ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

松本地域の産科連携システム 分娩と健診の役割分担

2008年06月28日 | 地域周産期医療

長野県の松本地域(9市町村)には、分娩医療機関が7施設(信州大学、県立こども病院、丸の内病院、相沢病院、波田総合病院、桔梗ヶ原病院、わかばレディス&マタニティクリニック)あり、健診協力医療機関が15施設あります。松本地域は、県内の他の地域と比べると、産科医療施設の数が圧倒的に多く、産婦人科医の人数も比較的多いのですが、信州大学と県立こども病院は全県からハイリスク症例が救急搬送されてくる3次医療機関であり、最近、1次~2次の分娩医療機関の多くが分娩取り扱いを次々に中止したため、分娩の取り扱いを継続している医療機関の負担が過重になってきました。そこで、分娩医療機関の負担を減らす目的で、来月から松本地域内の産科医療機関の新しい連携システムをスタートさせる予定との報道です。

飯田下伊那地域(15市町村)の場合、産科連携システムのスタート時(06年4月)には、地域内に分娩医療機関が3施設(飯田市立病院、椎名レディースクリニック、羽場医院)あり、健診協力医療機関も3施設(下伊那赤十字病院、西沢病院、平岩ウイメンズクリニック)ありました。その後、健診協力医療機関のうちの2施設の常勤産婦人科医師が離職したため、健診協力医療機関が実質的にはわずか1施設(平岩ウイメンズクリニック)のみとなってしまい、スタート時のままの形での産科連携システムの継続がだんだん困難な状況となってきました。そのため、本年度より飯田市立病院の助産師外来を大幅に拡充し、助産師外来3診および産婦人科医による健診1診で計4診体制の妊婦健診を毎日実施し、産婦人科専属の2名の超音波検査技師による妊婦の超音波検査も開始しました。

それぞれの地域の状況に応じて、皆で知恵を絞って、行政、地域内の医療機関ができる限り連携して、地域内の産婦人科医、小児科医、麻酔科医、助産師、看護師、検査技師などが一つのチームとして一丸となって、地域の周産期医療を支えていく必要があります。

地域の周産期医療は、当面の半年とか1年とかが何とかギリギリ持ちこたえさえすればいいというものではありません。10年先も20年先も持続可能な地域周産期医療システムを構築していくことが重要です。そのためには、次世代を担う多くの若い研修医達が安心してこの世界に参入できるように、充実した研修・指導体制、余裕のある勤務体制、楽しい職場の雰囲気、待遇面での十分な配慮など、魅力のある研修環境を地域の病院の中に創り上げていくことが大切だと思います。

****** 信濃毎日新聞、2008年5月28日

妊婦健診を分担で 松本地域のお産を診療ノートで連携

 松本地域の9市町村と松本市医師会などは6月、健康な妊婦の健診について出産を扱わない病院や診療所が主に担い、出産を扱う医療機関の外来診療の負担を軽減する仕組みをスタートさせる。複数の医師が妊婦の情報を共有できる「共通診療ノート」を作製、6月中旬から妊婦に配る。

 松本や安曇野、塩尻市など9市町村の新しい仕組みを検討してきた「松本地域の産科・小児科医療検討会」を改組し、「松本地域出産・子育て安心ネットワーク協議会」を設立。26日夜の設立総会で事業内容を決めた。

 6月からは、妊娠の確認や妊娠10週までの健診については出産を扱わない15カ所の産婦人科(健診協力医療機関)が担う。妊娠が分かった時点で主に健診協力医療機関が診療ノートを妊婦に配る。

 妊婦は出産予定日が決まる11-12週に出産を希望する医療機関を初診。その後33週までの健診を出産施設と協力機関のどちらで受けるかは、妊婦の状態や希望、施設の状況などで出産施設の医師が判断する。

 松本地域では2006年以降、安曇野赤十字病院(安曇野市)、国立病院機構まつもと医療センター松本病院(松本市)などが出産の扱いを休止。出産を扱う医療機関は現在7カ所に減っている。協議会によると、妊娠初期の健診から出産まで同じ医療機関が担う現状のままでは、出産を扱う医療機関の負担が増し、緊急の際に受け入れが難しくなる可能性もあるという。

(以下略)

(信濃毎日新聞、2008年5月28日)


お産の時だけ「東京へ住むこと考えた」 (朝日新聞)

2008年06月25日 | 出産・育児

我が国の妊産婦死亡数は1950年には年間4000人以上でしたが、2005年には62人まで減少しました。周産期死亡数(妊娠22週以降の死産+生後1週間以内の早期新生児死亡)も1950年には年間10万人以上でしたが、2005年には5149人まで減少しました。

1950年には、自宅や助産所での分娩が全体の99%を占めていましたが、その比率は1960年には50%となり、1990年からは 1%程度で推移しています。現在は分娩の99%は病院・診療所で行われています。

今、全国的に出産できる施設が急激に減少し続けていて、妊娠しても希望通りの医療機関で出産することがだんだん難しくなっています。現在の分娩の安全性を保ちながら、今後いかにして分娩場所を確保していくのか?という問題が、早急に解決しなければならない国家的な課題となってきました。

分娩取り扱い施設あたりの産婦人科医数は、アメリカが6.7人、イギリスが7.1人であるのに対し、日本はわずか1.4人にすぎず、きわめて小規模な施設で多くの分娩が行われているのが現状です。

福島県の大野病院事件、奈良県の大淀病院事件などの影響もあって、マンパワーの不十分な分娩取り扱い施設の産婦人科医達が産科医療からどんどん離れています。産婦人科医が少なくなってしまった施設に、何とかして産婦人科医を呼び込もうとして、多くの自治体がそれぞれ必死の努力をしていますが、そうやって数少ない産婦人科医を多くの施設で奪い合って、小規模施設を一時的に延命させたとしても、何ら根本的な解決にはなりません。

小規模施設での分娩管理には限界がありますから、各地域で分娩取り扱い施設の集約化を進め、施設あたりの産婦人科医数を少なくとも諸外国並みの6~7人程度まで増やす必要があると思います。 次世代の若い人達が入門を尻込みするような過酷な勤務環境のままで、無理に無理を重ねて頑張り続けるのは考えものです。若い人達が喜んで入門できるような勤務環境を整えることが非常に重要だと思います。

****** 朝日新聞、2008年6月23日

お産の時だけ「東京へ住むこと考えた」

 「予約は半年先までいっぱいです」

 昨年12月、神奈川県相模原市に住む女性(38)は電話口で真っ青になった。相手は近所の北里大学病院。「お産の予約はプラチナチケット」「妊娠がわかったらすぐに動け」――。不妊治療を続けていた当時から、まわりからそう言われていた。

 だから気配には気を付けていたつもりだった。妊娠 8週。「素早く動いたはずなのに・・・・・・」。あきらめられない。年齢とぜんそくの持病があることを伝えた。すると、受診の予約を入れてくれた。数日後に診察。「ハイリスクな出産に入る」という理由で受け入れが決まった。

 後に知ったのは、北里大病院はほかの医療機関が受け入れられないリスクの高い妊婦を優先的に受け入れており、通常の妊婦は月100件程度のうち35件に抑えていること。県内で出産を扱う施設が激減し、その枠はすぐに埋まること、だった。

 「ラッキーにもハイリスクだった、ということでしょうか」。複雑な気持ちだった。でも、知人から「県内ではなかなか見つけられない」と聞き、一時は妊娠中だけ東京でアパートを借りることも考えただけに、ほっとした。

 神奈川に限らず全国的に出産できる施設が減り、なかなか希望通りの医療機関で出産できない。93年に全国で4000近くあった施設数が、05年には3000を切った。深刻な産科医不足が背景にある。75年に医師の10%以上を占めていた産婦人科医が、今は 4%だ。

 限られた施設の中で役割分担する――。妊婦をリスクに応じてある程度分けざるをえない理由がここにある。北里大の海野信也教授は「妊婦さんにも我慢してもらわないと成り立たない」という。

 女性は今、出産に向けて妊婦健診に通っている。「元気な赤ちゃんと会いたいです」

(以下略)

(朝日新聞、2008年6月23日)


今後の分娩場所のトレンドは?

2008年06月21日 | 地域周産期医療

最近の数十年間だけを見ても、我が国の分娩場所のトレンドは何度も何度も大きく変遷してきました。各地域によってそれぞれ独自の歴史があると思いますが、大きな流れとしては、自宅分娩が中心で町の産婆さん達が大活躍していた時代、助産院やバースセンターが各地に林立していた時代、町の産婦人科開業の先生方が中心になって頑張っていた時代、各地域の比較的小規模の病院・産婦人科が競って頑張っていた時代と、どの地域においても分娩場所のトレンドは時代と共に何度も大きく変遷してきました。それぞれの時代時代で、担当者達は必死で頑張ってきました。

これからの産科医療は、産婦人科医、助産師、新生児科医、麻酔科医などからなるチーム医療が中心となっていくと思われます。

しかしながら、産婦人科医、助産師、新生児科医、麻酔科医はどこでも足りなくて、奪い合いになっているような状況にあり、決してすぐには増えません。今は、医師数に対して施設数の方が圧倒的に多すぎて、各施設が医師不足で困窮しているわけですから、この際、緊急避難的に産科施設数を必要最小限に絞り込んで、その絞り込んだ施設で屈強の周産期医療チームを結成し、そこで充実した産科医療を実施するしかないと思います。

今ある公立・公的病院の産科施設を、すべて次世代に残そうとしても絶対に無理だと思います。我が国の分娩場所のトレンドが、今、どのような方向に向かっているのか?ということを公立・公的病院の管理者達はよくよく考えてみる必要があると思います。

我が国の妊産婦死亡率の推移を見ると、1950年は10万分娩に対して176でしたが、2000年には6.3となりました。また、周産期死亡率(早期新生児死亡率と妊娠28週以後の死産率との合計)の推移を見ても、1950年は出生1,000に対して46.6でしたが、2000年には3.8となりました。 これらのデータから、この五十年間で分娩の安全性が著しく向上したことがわかります。 しかし、今でも実際には、1,000人に4人の赤ちゃんが、また1万人に1人の母親がお産で亡くなっているわけですから、現在の医療水準であっても、必ずしも、一般に信じられているように『お産は母児ともに安全』とは限りません。 ましてや、万一、このまま地域から産婦人科医が絶滅し、昔(五十年前)の医療水準に戻ってしまったら、現在の何十倍もの母児がお産で亡くなりかねないということを一般の人達にもよく理解していただきたいと思います。 崩壊の危機に直面している地域周産期医療体制を守ってゆくために、我々は今何をしなければならないのか?今何ができるのか?それぞれの地域の実情に合わせて、長期的な視野に立ち、地域全体で考えてゆかなければならないと思います。


医師養成数、増加へ転換 (厚労省方針)

2008年06月20日 | 医療全般

厚生労働省は、医師養成数について従来の「抑制」から「増員」へと方針を転換しました。医療崩壊と称される医療現場の現状を打開するために、今後の中長期的な方向性としては必要な正しい対応と考えられます。

しかし、医師総数は今でも毎年着実に増えているのに、例えば、産婦人科の医師数は長期的に激減し続けています。単純に医師の総数を増やすだけの政策であれば、現時点において医師不足が顕著な診療科や地域の医師数が、期待通りに今後増えてくれるかどうか?は全くわかりません。現状の医師配置のアンバランスが、今後ますます顕著になってゆく可能性もあります。

また、医師の養成には時間がかかる(医学部6年+初期研修2年+専門研修3~6年)ので、今、大学の医学部の定員を大幅に増やしたとしても、実際の医療現場にその増員効果が現れ始めるのは十年後の話であり、当面の数ヶ月~数年間の短期的な医師不足対策は、中長期ビジョンとは別に考えていく必要があります。

****** 朝日新聞、2008年6月18日

医師養成数、増加へ転換 医療危機受け厚労省方針

 医師不足問題を受けて将来の医療のあり方を検討していた厚生労働省は18日、「安心と希望の医療確保ビジョン」をまとめた。82年以降初めて、医師総数が不足しているとの見解をとり、医師養成数の抑制方針を転換。中長期的に医師を増やす方針を打ち出した。看護師など他職種との連携強化、救急医療の充実なども盛り込んだ。

(中略)

 医学部定員は、84年の8280人をピークに89年に8千人を割り、07年は7625人(文部科学省調べ)。減少は、養成数抑制の方針を打ち出した82年の閣議決定のため。97年の閣議決定でも維持された。国は06年以降、「地元枠」などとして一部で定員を増やす緊急対策をとったが、「地域、診療科ごとの偏在や不足」との立場。将来は医師が過剰になるという推計を根拠に、恒久的な医師総数の増加には消極的だった。

 ビジョンでは「総数が不足しているとの認識の下で、対策を行う必要がある」とこれまでの姿勢を修正。抑制策をやめ、「医師養成数を増加させる」とした。具体的な人数は今後議論する。

 ただ、医師が一人前になるには入学から約10年は必要。当面の策として、看護師や助産師、薬剤師ら関係職種との役割分担を進める▽過重勤務せずに、子育てをしながら働ける労働環境を整備する▽診療科別の医師数を適正にする方策を検討する――などとした。

(以下略)

(朝日新聞、2008年6月18日)


対談 医療崩壊を防ぐために 舛添要一氏VS岡井崇氏 (臨床婦人科産科)

2008年06月18日 | 医療全般

参考:

大臣と語る 希望と安心の国づくり

産科医不足対策

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舛添要一氏
1971年東大法学部卒。同助手を経て,73-78年,パリ大現代国際関係史研究所,ジュネーブ高等国際政治研究所の客員研究員を務める。79-89年東大教養学部助教授などを経て,2001年参議院議員に当選(現在2期目)。07年8月より厚生労働大臣。趣味は乗馬,柔道(講道館二段),クロスカントリーなど。

岡井崇氏
1973年東大医学部卒。同助教授,総合母子保健センター,愛育病院副院長などを経て,2000年より昭和大産婦人科学教室主任教授。日本産科婦人科学会常任理事,日本周産期・新生児医学会理事などを歴任。2007年無過失医療事故を世に問うミステリー小説『ノーフォールト』(早川書房)を上梓。趣味はアイスホッケー,囲碁。阪神タイガースファン。

**** 臨床婦人科産科62巻6号・2008年6月、p791-799

対談 医療崩壊を防ぐために

舛添要一氏 VS 岡井崇氏

 医師不足はどうなる? 医療事故は刑事訴追?  “危機”を超えて“崩壊”とさえ言われる昨今の医療環境。この窮状の打開に向けて,舛添要一厚生労働大臣にかかる医療界の期待は大きい。「舛添氏は何かやってくれそう」と大臣就任を最も喜んだ医師の1人であり,無過失補償について取り上げた小説『ノーフォールト』の著者としても知られる日本産科婦人科学会常任理事の岡井崇氏に,現場で苦悩する臨床医を代表して舛添氏と対談していただいた。 (2008年3月25日、収録)

■医師が医師本来の仕事に専念できる体制を

「医師は不足している」という認識で施策を変えるべき

岡井 まず,舛添大臣には産科医不足問題に関しまして,深くご理解いただき,早速にいろいろな政策を打ち出していただきましてありがとうございました。

 本日は最初に,産婦人科だけでなく,医師全体の不足についてお話しさせていただきたいのですが,今,私たち現場で働いている医師の感覚では,産婦人科だけでなく,ほかの科の医師も不足しているというのが実感です。もちろん科による偏在や,地方と都会の格差問題もありますが,日本の医師数は外国と比較して足りないのではないかという気がします。ここに資料がありますが,人口1000人当たりの医師数は,日本が2,アメリカが2.3,フランス,ドイツが3.3,イギリスが2.1となっています。

 もちろん国によってそれぞれ医療制度が違うので一概には言えませんが,日本は基本的に医師を働かせる効率が悪い体制を取っていますね。 例えばイギリスでは専門医制度が非常に発達していて,患者さんは日本のようにフリーアクセスできません。まず一般家庭医にかかって,そこから紹介されないと専門医に診てもらえない。これは,国民にとっては非常に不満の強い医療体制ではありますが,少ない医師数で診療を賄える体制です。それでも日本より人口当たりの医師数は多いのです。そう考えると日本はますます1人当たりの負担が大きくなるというわけですが,厚生労働省(厚労省),また大臣はどのようにお考えですか。

舛添 厚労省は従来から医師数は十分であって,偏在しているだけだという言い方をしてきたのですが,私はそういう状況ではなくて,医師は足りないことを認識しておりますし,国会でも公式に言っております。

 ただ,どれだけいれば十分かということは,定量的になかなか言えないのは確かです。例えば人口1000人当たりの医師数がアメリカが2.3で,日本が2なら,それほど違いはないようにみえますが,メディカルクラークを含めて,医師を支える体制がしっかりしているアメリカと,そうではない日本を比べれば,同列には論じられません。

 今,先生がおっしゃったイギリスの例もまたシステムが違うわけで,一概にこれだけいれば十分だということは数では表せませんが,現状からみたら十分であるとは言えません。つまり,「不足している」という認識で,まず施策を変えるべきであると思います。

 そのうえで,診療科による偏在,そして地域による偏在への対策などをきめ細かくやっていくべきだと思っています。

岡井 医師数に関しては,20~30年前に日本医師会が試算をしていて,毎年どれだけの医師が誕生するから,将来医師は余ってくるというような変な数字が出ています。でも,医療はどんどん進んでいますし,診療の質も高めていかなければなりません.外国でも同じように試算をしていますが,現状に合わせて修正を加えています。なぜか日本では,何十年も前の試算が生きていて,今増やしたら将来過剰になってしまうのではないかと言っている。

 現実には,今すでに産婦人科や小児科など科による偏在が問題になっていますが,実は外科の入局者もかなり減っていて,10年後ぐらい後には現場で足りなくなる恐れがあります。早く対応しておかないと,10年後に大臣になられる方が苦労されるかもしれませんよ。

舛添 実は平成9年に閣議決定があって,試算を見直そうという話があります。医師はまさに10年単位で養成しなければいけないので,医師数の試算は不断に見直していく必要があると思っています。それで軌道修正して,余るのなら減らせばいい。そういう柔軟性が必要だと思います。

メディカルクラークの活用

岡井 産科ではメディカルクラークを雇うことに手当てを出すという検討もしていただいていますが,事務的なことはメディカルクラークに任せて,医師は本来やるべき診療に専念できるような体制づくりを全科について考えていらっしゃるのでしょうか。

舛添 もちろん今度の診療報酬改定で医師事務作業補助体制加算が新設されましたので,活用できると思います。

 それから,救急医療体制で,「今,うちはどれだけベッドが空いています」「今,どれだけの先生がアベイラブルです」というようなことを,緊急情報として出しておかないと救急車に情報が伝わりません。そういった作業もメディカルクラークがやれるようになっています。医師が医師本来の仕事ができるように,まだ第一歩ですが,踏み出しました。これからさらに,メディカルクラークが増えるような形にしたいと思っています。

勤務医と開業医の差を埋める

岡井 さっきもお話しましたが,イギリスでは家庭医がまず診てそれから専門医につなげるというシステムになっています。医療を提供する側としては効率がよい制度ですが,国民からは不満が出ます。

 日本は,そういう意味ではイギリスと対極にあって,患者さんにとってはフリーアクセスでどこにでも行けるし,「この先生はイヤ」となったらすぐに変えられるし,収入が低い方でも名医に診てもらえる。これは世界に誇れる体制だと思います。しかし医療を提供する側からみると,専門医として一生懸命勉強し,技術を磨いて,知識を深めて,あるレベルまで達しても,診療報酬点数は同じという不満があって,レベルの高い専門医が育ちにくいという面があります。この点について将来日本はどうするのがよいとお考えですか。

舛添 今のご質問は,ひとつは診療報酬体系で専門医といわゆるかかりつけ医との区別をどうするかということだと思いますが,それよりも前に,まず開業医と勤務医との間に,例えば勤務時間の差などいろいろな意味で実質的な差ができているのではないかという問題があります。

 私が国会で「医師不足です」と言うと,市民から「うちの町の駅に降りてみてください。駅前に何軒開業医があると思いますか。30軒ありますよ。この人たちは,夕方5時に閉めて,土日はゴルフ三昧だ。こういう医師がいっぱいいるじゃないか。皆,裕福な生活をしていますよ。医師の何が大変なんですか」と電話がかかってくる。一方で大学病院などの勤務医は,収入もよくないし,当直ばかりだということがある。それをどう是正するのか。例えばすでにいろいろな地域で始めていますが,開業医と救急医療機関との相互交流として,土日や夜間などに開業医が救急医療の一定の役割を担うというような試みなどをしていく必要があるのではないかと思います。まずこういった勤務医と開業医の間の待遇,勤務時間などの実質的な差を埋めていかなければならない。そうしないと,勤務医は専門知識を持ち続けていくことは大変だし,家族のことを考えれば開業したほうがよいとなってしまいます。そうすると大学病院も崩壊してしまうし,高度医療はできなくなってしまいます。専門医の処遇をよくするということはもちろん考えなければいけないけれど,まず先に勤務医と開業医の間の差を埋める手当てが必要だと思います。

患者側にも理解が必要

舛添 それともう1つは,ネットワークシステムをつくっていくことでしょう。先ほどのイギリスの制度は悪いことばかりではなうて,まずかかりつけ医で診てから,第二次,第三次に上がっていく。日本では今,最初から第三次医療機関に行くようなことをしているので,地域全体でのトリアージというものが必要じゃないかと考えています。

 例えば歩いて病院に行ける人が,無料タクシー代わりに救急車を使ってしまう現状がある。そういうことからまず是正を始めないといけません。

 まずかかりつけ医へ行って,そこで無理なら紹介状を書いてもらって,大きな病院へ行くという体制が機能していないために,救急車のいわゆる「たらい回し」ということも起きてしまいます。実を言うとこれは,医療提供者側だけの問題ではなくて,患者側の問題も多分にあります。

岡井 そうですね。法律で「まずかかりつけ医へ行かなければいけません」とはできないから,国民の方々に理解してもらうしかないですね。

舛添 そうです。ただ,国民としてはやはり大きな病院へ行ったほうが安全だという感覚がありますから,これは戦後,地域コミュニティが崩壊したことのひとつの現れでもあります。昔は地域のお医者さんに全部頼っていたわけですからね。

医療にどれだけお金をかけるか

岡井 今の医療体制の話とも関連していると思うのですが,国民が求めるような,どこでも病院を選べて,近いところによい病院があって,待たされずに診てもらえるという体制を取るためには,お金がかかりますよね。私たち医師の努力も足らないのかもしれませんが,医療にどのくらいのお金をかけるのかということを,例えばもっと政治問題化して,国民に訴えることはできませんか。医療とお金の問題は一般の国民には見えていないと思うんです。

 この間,ラジオの番組で救急患者さんのたらい回しの話をしたら,70%以上の人が,これは医師が悪いんじゃない。足りないから仕方がないんだということを理解してくれていました。でも十分な体制を取るためには,それだけお金がかかるのだということは果たして一般の人にわかってもらえているのか。「皆さんの税金を使って,これだけのお金を医療にかけます」ということを国民に理解してもらうために,成治のほうから,呼びかけていただけませんか。

舛添 大まかな数字ですが,医療費は30兆とも,33兆ともいわれています。その3分の1に当たる10兆円が,高齢者の医療にかかっています。国家予算が80兆ですから,莫大な金額がかかっているのです。今マイナスシーリングで毎年2200億円を削減するということを苦労して行っているのですが,国民の命を守るという医療にはコストがかかるんだという意識をまず国民に持ってもらわなければいけません。

 ではそのコストをどういう形で支払うか。例えばEU諸国は,消費税が15%以上,スウェーデンなどは25%なわけです。それだけの消費税を支払ってでも安心を求めますかというと,税金を上げるということはなかなか難しいわけです。しかしそろそろきちんとした議論,わかりやすい言葉でいうと「低負担なら低福祉ですよ。高負担なら高福祉ですよ。どちらを選択しますか」という議論が必要なのではないかと思います。アメリカのような国民皆保険がない国でよいですか,それともあるほうがよいですかと言えば,おそらく国民は……。

岡井 後者を取るでしょうね。

舛添 ええ,国民は,皆保険を取ると思います。それには応分の負担が要るわけです。何でもかんでも税金が安くなればよいというわけではない。今はすでに高福祉なら高負担,低福祉なら低負担という成熟した議論ができる状況になってきていると私は思います。

岡井 なってきましたでしょうか。

舛添 ええ。国民に対して,高福祉・高負担,低福祉・低負担という議論をきちんとして,今の消費税の5%を7%に上げるのに賛成ですか,反対ですかと聞けば,8割ぐらいが賛成に手を挙げますよ。ところが前提にそういう議論がないまま,テレビで「また消費税を上げようとしている!」と報道したら,皆,「ノー」と言います。ですから今の状況について,きちんと報道するのが報道機関の使命だと思います。

 救急医療体制などについては,各テレビ局が今はきちんと取り上げてきているので,「やはりこれでは命が救えない」という気運が盛り上がってきています。

岡井 ジャーナリズムがどういう姿勢で報道するかで,ずいぶん違いますよね。

舛添 違いますね。説得の努力はしたいと思っていますので,ぜひ現場からも,声を上げていただきたいと思います。

■診療関連死因究明制度の問題点

医療が萎縮してしまうようなことがあってはならない

岡井 次に,私たち医師がいま一番気にしている診療関連死の届出の問題ですが,厚労省で,診療関連死の真相追求のあり方に関する検討委員会の第二次試案というのが出ました。日本医師会も一応了承していますが,実際に現場の医師からは問題だという声がいくつも上がっていて,日本産科婦人科学会(産婦人科学会)からも意見を出しています。

舛添 ええ,見ています。個人の産科の先生方からも,毎日,直接メールをいただいています。これの最大の問題は,福島県立大野病院の件ですよね。

岡井 ええ。禁固1年の求刑ですからね。その患者さんを助けるために一生懸命やった結果が禁固なのですから。禁固といったら犯罪者ということです。これはたった1例でも,ものすごく大きな衝撃なんです。

 結局,今度の第二次試案でも,原因を調査して,その結果,重大な過失があれば報告書を刑事手続きに使うとしている。「重大な過失」というのは,「あり方検討会」の説明では,「本当にひどいやつだけなんだ」と言うのですが,条文のなかに「重大な過失」とあるのは問題です。大野事件も「重大な過失」ということで訴追されているわけですから,何とかその表現を変えてもらわなければいけない。大臣の力で何とかなりませんか。

舛添 私も大臣になる前からこの福島県立大野病院の事件は取り扱ってきていますから,これではお医者さんが萎縮してしまうと思います。ところがそういうことを言うと,逆に国民の側,患者さんの側からは,なぜ大臣は医師の側に立つのかと,ものすごい批判があるのです。

岡井 それはわかります。

舛添 「患者のことも考えてくれ」「われわれは医師を信用していない」と,ものすごい不信感があるのです。医療メディエーターなどを導入するという話に対して「ノー」という人は,「医師が逃げるんじゃないか」と言うんです。これは日本人の情緒的,文化的背景もあるんですけれども,アメリカだったら患者の弁護士と病院の弁護士との間でドライに片づけていくところですが,日本では,「お医者さんに一言謝ってもらいたい」「説明してもらいたい」というのがあり,説明不足が嫌だという声がすごく強いのです。だから,こういう委員会を作ってそこで真相究明をするというと,医師を逃がすためにそういう委員会を作るのではないかという,まったく逆側の意見が出てくるわけです。私もそんなに不信感があるのかとびっくりしたのですが……。

 だから,患者側,医師側の両方の意見をきちんと聴ける組織はどうあるべきかという視点から考えないといけません。まだいろいろな議論をする必要があるので,軽々に結論は出しません。

 まだいろいろな議論をする必要があるので,軽々に結論は出しません。しかし,いつまでも待てる話ではないので,今度,第三次試案を出します。例えば第三次試案では,医療機関が調査委員会への届出を行った場合,医師法21条に基づく異状死としての警察への届出は不要とします。それから,委員会の設置目的は,関係者の責任追及のためのものではなく,真相究明のためのものだということを明記します。そして,その届出義務を無限に広げるのではなくて非常に限定します。

 さらに,先ほどの「重大な過失」がある事例というのは何なのかということについて,これはもっと詰めなければいけないですけれども,「診療記録などの改竄(かいざん)とか,故意や重大な過失のある事例,その他悪質な事例であると認めた場合に限って,適宜,適切に通知を行う」となっているのですが,患者が死んだという結果が「重大な過失」だということではないということです。では「重大な過失」とは何かというと,「標準的な医療行為から著しく逸脱した医療行為を行った場合」というのだけれども……。

岡井 そこが問題なのです。その「標準的な医療行為から著しく逸脱した」というのが何であるのかが問題なのです。

舛添 「標準的な医療行為から著しく逸脱した」とは何であるか,これは議論があるだろうとは思います。ただ,患者さんが亡くなったから重大な過失だということではないということを明言するということです。

 それから行政処分にしても,「この医師の腕が悪かったから」ということではなくて,システムエラーに対応するようにする。例えば帝王切開の場合に麻酔科医も輸血担当の医師もいなくて1人でやるということならば,それはチーム医療として体制が整っていないということに問題があるということで改善していく。

 こういったことを第三次試案として出して,さらにもう少し具体的に議論していくということです。例えば第三者機関に完全に任せてしまうのがよいのかどうかということについても,医師側と患者側はまったく反対側から問題の指摘があるものですから,そのバランスを取りながら議論していきたいと思っています。少なくとも,これによって医療行為が萎縮してしまうということはないようにしたいと思います。

岡井 絶対にそうならないようにしていただきたいと思います。

舛添 逆に本当は医師に過失があるという場合に,委員会に丸投げしてしまって,医師の過失が簡単に免罪されるということがあっても国民の信を問えませんので,ここをもう少し議論する必要があります。

 だから,実は何らかの機会に岡井先生と音頭を取って,医療事故の被害者,医療ミスの被害者だという家族の人たちと,一度討論をしてもらいたいと思っているんです。直接討論していただけば,より問題点がクリアになるんじゃないかと思います。

岡井 ええ,そういう機会を設けていただければ喜んで参加します。私も基本的にそういうことは必要だと思っています。「あり方検討委員会」でも,患者さん代表の方の発言などを聞いていると,ほんとうに事故で亡くなられることは悲しいことで,そのお気持ちはよくわかるんです。でもだからといって刑事罰ということになるのは間違った方向だと思います。「あり方検討委員会」の問題だけではなくて,医療事故の関与者に刑罰を与えることによるマイナスが医療にとってどれだけ大きいかということを,一般の方に理解してもらわなければいけないと考えています。

 これに関しては,医療提供側のわれわれも反省しなければいけないと思うんです。事故があったときに何とか隠してしまおうというような体質が長い間続いていましたから。本来ならば自分たちできちんと死亡事故の真相究明をやれれば一番よいのぁもしれませんが,やはり人間ですから,監視をする人たちが必要ですし,医療を受ける側の人たちも一緒に入ってもらって,何が問題なのかを議論しなければいけない。だから,この制度そのものには産婦人科学会も基本的に賛成なのです。ただし,やはり「重大な過失」で刑罰につながるというところ,ここだけはどうしても納得できません。1万6000人の会員のうち,例外的な一部の者を除いてほぼ全員が反対しています。それは産婦人科学会だけではなくて,どの学会でも同じです。

 「ほんとうにひどいやつ」というのを,どういうふうに規定するのか,そこをきちんと明文化してもらわないと,外科系の医師は手術をするたびに,いつか自分も逮捕されるのではないかと不安になってしまいますから。

患者側はモラルハザードにならない担保が欲しい

舛添 厚労省が関与したほうがよい。警察が関与したほうがよいという意見が一方にあるのは,例えばある病院で事故の真相追求委員会をつくったというときに,患者側としては自浄努力は本当に働いているのかという疑いがあるからなんです。最終的には,やはり国が後ろにいてきちんと裁く,法律に基づいて刑事罰で裁くことができますということがないと,モラルハザードで「われわれは裁かれない。大丈夫だ」ということになるのではないかという不信感があるのです。その病院の真相追求委員会だけで,本当にひどい医師がいた場合に,追放することができるのかと疑っているのです。

 医道審議会で医師免許停止などの処分はしますけれども,今のように盗みをしたとか,わいせつ行為をしたなどの犯罪行為ではなくて,本来はこういった問題について審議すべきではないかと思います。

 お医者さんたちの希望というのは,よくわかります。しかし患者側はモラルハザードになったときにどうするかという担保を考えているんです。

岡井 でもその処罰は刑事罰ではなくて,行政処分でも何でもよいと思うんです。本当に悪い医師だったら医師免許を取り上げてもかまわない。私は「正当な業務の遂行として行った医療行為」というような表現をしているのですが,医師が患者さんのためを思ってやった,その目的でやったけれども力が及ばなかった,結果が悪かったというときに,それに対するペナルティが刑罰というのは,意味が全然違うんです。犯罪者だということになってしまう。看護師もそうですけれども,この職業を選んで,患者のためにと思ってやったことが,その結果だけで「おまえは犯罪者だ」といわれるというのは,善意を踏みにじられるというか,使命感の喪失,意欲の減退につながります。

 私は行政処分は厳しくしてもよいと思っています。本当は医師の間で教育的ペナルティのシステムをつくって,「力がないならもっと勉強しなさい」「その間は専門医はしばらくおあずけですから,研修して力をつけなさい」という処罰をどんどんやるべきだと思います。でも刑事罰だけは間違いです。個人に刑罰を科しても事故の再発防止という医療の向上には全くつながりませんから。逆にそれが,社会にどんな悪い影響を及ぼしているか……。

舛添 それはよくわかります。だからそういうことを加味して,非常に厳格にしか適用しないようにします。けれども,業務上過失致死というような刑法が日本の法体系にあって,医師だけをそこから免責することには国民的な合意がないといけないわけです。車を運転していたって,業務上過失致死になるわけです。これはあらゆる業務について言えるわけです。医師と看護師だけを除外するというわけにはいかないのです。

 岡井先生のおっしゃることはよくわかります。それを国民に説得するための努力は,医療提供者側がやらないと駄目だと思います。ですから,そのためには,患者側と討論をするというような試みをぜひやっていただければと思っています。

■無過失補償制度

よい結果につなげていくことが大切

岡井 刑事ではなくて民事裁判の話になりますが,おかげさまで,何とか産科医療補償制度の準備が進んできています。国の制度ではなく保険でやるのですが,国として支援していただけることになり,何とか一歩を踏み出せそうです。この制度によって産科の脳性麻痺訴訟も減った,さらにこの制度のおかげで脳性まひの発生頻度も5%,10%下がりましたというようなよい結果につなげていくことが大事だと思っています。そうすれば,他科にも「産婦人科でこういうよい結果が出ているから,うちも同様の制度を提供してくれ」というように広がっていくと思います。将来的には,ぜひ医療界全体に広げてほしいと思います。

舛添 そうですね。ぜひ,そうしていきたいと思います。

岡井 大臣も,そういう方向で考えておられると思ってよろしいですか。

舛添 20年度予算案をいま審議中ですが,19年度は1千万円,今年度は2千万円の予算をこのためにつけておりますので,これは今後もきちんと進めていきたいと思っています。

薬害などの患者救済の可能性

岡井 C型肝炎訴訟がありましたが,被害に遭われた患者さんが救済されるためには,患者さんが国を訴えて,裁判で争って,勝たないと補償が受けられないのが現状です。 こういう事件に対して,いま産科で行っている無過失補償制度と同じ考え方を導入すればよいのではないでしょうか。医療にかかわるああいう問題はこれからだって起こりうるわけです。そのときに,被害に遭った人をまず補償し,そしてあとでどこに問題があったのか原因究明するというような制度ができると,被害者はずいぶん救われるのではないでしょうか。 被害者は長い間,国と争ってきたわけです。今回は,大臣が決断されたからよかったのですが,決断されなかったら,争いはまだ延々と続いていたかもしれません。国は,「国民の税金をそんなに簡単に使えるか。うちは悪くない」となって長引くわけですが,今の解決法はあまり賢い方法ではないと思います。

 結局は国民のための国ですから,先に保障してあげて,あとで問題点を整理するというぐらいの制度ができてもよいと思います。何か被害者救済法みたいなものができれば,無駄な争いをしなくてもすむと思うんです。最終的には,補償してあげなければいけないし,救済してあげなければいけないわけで,その手続きのためによけいなことをやっているようなところがあるでしょう。

舛添 そうですね。それもひとつ,課題として考えたいと思います。

■日本の医療の将来展望

岡井 先ほどもお話しましたが,よい医療にはお金がかかる。だけど,そんなには出せない。医療にかかるお金をどういうふうに上手に抑えながら,しかも国民が満足できる高度な医療をいかに提供するかというビジョンを最後におうかがいしたいと思います。

舛添 私が大臣に就任したとき,長期的な医療ビジョンをつくりたいということで,「安心と希望の医療確保ビジョン」という検討会をつくりました。前回は,歯科医,看護師の代表,助産師の代表といった方々に意見を聞きました。そういうヒアリングや議論を通じて感じたのは,まずは治療よりも予防をしっかりとすべきだということです。今,医療が高度技術化していますので,何でもかんでも医師にかかればよいということではなくて,病院にかかる前の体づくりが生活習慣病をはじめとする対策になりますし,予防によって相当な医療費の削減につながると思います。

 それと,効率的な医療機関の活用にはネットワークの構築が必要です。真夜中に,それでなくとも数の少ない小児科医のところへ,たいした病気じゃない赤ちゃんを救急車で連れて行く。そして,本当に救急車が必要な人が,人手が足りなくて間に合わないということが起きています。ですから,トリアージをきちんとやるべきだと思っています。

 今,いろいろなところで取り上げられているのですが,兵庫県立柏原病院で小児科を守るお母さんたちの会ができて,そのおかげで小児科医が去らなくてすんだという事例があります。これは「コンビニ診療」をやめましょうというものです。「昼間,病院に連れて行かないで,夜になってから連れて行くことを止める」だけで,小児科医の負担がものすごく減りました。全体をみると,常勤するお医者さんがむしろ増えているぐらいです。医師としても,どこかに勤めるのなら,地域の住民のものわかりのよいところで働きたいと集まるわけです。

 時間があったら視察に行こうと思って事前調査したところ,お母さんたちは自分たちで,子どもの熱が何度までならこうしなさい,顔色がこうだったらどうするというように細かくガイドラインを作っているんです。これが非常に役に立つガイドラインで,「こういうときは救急車を呼びなさい」と書いてあるのです。

 こういうことを,患者の側,国民の側が行うことで小児科医の負担が減り,産婦人科との連携もうまくいきます。 患者の側,国民の側も,税金をたくさん取られたくないのなら,そういう努力をしていただきたいと思います。それとやはり,地域のネットワークが必要なので,医療という観点だけでなく,地域コミュニティの再生が不可欠だろうと思っています。

 また47都道府県という国の形の在り方が,今の医療制度とマッチしているのかどうか検討が必要だと思います。例えば国民健康保険は市町村単位で,後期高齢者は都道府県単位,さらに国全体があるわけです。奈良県のいわゆる妊婦たらい回しの事例は,最後は大阪へ行っています。つまり,京都,大阪,奈良,兵庫あたりまでの関西圏でマップをつくって,第一次,第二次,第三次という医療圏の上手な連携をやったほうがはるかによいのではないかというようなことを考えています。

 先日,飯田の市立病院へ行ったのですが,里帰り出産などでも「地域外の人は,原則来ないでください」と言っているのです。でも飯田市は,すぐ隣が岐阜県だったりするわけですから,県の境を取ることも必要です。これは,地方自治の問題であるとともに,都道府県制を含めて,国の在り方そのものにつながってくると思います。医療提供者が“たこつぼ”的に,自分たちの枠のなかだけにいないで,外に出て,政治とも,行政とも,普通の国民とも議論をしていく。そういう形で医療体制の再構築をしないといけないという気がします。

 日本は,今のところ平均寿命が世界一です。医療体制が悪かったら,こうはなっていないわけです。今までいろいろな問題があったけれども,先進国のなかで,まさに医師の数も比較的少なくて,医療費も比較的抑えた形でここまでの医療水準を達成したわけです。 どのようにそのよい面を守りながら,しかし新しい問題にも対応していくかということを,国民的関心が盛り上がってきている今,これを機会に変えるべきところは変えていき,全力を上げて取り組んでいきたいと思います。ぜひ産科婦人科学会にも,また医療界・医学界全体として協力していただければと思います。

岡井 本日はお忙しいところお時間を割いていただき,本当にありがとうございました。大臣のご活躍には医療人皆が期待していますし,私たちもできるだけ支援させていただきますので,日本の医療向上のために大いに力を発揮してください。

(臨床婦人科産科62巻6号・2008年6月、p791-799)


産科開業時に1億助成 富士市 市立病院勤務が条件(静岡新聞)

2008年06月15日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

基幹病院産婦人科の常勤医を確保するメドがなかなか立たないので、窮余の一策として、『開業資金を1億円助成するので、誰か市内で開業してとにかく分娩を取り扱ってほしい』というような趣旨の制度と思われます。

しかし、小児科医や麻酔科医のサポートが得られない環境で、一年中全く休みもなく、産婦人科医一人だけで分娩を取り扱うのは非常に厳しく、誰がやっても長続きするのかどうかは全くわかりません。そもそも基幹病院の産婦人科が閉鎖したら、周辺の産婦人科開業医での分娩取り扱いが非常に困難となります。

それよりは、基幹病院産婦人科の待遇を破格の条件に引き上げることによって、常勤医数をだんだん増やしていき、基幹病院産婦人科の診療体制を長期的に維持していく手立てを考える方がより現実的な気もします。

****** 静岡新聞、2008年6月14日

産科開業時に1億助成 富士市 市立病院勤務が条件

 富士市立中央病院産婦人科の派遣医引き揚げ方針を受け、医師確保に奔走する同市は13日までに、医師誘致の基盤整備の一環として、同病院の産婦人科に一定期間勤務した医師が市内に分娩取り扱い医院を開設する場合に、最高1億円を助成する制度を設ける構想を固めた。勤務医の確保で富士地域の産科拠点の維持を図るとともに、中期的に通常分娩を担う開業医を増やし、地域の産科医療体制の拡充を目指すのが狙い。市は関係者の理解を得ながら、16日開会の6月議会で条例案を提出するとみられる。

 制度は県内初。全国では補助規定などで制度を設ける先行例はあるが、条例化はまれ。

 制度は同病院産婦人科の勤務期間が2年以上から5年以上の医師を対象に、分娩を扱う医療機関を独立・開業する場合に、勤務期間に応じて1億―7000万円を開設資金として助成する。5年の時限条例を構想している。

 市は、医師派遣元の東京慈恵会医科大に医師確保の協力要請を続けるとともに、市出身者などつてをたどって医師誘致に飛び回っている。現在の産婦人科部長はハイリスクや救急対応が継続できる現行4人体制の維持を条件に残留意思を示しているが、残る3人の確保はめどが立っていない。

 市は医師の確保活動の中で、病院内の環境整備とともに、独立・開業に至る将来への環境を整えることが勤務地選択の材料になりえると判断。病院産科医の分娩手当の新設に追加して、助成制度を構想したとみられる。

 人口24万人の同市で、分娩を扱う開業医は現在3院。病院産婦人科の閉鎖危機は、通常お産にも大きな影響が懸念されている。開業医の高齢化が進めば、分娩取り扱い機関がさらに減少する恐れもあり、開業医院の確保も望まれている。市の構想では、病院勤務を経ずに市内に分娩取り扱い医院を開業する場合にも、5000万円程度の助成制度を盛り込む方針。

(静岡新聞、2008年6月14日)

****** 毎日新聞、静岡、2008年6月15日

富士市:市内での産科開業、最大1億助成へ 市立中央病院に2年以上勤務で

 富士市立中央病院(山田治男院長)で来年4月以降の産婦人科医が確保できていない問題で、富士市は14日までに、同病院に2年以上勤務した医師が市内に産科を開業する場合、最大1億円を助成する制度を設ける方針を固めた。16日開会の市議会6月定例会で追加議案として提案する。地域の産科拠点となる同病院の維持と共に、将来的な開業医の確保を目指す。

 制度は、同病院に2~5年以上勤務した医師が分娩(ぶんべん)を取り扱う医院を市内に開業する場合、開設資金を7000万~1億円助成するというもの。また同病院に勤務しなくても、開業する場合には5000万円を助成することも盛り込む。5年間の時限条例となる。

 同病院に産婦人科医4人を派遣している東京慈恵会医科大は4月、全員を来年3月末で引き揚げる方針を通告。市は引き続き派遣を求めていたが、来年度以降の医師確保のめどはたっていない。鈴木尚市長は「緊急分娩を受け入れる市立病院が体制を維持できない場合、開業医が廃業を考える懸念もある。市内全体の産科医療体制を維持するため、両方の医師の確保が必要」と説明している。【望月和美】

(毎日新聞、静岡、2008年6月15日)

****** 読売新聞、静岡、2008年6月5日

産婦人科危機刻々 富士中央病院医師確保めど立たず 存否決断月末が期限

 富士市立中央病院(富士市高島町)に勤務する産婦人科医師4人全員を、派遣元の東京慈恵会医科大(東京都)が2008年度限りで引き揚げる意向を示している問題は、医師確保のめどが立たないまま、鈴木尚市長が「産婦人科の休止か存続かを決断するタイムリミット」とする今月末が迫っている。県内第3の市・富士市は、お産を巡って揺れている。【星聡】

■経緯

 同医科大が4人の引き揚げを市側に伝えたのは今年4月。同医科大の付属病院で女性の産科医が産休に入るため、富士市立中央病院の同大出身医師で補充したい??という説明だった。

 市は、浜松医科大など複数の大学病院や、市出身の産婦人科医にあたるなど、医師確保に奔走。市民らでつくる「富士市立中央病院産婦人科を守る会」も、産科の存続を求める約13万7000人分の署名を5月30日に鈴木市長に提出した。

 2007年度に市が受け付けた出生届は2268件。同病院は504件(市外分を合わせると649件)の出産を手がけた。産科の開業医が市内に3院のみであることを考え合わせると、同病院が市内で果たす役割の大きさがわかる。

■危機感

 中央病院は昨年度、帝王切開を伴う出産を149件扱った。長谷川進・市医師会理事は「一般に、お産の10件に1件は何らかのトラブルを抱える。起こり得るトラブルに十全に対応するのは中央病院でないと難しい。4人の医師の確保は最低条件。このままだと富士地域のお産は崩壊する」と危惧(きぐ)する。

 「守る会」の細木久美副会長(29)は、富士宮市立病院で長女(8)が産まれる際、母子ともに危険な状態に陥ったが、小児科医も含め医師3人と看護師4人の処置で乗り切ることができた。現在富士市内に住む細木さんは「総合病院(の産科)がなくなると、もう産めなくなる。総合病院がある富士宮市に引っ越すことも考える」と打ち明ける。

■今後

 医師不足、とりわけ産科の勤務医不足は全国的に深刻だ。引き揚げ対象になっている富士市立中央病院の産科医の一人は、「勤務がきつく、給料も特段良くない。(医療過誤の)訴訟も怖い。産婦人科を志望する人は少なく、全国で奪い合いの状況」と、産科医不足が複合的な要因で起きていることを説明する。「(給与などの)条件を良くすればすぐ来てもらえるわけではない」(鈴木市長)ところに問題の難しさがある。

 同病院は、新規の不妊治療の受け付けをすでに4月7日から中止。7月以降に受け付ける妊婦は、お産が09年度になる可能性が高いため、今月中に医師確保のめどが立たなければ「7月以降は新規の妊婦も断るしかない」(山田治男院長)。産科は危急存亡の時だ。

 芝川町長貫、飲食店経営佐野かおりさん(36)は、同病院で長年不妊治療を受け、昨年7月に待望の長男を出産した。佐野さんは二人目を希望しているが、「カルテはほかの病院に移せない。不妊治療は精神的につらく、挫折したこともある。新しい病院で一から始めるのは負担が大きい」。単に病院の一つの診療科を維持できるかだけでなく、問題は子供を産みたいという女性の切実な願いにかかわっている。

(読売新聞、静岡、2008年6月5日)

****** 朝日新聞、静岡、2008年6月12日

めど立たぬ医師確保/藤枝市・富士市

 藤枝市立総合病院と富士市立中央病院の産婦人科医引き揚げ問題をめぐり、医師確保対策が混迷している。県は厚生労働省を通じて、藤枝に医師を派遣してもらう方向で調整を進めていたが、結局、実現せず、富士でも医師確保のめどは立っていない。問題解決の糸口はまだ見えない。(竹田麻衣)

 藤枝市立総合病院で問題が表面化したのは今年1月。常勤の産婦人科医3人を派遣している浜松医大が、6月末で3人を引き揚げ、他の地域に移す考えを表明した。

 翌2月、厚労省は県に対して医師派遣の調整を打診してきた。これは、政府・与党の緊急対策の一環で、1月に厚労省が行った実態調査の結果、藤枝市立総合病院が「支援措置が必要」と判断された七つの医療機関の一つとされたことを受けたものだった。

 県は3月の医療対策協議会で、厚労省との協議に入ることを決めた。ところが、厚労省は5月下旬、同病院が6月1日から産科医1人を採用し、別の医師1人とも交渉段階にあるとして「産科医2人確保の見込みが示され、医師不足改善の見通しが立った」と判断。「派遣不要」との見解を県に伝えた。

 これで、協議は白紙に戻り、県も今月6日の医療対策協議会で断念を明らかにした。

 病院の独自の人材確保の取り組みが、思わぬ結果を招いた形だが、24時間体制でハイリスク分娩(ぶんべん)への対応も維持するには、常勤医が4人は必要とされている。県は浜松医大から非常勤産科医を週3回派遣する方針を示しているが、具体的な態勢は決まっていない。

 県医療人材室は「医師の独自確保や、周辺の病院との連携で、何とかやっていけると判断されたのだろう。全国的にはもっと厳しい地域があるだろうが、(厚労省の)見解が妥当かどうかは、正直わからない」と首をかしげる。

 ただし、厚労省の医師派遣は、受け入れ側に大きな負担がかかる。医師1人を受け入れると病院は約3千万円、県は約2350万円を負担しなければならない。県の担当者は「国に踊らされたような結果」と漏らしながら、「仮に派遣を受け入れても、いずれ病院の財政を圧迫する結果になったかもしれない」と話した。

 派遣元の東京慈恵医科大から、今年度いっぱいで産婦人科医師全4人を引き揚げる意向を示されている富士市立中央病院でも、医師確保のめどは立っていない。市内でハイリスク分娩や救急患者を受け入れているのは同病院だけで、周辺病院も志太・榛原地区に比べ少ないことから、県の担当者は「このままでは藤枝市立総合病院よりも危機的状況になる」と話している。

 藤枝市の松野輝洋市長は「はしごを外されたような心境」と言う。

 市は「補正予算で措置しても受け入れたい」として、難色を示す関係者を説得してきた。しかし、厚労省と県との協議では「国の派遣医以外に自助努力で医師を確保」「産婦人科の指導医が必要」など難しい条件が提示された。

 最終段階で派遣候補として上がったのは防衛医大出身の若い医師だった。「指導医が複数必要」とされたため、市は県を通じて、この条件に合う榛原総合病院に派遣医を受け入れてもらい、代わりに榛原から医師1人を派遣してもらうという「三角トレード」交渉まで進めた。

 その一方、募集に応じてきた佐賀県の元開業医との交渉を始め、5月12日には内定を出すところまでこぎ着けていた。「自助努力」が実を結ぶかに見えた矢先の「打ち切り通告」だった。

     ◇        

 富士市立中央病院と富士市は、「妊娠期間を考えると、今月末までに医師確保のめどが立たなければ、新たな患者の受け入れは出来なくなる」と医師確保に奔走している。

 同病院総務課は9日の市議会全員協議会で「東京慈恵医科大学へ引き続き医師の派遣について折衝していくほか、医師確保のための方策を図っていく」と説明した。

 鈴木尚市長は、医師の待遇改善の一環として、新たに分娩(ぶんべん)業務手当(1件3万円)を支給するための条例改正案を市議会に提案することにしている。【根岸敦生、橋本武雄】

(朝日新聞、静岡、2008年6月12日)

****** 静岡新聞、2008年6月7日

藤枝市立病院、産科医追加確保へ 
県対策協で報告

 担当医の退職で産婦人科の存続が危ぶまれていた藤枝市立総合病院で、6月から診療を始めた医師1人に加え、同市の自主的な努力で2人目の医師が確保できる見込みとなったことが6日、県庁で開かれた県医療対策協議会で報告された。厚生労働省は、県と検討していた同病院への産科医の派遣について、「医師不足改善の見通しが立ったため、医師派遣の必要はなくなった」との見解を示した。

 同病院は現在、病院勤務の産科医1人と交渉を行っている。国からの医師派遣については、2月に厚労省から特例措置として打診があったが、今後は要請を見送らざるを得ない状況となった。

 この日の協議では、委員から「(本県の)公的病院はほとんどが基幹病院の役割を果たしているのでなくせない」「医師確保のためには負担軽減が必要」「公的病院間で医師派遣などの連携を強めるべき」などの意見が出た。

独自ルートで模索 藤枝市立病院

 国から産科医の派遣が見送られることになった藤枝市立総合病院。「(派遣見送りの)再考をお願いしたい」(松野輝洋市長)としているが、独自ルートで1人の医師の採用に成功し、今後も知り合いのつてなどで医師確保を図る構えだ。

 同病院3人の常勤産科医全員が、退職することが明らかになったのは1月。以降、自治会連合会や議会が医師の派遣元の浜松医大に協力を要請したり、病院幹部が東京に出向きじかに話を聞いたりと、病院と住民、議会、行政が精力的に動いてきた。

 今月から、佐賀県内で開業していた医師が診療を始めたが、同病院に視察に訪れた際、院長ら幹部が出迎えて説得に努めた。「好印象を持ってもらいたかった」と関係者は言う。

 同病院の医師や職員には、地元の高校の卒業生が多く、地元へのUターンを考えている医師がいるかどうか探している。さらに、出入り業者にも片っ端から当たっているほか、医師あっせんの民間リクルート会社も活用している。

 今月20日、市長に就任する北村正平氏は医師確保を喫緊の課題と強調している。

(静岡新聞、2008年6月7日)

****** 毎日新聞、滋賀、2008年6月8日

医師不足:産科と小児科の医師、各1人募集 県が採用者に500万円貸与

 県は医師不足解消のため、昨年度に続いて産科と小児科の医師を1人ずつ募集する。採用者に500万円を貸与(2年間勤務で返還免除)する条件だったが、昨年度は応募ゼロ。今年度も同じ条件を続け、何とか応募につなげたい考えだ。

 応募締め切りは7月31日(当日消印有効)。応募資格は医師免許取得後5年を経過し、おおむね60歳以下で、県外の病院などに勤務している人。採用されると、県が指定する公立・公的病院で2年間勤務する(1年間延長可能)。また、赴任にあたり、「地域医療研究資金」名目で1人500万円を貸与する。

 昨年度も同条件で、募集期間の7~8月に応募がなく、10月と12月まで2回延長したが、集まらなかった。

 県医師確保支援センターは「今年は周知先を広げる方策を検討したい」としている。

(毎日新聞、滋賀、2008年6月8日)

****** 河北新報、2008年6月13日

産科医に「分娩リスク手当」 山形大病院が創設

 山形大病院(山形市)は12日、分娩(ぶんべん)に従事する医師に対し、一律に特別手当を支払う「分娩リスク手当」を創設したことを明らかにした。医師の仕事への意欲を高めるのが狙いで、深刻化している産科医不足の解消につなげたい考えだ。

 急変などのリスクを伴い、医師の負担が大きい分娩については、東北でも夜間の出産時などに手当を上乗せする病院が出ているが、山形大病院によると、勤務時間の内外を問わず分娩業務に手当を支払うのは、大学病院としては東北で初めて、全国でも3例目という。

 山形県内では他地域と同様、過酷な勤務と不十分な待遇、訴訟のリスクが高いことなどを理由に産科医が減少している。最上や置賜地方では医師一人で年間200件以上の分娩を扱う病院もある。

 山形大病院の分娩件数は、過去3年間の平均で136件。件数は決して多くはないが、母親が合併症を発症したり、胎児に異状が確認されるなど、3次救急で危険性の高い分娩を扱っている。産科医や分娩に立ち会う小児科医の肉体的、精神的な負担はより大きいと判断し、手当を支給することにした。

 手当は一件の分娩業務につき2万円。2人の医師が携わる場合は各1万円、3人の場合は各7000円を支給する。一人当たり年間20万円ほどの収入になる見込みという。

 嘉山孝正医学部長は「金の問題ではなく、それぞれの仕事を認めることで、若い医師のやる気を引き出すことができる」と説明。倉智博久産婦人科診療科長は「県内では妊婦の受け入れ拒否の例はなく、必死に頑張っているが、それにも限界がある。産科医を確保するためにも、県内全体の病院にこうした動きが広がってほしい」と話した。

 一方で同病院は、夜間や休日など時間外に診療を受ける患者のうち、緊急性がないと判断される患者から、特別料金(一人8400円)を今月1日から徴収していることも明らかにした。緊急の処置が必要ではない患者が時間外に訪れるケースが増え、急病や重症の入院患者の診療に支障が出ているためだという。

(河北新報、2008年6月13日)

****** 朝日新聞、神奈川、2008年6月12日

県内のお産取り扱い調査

 産科医不足が叫ばれる中、医師確保を目指す県がお産を取り扱う施設を対象に行った実態調査で、施設と常勤医の数、お産の取扱件数がいずれも昨年同期比で減ったことがわかった。県は「病院と勤務医への負担が集中する傾向が強くなっている」として、対応策を検討していく方針だ。

 06年度から始めた調査で今回が3回目。県と横浜市がお産を取り扱った病院や診療所などにアンケート用紙を4月に送り、回答を得た。それによると、取り扱い施設は155で、内訳は病院が64(昨年同期比2減)、診療所が59(同4減)、助産所が32(同1増)だった。

 常勤医師数は430人で、病院が337人(同3人減)、診療所が93人(同5人減)だった。お産の取扱件数を見ると、病院は4万3424件と、昨年同期比で958件増加したのに対し、診療所は2万1963件と逆に875件減、助産所も1784件と99件減った。

 県は3月から、自らの出産や高齢などを理由に現場を離れたが再び働くことを望む医師と、勤務医不足に悩む施設とをマッチングさせる「医師バンク」制度を始めたが、すぐには効果が表れてこないのが実情だ。今回の調査では、お産を取り扱う施設で09年度にもお産を取り扱うかどうかも尋ねており、「取り扱わない」と回答した施設はなかった。

 調査結果について県などは、「病院勤務医を中心に厳しい勤務状況が続いている。金銭面など、早急に何らかの手当てが必要だ」としている。【岩堀滋】

(朝日新聞、神奈川、2008年6月12日)

****** 毎日新聞、愛知、2008年6月12日

医師不足:深刻 入院、時間外急患、分娩…34公立病院中、診療制限20カ所

 ◇三河地域で顕著

 県内の34の公立病院のうち、医師不足のため診療制限を実施している病院が20カ所に上ることが、県医療福祉計画課の調査で分かった。西三河南部(岡崎市や碧南市など7市4町)地域では5医院のうち4医院で時間外の救急患者の受け入れ制限や、一部の診療科で入院患者の受け入れ休止をするなど、深刻な状況が浮き彫りにされている。【月足寛樹】

 公立病院の地域連携の在り方を協議していた有識者会議の中間報告「公立病院等の地域医療連携に向けて」の中で明らかにした。報告書は「救急医療体制の確保が最大の課題」と指摘しており、公立と民間の医療機関の役割の明確化や、外来と入院の機能を分ける医療体制の構築などを提案している。

 診療制限のうち、最も多かったのが一部の診療科での入院の休止で、9医院が既に受け入れを中止している。また、産婦人科医の不足で問題となった分娩(ぶんべん)の休止も5医院に上った。地域別では特に三河地域で目立ち、11医院のうち8医院で制限していた。

 ◇時間外受診者、要入院は11%--軽症者増加

 一方、報告書は救急医療体制と患者の意識の乖離(かいり)にも言及している。患者は時間外でも専門医を求める傾向が強く、軽症患者の時間外受診が増加している。昨年度の県の調査では、時間外の受診患者のうち、入院が必要だったのは11%に過ぎなかったという。

 報告書は「救急医療に携わる医師の負担が増加し、本来の救急医療機関としての機能が阻害される」と指摘。「医師が救急医療の現場を去ることが懸念される」と警告している。

(毎日新聞、愛知、2008年6月12日)

逮捕、裁判、産科崩壊。そして患者だけが取り残された―。(女性自身)

2008年06月11日 | 大野病院事件

コメント(私見):

『産科医療のこれから』の記事を読んで、今朝さっそく出勤の途中でコンビニに立ち寄って、生まれて初めて『女性自身』を買いました。女性週刊誌でも大野病院事件をちゃんとした形で取り上げているということは歓迎すべきことです。とても真面目な記事で、一般の方々に大野病院事件の本質について知ってもらういいチャンスですから、ぜひとも多くの人に買って読んで頂きたいと思います。

産科医療のこれから:“大野事件”この裁判に何の意味があるのか 女性自身

勤務医 開業つれづれ日記・2

周産期医療の崩壊をくい止める会のホームページ
 黒岩祐治のメディカルリポート
 検証!医療報道の光と影2
 大野病院妊婦事件 メディアの功罪 

 動画その1 動画その2 動画その3

福島県立大野病院の医師逮捕事件について
(自ブロク内リンク集)

****** 女性自身 2008./6/24、p76-82

シリーズ人間No.1903

逮捕、裁判、産科崩壊。
そして患者だけが取り残された―。

 2006年2月、福島県立大野病院の産婦人科医加藤克彦医師(40)が、帝王切開手術で患者女性が出血死した件で逮捕された。『医療ミス』が原因と疑われた事件だったが全国の医師は『医師側に落度はない』と、抗議の声明を次々に発表。また逮捕後、産婦人科を廃止する病院が急増した。この事件がもたらしたものとは何だったのか、検証する。

 「大野病院事件」は産婦人科だけの問題ではない。
 裁判の結果しだいでは、訴訟を恐れ、外科でも医師が難しい手術を拒否する可能性も当然出てくる。そうなれば、日本の医療崩壊は加速する。
 医師側、検察側それぞれに言い分があるのはわかる。だが、私たち、“患者側”には、何か残るのだろう。考えたい。誰のための裁判なのかを―。

 ありふれた、テレビニュースの一場面だったかもしれない。連行される男性の両手に手錠があるのも、いつもの見慣れた光景。続いてキャスターから、連行されたのが医師であることが告げられる。
 「また、医療ミスか……」
 おそらく多くの人が、カルテの改ざんや隠蔽、投薬ミスによる死亡事故などをすぐに連想したのではないだろうか。しかし、実際にはいつもの医療事件とは、その背景も社会に及ぼした影響も大きく異なっていた。
 2004年12月17日。
 福島県立大野病院・産婦人科の加藤克彦医師(40)は一人、出産時の癒着胎盤の手術で大量の出血と闘い、患者を救おうとしたが果たせず、母体死亡という結果を招いた。
 「一人」というのは当時、加藤医師が「一人医長」といって、産婦人科医不足のため一人でその病院と地域の産科医療に携わっていたからだ。
 衝撃が走ったのは1年以上が経った06年2月18日。
 加藤医師は業務上過失致死罪と、異状死を24時間内に所轄警察署へ届け出る義務を怠った医師法21条違反の疑いで逮捕される。
 医師が業務上過失致死で起訴されるなど異例ずくめの逮捕劇だったが、その極めつきがテレビ放映。おそらく警察から情報が流れたのだろう。手錠をかけられた加藤医師の姿が全国放映された。
 それは所轄の富岡警察署の功績となったようで、その後福島県警から表彰されているという。
 事件の初公判は、07年1月26日。
 「亡くなられた患者さんのご冥福を、心よりお祈りいたします」
 初公判終了後の記者会見。その最後に加藤医師は立ち上がり、神妙な面持ちでそう述べると深々と一礼した。
 しかし、自らの過失については否認を通した。そして、08年3月21日の13回目の公判で、検察側から禁固1年、罰金10万円の求刑を受けた。
 一方で、加藤医師の逮捕からほどなくして、全国の医師会は「逮捕は不当」との声明を発表。診療科を超えた医師たちによって『加藤先生を救う会』が次々と立ち上げられ、署名活動もスタートした。
 医療も裁判も専門家ではない記者にとって、この一連の動きは理解できなかった。
 人ひとりの命が失われていながら、過失を認めようとしない被告がいる。
 また、連行される姿がテレビ放映までされた事件だったことを考えると、量刑も軽いように感じる。
 加えて、医療界の歩を揃えたような「反対声明」もこれまでにはないものだった。
 何かが、置き去りにされている。なんのための逮捕だったのか。いったい誰のためのものなのか……。
 そんな疑問から取材ははじまった。まずは、4年前の事件当日を資料と証言をもとに再現してみたい。

分娩手術で直面したのは1万件のうち
2、3件の症例という「癒着胎盤」

 '04年12月14日。手術3日前。加藤医師は妊娠36週のAさんに手術の説明をした。その際前置胎盤の出血等の危険性や帝王切開手術となることにもふれていた。
 Aさんは29歳の経産婦で、1人目を帝王切開で出産していた。
 前置胎盤とは、通常なら子宮上部に付着する胎盤が子宮の出口付近に付着した状態。とくにAさんの場合は、子宮口を胎盤にふさがれて赤ちゃんが出ることができないため帝王切開するしかなかった。
 12月17日13時30分。手術当日。
 Aさんが手術室に入る。開腹後、子宮に直接超音波を当てて子宮と胎盤の癒着をチェック。癒着が怖いのは、子宮から胎盤が剥がれなくなるからだ。過去の帝王切開痕を持つAさんは癒着の危険度が高かったが、この検査で癒着を示す所見はなかった。
 14時26分。手術開始。
 同36分、出産。3000グラムで、36週にしては大きめの赤ちゃんだった。出血もここまで羊水を含めて2000mlで、異常は認められなかった。分娩室のなかに一瞬安堵の空気が流れたことが想像できる。
 ところが、続いて胎盤剥離に移ったときだった。
 胎盤はスムーズに剥離できず、医師の指を手刀のように使っての用手剥離で3分の2ほど剥離した。そのとき初めて、手では剥がれにくい癒着が確認された。
 のちの裁判で、検察側は帝王切開の既往があるAさんの場合、癒着胎盤は当然予想すべきであったと主張した。
 しかし、現場の医師たちの意見は真っ向から対立する。
 「癒着胎盤は1万件に2、3件。医師によっては一生遭遇しないほどの稀な症例。癒着は超音波やMRIで診断しますが、正診率は低く、実際に開腹してみて胎盤を剥がしてみなければ発見は難しい」
 6000件の分娩のうち1000件の帝王切開を手がけた、東京都立府中病院産婦人科部長の桑江千鶴子先生(56)でさえ、癒着のある前置胎盤はいまだ経験していない、と語る。
 手術室に戻る。ここにきて、加藤医師はクーパーを使用する。先端がゆるく湾曲した手術用ハサミだ。
 10分後。加藤医師は、クーパーと用手とで胎盤剥離を終えた。しかし、出血は止まらない。
 「産科の出血は特別」
 そして、多くの医師は、揃ってこう言う。
 「蛇口から水がジャージャー流れ出るようで、一瞬で血の海になるほどだ」
 昭和大学医学部教授の岡井崇先生(60)は、医師になって7年ほどしたとき前置胎盤を手がけた経験がある。
 「あの出血を見ると足が震え、手も動かなくなりますよ。僕なんて、今でも怖いと思います。同じ産婦人科医と2人で手術しました。よく救うことができたと不思議に思うほどです」
 当然、一人医長の加藤医師の場合は、手術室で相談する産科医はほかにいなかった。医療ミスが起きたとされる当日の手術室の様子が明らかになるにつれ、加藤医師と事件に対して抱いていた記者の先入観は、揺らいでいった。
 15時35分。血圧が低下し、出血量が羊水込みで7000mlのところで、子宮摘出を決断。16時30分。追加の輸血が届く。子宮摘出手術を開始。
 1時間後。子宮摘出。その直後だった。安定しているかに見えたAさんに心室細動(心停止)が起きる。
 すぐに心臓マッサージを施すなどしたが1時間半後、力尽きる。
 19時1分。加藤医師はAさんの死亡宣告をする。死亡原因は、癒着胎盤による出血性ショックと考えられている。
 手術室の前でも、また別の緊迫した時間が流れていた。
 午後3時前。出産後まもかく出てくるはずの母親の姿が現れない。気をもむ家族たちは看護師に尋ねようとするが、せわしなく出入りするばかり。ナースステーションに聞きにいっても目をそらすように散っていったー。
 というのが、遺族が裁判で陳述した当日の様子だ。
 19時過ぎに死亡したことを聞かされたにもかかわらず、家族が遺体と対面したのは、夜になった22時過ぎだった。
 Aさんを手術室に見送ってから9時間近くが過ぎていた。

「加藤医師に落度はない……」
だが、尊い命が犠牲になっている

 「彼に落度があったとは思えません。メスを握る医師にしてみれば、これは誰にでも起こりうるケース。懸命に治療に当たった医師が刑事罰を受けるようなことがあれば、すでに進んでいた産科の、いや日本の医療崩壊をなんとか食い止めようとしていた医師たちの心を折るようなものです」
 桑江先生は言った。それでなくても、もともと病気ではないといわれるお産を扱う産科の訴訟率は、内科や外科に比べて群を抜いて高い。患者にすれば、期待と結果の落差が大きいからだ。若い医師たちが産科勤務を敬遠するゆえんでもある。
 いわゆる大野病院ショックがこの産科離れを、医療崩壊を加速させた事実は誰より現場の医師たちが痛感している。岡井先生もその一人だ。
 「奈良のたらい回し事件もそうですし、リスクがあれば救急病院ですら見たがらない。個人の診療所でできる処置もこっち(大学病院)に回ってくる。医師はみんな、『大きい病院じゃないと不安だ』と言って、次々に分娩が休止されています」
 実際、今年1月以降全国で77病院が分娩休止、制限を予定している。すでに地方では難しい患者の受入れ拒否が相次ぎ、「病院ではなく、救急車の中で患者が亡くなっている」という複数の医師の証言もあった。
 桑江先生は、
 「もし、加藤先生が有罪に問われるようなことがあれば、私の病院の部下に同じようなリスクを背負わせるわけにはいきませんから、分娩を取りやめるか、安全が確保される患者数に制限することを考えています」
 たしかに、医療崩壊を早急に食い止めなければいけない状況は理解できる。だが、患者側とすれば、医療側の制度や法律の前にもっと大切なものがある。それは、患者と医師の信頼関係だ。
 東京大学医科学研究所の上昌広先生(39)は、Aさんの手術の間、家族らが何の説明もされず待たされていた事実に注目する。
 「病院側のクライシスマネジメント(危機管理)。これは一緒に学んでいくべき課題。加藤先生は手が離せなかったとはいえ、院長なり責任ある人が逐一状況の説明をすべきでした。迅速に情報を開示していれば、ご遺族の理解を得られたかもしれません」
 インフォームド・コンセント(説明と同意)という言葉が日本でも使われるようになって久しいが、昨今、頻発する医療訴訟も、これがないがしろにされているところに端を発しているように思われてならない。
 命を医師に預ける患者側にすれば、死亡者が出た手術の過程で、やっぱり医師からの説明がなかったという事実は、どれだけ加藤医師弁護の言葉を力説されたとしても、どうしても受け入れられない。
 そう思ってしまうのは記者だけだろうか。取材前に感じた疑問が、また脳裏に浮かぶ。
 いったい何のための、誰のための――。

「許されるなら、再び医師として
働きたい。地域医療を担いたい」

 5月16日、福島地方裁判所大野病院事件の最終弁論が行われるこの日、法廷開始の30分ほど前に、加藤医師が弁護士と2人、タクシーに乗って裁判所前に現れた。待ち構えていた報道陣が、いっせいにカメラを向ける。
 グレーに薄いストライプの入った地味なスーツ。白のワイシャツと濃い臙脂色のネクタイ。この日のためだろう、頭をきれいに刈り込んでいる。分厚い大きな鞄を待って、弁護士と一緒に裁判所に入っていった。廷内には、記者が座った傍聴席の前にAさんの遺族らの姿もあった。
 午前10時、開廷。
 最後に、加藤医師本人の意見陳述が行われた。
 用意したペーパーを手に、一礼して証言台へ。言葉を発する前、大きく深呼吸をし、一度両肩を上げ下げしてから語り始めた。
 「Aさんに対し、信頼して受診していただいたのに、お亡くなりになるという最悪の結果になって、本当に申し訳なく思います。初めて受診に来たときから、お見送りさせていただいたときまでのいろんな場面が今も頭に浮かび、離れません」
 静かに語る後ろ姿から、その生真面目さがうかがえる。主任弁護人の平岩敬一氏を通じて、本人から話を聞きたいと何度か依頼したが、
 「彼自身、人並み以上に口が重く、それに遺族のこともあるので、取材にはいっさい応じていません」
 加藤医師は96年に医師免許を取得後、公立岩瀬病院などを経て大野病院へ。この間、約1千200件の分娩を扱い、うち200件が帝王切開。
 '04年には前置胎盤の手術も無事に終えている。一貫してお産と地域医療にこだわったのは、父も産婦人科医だったことと無縁ではないだろう。
 医師としての技量については、報道資料などを読んだほかの医師から「出血量や処置の仕方を見ても、腕のいい産科医だと思います」との評価もあった。だからこその一人医長でもあったはずだ。40歳という年齢を考えても、寡黙にしてプロとして脂の乗ってきた中堅医師の素顔が浮かぶ。
 「年1回の学会くらいは出てもいいんじゃないかと言っているんですが、それも自粛しています。起訴されるまではAさんの月命日には必ずお墓参りもしていました」(平岩氏)
 逮捕後、加藤医師の身分は「休職中」である。事件の舞台となった大野病院では産科もまた休診状態となり、入院・通院含めて30人ほどの患者らは転院を余儀なくされた。
 記者は裁判の数日前、大野病院を訪ねていた。のどかな田舎町にある病床数150の中規模病院。ここで加藤医師は、平日は9時から2時までの外来を担当し、その後は手術や検査に加えて子宮筋腫など婦人科領域と、さらに婦人科がん患者の終末医療にも尽力していた。患者らへの取材でも、「早く加藤先生に戻ってきてほしい」という声を聞いていた。
 法廷では、加藤医師の意見陳述が続いていた。
 「あの状況で、もっとよい方法はなかったのかと考えますが、どうしても思い浮かばずにいます。ご家族にわかってもらいたいが、受け入れられないと思います」
 ずっとこの裁判の傍聴を続けてきた医療雑誌『ロハス・メディカル』発行人の川口恭氏(38)によれば、今回の逮捕劇の一つの原因には遺族をどうやって救済するか、の問題があるという。
 入手した県立大野病院医療事故調査委員会の報告書には、『用手的に剥離困難の時点で癒着胎盤と考えなければならない。クーパーを使用する前に剥離を止め子宮摘出に直ちに進むべきであったと考える』
 と、また一方で、『県と病院側はミスを認めて遺族に謝罪』との新聞報道もあった。当時、警察を逮捕に踏み切らせたのが、この報告書だったとされる。
 しかし、その報告書を鵜呑みにできないと川口氏は見ている。医賠責という保険に医者は入っているが、これは医療側に過失がないと支払われないシステムだ。
 「つまり、ミスを報告しないと保険からはお金が出ない。大野病院は県立病院なので、たとえ税金を使って補償するにしても正当な理由が必要。遺族にお金を支払うには、過失がないと困るのです」
 だからこそ、裁判では一転して被告側はミスを否定、検察側もこの報告書を証拠請求していない。
 「今後はミスがなくても補償される『無過失補償制度』の拡充が急がれます」
 加藤医師の意見陳述は、まもなく終わろうとしていた。
 「真摯な気持ちと態度で医療、産婦人科医療の現場におりました。再び医師として働かせていただけるのなら、また地域医療の一端を担いたいです」
 再び、赤ちゃんを取り上げる産婦人科に、それも以前同様、地域医療の現場に戻りたい、と陳述は締めくくられた。
 実は、平岩弁護士からこんな話を聞いていた。「彼は逮捕から1週間後に子供が生まれました。それは検察も知っていたでしょう。 本当なら自分で取り上げる予定でしたが、それもかないませんでした」
 接見の場で我が子誕生の報を受けたとき、加藤医師は何を思ったのだろうか。おそらく寡黙な彼の目から語られることはないだろう。だが、陳述の最後で述べられた医療現場復帰への意思表示は、彼の医師としての心が折れてはいないことの証しと信じたい。

この裁判に何の意味があるのか。
“患者”に何か残ったのか――。

 「この裁判に、いったい何の意味があるのか。加藤先生を罰することで、何か得られるのでしょうか」
 大野病院事件をきっかけに内科医でありながら『周産期医療の崩壊をくい止める会』を発足させた上先生のこの思いは、関係者だけでなく、記者をはじめ事件を知った人に共通の憤りである。
 「加藤先生を罰して遺族の気持ちが晴れるのでしょうか。残念ながら、お母さんを亡くすというつらい結果でしたが父親とお子さんには今後の人生と養育や補償の問題もあります。裁判が最高裁まで持ち込まれる可能性を考えると、遺族の方もなかなか前に進めないのではないでしょうか」
 現在、裁判中のため遺族への医賠責による補償はストップしたままである。つまり、最高裁まで長引けば数年間は、何の補償も始まらないことになる。かけがえのない家族の命を失ったうえに背負わされた苦悩の果てはいまだ見えない。さらに、加藤医師が有罪になった場合、今まで語られたとおり、治療が難しいと思われる患者の診療拒否や、たらい回しといったケースが増えるのは避けられないだろう。
 そして、天職を奪われた医師本人の職場復帰はいつ決着がつくのか。そう考えると、いったいこの裁判で何か解決するのだろうかという無力感に襲われ、そもそもこの逮捕劇とは何だったのだろうかという思いにまた立ち戻ってしまう。そんなとき思い出すのが、岡井先生のこの言葉だ。
 「これがきっかけになって産科の医療現場の実情が知られたり、議論が活発になるのは唯一の救いかもしれません」
 怒気を含んだ言葉には、いささかの皮肉も込められていたかもしれない。たしかに、表彰されたのが加藤医師を逮捕した警察だけというのも、なんともやりきれない。
 しかし、残された者たちはまた前に進んでいかなければならない。こんな事件が二度と起きないために。
 これは、事件当事者だけの話ではない。いつでも患者になりうる私たち一人ひとりの問題でもあるのだ。
 急ぐべきは、たとえば先の無過失補償制度の拡充、そして、患者側と病院側の信頼関係づくり。
 5月16日の最終弁論の後、その患者側であり、遺族であるAさんのご主人に話を聞こうとした――。
 「すみません。何も答えたくないです」
 なぜ妻が、我が幼な子の母親が死ななければならなかったのか、その意味をはかりきれずに苦しむ姿があった。この遺族の苦しみはあとどれだけ続くのか。
 8月20日、日本の医療の行く末を占う判決が出る。

文/堀ノ内雅一
取材/小野建史
撮影/高野 博
写真提供/共同通信
 

(女性自身 2008./6/24、p76-82)


産婦人科の休診・診療縮小が止まらない!

2008年06月09日 | 飯田下伊那地域の産科問題

我が国で分娩を取り扱う施設の46%は産婦人科医が1人しか勤務してませんし、分娩取り扱い施設の84%が勤務する産婦人科医数3人以下です。しかも、全国の産婦人科医の4分の1は60歳以上と、産婦人科医の高齢化も急速に進んでいます。

1人勤務の分娩取り扱い施設のほとんどは、今後数年以内に分娩取り扱いが中止されるでしょうし、現在60歳以上の産婦人科医のほとんど全員が10年後には現役を引退していることも間違いないと思います。

今も多くの産科施設が休診ないし規模縮小に追い込まれていて、事態はどんどん悪化し続けてます。このままでは10年後には妊娠しても分娩を受け入れてくれる産科施設が日本中どこにもみつからないような最悪の事態も予想されます。

国、自治体、医療界、医学教育界、法曹界、市民が、挙げて、この問題の解決に真剣に取り組んでゆく必要があると思います。

****** 読売新聞、長野、2008年6月5日

集約化でも医師足りず

(略)

 毎年約1600人の赤ちゃんが産まれる上伊那地域では4月から、伊那中央病院が拠点病院となり、地域内のお産のほとんどを引き受けることになった。信州大医学部から産科医が新たに1人派遣され、同病院の常勤医は5人になった。一方の昭和伊南総合病院では、非常勤の産科医が週3回半日だけ、外来診療を行う。

 伊那中央病院産婦人科の山崎悠紀医師(30)の当直勤務は、3日に1度から、4日に1度に減った。当直の日は、午前8時30分の勤務開始。分娩が重なれば、翌朝までほぼ徹夜で勤務し、そのまま午後5時30分まで病棟勤務を行うことが多い。「正常分娩でも、神経は使う。少しでも家でくつろぐ時間が増えたのはありがたい」という。

 その一方で、同病院での分娩は、毎月70~80件から90~100件に増えた。「3、4件のお産が重なって、てんやわんやになることが増えた。結局、負担は多くなっているかも」と、山崎医師は話す。

 県内で最初に、産科の集約化に踏み切ったのは、飯田下伊那地域だ。飯田市立病院(飯田市)が06年度から拠点病院となり、常勤医は3人から4人になった。07年度には常勤医がもう1人増えた。

 ところが、今年4月、常勤医のうち、後期研修中の若手医師が外科に移り、女性医師が家庭の都合で非常勤を選んだ。拠点病院の常勤医が2人減るという事態に、信州大医学部は急きょ、医師1人の派遣を決めたが、それでも差し引き1人の減。

 今、飯田市立病院は1か月の分娩を70件程度に絞り、それを超えた場合は、里帰り出産や地域外に住む妊婦を断ることにしている。8月については、10件以上断ったという。

 集約化により、地域ごとに、分娩を扱う施設が確保され、“お産難民”が生じるという最悪の事態は回避できている。ただ、集約化してもカバーしきれないほど、産科医不足は深刻になっている。

(以下略)

(読売新聞、長野、2008年6月5日)


勤務医の待遇改善急務

2008年06月06日 | 地域周産期医療

「鉄は熱いうちに打て」といいます。若い医師たちにとっては、勤務病院の待遇改善やQOL(生活の質)ももちろん大切な要素ですが、多くの症例を経験し、基本的な技術や考え方をしっかりと修得できる研修環境が必要です。多くの仲間と一緒に切磋琢磨して、腕を磨いていけるような研修環境が理想的です。

多くの若い医師が所属するような研修施設では、どこに行っても通用する標準的な医療に徹するべきだと考えています。最初の何もわからない時に、特定の年輩医師の個人的経験に依存した我流の医療にどっぷりつかって特殊な考え方に洗脳されてしまうのも問題だと思います。若いうちは、一つの病院の特殊なやり方だけに染まらず、いくつかの病院で多くの先輩医師のろいろな手技や考え方を学んで、自分を鍛えていく必要があると思います。その意味では、複数の医局出身の先輩医師が所属して、いろいろな手技や考え方が学べるような研修環境も悪くはないと思います。

大学と地域基幹病院とが全面的に協力しあって、あせらず長い目で、若い医師たちをじっくりと育てていく必要があると思います。

****** 読売新聞、長野、2008年6月6日

勤務医の待遇改善急務

(略)

 信州大学医学部の産科婦人科医局に所属する医師は50人前後。県内17病院に産科医を派遣している。塩沢丹里教授(49)が、産科医不足を実感するようになったのは、ここ数年だという。

 女性医師が増え始め、01~06年度の入局者計21人のうち17人は女性だった。入局後数年たつと、出産・子育てに入ることが多く、ちょうど今、多くの女性医師が職場を離れ、一時的に産科医が少なくなっているという。塩沢教授は「女性医師が急増し、これまで経験したことのない事態が起きている」と話す。

 塩沢教授は数年たてば、子育てが一段落した女性医師が職場に帰ってくると期待する。そのためには、「女性医師が望むライフスタイルを尊重することが必要」と考える。希望する時期に、本人の望む形での復帰を受け入れるつもりだ。

 信大の産科婦人科医局は、地域ごとに定めた拠点病院に医師を重点的に配置することで、当面の産科医不足を乗り切っていく方針だ。「妊婦の安全を確保しながら、医師が燃え尽きないようにするためには、今はこれしかない」と、塩沢教授は理解を求めている。

(以下略)

(読売新聞、2008年6月6日)


産婦人科医を追い込む国が少子化をますます加速させる!

2008年06月03日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

我が国では病院の勤務医の多くは大学医局から派遣される仕組みが長年の慣行として続いてきましたが、最近は大学病院にも医師不足の荒波が押し寄せはじめて、地域の中小病院への医師派遣がだんだん難しくなりつつあります。そのため産科閉鎖が相次ぎ、多くの地域で分娩場所の確保が難しくなっています。

周産期医療は、産科医、新生児科医、麻酔科医、助産師などのチーム医療が基本となっていますから、必要な人員の確保ができないことには全く話になりません。今、産科医は総数が不足して日本中奪い合いになっているので、待遇改善は産科医確保のための一つの必要条件ではありますが、それだけでは産科医の確保はきわめて困難な状況にあります。

最近では若手医師が病院を選ぶ際の自由度が高まり、「都市にある魅力ある病院」「自分のQOL(生活の質)を守れる科」などに若手医師が集中する傾向が強まっています。今、産科になかなか人が集まらないのは、人が集まらないような現場の状況があるからです。労働環境を従来のままに放置していたんでは、今後も産科医不足は永久に解消されません。

まずは、国策として、若手医師達が安心してこの分野に入門できるように、労働環境を劇的に改善させる必要があると思われます。

****** 週刊朝日2008/5/30、p132-133

産婦人科医を追い込む国が少子化をますます加速させる

産婦人科医 堀口貞夫

 ある調査によれば、お産は、全体のうち65%は出産が終わるまで何の異常もなく済みます。逆に言えば、35%は妊娠の初期から出産までの段階で母子に何らかのリスクが生じる。いつ起こるかわからないリスクと向き合う現場の医師は、昼夜関係なく休みを返上することも多いのです。

 皮肉なことに、医療の進歩や高度化も医師の負担を増やしました。最近は、超音波検査で胎児の先天性の心臓疾患を診断することができますが、日本のどこでもそうした専門的な技術を提供できるようにするには、なかなか大変です。

 現実には、大半の病院や診療所では人手不足に悩んでいます。日本産科婦人科学会の05年の調査では、分娩施設の約84%で産婦人科医が3人以下しかいないという結果が出ています。3人だと、単純計算で週に56時間、1人での勤務を強いられることになります。

 日本の産婦人科医の数は、96年から06年までの10年間に約12%減りました。一方、出生数は10年間で9%減。出生の減少よりも産婦人科医の減少のほうが進んでいるのです。

 そうした状況の中で起きたのが、04年に起きた福島県立大野病院での事件でした。この事件では帝王切開を受けた妊婦が亡くなり、06年に産婦人科医が業務上過失致死などで逮捕された。産婦人科医に限らず、特に外科系の医師にとっては、難しい症例の手術の結果を問われるという意味で「ひとごとではない」衝撃でした。この痛ましい事件を機に、医師の産科離れが加速したのは間違いないでしょう。

 いつリスクが発生するかわからない産科診療の安全を担保するには、中核病院の充実が不可欠です。しかし産科医の減少によって、中核病院で24時間態勢が組めなくなる事態が続出しています。厚労省の通達を遵守して、現場の人員問題に対応するには、産婦人科医、助産師、看護師の力を結集する以外ない。その人たちの技術を高める責任は、この事態をもたらした行政にあるでしょう。

 産科では異常がない限り自費診療なので直接は無関係ですが、国は4月から、5分以上診療すれば加算料金を請求できる「5分ルール」を定めました。「3分診療」と言われる現状を変えるためでしょうが、産婦人科では患者さんとの会話が大切で、そもそも5分間では不十分。せめて15分は必要です。産婦人科医にとってはナンセンスなルールで、国が現場を理解していない表れだと思います。

 このまま産婦人科医の減少が進めば、子どもを産むことも大変になります。少子化が進むにもかかわらず、産婦人科医を過酷な環境に追いやっている国の責任は大きいと思います。

(週刊朝日2008/5/30、p132-133)


地域周産期医療について(自ブログ内リンク集)

2008年06月01日 | 地域周産期医療

自ブログ内リンク集

05/12/25 周産期医療の危機的状況
05/12/26 分娩に伴うリスクの説明責任
05/12/27 分娩における安全性の確保
05/12/30 周産期医療体制の崩壊を阻止するために
05/12/31 持続可能な周産期医療システムの構築

06/01/01 『自然分娩』と『医療で管理された分娩』
06/01/02 もしも昔の医療水準に戻ってしまったら...
06/01/12 分娩件数、手術件数の急増
06/01/17 ハイリスク分娩に適切に対応できる病院の体制とは?
06/01/25 当医療圏の産科問題に対する取り組み
06/01/28 地域周産期医療体制の今後の流れは?

06/02/12 産婦人科医の急減&高齢化について
06/02/15 将来の産婦人科医療を支える新人医師の育成
06/02/21 今後の周産期医療の方向性について
06/02/23 医師の集約化、地域連携、および次世代の育成

06/03/19 シンポジウムのお知らせ
06/03/20 本年度の医学部産婦人科への新規入局状況
06/03/23 産科問題について地域住民との意見交換
06/03/23 産科医不足問題、長野でシンポ
06/03/24 今後の地域医療(福島県)
06/03/26 産科 厳しい現実に尻込み
06/03/28 長野県の分娩施設 5年間で20施設減少
06/03/30 日本の周産期死亡率:過去、現在、未来

06/04/01 激務と出産・育児 悩む女性医師 
06/04/02 若手医師、地方離れ 新研修制度で流出 
06/04/05 産科医不足問題(島根・隠岐諸島、神奈川県、長野県)
06/04/07 産科医集約(北海道・砂川市立病院の例)
06/04/10 産婦人科継続を求める署名活動
06/04/14 読売新聞: 多い訴訟…減る産科医と医院
06/04/15 読売新聞: 深刻な産科医不足 集約化加速
       医師不足 過酷な勤務実態背景
              閉院危機から存続へ 上田市産院
       国は処遇改善を(信州大・小西郁生教授)
              【記者から】「望むお産」思い切実 
06/04/16 県立こども病院の一般診療化 県医師会会長が反対

06/04/18 読売新聞: 医師不足 負の連鎖
06/04/19 信濃毎日新聞:安曇野で母親グループ意見交換会
06/04/20 信濃毎日新聞:産科医不足 お母さんの声を、もっと
06/04/21 病院の広報:当院産科の状況
06/04/23 産婦人科医療を安定的に供給する体制の提案
06/04/25 産婦人科常勤医、2年で8%(412人)減 
              緊急提言:ハイリスク分娩は3名以上の常勤医を!
06/04/26 衆議院厚生労働委員会 奥田美加先生発言
06/04/27 拡大産婦人科医療提供体制検討委員会配付資料
06/04/29 東京新聞:地方中核病院の勤務医不足
06/04/30 地域周産期医療の現場で、我々が今なすべきこと
       は何だろうか?
              京都新聞社説:医師不足 地域医療が壊れそうだ
       湘南新聞:産婦人科医不足(神奈川県の場合)

05/01 「立ち去り型サボタージュ」別名「逃散(ちょうさん)」
05/03 米紙ワシントン・ポストで、日本の産科医減少を解説
     隠岐病院産婦人科の後任常勤医師問題
05/04 読売新聞:[解説]産科医減少 対策は
05/05 河北新報:東北の産婦人科医療の実態
05/06 朝日新聞:地域の病院が分娩から撤退
05/07 河北新報:過酷な現場産科、やまぬ悲鳴
05/10 産婦人科医不足で相次ぐ提言
         西日本新聞:地域が安心できる医療を 医師「偏在」
05/11 隠岐島内での出産再開不透明に
    医療施設の集約化が不可避
    出産施設の集約化(三重県の事例)
05/12 岩手日報:産婦人科医不足、安心して産める体制を
05/14 朝日新聞:全国138病院が分娩休止 出産の場急減
05/16 隠岐病院、11月から複数医師赴任の見通し
05/17 岩手日報:小児医療、産科と併せ危機打開を
05/18 朝日新聞:どこで産むの?
         朝日新聞:自治体 危機感薄く
         朝日新聞:近所の医院も分娩受けず
05/19 朝日新聞:産婦人科選んだ研修医、3年で半減
         NHKの取材の様子について
05/21 朝日新聞社説:産科の減少 産める場所はどこに
05/23 共同通信:若手医師、半数が大学離れ
05/24 必修初期研修修了後の進路の動向
    神戸新聞:正平調(相次ぐ分娩取り扱い中止)
05/25 日本産科婦人科学会が厚生労働大臣と意見交換
05/28 公的病院での分娩再開を求める運動について:
         加西病院:産婦人科医、来月からゼロに
05/29 新潟日報:守れるか「地元でお産」
05/30 日本医学会会長:『妊婦さんは喫煙しないでください』
    上田市産院・廣瀬副院長 産科の集約化を非難
05/31 南信州新聞社:「院内助産院」勧める意見も
    朝日新聞:お産が危ない、加賀市民病院も休診へ

06/01 毎日新聞 山梨:「出産診療取りやめ」次々
    神戸新聞:県内の産科、10年で3割減
    北海道新聞:室蘭・日鋼病院から産婦人科医引き揚げ
06/03 朝日新聞 神奈川: 助産師の活躍期待
06/06 妊婦死亡、医師を書類送検 大和高田市立病院
06/08 毎日:産婦人科医不足をどうする 分娩施設の集約化を
06/11 青森県内30市町村で産科医不在
06/12 産科医がいなくなる!
06/13 読売新聞: “お産難民”深刻に
06/14 現実にらみ 産院存続運動
 <産科医全国調査>04年末比で施設4割、医師数2割減少
06/15 毎日新聞社説:医師不足 地域医療を崩壊させるな
06/16 読売新聞:大病院の分娩室を“開放”
06/17 読売新聞:“マイ助産師”見つけよう
  出産扱う産科は65% 3000施設、常勤医は8000人 学会調査
06/18 毎日:産婦人科医不足をどうする 有効な応急対策ない
    MRICインタビュー:もはや医療崩壊は止まらないかもしれない
   朝日新聞:産科医、厳しい労働くっきり 厚労省研究班が調査
06/20 医学部入試の「地域枠」拡大
06/21 婦人公論:産科が病院から消える日
06/24 産科医不足、地方で不足深刻
06/25 人口35万人の中核市・いわきの医療体制
         お産の場どう確保
06/26 北海道の産科医不足の状況
06/27 神奈川県の産科医不足の状況
06/28 女性産科医の仕事を支援(学会が委員会を設置)
06/29 産科「利便性より安全性」、拠点病院への集約化を提言

07/01 絶滅危惧種: 産科医
07/02 病院の産科における助産師の役割
07/03 九州・沖縄地区の産婦人科希望医師が激減
07/05 新臨床研修制度のもとでの今後の地域医療
07/07 兵庫県の産科医不足の状況
07/10 地方国立大で「地域枠」を創設・拡大する動き
07/11 後期研修プログラム 現地説明会
07/17 不足深刻な小児・産科医の数、22道府県「把握せず」
07/27 医師不足、新研修制度のせいではない (読売新聞)
07/30 医学部の「地域枠」急増 (読売新聞)
07/31 秋田県の産科医不足の状況

08/02 医師はどこへ/市町の利害を超え新モデル探れ
08/04 助産師不足? 適正配置に課題 (神戸新聞)
小児科・産科など医師不足解消へ 信大 養成事業に力 (信毎)
08/05 今後の地域医療の目指すべき方向性は?
08/06 岩手県の産科医不足の状況
08/07 群馬県の産科医不足の状況
08/08 産科医不在、報酬5500万円、医師招く 三重・尾鷲市
08/09
産科医不足の三重県南部 「医師集約、不可欠」
08/10 総数増加も地域・科で格差拡大(毎日新聞)
         中国地方の産科医不足の状況
08/15 東北大病院「総合産科医」養成ヘ 緊急時の対応習得
08/16 Blogのご紹介、Dr.rijinのギモン
08/17 辞めないで!女性医師(東京新聞)
08/18  お産難民、産科セミオープンシステム
08/19 産科施設、適齢期女性が多い大都市も不足
08/20 医学部定員を一時増員(読売新聞)
08/22 第4回産科問題懇談会の協議内容について
08/23 産婦人科医を集約 「大病院に偏在」拍車 三重大
08/31
お産難民 助産師が足りない 人材、大病院に集中

09/03 尾鷲市で産婦人科医消滅の危機
09/04 飯伊地区の産科分業態勢 順調に進展
09/11 産婦人科医と小児科医の集約化の問題点
09/14 南和歌山医療センター:「院内助産所」を開設、
         年内には妊婦受け入れへ(毎日新聞)
09/24 産科医不足の現状浮き彫り 24日深夜・日テレ系
         NNNドキュメント (読売新聞)
09/26 臨床研修医:人気ない大学病院 小児科、産婦人科
         志望は減らず--厚労省意識調査 (毎日新聞)
09/27 小児科・産科の集約化に伴う一つの問題点

10/03 検診・出産、施設で分業 筑波大・吉川裕之教授に聞く
10/04 上田でお産の課題話し合う (南信州新聞)
10/05 「大阪のお産を考える-迫り来る周産期医療の崩壊」
         公開シンポジウム(毎日新聞)
10/07 テレビ番組の紹介 (ここで産みたい~産科医不足・
         試される現場から~)
10/15 尾鷲総合病院、産婦人科医を2人確保
10/30 産科医不在地域 妊婦の宿泊・交通費に補助金(産経)
10/31 分娩施設における医療水準の保持・向上のための緊急提言 (日本産科婦人科学会)

11/01 産科医の現場離れ深刻
11/02 産科医不足問題 松川町で母親の会 医師ら提言、勉強会
11/03 産科・小児科医師不足の対策探る 県検討会初会合(信毎)
11/04  女性医師にも働きやすい職場環境