ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

胎児水腫

2010年06月06日 | 周産期医学

hydrops fetalis

[定義]
原因のいかんを問わず、胎児全身の軟部組織に浮腫あるいは腔水症(心嚢水、胸水、腹水)を認める症候群をいう。

[要因による分類]
1.免疫性胎児水腫(immune hydrops fetalis; IHF)
 全体の約15%
2.非免疫性胎児水腫(nonimmune hydrops fetalis; NIHF)
 全体の約85%

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免疫性胎児水腫

母児間に血液型不適合があり、胎児に高度の貧血、胎児赤芽球症、全身の浮腫が起こり、死亡することもある病態。主にRh(D)因子不適合妊娠で発生する。

胎児の溶血性貧血が起こる機序:
①胎児赤血球が母体循環系へ移行する。
②母体血中に抗赤血球抗体ができる。
③抗赤血球抗体(IgG)が経胎盤的に胎児へ移行する。
④抗体と胎児赤血球が結合する抗体と結合した胎児赤血球が細網内皮系で破壊されて溶血を起こす。

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非免疫性胎児水腫

母児間血液型不適合以外の原因による胎児水腫。免疫性胎児水腫よりも予後が悪く、頻度も多い。

①心血管異常:不整脈、先天性心疾患、心筋症、心筋炎など
②染色体異常:21トリソミー、18トリソミー、13トリソミーなど
③双胎間輸血症候群の受血児
④呼吸器系異常:横隔膜ヘルニア、乳び胸水など
⑤血液学的異常:動静脈シャント、出血、血栓、サラセミアなど
⑥感染症:パルボウイルスB19、TORCH症候群など
⑦腫瘍:神経芽腫、仙尾骨奇形腫、縦隔奇形腫、白血病など
⑧肝臓系異常:肝線維症、肝嚢胞、先天性代謝疾患など
⑨四肢骨格異常:軟骨無形成症、致死性骨異形成症など
⑩奇形症候群:Noonan症候群、リンパ嚢腫など
⑪胎児付属物異常:胎盤血管腫、母児間輸血症候群など
⑫母体合併症:重症糖尿病、重症貧血、低アルブミン血症など

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[診断]
超音波検査(皮膚肥厚、心嚢液貯留、胸・腹水、胎児奇形)、 母体の血液型、不規則抗体、一般血液検査、HbF、耐糖能、TORCH検査、パルボウイルスB19抗体価、羊水分析、胎児血分析、胸水・腹水の細胞成分分析など。

Parvo3
胎児水腫の例、頭部皮下浮腫が著明(Halo sign)。

Parvo4
胎児水腫の例、胸水貯留と肺低形成が著明。

Parvo5
胎児水腫の例、胎児腹水。

[治療]
①胎児の胸腔穿刺・腹水穿刺
②胎児輸血、
③胸腔癒着術
④ジギタリスや抗不整脈薬の経母体的投与または胎児直接投与
⑤児の成熟度を考慮して分娩時期を適切に考慮する

[予後]
・ 重症心疾患や致死的奇形の合併例、妊娠22週未満で発生した症例、原因不明例などは予後不良である。
・ 胎児頻拍にともなう症例、胸水あるいは腹水のいずれかの単独例、乳び胸水・腹水例、妊娠7カ月以降に発症した症例などは予後が比較的良好である。


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9 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちは (るみたん)
2010-06-06 11:58:58
以前そちらにコメントを残させていただいたるみたんです。
すこし疑問があったのでメールします★

母乳といっしょに糖水をのませたりしますが、学校の先生は5%の濃度だと教えて下さいましたが、
なぜ5%なのでしょうと思い、なかなか飲ませる理由はあっても、濃度の根拠がしりたくて。。。。良かったらお教えしていただけると嬉しいです★先生のブログ 楽しみにみています★
産科で働いたことがないので、全部難しいのですが、しんせんです★がんばりまーす
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おはようございます (るみたん)
2010-06-08 06:08:05
ということは 赤ちゃんの体の体液と変わらない濃度とおうことですね。。。。まあぁありがとうございます★
飲み会楽しそうですね。。。
飲み会の席まで私の疑問をおききになってありがとうございます★
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はじめまして。42歳女性です。松本で大学生活4... ([No author])
2010-06-08 18:00:11
突然の書き込み、失礼します。
先週、9週で稽留流産と診断され、11日に子宮内容物除去手術を受ける予定です。
胎児水腫でした。
3回続けての流産で、前回・今回とも心拍確認後です。
病理検査で胎児染色体の検査をしていただくことになっております。
主治医は、年齢がネックで、染色体異常ではないかとの見解でした。
いろいろ調べるうちに、3回続けての流産や胎児水腫の発生確率の低さに、なぜと考える毎日です。
次に妊娠できても流産する確率はあるとのこと。
やはり40代で妊娠出産を望むのは遅すぎたのでしょうか。
大変ぶしつけな質問(つぶやき)で申し訳ありません。

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突然の書き込みを失礼いたします。いろいろ検索し... (tomoko)
2011-08-15 03:09:31
28週でアメリカのperinatal centerにて胎児に心嚢水があると診断されました。今のところ3.4mmであるとのことでそれ以外は心拍、胎児の成長、などには問題はないですといわれました。私はRH-ですが、主人はテストしてませんが、多分プラスであるとのことで、17週で羊水検査を受けた際グロブリン注射を受けております。(ダウン症検査は陰性)今回心嚢水がわかり、TORCHテストと念のためRH抗体のテストを受けました。結果待ちですが、ウイルス感染の場合の心嚢水であった場合はどのような対応が可能でしょうか。自然に減ることはありますでしょうか。また胎児が子宮に居る間、心臓を圧迫するような事があれば心嚢水を抜く事はできるのでしょうか。ぶしつけなお願いですが、お返答頂けると幸いです。
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お忙しいなかご返答ありがとうございます。 (tomoko)
2011-08-16 04:29:45
いろいろ自分なりに調べておりますが、心嚢液についての記載がなく、何もわからず本当に心配しております。
今のところ心嚢液以外には異常は見られないようなので、もし重度になったら心嚢穿刺という手段もあるということで少し安心しました。まだ28週、少しでも長く今より悪くならずにお腹に居てくれることを願うばかりです。
ご返答、本当にありがとうございます。
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胎児水腫にはいろいろな原因があり得ます。一般に... (管理人)
2011-10-24 07:28:26
胎児水腫の原因の一つとして、例えば、パルボウイルスB19感染(リンゴ病)がありますが、その場合は自然に治癒することもあり得ます。(治療は特にありません。)

http://tyama7.blog.ocn.ne.jp/obgyn/2011/09/post_d6f6-1.html

例えば、染色体異常に伴う胎児水腫の場合は、胎児死亡となる可能性が高く、きわめて予後不良と考えられます。

担当の先生とよく御相談になってください。
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ありがとうございました。結局、パルボウイルスで... (ゆきこ)
2011-10-29 11:44:28
後の事もすべて受け入れる覚悟はできました。
ご返答いただきありがとうございました。
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現在12週目です。 (チャコ)
2012-06-08 02:55:57
先日胎児水腫と診断されました。首、頭、胸、腹、背中全身水腫に覆われている状態だそうです。その他、お腹がまだ閉じておらず内臓が飛び出していること、まだ小さいのではっきりとは見えないのですが心臓が4つの心房に分かれていない様子で、血流の流れが1方向しか見られないと言われました。

体内でも長くは生きられないということで、今後この子をどうするかはまだ決めかねているのですが、いずれにせよ染色体検査は受ける予定です。

ただひとつ気になるのが、私は子供のころアレルギー性紫斑病、小児リウマチにかかったことと、現在も酷いアレルギー体質であることです。血小板の数値は毎年最低ラインにぎりぎり届いてない140-150ですが安定しているので特になにも治療は受けていません。 私のこのような体質が胎児の成長に影響を与えている可能性はありますか? 
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チャコさま: (管理人)
2012-06-08 06:13:20
担当の先生から説明を受けていることと思いますが、胎児水腫に加えて、先天性心失疾患、腹壁破裂など多発奇形を伴う場合、染色体異常が疑われます。おそらく、アレルギー、自己免疫疾患、母子感染などの他の因子はあまり関与してないのではないかと思われます。担当の先生とよく御相談になって下さい。
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