パルボウイルスB19は別名ヒトパルボウイルスと呼ばれ、人間にのみ感染する。骨髄中の赤血球先駆物質に侵入する能力がある。
パルボウイルスB19感染症は、伝染性紅斑(りんご病)として知られているが、多くの非定型例や不顕性感染がある。
本感染症は、ほぼ5年毎の流行あるいは散発性に発生し、春から初夏が多く、4~10歳児に多い。感染力は強く、集団では40%、学童クラス内60%、家庭内では50~100%感染する。
[感染経路] 主として飛沫感染。接触感染やまれに輸血、血液製剤による。
[潜伏期間] 5~6日で血液中にウイルスが出現、気道分泌物への排泄が始まる。発熱までに6~11日、発疹発現までに16~20日。
[小児の症状] 発熱、倦怠感、頭痛、筋肉痛などが現れ、数日遅れて、頬に境界鮮明な紅い発疹(蝶翼状-リンゴの頬)が現れ、 続いて手・足に網目状・レ-ス状・環状などと表現される発疹がみられる。胸腹背部 にもこの発疹が出現することがある。これらの発疹は1 週間前後で消失する。
[成人の症状] 発熱、関節痛などの非特異的症状が主で、典型的な頬部皮疹は出現しないことが多い。約半数は不顕性感染。
[感染期間] 発疹の発現する7~10日前のかぜ様の前駆症状期に最もウイルス排泄量が多く、発疹が現れたときにはウイルス血症は終息しており、ウイルスの排泄はほとんどなく感染力はほぼ消失している。
[胎児への影響]
・ 妊娠初期の母体感染では、胎児貧血、胎児水腫、胎児死亡の可能性がある。
・ 奇形発生頻度は少ない。
[母子感染]
・ 経胎盤感染が成立すると、胎児の赤芽球系細胞に感染、破壊し高度の胎児貧血をもたらし、胎児は非免疫性胎児水腫(non-immune hydrops fetalis)となる。
・ 妊娠20週未満の感染では約24~30%に胎内感染が成立し、その3分の1(母体感染の9~10%)が胎児水腫や子宮内胎児死亡となる。妊娠20週以降の感染では胎児水腫はないとされている。
・ 母体感染から2~17週(平均10週)に発症(胎児水腫、胎児死亡)するので、妊娠中期に発生した胎児水腫や子宮内胎児死亡では本疾患を疑う必要がある。
・ 原因不明とされた胎児水腫や死産例の約20%はパルボウイルスB19の母子感染であるという報告もある。
・ 胎児水腫の自然治癒例も報告されている。
[感染診断]
①母体血中の抗B19-IgM抗体の証明
IgM抗体陽性で最近の感染と考える。
②B19DNAの証明
胎児血、羊水、胎盤、胎児組織中にPCR法で検出。
[治療法]
・ 臨床症状があり抗B19抗体が2~3週間後に陽性化した場合や、抗B19-IgM抗体陽性例は最近の感染(3か月)であるので、最低週1回超音波検査し、胎児異常の早期発見に努める。
・ 胎児水腫がみつかった場合は胎外生活の可能性を検討し、治療法を選択する。
・ 胎児輸血による治癒例も報告されている。
・ 免疫グロブリン投与や胎児へのジギタリス投与の有効性はまだ確認されていない。
[妊婦罹患率] 妊婦の抗B19抗体保有率は30~40%。成人の抗B19抗体保有率は60%といわれている。
[妊婦スクリーニングの必要性] 感染力が強いうえに、予防・治療法がないのでスクリーニングは有効でない。
[ワクチン] パルボウイルスB19に対するワクチンは現時点では存在しない。現在、ワクチンの開発中で、将来は未感染の妊婦が接種の対象になる可能性はある。
[次回妊娠の注意点] 終生免疫を獲得するので問題はない。
少し経過をみてみます。
毎日心配で眠れません。
どうぞよろしくお願いします。
職場の同僚がりんご病になりました。
発疹が発症してから自分が知ることになり、発疹発症3日後に関節痛、倦怠感の症状もみられています。わたしは、すぐにパルボウイルス検査をし、IgG抗体0.94(±) IgM抗体0.15(-)でした。
まだ、同僚は症状があるようですが、大丈夫でしょうか?
ご返答よろしくお願いいたします。
PB19感染妊婦の約2~10%が胎児水腫を合併する。胎児水腫は母体感染から1~8週間の間(中央値・3週間)に発生し、胎児水腫発生からは数日から数週間で胎児死亡となるか、あるいは自然に軽快する。
成人がPB19に感染した場合、4日~10日の潜伏期の後にウイルス血症となり、その期間は5日間程度持続する。ウイルス血症のピーク時数日と感染から2週間経ったウイルス血症消失後に特徴的な紅斑や関節痛を示す。
PB19感染の催奇形性については否定されている。胎児感染後の生存例においては、その後の新生児期の問題点は指摘されていない。長期予後・成長発育についても、非感染妊婦から出生した症例と差がないという報告もある。
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CQ614 パルボウイルスB19(PB19)感染症(リンゴ病)については?
Answer
1. 以下の2点を認識する。(B)
・ 同居者のPB19感染は妊婦PB19感染の危険因子である
・ 感冒様症状、それに伴う発疹(紅斑)、関節痛等はPB19感染を示唆する
2. 妊婦PB19感染を疑った場合、PB19-IgMを測定する。(B)
3. 妊婦PB19感染の場合、「胎児貧血、胎児水腫、あるいは胎児死亡が約10%に起こり得る」ので、胎児貧血・胎児水腫について評価する。(C)
4. 胎児水腫の原因検索時にはPB19感染を考慮する。(B)
5. 他妊婦への感染防止のために感染妊婦には手洗い・マスク着用を勧める。(C)
6. パルボウイルス感染について表1内容の報告があると認識する。(C)
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(表1) 胎児パルボウイルス感染に関する報告
・ 胎児水腫発症例の9割は母体感染後 8週以内に発症(中央値・3週)
・ 20週未満感染例では20週以降感染例に比し胎児死亡率が高い
・ 胎児水腫の約1/3 が自然寛解する
・ 胎児輸血が予後改善に有効である可能性
・ PB19 感染に起因する諸所見焼失後の児は、非感染児と同等の予後を示す
エコーにて現在胎児水腫は確認されておりません。
よく20週以降の感染は余り心配はないとかかれておりますが、
一般的顔に赤みがでた何日前が感染日なのでしょうか?
その日が20週を超えてあおれば心配は薄いという事なのでしょうか?
また、胎動があれば心配ないのでしょうか?
また、もしこのままエコー等で水腫がなく正常に成長した場合は出産後に何か後遺症や、障害を出す可能性はあるのでしょうか?
毎日心配でなりません。
また私の場合26週で現在推定体重が1000gを超えておりますが
なには異常を発見した場合、いつから赤ちゃんを産ませ、治療することが可能でしょうか?
1000gであれば生存の可能性が高いと書かれている書を読んだ事がありますが、
安全のラインを教えていただけると幸いです。
長文になってしまいましたが、どうぞ宜しくお願い致します。
グロブリンクラス別にウイルス抗体価の推移を見てみると、IgMは感染後早期に産生されるが短期間で消失します。IgGはIgMに遅れて出現し漸減しながら長期間持続します。
従って、近い過去に感染があったかどうかの判定には、感染初期に応答するIgM抗体の検出が有用です。
また、感染既往の有無やワクチンの効果判定には、感染後長期間持続するIgG抗体の検査が有用です。
私は現在、妊娠32週です。
今年はりんご病が流行しているとのことで、心配になってパルボウイルスB19のIgG抗体検査をしたところ、0.48(基準値 0.8未満)と結果に記載されていましたが、これは抗体をもっていない、つまり感染したことがない、ということを示しているのですよね?
いまいちよくわからなくって・・・
ご説明いただけたら大変ありがたいです。
よろしくお願いいたします。
検査エラーのため、再度検査することになりました。
(DNA検査は実行されていなかった!)
結果、陰性とのことで胎児には影響ありませんでした。
25週目のエコーでも胎児には異常なしとのことで
やっとほっとしているところです。
不安になりがちの時期、先生に的確、わかりやすくご返信をいただき、本当にありがとうございました。
とても心強く、いい参考にさせていただきました。
本当に感謝しております。
パルボウイルスB19母体感染が、即、胎児の異常に結びつくも のではなく、伝染性紅斑を発症した妊婦から出生し、パルボウイルスB19の胎内感染が確認された新生児でも、妊娠分娩の経過が正常で、出生後の発育も正常であることが多いですし、生存児での先天異常は知られていません。定期的な胎児超音波断層検査で胎児の状態を把握していく必要があります。
DNA検査の結果、パルボウィルスがやはり胎児への感染が確立しているようです。。(現在24週目)
IgG 10 〉 5陽性
IgM 75 〉 17陽性
15,6週目に皮膚病にかかり、21週目でのエコー検査では異常が見られませんでした。
胎児水腫とは、感染してからどれくらい後にエコーで見え出すのでしょうか。
こんなに体内で動き回っている胎児が
・・突然動かなくなる日が来るかもしれないと考えると不安で仕方ありません。
よろしくお願いします。
ありがとうございました。
今のところ私には自覚症状はありませんし、もし感染してしまっているとしても、治療法が特にないなら、受診することで他の妊婦さんに感染させる危険があるので、今すぐ受診することは控えるべきかと思っていますが、2週間後の定期検診の時に相談して遅かったということはないでしょうか?
HPに書かれている内容もしっかり読むこともできずにコメント投稿してしまい、申し訳ありません。
現実を前向きに捉え、この子の運命をしっかり見守って行きたいと思っております。
本当にありがとうございます。
15,16週目にジベルバラ色粃糠疹になり、
血液検査(18週目)の結果パルボウィールス陽性と記されました。(現在はジベルバラ色粃糠疹は治りました)
胎児への感染が高いということですが
生まれてくることができる子は完治(胎児水腫、胎児貧血)することができるのでしょうか。
ご返答よろしくお願いいたします。
実は11月の初旬に息子の幼稚園でリンゴ病が流行し、殆どの子供と母親がかかりました。 子供は別段問題ありませんでしたが、母親たちがかなり重症で、私も11月下旬に原因不明の背中・胸痛で眠れなくなり大学病院の救急で検査したものの原因は分からず、翌日喉の異物感を感じで耳鼻咽喉科に行き、ここでも異常はなかったものの、息をするのにも胸が痛かったので、抗生物質の点滴を受け、症状は改善しました。 しかしその後も、体調は余り優れなく、原因不明の胃痛などもありました。
身体に赤い斑点などは殆どでていないと思います。
このような母体の状況で、次の子供を妊娠するのは問題がないでしょか?