ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

Advanced Life Supporti n Obstetrics(ALSO)について

2014年05月31日 | 周産期医学

2014年5月24~25日に千葉大学付属病院クリニカルスキルズセンターで開催されたALSOプロバイダーコース にインストラクターキャンディデイトとして参加しました。受講生45人、講師45人(インストラクター10人、インストラクターキャンディデイト20人、アシスタント15人)の大規模コースで、充実した楽しい2日間でした。

私が初めてALSOプロバイダーコースに参加したのは2011年12月に亀田総合病院で開催されたコースで、ALSOって一体全体何なのか全く認識のないまま、たまたま後期研修医の付き添いで参加させていただき、その時以来、すっかりALSOの魅力にはまってしまって、アシスタントとして亀田総合病院と山梨大のコースに計2回参加した後、2013年1月に和倉温泉で開催されたインストラクター講習会に参加し、その後、インストラクターキャンディデイトとして山梨大や千葉大などのコースに計7回参加しました。その他、BLSOコース、ALSOデモンストレーションコース、ALSOアップデイトミーティングなどにも参加させていただき、今回の千葉大コースではインストラクター認定評価を受けさせていただきました。

来る6月28~29日には、飯田市立病院で2回目のALSOプロバイダーコースを開催させていただく予定です。もともと私自身は婦人科腫瘍の方が専門だったんですが、職場の事情から必要に迫られて周産期医学を基本から勉強し始めたところなので、ALSOやNCPRに指導者という名目で参加して周産期医学の超基本事項を繰り返し他の人達に伝える中で、自分自身が教え導かれていることをいつも実感しております。ですから、今後もALSOやNCPRには積極的に参加し続けたいです。

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ALSOプロバイダーコース in Chiba 2014 May


常位胎盤早期剥離(じょういたいばんそうきはくり)Q&A

2014年05月30日 | 周産期医学
Q:常位胎盤早期剥離とはどんな病気ですか?この病気の原因、症状、なりやすい妊娠週数、診断するための検査、治療方法などについて教えてください。また、この病気を予防するために私達にできることは何かありますか?

A:常位胎盤早期剥離とは、「正常な位置にある胎盤が胎児の娩出よりも前に子宮壁から剥離されること」をいいます。放置すると胎児死亡や母体死亡の原因ともなり、発症後は大至急の対応が必要です。常位胎盤早期剥離の典型的な自覚症状は動けなくなるぐらいに激烈な下腹痛で、お腹は板のように硬くなります。性器出血がみられることもあります。胎動が減少または消失します。症状が典型的でない場合も多いです。妊娠高血圧症候群、常位胎盤早期剥離の既往、交通事故などの腹部の外傷、喫煙などの危険因子に該当する場合、常位胎盤早期剥離を発症しやすくなります。これらの危険因子に該当しない場合でも、常位胎盤早期剥離を突然発症することもあります。発症時期は妊娠30週以降が多いです。臨床症状から常位胎盤早期剥離を疑った場合、腹部超音波検査、胎児心拍モニター、血液検査などを行います。これらの検査で常位胎盤早期剥離と診断された場合は、できるだけ早急に分娩を終了させる必要があり、胎児の生存が確認された場合は、経腟分娩の直前でなければ緊急帝王切開を行います。胎児が死亡していた場合でも、時間の経過により母体のDIC(血が止まらなくなる状態)が進行するので、すみやかな経腟分娩または帝王切開を行います。それと同時にDICに対する予防あるいは治療を行います。常位胎盤早期剥離は母児の生命にかかわる非常に重大な疾患ですが、いつ誰におこるのかの予測は困難です。適切な予防法もありません。常位胎盤早期剥離がおこった場合に、発症後できるだけ早く診断し、緊急帝王切開などの母児の緊急救命処置を行うことが、我々にできる唯一かつ最善の道です。強い腹痛や性器出血などの症状が出現したら早急に対応可能な医療機関を受診することが重要です。妊婦健診をきっかけに妊娠高血圧症候群などの常位胎盤早期剥離の危険因子がみつかることもありますので、適切な時期や間隔で妊婦健診を受けることも大切です。

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飯田市立病院の周産期センター

2014年05月19日 | 飯田下伊那地域の産科問題

飯田市立病院の第3次整備事業(救命救急センター、周産期センター、がん診療・緩和ケアセンター)が完了し、本年1月より新しい周産期センターも運用が開始されました。

産科病棟、分娩部、新生児治療などの入院部門を、従来の本館4階東病棟と4階西病棟から新設の北棟2階の周産期センターに移転集約しました。周産期センターを本館2階の手術室と隣接させたことで、緊急時のより迅速な対応が可能となりました。また、病棟直下の1階に産科外来、助産師外来、婦人科外来を移転集約し、妊婦さんや職員の移動時間の短縮や、入院部門と外来部門との連携強化を図りました。 産科病床は6床増となる38床、GCU(新生児継続保育室)は8床増の12床に拡充しました。分娩室と陣痛室はそれぞれ1室、3室増となる各4室で、プライバシーにも配慮しました。分娩室やNICU(新生児集中治療室)のモニター装置や医療機器を更新しました。周産期センター入口の管理システムを強化し、セキュリティーや感染予防の向上を図りました。

飯田市立病院第3次整備事業の総事業費は医療機器や設備などを含めて31億2000万円で、財源は県交付金5億1000万円、市の一般会計9億円、病院事業債17億1000万円でした。

飯伊地域の分娩取り扱い施設は2004年度までは6施設ありましたが、2005年度に3施設が分娩取り扱いの中止を表明し、地域で多くの「お産難民」が発生する可能性が浮上したのを受け、飯伊地区包括医療協議会や市などは「産科問題懇談会」を設立し、各医療機関の連携体制を構築したり、市立病院の助産師を増員したりする対策に取り組みました。実際に分娩取り扱い施設は、2006年度は3施設に減少し、2010年度末からは市立病院と椎名レディースクリニックの2施設のみです。市立病院の分娩件数は、2005年度の552件が2006年度に1003件と大幅増となり、近年は年間1200件程度(県内最多)で推移しています。市立病院の分娩件数は急増しましたが、連携体制で負担が軽減されたため、実際にお産を断った例はほとんどなく、産科医療崩壊の危機を地域の連携体制により何とか乗り越えました。

飯伊地域の産科医療体制は、妊娠32週までの健診を地域内の医療機関が担い、それ以降から分娩までの対応を飯田市立病院と椎名レディースクリニックが担当しています。ハイリスク分娩は市立病院が担当しています。この連携体制は、役割分担で各病院の負担を軽減させ、地域での分娩取り扱い件数を確保するのが狙いです。妊婦の情報を正確に共有するため共通カルテも導入されています。

最新設備を導入した周産期センターも完成し、当地域の産科医療体制はさらに充実しました。今後も行政、医療機関が協力し、安心してお産ができる地域の医療体制を構築していきたいと思います。