コメント(私見):
上田市を中心とした「上小医療圏」(人口約22万人)では、長野病院の産婦人科が唯一の産科2次施設としての役割を担ってきました。その長野病院で産科機能の存続が困難になってきたと報道されています。
産科2次施設がなくなってしまうと、その医療圏内では高リスク妊娠や異常分娩は取り扱いが困難となってしまいます。さらに、低リスク妊娠の分娩であっても、分娩経過中に急に異常化した時の搬送先が医療圏内に一切なくなってしまうということになれば、産科1次施設における正常分娩の取扱いも継続がだんだん困難になってしまう可能性があります。
現代の周産期医療は典型的なチーム医療の世界で、非常に多くの専門家たちが一致団結してチームとして診療を実施していく必要があります。地域内に周産期医療の大きなチームを結成し、毎年、新人獲得などのチーム維持の努力をしながら、チームを10年後も20年後も安定的に維持・継続していく必要があります。もはや、1人や2人のスーパードクターの熱意だけではどうにもならない世界です。地域で頑張り続けたいと思っている熱意あふれる医師達でも、所属チームが解散してしまえば、その地から去っていく他ありません。
その周産期医療を担っている産科医、新生児科医、麻酔科医などは、養成に非常に長い時間がかかります。今、地域で必要だからといって、急に増やせるものでもありません。
産科医療 崩壊の危機
迫る限界 お産の現場
分娩体制崩壊の危機
産科医療に関する新聞記事
「バースセンター」構想 上田の母親ら「集い」発足
長野県・東信地域の厳しい産科医療の状況について
追加情報あり(12/15)
***** NHKニュース信州、2007年12月15日
上田市産院、1月に助産師外来
院長の退職に伴う医師不足で出産の受け入れを制限する方針を示していた「上田市産院」は、出産の受け入れ数をできるだけ維持しようと、助産師が医師の業務の一部を分担して医師の負担を軽減する「助産師外来」を来年1月から始めることを決め、近く上田市と協議して正式に決定する方針です。
その結果、「上田市産院」は出産の受け入れ数をできるだけ維持するために、助産師が医師に代わって妊婦の検診などを行う「助産師外来」を来年1月から始めることを決めました。
具体的には、いま上田市産院で常時勤務している13人の助産師のうち、県外の助産師外来で研修の経験のある5人に産院の外来を担当してもらい、医師が出産に専念できるよう態勢を整えます。
「上田市産院」は近く母袋市長と協議して、正式に開始時期を決めることにしています。
(NHKニュース信州、2007年12月15日)
***** 医療タイムス、長野、2007年12月13日
上小地域の産科医療「近接医療圏との連携で確保」
12月県会で渡辺衛生部長
渡辺庸子衛生部長は12日、県会12月定例会の一般質問で、常勤産科医の引き揚げや退職で危機的状況に陥っている上小地域の産科医療体制について、「ハイリスク分娩に関しては、隣接する長野、佐久の両医療圏との連携を視野に入れ、行政や医師会、医療機関による医療圏を越えた調整を行い、産科医療を確保していきたい」との考えを示した。
さらに、産科医療の集約化に対する見解を求められた渡辺部長は、「地域の産科医療の崩壊を防ぐための緊急避難的措置」とした上で、「現在の医師不足の中で数少ない産科医を複数の医療機関に分配、配置することは、より深刻な事態につながる恐れがある」と理解を求めた。いずれも、高村京子議員(共産党)への答弁。
(医療タイムス、長野、2007年12月13日)
****** 毎日新聞、長野、2007年12月13日
国立長野病院:産科医引き揚げ問題 長野や佐久と連携、産科医療確保を
◇県議会で衛生部長
国立病院機構長野病院(上田市)で産科医の引き揚げが求められている問題で、県の渡辺庸子衛生部長は12日、「ハイリスクの分娩(ぶんべん)については、隣接する長野や佐久医療圏との連携を視野に入れ、行政や医療機関が協力し、医療圏を超えて上田地域の産科医療を確保したい」との見解を示した。同日開かれた県議会一般質問で、上田市・小県郡選出の高村京子議員(共産党県議団)の問いに答えた。渡辺部長は、県や上田地域の首長らが11日に産科医を派遣している昭和大病院(東京都)を訪問し、派遣継続を求める要請を行ったことも報告した。
(毎日新聞、長野、2007年12月13日)
****** 信濃毎日新聞、2007年12月12日
昭和大に医師派遣継続を要請 上田地域広域連合
国立病院機構長野病院(上田市)の産科医を、派遣元の昭和大(東京)が引き揚げる方針を示している問題で、母袋創一・上田地域広域連合長(上田市長)は11日、昭和大病院の飯島正文院長を訪ね、派遣継続を求める要請書を提出した。会談は非公開。母袋連合長によると、飯島院長は「(昭和大病院の)足元がおぼつかない状態」として、派遣継続は困難との認識を示した。
要請には、進藤政臣・長野病院長、桑島昭文・県衛生技監、勝山努・信大付属病院長らが同席した。母袋連合長は、長野病院が上田小県地域の中核的病院で、危険度の高い出産を担っていることなどを説明。同病院の産科医4人全員を派遣している昭和大に継続への理解を求めた。
これに対し飯島院長は、昭和大病院が中核病院となっている東京・品川区と大田区でも産科医が不足しているとして「引き揚げに(上田地域の)理解を求めざるを得ない状況」と述べたという。4人のうち何人を、いつまでに引き揚げるのか-といった方針については説明しなかった。
会談後、母袋連合長は「(医師を引き揚げる)強い意志を感じた」と話し、現在の4人の派遣を維持することは「極めて厳しい」との受け止めを示した。その上で、昭和大への働き掛けは引き続き続けるものの、他の医療機関に派遣を求めることも必要になる-との考えを示した。
(信濃毎日新聞、2007年12月12日)
****** 信濃毎日新聞、2007年12月12日
院内助産院設置を 上田市の有志が県会に請願
上田市の母親らでつくるグループ「安心してお産と子育てができる地域をつくる住民の集い」(佐納美和子代表)は11日、正常出産を助産師主導で扱う院内助産院(バースセンター)の開設に支援を求める請願書を、賛同者5万240人の署名を添えて県会に提出した。開会中の12月定例会で審議される。
上田小県地域では、国立病院機構長野病院(上田市)が今月に入り、産科医を派遣していた昭和大(東京)の医師引き揚げ方針を受け、新規の出産受け付けを休止。上田市産院も院長が年内で退職する意向を示すなど、産科医不足が深刻となっている。
「集い」の桐島真希子副会長(32)=上田市材木町=は「どこで出産したらよいのか、妊婦はすごく不安に感じている」と話し、出産を支える仕組みづくりを強く訴えた。
請願書と署名簿を受け取った服部宏昭議長は「少しでも安心できるよう、県会も取り組みを進めたい」と述べた。
(信濃毎日新聞、2007年12月12日)
****** 毎日新聞、長野、2007年12月12日
バースセンター:県議長に設立支援を請願 上田の住民団体、5万人分署名添え
助産師が出産を扱うバースセンター(院内助産院)の設立を目指す上田市の住民グループが11日、県議会の服部宏昭議長を訪ね、設立への支援を求める請願書と約5万人分の署名を提出した。服部議長は「県議会としても憂慮しており、県と一緒になって取り組んでいきたい」と述べた。請願は開会中の12月議会で審議される。
グループでは、バースセンターの設置への県の支援や、各地域で中心となる病院の医療体制充実、救急搬送システムの整備などを請願した。11月には上田市議会にも同種の請願を行った。グループ副代表の桐島真希子さん(32)は「一日も早く産む場所を確保してほしい」と訴えた。
上田地域では、中核病院である国立病院機構長野病院で産科医全員の引き揚げが明らかになるなど、お産を巡る環境への不安が広がっている。【神崎修一】
(毎日新聞、長野、2007年12月12日)
****** 信州民報、2007年12月11日
(出産・育児ママネットワークより引用)
上田地域広域連合 正副連合長会で協議
長野病院の産婦人科医引き揚げ問題
「できるだけ早く昭和大へ要請する」
国立病院機構長野病院(上田市緑ヶ丘)から、派遣している産婦人科医師4人を全員を引き揚げる昭和大(東京都)の方針が明らかになったことから10日、上田地域広域連合正副連合長会では、長野病院の進藤正臣院長も同席し緊急の協議を行い、今後の方針を話し合った。
同正副連合長は定例のもので、この日午前中に会議。正午から開いた記者会見で、母袋創一連合長=上田市長=は「地域の産科医療体制の確保が一番。この危機を乗り越えていく」とし、「全面的な協力体制でいくこうと、意思疎通を図った」と報告。
責任部分についても触れ「言いにくいが、医師の人事権はどこのあるのか」とし、「長野病院は国立病院機構で高度医療を行う場所。国の医療機関にもかかわらず、このような状況でいいのか」と語った。
さらに「今後は昭和大への要請をじかに行こう」としたが、具体的には調整中で、「まだ確定していない。1日もは早い段階で行動に移す」と答えることにとどめた。
また県、信大にも要請していくとし、地元医師会、議会にも理解を求めていくことにした。昭和大への要請内容は具体的にはきまっていないが、同じ状態(4人体制)でお願いしたいとしている。
医療確保のための支援については、広域副連合長の東御市、長和町、青木村の各首長ともに「財政的支援は惜しまない」とし、羽田健一郎・長和町長は「地域全体で考える問題」と答えた。また、長野病院の進藤院長も「昭和大に派遣継続をお願いするが、駄目だった場合、(医師確保の)働きかけをしていく」としたが、具体的内容は語らなかった。
(信州民報、2007年12月11日)
出産・育児ママネットワークより引用
****** 信濃毎日新聞、2007年12月11日
昭和大に派遣継続要請を確認 産科医引き揚げ問題
上田地域広域連合(連合長・母袋創一上田市長)は10日、上田市内で正副連合長会を開いた。国立病院機構長野病院(上田市)の産科医を、派遣元の昭和大(東京)が引き揚げる方針を示している問題で、近く連合として昭和大に派遣の継続を申し入れるとともに、他の医療機関からの産科医確保も検討することを確認した。
会合は非公開で、上田市、東御市、小県郡長和町、青木村の4市町村長が出席。進藤政臣・長野病院長が経緯を説明し、対応を協議した。
終了後の記者会見で母袋連合長は、国、県、信大などと連携し「難局を打開したい」と説明。昭和大への要請時期は調整中とした。
一方、進藤院長は、昭和大以外の新たな派遣要請先を、幾つか念頭に置いている-と表明。上田小県地域の中核病院として産科機能を維持するためには「3人以上(の産科医)を確保したい」との考えを示した。
昭和大は、長野病院の産科医4人全員を派遣しているが、来年春から段階的に引き揚げる方針。長野病院は今月3日から新規の出産受け付けを休止している。
(信濃毎日新聞、2007年12月11日)
****** 毎日新聞、長野、2007年12月11日
国立長野病院:産科医引き揚げ問題
上田広域連合、国などに派遣継続要請へ
◇国、昭和大学に要請へ
国立病院機構「長野病院」(上田市、進藤政臣院長)で産科医4人全員の引き揚げが求められている問題で、上田市など5市町村でつくる上田広域連合(連合長、母袋創一・上田市長)は10日、正副連合長会を開いた。会議では、広域連合として国や派遣元の昭和大学に対し、派遣の継続を求めていくことを確認した。
この日の会議は、非公開で行われ、5市町村の首長に加え、進藤院長も出席した。会議後の会見で、母袋市長は「長野病院は公的な医療機関であり、このような状態になっていることをどうしてくれるのか」と国の責任を指摘した。
同病院では、すでに先週から新規の分べんの予約を休止している。今後、分べんが休止すると年間約500件のお産の受け入れ先がなくなるほか、上小地域で異常分べんを取り扱う病院がなくなるため、出産環境が悪化することが懸念されている。【川口健史】
(毎日新聞、長野、2007年12初11日)
****** 信州民報、2007年12月9日
(出産・育児ママネットワークより引用)
上田市産婦人科医会・宮下会長
安心安全のお産のため「前向きに取り組んでいく」
上小地域には現在、産婦人科は長野病院、上田市産院と市内に二つの民間の産婦人科医院がある。その一つ、角田産婦人科内科医院(角田英弥院長、上田市山口)の昨年一年間の出産件数は、482件、今年は12月7日まで403と減少しているが、これは8月から11月まで医院の増改築で出産の受け入れを制限していたため。ようやく改築も終了し、ベットは9床から14床になった。角田医長は「今後、積極的に出産の受け付け増をはかる」とし、医師2人体制で、来年は昨年よりも50~60件の出産受付が増える見通しとした。
また上田原レディース&マタニティクリニック(宮下尚夫院長、上田市上田原)は医師2人体制、15床で、昨年は約400のお産を扱った。
市産婦人科医会会長を勤める宮下尚夫院長は「6日に4医院と関係者が集まり、長野病院については、まだ決定していないが、仮に最悪の事態になっても頑張って乗り切ろうと誓い合ったばかり」と明かす。
「通常出産なら、なんとかなるかもしれない。異常分娩はそれほど多くないが、お産はいつ異常になるかわからない。長野病院までおよそ、救急車で15分だった。今後は、篠ノ井総合病院(同約40分)や佐久総合病院(同約50分)までの転送手段を早くする。あるいはドクターヘリを有効に使うことも考えていかなくては」などど、具体案を上げる。
宮下院長は「それには産科が異常を早く発見する努力と、早く頼むことが必要」とし、「妊産婦らは検診を早くしっかり受けてほしい」と市民の協力も仰いだ。
また「市内には6~7人の産科医師がいることになる。手を携えていこうとまとまってきた。いい傾向だ」と話し、「市民の不安を解消、安心・安全なお産のために、産科医会としても前向きに取り組んでいく」とした。
(信州民報、2007年12月9日)
出産・育児ママネットワークより引用
****** 信濃毎日新聞、2007年12月8日1面
長野病院の全産科医派遣の昭和大、引き揚げ方針
国立病院機構長野病院(上田市)は7日、同病院の産科医4人全員を派遣している昭和大(東京都品川区)から医師を引き揚げる方針を通告され、3日から新規の出産受け付けを休止したことを明らかにした。大学側は来春から段階的に引き揚げるとしているが、期間は示していない。同病院は上田小県地域の中核病院で、今後地域に大きな影響が出そうだ。
同病院の進藤政臣院長は記者会見で「産科医確保に最大限努める」と述べたが、見通しは立っておらず、産科廃止に至る可能性もある。同病院では2006年、同地域の出産2024件の23%、467件を扱っている上、他の病院から危険度の高い出産も受け入れている。
同病院は、既に予約済みで、来年7月ごろまでに同病院で出産予定の97人の出産は扱うとしている。
昭和大からの通告は11月中旬にあった。同大学医学部産婦人科の岡井崇教授は取材に、長野病院からの医師引き揚げは、昭和大近くの病院に派遣するため-と説明。別の大学がこの病院から派遣医を引き揚げたため、現在は出産の扱いを休止しているという。昭和大は東京・品川区と大田区の周産期医療の拠点病院で、同教授は「地域に責任を果たさなければならない」としている。
上田地域広域連合長の母袋創一・上田市長は「派遣を継続するよう昭和大に要請したい」としている。
(信濃毎日新聞、2007年12月8日1面)
****** 信濃毎日新聞、2007年12月8日3面
上小の産科医療 危機
長野病院の医師引き揚げ
「地域のお産を支える土台が壊れる」―。国立病院機構長野病院(上田市)から産科医を引き揚げる昭和大(東京)の方針が明らかになった7日、上田小県地域の母親に不安と戸惑いが広がった。上田市では市産院も院長が年内に辞職し、その後の医師確保のめどが立っていない。「正直驚いている」と母袋創一上田市長。安心して子供を産める医療態勢をどう再構築するのか、市や県、医療関係者は緊急に取り組まなければならない。
他地域で出産…不安
「ますます厳しい。不安でいっぱいです」。地域の産科医不足を受け、助産師を活用する院内助産院(バースセンター)の設置を市や県に求めているグループの世話人、直井恵さん(29)=上田市別所温泉=は重い口調で語った。
自身も2月、市産院で長女を出産。危険度の高いケースを扱う長野病院は、バースセンター構想にとっても重要な存在だった。だが、同病院からの医師引き揚げで、先行きは不透明感を増している。
上田小県地域では、2006年度に600件以上の出産を扱った市産院の甲藤一男院長が「体力面」を理由に年内で退職する。後任は未定で、この他の産科は市内の民間2病院だけだ。
地域の出産件数の半数強を扱っていた公的2病院の出産受け入れがこのまま狭まれば、地域に住む母親が、他の場所で産まなければならない事態さえ危惧(きぐ)される。
地域に大きな不安を与える医師引き揚げを、なぜ突然通告したのか―。
昭和大の岡井崇・医学部産婦人科教授は「上田のことを思うと、長野病院に医師派遣を続けたい。だが、われわれは(大学がある都内の)こちらの地域に責任を負っている」と説明する。
同大は10年以上前から長野病院に産科医を派遣してきた。だが、2004年の医師研修制度の変更後、研修医が一部の大病院に偏り、大学病院の人材不足が表面化。その一方、勤務が厳しく訴訟リスクなども抱える産科医は、都市部でも不足感が強まっているという。
同大は長野病院から引き揚げた分を、大学近隣の病院への派遣に回す方針だ。「われわれの大学病院自体が最低の人数で回している」。岡井教授はそう強調する。
上田市・県 問われる対応
「緊急事態だ」。母袋市長は7日夕、市役所で記者会見し、厳しい表情で話した。長野病院の進藤政臣院長が市長を訪ね、昭和大の医師引き揚げ方針を伝えたのは前日の6日。市にとっても「寝耳に水」だった。
ただ、地域住民からは、医師確保をめぐる市の取り組みに不満の目も向けられている。
市は05年、信大が医師引き揚げの方針を示した市産院について、いったん廃院を検討する意向を表明。母親らの存続運動に押されて存続に転換した。だがその後も、老朽化している施設の更新を含め、どう維持、発展させるか、明確な展望を示してこなかった。
その上に降り掛かった今回の問題。母袋市長は「近隣の首長とも話し、できる支援は最大限したい」と強調する一方で「行政には医者を動かす何の権限もない」と漏らしたが、市民の納得はどこまで得られるのか。
県の対応も問われる。県は産科、小児科の医師不足対策として、10広域圏ごとに医師を集約する案を示してきた。だが、長野病院からの医師引き揚げで「長野市や佐久市の病院に危険度の高い出産を頼らざるを得なくなる可能性がある」と上田保健所。構想そのものが揺らぎ始めている。
市産院の存続を求める署名運動に携わった斉藤加代美さん(42)=上田市上丸子=は「こんどこそ市にしっかりしたビジョンを示してほしい」と求める。市を中心に県や病院が本腰で連携しなければ、危機的な状況は打開できない。【祢津 学】
(信濃毎日新聞、2007年12月8日3面)
****** 毎日新聞、長野、2007年12月8日
国立長野病院:産科、存続の危機 今年度で、医師4人引き揚げ
年間450件以上のお産を扱っている国立病院機構・長野病院(上田市緑が丘、進藤政臣院長)は7日会見し、同病院に昭和大医学部(東京都)から派遣されている産婦人科医4人を今年度いっぱいで引き揚げるとの申し出があったことを明らかにした。4人がいなくなると産科医不在となり、医師の確保ができない場合は、出産の取り扱いの休止が懸念されている。同病院では、すでに今週から新規の分娩(ぶんべん)の予約を休止している。
進藤院長によると、先月中旬、「医局の産科指導者が不足し大学病院の診療に支障が出ている」などとして、来年3月末で引き揚げる趣旨の連絡があった。同病院ではすでに入っている7月ごろまでの分娩予約97件については責任を持って対応するという。
上田市内には長野病院のほか、上田市産院、二つの産婦人科病院が、上小地域を中心に年間1800~2000件の分娩を担当。長野病院は異常分娩などを引き受けているため、出産の取り扱いができなくなった場合の打撃は大きい。
同病院では大学側と慰留を含めて協議するとともに、関係医療機関との協力体制を取っていくという。また10日に広域連合の正副連合長会で、進藤院長の説明を受けて今後の対応を協議する。上田市の母袋創一市長は「今年8月に昭和大の教授に会って派遣の継続をお願いしたばかり。急な話に驚いている。大学側の事情を把握し、市としてどんな支援ができるか早急に検討したい」と話している。【藤澤正和】
(毎日新聞、長野、2007年12月8日)
****** 読売新聞、2007年12月7日
長野病院 産科受け入れ中止
上田 昭和大の医師引き揚げで
上田市緑が丘の国立病院機構長野病院(進藤政臣院長)は7日、産婦人科の新規の出産の予約受け付けを中止したと明らかにした。産婦人科医を派遣している昭和大医学部(東京都品川区)から、医師を引きあげると通告があったため。今月3日から受け付けを中止しており、医師確保のめどがつくまで、予約分を除き出産の扱いを中止する。
進藤院長によると、昭和大から11月16日、大学病院の指導者、中堅医師の不足を理由に、常勤産婦人科医4人を来年3月で引きあげたいと連絡があった。両者の協議でその後、引きあげの時期や人数は白紙に戻ったという。
上田地域で、長野病院以外で出産を受け付けているのは、上田市産院と民間の2病院。出産の新規予約は、この3病院で扱うが、市産院も来年から常勤医が1人になり、対応しきれない可能性もある。
長野病院では、年間約450~480人の出産を扱い、手術を伴う出産なども積極的に扱っているが、産科医が引きあげられれば、上田地域から正常出産以外の出産に対応できる病院が消える可能性もある。母袋創一市長は「(医師確保に)あらゆる手段を講じていきたい」としている。
(読売新聞、2007年12月7日)
****** 朝日新聞、2007年12月7日
上田の病院、産科医引き揚げの危機
上田市を中心とした上小地域で、比較的リスクの高い分娩(ぶん・べん)も扱う国立病院機構長野病院(進藤政臣院長)の産婦人科の常勤医師4人全員が、来年7月いっぱいで派遣元の大学に引き揚げられ、出産、診療、健診など産婦人科の機能がすべて休止に追い込まれる可能性のあることが7日わかった。同病院では年間約480人が出産しており、最悪の場合、これがゼロになる。上田市では先月、市産院の院長が体力面を理由に退職したが、産科医不足が一気に加速する事態になった。(高田純一)
長野病院によると、同病院で扱う年間約480人の分娩数は、上小地域全体の26%にあたる。研修医を含む産科医4人は昭和大学(東京都品川区)医学部から派遣されていて、11月16日に大学側から引き揚げの連絡があり、今月3日以降、分娩予約の受け付けを停止した。それまでに受け付けた97人は、来年7月の出産予定者まできちんと対応するという。
全面的な休止になった場合、人口約16万人の同市内でお産ができるのは、市産院、上田原レディース&マタニティークリニック、角田産婦人科内科医院の3施設だけとなる。特に院長が退職して医師が3人から2人になった市産院の場合、補充ができなければ、年間約700人のお産数を500人程度に縮小することが検討されている。
長野病院が6日に県上田保健所や上田市に引き揚げ方針を打診し、問題が表面化した。7日に開かれた上田市議会厚生委員会にも報告された。
進藤院長は「大学側は、若い先生を指導する中堅層が少なくて支障が出ている、と引き揚げの理由を説明している。信州大や医師会などと協力して方向性を見つけたい」と話す。上田市の母袋創一市長は7日、「この問題を最優先し、まずは地域の声を大学側に届けたい」と語った。
お産の場がさらに狭められそうな事態に、上田市などの母親らでつくる「安心してお産と子育てができる地域を作る住民の集い」副代表の桐島真希子さん(32)は「不安です。どこでお産したらいいか、さまよう人が増える。行政にはその危機感を分かってほしい」と話している。
(朝日新聞、2007年12月7日)