11月24日は早朝より飯田市立病院でNCPR講習会(Aコース)が開催されました。産婦人科医、新生児科医、麻酔科医、研修医、助産師、NICU看護師、救命救急士など多くの参加がありました。今回、私はインストラクターとして参加し、講義と実技指導を担当させてもらいました。私自身は出生時に児の蘇生が必要な場面に日常的によく遭遇しておりますが、実際には新生児科の先生がすぐに駆けつけてくださる職場の体制にあるので、臨床の現場で新生児蘇生を実際に担当することはめったにありません。そのため、NCPRアルゴリズムは勉強して覚えてもすぐに忘れてしまいますが、数か月毎に院内で開催されるNCPR講習会に参加する度にテキストを一通り総復習できて、知識保持のために非常に役立っております。私の担当した実技実習のブースに麻酔科の先生がいらっしゃって、気管内挿管手技のコツなどいろいろ教えていただくことができ、勉強になりました。
11月23日に東京で開催された「母体急変時の初期対応のための実技セミナー」(京都産婦人科救急診療研究会)に参加してきました。4時間のコースでいろいろと勉強になりました。母体急変はいつどこで発症するかわかりません。いざという時に備えて、常日頃から準備しておく必要があります。今回、妊婦の出血性ショック、心肺停止、血栓性肺塞栓症、脳出血、アナフィラキシーショック、羊水塞栓症、子宮内反症などの母体急変時の初期対応について、蘇生人形を使ってシミュレーション体験することができました。
長野県においても、将来的には、信州大学やこども病院などが中心となって、こういった産科救急のシミュレーション講習会が県内の各地域ごとに定期的に開催されるようになって、(NCPR、BLS、ACLS、PALS、ICLSなどのように)産婦人科医、助産師、救急医、救命救急士などいろいろな職種の人たちが気軽に参加できるようになったら理想的だと思いました。(NCPR講習会のように)各地域で定期的に繰り返し産科救急の講習会を開催し、周産期医療に関わる人達に(新生児仮死に対する初期対応だけではなく)母体急変時の初期対応の基本実技を浸透させておく必要があります。各医療機関の体制、各地域の救急医療体制の実状、数年ごとの産科ガイドラインの改定などに合わせて、実技講習会の内容も年々進化させていくことができたら、母体や新生児の救命率を向上させることに寄与できて非常に有用だと思われます。
コンセンサス2010に基づいた新生児心肺蘇生法(NCPR)講習会が普及し、新生児の救命率向上に寄与しているのは周知のことです。NCPRと同様に、分娩時の母体急変に対しても、妊産婦に特化したプロトコールを整備して、常日頃からシミュレーションをしておくことは非常に重要と考えられます。最近発刊された本書(産婦人科必修 母体急変時の初期対応、メディカ出版)を購入してさっそく読んでみましたが、妊婦の急変時の初期対応についてプロトコール化し(京都プロトコール)、これをもとにチームでシミュレーション・トレーニングができる、非常にわかりやすく有用なテキストだと思いました。この京都プロトコールのシートを施設の壁面に掲示したい場合に、FDPデータをメディカ出版ホームページからダウンロードすることもできます。BLS(2010)や日本の産科ガイドラインにも準拠してます。本書をもとに母体急変時の対応についての院内マニュアルを整備して、院内での産科救急のシミュレーション・トレーニングを定期的に実施したいと考えています。
今年の春の日本産科婦人科学会総会(札幌市)で実施された京都プロトコール実技講習会を見学し興味を持ちました。京都プロトコールのテキストが最近発刊されたことを知って、早速、アマゾンで2冊購入し、当科所属の産婦人科医や助産師達にも勧めてます。11月23日(土)に東京で開催される京都プロトコール実技講習会に参加を予定してます。翌日の11月24日(日)に飯田市立病院でNCPR講習会を開催し、当院の産婦人科医・小児科医・研修医・助産師・看護師や地元の救急隊員などが多数参加する予定です。産科救急シミュレーションの講習会としては、今年6月にALSOプロバイダーコースを飯田市立病院で開催し、当科スタッフの多くが参加し、とても有意義でした。しかし、1回講習会を開催してそれで終わりということでは、産科チームの全員にその実技が浸透するはずがないので、あまり意味がありません。産科チームの全員に必須の実技を浸透させるために、今後はNCPR講習会だけでなく、産科救急シミュレーションの勉強会も、いろいろと工夫を重ねながら、院内で定期開催できるようにしていく必要があります。
産婦人科必修 母体急変時の初期対応
チームワークと連携強化でいのちをまもる
シミュレーションで分娩前後の母体安全を徹底理解!
編著:京都産婦人科救急診療研究会
2013年11月15日発行
メディカ出版
定価:4200円+税