ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

健康寿命の延伸

2021年07月18日 | 抗加齢医学

私の親の世代では、一人の退職後世代の生活を十人の就労世代が支えてました。ですから、定年退職後は引退して貯蓄と公的年金だけで死ぬまで生活できる計算も十分に成り立ってました。今の社会保障制度や年金制度の原型はその古きよき時代に作られました。日本人の平均寿命が伸びて誰でも百歳近くまで生きることが当たり前となり、今後も出生率がどんどん下がっていく結果として、人口に占める65歳以上の高齢者の割合はこれからも年々増えていき、社会を支える就労世代の割合はどんどん減っていきます。この人口構造の劇的変化によって、従来の「60〜65歳まで働いて、引退後は貯蓄と公的年金で悠々自適に暮らす」という常識的な人生設計パターンが今後は全く成り立たなくなるのは当然で、親世代の人生設計の常識は子や孫の世代では通用しません。人生百年時代の人生戦略を根本的に練り直していく必要があります。健康寿命を伸ばして要介護期間をなるべく短縮し、百歳まで楽しく働き続けられる状態を維持する必要があります。健康寿命を伸ばすことが人類の最重要課題の一つであることは間違いありません。

参考までに、「ライフスパン、老いなき世界」の著者シンクレア教授(ハーバード大学)自身が、健康寿命を延ばすために実践していることは、間欠的断食運動サウナ寒冷刺激メトホルミンNMNベスレラトロール低用量アスピリンなどです。健康で長く生きていれば、人生まだまだこれから楽しいこともたくさん待っていそうな気もします。健康寿命を伸ばすために、とりあえず今できることから始めてみましょう。


日本抗加齢医学会総会

2021年06月28日 | 抗加齢医学

昨年来、学会参加はほとんどWeb参加(Live配信/オンデマンド)ばかりでしたが、今回かなり久しぶりに現地参加をしてきました。それは京都で開催された日本抗加齢医学会総会で、当初は、わざわざ現地に行かなくてもWeb参加(Live配信)でいいかなと思ってましたが、初めて参加するので一体どんな学会か雰囲気を一度見てみたくなって、急遽、現地参加してみました。土曜の外来診療の終了後に出発して約3時間後のまだ明るいうちに国立京都国際会館に到着しました。「エイジングクロックにおける栄養学の重要性」、「ゲノム医療におけるこれからの展望」、「アンチエイジングのための免疫力up講座」、「ウィズコロナ時代のウイルス学」など、有名な先生方の入門講座をいくつか聞いてきました。また、これから勉強するために抗加齢(アンチエイジング)医学関係の基本的なテキストを数冊購入してきました。やはり地元の先生以外はWeb参加、Web講演がまだ多かったようです。2日間、誰とも話をしないで、行き帰りの途中で車から一歩も外に出ませんでしたので、おそらく新型コロナウイルスは持ち帰らなかったと思われますが、学会現地参加の開始はちょっと時期尚早だったかもしれないなと少し反省してます。

 

 


抗加齢医学(アンチエイジング・メディシン)

2021年06月18日 | 抗加齢医学

ライフスパン、老いなき世界」をたまたまAudibleで聴いてみて大変おもしろかったので、5〜6回繰り返し聴いた後に紙の本でも読んでみました。その後、Kindle 英語版を読んで、今はAudible英語版も聴いてます。Audible英語版では著者のシンクレア教授自身が朗読してます。この本の中で大隅良典東工大教授、山中伸弥京大教授、本庶佑京大教授、今井慎一郎ワシントン大教授などの日本人学者の名前も繰り返しでてきます。たとえ長生きできても要介護状態での長生きではあまり面白くなさそうなので、健康寿命を延ばすために、シンクレア教授自身も実践している間欠的断食、運動、サウナ、寒冷刺激、メトホルミン、NMN、ベスレラトロール、低用量アスピリンなどを始めてみました。また、日本抗加齢医学会に入会して専門医試験の受験勉強も超基本から始めてみました。私自身、つい最近まで、アンチエイジングメディシン(抗加齢医学)というと金儲け目的のいかがわしい商売で、まっとうな医学とはほど遠い世界だと思いこんでましたが、実際は、分子遺伝生物学などの最先端科学の最近のめざましい成果と密接に繋がっている非常にホットな医学分野だと気がつきました。今後その医学を超基本から学んでいけば、その知識を自分自身の健康維持にもいろいろ活用できそうだし、周囲の方々の健康への願いを叶えていける一助となるかもしれません。健康で長く生きていれば、人生まだまだこれから楽しいこともいろいろ待っていそうな気もします。


健康寿命をのばすために今できること

2021年05月15日 | 抗加齢医学

人間誰しも老化は避けられず、日本人の平均寿命はだんだん延びているとは言え、最長でも百歳前後までにはほぼ全員死亡します。65歳を過ぎれば、老化に伴って動脈硬化、高血圧、心臓病、糖尿病、脂肪肝、骨粗鬆症、肥満、メタボリックシンドローム、フレイル、認知症、癌など、全身のいろんな病気が次々に発症します。一つ一つの病気を別個に治療していたのでは全くキリがありません。多くの人はいずれ要介護状態となり、介助なしでは自力で食事する事もできなくなり、自分が誰で何をやってきたかも全く分からなくなっている人も少なくありません。いくら長生きできても、そのような要介護状態で長生きするのであれば、楽しい老後とは言えません。

どうせ長生きをするのであれば、死ぬ直前まで元気に社会貢献をして、いろいろな活動にも楽しく参加できる状態をできるだけ長く維持したいものです。そのためには長寿遺伝子をオンにして老化の進行を可能な限り予防する必要があります。

運動、25%カロリー制限、間欠的断食、体重コントロール、血圧コントロール、血糖コントロール、大腸の定期的内視鏡検査など、健康寿命を伸ばすために今できることはいろいろとあります。

ヒトに対する効果が実証された抗老化薬はまだありませんが、メトホルミン、NMN、レスベラトロールなどの薬剤やサプリは、酵母、細菌、植物、動物など地球上のほとんどの生物の寿命を延長して細胞を若返らせる事が最近の多くの実験で実証されてます。ヒトでの治験も進んでます。

老化に伴う一つ一つの病気の治療を行っていてもキリがありません。それら多くの疾患の源流である老化そのものをコントロールしていくという発想が今後は求められると思います。老化・寿命研究は日進月歩の分野で、まずは効果が実証されている今できる事も少なくありません。

ライフスパン、老いなき世界」の著者であるシンクレア博士(ハーバード大学教授)自身が実践していることは以下の通りです。毎日、1gのNMN、1gのレスベラトロール、1gのメトホルミン、推奨量のビタミンD、K2、83mgのアスピリンを摂取する。動物性タンパク質、砂糖、パン、パスタなどをなるべく避け、植物性タンパク質を多く摂取する。間欠的断食(1 日2食、16時間断食)を行う。喫煙をしない。プラスチック、過度の紫外線暴露、X線検査、CTスキャンを避ける。涼しい寝室で寝る。定期的に運動をする。定期的にサウナを利用して、その後に冷水につかる。

彼の奥さんも生命科学の研究者で、若い頃は彼の老化研究に反対してよく口論していたそうですが、今では夫の研究について理解を示して、自分でもNMNを内服し始めたそうです。彼の弟や父親も彼と同様の処方薬を内服しているそうです。彼の父親は80歳を超え、元コンピュータ関係の技術者で、一度は定年退職し10年ほど自宅に引きこもってましたが、息子に勧められて、NMN、メトホルミンを内服し始めてから活動的となり、今ではシドニー大学での倫理委員会の仕事を始めて、友人らと世界各地の旅行を楽しむようになり、日常的にブッシュウォーキングなどの運動を行うようになって、現時点で老化に関連する病気は何もなくなり、性格も明るくなり、明らかに若返った感じなんだそうです。

まだまだヒトに対する効果はこのような事例報告のレベルですが、これらの方策の実行で害は特にないと思われ、何もしないよりはよさそうなので、とりあえずダメ元で試してみる価値はあると判断し、できる範囲で実行してます。ただ、現時点で入手可能なNMNサプリはまだ非常に高価なものが多く、シンクレア博士と同じ1日1000mg(125mg x 8カプセル)を摂取し続けるのは難しく、現実的には1日せいぜい1カプセルか2カプセルくらいしか摂取できず、それで効果を期待できるかどうかはよくわかりません。