ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

周産期医療提供体制は今後どうなるのか?

2008年09月15日 | 地域周産期医療

1人医長の産婦人科医が、たった1人で全てのリスクを負って、年中無休・24時間営業で頑張り続ける一昔前の産科診療スタイルは完全に終焉を迎えつつあります。

現代の周産期医療は典型的なチーム医療の世界となり、産科医、助産師、新生児科医、麻酔科医などの非常に多くの専門家たちが、勤務交替をしながら一致団結してチームとして診療を実施しています。その周産期医療チームの中で、産科医は少なくとも4~5人は必要です。実際問題としては、産科医5人体制であっても決して十分とは言えません。新生児科医や麻酔科医も、同様にそれぞれ少なくとも4~5人は必要です。

また、助産師は各勤務帯に複数配置する必要があり、最近は助産師外来を充実させる社会的ニーズも高まり、基幹病院へ分娩が集中して正常分娩の件数も増加していますから、助産師も30人~40人程度は必要と思われます。当科においても、最近、分娩件数が従来と比べて倍増しましたが、業務内容を詳細に検討してみると、今まで開業の先生方が担っていた正常分娩の件数が著明に増えているだけで、異常分娩の件数は従来と比べてほとんど増えてないことが判明しました。ですから、医師と助産師との役割分担をうまく調整すれば、医師への負担がそれほど過重にならないで済む可能性も見えてきました。

地域内に周産期医療の大きなチームを結成し、毎年、新人獲得・後進育成などのチーム維持の努力を積み重ねて、この医療チームを十年先も二十年先も安定的に維持・継続していく必要があります。

しかし、体制が十分に整わないうちに、過重負担に陥った医師達が次々に離職するような事態となれば、地域の周産期医療提供体制はもろくも崩壊します。ですから絶対に無理は禁物です。また、病院独自で新人獲得の努力を続けるにしても、今は少ない医師の奪い合いの状況ですから、人員確保の自助努力が毎年うまくいくとは限りません。危機に陥った際の大学病院からのサポートは絶対必須条件です。大学病院との緊密な連携と人事交流、病診連携の推進、産科医と助産師との役割分担、医療秘書の活用など、地域の皆で一致協力し、ない知恵をふり絞って工夫を積み重ねていけば、この難局を乗り越えていけるのではないかと思います。


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