Jan.11 2006 スロベニアってばスバラシイ

2006年01月11日 | 風の旅人日乗
1月11日 水曜日

朝、6時起きで、7時から、ラッセル・クーツと2人で、仕事の打ち合わせをしながら朝食。

7時45分。ラッセルの自分のBMWとは別の、ラッセルがアウディーから支給されているクアトロに乗ってマリーナへ向かう。濃いチャコールグレーの車体に、大きく 『Russell Coutts Audi』 と書かれたシルバーの文字が目立つ。

車の中で、昨今セーリング界で囁かれている、『次々回のアメリカズカップでラッセル・クーツはマレーシアからのチャレンジに参加する』という噂の真相を聞いてみる。

「そう、それ、俺も新聞で初めて知った。噂の出元のおおよその見当は付いているけど、有り得ないよ」
とのことでした。

8時出艇。
試乗のお客さんが来る前に2時間ほど、昨日以上に激しく艇をプッシュする。
「じゃあそろそろ次は、レーシング・タックだ」
「じゃあ、ジェネカー、アップしよう。レーシング・ホイストだ」
「レーシング・ジャイブ!」
「なぜ今のはうまくいかなかったんだ?もう一度トライだ」
「あのブイを下マークにして、ラウンディング練習しよう! レディー!」

以前、瀬戸内海を一緒にクルージングして回ったときにも感じたことだけど、ラッセルは、クルージングであろうが、自分が開発した艇の試乗会のためのテストであろうが、どんなセーリングであっても、自分の練習の時間にしてしまおうとする魂胆がある。
でもね、分るなあ、その気持ち。真面目なセーリングを追いかけることは、本当に楽しいもんね。

初めての艇でのメイントリムは、ラッセルに煽られて、燃えました。
ラッセル・クーツ44は、メインセールトリマーがトリムタブもコントロールするので、トラベラーを上げる、シートを緩める、ロールタックに参加する、新しい側のトラベラーを上げる、シートをトリムしてゆくという、一連のメインセールトリマーのタッキング中の仕事が、ひとつ増える。
でも、段々とスムーズにできるようになったぞ、楽しいなあ。

ラッセルと、ヘルムとメインを交代しながら、外気温5度の中、大汗をかいてセーリング。
本当に楽しいなあ。
今回はもちろん仕事で来ているのだけど、だからこんなに遠くの、今まで知らなかった国まで来ているのだけれど、セーリングしている瞬間は、仕事のことはすっかり忘れて、アドリア海でのスポーツ・セーリングを、めっちゃめちゃ楽しんでいる。

一緒に乗っているのは、世界のセーリング界のトップに君臨するラッセル・クーツだ。生きている伝説だ。彼が連れてきているクルーたちも一流だ。楽しくない訳がないのだ。
今回もまた、メイントリムとステアリングのヒントを、ラッセルから一つずつ教わった。

セーリングに関することなら何でも、ラッセルは常に最新の技術、理論を勉強をしていて、慢心するということがない。自分よりも歳下だけど、彼に学ぶことは、もちろんセーリングでも、セーリング意外でも、非常に多い。

ラッセルと、メインとヘルムを交互に交代しながらラッセル・クーツ44のセーリングを続ける。
RC44は、非常にセンシティブな艇で、しかも運転しやすく、セーリングが楽しい。その上、凄く速い。既存の44フィート艇の常識を遥かに超えたスピード性能に酔いしれる。

この日の夕飯は、地元スロベニアの元オリンピックセーラー(当時はユーゴスラビア代表)であるドゥーシェにスタッフ全員が招待されて、農家の納屋をそのまま使ったような不思議なレストラン。

前菜のトマトソースで味付けされたパスタも、メインディッシュの蛸とじゃがいもの地元料理も、スロベニア産のオークの香りの強い赤ワインも、すべて完璧だった。

そのレストランを出る頃には、際限なしに後から後から出てくるワインで全員激しく酔っ払い、ホテルに帰る途中でなだれ込んだ、怪しいロシア娘たちがたむろする酒場を後にするときに時計を見たら、午前3時だった。

明日朝、というか、もう今日だが、日本に帰る。
部屋中に脱ぎ散らかしているセーリングウエアをバッグに放り込んで、荷造りをしなければいけない。