ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

なぜ新生児蘇生法を習得する必要があるのか?

2012年01月29日 | 周産期医学

順調な分娩経過で問題のないケースだと思って分娩に立ち会っていたのに、産まれてみたらなかなか児の呼吸が始まらず、予想外に本格的な新生児蘇生法が必要となる事態も決してまれではありません。

しかし、実際に新生児蘇生を必要とする児が産まれた時には、分娩介助者達があせってパニックに陥ってしまい、正しい手順で蘇生処置が実施されない場合も起こり得ます。

従って、分娩に関わる職種(産科医、小児科医、助産師、NICU看護師、救命救急士など)の医療従事者は、いざという時、あせらずに正しい手順で新生児蘇生を開始できるように、最新の新生児蘇生法ガイドラインに習熟しておく必要があります。

新生児蘇生法のスキル習得は、楽器演奏やスポーツなどのスキル習得と同じで、異常事態が発生した時に間髪入れず反射的に正しい動きができるようになるまで、常日頃から反復トレーニングを繰り返しておくことが大切だと思います。

日本版救急蘇生ガイドライン2010に基づく
新生児蘇生法テキスト

新生児蘇生法普及事業

新生児の蘇生(NCPR)

NCPR 基本手技の実習

NCPR ケースシナリオによる実習

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新生児の約10%は、出生時に呼吸を開始するために何らかの助け(呼吸刺激や吸引など)を必要とする。

新生児の約1%は、救命のために本格的な蘇生手段(人工呼吸、胸骨圧迫、薬物治療、気管挿管など)を必要とし、適切な処置を受けなければ、死亡するか、重篤な障害を残す。

すべてのハイリスク児の出生予知は不可能で、全く順調な妊娠を経過した場合でも、子宮外生活への適応障害が突然出現することがまれではない。

新生児仮死は、バッグとマスクを用いた人工呼吸だけで90%以上が蘇生できる。さらに胸骨圧迫と気管挿管まで加えれば99%まで蘇生できる。

現在、日本ではほとんど(99.8%)の分娩が医療機関内で行われ、分娩に関与するスタッフは非常に限られているので、新生児を取り扱うすべての医療従事者(小児科医、産科医、助産師、NICU看護師など)が新生児蘇生法に習熟すれば、その意義は非常に大きいと考えられる。

日本では、日本周産期・新生児医学会を実施主体として、新生児蘇生法普及事業が展開されている。新生児蘇生法の講習会として、「一次」コース(B コース)、「専門」コース(A コース)、「専門」コースインストラクター養成講習会(I コース)が開催され、コース修了者を学会が認定している。「すべての周産期医療関係者が標準的な新生児救急蘇生法を体得して、すべての分娩に新生児の蘇生を開始することのできる要員が専任で立ち会うことができる体制を実現する」ことが新生児蘇生法普及事業の最終目標である。


肩甲難産にどう対応するのか?

2012年01月25日 | 周産期医学

肩甲難産 Shoulder Dystocia

[定義] 児頭が娩出されたあと、通常の軽い牽引で肩甲が娩出されない状態。

Shoulder Dystocia 【YouTube】

Shoulderdystocia

[頻度] 全分娩の0.6~1.4%に発生
(American College of Obstetricians and Gynecologists, 2002; Gottlieb and Galan, 2007)

[リスク因子]
巨大児、特に糖尿病合併症にともなう巨大児、肥満、過期妊娠、高年妊娠、扁平骨盤、変形骨盤、陣痛促進薬の使用、分娩第Ⅱ期遷延、鉗子分娩あるいは吸引分娩など。

※ 肩甲難産は巨大児に起こりやすいが、同一体重であっても肩甲難産を起こす例と起こさぬ例がある。現在のところ、肩甲難産の有効な予測法、予防法はない。

[合併症]
(1) 母体合併症:
 ①弛緩出血、②腟・頸管裂傷、③子宮破裂

(2) 児の合併症:
 ①腕神経叢麻痺(Erb麻痺)、②上腕・鎖骨骨折

(3) 長時間胎児が娩出されない:
 ① 胎児機能不全、②胎児死亡、③低酸素性虚血性脳症

[肩甲難産に対してどう対応したらいいのか?]

肩甲難産のリスク因子として糖尿病合併妊娠による巨大児などが有名であるが、体重が正常範囲の児による肩甲難産も多い。肩甲難産に対して従来からさまざまな対策が検討されてきたが、現在のところ有効とされる予測法、予防法はなく、発症後のすみやかな対応の重要性が強調されている。肩甲難産が発症した場合にどう対応するのか、施設ごとのプロトコール作りが推奨される。

※ 肩甲難産が疑われる場合、Kristeller胎児圧出法や無理な児頭牽引は禁忌である。

・ 肩甲難産発症時の対応
① 人を呼ぶ
② おだやかな牽引を試みる
③ 導尿を行う
④ 会陰切開を広げる
⑤ McRoberts 法
⑥ 恥骨上部圧迫
⑥ 腟内操作
 ・ Rubin 手技
 ・ Woods Screw 手技
 ・ Reverse Woods Screw 手技
⑦ 後在の上腕の娩出
⑧ 四つん這い姿勢での娩出
⑨ 鎖骨骨折、上腕骨折、Zavanelli 法などを考慮する

[McRoberts 法] 妊婦の両足を分娩台のステップからはずして大腿の前面を腹部に強く押し付ける。これと同時に恥骨上部を助手が圧迫し、恥骨の裏に陥入した肩を開放する方法。

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McRoberts Maneuver 【YouTube】

【恥骨上部圧迫】 介助者の手掌の根元を使って、胎児の肩の後面に対して、下方かつ横向きの動きが加わるように圧迫する。(子宮底の圧迫は決して行ってはならない。)

Suprapubicpressure
      恥骨上部圧迫

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          McRoberts 法と恥骨上部圧迫

[Rubin 手技] 術者の手を児の前在の肩甲の背側に入れ、肩甲骨を圧迫して、肩を内転、斜位に回旋させる操作。

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          Rubin 手技

[Woods Screw 手技] 術者の手を腹側から児の後在の肩甲の下に入れ、恥骨に向けて回旋させる操作。Rubin 手技を併用する。

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           Woods Screw 手技

[Reverse Woods Screw 手技] 背側から後在肩甲にアプローチし、Rbin 手技やWoods Screw 手技とは反対方向に胎児を回旋させる操作。

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          Reverse Woods Screw 手技

[後在の上腕の娩出] 後在の腕を肘までたどり、腕を肘で屈曲させ、胎児の胸部をなでるように前腕を動かす。

Posteriorarm

[四つん這い姿勢での娩出] 四つん這い姿勢にするために患者を反転させ、やさしく下方に牽引し後在肩甲を娩出する。

Yotsunbai

[Zavanelli 法] McRoberts法、恥骨上部圧迫、腟内操作(Rubin 手技、Woods Screw 手技、Reverse Woods Screw 手技)、後在の上腕の娩出、四つん這い姿勢での娩出などを実施しても児が娩出されない場合には、最終的手段として、娩出された児頭を産道内に戻して、緊急帝王切開を行うこともある。


ダイエットの原則

2012年01月21日 | ダイエット

ダイエットの原則は、筋肉や骨の量は維持し、余分な体脂肪をゆっくり減らして、徐々に適正体重に近づけていくことです。

一般に、体脂肪1 kgに相当するエネルギー量は7200 kcalと言われています。例えば、1か月で1 kg減量するためには、エネルギーの収支バランス(摂取カロリー・マイナス・消費カロリー)を1日当たり平均して240 kcal (7200 kcal ÷ 30)マイナスに保つ必要があります。240 kcalは御飯1.5杯で摂取するカロリーに相当し、ウォーキングなら1時間で消費するカロリーに相当します。また、年齢とともに基礎代謝(生命活動を維持するために必要なエネルギー)は減少するので、加齢とともにだんだん太りやすくなりがちです。筋トレで骨格筋を増やし基礎代謝を上げて消費カロリーを増やす必要があります。

節食により摂取カロリーを少し減らし、軽い運動や筋トレにより消費カロリーを少し増やして、エネルギー収支バランスを少しマイナスに保ち、余分な体脂肪をゆっくり減らしてゆく必要があります。


地域の病院がこの世の中に生き残る条件は?

2012年01月18日 | 日記・エッセイ・コラム

大学病院を辞して地域の病院で診療に従事するようになって23年経過し、自分もある程度の勉強は続けてきたつもりだが、その間に産婦人科の各分野も非常に大きな変貌を遂げ、自分の医学的常識や手技などが全般的に旧式になっていることを強く感じる今日この頃である。今後、地域の病院がこの世の中に生き残っていくための必須条件として、診療内容を年々バージョンアップさせて時代にマッチした病院に変身し続ける必要がある。新しい医学を習得した若い医師がどんどん増えて、日々大活躍してもらう必要がある。中高年医師は、若い医師達が活躍できる環境を整備し、徐々にシェイドアウトしていくのが世のため人のためだと思う。最後の御奉公として、若い医師達が思う存分頑張れる診療環境を整備するよう精一杯努力したい。


新生児蘇生法(NCPR)講習会・専門コース(Aコース)、於:伊那中央病院

2012年01月15日 | 周産期医学

昨日、伊那中央病院でNCPR講習会(Aコース)が開催され、インストラクターとして参加させて頂きました。まず、プレテスト(15分)と飯田市立病院の新生児科部長による講義(70分)が行われ、休憩後に小グループに分かれて、基本手技の実習(60分)とケースシナリオに基づく実習(75分)が行われ、最後にポストテスト(15分)が行われました。

私が実習を担当させてもらったブースは、伊那中央病院の産婦人科医3人、小児科医1人、初期研修医1人のグループでした。たまたま、知り合いの先生ばかりだったので、和気あいあいと非常に楽しく実習をすることができました。

昨年は飯田市立病院で2回NCPR講習会(AコースとBコース)が開催されましたが、今回は半年ぶりの講習会参加で少し間があったので細かい数値などはほとんど忘れてました。再度一から覚えなおすのに少々時間がかかりました。2月18日に飯田市立病院でNCPR講習会(Aコース)が開催されますので、またインストラクターとして参加させていただく予定です。今度は間が1ヵ月しかないので、たぶん、事前学習は比較的短時間で済むのではないか?と思っています。

新生児蘇生法は講習会に1回参加すればそれで身に付くというものではありません。実地の臨床現場で日々実践している新生児科の先生方であれば頻回の講習会参加の必要は全くないですが、新生児蘇生法に習熟してない産婦人科医や助産師が、いざという時に自然に正しく体が動くようにするためには、繰り返し、繰り返し、2~3カ月ごとに頻回に講習会に参加する必要があると思います。

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昨日は深夜~朝方にかけて5件の分娩ラッシュで、その間に早剥・緊急帝王切開もあり、徹夜業務の後に、丸一日、NCPR講習会のインストラクター業務だったので、さすがに疲れました。私ももう年なので、無理して倒れないように十分気を付けないといけないと思います。


NCPR ケースシナリオによる実習

2012年01月13日 | 周産期医学

Neonatal Cardio-Pulmonary Resuscitation

新生児の蘇生(NCPR)

NCPR 基本手技の実習

① 正常新生児1

【設定】母親30歳。0経妊0経産。妊娠経過は異常なし。妊娠40週0日、陣発後に来院した。

・ 分娩立ち合いの前に準備する物品は? 
⇒バスタオル、肩枕用ハンドタオル、吸引カテーテル、吸引圧、酸素、顔マスク、マノメータ付きバッグ(漏れの確認)、新生児用プローベ付きパルスオキシメータ、ブレンダー

・ 出生時の情報として何を確認しますか? 
⇒呼吸・筋緊張・在胎週数

・ 出生しました。児の状態は、呼吸:元気に泣いている、筋緊張:良好、成熟度:40週の正期産児。どうしますか? 
⇒ルーチンケアをお母さんのそばで行います

・ ルーチンケアでは何をしますか? 
⇒保温する、顔・口を拭く、体を拭く、タオルを取り除く

・ 気道開通の方法は? 
⇒気道確保の体位をとらせる、分泌物を拭く、必要ならゴム球式吸引器か吸引カテーテルで吸引する

・ その後も元気で泣き、中心性チアノーゼは認めません。心拍も100以上/分あります。どうしますか? 
⇒5分後まで観察を続ける、または、保温に注意しながら母親の元へ

・ 引き続き保温に注意しながら、母親のそばで観察を継続します。

② 正常新生児2(羊水混濁)

【設定】母親36歳。2経妊2経産。妊娠経過は異常なし。41週0日に陣発し、来院した。胎児心拍モニターにて遅発一過性徐脈を認めた。分娩が遷延したため人工破膜したところ、羊水混濁を認めたので分娩立ち合いが要請された。

・ 分娩立ち合いの前に準備する物品は? 
⇒ラジアントウォーマー、バスタオル、肩枕用ハンドタオル、吸引カテーテル(12Frまたは14Fr)、吸引圧、酸素、顔マスク、マノメータ付きバッグ(漏れの確認)、新生児用プローベ付きパルスオキシメータ、ブレンダー、喉頭鏡、気管チューブ、固定用テープ

・ 吸引カテーテルのサイズは? 
⇒羊水混濁があるので12~14Fr

・ 出生時の情報として何を確認しますか? 
⇒呼吸・筋緊張・在胎週数

・ 出生しました。児の状態は、呼吸:泣き始めている、筋緊張:手足をよく動かしている、成熟度:41週の正期産児。どうしますか? 
⇒羊水混濁があったので、口・鼻吸引をしてからルーチンケアに入ります

・ ルーチンケアの実施にあたっては、母子関係に配慮して何に気を付けますか? 
⇒母親のそばでルーチンケア

・ 保温に注意しながら、引き続き呼吸症状が出現しないかの観察を行います。

③ 新生児仮死1(軽度呼吸抑制)

【設定】母親28歳。1経妊1経産。妊娠経過は異常なし。妊娠38週5日、陣発後に来院した。

・ 分娩立ち合いの前に準備する物品は? 
⇒バスタオル、肩枕用ハンドタオル、吸引カテーテル、吸引圧、酸素、顔マスク、マノメータ付きバッグ(漏れの確認)、新生児用プローベ付きパルスオキシメータ、ブレンダー

・ 出生時の情報として何を確認しますか? 
⇒呼吸・筋緊張・在胎週数

・ 出生しました。児の状態は、呼吸:弱々しく泣いている、筋緊張:良好、成熟度:38週の正期産児。どうしますか? 
⇒啼泣が弱いので蘇生の初期処置を始めます

・ 蘇生の初期処置を行ってください。 ⇒ラジアントウォーマーに収容、体位を整える、顔・口を拭く、体をふく、ぬれたタオルを取り除く

・ 分泌物が多く吸引が必要なようです。吸引カテーテルのサイズは? 
⇒10Fr

・ 吸引の順序は? 
⇒口→鼻

・ まだ弱い啼泣が続いています。何をしますか? 
⇒呼吸刺激

・ 刺激する部位は? 
⇒足底、背中をこする

・ 気道確保のために体位を整える方法は? 
⇒肩枕を使用して気道確保の体位を整える

・ すぐに元気に泣きだしました。

・ 30秒経ちました。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・できればSpO2

・ 心拍数の確認法は? 
⇒聴診または臍帯動脈の拍動で

・ 呼吸:元気に泣き出した、心拍数:6秒間に12回。次にどうしますか? 
⇒パルスオキシメータを装着しながら、努力呼吸と中心性チアノーゼの有無をチェックする

・ 努力呼吸も中心性チアノーゼもありません。

・ さらに、30秒経ちました(60秒)。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・できるだけSpO2

・ 呼吸:泣いている、心拍数:6秒間に15回。努力呼吸も中心性チアノーゼもなし。この後、どうしますか? 
⇒5分後まで観察を続ける、または、保温に注意しながら母親の元で観察

・ 引き続き保温に注意しながら、観察を続けます。

④ 新生児仮死2(羊水混濁、努力呼吸、中心性チアノーゼ)

【設定】母親32歳。1経妊1経産。妊娠経過は異常なし。41週0日に陣発し、来院した。胎児心拍モニターにて遅発一過性徐脈を認めた。分娩が遷延したため人工破膜したところ、羊水混濁を認めた。

・ 分娩立ち合いの前に準備する物品は? 
⇒ラジアントウォーマー、バスタオル、肩枕用ハンドタオル、吸引カテーテル(12Frまたは14Fr)、吸引圧、酸素、顔マスク、マノメータ付きバッグ(漏れの確認)、新生児用プローベ付きパルスオキシメータ、ブレンダー、喉頭鏡、気管チューブ、固定用テープ

・ 出生時の情報として何を確認しますか? 
⇒呼吸・筋緊張・在胎週数

・ 出生しました。児の状態は、呼吸:泣き始めています、筋緊張:手足をだらりとしています、成熟度:41週。どうしますか? 
⇒蘇生の初期処置を始めます

・ 蘇生の初期処置を行ってください。 
⇒ラジアントウォーマーに収容、体位を整える、顔・口を拭く、体をふく、ぬれたタオルを取り除く

・ 口腔内には胎便の混じった羊水がたくさんあります。気道の吸引を行います。吸引カテーテルのサイズは? 
⇒羊水混濁があるので12~14Frと太めのカテーテルを使います。

・ 吸引する部位の順序は? 
⇒口→鼻

・ 頭部が前屈になって気道が保ちにくいようです。どうしますか? 
⇒肩枕を入れます

・ 吸引物がきれいになってきました。どうしますか? 
⇒気道吸引をやめます

・ 吸引中に啼泣が弱くなりました。どうしますか? 
⇒呼吸刺激をします

・ 30秒経ちました。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・できればSpO2

・ 呼吸:しっかり啼泣しています、心拍:6秒間に14回。次に、何を確認しますか? 
⇒努力呼吸の有無・中心性チアノーゼの有無

・ 努力呼吸:あり、中心性チアノーゼ:あり。次にどうしますか? 
⇒SpO2モニターを右手に装着し、空気でマスクCPAPを開始します(または、フリーフロー酸素を投与します)

・ マスクCPAPにおけるマノメータの圧は? ⇒5~6cmH2Oを目標(8cmH2Oは超えない)

・ フリーフロー酸素投与における酸素の流量は? 
⇒5~10L/分

・ さらに30秒経ちました(60秒)。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・その後に努力呼吸と中心性チアノーゼとSpO2の値

・ 努力呼吸:なし、中心性チアノーゼ:なし、SpO2:未表示。どうしますか? 
⇒CPAP(またはフリーフロー酸素投与)を徐々に中止する

・ さらに30秒経ちました(90秒)。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・その後に努力呼吸と中心性チアノーゼとSpO2の値

・ 呼吸:しっかりと強く啼泣しています、心拍数:140/分、努力呼吸:なし、SpO2:90%。どうしますか? 
⇒CPAP(またはフリーフロー酸素投与)を中止する

・ その後の方針は? 
⇒繰り返し評価します

・ 蘇生できました。保温に注意しながら、引き続き観察を行います。

⑤ 新生児仮死3(人工呼吸のみ)

【設定】母親31歳。1経妊0経産。妊娠経過は異常なし。陣発し、破水後に来院した。胎児心拍モニターにて変動一過性徐脈を認め、吸引分娩で出生した。

・ 分娩立ち合いの前に準備する物品は? 
⇒ラジアントウォーマー、バスタオル、肩枕用ハンドタオル、吸引カテーテル、吸引圧、酸素、顔マスク、マノメータ付きバッグ(漏れの確認)、新生児用プローベ付きパルスオキシメータ、ブレンダー

・ 出生時の情報として何を確認しますか? ⇒呼吸・筋緊張・在胎週数

・ 出生しました。児の状態は、呼吸:弱い啼泣のみ、筋緊張:低下している、成熟度:39週の正期産児。どうしますか? 
⇒蘇生の初期処置を始めます

・ 蘇生の初期処置を行ってください。 
⇒ラジアントウォーマーに収容、体位を整える、顔・口を拭く、体をふく、タオルを取り除く

・ 分泌物が多く吸引が必要のようです。吸引カテーテルのサイズは? 
⇒10Fr

・ 吸引の順序は? ⇒口→鼻

・ 弱い啼泣が続いています。何をしますか? 
⇒呼吸刺激

・ 刺激する部位は? ⇒足底、背中をこする

・ 体位を整える方法は? 
⇒肩枕を使用して気道確保の体位を整える

・ 30秒経ちました。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・できればSpO2

・ 心拍数の確認法は? 
⇒聴診または臍帯動脈の拍動で

・ 呼吸:泣いている、心拍数:6秒間に12回。次にどうしますか? 
⇒パルスオキシメータを装着しながら、努力呼吸と中心性チアノーゼの有無をチェックする

・ 努力呼吸:なし、中心性チアノーゼ:あり。次にどうしますか? 
⇒経過観察

・ さらに、30秒経ちました(60秒)。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・できるだけSpO2

・ 呼吸:あえぎ呼吸、心拍数:6秒間に12回。口腔内の分泌物も多いようです。どうしますか? ⇒吸引し、その後、人工呼吸を開始する

・ 人工呼吸の適応基準は? 
⇒“無呼吸もしくはあえぎ呼吸”、“心拍100未満/分”“30秒のCPAPか酸素投与後でも努力呼吸と中心性チアノーゼあり”のいずれか

・ 正期産児で人工呼吸を開始するときの酸素濃度は? 
⇒空気で始める

・ さらに、30秒経ちました(90秒)。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・SpO2

・ 呼吸:泣き始めている、心拍:パルスオキシメータで150/分、SpO2:80%。この後、どうしますか? 
⇒人工呼吸を中止し経過をみます。

・ さらに、30秒経ちました(120秒)。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・SpO2

・ 呼吸:元気に泣いている、心拍:パルスオキシメータで150/分、SpO2:85%。この後、どうしますか? 
⇒呼吸とSpO2モニターを観察します

・ さらに、30秒経ちました(150秒)。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・SpO2

・ 呼吸:しっかり呼吸し努力呼吸なし、心拍:パルスオキシメータで140/分、SpO2:90%。その後の方針は? 
⇒呼吸とSpO2モニターの観察を継続します

・ 引き続き保温に注意しながら、モニターを継続します。

⑥ 新生児仮死4(人工呼吸+胸骨圧迫)

【設定】母親34歳。0経妊0経産。妊娠経過は異常なし。39週2日、陣発後に来院した。破水後、臍帯下垂となり、緊急帝王切開となった。

・ 分娩立ち合いの前に準備する物品は? 
⇒ラジアントウォーマー、バスタオル、肩枕用ハンドタオル、吸引カテーテル、吸引圧、酸素、顔マスク、マノメータ付きバッグ(漏れの確認)、新生児用プローベ付きパルスオキシメータ、ブレンダー、喉頭鏡、気管チューブ、固定用テープ

・ 出生時の情報として何を確認しますか? 
⇒呼吸・筋緊張・在胎週数

・ 出生しました。児の状態は、呼吸:なし、筋緊張:低下している、成熟度:39週の正期産児。どうしますか? 
⇒蘇生の初期処置を始めます

・ 蘇生の初期処置を行ってください。 
⇒ラジアントウォーマーに収容、体位を整える、顔・口を拭く、体をふく、タオルを取り除く

・ 口腔・咽頭内に分泌物を多く認めます。吸引カテーテルのサイズは? 
⇒10Fr

・ 吸引の順序は? 
⇒口→鼻

・ まだ呼吸が出現しません。何をしますか? 
⇒呼吸刺激

・ 刺激する部位は? 
⇒足底、背中をこする

・ 体位を整える方法は? 
⇒肩枕を使用して気道確保の体位を整える

・ 依然として呼吸は出現しません。

・ 30秒経ちました。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・できればSpO2

・ 呼吸:呼吸なし、心拍:6秒間に7回

・ 心拍数の確認法は? 
⇒聴診または臍帯動脈の拍動で

・ 次にどうしますか? 
⇒人工呼吸を開始しながら、パルスオキシメータを装着する。

・ 人工呼吸の適応基準は? 
⇒“無呼吸もしくはあえぎ呼吸”、“心拍100未満/分”“30秒のCPAPか酸素投与後でも努力呼吸と中心性チアノーゼあり”のいずれか

・ 人工呼吸を開始するときの酸素濃度は? 
⇒正期産児では空気で開始する

・ 人工呼吸の回数と圧の目安は? 
⇒1分間に40~60回、最初の数回は20~30cmH2O、その後は胸の上がりを見て

・ さらに、30秒経ちました(60秒)。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・できるだけSpO2

・ 呼吸:呼吸なし、心拍:6秒に5回。どうしますか? 
⇒高濃度酸素での人工呼吸と胸骨圧迫を開始します

・ 胸骨圧迫の適応基準は? 
⇒人工呼吸をしても心拍が60未満/分

・ 蘇生者の立つ位置は? 
⇒児の頭側と体の横に

・ 指をあてる位置は? 
⇒胸骨の下1/3

・ 圧迫の深さは? 
⇒胸郭前後径の1/3

・ 胸骨圧迫と人工呼吸の連動の仕方は? 
⇒胸骨圧迫3回に換気1回、1サイクル2秒

・ さらに30秒経ちました(90秒)。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・SpO2

・ 呼吸:ごくわずかに呼吸を認める、心拍:パルスオキシメータで90/分、SpO2:70%。どうしますか? 
⇒胸骨圧迫は中止し、人工呼吸継続

・ さらに、30秒経ちました(120秒)。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・SpO2

・ 呼吸:弱い呼吸を認める、心拍:パルスオキシメータで120/分、SpO2:80%。どうしますか? 
⇒SpO2の値によって酸素濃度を調整しながら人工呼吸継続

・ さらに30秒経ちました(150秒)。何を確認しますか?
⇒呼吸・心拍・SpO2

・ 呼吸:泣き始めている、心拍:パルスオキシメータで150/分、SpO2:90%。どうしますか? 
⇒人工呼吸を中止し、人工呼吸時の酸素濃度でCPAP(あるいはフリーフロー酸素投与)を行い、引き続きSpO2の値で酸素濃度を調整します

・ さらに30秒経ちました(180秒)。何を確認しますか?
⇒呼吸・心拍・SpO2

・ 呼吸:元気に泣いている、心拍:パルスオキシメータで150/分、SpO2:95%。どうしますか?
⇒CPAP(あるいはフリーフロー酸素投与)は中止し、呼吸とパルスオキシメータの評価を継続

・ 蘇生できましたが、その後も注意深い経過観察が必要ですから、小児科医師と相談して収容先を決めます。

⑦ 新生児仮死5(気管吸引に熟達した小児科医が蘇生を行う場合のバリエーション)

【設定】母親38歳。2経妊0経産、妊娠高血圧症候群を合併しFGRを認めた。38週3日に陣発し来院した。心拍数モニターにて基線細変動消失を認めた。破水したところ羊水混濁著明であった。

・ 分娩立ち合いの前に準備する物品は? 
⇒ラジアントウォーマー、バスタオル、肩枕用ハンドタオル、吸引カテーテル、吸引圧、酸素、顔マスク、マノメータ付きバッグ(漏れの確認)、新生児用プローベ付きパルスオキシメータ、ブレンダー、喉頭鏡、気管チューブ、固定用テープ

・ 出生時の情報として何を確認しますか? 
⇒呼吸・筋緊張・在胎週数

・ 出生しました。児の状態は、呼吸:あえぎ呼吸、筋緊張:低下し手足はだらんとしている、成熟度:38週の正期産児で体重は2kgと推定される。どうしますか? 
⇒蘇生の初期処置を始めます

・ 蘇生の初期処置を行ってください。 
⇒ラジアントウォーマーに収容、体位を整える、顔・口を拭く、体を拭く、口・鼻の吸引を行う

・ 吸引カテーテルのサイズは? 
⇒羊水混濁があったので12Frまたは14Fr

・ 吸引の順序は? 
⇒口→鼻

・ たくさん胎便が気道に残っている様子なので気管挿管をし、気管吸引をします。(気管挿管して吸引してよいが、ルーチンに行う必要はない。)

・ 気管チューブの太さは? 
⇒3.0mm

・ 気管チューブの深さは? 
⇒左口角8cm

・ 気管吸引カテーテルの太さは? 
⇒6Fr

・ 気管吸引物は胎便で汚染されています。気管吸引の後、吸引物はクリアになりました。筋緊張は低下し、呼吸も弱いままです。その後どうしますか? 
⇒呼吸刺激し、パルスオキシメータを装着する

・ 刺激する部位は? 
⇒足底、背中をこする

・ 30秒経ちました。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・SpO2

・ 呼吸:呼吸なし、心拍:6秒間に8回、気管吸引物はクリアです。次にどうしますか? 
⇒空気で人工呼吸を開始する

・ 人工呼吸の適応基準は? 
⇒無呼吸またはあえぎ呼吸、心拍100未満/分、CPAPかフリーフロー酸素投与でも努力呼吸と中心性チアノーゼが続く

・ 人工呼吸の回数と圧の目安は? 
⇒1分間に40~60回、最初の数回は20~30cmH20、その後は胸の上がりを見て

・ さらに、30秒経ちました(60秒)。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・SpO2

・ 呼吸:呼吸なし、心拍:聴診上、心拍は6秒に5回。どうしますか? 
⇒人工呼吸をしてもさらに心拍が低下しているので、高濃度酸素を加えた人工呼吸に加え、胸骨圧迫を開始する

・ 胸骨圧迫の適応基準は? 
⇒人工呼吸をしても心拍が60未満/分

・ 蘇生者の立つ位置は? 
⇒児の頭側と体の横に

・ 胸骨圧迫で指を置く位置は? 
⇒胸骨の下1/3

・ 圧迫の深さは? 
⇒胸郭前後径の1/3

・ 胸骨圧迫と人工呼吸の連動の仕方は? 
⇒胸骨圧迫3回に換気1回、1サイクル2秒

・ さらに、30秒経ちました(90秒)。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・SpO2

・ 呼吸:弱い呼吸を認める、心拍:パルスオキシメータで90/分、SpO2:60%。どうしますか?
⇒胸骨圧迫は中止し、高濃度酸素のままで人工呼吸継続

・ 胸骨圧迫の中止基準は? 
⇒心拍60以上/分

・ さらに、30秒経ちました(120秒)。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・SpO2

・ 呼吸:弱い陥没呼吸を認める、心拍:120/分、SpO2:80%。どうしますか? 
⇒呼吸は不十分なので人工呼吸を継続する

・ 人工呼吸中に確認することは? 
⇒気管チューブの深さ、胸の上がり、含気、体位、圧の確認

・ 酸素の流量は? 
⇒5~10L/分

・ さらに30秒経ちました(150秒)。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・SpO2

・ 呼吸:自発呼吸はまだ弱いまま、心拍:120/分、SpO2:100%。この後、どうしますか?
⇒SpO2が95%以下になるように酸素濃度を下げて人工呼吸継続

・ 人工呼吸管理を含めた集中管理が必要です。直ちにNICUに搬送します。

⑧ 新生児仮死6(人工呼吸+胸骨圧迫+ボスミン投与)

【設定】母親34歳。1経妊1経産。妊娠32週より妊娠高血圧症候群を合併し、減塩食・安静にて管理された。妊娠37週1日。強い腹痛と出血を認め、来院した。エコーにて常位胎盤早期剥離が疑われ、緊急帝王切開となった。

・ 分娩立ち合いの前に準備する物品は? 
⇒ラジアントウォーマー、バスタオル、肩枕用ハンドタオル、吸引カテーテル、吸引圧、酸素、顔マスク、マノメータ付きバッグ(漏れの確認)、新生児用プローベ付きパルスオキシメータ、ブレンダー、喉頭鏡、気管チューブ、固定用テープ

・ 出生時の情報として何を確認しますか? ⇒呼吸・筋緊張・在胎週数

・ 出生しました。児の状態は、呼吸:呼吸なし、筋緊張:低下している、成熟度:37週の成熟児(推定体重は約2.5kg)。どうしますか?
⇒蘇生の初期処置を始めます

・ 蘇生の初期処置を行ってください。 
⇒ラジアントウォーマーに収容、体位を整える、顔・口を拭く、体をふく、ぬれたタオルを取り除く

・ 口腔・咽頭内に血性羊水を多く認めます。吸引カテーテルのサイズは?
⇒10Fr(or 8Fr)

・ 吸引の順序は? 
⇒口→鼻

・ まだ呼吸が出現しません。何をしますか? 
⇒呼吸刺激

・ 刺激する部位は? 
⇒足底、背中をこする

・ 体位を整える方法は? 
⇒肩枕を使用して気道確保の体位を整える

・ 依然として呼吸は出現しません。

・ 30秒経ちました。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・できればSpO2

・ 呼吸:呼吸なし、心拍:6秒間に5回

・ 心拍数の確認法は? 
⇒聴診または臍帯動脈の拍動で

・ 次にどうしますか? 
⇒人工呼吸を開始しながら、パルスオキシメータを装着する。

・ 人工呼吸の適応基準は? 
⇒“無呼吸もしくはあえぎ呼吸”、“心拍100未満/分”“30秒のCPAPか酸素投与後でも努力呼吸と中心性チアノーゼあり”のいずれか

・ 人工呼吸を開始するときの酸素濃度は? 
⇒正期産児では空気で開始する

・ 胸が上がっていません。確認することは? 
⇒体位、マスクのリーク、分泌物、換気圧など

・ 人工呼吸の回数と圧の目安は? 
⇒1分間に40~60回、最初の数回は20~30cmH2O、その後は胸の上がりを見て

・ 胸が上がってきました。

・ 人工呼吸をしながら徐脈が続けばどうしますか? 
⇒ブレンダーの酸素濃度を上げます

・ さらに、30秒経ちました(60秒)。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・SpO2

・ 呼吸:呼吸なし、心拍:6秒に4回、SpO2:未表示。どうしますか? 
⇒高濃度酸素での人工呼吸に加え、胸骨圧迫を開始します

・ 胸骨圧迫の適応基準は? 
⇒人工呼吸をしても心拍が60未満/分

・ 胸骨圧迫中の酸素濃度は? 
⇒高濃度酸素(80%以上)とします

・ 蘇生者の立つ位置は? 
⇒児の頭側と体の横に

・ 指をあてる位置は? 
⇒胸骨の下1/3

・ 圧迫の深さは? 
⇒胸郭前後径の1/3

・ 胸骨圧迫と人工呼吸の連動の仕方は? 
⇒胸骨圧迫3回に換気1回、1サイクル2秒

・ さらに30秒経ちました(90秒)。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・SpO2

・ 呼吸:まだ呼吸は出てこない、心拍:パルスオキシメータで40/分、SpO2:50%。どうしますか? 
⇒人工呼吸と胸骨圧迫を再開

・ 人工呼吸と胸骨圧迫を行っても心拍が改善しない場合、何を確認しますか? 
⇒胸郭の動き、酸素濃度、胸骨圧迫の位置、人工呼吸と胸骨圧迫のリズム

・ SpO2も低いので酸素濃度は高濃度のままにします。確認した事項に注意して蘇生を続ける。

・ さらに、30秒経ちました(120秒)。何を確認しますか? 
⇒呼吸・心拍・SpO2

・ 呼吸:まだ呼吸は出てこない、心拍:パルスオキシメータで40/分、SpO2:50%。適切な人工呼吸、胸骨圧迫でも改善傾向がありません。次にどうしますか? 
⇒気管挿管の準備をして、その間は高濃度での人工呼吸と胸骨圧迫を続ける。

・ 気管チューブの内径は? 
⇒3.0mm(先端まで同径のものがよい)

・ 気管チューブの深さは?推定体重は2.5kgです。 
⇒左口角8.5cm(2.5+6)

・ 気管チューブの位置確認は? 
⇒換気状態、両肺野の聴診、CO2モニター

・ 気管吸引カテーテルの太さは? 
⇒6Fr

・ 胸骨圧迫と人工呼吸の連動の仕方は? 
⇒胸骨圧迫3回に換気1回、1サイクル2秒

・ 20秒以内に挿管できなければ、再びバッグ・マスクで十分換気を行ってから再施行する。

・ さらに30秒経ちました(150秒)。何を確認しますか?
⇒呼吸・心拍・SpO2

・ 呼吸:まだ呼吸は出てきません、心拍:パルスオキシメータで50/分、SpO2:60%。次に、どうしますか? 
⇒人工呼吸と胸骨圧迫を続けながらボスミン?を投与します

・ ボスミン?の投与経路はどうしますか? 
⇒臍カテーテル、または静脈ラインから

・ 静注するボスミン?の濃度、投与量は? 
⇒生食で10倍に希釈したものを、0.1~0.3mL/kg

・ 静脈ライン確保前に投与したい場合は? 
⇒気管内投与

・ 気管内投与の場合のボスミン?の濃度、投与量は? 
⇒生食で10倍に希釈したものを、0.5~1.0mL/kg

・ ボスミン?の投与は、人工呼吸と胸骨圧迫を続けながら行う。

・ さらに30秒経ちました(180秒)。何を確認しますか?
⇒呼吸・心拍・SpO2

・ 呼吸:わずかに呼吸が出現している、心拍:パルスオキシメータで80/分、SpO2:80%。この後、どうしますか? 
⇒胸骨圧迫を中止し、SpO2の値によって酸素濃度を調整しながら人工呼吸を継続する

・ 胸骨圧迫の中止基準は? 
⇒心拍数60以上/分

・ さらに30秒経ちました(210秒)。何を確認しますか?
⇒呼吸・心拍・SpO2

・ 呼吸:弱い呼吸のみ、心拍:パルスオキシメータで140/分、SpO2:95%。この後、どうしますか? 
⇒吸入酸素濃度を下げながら人工呼吸を続けます。

・ 人工呼吸管理を含めた集中治療が必要です。人工呼吸しながらNICUに搬送します。


NCPR 基本手技の実習

2012年01月11日 | 周産期医学

Neonatal Cardio-Pulmonary Resuscitation

新生児の蘇生(NCPR)

① 蘇生の準備

・ ラジアントウォーマー
・ バスタオル(数枚)
・ 肩枕用ハンドタオル
・ ゴム球式吸引器
・ 吸引カテーテル(6Fr、8Fr、10Fr、12Fr、14Fr)
・ 吸引圧
・ 酸素、ブレンダー
・ 新生児用聴診器
・ パルスオキシメータと新生児用プローベ
・ 蘇生用フェイスマスク(丸型、鼻合わせ型)
・ 自己膨張式バッグ(閉鎖状酸素リザーバー付)
・ 流量膨張式バッグ(マノメータ付) →漏れの確認
・ 気管チューブ(Endotracheal tube: ETT)
 (内径2.5mm、3mm、3.5mm)
・ 呼気CO2検知器
・ 新生児用喉頭鏡(直型)ブレードNo.0(新生児用)、No.00(低出生体重児用)
・ 気管チューブ固定用テープとはさみ

②出生時における新生児の状態評価

出生直後の児のチェックポイント:
 1. 正期産児か? 
 2. 呼吸や啼泣は良好か? 
 3. 筋緊張は良好か?
以上の3項目を評価し、いずれかに問題があれば、蘇生の初期処置を開始する。

コンセンサス2010では、出生時に蘇生処置が必要かどうかを判定するための評価項目から、“羊水の胎便混濁”は除外された。

③ルーチンケア

出生時の3項目(正期産児、呼吸または啼泣、筋緊張)に異常がなければ、ルーチンケアを母親のそばで行う。

ルーチンケア:
 保温に配慮する
 気道を確保する体位をとらせる
 皮膚の羊水を拭き取る
以上の処置を行ってから、皮膚色を評価する。

鼻や口の分泌物はガーゼやタオルでぬぐえばよく、必ずしも吸引は必要ない。乱暴に咽頭を吸引すると、咽頭痙攣や迷走神経反射による徐脈、自発呼吸の遅延をもたらすことがある。

コンセンサス2010では、ルーチンケアのために母と児を分離すべきではないことが改めて強調されている。カンガルーケア(羊水をぬぐって皮膚を乾かした新生児を、母親の胸部に肌と肌が触れ合うように抱いてバスタオルなどで覆う方法)には保温効果があり、また早期の母子接触は愛着形成にも有用であるが、スタッフによる注意深い観察が必要である。

④蘇生の初期処置

出生直後のチェックポイントの3項目(正期産児、呼吸または啼泣、筋緊張)のいずれかに異常があれば蘇生の初期処置を開始する。

蘇生の初期処置:
 1. 保温し、皮膚の羊水を拭き取る
 2. 気道確保を行う(気道確保の体位と、胎便除去を含む必要に応じての吸引)
 3. 優しく刺激する
 4. 再度気道確保の体位をとる

羊水の胎便混濁の有無によるアルゴリズムの流れの変更はなくなった。初期処置の一つとして、胎便で混濁した羊水の気道からの除去を行う。

● 気道確保(体位と必要に応じての吸引)

・ 仮死の徴候のある新生児は、直ちに仰臥位でsniffing positionをとらせる。肩枕を入れると気道確保の体位をとりやすい。

・ 気道確保の体位で呼吸が弱々しい場合や、努力性呼吸があるにもかかわらず十分な換気が得られない場合は、気道の閉塞が考えられるので吸引を行う。分泌物が少なく呼吸に問題がなければ、ルーチンに吸引する必要はない。

・ 吸引が必要な場合には、ゴム球式吸引器(バルブシリンジ)または吸引カテーテルで、まず口腔を吸引し、次いで鼻腔を吸引する。

・ 吸引カテーテルのサイズは羊水混濁の有無によって変更する。羊水の胎便混濁があった場合は、太めの吸引カテーテル(12または14Fr)、羊水が清明な場合は、正期産児で10Fr、低出生体重児では児の大きさに応じて8Frまたは6Frの吸引カテーテルを用いる。

● 皮膚刺激

・ 乾いたタオルで皮膚を拭く。(低体温防止、呼吸誘発のための皮膚刺激)

・ 温められた別のタオルを用いて児の背部、体幹、あるいは四肢を優しくこする。

・ これで自発呼吸が誘発されなければ、児の足底を平手で2、3回叩いたり指先で弾いたりする。背部を優しくこすってもよい。(足底刺激、背中刺激)

⑤バッグ・マスクを用いた人工呼吸

コンセンサス2010では以下の点が強調されている。

1. 過剰な酸素投与(特に100%酸素)はできるだけ避ける。 →パルスオキシメータとブレンダーの活用

2. 出生後10分間は正常新生児でも中心性チアノーゼがあっても異常とはいえない。酸素投与の目安は右手に付けたパルスオキシメータのSpO2が以下の値未満の場合である。 
 生後 1分 …… SpO2の下限値 60% 
 生後 3分 …… SpO2の下限値 70% 
 生後 5分 …… SpO2の下限値 80% 
 生後10分 …… SpO2の下限値 90%

なお、SpO2の値が95%以上になったら、吸入酸素は徐々に下げて中止する。

3. 蘇生の初期処置の後(出生後30秒)で、無呼吸(ないしあえぎ呼吸)か心拍数100/分未満ならば直ちに人工呼吸を開始する。正期産かそれに近い児では空気で開始する。32週未満の児では30~40%の低濃度酸素で開始する。空気や低濃度酸素で開始しても心拍数が下がり続けたり、SpO2の上昇傾向が認められなければ、吸入酸素濃度を上げる(自己膨張式バッグを使用しているときはリザーバーを装着する)。

4. 蘇生の初期処置の後(出生後30秒)で、自発呼吸がしっかりあって心拍が100/分以上ならば、中心性チアノーゼがあっても、努力呼吸(陥没呼吸・呻吟・多呼吸)を伴わなければ、あわてる必要はない。パルスオキシメータを右手に装着して、SpO2が上記2.の値未満ならその時点で空気を用いた持続的気道陽圧CPAP(Continuous Positive Airway Pressure)またはフリーフロー酸素の投与を開始すればよい。

5. 蘇生の初期処置の後(出生後30秒)で、自発呼吸があり、心拍が100/分以上であるが、努力呼吸(陥没呼吸・呻吟・多呼吸)と中心性チアノーゼの両者が同時に認められる場合は、パルスオキシメータを右手に装着し、まずは空気を用いたCPAPを優先する。空気を用いたCPAPがどうしても適応できないような状況では、フリーフロー酸素の投与を考慮する。CPAPの施行や、フリーフロー酸素の投与にもかかわらず、出生後60秒の評価で努力呼吸と中心性チアノーゼの両者が持続する場合は人工呼吸を開始する。

6. 以上の対応で、中心性チアノーゼのみや努力呼吸のみが続く場合は、原因検索(チアノーゼ性心疾患、RDS、新生児一過性多呼吸)を進めながら、CPAPを検討する。

手技の練習:

1. パルスオキシメータの新生児用プローベを右手掌か右手首に装着する方法を練習させる。

2. インストラクターの指に新生児用プローベを装着して、パルスオキシメータの心拍数とSpO2が表示されるのに時間がかかることをデモする。体動などで脈波が検出されないと数字が信用できないことを、プローベを装着した指を動かして実演する。

3. ブレンダーの吸入酸素濃度を空気に設定して、マノメータ付き流量膨張式バッグを用いてマスクCPAPを実演し、受講生に実施してもらう。マノメータの圧は5~6cmH2Oを目標(8cmH2Oは超えない)とする。人形だと口→食道に圧が逃げてCPAP圧がかかりにくいことがあるので、インストラクターが喉頭を外から少し圧迫するか、受講生にマスクを強く顔に密着させるように指導する。メトロノームで40/分くらいの音を聞かせながら行うと教育効果が上がる。

4. フリーフロー酸素投与法を、酸素チューブをつかんだインストラクターの手をカップ状にして実演する。5~10L/分の流量で使用する。ブレンダーがないときは、顔に近づけると高濃度酸素投与になり、5~6cm離すと低濃度酸素投与になることを説明する。流量膨張式バッグではフリーフロー酸素投与ができるが、自己膨張式バッグではできないことを説明する。

5. ブレンダーがない施設の受講者の場合は、
ⅰ)酸素チューブを付けた自己膨張式バッグで、リザーバーを付けずに、低濃度酸素投与のバッグ・マスク換気の練習を全員にさせる。
ⅱ)次いで、酸素チューブを付けた自己膨張式バッグにリザーバーを付けて、高濃度酸素酸素投与のバッグ・マスク換気の練習を全員にさせる。

● “IC”クランプ法の要点

・ マスクは眼より下、顎より上できっちり鼻と口をカバーできるものを使用する。

・ 眼にかかると眼損傷を、顎より外に出てしまうとガス漏れを起こす。

・ 親指と人差し指を用いた“C”ではマスクを顔面に密着させることに注意する。

・ 肩枕を入れるとマスクを“C”で顔面に密着させるだけでもバッグ・マスク換気が容易となる。

・ 小児では“E”は気道確保のため下顎から頤までに3つの指をかけるが、新生児では中指のみで下顎を引き上げるようにする。⇒新生児では“IC”テクニック

・ 中指は下顎の骨の部分に指をかけ、決して咽頭のやわらかい部分を圧迫しないようにする(舌を押し上げて気道閉塞を起こしやすいため)。

● 自己膨張式バッグ

・ 使用が容易である。

・ リザーバーがないと40%未満の低濃度酸素投与、リザーバーをつけて酸素流量を上げると高濃度酸素と使い分けができる。

・ フリーフロー酸素の投与は容易でない(特殊な閉鎖式のリザーバーがないと難しい)。マスクCPAPも特殊な装置がないとできない。

・ リリーフ弁があるので、一定の圧(35cmH2Oや40cmH2Oなど)以上はかからない。

● 流量膨張式バッグ

・ 使用に熟練を要する(難しい)。

・ 高濃度酸素(100%酸素)を含めてブレンダーで調整されたとおりの濃度の酸素を投与できる。

・ フリーフロー酸素の投与ができる。

・ 使用になれると肺のコンプライアンスや気道抵抗がわかる。

・ マノメータを使用しないと過剰の圧をかける危険性がある。

・ 圧調整のためにはリークシステムと流量を調整する必要がある。

・ マスクが密着してないとバギングができない(これは「マスクが密着していないことがすぐわかる」という点ではメリットでもある)。

・ マノメータを使用してマスクCPAPができる。

バッグ・マスク人工呼吸では1回の換気に約1.0秒をかけ、胸上がりを必ず確認する。

流量膨張式バッグに流す酸素の量は、新生児では5~10L/分くらいが適量である。流量膨張式バッグでは必ず圧マノメータに接続し、換気圧をチェックする必要がある。出生直後の空気呼吸開始時には20~30cmH2Oあるいはそれ以上の高い圧と長めの吸気時間が必要とされることもある。効果的な換気かどうかは、圧を指標とするよりも児の胸部の動きのほうが信頼できる。人工呼吸の回数は40~60回/分(胸骨圧迫を併用する場合は30回/分)が必要である。

90%の仮死児は気道確保とバッグ・マスク人工呼吸で蘇生ができるので、周産期医療関係者にバッグ・マスク人工呼吸を体得させることがNCPR講習会の一番重要な行動目標である。

⑥胸骨圧迫

● 胸骨圧迫の適応:

人工呼吸を開始して30秒後に心拍数を確認し、

・ 心拍数が100/分以上で、自発呼吸が認められれば人工呼吸は中止してよい。

・ 心拍数が60/分以上100/未満の場合は、人工呼吸が適切に行われているかどうかを確認する。また、気管挿管による人工呼吸を検討する。

・ 心拍数が60/分未満であれば、胸骨圧迫を開始する。

● 胸骨圧迫の方法:

胸骨圧迫は胸骨上で両側乳頭を結ぶ線のすぐ下方の部分(胸骨の下部1/3の所)を圧迫する。圧迫位置が低すぎると肝臓の損傷を起こすことがある。圧迫期は胸壁の厚さの1/3程度がへこむ強さで、圧迫を反復する。圧迫解除期にも指は胸壁から離さない。

胸郭包み込み両拇指圧迫法(両拇指法)を第一選択とするが、蘇生施行者が一人で人工呼吸と胸骨圧迫を行わねばならない場合や臍カテーテルをとる場合などには、2本指圧迫法(2本指法)に切り替える必要がある。

⑦人工呼吸と胸骨圧迫の組み合わせ

胸骨圧迫:人工呼吸=3:1

3回の胸骨圧迫と1回の人工呼吸を1サイクルとし、1サイクルは2秒で行う。1分間に胸骨圧迫90回、人工呼吸30回。30秒ごとに6秒間だけ心拍数をチェックし、心拍数60/分以上を保持できるまで胸骨圧迫を続ける。

胸骨圧迫中は体動のため正確なSpO2モニターが困難なので、心拍上昇が確認されるまで高濃度酸素投与で人工呼吸を施行してよい。

胸骨圧迫の術者が「イチ、ニ、サン、バッグ」と声を出してペースメーカーをする。

まず両拇指法とバッグ・マスク人工呼吸を組み合わせて受講生全員に実施してもらい、一巡したら、2本指法とバッグ・マスク人工呼吸を組み合わせて受講生全員に実施してもらう。できればメトロノームで120/分の音を聴かせながら実施する。

⑧薬物投与とその準備

心肺蘇生を必要とする新生児の99%の児は、有効な人工呼吸とこれに同期した十分な深さと速度で行われた胸骨圧迫により改善が得られるが、1000人の新生児中2人以下という低い確率であるが、30秒間の有効な人工呼吸と、それに続く30秒間の有効な人工呼吸とこれに同期した十分な深さと速度で行われた胸骨圧迫による蘇生を行っても、心拍数60未満/分が持続する新生児に対して薬物による蘇生が行われる。薬物投与時も、有効な人工呼吸とこれに同期した十分な深さと速度で行われた胸骨圧迫による蘇生は継続されていなくてはならない。

◆ アドレナリン(ボスミン?:0.1%アドレナリン):

・ ボスミン?は、「30秒間の有効な人工呼吸とこれに同期した十分な深さと速度で行われた胸骨圧迫による蘇生を行っても、心拍数60未満/分が持続する場合」に投与の適応となる。

・ 投与経路は静注(臍帯静脈が第一選択)が推奨され、投与量は10倍希釈として0.1~0.3 mL/kgで、急速静注で投与する。

・ ボスミン?は10倍希釈液(生理食塩水で希釈)を使用する。あらかじめ10mLのシリンジに生理食塩水で10倍に希釈した液10mLを準備し、それを1mLのシリンジに分け、すぐに使用できるようにしておく。

・ ボスミン?の気管内投与は静脈ライン確保までの投与法とする。投与量は静注法よりも高用量で、10倍希釈液(生理食塩水で希釈)として0.5~1.0 mL/kgである。10mLのシリンジに生理食塩水で10倍に希釈した液10mLのうち静注用に1mLとった残りの9mLを準備しておく。

・ 気管内投与の場合は、シリンジに栄養チューブを付けてETT内に投与(one shot)する方法と、シリンジでETTに直接投与後に生理食塩水でフラッシュする方法の2つがある。

・ 気管内投与後は気管での吸収のために、速やかに人工呼吸を開始する。

・ 投与後30秒ごとに心拍数をチェックし、心拍数が60未満/分であれば3~5分ごとに上記範囲量の10倍希釈ボスミン?を投与する。

循環血液増量剤

常位胎盤早期剥離、前置胎盤、臍帯からの出血、母児間輸血症候群、双胎間輸血症候群などの病歴があり、また病歴は不明でも明らかな循環血液量の減少によるショックのために十分な蘇生の効果が得られていないと考えられる場合には、循環血液増量剤の使用を考慮する。使用が推奨されている循環血液増量剤は生理食塩水で、その他、乳酸リンゲル液、また胎児期から貧血が考えられる場合にはO型Rh(-)の濃厚赤血球も使用可能である。

◆ 生理食塩水

・ ボスミン?の投与を行っても心拍が回復せず、循環血液量の不足が考えられる場合が投与の適応となる。

・ 投与する場合は10 mL/kgをゆっくりと静注する(5~10分くらいかけて)

・ 臍帯静脈カテーテルや抹消静脈ラインから投与する。

◆ 炭酸水素ナトリウム(メイロン?)

・ ボスミン?や生理食塩水の投与を行っても心拍の改善が得られない場合に、可能ならば血液ガス分析を行って、pCO2が高くないことと、代謝性アシドーシスがあることを確認した後に投与する。最近は副作用が強調されているので、どうしても他の処置で改善しない場合に限って投与する。

・ 浸透圧が高いため、蒸留水で2倍に希釈して、臍帯静脈カテーテルや抹消静脈ラインから投与する。

・ 投与する場合は希釈液にして2~4 mL/kgをゆっくりと静注する(1分間に1mL位の速度で)。

⑨気管挿管とその介助

新生児の気道の解剖のポイント:

・ 気道が大人に比べて絶対的に狭くて短いため、気道が容易に閉塞しやすい。 →気管挿管が難しい。

・ 声門が前上方(腹側かつ頭側)に位置していて喉頭展開しにくい。喉頭蓋も大きく垂れ下がっている。 →挿管時に頸部を過伸展してはいけない。肩枕を入れていた場合は、肩枕をとるか、頭の下に敷く。

・ 喉頭蓋ごと喉頭鏡で持ち上げる。喉頭鏡を「てこ」にして展開してはいけない(「釘抜きをするときのように手首をかえす」のではなくて「下顎を持ち上げる」ことを強調する)。

・ 舌が口腔の容積に占める割合が大きい。 →舌が原因となる気道閉塞もありうる。挿管時はきちんと舌をよけないと挿管できない。

・ 輪状軟骨が唯一の硬いリングとなっており、その上部の組織は脆弱であるため容易に閉塞しやすい。

気管挿管の要点:

・ 児の頭側に立つ(児に向かって、まっすぐに立つ)。

・ 児の体位を整える(児の足元に立った介助者が、肩を押さえながら、両手で児の頭を固定する)。

・ 新生児では後頭部が突出している場合が多く、外耳孔と肩の前面が床に平行に同じ高さになるように体位を整えると喉頭展開しやすくなる。

・ 肩枕ははずすか、頭の下にタオルを敷く。

・ バッグ・マスクで十分に換気を行う。

・ 必要であれば、喉頭展開前に咽頭~喉頭の吸引を行う。

・ 口元酸素を流しながら喉頭展開の処置に移る。

・ 直型ブレードを用いる。

・ 右口角から舌をよけながらブレードを挿入する。

・ 喉頭蓋が大きく垂れ下がっているのを確認する。

・ ブレードで喉頭蓋を押さえ込んで、被裂部(声門開口部)を確認する。

・ 喉頭展開時に喉頭が見えにくい場合には、介助者に輪状軟骨を外から軽く圧迫するか、右口角を外側に引っ張ってもらうと見えやすくなる場合がある。分泌物が貯留していて声門が見えにくいときは吸引する。

・ 児の体軸に斜め45度を保ったまま、平行にブレードを拳上させる。手首での「てこ」運動をしない(「釘抜き様に手首をかえす」のではなくて、「下顎を持ち上げる」ことを強調する)。

・ ETTを挿入する(滑りをよくして気道を傷つけないために、チューブの先端外周には、清潔な水で濡らしておくかキシロカインゼリーを塗布する)。

・ このときETTの声門マーカー(声帯指標線)が声門を通過するのを確認する。

・ ETTの固定では、ブルーラインが頭側に向くようにして、口角において“体重(kg)+6cm”の深さを固定の目安にする。

・ 1回の気管挿管の処置は20秒以内に行う。それよりも時間がかかった場合は、いったん処置を中止し、バッグ・マスクで換気を行った後、再度、気管挿管を行う。

・ 挿管が難しいときは、スタイレットを使用してもかまわない。その場合は、スタイレットの先端がETTの先から出ないようにし、ETTの口端でスタイレットを曲げて押し込みすぎるのを防ぎ、ETTの先から2~3cmのあたりを少し曲げてカーブをつける。

● 気管挿管後の位置確認の方法

初期の確認

・ 人工呼吸で胸の上がり方に左右差がない。

・ 呼吸音に左右差がない(左右前胸部、左右腋窩部、上腹部の5点でチェック)。

・ 上腹部で呼吸音が聞こえない。換気による胃の膨満はない。

・ 呼気時にチューブ内に水蒸気が認められる(内面がくもる)。

二次的な確認

・ 心拍数が増加する。

・ SpO2が改善する。

・ 筋緊張、体動、皮膚色の改善を認める。

・ 呼気CO2検知器(カプノメーターなど)により呼気CO2が検出される。心停止している場合は呼気中にCO2が検出されないので注意が必要である。

◆ まとめ

・ 過剰な酸素投与を避けるために、蘇生が必要な児ではパルスオキシメータの新生児用プローベを右手に装着しましょう。

・ 新生児の気道の解剖の特徴を理解しましょう。

・ 確実なバッグ・マスクは何より大切です。

・ 肩枕+ICクランプ法により気道を確保しやすい。

・ 自己膨張式バッグと流量膨張式バッグの利点・欠点を理解したうえで、その扱いに習熟しましょう。

・ 胸骨圧迫とバッグ・マスクはリズムが大切です。

・ 正期産では、まず空気で人工呼吸しましょう。

・ 低濃度酸素投与法と高濃度酸素投与法を区別して行いましょう。

・ 気管挿管では喉頭蓋を持ち上げること、「釘抜き様に手首をかえして、てこ様動作をしない」ことが大事です。

・ 気管挿管では介助者の役割が非常に重要です。特に児の頭部をしっかり固定してsniffing positionをとらせると、処置がスムーズに進みます。

・ 術者から求められたときに速やかにETTや吸引カテーテルを渡すことも大切です。

・ 気管挿管後のETT先端の位置確認も忘れずに行いましょう。


産科医療の集約化と各基幹病院の果たすべき役割について

2012年01月02日 | 飯田下伊那地域の産科問題

長野県では、ここ数年間で、県や大学の?方針に沿って、産婦人科医療の集約化がどんどん進行して?います。従って、各基幹病院で取り扱う症例数は年々うなぎ登りです。

各基幹病院でどの程度の症例数を扱うのか? 産婦人科の医師をどの?病院にどう配置するのか?は、すべて大学の采配で決まるこ?となので、私自身には、大学の方針に従って自分に課せられた任務を忠実に全うしていく以外には選択の余地が全く?ありません。

私に課せられた任務は、「大学との連携を強化して、定年退職まで根性で何とか科を?つぶさないように維持し、なるべくいい形で後任者にバトンタッチすること」と、「大学から派遣されて来る若い医師達のやる気を引き?出し、彼らが当科に在任している間になるべく多くの症例を経験してもらい、十分に技能を?高めてもらって、たくましく成長した彼らを貴重な即戦力として次の任地に送り出すこと」だと思っています。