された。
最終段階で派遣候補として上がったのは防衛医大出身の若い医師だった。「指導医が複数必要」とされたため、市は県を通じて、この条件に合う榛原総合病院に派遣医を受け入れてもらい、代わりに榛原から医師1人を派遣してもらうという「三角トレード」交渉まで進めた。
その一方、募集に応じてきた佐賀県の元開業医との交渉を始め、5月12日には内定を出すところまでこぎ着けていた。「自助努力」が実を結ぶかに見えた矢先の「打ち切り通告」だった。
◇
富士市立中央病院と富士市は、「妊娠期間を考えると、今月末までに医師確保のめどが立たなければ、新たな患者の受け入れは出来なくなる」と医師確保に奔走している。
同病院総務課は9日の市議会全員協議会で「東京慈恵医科大学へ引き続き医師の派遣について折衝していくほか、医師確保のための方策を図っていく」と説明した。
鈴木尚市長は、医師の待遇改善の一環として、新たに分娩(ぶんべん)業務手当(1件3万円)を支給するための条例改正案を市議会に提案することにしている。【根岸敦生、橋本武雄】
(朝日新聞、静岡、2008年6月12日)
****** 静岡新聞、2008年6月7日
藤枝市立病院、産科医追加確保へ
県対策協で報告
担当医の退職で産婦人科の存続が危ぶまれていた藤枝市立総合病院で、6月から診療を始めた医師1人に加え、同市の自主的な努力で2人目の医師が確保できる見込みとなったことが6日、県庁で開かれた県医療対策協議会で報告された。厚生労働省は、県と検討していた同病院への産科医の派遣について、「医師不足改善の見通しが立ったため、医師派遣の必要はなくなった」との見解を示した。
同病院は現在、病院勤務の産科医1人と交渉を行っている。国からの医師派遣については、2月に厚労省から特例措置として打診があったが、今後は要請を見送らざるを得ない状況となった。
この日の協議では、委員から「(本県の)公的病院はほとんどが基幹病院の役割を果たしているのでなくせない」「医師確保のためには負担軽減が必要」「公的病院間で医師派遣などの連携を強めるべき」などの意見が出た。
独自ルートで模索 藤枝市立病院
国から産科医の派遣が見送られることになった藤枝市立総合病院。「(派遣見送りの)再考をお願いしたい」(松野輝洋市長)としているが、独自ルートで1人の医師の採用に成功し、今後も知り合いのつてなどで医師確保を図る構えだ。
同病院3人の常勤産科医全員が、退職することが明らかになったのは1月。以降、自治会連合会や議会が医師の派遣元の浜松医大に協力を要請したり、病院幹部が東京に出向きじかに話を聞いたりと、病院と住民、議会、行政が精力的に動いてきた。
今月から、佐賀県内で開業していた医師が診療を始めたが、同病院に視察に訪れた際、院長ら幹部が出迎えて説得に努めた。「好印象を持ってもらいたかった」と関係者は言う。
同病院の医師や職員には、地元の高校の卒業生が多く、地元へのUターンを考えている医師がいるかどうか探している。さらに、出入り業者にも片っ端から当たっているほか、医師あっせんの民間リクルート会社も活用している。
今月20日、市長に就任する北村正平氏は医師確保を喫緊の課題と強調している。
(静岡新聞、2008年6月7日)
****** 読売新聞、静岡、2008年6月7日
産婦人科医派遣見送り
「藤枝市立病院は改善」国が通告
藤枝市立総合病院の産婦人科の医師3人が6月末で退職する問題で、県は6日、厚生労働省への医師派遣要請を断念したことを明らかにした。同病院で6月1日から新しい産婦人科医1人が勤務を始め、厚労省から「医師不足改善の見通しが立った」との見解が示されたためという。国からの医師派遣を前提に産科医療の態勢立て直しを進めていた同市は、方針転換を迫られることになる。
県庁で6日開かれた県医療対策協議会で、県から派遣要請断念が報告された。
県厚生部の幹部によると、厚労省は若手医師を派遣するとして、約1か月前には人選の最終段階に入っていた。その後、同市が独自に佐賀県内で開業していた男性産科医を市立総合病院の医師として確保し、さらに別の産科医1人とも交渉を始めた。
こうした動きを知った厚労省が5月下旬、同病院への派遣は必要なくなったとする見解を、県の担当者に口頭で伝えたという。
国からの医師派遣は、医師確保が極めて困難とされた全国7地区の医療機関に対し、特例として今年度に限って行われる。県医療人材室は「全国にはもっと厳しい地域があり、派遣見送りはやむを得ない」としている。
同病院によると、国が派遣見送りの根拠とした、もう1人の産科医はすぐに勤務できる状況ではなく、毛利博院長は「(7月以降は)勤務医1人で、開業医と同じレベルになってしまう」と話している。
市や同病院は、国の派遣を前提に、常勤産科医3人を確保し、危険性の高い出産にも24時間で対応する態勢を目標にしてきた。
松野輝洋市長と毛利院長は6日、連名で「大きな期待を持っていたので残念。国より派遣される医師を第一に考えてきており、再考、協議をお願いしたい」とのコメントを発表した。
(読売新聞、静岡、2008年6月7日)
****** 中日新聞、静岡、2008年5月28日
藤枝市立総合病院 分娩7月以降も継続 新たな産科医が来月赴任
藤枝市立総合病院の産婦人科医全員が6月末で退職する問題で、新しい産科医が6月1日付で赴任することが分かった。産婦人科は5月末で患者の受け入れをいったん休止するが、分娩(ぶんべん)は7月以降も予約数を制限して継続する見通しが立った。
病院によると、赴任するのは、佐賀県内で開業していた五十代の男性産科医。3月下旬に男性側から連絡があり、病院を見学。4月下旬に勤務を内諾し、今月12日に採用が決まった。
産科医一人だけでは扱える分娩数に限りがあるため、病院は「引き続き近隣の公立病院や開業医に協力をお願いする」としている。
この病院は年間800件近い分娩を扱う地域の中核病院。
事態を重くみた国と県が産科医一人を派遣する方向で調整しているほか、市も独自に別の産科医と交渉している。
浜松医科大も週に2、3回、外来診療に非常勤医師を派遣する意向を示している。
(中日新聞、静岡、2008年5月28日)
****** NHKニュース、静岡、2008年3月26日
産科医師不足で対応策検討へ
産婦人科の医師不足の影響で、藤枝市立総合病院では5月いっぱいでお産の受け入れの中止が避けられない事態になっていることが、25日、厚生労働省で開かれた会議で報告され、国が対応策を検討することになりました。
今年1月に厚生労働省が行った調査では産婦人科の医師不足の影響で、お産の中止や制限を決めた予定があると答えた病院や診療所が県内に6か所あるということです。このうち藤枝市立総合病院は、医師を確保できるメドがたっておらず5月いっぱいでお産の受け入れの中止が避けられないということです。このため静岡県と関係各省が対応策を検討することになりました。
厚生労働省によりますと人口10万人あたりの産科・婦人科の医師の数は、静岡県は35人余りで、全国で38番目と、深刻な事態が浮かび上がっています。
藤枝市立総合病院では「今後お産が早期に再開できるよう医師の確保に努めたい」と話しています。
(NHKニュース、静岡、2008年3月26日)
****** 読売新聞、静岡、2008年3月15日
藤枝市立病院 国から産科医派遣
浜松医大も複数の非常勤
県医療対策協議会が14日、静岡市駿河区のホテルで開かれ、6月末までに常勤産科医師3人が退職する藤枝市立総合病院に対し、国による医師派遣を受け入れることを決めた。現在の派遣元の浜松医大も同日、複数の非常勤医師を派遣する考えを明らかにし、地域の中核病院で出産が扱えない事態は避けられる見通しになった。ただ、多胎や早産など危険性の高い出産への常時対応には、さらなる医師確保が必要となっている。
同協議会の委員は県内の病院長、首長、学識者など17人。この日は今年度唯一の会合で、来年度の医師確保事業と藤枝市立総合病院の産科医確保について協議した。
県によると、国の医師派遣は、来年度から最長1年間、志太地区に1、2人の産科医を大学や病院から派遣する特例措置。派遣は1人にとどまる可能性が高いという。
受け入れ病院は、派遣元病院に医師1人当たり上限3000万円と人件費を負担する。国と県も、派遣元病院の診療体制強化の補助金など約2350万円を半額ずつ負担する。
会合では「1人だけの派遣では出産は満足に扱えない」「1年間は短すぎる」などの意見が出たが、地域の産科医療を守るためとして、受け入れた。
同病院は、出産前後の母子への比較的高度な緊急対応ができる「地域周産期母子医療センター」。この機能維持は医師1人ではできない。
(読売新聞、静岡、2008年3月15日)
****** 毎日新聞、静岡、2008年3月15日
藤枝市立総合病院:産科医受け入れへ 県医対協が承認
藤枝市立総合病院で6月までに産科医全員が退職する問題で、県は14日、静岡市内で開いた県医療対策協議会で、同病院に産科医1人の派遣を受けることを承認した。
国が受け入れを打診していた。県によると、派遣期間は最長1年間。派遣元の病院に対する補助金約2360万円は国と県が半分ずつ負担する。また、医師がいなくなることによる派遣元病院の減収を補てんするため、藤枝病院側から3000万円程度を支払うことになる見込み。
協議会の委員で、藤枝病院から産科医引き上げを決めた浜松医科大の寺尾俊彦学長は「ご迷惑をおかけして申し訳ない。2人体制でできるようにしたい」と述べ、国からの派遣医とは別にもう1人医師を確保するよう努力する考えを示した。【鈴木直】
(毎日新聞、静岡、2008年3月15日)
****** 静岡新聞、2008年3月14日
産科医、藤枝市立病院に派遣へ 県医療対策協が了承
県医療対策協議会が14日午前、静岡市内で開かれ、国と県が検討している志太榛原地域への産科医の派遣を了承した。6月までに常勤の産科医3人が全員退職する藤枝市立総合病院に、医師1人が最長で1年間、派遣される見通しとなった。派遣に伴う費用負担は、県と藤枝市立総合病院を合わせると5000万円程度という。
今回の医師派遣は、年間800件前後の分娩(ぶんべん)を行っている藤枝市立総合病院の産婦人科が7月から分娩休止に追い込まれる事態を受けて、国が特例措置として県に打診した。国は今後、国立病院や大規模な病院に呼び掛けて、派遣医師の選定を急ぐ。
派遣は国主導で進める「医師派遣制度」に準じて行われる公算が大きい。費用負担の内訳は、国と県が折半で、医師を派遣する病院に診療体制強化の名目で約2300万円補助する。藤枝市立総合病院は派遣元病院に遺失利益分として上限3000万円を補償するほか、派遣医師の人件費の拠出が必要と見込まれる。
県は協議会の席上、医師派遣に当たって地元の焼津、島田、牧之原、藤枝の各市長と病院長、産科医らの合意を得られたことを説明した。
同協議会の委員からは「全国的な産科医不足の中、1つの突破口にはなる」「分娩は24時間対応。医師1人が派遣されても診療体制が厳しいことは変わらず、最低でも2人以上は必要ではないか」などの意見が出た。
改正医療法に基づく同協議会の開催は今回初めて。県内の医師不足の現状や課題を協議した。議事に先立ち、会長に岡田幹夫県医師会長を選出した。
浜松医大学長再派遣前向き 「2人体制に」
県医療対策協議会の委員を務める浜松医大の寺尾俊彦学長は、14日の同協議会で、藤枝市立総合病院への医師派遣に関し、「国を通して産科医1人が派遣されるならば、浜松医大としても、もう1人派遣できるよう努力したい」と述べ、診療の2人体制に前向きな考えを示した。
寺尾学長は「藤枝の住民の皆さんから(再派遣を求める)嘆願書をいただいている。実際問題、産科医が1人だけいても難しい。私としても何とか2人体制にしたい」と述べた。常勤か非常勤かについては「学内で調整中」などとして明言しなかった。
(静岡新聞、2008年3月14日)
****** 静岡新聞、2008年2月28日
「お産難民」回避模索 藤枝市立病院・産科休止 迫られる医療体制見直し
産科医の全員退職で、年間700件のお産を扱う藤枝市立総合病院が5月末で分娩を休止する。志太榛原地域の病院と産科診療所は可能な限り分娩受け入れ数を増やし、妊婦が地元で出産できない「お産難民」を出すまいと策を練る。ただ、いずれの施設もスタッフ不足とあって産科救急や新生児搬送など周産期医療体制の見直しを迫られている。
◆「割り振り」
今月8日、藤枝市立に産科医を派遣している浜松医大と、志太榛原の四公立病院の産科医、開業医が一堂に集まり、対応を協議した。各施設が可能な受け入れ分娩数を挙げた。焼津市立総合病院が年間プラス200件、榛原総合病院は「新生児搬送の確立」などの条件付きで200件増。一部の診療所は100件前後なら増やすことができる―。
産科医で榛原総合病院の茂庭将彦院長は「数の上ではお産難民は回避できる」と説明する。「妊婦の割り振りが大切になる。分娩リスクの高い人は病院、低い人は診療所で受診してもらわねば」
◆助産師派遣
受け入れ増に手を挙げた病院や診療所の中には「助産師が増えないとプラス分を担えない」の声が強い。協議では藤枝市立の助産師を他施設に派遣する案が浮上した。ただ助産師本人の希望や職員の身分の切り替え、給与など課題が横たわる。
藤枝市立の内部には院内助産院や助産師外来を検討する動きもある。地域の産科医たちは「常勤医がいなくて、緊急事態にどう対応するのか」と開設に難色を示す。
新生児集中治療室(NICU)が充実している藤枝市立は、産科救急や新生児管理で大きな役割を果たしてきた。島田市民病院はNICUはあるが、産科医は1人。榛原総合は産科医が複数いるが、助産師が足りない―。基幹病院の産科休診は、診療科の配置のミスマッチの中で工面してきたこれまでの周産期医療体制にも打撃を与えた。
◆病院間連携
藤枝市立の産科休診後は、産科救急は焼津市立と榛原総合に平等に搬送するシステムを作る。新生児搬送は、島田市民や藤枝市立のNICUの存続を前提とした上で、病院間連携を強めて対応する方針を申し合わせた。
もともと産科医が少なく、診療所間連携を密にして互いにサポートしてきた地元の開業医は「今後、1つでも医療機関が消えたら、お産を維持できない」と危機感が強い。産科医たちは3月上旬にも再度、協議する。
(静岡新聞、2008年2月28日)
****** 中日新聞、2008年1月19日
藤枝市立病院の産科医師退職問題 再派遣、早くて5年先
藤枝市立総合病院の産婦人科医3人全員が6月までに退職し、派遣元の浜松医科大に戻る意向を示している問題で、同医大側が引き揚げを一時的な措置とする一方、派遣再開は早くて5年先と考えていることが18日、分かった。医療界全体での医師不足が最大の原因という。同医大産婦人科学講座の金山尚裕教授が明らかにした。
金山教授は、派遣医師の引き揚げについて「伊豆地方など東部や、中東遠など、産科医不足がより深刻な地域へ医師を割り振るため」と説明。派遣できる人材が不足している点や、再開には新たな医師の育成が必要である点を強調して「今後5年から10年は難しいだろう」とした。地元住民らが抱く産科医療後退への不安に対しては「近くにほかの公立病院(焼津市立総合病院や島田市民病院など)もあり、正常分娩(ぶんべん)は問題ないと考えている。リスクが高い出産は、周囲の病院と連携を深めて対応してほしい」とした。
「全県のバランスを見て派遣先を決める必要がある」と医科大としての責任感もにじませ、「県内に医科大が一つしかない点も、人口規模から見れば問題」とした。
ただ、藤枝市立総合病院側は納得しておらず、毛利博院長は同日に会見し「一人でもいいから産科医を病院に残してほしい。とにかく粘り強く浜松医科大にお願いしていくしかない」と強調した。
中期経営計画の修正は不可避
産婦人科医全員の退職問題は、藤枝市立総合病院の経営改善にも影を落としている。昨年10月の1カ月間、不適正な診療報酬請求のために保険医療機関の指定を取り消された同院は、健全化に向けた中期経営計画(2008-12年)を策定中で、大詰めを迎えていたのに、柱の一つにするつもりだった出産時期の医療強化が土壇場で困難になってしまった。
計画は未公表だが、病院長を補佐する副院長を複数置くことに加えて「がん」「脳卒中」「心筋こうそく」の三大疾病と「救急医療」「小児医療」、そして産前産後や早産などに対応する「周産期医療」を強化することが柱となる見通しだった。
だが、浜松医科大が3人の派遣医師をすべて引き揚げる意向を表明した今、産婦人科については強化どころか、診療科そのものの存続さえ危ぶまれる事態だ。
昨年の指定取り消しに続く痛手でもあり、病院側は「修正が必要になりそう」と肩を落としている。
(中日新聞、2008年1月19日)
****** 朝日新聞、静岡、2008年1月19日
藤枝市立病院産科医引き揚げ
藤枝市立総合病院の産婦人科休止問題で、同病院に3医師を派遣している浜松医大医学部産婦人科学講座の金山尚裕教授は18日、同大学内で記者会見し、「藤枝に一時的に(常勤医を)派遣できなくなるのは事実。県内で志太、榛原地区以上に産婦人科医が不足しているエリアがあり、(医師の)人的資源を移動させざるをえない」と話した。
金山教授は新たな派遣先の明言は避けたが「県内でも東部伊豆地区、中東遠地区や、開業医が相次いで分娩(ぶんべん)をやめている浜松地区など医師不足が深刻だ」と説明した。
ただ、藤枝市立総合病院には週に2、3日は外来患者に対応するために非常勤医を派遣する用意があるといい「妊婦や婦人科の診察には対応していきたい。分娩に関しては近隣の病院や診療所でするようお願いしたい」と話した。
新生児の医療で藤枝市立総合病院小児科の水準が高いことを認めた上で、「危険性の高い出産には病院同士の連携を進めて欲しい。公立病院同士の統合はなかなか難しいが、診療科目の集約化は可能ではないか。大学としても集約化が進んだところに人的なバックアップをしていきたい」と話した。
◆藤枝市立病院長
一方、藤枝市立総合病院の毛利博院長も18日、記者会見し、同病院の産婦人科が6月末以降、休止の恐れがあることを認めた。
さらに「影響が重大で、浜松医大に再考を願うよう要請している。産婦人科の休止という事態は避けられるよう、努力していきたい」と話した。
(朝日新聞、静岡、2008年1月19日)
****** 朝日新聞、静岡、2008年1月18日
産婦人科、休止の危機/藤枝市立総合病院
06年度900件近い出産を扱った藤枝市立総合病院(毛利博院長)の産婦人科が6月末で休止に追い込まれる恐れがあることが明らかになった。現在勤務している3人の産婦人科医が同月末で退職する予定のためだ。市は医師らに慰留を重ねるとともに、後任の医師の確保を目指し、存続の道を探っているが今のところめどは立っていない。
関係者によると、金丸仁前院長時代の昨年秋ごろ、産婦人科医の出身大学である浜松医大から医師を戻したいとの申し入れがあった。同医大は、県内で慢性的に不足する産婦人科医の各病院への派遣について再検討するため、引き上げを申し入れたと見られるという。
一方、藤枝市立総合病院は志太、榛原地区の中核病院。産婦人科も同地区にある公立4病院のうち、06年度の出産件数は881件と際立って多い=表参照。
病院の開設者である松野輝洋市長は「そういう申し入れがあるのは事実だが、引き続き医師に診療に当たってもらえるよう、大学にもお願いをしている最中。すでに決定したこととは受け止めていない」と話している。21日に浜松医大を訪れ、産婦人科の存続に向けて協力を要請する予定だ。
同病院の産婦人科は昨年12月から医師が4人から3人に減少したため、5月から分娩(ぶん・べん)予約数を月20件に抑制することを明らかにしたばかりだった。
(朝日新聞、静岡、2008年1月18日)
****** 静岡新聞、2008年1月18日
産婦人科医退職へ 藤枝市立病院 休診の可能性も
藤枝市立総合病院(藤枝市駿河台、毛利博院長)の産婦人科医師3人が6月までに全員退職する予定であることが17日、分かった。市と病院は後任の医師探しに奔走しているが、現時点では非常に難航しており、産婦人科が休診となる可能性もある。休診 同病院の産婦人科は、平成18年には881件、16年には1100件を超える分娩を扱い、志太榛原圏域の病院では最多。子宮筋腫や子宮・卵巣がんなどの診察・治療も行っている。
昨年12月に医師1人が退職。さらに、医師の派遣元の浜松医大の方針で残る3人の医師も今年3月末に1人、6月中に2人が退職、大学に戻ることが決まった。市と病院は浜松医大に地域医療への理解を求めるとともに、全国の医大に医師派遣を要請、院内で対策を協議している。10日の診療部会議では、産婦人科から「婦人科手術は3月で終了する」「分娩予約は5月分までとする」との提案があったという。
毛利院長は「休診などの事態にならないよう、最大限の努力を続けている最中で、流動的な部分もある。その結果を見て適切な対策を決めたい」と話している。同病院では、保険診療報酬の不正請求で歯科口腔外科が昨年10月に廃止されたほか、医師の不足で内分泌代謝科も休診中、総合内科も初診受付時間を制限している。
志太地域では、島田市民病院でも医師不足のため、平成16年8月から18年4月まで産科を休診した。再開した現在でも常勤医は1人しかいない。藤枝市立総合病院の産婦人科が休診となれば、6人の医師がいる焼津市立総合病院などに患者が集中することも懸念される。
焼津市立総合病院の太田信隆院長は「藤枝が休診した場合、正常分娩は既存の医療機関が分担して受け持つことはできる。しかし、母体に異常が起こった場合は、小児科も含めてパンクする可能性は高い」とみる。既に地域の開業医と対応について意見交換を始めたという。
一方、浜松医大産婦人科の金山尚裕教授は「大学病院も含めて産婦人科医の不足が深刻化する中で、全県的なバランスを考え、より困っている地域に人員を振り分けざるを得ない」と語り、「行政や自治体病院が一丸となって、病院や医師の集約化に取り組んでほしい」と要望している。
(静岡新聞、2008年1月18日)