Jan.1 2006 寒い冬、暖かい心

2006年01月01日 | 風の旅人日乗
1月1日 日曜日

この冬は、本当に寒い冬だなあ。
関東でも、冷蔵庫の中にいるような日が続いている。元日の朝は曇っていて、外に出るのをためらうほどだ。
しかし、個人的には、なんとなく暖かい気持ちで過ごす年末年始だ。

ここ10年近く、なんとなくさすらい人のように暮らしてきた。
1998年から2003年までは、連続してニュージーランドで、真夏の正月を迎えた。
今思い返せば、クリスマスや正月の、日本国内や自分の周囲の華やかな雰囲気を嫌って、わざと日本を離れていたようにも思う。

2001年の、21世紀最初の初日の出は、ニュージーランド北島東海岸のタイルアという町で見た。
1月1日午前0時、町の主催で大花火大会が始まった。
若者たちはパブに集まって大騒ぎをしていたが、日本のように、海か山に出かけてその年最初の日の出を見ようとする習慣は、ニュージーランドにはない。
夜明け前のタイルアの町には、まだ酔いつぶれてない生き残りが何人かフラフラと歩いていた。
町の前にある、『Paku』という名前が付けられた小さな島の、小高い丘に登った。

近くの家から、チョコレート色のレトリーバーがニコニコしながらしっぽを振って出てきてぼくの横に座った。徐々に赤みが差してくる東の方向の水平線を、その犬と一緒に眺めた。夜半から強く吹いていた風が急速に衰え、家々は寝静まって、その丘の上には静かな時間が流れている。

風が凪いでしばらくすると、空と海の隙間から眩しい光が溢れ出てきた。
ニュージーランドの東の海岸に姿を現した21世紀最初の太陽は、オレンジ色、というよりも、ぼんやりと暖かい温州みかんの色をしていて、とても和風な趣きで水平線に浮かぶ雲をかき分けるようにしてゆっくりと上ってきた。
その場所の経度は日付変更線のすぐ近くの、東経約176度だったから、ほとんど世界で一番早い21世紀の夜明けだった。

日本から持ってきたフリーズドライのお雑煮を、車のボンネットの上で作っているうちに、その朝日に照らされた海全体がみかん色になってゆき、なんだかまるで安っぽい正月写真の中に入ったようになって、そのお雑煮をすすった。

2003年の初日の出は、ニュージーランドの最東端の町、ギズボーンで、サーファーに混じって泳ぎながら見た。今日の日記の写真がそのときの日の出だ。

これらの時間は、それはそれで、人生の中では貴重な時間だったし、自分自身と向き合ったり、自分自身の夢を確認するために必要な時間だったのだが、そうは言っても、なんとなく無機質な時間だった、と思う。幸せだったかといえば、そうでもなかった、と思う。
ここしばらくは、ああいうスタイルで、外国で正月を迎えることはないように思う。

2006年が、自分にとっても、世の中にとっても、いい年になりますように。