complete transposition of great arteries (complete TGA)
● 定義
大動脈が右室、肺動脈が左室から起始する心奇形である。
● 分類
Ⅰ型:心室中隔欠損を伴わないもの。
Ⅱ型:心室中隔欠損を伴うもの。
Ⅲ型;心室中隔欠損と肺動脈狭窄を伴うもの。
● 血行動態
いずれの型においても、体静脈血は、右房→右室→大動脈→全身→大静脈→右房、肺静脈血は、左房→左室→肺動脈→肺→肺静脈→左房と、各々の血行が並行に潅流する。したがって、心内の有効シャント量により症状が異なる。
● 心エコー
左室から肺動脈(血管が分岐する)が、右室から大動脈(血管がアーチを描く)が出ていることを確認する。正常では肺動脈が大動脈の左前方を走るが、完全大血管転位症(complete TGA)では大動脈が左前方を走る。合併する心室中隔欠損(VSD)、肺動脈狭窄症(PS)、動脈管開存(PDA)を描出し、各型の分類をする。
● 治療
1. BAS (Balloon Atrial Septostomy)
左房内に入れたバルーンを右房内に引き抜くことによって、卵円孔(左右の心房の間の交通)をひろげて、出生後早期に低酸素血症の改善を図る。
2. 外科的手術
①大動脈スイッチ手術(arterial switch operation: ASO)、Jatene(ジャテーン)手術:
Ⅰ型、Ⅱ型が対象。大動脈と肺動脈を弁のすぐ上で付け替え、冠動脈も走行がねじれないよう付け替える。
②Rastelli(ラステリ)手術:
Ⅲ型が主な対象。左心室-大動脈トンネル作成+右室流出路作成(心室中隔欠損を利用し、右心室と肺動脈を人工血管を用いて通路を作成する)。
3. 内科的治療
BASを行うまで、あるいは出生後早期の外科手術の間、動脈管を介する血流を確保するためにプロスタグランジンE1を使用する。
● 予後
出生直後にBASなどの治療が行われなければ、きわめて予後不良である。また、出生前に卵円孔および動脈管が狭小化もしくは閉鎖している症例は予後不良である。
大動脈スイッチ手術の後の完全大血管転位症の予後は比較的良好である。ただし、大動脈弁閉鎖不全、肺動脈・大動脈の狭窄、冠動脈の吻合部の狭窄の有無などについて、注意深く経過を観察する必要がある。 再手術やカテーテル治療が必要になる場合がある。