ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

産科・小児科の重点配置を提言 (長野県産科・小児科医療対策検討会)

2007年03月30日 | 地域周産期医療

今回の検討会の提言は、県内各地域の医療体制の現状をほぼ追認した形となっていますが、県内の産科や小児科の医師数は今後もしばらくは減少傾向が続き、状況はさらに厳しくなってゆくものと予想されます。

今回、連携強化病院に選定された病院であっても、今後の成り行き次第では、医師不足により産科や小児科が休診に追い込まれる可能性は十分にあり得ます。

それぞれの地域で、医療水準を維持するために、地域内の限られた医療資源を最大限に活用し、地域で一体となって対応してゆく必要があると考えられます。

医師不足に対する即効策は見当たらず、長期的展望のもとで、医学生の教育、研修医の教育、専門医の育成など、地道に、気長に、正攻法で取り組んでゆくしかないと思います。

****** 信濃毎日新聞、2007年3月29日

産婦人科・小児科医 9-10病院に重点配置

県の検討会 医師不足で提言

 産科・小児科の医師不足対策を検討してきた県の産科・小児科医療対策検討会(会長・小西郁生信大教授)は28日、県内9-10の病院を「連携強化病院」とし、重点的に医師を配置する-との提言を、県庁で開いた県地域医療対策協議会で報告した。医師を集約し、各地の産婦人科、小児科の医療水準を維持することを目的にしている。

 提言は、連携強化病院以外の病院が独自に医師確保を図ることを妨げないとしたが、提言に沿って医師の集約化を進めると、他病院による医師確保はさらに困難になるとみられる。同協議会でも委員から「県民の理解をどう得ていくかが課題だ」との意見が相次いだ

 提言によると、連携強化病院はある程度の医師数を確保。地域の他の病院や診療所と協力し、24時間体制で入院を必要とする2次医療や救急搬送に対応する。

 10広域圏ごとに、長野赤十字(長野市)や飯田市立(飯田市)など、産婦人科9病院、小児科10病院を指定。産婦人科は上小、大北、木曽、小児科は大北、木曽の各広域圏では選定できず、隣接医療圏と協力して医療体制を構築していくとした。長野市民(長野市)、波田総合(東筑摩郡波田町)など産婦人科25病院、小児科37病院を「連携病院」とし、連携強化病院と連携して地域医療体制を構築する。

 県立こども(安曇野市)と信大医学部付属(松本市)は「中核病院」とし、連携強化病院の機能に加え、高度な第3次救急医療や人材育成の臨床研修などを担う。

 提言は、医師の集約化、重点化により、地域によっては受診する医療施設が「限定されてしまう可能性もある」と説明。「将来の大規模な医療崩壊を防ぐための緊急避難的な措置だ」とし、県民の理解を求めた。県側は、今後、10広域圏ごとに検討会を設け、地域の実情に即した対応策を検討する-と説明した。

 産科・小児科医療対策検討会は県が昨年11月に設置。産科、小児科の2分科会での検討のほか、2回の全体会を開いて提言をまとめた。

(以下略)

(信濃毎日新聞、2007年3月29日)


医療資源の有効活用に地域一体で対応を

2007年03月28日 | 飯田下伊那地域の産科問題

今、地域の産婦人科が次々と閉鎖に追い込まれています。朝日新聞の全国調査では、最近1年間だけで105施設が分娩取り扱いを中止したとのことです。

このまま放置すれば、さらに多くの産婦人科が閉鎖に追い込まれていくことが予想されます。

この全国規模のなだれ現象的な産科医療崩壊に対して、一つの医療機関の努力だけで対応することは、到底、不可能です。

地域の産科医療を絶滅の危機から守るためには、地域住民、行政、地域の医療機関などが一体となって、地域の限られた医療資源を有効に活用して、一致団結して対応していく必要があります。

****** 医療タイムス、長野、2007年3月26日

医療資源の有効活用に地域一体で対応を

~国の産婦人科検討委で信大・金井講師

 信大医学部産科婦人科の金井誠講師は、21日に東京都内で開いた拡大産婦人科医療提供体制検討委員会で本県の集約化の状況について報告した。相次ぐ産婦人科閉鎖によるお産の危機を医療機関や行政が協力して乗り切った飯田下伊那地区の事例を紹介し、「限られた医療資源を有効に活用するために医療機関と行政、住民が一体となって対応する必要がある」と指摘した。

 本県の産婦人科医はこの6年間で30人近く減少し、4分の1は分娩を取り扱っていない。県内の病院での出産は2004年の68%から05年に73%に増え、高次病院が53%を占めており、多くの施設が分娩を中止することで自然淘汰的に集約化が進んでいる状況だ。

 年間1800件のお産を6施設で取り扱っていた南部の飯田下伊那地区では、05年1施設が取り扱いを中止し、2施設が翌年に中止の意向であることが明らかとなり、800件以上の分娩が宙に浮く医療崩壊の危機に瀕していた。このため、飯田市長や広域連合、医師会などで構成する「産科問題懇談会」を設置。初診から34週までの再診を地域の医療機関、34週から分娩までを地域の2次医療機関である飯田市立病院が担う態勢を整えた。飯田市立病院には広域連合が5億円を支援し、医師と助産師を増員した。

 その結果、月40件代だった飯田市立病院での分娩は06年、98件に急増したものの、外来は逆に1400件から1100件に減少。正常分娩は増えたが帝王切開や多胎分娩はそれほど増えなかったことから、医師の過重労働感はむしろ減少したという。集約化に対する住民の評価について実施直後と半年後の2回尋ねると、「よくできた」18%に対し、「やむを得ない」62%だったが、制度が定着するにつれ満足度が高くなった。医師の集約化には79%が肯定したが、妊産婦の医療機関の振り分けは61%に下がり、「集約化は必要だが、受診制限は反対」という意見が強かった。一方、当直明けの医師が翌日休みがないということについて知らない住民が半数あったことから、金井氏は「こういった面を周知することが必要だ」と強調した。

(以下略)

(医療タイムス、長野、2007年3月26日)


産婦人科の後期臨床研修

2007年03月25日 | 飯田下伊那地域の産科問題

2年間の初期臨床研修で、内科、外科、小児科、産婦人科などを回った研修医達が、来週から、後期研修医として、専門診療科の修業を開始することになります。

現在の研修システムですと、3年目からようやく本当の医者の仕事が始まります。これまでの各科のローテーションでは、お客様扱いのこともあったと思います。しかし、来週からは、五年後、十年後の目標を持ちながら、今は何をしなければならないか?を意識して、大きな目標に向かって頑張っていく必要があります。

3年目から、どこの病院で、何科の専門研修を受けるのか?は、研修医自身の自由選択によって決まります。

今、現場で働いている医師達が、疲れ果てボロボロになって集団で辞めていくような職場環境であれば、最初は産婦人科を志していた医学生、研修医でも、最終的に産婦人科を選ぶのを尻込みしてしまうのは当然のことです。初期研修の開始時には産婦人科志望を考えていても、現場の勤務の実態を見て、2年間の初期研修の間に志望を変更してしまう者が少なくありません。

将来の産婦人科医師を増やすためには、今、現場で働く医師達の待遇・職場環境の改善が急務です。

当科でも、この春、産婦人科後期研修を開始する若手医師が、充実した産婦人科専門研修を続けられるように、研修環境、職場環境を十分に整備していきたいと考えています。また、医学生(5年生、6年生)、初期研修医達の教育も、しっかりやっていきたいと思います。


産科に関する公式の診療ガイドラインの作成

2007年03月24日 | 出産・育児

『産科に関する公式の診療ガイドライン』が、これから1年間をかけてまとめられる予定とのことです。

婦人科腫瘍の診療に関しては、従来より、各疾患に関する取り扱い規約がありましたし、最近では、卵巣癌や子宮体癌の診療ガイドラインも刊行されました。どの患者さんに対しても、エビデンスのある標準治療を実施するというのが大原則になっています。ちゃんとした病院であれば、標準治療からはずれた病院独自の治療を実施するなんてことは、ほとんどあり得ないと思います。

しかしながら、産科に関しては、それぞれの分娩取り扱い施設にそれぞれの独特の流儀が存在し、中には、かなり古い前時代的な医療を実施している施設も存在します。現時点における標準治療は何なのか?は、誰にとっても非常に分かりずらいというのが現状です。

日本のすべての分娩取り扱い施設が必ず準拠すべき『公式の診療ガイドライン』を早急に作成し、定期的に改訂版を刊行して常に進化させて、現時点における産科の標準治療は何であるのか?を、今後はっきりと示していく必要があると思います。

****** 朝日新聞、2007年3月21日

お産ガイドライン作成へ 産婦人科学会 訴訟対策も視野

 日本産科婦人科学会は、「お産」に関する診療のガイドラインを08年までに作ることを決めた。標準的な治療法の普及が目的だが、お産をめぐる医療事故が相次ぐ中で「訴訟対策」もにらんだ内容とする。開業医が中心の日本産婦人科医会と共同で、現場の意見も聞きながら約1年かけてまとめる。

 21日に開かれる同学会の医療提供体制検討委員会で発表する。原案は同学会と産婦人科医会の会員計24人からなる委員会が作成中。「妊娠初期に必要な検査」「帝王切開経験者の2度目の出産法」など、選択肢が複数あるような64項目について、Q&A方式で解説しつつ推奨度を示す。

 07年度中に原案を学会のホームページに掲載し、3~6カ月間の試行後、08年に正式版を発行する予定だ。

(以下略)

(朝日新聞、2007年3月21日)


女性医師の継続的就労支援

2007年03月22日 | 地域周産期医療

三十代半ば以下の産婦人科医師は女性が過半数を超えていて、女性医師は、現在の産科医療を支える大きな力になっています。

今回の調査で、経験年数が十年目頃になると、女性医師の約半数、男性医師の約20%が分娩取扱い現場から離脱しており、特に、子どものいる女性医師にその傾向が強く現れていることが判明しました。

新しく産婦人科医師になるのは女性医師の方が多いという傾向は今後も続くと考えられ、女性医師が第一線の産婦人科医療現場で継続して就労できる環境を整備しなければ、今後、産婦人科診療に必要な医師数を確保することは不可能です。

院内保育所の整備、さまざまな勤務態勢を柔軟に提供すること(変則勤務、交代性勤務、ワークシェアリング、パートタイム勤務)など、今できることをただちに実施していく必要があります。

また、長期間休業、学会出張、突発的な我が子の病気への対応に至るまで、必要な時にお互いが休めるためにも、一施設あたりの医師数確保は絶対に必要なことです。

医学生や研修医たちは、現場の職場の状況を見て、将来の専門科を決めています。現在、現場の第一線で働いている医師達が耐えられずにどんどん辞めているような職場に若者達が入って来るはずがありません。自分よりも少し上の先輩達が職場で楽しそうに生き生きと輝いて働いていない限り、新人医師は絶対に参入して来ないと思います。

現在の過酷な職場環境を、女性医師が働きやすい職場環境に変えれば、当然、男性医師にとっても働きやすい職場環境に変わると思います。誰にとっても働きやすい職場環境に変えていく必要があります。

****** 毎日新聞、2007年3月19日

女性産科医:出産に携わるのは11年目で45.6% 

 日本産科婦人科学会(日産婦)は19日、女性産婦人科医の勤務実態に関する初の調査結果の概要を発表した。医師になって9~13年目の女性医師のうち出産に携わっているのは5割前後で、同じ経験年数の男性(約8割)を大幅に下回った。同学会は「出産現場では、当直や緊急呼び出しなど厳しい勤務になる。医師自身の出産・育児の時期に、現場から離れる女性医師が多い実態が明らかになった」と分析している。日産婦によると、30代半ば以下の産婦人科医は女性が半数を超える。

 日産婦は、産婦人科医不足対策を検討するため、昨年12月~今年2月、全国の大学医学部を対象に卒業生の勤務状況を聞くアンケートを実施、87大学から回答があった。

 その結果、女性産婦人科医が出産に携わっている割合は、医師になって11年目が45.6%で最低になるなど、医師経験10年前後で大きく落ち込んだ。また、同時期に全国835病院を対象に実施した調査では、病院内保育所がある施設は50.4%、病気の子どもを預かる保育所は16.8%に、それぞれとどまった。

(以下略)

(毎日新聞、2007年3月19日)


日本の妊産婦死亡について

2007年03月21日 | 地域周産期医療

妊産婦死亡の世界平均は、分娩10万件当たり約400人(分娩250件で1人の割合)です。

それに対して、現在の日本の場合、妊産婦死亡は分娩10万件当たり4~7人程度となって、多くの人が分娩は安全なのが当然と考えるようになりました。

しかし、実際の医療現場では、日本においても、分娩時に母体が生命の危険に陥った妊産婦は、実際の死亡者数の70倍以上(分娩250件に1人の割合)に上っていることが、今回の全国調査で判明しました。

すなわち、日本においても、今後、このまま産科医療崩壊が進行し、多くの妊産婦達が産科医療のサポートを受けられなくなってしまうと、妊産婦死亡が世界平均並み(現在の妊産婦死亡の70倍以上!)まで増えてしまう可能性も十分にあり得ます。

現在、日本全国で進行している産科医療の崩壊現象に何としてでも歯止めをかけ、各地域の産婦人科医療供給体制を維持・発展させていく必要があります。

****** 共同通信社、2007年3月20日

重篤は妊産婦死亡の70倍 出産異常で厚労省調査 医療体制充実を専門家訴え

 出産時の大量出血などで、一時でも「生命に危険がある」と判断される重篤な状態に陥った妊産婦は、実際の死亡者数の70倍以上、出産約250件に1人の割合に上るとみられることが、厚生労働省研究班(主任研究者・中林正雄(なかばやし・まさお)愛育病院院長)などの全国調査で20日までに分かった。

 2000-05年の国内の妊産婦死亡は出産10万件当たり4-7人程度で、一般には比較的まれな現象と受け止められてきたが、死に至る危険は多くの妊婦にあった実態が明らかになった。

 調査に参加した専門家は「妊娠・出産の本当のリスクは、これまで考えられていたより高い」と指摘。産科医の減少が懸念される中、母親と新生児を守る周産期医療体制の充実を訴えている。

 研究班は日本産科婦人科学会周産期委員会と共同で昨年、全国の産婦人科病院など998施設を対象にアンケートを実施。333施設から、04年の実績で国全体の11%に当たる約12万5000件の出産について回答を得た。

 それによると、大量出血や常位胎盤早期はく離、頭蓋(ずがい)内出血などで死亡したのは計32人。だが、血管内凝固症候群などで一時でも生命に危険があると判断された妊産婦を含めると計2325人で、実際の死亡数の約73倍だった。

 この割合を、全国で62人が死亡した05年に当てはめて推計したところ「生命の危険あり」は約4500人となり、出産約250件に1人の割合であることが明らかになった。

(以下略)

(共同通信社、2007年3月20日)


産科医療崩壊の危機について

2007年03月20日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

3月18日の全国紙の朝刊に、日本医師会の全面広告が掲載されていて、

地域の産科が、次々と閉鎖に追い込まれています。それにより、将来50万人の「お産難民」が発生する可能性があります

という非常にショッキングなメッセージがありました。

現状をこのまま放置すれば、現在、何とか持ちこたえている地域の産科も、今後、次々に閉鎖に追い込まれていく可能性があります。

いったん現場から散り散りに去ってしまった医師達を再び一堂に集めるのは不可能に近く、すでに閉鎖されてしまった産科を復活させるのは非常に困難です。

今、現場で奮闘している医師達を燃え尽きさせてはなりません。手遅れになってしまう前に、今やらねばならないことを断固として実行してゆかねばなりません。

参考:

医療クライシス:忍び寄る崩壊の足音 現場の危機、待ったなし (毎日新聞)

相次ぐ分娩取り扱い中止

****** 日本医師会、2007年3月18日
【新聞の意見広告】

今、日本の産婦人科・産科の半分は、
お産を受け入れられない、という事実があります。

地域の産科が、次々と閉鎖に追い込まれています。
それにより、将来50万人の「お産難民」が発生する可能性があります。

「休日・夜間急患センター」を訪れる救急患者の50%以上は、
赤ちゃんや子どもたちです。
しかし、夜間に子どもを連れていっても小児科医がいない、
という事態が今、全国各地で起きています。

こうした問題の要因として考えられるのは、
まず、地方と都市部において、
医師数に格差が生じていること。
さらに、日本は人口1,000人当たりの医師数が、
先進国中、最も少ない国であること、
などがあげられます。

国は、5年後の平成24年3月末までに、
全国に現在38万床ある「長期療養者のためのベッド」を、
半分以下の15万床まで削減する方針を打ち出しています。

それにより、退院を余儀なくされる「医療難民」が、2万人。
在宅や施設での受け入れすら困難な「介護難民」が、4万人。
計6万人の「難民」が発生するおそれがあります。

WHOから「健康達成度世界一」と評価されてきた日本の医療は、
今や、崩壊に向かっています。
この国の医療が抱える危機を、乗り越えるためのタイムリミットは、
刻々と近づいています。
あなたとともに私たち日本医師会は、医療の崩壊を食い止めたい。
医療の未来を守っていきたいのです。
あなたの声を、ぜひ、私たちにください。
私たちは、みなさんのご意見を、国に訴えかけてまいります。

日本医師会

〒113-8621 東京都文京区本駒込2-28-16
www.med.or.jp FAX:03-3942-7036

メールアドレス:jmaiken@po.med.or.jp

(日本医師会、2007年3月18日)

****** 中国新聞、2007年3月18日

福山市民病院 産科の危機まず知って

 すべて医師不足から始まっている。各地で起きる産科の問題だ。長期的には医師の養成、当面は仕事をしやすい環境づくりと、産科の集約化しか手はない。

 福山市民病院の産婦人科が四月から休診する。岡山大病院が派遣医師を引き揚げるからだ。出産はほかの施設で対応できるが、大量出血など緊急時の拠点だっただけに開業医に不安が広がっている。

 岡山大も医師が足りないのだ。ほかへ振り分ける人員がいない。庄原、大竹市や山陰など分娩(ぶんべん)ができない地域が増えているのと原因は同じである。広島市など都市部でも人ごとではない。

 医師の産科離れは十年以上前から。当直や呼び出しが日常の過酷な勤務。待遇は他科と横並び。訴訟になるかもしれない重圧。全国の大学病院や関連病院の常勤医師は二年余りで8%減った。

 二〇〇四年の臨床研修制度導入も拍車を掛けた。都会の民間病院での研修、勤務に希望が偏り、大学病院は各地の病院に派遣する余裕がない。産科も地方も「負け組」。そうみる専門家は多い。

 限られた数の医師で、安心して出産できる態勢を整える現実策が集約化である。現場で奮闘する医師をこのまま燃え尽きさせてはいけない。

 まずは待遇改善に知恵を絞りたい。自治体は財政難で人件費を一律に抑えている。一方で福山市民病院のように自治体病院が拠点となる例は多い。地域医療の最後のとりでと位置づけるなら、「特別扱い」を検討してはどうか。福山市は医師の手当を増やす方針だ。

 産科は女性医師が多い。育児などで現場を離れても、戻ってきやすい勤務シフトを整えたい。

 集約化は自治体、医師会、関係病院と大学が利害を超えて協議しなければ進まない。福山の場合も意思疎通が十分だったとはいえない。岡山大の医師不足を地域がどこまで実感していたか、市民病院に代わる救急の受け皿は十分か―など話すことはまだある。

 臨床研修制度に踏み切った国はほころびを繕う責任がある。医師を助けるスタッフの充実や、裁判で争わずに患者を救済する無過失補償制度新設など、少子化対策の観点からも取り組んでほしい。

 「無事に生まれて、ありがとうとも言われない。使命感がぷつりと切れそうになる」。ある産科勤務医の嘆きだ。出産のリスク、医師の窮状を理解しよう。医療が崩壊して困るのは私たちである。

(中国新聞、2007年3月18日)

****** 毎日新聞、2007年3月18日

広大医療供給プロジェクト 条件付きで医師を優先配置 /広島

 ◇「お産」巡り7ブロックの病院長と協議--地域事情考慮し小児科も

 医師不足や都市部への偏在といった医療を巡る課題について、広島大と県内の主要な総合病院が、適正化に向けた協議を始めた。同大側は1月に、状況が深刻な産科婦人科について優先的に医師を配置する条件を提示。小児科などについても、地域事情などを考慮しながら、医師の集約化や効果的な配置を調整していくという。【宇城昇】

 同大は04年11月、学外の専門家との意見交換などを目的に「ひろしま地域医療協議会」を創設。06年7月、「広島県域における医療供給体制の構築プロジェクト」を同協議会に設置した。県内を7ブロックに分け、各地域で中心となる総合病院=別項=の院長が、ブロック委員長を担当。広島大病院(南区)の中心ポストを担う医師らと、医師の適正配置などについて話し合う。

 政令指定都市から山間部、島しょ部まで抱える県内は、医師の偏在が顕著。分娩できる医療機関がない自治体は庄原市や大竹市など9市町。15歳未満人口10万人当たりの小児科数を県内14市で比較すると、最少の竹原市と最多の広島市中区では約13倍の差がある。

 同プロジェクトが最初に取り組むのは「お産」の問題。1月24日に広島大病院であった会合で、同大は産科婦人科について▽1チーム6人の医師を確保▽年間分娩数800件▽小児科と麻酔科のバックアップがある--の3条件を満たした病院には、医師を重点配置したい考えを示した。分娩の拠点となる基幹病院を各ブロックに設ける構想の一環だ。

 同プロジェクトでは今後、産科婦人科と並んで状況が深刻な小児科についても具体的な協議に入る方針。一部地域では開業医などが連携し、輪番制で夜間の小児救急に対応しており、こうした事情などを勘案し調整に当たるという。

 プロジェクト責任者の弓削孟文・副学長(医療担当)は「県内で唯一、医療人を養成している機関として、広島大は県内の医療事情に責任がある。医療機関との協議を通じて、適正な医師の配置に向けて積極的に支援したい」と話している。

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 同プロジェクトを構成する7ブロックの病院は次の通り。

 JA広島厚生連広島総合病院(廿日市市)▽県立広島病院(南区)▽広島市立安佐市民病院(安佐北区)▽国立病院機構呉医療センター(呉市)▽同機構東広島医療センター(東広島市)▽JA広島厚生連尾道総合病院(尾道市)▽市立三次中央病院(三次市)

(毎日新聞、2007年3月18日)

****** 北海道新聞、2007年3月16日

産婦人科、6病院に医師集約 過疎地派遣を支援 道が計画案

 産婦人科の医師不足が深刻化している問題で、道は十五日までに、釧路赤十字病院や帯広厚生病院など六病院を「連携強化病院」として六人以上の産婦人科医を配置し、近隣の医療過疎地に派遣することなどを柱とした集約化計画の骨子案をまとめた。今夏までに計画を策定する。

 六病院はほかに市立札幌病院、函館中央病院、旭川厚生病院、北見赤十字病院で、いずれも高度医療を行う「総合周産期母子医療センター」に指定、認定されている。このうち、昨年十二月現在で六人以上の産婦人科医が在籍しているのは三病院で、残る三病院は旭川や帯広など都市部の病院から勤務医を集め、六人以上を確保する考えだ。

 これまで医療過疎地の医療機関には、医大から直接医師が長期間派遣されるケースが多かった。しかし、医師不足に伴う激務や、民間病院での研修が可能となった臨床研修制度の導入で、医大が抱える医師が減少したため、派遣の引き揚げが相次いでおり、産婦人科医についても同様の事態となっている。

 そのため、骨子案は連携強化病院に産婦人科医を集め、交代での医師派遣を目指す。この方式では医師の負担が緩和されるため勤務医が確保しやすく、医療過疎地への派遣も容易になるという。

 また、骨子案では六病院に、MFICU(母体・胎児集中治療管理室)、NICU(新生児集中治療管理室)を備え、新生児治療のための小児科医も置く。六病院のうち、四病院が国の基準を満たしたMFICUとNICUの双方を備えていないため、整備を依頼する。

 道は医大や関係病院などと協議し、計画策定を進めており、「(計画が実現すれば)根室など出産ができなくなった地域での出産医療の再開が期待できる」(子ども未来推進局)としている。

 道内の産婦人科医は二○○二年に四百六人だったが、○四年には三百六十二人に減少。出産可能な施設がある道内市町村は昨年十二月現在で、全体の二割の三十六市町となっている。

 また、小児科については、基本的には道内を二十一に分けた医療圏ごとに、入院、救急医療が可能な連携強化病院と、外来診療のみを行う病院に分け、集約化を進めることを柱にした計画の策定を進めている。

(北海道新聞、2007年3月16日)

****** 東奥日報、2007年3月3日

国が前面に出て対策急げ/産科医不足

 東奥日報社が読者に選んでいただいた昨年の県内十大ニュースの第三位は「医師不足の深刻化」だった。特に産科医の不足は、弘前大学医学部産婦人科学教室の水沼英樹教授が「危機というレベルを超えている」と言うほど憂慮される事態だ。

 国の調査によると、人口十万人当たりの県内の産科医の数は六・四七人(二〇〇四年)。全国ワースト四位だった。

 県が昨年調べたら、県内四十市町村のうち産科医がいない地域が三十、産科医も助産師もいない地域が二十五もあった。そこで暮らす妊婦が胎児の定期健診を受けたり、出産する施設が近くにない。不安だろう。

 地元以外の施設に通うには時間、お金がかかる。子どもは欲しいのだが、ためらう。少子化になる。安心して産めないからと若い人がよそに引っ越す。地域が弱る。産科医不足は社会的な影響も大きい問題だ。

 だが、県内の病院に産科医を派遣してきた大学が、産科医が足りないため、郡部にある公的病院などから医師を引き揚げる動きがここ数年強まった。その波が市部にも及んできた。

 弘大は今回、弘前市立病院と八戸市にある青森労災病院から引き揚げると決めた。両病院に産科医は一人しかいない。激務になっている。両病院は四月から産科休診になるが、産科医の分散でなく集中によって医療の質を保つ必要があると考えた。

 産科医を地域の中核的な病院に集めるよう促す国、県の考えも受けたものだろう。人数が限られている産科医を集約化し、安心して出産できる体制を整える。やむを得ない措置だ。

 ただ、それも一時しのぎに終わるかもしれない。県内の公的病院や民間の診療所にいる産科医の四割弱は六十代以上だ。高齢化が進んでいる。

 弘大産婦人科学教室に入る産科医志望は、この三年間は一人もいないという。産科医不足がますますひどくなり、産科休診が一層広がりかねない。

 同じような事情を本県以外の地方も抱えている。全国的な問題であり、少子化や地域衰退にもつながる問題なのだから、国が前面に出て産科医を増やす対策を早く打ち出すべきだ。

 産科医は、お産などに備えて休みの日も気を抜けない。母親と赤ちゃんの命にかかわる重い仕事でもある。お産には危険が伴う。医療訴訟を起こされるリスクも多い。国は、産科医が敬遠されるそんな要因を一つ一つ取り除いてもらいたい。

 国は、弘大など産科医不足の県にある大学医学部の入学定員を増やせるようにした。訴訟リスクを軽くするため、出産時の事故で障害を負った患者を救う制度の創設も検討している。

 それだけでなく、産科医を増やすために診療報酬を上げる、産科医不足で悩む自治体が産科医を招けるように地方交付税を増額して支援するといった対策も講じるべきではないか。

 本県でも、弘大だけでなく県や各病院などが産科医確保に苦闘している。そんな個々の努力や関係機関の連携強化は今後も必要だが、限界もある。産科医を含む医師不足の主因の一つとされる「医師臨床研修制度」の見直しなども国の仕事である。

(東奥日報、2007年3月3日)


大野病院事件 第3回公判

2007年03月17日 | 大野病院事件

コメント:

昨日、大野病院事件の第3回公判がありました。前回の公判に引き続いて、検察側の証人尋問があり、証人の麻酔科の先生が、「ミスと呼べるところがあったかは疑問だ」と弁護側に有利な証言をした模様です。

しばらく待てば、周産期医療の崩壊をくい止める会サイトに詳細な傍聴録が載ると思います。

参考:

福島県立大野病院事件第三回公判(1)、ロハス・メディカル・ブログ

福島県立大野病院事件第三回公判(2)、ロハス・メディカル・ブログ

OhmyNews 麻酔科医 「出血時、記憶にない」、調書揺るがす発言繰り返す

大野病院事件についての自ブログ内リンク集

****** 読売新聞、2007年3月17日

大野病院事件公判 被告の処置など証言

 大熊町の県立大野病院で2004年12月、帝王切開手術で女性(当時29歳)を失血死させたなどとして、業務上過失致死罪などに問われた産婦人科医、K被告の第3回公判が16日、福島地裁であった。

 前回に続いて検察側の証人尋問が行われ、手術に立ち会った麻酔担当医と助産師の2人がK被告が行った処置や女性の出血状況などについて証言した。

 麻酔担当医は子宮内の出血状況について、胎児を取り出すまでは「通常よりやや多いという印象」と述べ、その後出血量が増えたと証言。「水面がスーッと上がるように下からわくようだった」と説明した。

 弁護側の反対尋問では、K被告の過失の認識を問われ、「ミスと呼べるところがあったかは疑問だ」と弁護側に有利な証言をした。

(読売新聞、2007年3月17日)

****** 毎日新聞、2007年3月17日

大野病院医療事故:証人尋問で麻酔科医、刑事責任追及を疑問視--地裁公判 /福島

 ◇「明らかな過失ない」

 県立大野病院で起きた帝王切開手術中の医療事故で、業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた同病院の産婦人科医、K被告の第3回公判が16日、福島地裁(○○○裁判長)であり、証人尋問が行われた。手術に立ち会い、自身も被疑者として警察の取り調べを受けた同病院の麻酔科医は「ミスと呼べるようなことがあったかは疑問」と、K被告への刑事責任追及に疑問を投げかけた。

 麻酔科医の証人尋問では、助手として立ち会った同病院の外科医も被疑者として取り調べを受けたことが明らかになり、麻酔科医は「逮捕を覚悟した」と述べた。その上で手術について「他の臓器を傷つけるなど明らかな過失はなかった」と証言した。また、術中に「わき出るような出血があった」と証言したが、胎盤剥離が原因だったか「時期については記憶があいまい」として明言しなかった。

 この日は手術に立ち会っていた助産師に対する証人尋問も行われた。助産師は、県立医大病院で行われた同様の症例の手術で大量出血があったことを術前に聞いていたため、「うちの病院(大野病院)で対応できるのか不安だった」と述べた。【松本惇】

(毎日新聞、2007年3月17日)

****** 朝日新聞、2007年3月17日

院内採取血液使わず

 大熊町の県立大野病院で04年に帝王切開手術中の女性(当時29)が死亡し、産科医K被告が業務上過失致死などの罪に問われた事件の第3回公判が16日、福島地裁(○○○裁判長)で開かれた。血液センターから輸血用の血液が届く前に、病院の職員から採血して血液を集めていたにもかかわらず、使用していなかったことが、同院の麻酔科医の証言で分かった。

 この日、検察側の証人として、手術に立ち会った同院の助産師と麻酔科医の尋問が行われた。

 麻酔科医の△△△広医師によると、女性の出血が増えたため、いわき市のいわき赤十字血液センターに輸血用の血液を発注。看護師長からは「職員から血液を集めましょうか」などと申し入れがあり、発注した血液が到着する前に、約3千ミリリットルの新鮮血が集まった。だが、△△医師の判断でこの血液は使われなかったという。

 △△医師は、その理由について「GVH病という合併症の恐れがあるので、新鮮血は使わなかった」と証言した。GVH病は、供血者のリンパ球が輸血を受けた患者の体内で増殖し、患者を攻撃することで起きる。日赤の輸血用製剤は、それを防ぐために放射線照射して供給されている。

 ただし、厚生労働省の「輸血療法の実施に関する指針」によると、血液の搬送が間に合わない緊急事態の場合、院内で採取した血液を輸血に用いることができるとされている。

(朝日新聞、2007年3月17日)

****** 福島民友、2007年3月17日

麻酔科医「過失なかった」/大野病院事件

 大熊町の県立大野病院で2004(平成16)年12月、帝王切開で出産した女性=当時(29)=が死亡した医療事件で、業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた産婦人科医K被告の第3回公判は16日、福島地裁(○○○裁判長)で開かれた。検察側証人の尋問が行われ、手術に加わった麻酔科医と助産師の2人が証言した。麻酔科医は「手術ミスはなかった」とし検察側証人にもかかわらず、前回証言者と同様に弁護側主張に沿う発言をする一方、助産師は手術前から不安を持っていたことを述べた。

 弁護側からの尋問に、麻酔科医は「血管やほかの臓器の損傷はなく、(被告に)過失はなかったと思う」と証言。「専門外だが、はがした方が止血できると思う。クーパー(手術用はさみ)の使用も違和感はなかった」と弁護側主張に沿う発言をした。
 一方で検察側の主尋問に対し「剥離(はくり)中、わき上がるような出血があった」と証言。死因は出血性ショックだったとし、検察側が主張する「剥離の継続の結果、大量出血させ死亡させた」に沿うような発言もあった。

 助産師は「福島医大でも前置胎盤で大量出血を招いて大変だったことを聞いていた」とした上で「産婦人科医が加藤被告一人の大野病院で手術するのは不安だった」と証言した。

 この日の公判では、胎盤の剥離による出血量と時刻に関して、検察、弁護側双方が長く尋問時間を割いたが、証人のあいまいな証言が続き、午後5時の閉廷時間が約1時間ずれ込んだ。

(福島民友、2007年3月17日)

****** 福島民報、2007年3月17日

「手術前から不安」 大野病院医療過誤で助産師証言

 福島県大熊町の県立大野病院医療過誤事件で、業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた産婦人科医K被告の第3回公判は16日、福島地裁(○○○裁判長)で開かれた。帝王切開手術に立ち会った女性助産師と男性麻酔科医に対する証人尋問を行った。

 女性助産師は、手術前の気持ちについて「福島医大で似たような症例があり大量出血で大変だったと聞いたので、うちの病院で対応できるか不安だった」と証言した。被害者から取り出された胎盤について「(子宮と接していた)母体面がぐちゃぐちゃで、見たことがない胎盤だった」と述べた。

 女性助産師は、帝王切開手術の経験が5回から10回程度で、前置胎盤や癒着胎盤の症例は事件まで未経験だった。

 一方、男性麻酔科医はK被告について「産科医として未熟では全くない」と評価し「(手術中に)ミスと呼べるところがあったか疑問」と、K被告が刑事裁判に問われたことに疑問を投げ掛けた。手術中の出来事に関する質問には「覚えていない」との答えが目立った。

 質問方法などをめぐり検察、弁護の双方が異議の応酬となり、公判は予定より1時間以上延びて約7時間に及んだ。

 次回は4月27日午前10時からで、手術に立ち会った別の助産師と大野病院の男性院長への証人尋問を行う。

(福島民報、2007年3月17日)

****** 河北新報、2007年3月16日

「手術ミスなかった」 大野病院事件公判 福島地裁

 福島県立大野病院(大熊町)で2004年12月、帝王切開手術中、子宮に癒着した胎盤を剥離(はくり)した判断の誤りから女性患者=当時(29)=を失血死させたとして、業務上過失致死罪などに問われた産婦人科医K被告(39)の第3回公判が16日、福島地裁であり、手術に立ち会った麻酔科医が検察側証人として出廷した。

 麻酔科医は「剥離手術中には、間違えて血管を切るなど明らかなミスはなかった。立件されるだけのミスがあったかどうかは疑問」と証言。一方で、大量出血については「剥離した面からお湯が漏れ出るような大量の出血があった」と、剥離と出血の因果関係をうかがわせる供述をした。

 捜査時の調べについては「特に警察の取り調べで細かなニュアンスを無視された。断言していないのに断言した内容になり、(供述調書は)かなり不快な表現だった」と述べた。

 起訴状によると、K被告は04年12月17日、女性の帝王切開手術で胎盤と子宮の癒着を確認して剥離を開始。継続すれば大量出血で死亡することを予見できる状況になっても子宮摘出などに回避せず、クーパー(医療用はさみ)を使った剥離を続けて女性を失血死させた。

(河北新報、2007年3月16日)


医療クライシス:忍び寄る崩壊の足音 現場の危機、待ったなし (毎日新聞)

2007年03月16日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

今、全国的に分娩取り扱い施設が激減しています。

新人の産婦人科医を増やしていく努力も大切ですが、中堅・若手の医師達が疲れ果てて集団で辞めていく現象をまずは何とかしなければなりません。

基幹病院の中堅・若手医師達が辞めないでも済む、ゆとりのある勤務環境を作ることが先決です。基幹病院には、産婦人科医が少なくとも7~8人は常勤している必要があります。(それでも、週に1~2回は当直業務をこなす必要があります。)

その上で、医学生、研修医、若い産婦人科医達を、しっかりと教育し、彼らを一人前の産婦人科医(産婦人科専門医、周産期専門医、婦人科腫瘍専門医、など)に育て上げていく後進育成システムを各地域でしっかりと確立していく必要があります。

誰も地域の産科崩壊を望んではいません。しかし、基幹病院の産科がスタッフ不足により診療縮小に追い込まれ、地域内の産婦人科医の平均年齢が年々上がって、頭数もだんだん減っているようなところでは、非常に近い将来において、地域の産科医療体制が完全に崩壊する可能性があります。

国も県も大学も、今後我々が進むべき道の指針・方向性を示してくれて、多少は間接的に支援してくれるかもしれませんが、決して直接的に救済してくれるわけではありません。それぞれの地域で、地域の力を結集し、自ら道を切り開いていく必要があります。

地域の産科医療を絶滅の危機から守り、十年後、二十年後も持続可能な地域産科医療体制を確立するために、今やらねばならないことを断固として実行してゆかねばなりません。

****** 毎日新聞、2007年3月15日

医療クライシス:忍び寄る崩壊の足音 現場の危機、待ったなし----勤務医ら座談会

 ◇ゆとりのない医師たち

 深刻な医師不足などを報告した本紙の連載「医療クライシス-忍び寄る崩壊の足音」(1月23日-2月3日の朝刊計8回)を受けて、大学教授や病院の勤務医ら5人が、大阪市北区の毎日新聞大阪本社で、医療のあり方について話し合った。医師不足の実態や、ぜい弱な医師の支援体制、医師としてのモチベーション低下など、医療現場の危機的な状況を訴えた。苦境脱却のため、医師やスタッフの数を増やし、医療費の増額を求める意見が相次いだ。司会は砂間裕之・毎日新聞大阪本社科学環境部副部長。主なやり取りを紹介する。【鯨岡秀紀、今西拓人、根本毅、河内敏康】

 ◆木村正氏 大阪大大学院教授(産科学婦人科学)

 ◆高見元敞氏 森之宮クリニック所長

 ◆伊賀幹二氏 伊賀内科・循環器科院長

 ◆山本晴子氏 国立循環器病センター臨床試験室長

 ◆中島伸氏  国立病院機構大阪医療センター脳神経外科医長

 ◇辞めるのは40代中堅/勤務過酷、志続かず

 ----医療現場で起きている崩壊の実態は?

 木村 医局が医師を派遣する関連病院で医師が辞め、いくつかの病院が産科を閉鎖するという事態に陥っている。大阪大の関連病院で04年と05年に五十数人の産科医が辞めた。40代で辞めるケースが相次いでいる。医師は20年たってようやく人を指導できる立場になるのに、その年齢で辞められると代わりがいない。

 山本 どの病院もギリギリの人数。1人いなくなるだけで日常業務がこなせなくなる。最近は、人手が増えないのに、手術件数が増加し、処理しなければいけない書類も多くなっている。雑用が医者に降りかかってきている。看護師も状況は同じで2年で辞める人が多い。病院全体がギスギスしている。

 伊賀 24時間体制で心筋梗塞(こうそく)の患者を受け入れる病院は、連日、寝泊まりしても大丈夫という少数の医師がいるから成り立つ。奈良の病院の循環器内科にいた時、緊急カテーテルは日常茶飯事だった。30代のころは、呼び出されなかったら腹が立ったが、40代になると、一晩泊まったら知的労働ができなくなった。このままではつぶれると思い、47歳で開業した。

 高見 病院の中心になって働いてほしいと思う中堅の医師が辞めていく。理由は「忙しくて自分を見失ってしまう」ということだ。勤務医の給料が安すぎるのも一因だが、高い志やパッション(情熱)が保てなくなっているのが問題だ。かつて3000人だった医学部の卒業生が、今は8000人。それでも医師不足なのは、勤務医が病院を去っていくからだ。

 中島 身近な医療崩壊の例として、けいれん発作を起こした患者が13件も受け入れを断られ、うちの病院に運ばれたという報告があった。片頭痛の妊婦が、20件断られ、運ばれたこともあったという。

 ◇スタッフ不足も原因/自らも意識の変革を

 ----医療崩壊を招いている原因は。

 山本 医局に所属する勤務医は、大学の関連病院を回るが、将来への期待が持てなくなっている。ある時は国立病院、ある時は民間病院。身分が勤務先で変わる。私の場合、常勤医になったのは30歳を過ぎてから。定年まで勤めても大した退職金はもらえない。30代で研究生や非常勤で大学に戻ると健康保険などすべて自前で出費が多い。開業するなら、できるうちにと思う人がいても不思議でない。

 高見 医師が足りないのは、医療の内容が細分化したためだ。医学の進歩と患者の要求で専門化が進み、すべての領域に対応するなら医師数は以前の2倍や3倍では足りない。医師をサポートする医療従事者(コメディカル)の数が圧倒的に少ないのも原因。米国なら部長級でも医療秘書が1、2人いるのに、日本では病院長でさえ専任の秘書はゼロ。医師や看護師が仕事に専念できる環境ではない。また(99年に)横浜で起きた手術患者の取り違え事件では、1人の看護師が同時に二つのベッドを運んでいた。そんな医療環境が、事故を多発させる。

 山本 留学したスイスでは、クラーク(事務員)が日本の倍以上いる。ベッドを専門に運ぶ人もいる。日本の公立病院では、事務職員が役所の中を定期的に異動するため、専門的な知識が身につかないのも問題。患者にとっていい医療をするほど経営が悪くなる構造になっている。

 伊賀 ある医大の非常勤講師をしているが、無給だ。いい医師を育てるには、お金も必要だという認識を持ってほしい。米国の講師クラスから、教授として日本に戻ってきて、給料が5分の1になったと聞く。

 中島 給料の問題だけではない。患者に「よくやってくれた」と言われたら、いくらしんどい思いをしても吹っ飛ぶ。こういう医師の内的動機付けがなくなってきた。「医は仁術」というように、医療人の献身で支えられてきたが、ついに耐え切れなくなったというのが実態だ。

 伊賀 昔は、一生懸命やれば患者、家族から感謝された。最近は不満を言われたり、攻撃を受けることが多い。医師はパッションで生きている。患者、家族から感謝されたい。ネガティブな事を言われると、ひいてしまう。

 ----医療崩壊を食い止めるには、どうしたらいいのか。提言を。

 伊賀 問題は、厚生労働省などの役人が医療の現場を見ずに議論すること。現場を知らないから、とんでもないことを言い出す。現場を見て医療政策を考えるべきだ。

 木村 便利と安全は両立しないと分かってほしい。奈良・大淀病院の転送問題では、分娩(ぶんべん)という最も危険性のあることを医師1人でしていた。他の先進国とは異なる体制だ。

 日本は中小の産院が林立して便利だったが、母体死亡率も高かった。これを、搬送システムの確立と現場の医師の必死の努力で下げてきたが、人的資源も努力も、限界に達した。

 高見 医師しかできないこと以外の仕事が多すぎて、医師は燃え尽きる。日本の医療はこれまで、医師の頑張りで何とか成り立ってきた。医療の崩壊を防ぐには、いま医療を支えている働き盛りの勤務医が病院を離れていかない工夫をすることだ。医師にもう少し、ゆとりを与えなければだめだ。また、国が真剣に医者を育てようとしていないことも問題だ。本気で医師を育てるなら、現在の10倍の予算が必要だろう。

 木村 病院が多いため医師が分散し、しんどくなって辞めていく。二つの自治体病院を一つにしたら、医師が倍になり当直も回ると説明しても、話はまとまらない。

 中島 医師の数が少ないというのは本当か、と思う。医師にしかできない仕事以外にも、多くのいろんな仕事をしている。医師が本来すべき仕事に絞れば、数は足りているのではないか。

 また、もっと仕事を楽しめるようにし、さらに社会に訴えるなど、自分たちが変えていく努力をするべきだろう。

(毎日新聞、2007年3月15日)


助産所の安全性確保についての議論

2007年03月15日 | 出産・育児

****** 共同通信社、2007年3月15日

助産所「安全確保に限界」 妊婦死亡も、産科医会調査

 日本産婦人科医会が、2005年に助産所から高度医療施設に妊婦が緊急搬送された全国の計247事例を調べたところ、妊婦1人と新生児4人が死亡するなど、深刻な結果に至った例が含まれていることが15日分かった。

 分析した久保隆彦・国立成育医療センター産科医長は「助産所が本来、正常な出産だけを補助する場であることを考えればこの数は多い」と指摘。すべての出産にはリスクが伴うため「医療機関と切り離された助産所での安全確保には限界がある。病院内の設置が望ましい」と話している。

 調査には、全国の総合周産期母子医療センターや大学病院など地域の中核施設475カ所が、経験した緊急搬送例について回答。死亡例以外では母親1人に後遺症がみられたほか、長期入院が必要になったのが母親22人、新生児が36人いたことも分かった。

 背景について同医会は「助産所の多くはカルテに当たる『助産録』の記載が不十分で、状態が悪化し唐突に高度施設を頼っている」と分析。半面、本当に緊急処置が必要だったのは、搬送事例の約3割にとどまり「(緊急時の対応について判断すべき)嘱託医が機能していなかった」とした。

 助産所を利用する人は年間約1万人で、出産全体の1%ほど。専門家によると、助産所からの緊急搬送は年間700件程度。全国平均では妊産婦死亡が1万6000人に1人、新生児死亡は667人に1人とされる。

(共同通信社、2007年3月15日)

****** コメント:

ここ2~3日、当ブログのコメント欄でも、この話題で議論が沸騰してます。かなり以前の記事に対するコメント欄なので、本日の記事に引用させていただきます。

【以下、本ブログのコメント欄より引用】

助産院で産みました。ローリスクで近くに大きな病院も提携していたので不安はありませんでした。
助産院を問題視する人の中には「助産院は産科医と離れているから、なにかあった時に対処できない」と言います。
が、しかし、急変してから緊急帝王切開が行われるまでに、病院であろうと助産院であろうと、30分程度は時間がかかります。
助産院で急変が起きても、要は搬送の間にその準備をしてもらえば同じように急変から30分で手術は受けられます。
助産院で産む人が多くなれば、多くの人は病院のお出産に関して一切、医者の手をわずらわせることみなくなるし、本当に医者が必要な人がたらいまわしにされることなく、病院にかかれると思います。
また、必要な人だけに立ち会うことによって、医者はゆっくりと休養をとることができるし、助産院の助産師はつききりで産婦に寄り添うことができます。病院は忙しいから、一晩、ナースコールを持たされただけでほっとかれた、というようなことは本来危険なことだし、またそれに対して「病院は忙しいんだから仕方ない」というような風潮も、危険なことだと思います。
これで死亡事故が起きても、遺族は納得できないでしょう。最大限、努力してなお、助からなかった、ということとは違うのですから。
本来必要のないローリスクの妊婦が病院で産むことで、医者は休めない、助産師も医者も一人をゆっくり観察できない、本当に急変した患者がたらいまわしにされる、というまったく非合理的な今の状況はなんとかするべきだと思います。

何か事が起こってから母体搬送すれば、あとは病院が何とかしてくれる筈という考え方では、今後、絶対にやっていけないと思います。

他の施設からの母体搬送例で、急変から30分以内に帝王切開をするのは絶対に不可能です。

急変から病院到着までにすでに30以上経過していますし、病院に到着後に母児の状態を診察し、手術の必要があると診断してから、術前検査を実施し、検査結果がすべて出そろってから、初めて手術室に入室が可能となります。手術室入室後に麻酔導入に30分程度はかかります。

どんなに条件が整っていても、急変から手術開始までに2時間以上はかかってしまいます。

常位胎盤早期剥離、弛緩出血による出血性ショック、産科DICなどは、ローリスクの妊婦であっても一定の確率で必ず発生します。突然、予想外の異常が発生して母児が急変し、直ちに医学的対応が必要になった時に、その場では何もできない状況にあれば、母体死亡や死産となってしまう可能性が非常に高くなります。

自己の責任で、すべてを自然の経過に任せるという個人の選択も当然あり得ます。医療のサポートを受けるか受けないか?は、個人の選択の問題です。

>病院に到着後に母児の状態を診察し、手術の必要があると診断してから、術前検査を実施し、検査結果がすべて出そろってから、

多分、名無しさんはここら辺までを助産院(及び病院への搬送中)で可能だと考えていたのでしょう。
そして病院の方では「急変があった」という時点から手術の準備(どんな手術になるか分からないのに)を始めてもらうつもりなのでしょう。

違うと思いますよ。
「何かあったら大変だからみんなで、病院で産みましょう」という考えこそ実は現実離れした非効率的なものだから、今の状態なんです。

>他の施設からの母体搬送例で、急変から30分以内に帝王切開をするのは絶対に不可能です。

絶対だなんていいきれるわけがありません。
院内助産院を実施しているところだってありますよ。
私が産んだ助産院は15分圏内に大きな病院があって、そこに定期健診も行っていました。

逆に言いたいのですが、人手が足りなくて、急変時には自宅待機しているDrを呼ばなければならない病院もあります。
助産師が足りなくて、つききりで見守れない病院もあります。
病院だから、助産院だから、と結論つけて話す人は信用できないですね。
ナースコールを押しても、すぐに駆けつけられない病院だってたくさんあります。
なによりも、奈良の亡くなった妊婦さんのように重篤な状態でも16箇所も病院をたらいまわしにされるよいうな状況こそが最も不幸なことです。
そういった視点も含めて考えれば、おのずと答えは見えてくると思うのですが。
ちなみに、「助産院で産むと死亡率が高くなる」というのは様々な実験の結果、否定されています。
一部の人達の言う「病院でさえ産めば異変があった時に大丈夫!(以下、突発でおこる病名の羅列)」という意見は、これだけ産科医療の危機が言われている中でもう少し考えてもらいたいです。
迅速に対応し、病院と連携することによって、「医者が助かる」という視点でものを考えるべきだと思います。
実際、そう言って助産院や個人病院と協力しあって地域医療を支えている医者はたくさんいますよ。

15分で到着するとして、その間に医者、助手、道具とベッドの確保。
あとは着いた患者を診察して必要な手続き、と考えていましたが。
というか、救急車で運ばれてくるのと同じ手数ですよ。
もちろん大病院でも、助産師が、たとえ相手がローリスク妊婦だとしても、24時間つききりでそばについて、異常が起きれば素早く察知でき、なおかつどんな時間帯でもすぐに手術できるだけの状況が整えられて、なおかつそれでも、本当の重篤な患者の飛び込みにも対処できるほどに現代の産科が恵まれた状況なら、いいですよね。
だけど、残念ながら、現実は誰しも認めるとおり悲惨な状況です。
だからこその意見なのですが・・・誤解されているようですね。
これだけ、人手不足が問題にされているのに、ローリスクの人達も大病院で産め、というのは非現実的だと申し上げたいです。
ちなみに、助産院では病院で検診を受け、そこで許可がおりなければ産めません。

>医療のサポートを受けるか受けないか?は、個人の選択の問題です。

というのは、正確に言えば

>医療のサポートの度合いをどれだけの割り合いにするかは個人の選択の問題です。

ということです。
助産院で産んだ人達は少なからずの医療のサポートは受けています。
ただ、それを少なく受けたことによって、お医者様の手をわずらわせる機会を減らし、医療という社会資源を有効に活用したとも言えるわけです。
もともと病院での出産が必要でない人が、病院で産まなかったことによって、その間に他の重篤な患者の方が少しでも早く治療を受けられた可能性はゼロではないのですから。
一人一人が視野を広く持つことが大切だと思いますよ。

 突っ込みどころはいろいろあるのですが、
 「助産院で産むと死亡率が高くなる」というのは様々な実験の結果、否定されています

 この手の報告助産師の出す雑誌で読んだことありますが、これは本当に信頼に足る報告なのでしょうか。統計は恣意的に操作すればどうにでも結論付けられると思いますが。

 「助産院は安全」というブログで紹介されていた助産院分娩が主体のオランダでは、周産期死亡率の高さが問題になっているようですよ。

 分娩の安全性のためには産科医と助産師が同じところで連携をとること、それとは別に産婦人科医を増やすことが必要だと思います。そもそも現在日本の助産院分娩は1%程度です。そして助産師自体も不足しています。助産所からの搬送は1割にものぼります。助産師が単独で扱うことでこの問題が解決するとは到底思えません。
 医療資源の分配の問題とは違うと思いますよ。
まあ、国民が助産院の危険性を充分認識してなおかつ、選ぶのならありかもしれませんが。
 たまたまご本人が助産院で無事に埋めたからと言って一般化してよいのでしょうか。

当科でも、正常分娩の場合は助産師がつききりで付き添って分娩を介助し、医師はほとんどタッチしてません。医師と助産師が同じ職場で緊密に連携し、協力して仕事をしています。

助産師外来で、一人一人の妊婦さんの希望を聞いてバースプランを作成し、そのバースプランを最大限に尊重して、助産師が分娩介助をしています。分娩時には、一人の妊婦さんに助産師が最低3人は付き添って介助しています。

特に異変がなければ医師はただ見守るだけです。

母児の急変があれば、その時点でリアルタイムに医学的な対応を開始します。

最近は、周辺の分娩施設が激減したため、緊急母体搬送例や新生児搬送例は激減しました。それとともに、NICU(新生児特定集中治療室)の重症例が激減したと当院の新生児科医が言ってます。当院の分娩件数が倍増したにもかかわらず、当院NICUに収容される新生児数は減り、しかも重症例の占める割合が激減したそうです。

要するに、助産師、産科医、新生児科医、麻酔科医が、一つのチームとして、同じ施設で連携し協力することによって、分娩の安全性が飛躍的に増したし、患者のさまざまなニーズにも無理なく答えられるようにもなったし、スタッフ個人個人の負担は減って、激務だった勤務状況も緩和されました。この周産期医療チームの中で、助産師の果たしている役割は非常に大きいです。

また、地域の開業の先生方と連携して妊婦検診を行うことにより、当院産科医師の外来診療の負担を大幅に軽減できました。

それぞれの地域の特殊事情の中で、関係者がよく話し合って、母児にとって最善と思われる方策を考えてゆくことが大切だと思います。

今回、名無しをやめて名前をつけてみました。
上記の名無しです。

助産院の安全性さんへ

>突っ込みどころはいろいろあるのですが、

とあったので、どれだけ突っ込んでくれるのか期待していたのでかなりがっかりしました。
WHOが世界中の文献、実験結果を分析して「助産院は安全だ」と結論を出しましたよ。詳しくは

http://www.web-reborn.com/books/book/whokankokunimiru.htm

にてどうぞ。

>オランダでは、周産期死亡率の高さが問題になっているようですよ。

というのも耳にタコができるほど、よく聞く話なんですが、そもそもオランダと日本の最先端の医療技術が違う以上、死亡率を比較しても「助産院が危険だ」という結論を導き出せませんよ。
同じ条件下で比較して、なお助産院での死亡率が高いのなら、分かるのですが。

>分娩の安全性のためには産科医と助産師が同じところで連携をとること、それとは別に産婦人科医を増やすことが必要だと思います。

当たり前のことです。
要は医者を志す人は多い中、産科医になる人が少ないのだから、待遇を改善しなければいけません。
忙しい忙しい、と悲鳴をあげる産科医を見て、まずはどうやったら彼らの負担を減らせるのか、冷静に考えるべきでしょう。
負担が多いゆえ、事故も起こりやすい。
訴訟が多ければ、ますますなり手がいない。この悪循環を断ち切りたいと本当に思うのなら、できるところから、産む側が産科医の負担を減らしていくべきでは?と思ったのですが。

>そして助産師自体も不足しています。

そうです。助産師も増やさなければならないと思います。
助産師の働きやすい環境を整えることと、彼らが主体性をもって働くことが大切だと思います。
まずは、「助産師」という仕事を一般の人がもっと知るべきだと思います。
助産師だけで出産の介助をできることを知らない人、看護士との違いを知らない人がまだまだ多いのは、この問題を考える上で見過ごせないことだと思います。

>助産所からの搬送は1割にものぼります。

こういうことを書く時はまず、その由来を先に書いてくれませんか?
どこの地域のどこの病院のことでしょうか。
まわりの診療所や、助産院の数やそこで扱う分娩数は?
それとも全国平均の話ですか?
初耳なので是非、教えてください。

>たまたまご本人が助産院で無事に埋めたからと言って一般化してよいのでしょうか。

どこをどう読んだら一般化しているのでしょうか。
読み返してみましたが「自分は助産院で産んで大丈夫だったので、みんなも大丈夫」というような記述は見当たりませんでした。
よく読んでから、書いてください。

管理人さんへ

今回、管理人さんがおっしゃっていることは正しいと思いますし、異論はありません。
ただ、それほど恵まれた状況ばかりではないのが、現在の日本なのです。
私が上記で書き込んだのは、崩壊していく日本の産科医療に対して、もっと助産師を活用したらどうか、ということです。
「うちはこんなに上手くやっています」というのは、もちろん素晴らしいことだと思うのですが、

>何か事が起こってから母体搬送すれば、あとは病院が何とかしてくれる筈という考え方では、今後、絶対にやっていけないと思います。

という最初の書き込みに関して、いぶかしく思う気持ちに変わりはありません。

「むしろ、病院でさえ産めば、絶対大丈夫、という考え方では、今後絶対やっていけないと思います。」

と返答いたします。
実際、そのとおりになっています。
管理人さんの病院がいかに素晴らしくても、日本全体で見れば、「病院でさえ産めば安全」という非効率的な考え方のために、産科が崩壊し、社会問題になっています。

>どんなに条件が整っていても、急変から手術開始までに2時間以上はかかってしまいます。

こう、いい切っておられましたが、助産院といっても色々ですよ。
私の友人は、助産院と病院が一緒になったところで、42週最後の日に、助産院で産みました。
先生がそばにいるようなものだから、助産院といっても特殊でしょうけれど、そういう例もあるということで。

救急病棟なんかには、身元も判別しないような交通事故にあった人が飛び込んできて、既往歴も分からぬまま、その場で最も適切な処置、手術を行わなければならないと思うのですが、「手術までに最低でも二時間以上かかる」といった話は聞きません。
身元は判明し、既往歴や妊娠中の経過の書かれたカルテもそろっており、なおかつ助産師が常に異変を察知するべく付き添っており、事前に異常を知らせている状態で、妊産婦が「急変から手術までに最低でも二時間以上」というのはちょっと驚きです。
産科医といっても色々な方がいると思うので、他の方の意見も聞いてみたいと思ってしまいました。

繰り返しになりますが病院といっても、人手不足で急変に対応しきれない場合もあるでしょうし、Drが出払っている場合もあるでしょう。
それらを責めるのではなく、また「でも、うちの病院はいい病院だ」で終わらせるのではなく、国民全体がそういうことまで理解した上で、自分にふさわしい「医療の度合い」を計るべきだと思います。
地域の中で事情に合った方法で最善を尽くすことに異議はありませんが、国民一人一人がまずできることと言ったら、「知ること」と「自分にできる範囲で社会に貢献する意識を持つこと」ではないでしょうか。

 山本モナーさん
>WHOが世界中の文献、実験結果を分析して「助産院は安全だ」と結論を出しましたよ。

 これについて書籍ではなくネット上で検索できるソースを示していただければ、いろいろな方が検討検索できると思います。
 ただオランダについて日本とシステムが違うから、ということですが、オランダはシステムの整った先進国であるのに対して、WHOの対象は全世界であって、いまだに感染症による高い死亡率を呈する発展途上国も含まれています。助産院は安全だ、という結論の「安全性」とはどの水準なのでしょうか。また助産所が安全という根拠となるものをいくつか読みましたが「助産所が比較的低リスクの分娩を扱っていることの修正なく医療介入の程度について産科と比較しているもの」でした。
 アメリカは先進国ですが、医療については後進国です。医療自体を受けられない無保険者がたくさんいますし、受けられるケアも全く違います。アメリカの助産師が医師の要請でできたと聞き、私はとても納得しました。貧困層には医師による医療はもったいないということでしょう。

 モナーさんは、助産師を活用、ということですがどのように活用するのでしょうか。①処方権やエコーなどの検査を認める(用は帝王切開以外すべてできる助産医)として、②従来の保看法に定められた範囲内で、でしょうか。それによって論点も異なってくると思います。

 現実問題として、日本で産科に併設された助産院はどのくらいあるのでしょうか。また産科に併設されていて、産科医が適切に経過を追い、判断しているのならそれはもう助産院とは呼ばないのではないでしょうか。
 そして助産院で扱える分娩数は産科より圧倒的に少ないと聞きましたがいかがでしょうか。妊婦一人一人に、助産師が1:1でつく、ということを全ての分娩においてやって、現在の助産師数でできるのでしょうか。

 医療は限られた資源であり、同時に安全性が最も大切とされるので、分業制で効率化と透明性を高めてきた点があると思います。それについてはどうお考えでしょうか。

 新たに帝王切開のできない助産医をつくるより、現状で医師でなくてもできる仕事を振り分けることで負担が軽減されると思いますが。

 手術まで2時間かかるというのは当然ありえると思います。

 タイムロスについて時間を追って考えてみましょう。

①まずはモナさんが忘れられている「転送」を判断するまでにかかる時間

 現状の教育法で助産師単独で産科医と同程度の迅速で的確な判断ができるとは思いません。そもそも助産は「正常分娩」を扱うのですから。

②転送先を探す時間

 これは併設されていない限り、かなり時間がかかるでしょうね。

③転送時間

④受け入れ先の準備

 簡単に2時間くらいたってしまうのではないでしょうか。

救急外来に身元不明で飛び込んできた人の手術は簡単ですよね。
だって身元不明で、今手術しなきゃ死ぬんだから、とにかくやって、ダメならダメ。あとで見つかった家族も納得するしかないのでは?

助産院である程度分娩が進行していれば、患者およびその家族は「ふつうに生めるつもり」になってますから、まず状況説明が大変です。手術が必要なのに「向こう(病院)でちゃんと生めるから」とだけ聞かされて「手術はイヤだ」と言い張る人を前に泣きたくなったこともあります。
なんで今赤ん坊の状態が悪いのか、なんで出血が続いているのか、搬送もとが病院なら向こうの先生はある程度説明してくれていますが、助産師さんにそこまでの説明は求められません。

助産師さんの妊娠管理能力にもいろいろあるのでしょうが、今現在の状況では「助産院での分娩を選択する」ような方々自体にある一定の問題点があるような気がしてなりません。
もちろん周囲に産科医がなく、選択の余地のないまま助産院を選ぶこともこれからは増加すると思いますので、助産院からの緊急搬送を受ける機会もふえるとは思いますが、助産院との共同勉強会、患者のカンファレンスもしておかなければならなくなるだろうし、ますます産科医の負担はふえていくとしか思えません。

山本モナー・さま、助産院の安全性・さま、suzan・さま

コメントありがとうございます。私どもも、suzan・さまと同じような状況を時々経験します。

急変時に、すばやく緊急手術を行うためには、普段から、患者さん自身に、分娩時に急変は少なからずあり得ること、その際には緊急手術が必要となること、などを説明し、十分に納得していただいておく必要があります。

世の中、いろいろな考え方があり、助産院で産もうと決意していた妊婦さんの場合は、もともと『自然分娩崇拝』の信念が非常に強固の人が多く、中には、かたくなに医療のサポートを拒み続ける方も少なくないと思われます。

母児の状況が急変して、病院に救急車で搬送されて来たような場合でも、妊婦さん御本人には何も状況が説明されてない場合もあり、たとえ、医学的には手術が必要な状況だとしても、その現在の状況、手術の必要性を、患者御本人・御家族に十分に納得していただき、手術承諾書に署名をしていただくまでに、相当な時間と労力を要する場合が多いのは事実です。

患者さん御自身の手術を受ける決意が固まって、手術承諾書に署名していただいて、初めて、手術に必要な問診(家族歴、既往歴、アレルギーの有無、など)、術前検査(血液検査、胸部レントゲン撮影、心電図、など)も実施できますし、手術室の準備や手術スタッフの招集を開始できます。輸血が必要な場合は、輸血の手配、クロスマッチなども必要となります。

搬送に要する時間、診断に要する時間もありますし、母児の急変から手術の開始までに、最低でも、2時間程度はかかってしまうのは確実と思われます。

また、突然そういう救急搬送があれば、その日の外来診療や病棟回診などの日常業務はすべて一時的に中断せざるをえず、産婦人科の業務だけでなく、麻酔科、新生児科など、病院業務の全体に多大な影響がでることも少なくないと思われます。

助産院の安全性さん

>これについて書籍ではなくネット上で検索できるソースを示していただければ、いろいろな方が検討検索できると思います。

と言われても、ネット上にある資料よりはるかに、専門性が高く、また内容も濃密なので、これを読めば、助産院の安全性について詳しいですよ、としか申し上げられません。時間があれば、いつか書き起こしたいですがあいにく、その時間がないのでできません。
はっきり言えば、助産院の安全性さんが、疑問を呈している部分は、全て明快に書いてありますよ。
助産所の安全性に関して論じるなら、是非押さえてほしい一冊です。
ところで

>助産所からの搬送は1割にものぼります。

に関して、ソースは?

>たまたまご本人が助産院で無事に埋めたからと言って一般化してよいのでしょうか。

この失礼な書き込みに対しても、書きっぱなしで終わらせないで、聞いているのだからきちんと答えてください。
話を進めるのはそこからだと思いませんか?

suzanさん

偏った意見をありがとうございます。
私は助産院で産みましたけれど、私自身もまわりの人も、異変があれば病院もやむなし、という気持ちでしたよ。それが普通です。
極端に自然志向の強い病院嫌いの人や、エホバの人達のように死んでも輸血を受けないような人をもってして、「助産院の患者は~」と一般化して話す人と、冷静な議論をするのは難しいでしょうね。
「うちはこんな嫌な患者がいたから、みんながこうに違いない」と言う医者は「私は助産院で産んだからみんなも大丈夫」という論理で話す一般人と同じレベルでしょう。
もう少し、先入観と偏見を捨てて話し合う気はありませんか?
こういう人が多いから、産科医療は崩壊していく一方なのでは?
もう少し、前向きで建設的な考えの方が増えることを望みます。

 山本モナー  さん、こんにちは。

 まず、あなたが日本に於ける助産所の独立開業は安全であると主張されているのであるという点に注意を促したいと思います。

 はっきり申し上げて、拳証責任はあなたにあり、他の人にはありません。

 たとえば、助産所での分娩中の搬送率については、あなたが数字を提出するのがスジというものです。搬送率も知らずに安全性を主張しているとは思えませんから、あなたはお手許に搬送率、搬送後の予後データも当然お持ちの筈です。

 データがないのであれば安全性証明の拳証責任を充分果たされるに足るお立場ではないと思います。如何でしょうか?

 それから、国際比較データについては、背景要因を標準化しないと比較妥当性がないというのは常識だと思いますが、あなたが専門的分析だと主張するWHOデータは、日本国内での助産所の安全性(…ってどのindicaterですか?)の証明には使えません。…まず、多くの国では、何よりも妊産婦死亡率、周産期死亡率、自然死産率が、日本国内よりもケタ1個~2個違うのですから。

管理人さんへ

もう一度整理しましょうか。
管理人さんの書いた

>どんなに条件が整っていても、急変から手術開始までに2時間以上はかかってしまいます。

ということですよね。
この「二時間以上」の計算は、搬送30分の計算ですから、仮に病院内でそれまで正常に経過していた患者が急変した場合でも「手術までに最低一時間半以上かかる」ということなのですよね。(当然、病院内だって、色んな事情を抱えた患者さんがいますよね)
だとしたら、どこで産んでも出産である以上、リスクはある、ということは産む側も家族も頭に入れておくべきですね。
思うに、産科における訴訟が多いのは「病院でさえ産めば絶対に大丈夫」という思い込みがあるからでは。(もうひとつには、人手不足からくる説明不足や、こまやかなケアができないことから来る不信感が大きいでしょうが)
どこで産んでも急変から手術までに一時間半程度の時間はかかるし、ましてや普通の病院だったら、つききりで看ているわけにもいかないし、他で急変がああれば出払ってしまうこともあるわけです。
助産院だろうが病院だろうが、出産における急変は起こりえるのだから(自分であれ、他者であれ)、それにそなえて、必要のない人はできるだけ医者や病院の施設を無駄に(あえて言いますが)わずらわせるべきではないと思います。軽い風邪程度の人間が、大学病院に行って、病院をパンクさせるよりも、地元の町医者などで診察を受けてくれ、ということをよく聞きますが、それと同じ理屈ですね。
忙しい、忙しい、この状況をなんとか打開してくれ、という医者は多くても、このような理論が少ないことに、欺瞞を感じてしまいます。
風邪だって高血圧だって、突然、重篤になったり死んだりする例はありますが、そういう人間に「常に大病院にいろ」と言う人はいませんよね。
何か、あったらすぐに駆けつけてくれ、と言います。
むしろ、そのほうが病院自体がスムーズに機能するので効率的です。
とりあえず、

①助産師がつききりで看ている、病院から15分以内の助産院で

②必要な手術にはすぐ同意するごく普通の患者の場合
(つまりごく普通の助産院の患者ですね)

忙しくて、つききりで看られない病院と尾同じ程度の所要時間だと思われますが、そのへんはいかがでしょうか。

それともう一つ。

>また、突然そういう救急搬送があれば、その日の外来診療や病棟回診などの日常業務はすべて一時的に中断せざるをえず、産婦人科の業務だけでなく、麻酔科、新生児科など、病院業務の全体に多大な影響がでることも少なくないと思われます。

これは病院内の正常な経過をたどっていた患者が急変しても同じことではないんですか?(救急外来の手はわずらわせるかもしれませんが一般外来には及ばないのでは)
私は最近、病院にお世話になりましたが、順番は予約制でしたし、「容態の悪い患者がいた場合はその方を優先する」という断り書きは当然納得して読みました。
それでもスムーズに看ていただき、なんの不満もありませんでした。もし、本来病院の必要のない人が「万が一に備えて」とばかりに押し寄せるような病院だったら、機能しなくて困ってしまいます。

rijinさんへ

それだけこの問題に興味があるのなら、是非ご一読をお奨めいたします。

http://www.web-reborn.com/books/book/whokankokunimiru.htm

とても興味深いですよ。

>国際比較データについては、背景要因を標準化しないと比較妥当


佐久市長が産科対策で広域連携構想 (信濃毎日新聞)

2007年03月11日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

群馬県や山梨県の病院に、他県からの産科救急患者を受け入れるような余力が残っていれば、佐久市長の「構想」も実現の可能性があるのかもしれません。

しかし、現実には、群馬県や山梨県も、産科医不足で周産期医療はかなり危機的な状況に陥っていて、自県内の救急車の受け入れだけでも精一杯の状況にあり、他県からの産科救急患者を受け入れるような余地はほとんどないのではと考えられます。

まずは、広域医療圏の中である程度は医療を完結できるように、地域内での連携を強化してゆく必要があると考えられます。

さらに、広域医療圏内で対応できない重症例については、県内の3次医療機関(信大、こども病院)にできるだけ早く搬送できる態勢(ヘリコプター搬送など)を整え、可能な限り、県レベルで医療を完結できるような体制を目指してゆく必要があると思います。

****** 信濃毎日新聞、2007年3月10日

「高速道を病院の廊下に」 医師不足・・・群馬側と広域連携 佐久市長が「構想」

 佐久市の三浦市長は9日、「高速道を病院の廊下に」とのキャッチフレーズで、医師不足の産科や小児科の救急・重篤患者を上信越道で群馬県の病院に運ぶ広域連携構想を明らかにした。「一病院ですべて対応できる時代ではない」として機能分担も図りたい考えだ。

 構想に重要な救急車の速度制限引き上げを求めて、14日に冬柴国土交通大臣と面談する予定。「山梨県の病院との連携に向け、中部横断道の早期全線建設も求める」としている。

 三浦市長によると、救急車の制限速度上限で上信越道を時速100キロ、一般道を時速80キロで走行したと単純計算。佐久インターから前橋市の群馬大病院までは57分、公立藤岡総合病院(藤岡市)までは44分、公立富岡総合病院(富岡市)までは36分で到着できるとした。同じ計算で、松本市の信大病院へは65分かかると試算。三浦市長は「信大に運ぶより群馬に運ぶ方が早い」と述べ、県の枠組みにこだわらない姿勢を強調した。構想実現に向け、今後群馬側の病院に呼び掛けるという。

 市長の構想について富岡病院は、取材に対し「医師不足の現状からすれば、互いのバックアップも考えられる話だ」。一方、藤岡病院は「小児科の夜間救急は現在、地域の開業医の応援も得てやっており、新たな受け入れは難しい」としている。

 医師不足問題などで、十広域圏ごとの連携を基本方針としている長野県は「佐久地方には中核となる県厚生連佐久総合病院もある。構想は一つの考え方だと思う」としている。

(信濃毎日新聞、2007年3月10日)

****** 

群馬県の産科医不足の状況
 【朝日新聞(2006年7月30日)より引用】
 産前産後の医療も、医師、施設の双方が不足している。群馬大院の峯岸敬・生殖再生分化学教授によると、群馬県の産科医は約4人に1人が70歳以上で高齢化が著しい。勤務医は月平均9~10回当直するなど、他県に比べて過度な負担がかかっている。また、昨年5月から、周産期医療にかかわる病院がネットワークで情報を共有するが、依然としてNICUベッド不足に悩んでいる。
 県内では55~60床必要とされるが、実際稼働しているのは40床前後。県立小児医療センターの高木剛・産科部長は「いつも埼玉、東京など県外の病院十数カ所に空きベッド状況を問い合わせている。それでも確保が難しい」と改善を求めた。

山梨県の産科医不足の状況
 【毎日新聞(2006年6月1日)より引用】
 出産できる医療機関のある市町村が減り、地域格差が拡大している。8月以降は、県内で出産できる病院や診療所は22から19に減少し、峡北、峡南、東部に加え峡西地域にも全くない状況になる。このため県は1日、甲府市内で県医師会や県産婦人科医会などによる協議会を開き、産科医療の拠点となる大型病院と出産できない診療所が連携するシステムの構築に向け協議し、地域格差の是正を目指す。


医療版の事故調査委員会の新設

2007年03月09日 | 医療全般

コメント(私見):

私の勤務する病院の医師談話室には、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、中日新聞、信濃毎日新聞、医療タイムス、Japan Medicineなどの主な全国紙、地方紙、業界紙が毎日届きます。診療の合間に、それらの新聞をいろいろ読み比べています。

医療事故に関する報道で、『医療ミス』とか、『誤診』とか、一方的にセンセーショナルな大見出しがついているものの、何回記事を読み返してみても、どこが医療ミスなのか?どこが誤診なのか?さっぱり理解できないような場合もあります。そういう時は、各紙の同じ事故を取り扱った記事を読み比べてみると、それぞれの担当記者の考え方によって、『重大な医療ミス事例』という取り上げ方であったり、『結果は重大であったが、医療ミスがあったかどうかに関しては、現段階では不明』という取り上げ方であったりと、記事のニュアンスがそれぞれ全く異なる場合も少なくありません。

(例えば、大野病院事件の報道など、)産婦人科関連の医療事故の記事の場合だと、自分の専攻している分野なので、記事を読んだ瞬間に「これは変だ!」と直感的にピンとくることもあります。しかし、他の診療科に関する記事の場合だと、一体全体、何が問題なのか?もよくわからないことが多いので、医師談話室でくつろいでいる他の診療科の先生方に「これはどうなっているの?」と聞いて詳しく解説してもらわないことには、門外漢にはさっぱり理解できません。

昨今の医療裁判の報道記事を見ていると、医学的には理不尽な理解しがたい判決も少なくないように思われます。それが医療崩壊を促進しているとも考えられます。医療事故の原因を究明するための公正な第三者調査機関を新設する必要があると多くの人が考えています。厚労省でもそれが検討されていて、新制度創設の準備が着々と進められている段階のようです。

「診療行為に関連した死亡の死因究明等のあり方に関する課題と検討の方向性」に関するご意見の募集について 【厚生労働省医政局総務課医療安全推進室】

****** 朝日新聞、2007年3月9日

「医療事故調」の報告公表 医療機関に還元 厚労省試案

 医療中の死亡事故の原因究明を行う医療版「事故調査委員会」設置に向けた厚生労働省の試案が8日、明らかになった。臨床医や弁護士らで構成する調査・評価委員会(仮称)を国か都道府県に設置。聞き取り調査を実施し、臨床経過などを評価したうえで作成する調査報告書は公表する。調査結果を医療機関に還元することで、再発防止を図る狙いだ。4月にも立ち上げる有識者検討会で、医師法改正を含めた制度設計を進める。

 試案では、医療機関に対して死亡事故の届け出の義務化を検討。届け出を受けた調査・評価委員会が、解剖やカルテ調査、関係者の聞き取りなどによって死因を調べ、臨床経過や診療行為などを評価する。作成した調査報告書は、医療機関と遺族に渡すとともに、個人情報は伏せて公表する方針だ。

 報告書で医療機関側の過失責任が指摘された場合には、国が速やかに行政処分を下す仕組みを設けるとともに、報告書を民事訴訟や刑事訴訟に活用する仕組みも検討する。

 このほか、遺族からの申し出を受けて調査を実施することや一定規模以上の死亡事故以外も調査対象とすることなども検討対象とする。

 この試案は9日、自民党の「医療紛争処理のあり方検討会」(座長・大村秀章内閣府副大臣)と社会保障制度調査会医療委員会の合同会議に示される。

(朝日新聞、2007年3月9日)

****** 共同通信、2007年3月9日

「医療事故調」で意見募集 厚労省、4月20日まで

 診療行為に関連して患者が死亡した場合の原因究明に当たる第三者組織創設について、厚生労働省は9日、同省がまとめた素案について国民から意見を募るパブリックコメントを同日から4月20日まで実施すると発表した。

 素案は患者が死亡した場合、臨床医や法律家で構成する調査組織が医療機関から届け出を受け、独自に遺体の解剖や関係者からの聞き取りを行い報告書をまとめるとの内容。

 国土交通省の航空・鉄道事故調査委員会の「医療版」といえるもので、記者会見した同省医政局総務課の二川一男課長は「変死体や殺人など犯罪が疑われるケース以外は、調査組織への届け出を義務付けるような仕組みを考えたい」と話した。

 同省は4月にも医療関係者や弁護士、患者団体らでつくる検討会を設置。報告書がまとまり次第、必要な法整備に取り組みたいとしている。

(共同通信、2007年3月9日)

「診療行為に関連した死亡の死因究明等のあり方に関する課題と検討の方向性」に関するご意見の募集について

****** 産経新聞、2007年3月9日

「医療版事故調」創設へ 届け出義務付け 厚労省試案

 厚生労働省は9日、診療行為の中で起きた不審死(医療関連死)について第三者機関が原因を調べる新たな組織を設置し、届け出を義務付ける試案を公表した。医療版の事故調査委員会とも言える組織で、今後、国民の意見を募るとともに、4月から専門家による検討会をスタートさせ、平成22年度の新制度開始を目指す。

 新組織は解剖医、臨床医、法律家からなる調査・評価委員会と事務局で構成。解剖やカルテの調査、関係者からの聞き取りを行い、医療関連死の原因を究明する。

 調査結果については、評価委員会が評価した上で報告書を医療機関と患者の遺族に提供。事故の再発防止に役立てる。新組織には中立・公平性が求められるため、国や都道府県などの行政機関か、行政機関の中の委員会として設置する方針。

 医師法では病死ではない異状死の場合、医師に24時間以内の警察への届け出を義務付けており、医療関連死についても医療機関は警察に届け出ていたが、捜査に直結する警察への届け出をためらう医療機関も多かった。

 新組織は医療関連死について一元的に原因究明を行う方針。暴行、薬物使用の形跡や交通事故が疑われるケースについては警察に届け出る。

 届け出の対象となる医療関連死の定義を明確にするため、厚労省は「医師法と新組織の関係を整理する必要がある」としている。届け出なかった場合の罰則規定についても検討する。

(産経新聞、2007年3月9日)

****** 読売新聞、2007年3月9日

医療事故にも調査委設置へ、厚労省が素案

 厚生労働省は9日午前、新設を検討している医療版の事故調査委員会の素案を公表した。

 医療ミスなどによる死亡事例の速やかな原因究明と再発防止を目的にしている。政府は2010年度からの制度開始を目指しており、来年の通常国会にも関連法案を提出する方針だ。

 調査委員会は行政機関と位置付けられ、医師や法律家ら専門家で構成する。遺体を解剖したり、病院にカルテなどの証拠類を提出させたりする権限を持ち、半年から1年程度で事故原因を分析した調査報告書をとりまとめる予定だ。報告書に基づいた迅速な医師の処分や、遺族への補償が実現すると期待されている。

 病院など医療機関は、調査委員会への死亡事例の届け出が義務化され、暴行や毒物の使用などが疑われる事件性の高い事例を除けば、警察の捜査よりも委員会の調査を優先させることを目指している。全国の死亡事例に対応するため、地方ブロック単位などで地方組織も整備する方針だ。

 医療ミスをめぐっては、現行の警察中心の原因究明では、必ずしも事故の再発防止につながらず、医師に重大な過失があっても裁判で有罪が確定するまで、医師免許の停止など行政処分ができないなどの問題点が指摘されていた。

 厚生労働省によると、医療が原因とみられる原因不明の死亡事例は全国で年2万件で、うち2000件程度は医療ミスが原因とみられている。

(読売新聞、2007年3月9日)

****** 毎日新聞、2007年3月9日

厚労省:医療死届け出義務化 事故防止へ調査委設置----試案発表

 厚生労働省は9日、医療事故の死因究明に関する「課題と検討の方向性」(試案)を発表した。診療行為中、予期せぬ形で患者が死亡した場合、医療機関に届け出を義務づけ、必要に応じて解剖や検査、関係者への聞き取りなどを実施するといい、医師や法律家などで構成する「調査・評価委員会」(仮称)を新設して調査を委ねる。同日から意見を一般募集し、有識者による検討会を4月に設置し、次期通常国会で新法の制定や関連法の改正をしたい考えだ。

 医療事故の死因究明については、現在は専門調査機関はなく、刑事事件や民事の医療訴訟で一端が明らかになるだけだ。第三者による調査機関の創設を望む声が高まり、日本内科学会が05年9月から調査分析のモデル事業を開始。柳沢伯夫厚労相も昨年10月、衆院厚労委で、国土交通省の航空・鉄道事故調査委員会に類似した専門家機関を作る意向を表明していた。

 試案によると、調査組織の単位は全国や地方ブロック、都道府県など幅広く検討。中立、公平性、秘密保持の観点から、行政機関か行政の中に置く委員会が検討されている。調査報告書は医療機関と患者の遺族に提供し、個人情報を削除しての公表も提案している。

 検討が必要な課題としては、▽死亡に至らない事例を届け出や調査の対象にするのか▽遺族の申し出で調査を開始するのか----などが列挙された。【玉木達也】

(毎日新聞、2007年3月9日)

****** 読売新聞、2007年3月8日

医療事故死 届け出義務化、究明組織 素案まとまる

 医療版の事故調査委員会の新設を検討している厚生労働省は、医療事故による死亡事例の届け出の義務化などを盛り込んだ素案をまとめた。

 医療事故死に関し、新組織が一元的に原因究明にあたることを念頭に置いたもので、この素案をたたき台に、来月設置される検討会が本格的な議論をスタートさせ、2010年度の新制度開始を目指す。

 新しい制度は、診療行為中に患者が予期しない形で死亡した事例について、調査組織が解剖や診療録(カルテ)の精査などにより原因を調べる仕組み。

 素案によると、医師と法律家が調査結果を評価した上で、報告書を医療機関と患者の遺族の双方に提供。医師に過失があると認められた場合は、厚労省が医師の業務停止などの行政処分を速やかに行う。該当する死亡事例については、医療機関に届け出を義務づける方針で、届け出を怠った場合の罰則も検討する。

 現在、死因究明を目的とした届け出制度は設けられていない。医師法21条に基づき、医療事故による死亡事例が「異状死」として警察に届けられるケースは多いが、捜査を目的としているため、迅速な死因究明や再発防止には必ずしも結びついていないのが実情だ。

 これに対し、新制度導入後は、届け出の義務化を前提に調査組織が一元的に原因究明を担当し、暴行や毒物使用の形跡があったり、交通事故が疑われたりする場合について警察に届け出るという役割分担案が、同省内で検討されている。

 また、調査組織には高度な中立性が求められることから、公益法人としたり学会に置いたりするのではなく、厚労省や都道府県に設置するか、国土交通省の航空・鉄道事故調査委員会のような委員会組織にする案を軸に検討を進める。

(読売新聞、2007年3月8日)

****** 共同通信、2007年3月8日

独自に解剖、聞き取りも 「医療事故調」素案判明 刑事訴追との関係課題 厚労省、4月にも検討会

 医療行為に関連して患者が死亡した場合の原因究明に当たる第3者機関創設について、厚生労働省がまとめた素案の全容が7日、明らかになった。医師や法律家で構成する「調査・評価委員会(仮称)」が現場に駆けつけ独自に解剖や聞き取り調査をし、報告書を作成、結果を再発防止に役立てることなどが柱で、国土交通省の航空・鉄道事故調査委員会の「医療版」。

 厚労省は国民の意見を募るとともに、4月にも専門家による検討会をスタートさせるが、刑事訴追の可能性があるケースの取り扱いなど検討課題は多く、関係者間の調整は難航も予想される。

 医療事故をめぐっては近年、民事訴訟が増加する一方、医師の刑事責任が問われるケースも目立つ。昨年、妊婦死亡をめぐり福島県立大野病院で医師が逮捕、起訴された後は、医療現場が司法に強く反発するなどし、中立・専門的な機関の設置を求める声が強まっていた。

 素案によると、創設される機関は解剖医や臨床医、法律家からなる調査・評価委員会と、事務局で構成。中立、公正性や秘密保持が求められるため、行政機関か行政機関の中の委員会として設置するとしている。全国または地方ブロック単位とするか、都道府県単位とするかは今後検討する。

 調査は、日本内科学会が実施しているモデル事業を参考に(1)死因を究明するため解剖、画像検査、尿・血液検査を実施(2)診療録の調査や関係者の聞き取り(3)結果を評価、検討(4)報告書の作成(5)報告書を当事者に交付し個人情報を削除して公表-を例示。結果を再発防止に役立てることも検討する。設置には必要な立法措置をとる。

 ただ、医師は異状死を24間以内に警察署に届け出ることが義務付けられている(医師法21条)ことから「新たに創設する制度との関係を整理する必要がある」と指摘。刑事訴追の可能性がある場合の調査結果の取り扱いや、報告書を民事訴訟などでどう活用するかも課題としている。

 警察庁によると、医療事故の届け出は1999年ごろから急増し、立件は99年の10件から2006年には約10倍の98件に達した。04年には日本医学会加盟の19学会が第3者機関創設を求める共同声明を出している。

医療事故と原因究明

 医療事故の民事訴訟では医学的な専門知識が求められる上、鑑定人の確保も難しく、長期化する傾向がある。訴訟は遺族側の負担が重いばかりでなく、訴訟の多い診療科では医師のなり手が少ないともいわれる。医師が刑事責任を問われるケースが相次いだこともあり、厚生労働省は事故の原因究明に当たる第3者機関の創設を検討。日本内科学会のモデル事業を参考にし、昨年6月からは医師法21条(異状死の届け出義務)の解釈などについて法務省、警察庁と協議を始めた。英国や米国の一部、豪ビクトリア州などでは、手術や麻酔関連死の多くが異状死として届け出られ、専門の検視官などが解剖、死因究明にあたる制度がある。

制度実現にハードル多く

 【解説】医療ミスか、それとも努力を尽くした上での死だったのか。医師と遺族が対立し、刑事手続きや民事訴訟に委ねるしかなかった医療事故の原因究明について、厚生労働省は7日、"医療版・事故調査委員会"創設の素案をまとめた。実現までのハードルは多いが、実効性ある制度としてスタートする日が待ち望まれる。

 航空機や鉄道事故では現場の物証や長年にわたる調査活動の蓄積があり、原因特定につながりやすいとされる。これに対し医療事故は、患者一人一人の特性や思わぬ容体の変化など要因が複雑に絡み合い、因果関係が分かりにくいことが多い。

 人手不足もある。日本内科学会は2005年9月から、全国7都道府県で同様のモデル事業を実施しているが、運営委員からは「解剖専門医の育成を」との声が上がった。大都市以外では、不足はもっと深刻だろう。

 厚労省の素案では、医師側が届け出ることを前提に、遺族からの届け出を認めるか、遺族をどの範囲とするか、死亡に至らない事故も対象に含めるのかなども検討課題として列挙されている。

 訴訟などに費やされてきた医師と遺族双方の負担を軽減し、納得できる結論が得られ、事故の再発防止にもつながる仕組みをどうやって作り上げるか。立場の違いを超えた議論が望まれる。

素案要旨

 厚生労働省がまとめた第3者機関創設素案の要旨は次の通り。

 【組織の在り方】

 診療に関連した死亡の死因を究明する組織は、中立性・公正性や臨床・解剖などに関する高度の専門性、調査権限、秘密保持などが求められるため、行政機関または行政機関の中に置かれる委員会を中心に検討する。監察医制度などとの関係を整理する必要がある。

 【組織の設置単位】

 全国または地方ブロックか、都道府県単位。都道府県や地方ブロックの場合は、支援や調査結果の集積・還元のため中央機関の設置も検討。

 【組織の構成】

 解剖担当医や臨床医、法律家で構成する「調査・評価委員会」(仮称)と、実務を担う事務局で構成。人材育成も検討。

 【届け出制度】

 届け出先や、対象となる診療関連死の範囲を具体化し、医師法21条の異状死の届け出との関係を整理する必要がある。

 国または都道府県が届け出を受け付けて組織に調査させるか、組織が自ら届け出を受け付ける仕組みが考えられる。

 【調査手順】

 モデル事業を参考に、例えば(1)必要に応じ解剖、画像検査、尿・血液検査などを実施(2)診療録の調査、関係者への聞き取り調査をし、臨床経過や死因を調査(3)調査結果を調査・評価委員会で検討(4)調査報告書の作成(5)報告書を当事者へ交付、個人情報を削除して公表-が考えられる。死亡に至らない事例や遺族からの申し出による調査開始、解剖の必要性の判断基準なども検討。

 【再発防止】

 再発防止のための対応として、診療関連死に関する知見や再発防止策の集積と還元、行政機関による指導を検討。

 【行政処分、民事紛争、刑事手続きとの関係】

 医療従事者の過失責任の可能性が指摘されている場合の、国による迅速な行政処分との関係、報告書の活用などによる民事紛争解決の仕組み、刑事訴追の可能性がある場合の調査結果の取り扱いを検討。

(共同通信、2007年3月8日)


羊水塞栓症による母体死亡例

2007年03月07日 | 出産・育児

コメント(私見):

羊水塞栓症はきわめて稀な疾患で、未だ根本的な治療法が見出されておらず、母児ともにきわめて予後不良な疾患です。周産期医学に残された重要な未解決疾患と考えられています。

典型的な症例では、分娩中または分娩直後に、経過に何の問題もなかった妊婦さんが、突然、心肺停止状態に陥り、院内にいる医師が緊急コールで呼ばれて現場に到着した時点では、既に母体死亡となっている場合も少なくありません。そのため、一次医療機関から高次医療機関に母体搬送するような時間的余裕は全くありません。帝王切開中など、たまたま手術室内などで発症して、発症現場に麻酔科医がいて、発症直後より、蘇生の専門家達によって集中的に治療が行われた場合であっても、重篤例では発症後1時間以内に死亡する場合が少なくないと言われています。羊水塞栓症の確定診断は、死亡後に剖検によって行われます。

羊水塞栓症は、いまだに病因も明らかになっていないため、発症の予知もできませんし、予防方法も明らかになっていません。妊娠すれば、誰でも羊水塞栓症を発症する可能性があります。

なお、前置胎盤で長期に入院していた患者さんが、低置胎盤となって、経腟分娩可能となることは、しばしば経験します。全前置胎盤、部分前置胎盤、辺縁前置胎盤、低置胎盤などの区別は、超音波検査により、内子宮口と胎盤との位置関係で診断されますが、非常に微妙で診断が難しい場合もあり、「前置~低置胎盤」と診断して分娩経過を見る場合も珍しくありません。いずれにしても、前置胎盤が原因で、突然、心肺停止となることはなく、胎盤の位置と羊水塞栓症の発症とは関係がありません。

参考:

羊水塞栓症について

日本産科婦人科学会誌54巻6号N-160、2002年6月

(17)羊水塞栓

【概念】
 羊水塞栓症は羊水成分(羊水,羊水中胎児由来細胞,胎便など)が母体血中に流入し,急性呼吸循環不全をきたす疾患あるいは症候群と定義できるであろう.約6~8 万分娩に1例と非常に稀な疾患であるが,根本的な治療法が見出されておらず母児ともにきわめて予後不良な疾患であり,周産期医学に残された重要な未解決疾患である.わが国の妊産婦死亡率は漸減しているが,羊水塞栓症による妊産婦死亡は減少していないため,妊産婦死亡のなかで羊水塞栓症の占める割合は漸増している.本症の病因は,母体血中に流入した羊水成分が母体肺動脈系を主とする全身の血管系に塞栓し,血流を遮断することによる臓器障害と理解されていた.しかし,物理的塞栓により発症するという考え方だけでは本症の病態を説明できない.種々のサイトカインやケモカインが本症に関与することが示されている.

【臨床症状】
 典型的な臨床経過は, 特に合併症のない妊産婦が分娩第1 期後半あるいは分娩直後に,突然の呼吸困難と胸痛を訴え瞬時にしてチアノーゼを呈しショックに陥り,その後多量の性器出血を伴ったDIC による出血傾向が出現し,そして,多くは意識の回復せぬまま死の転帰をとるというものであろう.初発症状としてよく知られている呼吸困難や胸痛は必発するものでなく,けいれん,血圧低下,出血などで発症することも少なくない.発症後,ショックから心停止と急速に進行する症例は多く,1 時間以内に半数が死亡するといわれ,死亡率は約60~80%に及ぶ.DIC は,40~83%の症例に出現するといわれ,しばしば多量の性器出血を伴い,臨床上問題となる.

【診断】
 羊水塞栓症の診断は,従来,死亡後に剖検で確定されることが多かった.この場合,肺の細動脈や毛細血管に胎児由来の微細物(扁平上皮細胞,毳毛,胎脂,ムチン,胆汁様物質など)が証明される.生存例では簡便で迅速に行える診断法が確立されていなかったため,臨床徴候から本症を疑われるものの確定診断に至らぬ症例があったと考えられる.また,羊水塞栓症以外の妊産婦の母体血から胎児由来の扁平上皮やトロホブラストが証明されると報告されており,羊水の流入があっても急性呼吸循環不全に至らないニアミス症例や全く何も起こらない妊産婦も存在すると想定される.本症の発症に胎児成分の母体血中流入は必要条件であるが,十分条件とはいえなくなった.
 現在考えられうる診断基準を表6 に示した. 突然妊産婦に起こった急性呼吸循環不全,あるいは原因不明の産科DIC をみたなら,まず,本症の疑いをもつことが重要である.本症の診断には母体血中への羊水の流入が証明されなければならないため,そのサンプルとして,母体血を採血しておくことが必要である.従来の病理学的検査法に加えて,血清学的検査法が発表され,生存例においても羊水流入の証明が容易となった.胎児尿由来のコプロポルフィリンや胎便由来の亜鉛コプロポルフィリンおよびSTN(sialyl-Tn)が,母体血中に測定されれば,母体血への羊水の流入が証明される.コプロポルフィリンは,光により分解されるため,血清分離後,暗所で保存する必要がある.STN(sialyl-Tn)は腫瘍マーカーであり,イムノアッセイ法で測定される.また,生存中の羊水流入の診断に,母体血,特に右心血のスメアで胎児成分を証明することは有用であるが,カテーテル挿入の際に高頻度に母体の扁平上皮が混入するといわれその解釈には注意をはらうべきである.

表6 羊水塞栓症の診断基準
1.臨床所見
①急激な低酸素(呼吸困難,チアノーゼ,呼吸停止)
②原因不明の産科DICあるいは多量出血
③上記症状が分娩中,帝王切開時,D&C時,分娩後30 分以内に発生
2.母体への羊水流入の証明
①剖検における肺組織中の羊水成分の証明(扁平上皮,毛毳,胎脂,ムチン,胆汁様物質など;ムチン染色・STN 染色も有用)
②母体血スメアによる羊水成分の証明(できれば右心静脈血;Buffy coat が望ましい)
③母体血中STN(sialyl Tn)高値
④母体血中コプロポルフィリン高値(遮光保存)

【治療】
 羊水塞栓症は病因がいまだ明らかとなっていないため,予知および根本的治療は困難で,低酸素症,ショック,DIC に対する対症的なものにならざるを得ない.治療の目標は低酸素症の改善,心拍出量と血圧の維持,DICの治療である.本症に対する発症早期
の治療を図7 に示す.初期治療が迅速にかつ適切に行われることが肝要である.本症が発症すると肺の換気拡散能の広範な障害のため患者は重篤な低酸素症となるため,高濃度酸素を投与し,さらに患者が呼吸困難を訴えたり,意識が混濁したなら積極的に気管内挿管を行い換気が不十分なら人工呼吸をする.ショックに対して副腎皮質ステロイド(ソルコーテフ,ソルメドロール)やウリナスタチン(ミラクリッド)を静脈内投与し,vital signs を頻回にチェックし,血圧が維持されるように輸液・輸血ならびにドーパミンを点滴静注する.さらに,DICの進展を防止するため速効性のあるヘパリンを静注する.とくに出血増加の副作用が少ない点から低分子ヘパリン(フラグミン)の使用が勧められている.さらに,本症の臨床像の性格から高次医療施設のICU にて管理されるべきと考えられる.初期治療にて不可逆な状態となる前にICU に搬送されたなら,次のような処置をつけ加えるべきである.呼吸管理においては,成人呼吸窮迫症候群(adult respiratory distress syndrome)発症に注意し,残存肺機能を増加させるような人工換気を行う.循環管理はSwan-Ganzカテーテルを留置し,特に左心機能のパラメーターに注意をはらう.急性期の左心不全を乗り切ると救命の可能性がでてくる.肺水腫の出現に注意しながら輸液,輸血を継続し,急性血液浄化療法を試してもよいだろう.

【参考文献】

1.Clark SL, Hankins GDV, Dudley DA, Dildy GA, Flint Porter T. Amniotic fluid embolism : Analysis of the national registry. Am J Obstet Gynecol 1995 ;172 : 1158―1169

2.木村俊雄,高倉賢二,山出一郎,廣瀬雅哉,野田洋一.羊水塞栓症:周産期医学に残された重症未解決疾患.産婦進歩1996 ; 48 : 375―386

3.大井豪一,寺尾俊彦.羊水塞栓症.日産婦誌1998 ; 50 : 666―674

【野田洋一,木村俊雄】

****** 産経新聞、2007年3月6日

女性死亡し、長女は脳障害 高松赤十字病院を遺族が告発

 高松市番町の高松赤十字病院で平成17年に出産のため入院中だった女性=当時(30)=が死亡、生まれた長女に脳障害が出て、カルテも改ざんされたなどとして東京都内に住む女性の兄が昨年4月、主治医らを業務上過失致死傷罪と証拠隠滅の罪で高松北署に刑事告発したことが5日、明らかになった。女性の夫と長女は今後、病院を相手取り、損害賠償を起こすという。病院はカルテの不適切な書き換えは認めているが「誤診はなく、医療行為は適切」としている。

 関係者によると、女性は16年11月、他病院の紹介で高松赤十字病院に来院。主治医は、胎盤が子宮口をふさいで帝王切開が必要となる「全前置胎盤」の疑いがあると診察、同年12月20日には前置胎盤を示す「P」などの文字をカルテに記載した。17年1月4日、出血を訴えた女性を別の医師2人が診察、自然分娩できる「低置胎盤」と診断。2日後の6日、産気づいた女性は入院したが深夜に心肺停止状態となり、7日未明に死亡。帝王切開で長女が生まれたが、脳に障害が残った。

 女性の夫や兄ら遺族は同年1月11日、病院に説明を求めた際、12月20日のカルテをカメラで撮影。「P」と書かれた部分が12日の説明時には「低置-」と書き加えられていた。主治医が加筆した、という。

 遺族は女性が死亡して長女に障害が残ったのは病院が前置胎盤を低置胎盤だと誤診、適切な時期に帝王切開しなかったためとしている。一方、病院は女性の死因について「羊水が血管に入ってできた血栓で起きた『羊水塞栓』と病理解剖で判明している」と主張。また、長女の障害についても「女性の診断結果とは関係がない」と主張している。

(産経新聞、2007年3月6日)

****** 読売新聞、2007年3月5日

高松赤十字病院 「誤診で妊婦死亡」告訴 

遺族近く賠償提訴 死後、カルテ書き換え

 高松市の高松赤十字病院で2005年、出産に備えて入院中だった同市内の女性(当時30歳)が死亡したのは誤診が原因で、死後にカルテも改ざんされたとして、東京都内の遺族が当時の主治医ら医師4人を業務上過失致死容疑で香川県警に告訴していることがわかった。病院は、カルテを書き換えたことは認めているが、「医療行為は適切」としている。遺族は近く、病院側を相手取り、損害賠償請求訴訟を起こす。

 告訴状によると、主治医は04年11月、胎盤が子宮口を完全にふさいでい帝王切開が必要な「全前置胎盤」の疑いと診断。12月20日の検診でも「前置胎盤か」と診断し、カルテに記載した。

 05年1月4日、女性が出血を訴えて受診すると、別の医師2人は自然分娩が可能な「低置胎盤」と診断。2日後、女性は病室で心肺停止状態で発見され、帝王切開で生まれた女児は脳に障害が残った。

 遺族は1月11日、病院に説明を求め、12月20日の検診時のカルテをカメラで撮影。「前置胎盤か」とあったのに、翌12日に見ると、低置胎盤の疑いがあるように書き換えられていた。遺族は、医師らが低置胎盤と誤診し、適切な時期に帝王切開をすべき義務を怠ったと指摘、主治医については「死後に過失を隠蔽するため、カルテを改ざんしたのは許せない」としている。

 病院は、病理解剖の結果、死因は羊水が血管に入ってできた血栓で肺の血管などがつまる「羊水塞栓」と説明。「訂正の仕方は日付を書いてないなど不適切だったが、病院としては低置胎盤と判断している。改ざんではない」としている。

(読売新聞、2007年3月5日)


周産期医療の崩壊を防ぐために

2007年03月05日 | 地域周産期医療

***** コメント(私見)

周産期医療の崩壊を防ぐための急場しのぎのいろいろな対策が提唱されています。その中でも、産婦人科医の集約化は、まず今すぐ早急に取りくまねならない緊急の課題です。

しかし、根本的には、新人・若手医師を増やしていくことが一番大切なことだと思います。時間と手間が最もかかり、対策としての即効性は全くありませんが、次代を担う若者達の育成が最も大切なことで、真剣に取り組んでゆく必要があると思います。

従来の、5年生のポリクリの医学生が2日間づつやって来るのに加えて、来年度からは、6年生の医学生が1ヶ月間コース(診療参加型臨床実習)で産婦人科にも来てくれます。そもそも、彼らのうち、将来、産婦人科を専攻する者はほとんどいませんが、まずは彼らに産婦人科に少しでも興味を持ってもらうきっかけとなることが大切な最初の第一歩です。

また、当院は初期臨床研修医を毎年8名づつ採用しています(大学とのたすきがけも含む)。産婦人科にまわって来るのは2年目なので、すでに将来の志望科が決まっている人も多いですが、産婦人科も進路の候補として興味をもってくれる若者も中にはいます。

大学から、3年目~5年目で、ローテートで来てくれている若い先生達にも、しっかりした技術を身につけてもらい、辞めないで、末永く県内で頑張ってもらいたいと思っています。

さらに、婦人科腫瘍専門医などのサブスペシャリティ専門医の資格修得のための修練の場となりうるように診療体制を強化していけたらと思っています。

これからは、目先の利害にはとらわれず、次代を担う若者達の育成に最も力を入れていきたいと考えています。また、彼らが今後末永く働いていけるような無理のない労働環境を整備する必要があります。

******

『臨床婦人科産科』誌3月号の特集「周産期医療の崩壊を防ごう」

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週間医学界新聞(医学書院)、2007年3月5日

【Interview】
周産期医療の崩壊を防ぐために

倉智博久氏 山形大学教授・産婦人科学。1976年大阪大学医学部卒,医学博士。日本産科婦人科学会専門医,日本生殖医学会生殖医療指導医,婦人科腫瘍専門医。専門領域は生殖内分泌,婦人科腫瘍。

 産婦人科は過酷な勤務状況に加え,医療事故に伴う高い訴訟リスクから次世代の担い手の数が減少している。そこに2006年,福島県立大野病院の産婦人科医が逮捕・起訴され医療界に大きな衝撃を与えた。そこで,周産期医療の現状と崩壊を防ぐために必要なことは何か,『臨床婦人科産科』誌3月号の特集「周産期医療の崩壊を防ごう」を企画編集した倉智博久氏に聞いた。

――周産期医療を取り巻く環境は大変厳しく,崩壊寸前との声が上がっています。崩壊を防ぐために取り組むべきこととは何でしょうか。

倉智 それは産婦人科医を増やすことに尽きると思います。ただ増やすためには2つの大きな課題があります。それは激務と訴訟リスクの高さです。周産期医療は時間を問わないため24時間体制を取らねばならず,その結果,当直も多く過酷な勤務となります。訴訟リスクについては,訴訟数は産婦人科が最多ではありません。しかし,医師1人あたりの訴訟数では最も多く,中でも周産期,産科関係が圧倒的です。背景には産科診療に対する皆さんの「母子ともに元気で退院するもの」というイメージがあると思います。

 この「母子ともに元気で退院するもの」というイメージの背景には,われわれのきわめて大きな努力の積み重ねがあります。新生児死亡率は世界最低レベルで,妊産婦死亡率は多少改善の余地はあるものの,世界的に低いレベルを維持しています(図1)。そのことが皆さんの期待を高め,悪い結果が起きた時のギャップを非常に大きくしてしまったのかもしれません。

産婦人科医のバーンアウトを防ぐには集約化は必須条件

――激務の問題との関連で,リスク的にも産婦人科医の1人診療が難しくなりセンター化が始まっていますね。

倉智 集約化を進めないとどうにもならない現状があるということを,まずご理解いただきたい。集約化を進め,周産期医療の体制を整えないと産婦人科医がバーンアウトして周産期医療から去ってしまう悪循環が続いてしまいます。産婦人科医が増えれば解決しますが,産婦人科医として独り立ちするには,5年,10年という時間が必要ですから,現状で取り得る対応策は集約化しかないと思います。

 想像してみてください。1人で年間100の分娩をカバーしようとすると,月に8-9件と少なく感じられるでしょう。しかしお産はいつ始まるかわかりません。1人で365日対応するためには,心身ともに拘束されている状況に陥ってしまいますよね。

――家に帰ってもいつ呼び出しがあるかわからない状況だと心が休まらない。精神的にも疲労が蓄積しますね。

倉智 まさにそうです。家に帰ってお酒もおいそれと飲めません。うっかりお酒を飲んでいて呼び出されたら,「あの先生は,酒を飲んできた」と言われてしまう(笑)。町から離れられない,お酒も飲めないでは,息つくことさえできません。これは2人でもまだ厳しい。最低3人で年間400分娩が現状では望ましい姿だと思います。本来は年間1000単位の分娩数で集約化し,最低6-7人でローテーションを組むぐらいまでになるのが理想だと思います。つまり1人で100よりは2人で300のほうが楽ですし,3人で400ならもっと楽になります。そういう考え方で集約化を進めれば,産科医1人のストレスは少なくできるはずです。

――都市部は,人口が多い分出産も多いので,狭い地域でも集約化できると思うのですが,地方は広い範囲をカバーすることになり,集約化は難航しそうですね。

倉智 人口密度が低く面積の広い地域では,集約化というのが非常に難しいです。しかし,これは行政や住民の方への十分な説明をして,納得していただく必要があります。総論に賛成していただけるなら,合理的に考えて集約化にご協力いただかないと,いざ集約化しようという時,その地域から産科医がいなくなっていたという可能性も出てきます。

 こうした状況は決して東北地方や北海道だけでなく,大都市圏の近くでも厳しい状況です。ですから,この危機感をもっと私たちが伝えていかなければいけませんし,そうした状況を一般の方や行政にも,理解していただかなければいけないと思います。

女性産婦人科医の力を生かすために

――女性の産婦人科医が増え,日本産婦人科学会の20代学会員では女性が半数を超えています(図2)。そうしますと,女性のライフイベントである出産と育児をどうカバーし,女性産婦人科医に力を発揮してもらうかも焦点になると思います。

倉智 女性医師が増えることについては,産婦人科の性格からして,決して悪いことではありません。男性も女性も両方必要だと思っています。しかし,これは医師だけではないと思いますが,男性と女性を公平に見ても,やはり女性のほうが不利だと思うところがあります。

 例えば,女性が産婦人科の医師で,男性が内科医や外科医のご夫婦がけっこうおられます。そういうご夫婦を見ていますと,女性医師のほうが育児や家事の負担をより多く負っています。私は,同じプロフェッショナルなのだから,これは公平でないと思います。プロフェッショナルな仕事を持っている女性を,パートナーとして選んだのだから,パートナーを活躍させる責任を負うことをご主人には自覚してほしいです。

 そして,私たちも女性医師が働きやすい環境を整えなければいけません。託児所の整備は大事ですし,いろいろな意味で女性が不利にならない環境を整えることが大事だと思っています。組織として出産・育児をきちんと受け入れ,その期間をちゃんとカバーする。そして「また,あなたに期待していますよ」という,戻ってきやすい雰囲気と,同僚の受け入れ体制の整備は絶対に必要なことだと思います。

 もう一方で,女性医師の方にもっとプロ意識をもってほしい。復帰したらプロとしてまたキャリアアップをしてもらいたい。「これはプロの仕事なのだ」という気持ちを持ってこれからも活躍してほしいです。

周産期医療の崩壊を防ぐ

――今までお話しいただいたこと以外で周産期医療の崩壊を防ぐために必要なのはどのようなことですか。

倉智 無過失補償制度は必要だと思います。本制度については専門ではないので,あまり踏み込んだことは申し上げられませんが,運用するにあたって不可欠なことは補償対象の厳密な評価とそれをチェックする機構だと思います。そして予算の確保です。この2つの問題が解決されないと,よい制度にならないですし,途中で破綻してしまう可能性があると思います。

 もう1つ,根本的な問題として,なんとしても産婦人科医を増やさなければいけないわけです。そのための方策の根本は,私たちが教育を熱心にするということだと考えています。産婦人科医の魅力を,講義や実習で確実に伝える。また,そういう学生を確保するために,いろいろなお付き合いもしなければいけないと思います(笑)。例えば一緒にお酒を飲むし,いろんなところに顔を出す,そのようにわれわれも必死にならなければならないと思いますし,私もそのように務めているつもりです。

 ですから,このうえは行政による協力が不可欠だと思います。例えば奨学金制度もそうですし,医師の給与体系もぜひ見直してほしいと思います。ハイリスク・ハイリターンの考え方をぜひ取り入れてほしいと思います。医師の経験年数だけで給与が決まるというのでは,なかなか納得しにくいところがあります。

 ハイリスク・ハイリターンというのは,なにも産婦人科だけではありません。一般的にいえば,外科系のほうが,あるいは内科系でも侵襲的な治療をされるほうがリスクは高くなります。専門を決める際,同じ報酬のままではリスクの高いところを敬遠してしまう傾向があるのは仕方がないのかもしれません。やはり,リスクに応じた報酬を確保していかなければいならないと思います。

【終了】

周産期医療の集約化,訴訟リスクへの対応,産科医師を増やすための方策などの詳報は,『臨床婦人科産科』誌3月号「周産期医療の崩壊を防ごう」(医学書院発行)に掲載しております。

(週間医学界新聞、2007年3月5日)


相次ぐ分娩取り扱い中止

2007年03月03日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

県から周産期母子医療センターに指定されているような地域の拠点病院であっても、医師確保が非常に困難となりつつあり、全国各地で産科休止に追い込まれる病院が相次いでいます。

この調子で分娩施設がどんどん減り続けていくと、一体全体、数年後にはどの分娩施設が無事に生き残っているのやら、全く見当もつきません。

地域内の産科がことごとく絶滅してしまってからでは、もはや手遅れでどうにもなりません。

まだ何とか一部の産科がかろうじて生き残っているうちに、各県で早急に協議して残すべき重点化病院を指定し、その指定された病院に、産婦人科医、助産師、小児科医、麻酔科医などを集約化し、待遇を大幅に改善するなどの強力な緊急避難的対応策を断固として実行に移す必要があります。

参考:

医師不足の大学病院、派遣医引き揚げ(毎日新聞)

深刻さ増す「お産状況」 (信濃毎日新聞)

産科施設の減少

産科/検討進む医師の集約化 (毎日新聞)

旭川日赤の産婦人科医3人 旭医大が派遣打ち切りへ (北海道新聞)

医師不足受け「里帰り出産」を制限 中津川市民病院 (中日新聞)

医療を問う 自治体の危機 (産経新聞)

産婦人科医引き揚げ 総合磐城共立病院 (朝日新聞)

地域の基幹病院での分娩取り扱い中止

産科施設の減少に関する最近の報道

「お産ピンチ」首都圏でも 中核病院縮小相次ぐ (朝日新聞)

産科医不足、大阪の都市部でも深刻 分娩制限相次ぐ(朝日新聞)

****** 毎日新聞、北海道、2007年2月1日

地域の病院悲鳴 休診相次ぎ、常勤医消える?----道内各地、4月から

◇大学が医師引き揚げ/退職し都会へ

 道内各地の病院で、派遣元の大学病院の医師引き揚げなどで、今年4月からの診察に赤信号がともるケースが相次いでいる。釧路労災病院(釧路市)は31日、小児科と産婦人科 の休診を発表。市立根室病院(根室市)でも内科の常勤医が不在になる可能性がある。各病院とも、後任医師探しに躍起だが、残された時間はわずかで地域医療が大きく揺らいで いる。【山田泰雄、本間浩昭、仲田力行】

 釧路労災病院(小柳知彦院長、病床数500床)の2診療科の休診は、これまで医師を派遣していた北大と旭川医大の両医局が、来年度以降の派遣中止を通告したため。今後は釧 路赤十字病院に小児科と産婦人科の医師が集約される予定。

 記者会見した小柳院長は「こういう形になり残念。こちらの立場は大学側に全然考慮されず、私たちは通達を受けざるを得なかった」と不満を表明する一方で、「内科、外科など 15の診療科は従来通り残り、全力を傾注して地域住民の要望に応えていく」と述べた。

 市立根室病院(羽根田俊院長、病床数199床)では内科医4人のうち、3人を派遣してきた旭川医大が今年度末で派遣打ち切りを通告。残る1人も退職の意向を固めている。市 は常勤医確保に向け、道や道内の医大に派遣先を求めているが、見通しは立っていない。

 同病院では、産婦人科の医師が06年9月に不在となった。市内では入院・分娩(ぶんべん)が不可能となり、60キロ以上離れた隣接自治体の病院などに通わざるを得なくなっ ている。

 また、十勝管内士幌町で唯一の医療機関の士幌町国民健康保険病院(安達博昭院長、病床数60床)で、常勤医師4人のうち3人が3月末に退職することが分かった。いずれも「 都市部の病院に移りたい」と希望。医療法では、病床数から最低3人の医師が必要で、同町は「医療の低下を招かないように、2月中に最低3人は確保しなければいけない」と話 している。

(毎日新聞、2007年2月1日)

****** 河北新報、2007年3月2日

産科医集約の動き加速 青森 弘前大1人体制廃止打ち出す

 青森県内で、産科休止に追い込まれる病院が相次いでいる。弘前大医学部の産科婦人科学教室が2007年度の人事異動で、医師集約化の方針を打ち出したためだ。地域の拠点病院に産科医を重点的に配置する動きが加速し、医師の激務改善と医療充実への期待が高まる一方、妊婦側の不安や負担が増えるのではないかと懸念する声も広がっている。

 弘前大医学部の産科婦人科学教室は2月26日、新年度の医師派遣について、「産科医を1人にしない方針」(佐藤敬医学部長)を決めた。

 方針に従い、常勤医1人体制の青森労災病院(八戸市)と弘前市立病院から、医師を本年度いっぱいで引き揚げる。青森労災病院は産婦人科の休止を決め、弘前市立病院も週2回の婦人科外来を残すのみになった。

 「医師集約の必要性は分かる。残念だが、いずれこうなるだろうという気持ちはあった」

 弘前市立病院の松川昌勝病院長は2月28日の会見で、弘前大の方針に理解を示した。「安全面から、1人体制に対する危惧(きぐ)もあった」と打ち明けた。

 不安の声もある。地元に分娩(ぶんべん)施設がなく、弘前市内で2児を出産した平川市の女性(32)は「仕方がないけれど、大きい病院の産科や小児科が次々となくなり、出産や育児への不安が増えている」と憂慮する。

 今回の人事方針の背景には、青森県内の産科医不足が深刻化し、改善の兆しが見えないことにある。

 国の調査では04年12月現在、県内の産科医は94人で、人口10万人当たり6.47人と全国ワースト4位(1位は埼玉の6.09人)。臨床研修制度が義務化された04年度以降、弘前大医学部を研修先に選ぶ産婦人科の研修医は1人もいない状態が続く。

 激務が産科医不足に拍車を掛ける。同教室が昨年9月、県内の産婦人科の病院勤務医に実施したアンケートによると、月間勤務時間は200―300時間。6割以上の医師が仕事量を過重と感じ、約3割が「職場を変えたい」と考えていた。

 高齢化も進んでいる。臨床産婦人科医会の県内会員は60代以上が約4割を占め、20、30代は2割以下にとどまる。調査担当者は「医師の減少が続けば、拠点病院でも医師不足に陥る可能性がある」と指摘する。

 弘前大が医師派遣の在り方を見直した結果、地域の中核病院に位置付けられている国保黒石病院(黒石市)と西北中央病院(五所川原市)はそれぞれ1人から2人へ、高度医療を担う国立病院機構弘前病院は3人から4人へと増員が決まった。

 弘前病院は03年度まで常勤医が4人いたが、04年度から3人体制が続いていた。同病院は「まだ人事が確定せず、詳細は不明」とした上で、「新生児集中治療室など高次医療を担っており、医師の負担が大きい。もし人員増になれば大変ありがたい」と歓迎している。【青森総局・片山佐和子】

(河北新報、2007年3月2日)

****** 産経新聞、2007年3月2日

東金病院産婦人科、4月から休診 常勤医不在、再開見通し立たず

 東金市の県立東金病院(平井愛山院長)が4月から、産婦人科の診療を休止することが1日わかった。常勤医が3月末で不在になることに伴う措置。すでに出産は受け入れてなく、外来の受け入れも6日で中止する。今のところ医師確保の見通しは立たず、当面は再開が困難な状況に陥っている。

 東金病院によると、産婦人科はこれまで常勤医2人の態勢だったが、50代の医師がほかの病院に移るために2月末に退職。もう1人も定年で3月末で退職するため、常勤医が不在という事態になった。

 これに伴って出産の受け入れを2月で中止。3月以降に出産を控えた妊婦には事情を説明し、転院してもらったという。さらに外来の診療も6日を最後に当面の間、見合わせることを決定。昨年10月まで週6日あった外来診療が4月以降はゼロになる。

 東金病院は18の診療科を有する山武地域の中核病院。近年は産婦人科以外でも、内科などで常勤医が不足する状況が続いている。

 県病院局は「早急に医師確保に取り組みたいが、全国的にも産科医は不足している。確保の見通しは今のところ立っていない」としている。

 県内では、県立佐原病院が小児科医の退職をきっかけに昨年3月末に産科を休止。銚子市立総合病院も昨年12月末でお産の取り扱いをやめるなど、産科医不足による産科の休止が相次いでいる。

(産経新聞、2007年3月2日)

****** 中日新聞、2007年3月3日

福井総合病院、分べん中止 小児、産科医不足で

 福井市新田塚一丁目の福井総合病院は一日から、分べん業務の受け付けを中止した。新生児の健康状態を診る小児科医の不足が理由で、再開のめどは立っていない。勝山市の福井社会保険病院も産科医が一人になるため、四月から分べん業務を中止する。

 福井総合病院は、産婦人科医二人、小児科医三人の態勢で分べんや母子検診を行ってきた。三月末で小児科医二人が退職するが、四月の補充で常勤医一人しか確保できず、新生児の検診を十分に行えないとして中止を決めた。妊婦の検診は続ける。現在、入院中の二人の妊婦については、希望を聞いて出産まで担うか転院先を紹介する。

 同病院は、安全な出産態勢を確保するために県が二〇〇四年に始めた「周産期医療システム」で「地域周産期母子医療センター」に位置づけられた六病院の一つ。新生児集中治療管理室(NICU)に相当する設備があり、他病院から出産時のリスクが高い妊婦の受け入れが可能だった。

 県健康増進課は「県立病院などでNICUを増床しており、県のシステム自体に影響は少ない」と話し、福井総合病院については再開の可能性を含めた現状を把握した上で対応を決める方針。

 同病院は「年度途中でも医師が確保できれば再開したい」と話している。

 また福井社会保険病院は、産婦人科の医師二人のうち、自治医大卒の一人の派遣任期が三月末で切れ、後任の医師が見つからなかった。これにより奥越地域で出産できる医療機関はなくなる。

 県内で出産できる医療機関は二十四に減る。県医務薬務課によると、〇四年末時点の県内の産科医は八十五人。〇五年度の産科医一人当たりの分べん措置数は一一四件と、全国平均の百三十四件を下回る。同課は「相対的には、産科医は不足していない。検診は身近な機関で受け、出産は安心できる施設で行ってもらえれば」と話している。【北村剛史、字井章人】

(中日新聞、2007年3月3日)

****** 西日本新聞、大分、2007年3月2日

市民病院 産科、来月から休診 中津市決定 医師の確保できず

 医師不足のため中津市民病院産婦人科の休診が危ぶまれていた問題で、新貝正勝市長は1日、新しい医師が確保できなかったとして、4月から産科を休診することを明らかにした。同日始まった定例議会の行政報告で述べた。

 病院では、産婦人科医3人のうち1人が民間病院に移ることを希望したため、ほかの2人を派遣していた九大医学部が「万全の態勢を取れない」として医師の引き揚げを通告。病院は各地の大学病院などに医師派遣を要請していた。2月までに2人が辞め、1人が今月末に退職するが、後任を確保できなかった。

 病院は当面の休診を決めたが、引き続き、医師確保を目指す。一方、婦人科は、九大産婦人科と西別府病院からの医師派遣が決まり、4月から週1回の外来診療を行う。

(西日本新聞、大分、2007年3月2日)

****** 熊本日日新聞、2007年2月28日

常勤の産科医、不在に 牛深と小国の自治体病院

 全国で産婦人科の医師不足が深刻となる中、県内でも天草市牛深町の市立牛深市民病院(松崎博充院長)と阿蘇郡小国町の小国公立病院(松村克己院長)で、四月から常勤の産婦人科医師が不在となり、出産や入院ができなくなることが、二十七日分かった。

 医師を派遣してきた熊本大が派遣を打ち切り、医師配置を広域的に再編することにした。両病院の外来診療は非常勤で継続するが、自治体病院は地域医療の中核を担っており、地域住民に不安も広がっている。

 牛深市民病院では昨年三月、それまで産婦人科医師を派遣してきた福岡大が医師を引き揚げ、同年四月、地元の要請で熊本大が医師を派遣した。しかし、「医師一人体制では、過密な勤務の中で医師も患者もリスクが高まる」(同大)などとして、三月いっぱいでの引き揚げを決めた。

 一方で、天草地域で中核となる天草中央総合病院(本渡地域)の医師は三人体制と強化。同病院から週一~二回程度、医師を牛深市民病院に派遣し、外来は継続する。

 小国公立病院では昨年十一月、熊本大から「医師を地域の中核病院へ集約したい」と申し入れがあった。四月からは阿蘇市の民間病院が増員となり、同病院から非常勤医が週一回程度、小国に派遣される。

 産婦人科医師の減少は全国的な傾向。当直や緊急呼び出しが多いなど勤務が過酷で、医療訴訟を抱えるリスクも高く、志望する医師が減少。加えて、〇四年に始まった新人医師の研修制度で大学の医師が減少している。

 熊本大学の片渕秀隆教授(婦人科学)は「地域のことを考えれば苦渋の決断。しかし、大学も医師が不足する中、地域の医療体制を維持するため病院の枠を超えた体制を考えた」と話している。

 小国公立病院の児玉秀次郎事務局長は「残念だが申し入れを受けざるを得ない」、天草市の安田公寛市長は「大学の医師が足りない現実は理解している。市としては、医師確保をあらゆる方向から検討したい」と話している。【藤山裕作、隅川俊彦】

(熊本日日新聞、2007年2月28日)

****** 琉球朝日放送、2007年3月1日

県立北部病院 診療再開の目途立たず

 診療が休止状態にある県立北部病院の産婦人科について、県は、医師の確保が困難として、新年度も再開の目途が立っていないことが明らかになりました。県議会一般質問最終日の1日自民党の岸本恵光議員が県立北部病院の産婦人科問題を取り上げました。

 岸本議員は、産婦人科の診療が休止した後、2年前に防衛省派遣の医務官が着任したものの、分娩や手術態勢が組めずに診療再開の目途が立っていないことを指摘し、診療再開に向けた県の対応を質しました。

 これに対して知念清病院事業局長は、産婦人科の医師が1人では再開できない現状を説明し、「県外の大学病院や民間病院と連携して医師確保に努める」と述べたものの、具体的な対応策を示すことはできませんでした。

(琉球朝日放送、2007年3月1日)

****** 産婦人科 分娩休止一覧

「勤務医 つれづれ開業日記」より

昨年 
4月 福島県大野病院/福島
    新城市民病院/愛知
    西宮市立中央病院/兵庫
    宇都宮社会保険病院/栃木         
    県立佐原病院/千葉
        市立函館病院/北海道
        岐阜社会保険病院/岐阜
    北九州市立八幡病院/福岡
    下伊那赤十字病院/長野
    国立病院機構・鶴舞医療センター/京都
    健康保険南海病院/大分
    草加市立病院/埼玉
    社会保険神戸中央病院/兵庫
        国立病院機構・水戸医療センター/茨城
    済生会富田林病院/大阪
        八代総合病院/熊本
    荒尾市民病院/熊本
    斗南病院/北海道
        金沢赤十字病院/石川
    金沢市立病院/石川
        県立佐原病院/千葉
        市立小樽病院/北海道
    庄原赤十字病院/広島

5月 西条中央病院/愛媛

6月 新潟労災病院/新潟
    市立加西病院/兵庫
        高砂市民病院/兵庫
    JR大阪鉄道病院/大阪
    安曇野赤十字病院/長野
        公立おがた総合病院/大分

7月 坂出市立病院/香川
    加賀市民病院/石川
    神鋼病院/兵庫
        白根徳洲会病院/山梨
        社会保険山梨病院/山梨
    加納岩総合病院/山梨

8月 福島労災病院/福島
    井原市民病院/岡山
    町立大島病院/山口

9月 都立豊島病院/東京
    西横浜国際総合病院/神奈川
    市立根室病院/北海道
        福島県立会津総合病院/福島
    兵庫県立尼崎病院/兵庫

10月 新潟県厚生連けいなん病院/新潟
         国立病院機構・南和歌山医療センター/和歌山
         国立病院機構・災害医療センター/東京
     上野原市立病院/山梨
    済生会御所病院/奈良

11月 大館市立扇田病院/秋田
         県立志摩病院/三重
    新潟県立がんセンター/新潟

12月 宇部興産中央病院/山口
         NTT東日本長野病院/長野
     銚子市立総合病院/千葉

昨年までに縮小・休診/静岡 
 島田市民病院(7→1名)
 御前崎市民病院(1名)
 伊東市民病院(3→1名)
 静岡県東部医療センター(6→1名)
 共立蒲原病院(2→0名)
 社会保険浜松病院(2→1名)
 浜松日赤病院(1→0名)
 浜松労災病院(3→0名)

昨年までの分娩休止/長野
 
丸子中央病院
 町立辰野総合病院
 安曇総合病院
 富士見高原病院
 下伊那赤十字病院
 安曇野赤十字病院
 NTT東日本長野病院

昨年までの分娩休止/大阪
 KKR大手前病院
 市立岸和田市民病院

昨年までの分娩休止/大分
 国東市民病院(産婦人科休止)

今年
1月  東京逓信病院/東京
   道立江差病院/北海道
   銚子市立総合病院/千葉
   塩谷総合病院 /栃木
   東北労災病院/宮城

2月 みつわ台総合病院/千葉
    八潮中央総合病院/埼玉

3月 九州労災病院/九州
    津和野共存病院 /島根
    柏原赤十字/兵庫
    阪和住吉総合病院/大阪
    住友病院/大阪
    大淀病院/奈良
    県立三春病院/福島
    彦根市立病院/滋賀
    恵那市で唯一の産婦人科医院/岐阜
    三浦市立病院/神奈川
    総合磐城共立病院/福島
    盛岡市立病院/岩手
    釧路労災病院/北海道
    江別市立病院/北海道
        足立病院/釧路 北海道
        宮城社会保険病院/宮城
    境港総合病院/鳥取
        福山市民病院/広島
    東近江市立蒲生病院/滋賀
    市立牛深市民病院/熊本
    小国公立病院/熊本
        福井総合病院/福井
        県立東金病院/千葉
    袋井市民病院/静岡
    カレス・アライアンス日鋼記念病院/北海道

4月 オーク住吉産婦人科/大阪
        盛岡市立病院/岩手
    市立小樽病院/北海道
        関西医科大学附属男山病院/京都
        中津市民病院/大分
        福井社会保険病院/福井
    諏訪中央病院/長野
    青森労災病院/青森
    弘前市立病院/青森
    菊水町立病院/熊本
        福山市民病院/広島
    国立病院機構・姫路医療センター/兵庫

5月 旭川赤十字病院/北海道

6月 山鹿市立病院/熊本

7月 厚木市立病院/神奈川

8月 国立病院機構・栃木病院/栃木

9月  津島市民病院/愛知

10月 塩山市民病院/山梨
    新宮市立医療センター/和歌山

今年度中に縮小・休診/静岡
 袋井市民病院(2→0名))
 聖隷三方原病院(7→4名)
 聖隷沼津病院(3→2名)
 共立湖西病院(3→0名)

今年度中に縮小・休診/北海道
 カレス・アライアンス日鋼記念病院
 滝川市立病院
 留萌市立総合病院
 道立紋別病院
 北海道社会事業協会富良野病院
 岩見沢市立総合病院
 新日鉄室蘭病院

分娩制限
 総合守谷第一病院/茨城 平成18年10月~
 横浜市立みなと赤十字病院 平成18年12月~
 東京医科大学八王子医療センター/東京
 都立墨東病院/東京
 中津川市民病院/岐阜
 秦野赤十字病院/神奈川
 福井愛育病院 /福井
 隠岐病院/島根
 龍ヶ崎済生会病院/茨城
 水戸済生会総合病院/茨城
 住吉市民病院/大阪
 都立荏原病院/東京 平成18年12月~
 大阪府愛染橋病院/大阪
 関西労災病院/兵庫 平成18年~
 大和高田市立病院/奈良
 川崎協同病院/神奈川
 北野病院/大阪
 聖バルナバ病院/大阪
 新潟市民病院/新潟
 済生会横浜市南部病院/神奈川
 市立宝塚病院/兵庫
 市立伊丹病院/兵庫
 市立池田病院/大阪
 横須賀共済病院/神奈川
 公立阿伎留医療センター/東京 平成19年1月~
 太田総合病院/神奈川
 JA広島総合病院/広島 平成19年2月~
 近江八幡市立総合医療センター/滋賀
  佐久市立国保浅間総合病院/長野
 国立病院機構・松本病院/長野
 新日鉄室蘭病院/北海道 平成19年6月~

(この分娩休止リストの中に誤った情報があった場合には速やかに訂正いたします。ご指摘の程、よろしくお願い申し上げます。07/03/17)