全国的な産科医不足のため、産科医確保はなかなか困難な状況にあります。国全体の産科医数が激減している現状の医療環境において、今後も産科医療の質を確保していくためには、各医療圏内の限られた人数の産科医が協力して産科救急にきちんと対応できる医療体制を確立する必要があります。
例えば長野県の場合には、『地域中核病院における産婦人科勤務医数が、最近4年間だけで3割減ってしまった!』という非常にショッキングな調査結果が、本年1月6日の信濃毎日新聞の第1面に掲載されました。地域中核病院の産婦人科勤務医数は予想をはるかに超えるスピードで減少し、多くの地域中核病院が相次いで産科部門の休廃止に追い込まれています。現時点で何とか稼動している産婦人科であっても、今後、勤務医の離職を補充することができなければ、その時点で産科部門を休廃止せざるを得なくなります。
『地域の産科医療を、今後どのような形で担ってゆくのか?』について、それぞれの地域でよく話し合い、行政(国、県、市)、医師派遣元の大学、地元医療関係者、地域住民などが一致協力し、地域の産科医療を支えあい守っていく必要があると思います。
****** 静岡新聞、2008年3月17日
「病院銀座」浜松も“お産難民”の危機
「病院銀座」と呼ばれ、全国的にも医療資源に恵まれた地域とされてきた浜松市内で、産科医不足などの影響から“お産難民”が出かねない状況になっている。市内8カ所の総合病院のうち3カ所で分娩(ぶんべん)を扱えず、開業医の高齢化や後継者不足から分娩を取りやめる診療所も相次いでいる。市周辺部からの“難民流入”もこの状況に拍車を掛け、現場の医師らは危機感を強めている。
「若い担い手を望んだのだが…」。同市中区の産科医(65)は開業20年の節目に閉院を決意した。2月下旬に分娩の扱いを既にやめ3月末で廃業する。65歳の同僚医師も同時にやめるという。「さまざまな要因が重なった」としながらも、高齢化と後継者不在を閉院の主な理由に挙げる。
市産婦人科医会などによると、分娩を扱っていた市内の診療所14カ所のうち、今年に入って3カ所が閉院や分娩休止の方針を打ち出した。残る診療所も分娩制限をし始めている。東区のある診療所の看護師は「定員満杯で分娩希望者を断らざるを得ず、妊娠7―8週で仮予約しなければ分娩を受け付けられない状況」と話す。
診療所だけでなく、総合病院も深刻だ。市内の中規模病院で唯一分娩を扱う遠州病院の本年度の分娩数は561件(3月12日現在)。既に昨年度の266件から倍増した。分娩施設が少ない中東遠や北遠、湖西など市外からの分娩希望者の流入が一因となっている。稲本裕副院長(県産婦人科医会理事)は「医師の当直が月7回という過酷な労働状況が続いている」と説明する。
市産婦人科医会や浅野仁・県西部浜松医療センター周産期センター長の調査によると、平成18年の市への出生届7814件に対し市内の分娩総数は8331件。この差の500件は、市外からの分娩希望者と里帰り出産とみられる。新たに分娩を取りやめる3診療所の分娩総数が約850件で、19年の総合病院の分娩総数が前年より600件増えたことを考慮すると「現時点で浜松市の分娩受け入れ可能状況に赤ランプが点灯してもおかしくない」(浅野センター長)という。
産婦人科の開業医でもある山口智之・市医師会長は「産科の問題はもはや、市域を越えて考えるべき課題」と指摘する。
(静岡新聞、2008年3月17日)
****** 静岡新聞、2008年3月14日
産科医、藤枝市立病院に派遣へ 県医療対策協が了承
県医療対策協議会が14日午前、静岡市内で開かれ、国と県が検討している志太榛原地域への産科医の派遣を了承した。6月までに常勤の産科医3人が全員退職する藤枝市立総合病院に、医師1人が最長で1年間、派遣される見通しとなった。派遣に伴う費用負担は、県と藤枝市立総合病院を合わせると5000万円程度という。
今回の医師派遣は、年間800件前後の分娩(ぶんべん)を行っている藤枝市立総合病院の産婦人科が7月から分娩休止に追い込まれる事態を受けて、国が特例措置として県に打診した。国は今後、国立病院や大規模な病院に呼び掛けて、派遣医師の選定を急ぐ。
派遣は国主導で進める「医師派遣制度」に準じて行われる公算が大きい。費用負担の内訳は、国と県が折半で、医師を派遣する病院に診療体制強化の名目で約2300万円補助する。藤枝市立総合病院は派遣元病院に遺失利益分として上限3000万円を補償するほか、派遣医師の人件費の拠出が必要と見込まれる。
県は協議会の席上、医師派遣に当たって地元の焼津、島田、牧之原、藤枝の各市長と病院長、産科医らの合意を得られたことを説明した。
同協議会の委員からは「全国的な産科医不足の中、1つの突破口にはなる」「分娩は24時間対応。医師1人が派遣されても診療体制が厳しいことは変わらず、最低でも2人以上は必要ではないか」などの意見が出た。
改正医療法に基づく同協議会の開催は今回初めて。県内の医師不足の現状や課題を協議した。議事に先立ち、会長に岡田幹夫県医師会長を選出した。
浜松医大学長再派遣前向き 「2人体制に」
県医療対策協議会の委員を務める浜松医大の寺尾俊彦学長は、14日の同協議会で、藤枝市立総合病院への医師派遣に関し、「国を通して産科医1人が派遣されるならば、浜松医大としても、もう1人派遣できるよう努力したい」と述べ、診療の2人体制に前向きな考えを示した。
寺尾学長は「藤枝の住民の皆さんから(再派遣を求める)嘆願書をいただいている。実際問題、産科医が1人だけいても難しい。私としても何とか2人体制にしたい」と述べた。常勤か非常勤かについては「学内で調整中」などとして明言しなかった。
(静岡新聞、2008年3月14日)
****** 読売新聞、静岡、2008年3月15日
藤枝市立病院 国から産科医派遣
浜松医大も複数の非常勤
県医療対策協議会が14日、静岡市駿河区のホテルで開かれ、6月末までに常勤産科医師3人が退職する藤枝市立総合病院に対し、国による医師派遣を受け入れることを決めた。現在の派遣元の浜松医大も同日、複数の非常勤医師を派遣する考えを明らかにし、地域の中核病院で出産が扱えない事態は避けられる見通しになった。ただ、多胎や早産など危険性の高い出産への常時対応には、さらなる医師確保が必要となっている。
同協議会の委員は県内の病院長、首長、学識者など17人。この日は今年度唯一の会合で、来年度の医師確保事業と藤枝市立総合病院の産科医確保について協議した。
県によると、国の医師派遣は、来年度から最長1年間、志太地区に1、2人の産科医を大学や病院から派遣する特例措置。派遣は1人にとどまる可能性が高いという。
受け入れ病院は、派遣元病院に医師1人当たり上限3000万円と人件費を負担する。国と県も、派遣元病院の診療体制強化の補助金など約2350万円を半額ずつ負担する。
会合では「1人だけの派遣では出産は満足に扱えない」「1年間は短すぎる」などの意見が出たが、地域の産科医療を守るためとして、受け入れた。
同病院は、出産前後の母子への比較的高度な緊急対応ができる「地域周産期母子医療センター」。この機能維持は医師1人ではできない。
(読売新聞、静岡、2008年3月15日)
****** 毎日新聞、静岡、2008年3月15日
藤枝市立総合病院:産科医受け入れへ 県医対協が承認
藤枝市立総合病院で6月までに産科医全員が退職する問題で、県は14日、静岡市内で開いた県医療対策協議会で、同病院に産科医1人の派遣を受けることを承認した。
国が受け入れを打診していた。県によると、派遣期間は最長1年間。派遣元の病院に対する補助金約2360万円は国と県が半分ずつ負担する。また、医師がいなくなることによる派遣元病院の減収を補てんするため、藤枝病院側から3000万円程度を支払うことになる見込み。
協議会の委員で、藤枝病院から産科医引き上げを決めた浜松医科大の寺尾俊彦学長は「ご迷惑をおかけして申し訳ない。2人体制でできるようにしたい」と述べ、国からの派遣医とは別にもう1人医師を確保するよう努力する考えを示した。【鈴木直】
(毎日新聞、静岡、2008年3月15日)
****** 読売新聞、福島、2008年3月17日
ドクターヘリ活用模索
県立南会津病院(南会津町)は今月末、南会津郡で唯一あった産婦人科を医師不足のために休診する。妊婦の容体が急変した場合は郡外の病院へ搬送することになるが、その際にドクターヘリを活用する案が浮上している。(冨田良子)
「実際に地域から産科医がいなくなるわけだから、有効活用したらどうか」。2月25日に県庁で開かれた「へき地医療支援総合調整会議」で、小山菊雄・県医師会長は、周産期医療へのドクターヘリの活用を県側に提案した。後任のめどが立たないまま、常勤医師2人が3月末で退職する南会津病院を念頭に置いたものだ。
南会津郡の面積は、神奈川県とほぼ同じ約2341平方キロ・メートル。破水や切迫早産など周産期医療が必要な妊婦を救急車で会津若松市の病院に運ぶ場合、最低でも1時間、雪道では倍の時間がかかる。これに対し、1月28日から運航が始まったドクターヘリは時速約180~200キロで飛ぶため、医師が処置をしながら、救急車より短時間で搬送できる。郡内の町村からも活用を求める切実な要望が相次いでいる。
だが、ドクターヘリに産婦人科医に搭乗してもらうとなると、出動に備えて診療予定を入れずに待機する医師を確保する必要があり、医師不足の現状では実現は困難だ。県内の医師数は2006年までの10年間で約1割増えたが、産婦人科医は逆に2割近く減っている。ドクターヘリが配備された県立医大付属病院でも、産婦人科医12人は日常の診療で手いっぱいで、「ヘリに待機させる余裕はない」(病院経営グループ)。
このため、妊婦を搬送するとしても、通常と同様、救急医が搭乗する態勢になる可能性が高い。千葉県では、この態勢で2001年からヘリの妊婦搬送を始めた。06年にはドクターヘリ搬送件数607件のうち、12件で妊婦を搬送した。「少しでも妊婦の危険を軽減するため、医療の集約化が進む今はヘリの妊婦搬送は必要」と同県医療整備課の担当者は話す。
ただ、ヘリによって搬送時間を短縮できたとしても、受け入れる病院がなければ意味がない。千葉県では、速やかに高度な周産期医療を提供できるよう、日本産婦人科医会千葉支部などが妊婦の入院や手術に対応できる県内の15病院を指定。いずれかの医療機関が必ず受け入れることを合意した「母体搬送システム」をつくっている。こうしたシステムは、福島県では十分機能はしていない。
福島県では、ドクターヘリの活用に向けて今月中にも病院や医師との具体的な検討の場を設けていく方針で、県医療看護グループでは、「危険なお産の発生に備え、きちんと議論しなければならない」としている。
ドクターヘリ 人工呼吸器や除細動器などの医療機器を備える。救急医と看護師が搭乗し、現場やヘリ内で処置しながら県内8か所の搬送先指定医療機関に運ぶ。患者に生命の危機があったり、搬送に時間がかかったりする場合に地元の消防署が出動を要請する。夜間や吹雪など視界が悪い時には飛べない。
(読売新聞、福島、2008年3月17日)
****** 読売新聞、神奈川、2008年3月9日
県の「医師バンク」スタート
産科医限定 効果に疑問も
深刻化する産科医不足を解消しようと、県が今月から、出産や育児のために現場を離れた産科・産婦人科医を対象とした「医師バンク」の運用を始めた。県内でも、お産のできる医療機関や常勤医の減少傾向が続いており、医師不足に悩む医療機関との間を仲介し、復職をあっせんする。だが、過酷な勤務に復職をためらう現状や、病院同士の人材争奪も激しさを増しており、新バンクには課題も多い。(溝口 徹)
■10年で半分離職
医師バンクは、今月3日、県医師会に委託して始まった。復職希望者をホームページなどで募集。希望者は、勤務地や、常勤・非常勤などの勤務形態、当直の可否などの希望、過去の勤務履歴などを登録。同時に医療機関も勤務条件などを登録する。この中から医師会が条件に見合った相手を紹介することになる。
狙いは、出産、育児のために現場を離れた女医たちだ。県によると、県内の医療機関に勤める女医は2006年末現在で、3136人と全体の2割だが、近年は、産科医の若手で女医が多く、20歳代では3分の2が女医という。だが、せっかくの人材も出産や育児で休職、就業後10年以内に離職する産科の女医は、ほぼ半分という状況だ。
■苦戦するバンク
似たような医師バンクを運用する他の自治体では、思うように求職者が集まらず、産科医探しが難航している。06年10月に始めた千葉県では、登録5人のうち、産科医はゼロ。昨年6月に創設した群馬県でも、採用6人、登録3人の計9人の中に産科医はいない。
千葉県医療整備課では「民間のドクターバンクと競合しており、大半の産科医には個々の病院が直接、スカウトに入っている」と分析。群馬県医務課は「産科医はどこも血眼で探しており、全体数も減っているので難しい」とこぼす。
横浜市内の病院に勤める産科医の女性(42)は、「職場を離れた同世代の人も、条件が整えば仕事を続けたいと思っているが、家庭の事情、夜間の対応を考え、復帰をためらっている」と明かす。
この女医も2児を育てており、現在は当直勤務に入っていないが、出産前は月6~7回の当直、5~6回の夜間自宅呼び出し待機があるなど、勤務は過酷だった。「当直を少なくすることがまず第一だが、勤務医に余裕がない現状では、柔軟に対応してくれる職場を探すのは難しい。夜間の保育施設を整えるなどサポートが欲しい」と指摘する。
■しわ寄せは…
県によると、産科・産婦人科の常勤医は03年度の434人から07年度には404人に減少した。お産ができる施設も、03年度の181件から、07年度には153件と約15%の減少。医療圏別では、県央(大和市など)や県北(相模原市)以外は、いずれも減少した。特に中小規模の診療所の休診が多く、その分、地域の中核となる公立病院にしわ寄せが行っている。
藤沢、茅ヶ崎両市などの湘南東部では、18施設から7か所も減った。この影響でお産の取り扱いが急増した茅ヶ崎市立病院は、今年から出産予約を制限すると発表した。大学病院が派遣した医師を引き揚げる動きも出ており、厚木市立病院では、大学病院が派遣していた産科医を引き揚げたため、産婦人科を休診した。
いずれも、お産が増えたのに、医師の手当てが出来ず、当直や急な呼び出しが増え、医師1人当たりの負担が増えたためだ。「過酷な勤務でうつになる医師も少なくない」と、県内の医療関係者は指摘している。
(読売新聞、神奈川、2008年3月9日)
****** 読売新聞、石川、2008年3月15日
山中温泉医療センター 産科休診へ
医師確保できず7月から
加賀市山中温泉上野町の山中温泉医療センターは、常勤医が確保できず、7月から産科を休診する。
同市病院管理部によると、産婦人科の常勤医を派遣する金沢医科大から派遣停止の申し出があった。6月末までの分娩(ぶんべん)は、同大からの非常勤医で対応するが、常勤医の確保は難しく、7月以降は産科を休診せざるを得ないという。婦人科は非常勤医が対応する。
同市では、加賀市民病院の産婦人科が、医師の退職で2006年7月から休診していたが、4月からは福井大から常勤医1人と非常勤医の派遣を受けて再開する。常勤医が病気療養のため今年1月から休診していた小児科も、金沢大から医師の派遣を受け4月から再開する予定。
(読売新聞、石川、2008年3月15日)
****** 室蘭民報、2008年3月15日
伊達赤十字病院・小児科常勤医不在、産婦人科分べん休止
伊達赤十字病院(前田喜晴院長、374床)は14日、小児科常勤医が4月から不在となり、入院診療ができなくなると発表した。今年1月から産科診療を縮小していた産婦人科は4月から分べんの取り扱いをやめる。
同病院の小児科は、常勤医1人と出張医1人の2人体制で診療を続けてきたが、医局などの小児科医不足を理由に北大が2人を引き揚げ、4月以降は平日のみ日替わりの出張医を派遣する方針に切り替えた。
後任の常勤医のめどは立っておらず、伊達市にも協力を求めて医師の募集に力を入れたが、「現時点での確保は難しい」と判断し、小児科診療の縮小を決めた。入院を必要とする患者は室蘭・日鋼記念病院など近隣の病院を紹介する。平日外来診療、救急外来診療は従来通り。
産婦人科は、産科常勤医1人が昨年末に退職し、今年1月から経産婦を対象に月10件程度の出産に制限していたが、札幌東豊病院からの医師派遣も今月末で終了するため、分べんの取り扱いを休止する。
前田院長は「胆振西部では唯一の出産できる病院だったが、その機能を失うことは誠に残念。できるだけ早く医師を確保し、通常の診療体制に戻したい」としている。
(室蘭民報、2008年3月15日)
****** 北海道新聞、2008年3月14日
出産診療に初の指針 産婦人科学会、医会 トラブル抑止狙う
出産診療をめぐるトラブルを防止するため、日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会は、出産の適切な診療方法を示したガイドライン(指針)を初めてまとめた。あらゆる出産施設で一定水準以上の医療の質を確保するとともに、相次ぐ医療訴訟を抑止するのが狙い。出産にかかわるトラブルの多発は、若手医師らの「産科医離れ」の一因とみられており、医師不足が深刻な道内の関係者からも注目を集めそうだ。
指針は、両学会の代表者二十四人で構成するガイドライン作成委員会(委員長・水上尚典北大教授)が作成。二〇〇六年から二年間かけて、現場の医師らの意見を聞きながらまとめた。
指針では「妊娠初期の血液検査項目は?」「(妊婦から)投与された薬物の胎児への影響について質問されたら?」「妊娠十二週未満の流産診断時の注意点は?」など六十三項目の設問に対し、Q&A方式で治療法や注意点を簡潔に明記した。
それぞれの治療法には「A」(実施を強く勧める)、「B」(勧められる)、「C」(考慮する)の三段階で推奨度を明示し、詳しい解説や根拠となる文献名も併記した。医療施設の設備などによって、示された治療法が困難な場合は、対応可能な施設に紹介や搬送するよう求めている。
出産診療については、学会などが定めた指針はなく、診断や治療は、医師や医療機関によってばらつきがある。医療訴訟の際には、医師の診療が適切だったかどうかの判断が問題となるケースが多く、警察や司法界からも明確な指針を求める声が出ていた。
水上教授は「訴訟の多発などで、産婦人科を目指す医師が少なくなっており、指針を示すことでトラブルを減らしたい。患者にとっても適正で安全な医療が受けやすくなるはず」と話す。
指針は助産師らにも活用してもらい、産科医不足の改善に役立てたい考えだ。
(北海道新聞、2008年3月14日)
****** 河北新報、2008年3月12日
産科医不足問題で大館の現状視察 社民・福島党首
社民党の福島瑞穂党首は11日、秋田県大館市と北秋田市の病院3カ所を視察し、産科医不足の問題について医療関係者と意見交換した。大館市では、「里帰り出産」を担う病院がなくなった現状を目の当たりにし、「国が医師を確保するように国会で主張していく」と述べた。
大館市内で唯一、分娩(ぶんべん)を受け入れている市立総合病院では、常勤の産科医が3人しかおらず、2006年9月に里帰り出産を休止した。同病院の武内俊院長は「医師1人の分娩件数は年間150件が上限と言われるのに、うちは200件に上る。里帰り出産は受け入れられない」と窮状を訴えた。
06年に産科医が不在となった大館市立扇田病院では、大本直樹院長が「産科医をサポートする麻酔科医や小児科医がいなくなったため、結果的に産科医不在の事態につながってしまった」と、医師の退職が相次いだ経緯を説明した。
(河北新報、2008年3月12日)
****** 秋田魁新報、2008年3月11日
県北で産科医療の現場を視察 社民・福島党首
社民党の福島瑞穂党首が11日、同党の「産声の聞こえる街づくり」プロジェクトの一環で大館市と北秋田市の病院を訪れ、産科医療の現場を視察した。会見では「医師不足で現場が悲鳴を上げていることを実感した。国レベルでの医師確保を目指したい」と述べた。
産科医不足が深刻な県北部を対象に選び、北秋中央病院(北秋田市)や、2006年8月に産婦人科を休診した大館市立扇田病院、同市立総合病院を視察した。
産科医不足 深夜・長時間労働や分娩(ぶんべん)事故に伴う訴訟リスク、子育てによる女性医師の休職などを背景に産科医が減少。2006年2月に、福島県警が帝王切開した妊婦の死亡をめぐり県立大野病院の産科医を業務上過失致死容疑などで逮捕したことも影響しているとされる。各地で妊婦の救急搬送先が見つからない事例も相次ぎ、背景に産科医不足が指摘された。国は分娩事故で医師に過失がなくても補償金を支払う「無過失補償制度」の創設や、中核病院への集約化による地域医療ネットワークづくりなどの対策を進めている。
(秋田魁新報、2008年3月11日)
****** 中日新聞、福井、2008年2月27日
じっくり会話、妊婦に安心感 助産師外来の県内先駆者に聞く
産科医不足を解消するため、正常な妊婦の問診や保健指導を助産師が担う「助産師外来」の開設に向けた動きが県内でも広がりつつある。2005年にいち早く導入した県済生会病院の助産師外来の設立に尽力した主任助産師の三反崎(みたさき)宏美さん(38)に、メリットや思いを聞いた。 (谷悠己)
「何かと悩みの多い妊婦にとって健診は一番の楽しみ。ゆっくりと話ができる環境をつくりたかった」。出産を経験し現在も双子を妊娠している三反崎さんは、開設の動機をこう語る。
県内でも産科医不足は深刻だ。休止する郊外の産科が増えた影響で妊婦は都市部に集中。同院でも医師が1件の健診にかけられる時間は長くて15分ほどだ。助産師が健診を担ってケアの質を高めるのと同時に多忙な医師の救済にもつながっている。
同院の助産師外来は、20週目以降の妊婦健診を助産師が医師と交互に行う。助産師は40分から1時間かけて妊婦と向き合い、ときにはおなかにエコーを当てて胎児の動きを観察し続ける。「こんなに小さくても指をしゃぶっている、と涙を流す人もいます」(三反崎さん)。
開設当初は妊婦だけでなく医師からも「料金を取る健診を助産師が担当するのは…」といぶかる声が根強かったが、認知度は徐々に上がり、06年は424件のお産に対して延べ110人が助産師外来を利用した。
三反崎さんは「少子化や晩婚化が進み一つ一つのお産の重要性が高まっている今、妊婦には多くの選択肢が必要。最終的には健診した助産師がお産も担う院内助産所を開ければいいが、現状では助産師も人材不足で難しい。行政のリードで県内の助産師確保や病院間の人的交流が進むことを願っている」と話す。
◆開設へ動き拡大
国は2008年度予算案の新規事業で院内助産所や助産師外来の開設支援を盛り込んでいる。県は07年度から先駆けて助産師外来の開設を目指す病院の研修費を補助する事業を始め、効果が表れ始めている。
昨年10月、県内5つの病院の医師と助産師が、地方都市における助産師外来と院内助産所の設置事例として岩手、宮城県の病院を視察した。ことし1月には助産師外来に定評のある杏林大付属病院(東京都)で講義と病院実習に参加し、6病院の延べ40人が最先端の取り組みを学んだ。
研修に医師と助産師を派遣した市立敦賀病院は「08年度中にも開設したい」と意欲を見せ、県立病院も早期の開設を目指し検討している。
(中日新聞、福井、2008年2月27日)
****** 毎日新聞、2008年3月15日
助産所:法改正で1割が廃業の危機 嘱託病院確保できず
お産を取り扱う全国の助産所の約1割が、4月以降に義務付けられている嘱託医療機関の確保ができず、廃業に追い込まれる可能性があることが分かった。
07年4月の医療法改正で、お産を扱う助産所は、緊急搬送先確保のため嘱託の産科医と産科医療機関の届け出が義務化され、今年3月末で猶予期間が切れる。
しかし厚生労働省の調査では、今月7日現在、来年度もお産を扱う予定の助産所284施設のうち、9施設は医師と医療機関の両方、18施設は医療機関が決まっていないという。都道府県別の内訳は▽神奈川8▽大分4▽北海道3▽青森、福島、大阪各2--などとなっている。
また2月時点の調査では、お産を扱う予定だった助産所は297施設あり、医療機関の確保をあきらめて既に廃業したり、出産以外の保健指導などに業務を切り替えた施設もあるとみられる。
助産所と医療機関との連携が進まない背景には、産科医の不足や、異常分娩(ぶんべん)を引き取ることによる訴訟リスクの懸念がある。厚労省医政局は「分娩施設がこれ以上減らないよう、嘱託医と嘱託医療機関が同一でも構わないなどの弾力的な運用で、続けられない助産所をゼロに近づけたい」としている。【清水健二】
(毎日新聞、2008年3月15日)
****** 読売新聞、2008年3月14日
助産所1割 廃業危機…「嘱託医療機関」確保が難航
助産師がお産を扱う「助産所」に4月から義務づけられる「嘱託医療機関」の確保が難航している問題で、いまだに助産所の1割近くが確保できずにいることが14日、わかった。今月末までに引受先が見つからなければ出産を扱えず、廃業を余儀なくされる可能性もある。
共産党の小池晃参院議員の質問主意書に対する答弁書で明らかになった。それによると、全国284か所の助産所で今月7日現在、嘱託医療機関を確保できていないところは27か所(約9・5%)。うち9か所は、異常分娩(ぶんべん)などに対応する「嘱託医」の確保もできていない。産科医不足などが原因と見られ、都道府県別に見ると、嘱託医療機関確保ができていない助産所は、多い順に神奈川県が8か所、大分県4か所、北海道3か所――となっている。
昨年春に施行された改正医療法では、お産を扱う助産所は、産科や産婦人科、小児科があり、入院施設を備えた医療機関を嘱託として確保することを義務づけた。今年3月末までの確保が求められている。
(読売新聞、2008年3月14日)