上伊那地方では、従来、町立辰野総合病院(辰野町)、伊那中央病院(伊那市)、昭和伊南総合病院(駒ヶ根市)の3公立病院のそれぞれの産婦人科で分娩を取り扱ってきました。この3病院には、(信州大学より)それぞれ2~3人の産婦人科医が派遣されてました。
平成17年に、町立辰野病院・産婦人科の常勤医がいなくなって、同院での分娩の取り扱いを中止しました。また、本年4月に、昭和伊南総合病院・産婦人科の常勤医がいなくなって、同院での分娩の取り扱いを中止しました。また、ほとんどの産婦人科の開業医の先生方も、高齢のため次々に分娩の取り扱いを中止しました。そのため、上伊那地方では、地域内のほとんどすべての分娩が伊那中央病院に集中するようになりました。
伊那中央病院は、信州大学の全面的な支援により産婦人科の常勤医を6人に増員し、施設も増築して、分娩件数の急増に対応しています。
地域基幹病院の産婦人科常勤医が減り続けて、地域産科医療が崩壊する危機に陥っている場合は、大学病院からの緊急避難的な人的支援がなければ、その地域の産科医療は絶対に生き残れません。しかし、存亡の危機に瀕している地域基幹病院の産婦人科は県内に多く存在し、大学病院からの人的支援にも限界があります。また、一部の地方だけが大学病院の手厚い支援を享受し続けることも不可能だと思います。やはり、それぞれの地域の状況に応じて、医師確保や病診連携など地域産科医療の崩壊をくい止めるための最大限の自助努力を継続してゆく必要があると思います。
上伊那地方の地図
昭和伊南総合病院が県から救命救急センターに指定された頃(30年前)、同病院は伊那谷(上伊那地方+飯田・下伊那地方)の中央に位置し、伊那谷随一のメディカルセンターとしての役割を果たしてました。当時は、飯田・下伊那地方に小児科や麻酔科の併設された産科施設が一つも無く、飯田・下伊那地方の産科重症患者もどんどん昭和伊南総合病院に搬送されてました。当時は伊那中央病院も飯田市立病院も狭くて古いボロボロの建物で、伊那谷の病院群の中では昭和伊南総合病院が唯一抜きん出てました。
しかし、その後の30年の間に事情もかなり変わってきたので、南信地区に新型救命救急センターを3カ所設置することになり、2年前、昭和伊南総合病院の救命救急センターを30床から10床に縮小し、諏訪赤十字病院(10床)、飯田市立病院(10床)が新型救命救急センターとして新たに指定されました。昭和伊南総合病院と伊那中央病院とは同じ上伊那地方にありますが、同地方の救急患者の多くが最近では伊那中央病院に搬送されるようになっている事情もあって、現在、上伊那地方の救命救急センターをどの病院に指定するのか?が地元での大きな問題となっています。
****** 中日新聞、長野、2008年9月23日
外来診療棟オープン 伊那中央病院産婦人科
伊那市の伊那中央病院で22日、産婦人科外来診療棟のオープニングセレモニーがあった。婦人科、産科の診察室と内診室を従来の倍となる4室ずつ設けるなどして外来診療の充実を図った。
昭和伊南総合病院の出産取り扱いの休止などにより、入院や外来患者が増加、診療施設が手狭になったことから整備をした。新診療棟は本館南側に建設し鉄骨平屋約290平方メートル。産科、婦人科の診察室と診療室のほか、問診室や注射・点滴室、指導室を設けた。出産や入院のための病棟改修も整備済みで、事業費は計約1億1000万円。これまで産婦人科外来に使用していたスペースは整形外科の診療などとして活用する。
同病院によると、産婦人科の常勤医は6人。月90-110件ほどの出産、外来診療をする。「常勤医が8人ほどになればありがたいが。新外来棟の完成により、不便さが少しでも解消されるのでは」と話した。
(以下略)
(中日新聞、長野、2008年9月23日)
>疾患増が予想される循環器系、外科系の高度医療への特化、
>または空きベッドを活用した療養型への参入を提示した。
戦略が決定的に間違っている気がするのは
私だけでしょうか?
医師不足は一病院の努力ではまず改善できませんし、
コスト構造を抜本的に改善するには、
保険診療、DPCの壁が立ちふさがります。
同病院の置かれた状況は間違いなく負け戦です。
高度医療に特化なんて夢見たいなことよりも、
まずは自前の医師を如何に辞めさせないか
を考えるべきではないかと思います。
>総収益は48億2187万千円(前年度比11.6%減)で、これに対する総費用は55億6481万8000円(同6.1%減)。累積赤字は12億1127万千円に拡大した。
莫大な借金が雪だるま式に膨らみ続ける状況です。借金はいつか必ず返済しなければなりません。意地を張らず冷静になって、これ以上借金を増やさないための方策をちゃんと考えるべきだと思います。