ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

Basic Life Support in Obstetrics (BLSO)

2013年10月06日 | 周産期医学

我が国におけるBLSOコースは、主に救急救命士や救急医などを対象に、周産期救急に対処するための訓練を行う教育コースで、正常分娩介助、分娩後大出血、妊産婦の心肺蘇生法、新生児蘇生法などのレクチャーとワークショップがあり、コースは1日で終了します。

BLSOコース開催情報

自宅や救急車内の分娩などで、救急救命士や救急医などが分娩や新生児蘇生に対応せざるを得ない状況はまれではありません。金沢大の新井先生らが、全国の684消防本部へのアンケート調査を実施し、回収率49.85%で、医療機関に着く前に分娩となった事例は年間計734件(2010年)であったと報告しています。また、飯田広域消防本部の調査によると、飯田下伊那地域において、最近6年間で、病院前の分娩で救急搬送された事例が16件あり、救急車内での分娩も5件ありました。これらの病院前の分娩のケースでは、分娩介助や新生児蘇生は主に救急救命士が行ったと考えられます。

BLSOコースの2013年7月12日現在の受講者総数は415名で、職業別にみると、救急救命士が全体の43%を占め、他に救急医、家庭医・総合診療医などがコースを受講しました。

一般の心肺蘇生法BLSでは胸骨圧迫が最優先され、心肺停止の患者さんを発見したら、まず間髪入れず胸骨圧迫を開始します。新生児蘇生法NCPRではまず呼吸刺激を行い、次に必要があれば人工呼吸を行い、さらに必要があれば人工呼吸に胸骨圧迫を併用します。新生児の蘇生でいきなり胸骨圧迫を実施することはありません。BLSの手法に日頃慣れ親しんでいる救急救命士の方々に、BLSとNCPRの違いをよく理解していただくことが非常に重要だと思います。BLSOコースには新生児蘇生法の実習も含まれています。

長野県内初のBLSOコースが、2013年9月22日に相澤病院で開催されました。講師およびアシスタントは計18名でした。受講生は計18名で、職業別内訳は、救急救命士10名、救急医2名、初期研修医4名、救急ナース2名でした。

当飯田下伊那地域でも病院前の分娩の事例が毎年数件あり、救急車内分娩の事例もめずらしくありません。飯田市立病院でBLSOコースを開催してほしいという声も聞きます。

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BLSOコース(於:相澤病院)のオープニング

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救急車内での分娩介助の訓練(救急救命士)