月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
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一月の終わり

2013-01-31 05:11:58 | 空色写真集

恒例となっています、月末のお花特集です。最近は絵ばかりで、写真を紹介するのは久しぶりのような気がしますね。絵もいいけれど、花の写真を見ると、すがすがしいものがあります。何かから解放されたようだ。

冬最中とあって、花も少ないですが、ご近所の庭に、とても暖かそうな陽だまりがあり、そこにもうホトケノザが咲いていました。ホトケノザは、少しきびしい花だけど、今年は何か優しい顔をしてくれる。春がもうすぐだと教えてくれているようだ。



同じ庭で見つけた、ムラサキカタバミです。この花に出会えるのは、早すぎるような気もするのだけど、咲いてくれていました。そのお庭には、きれいなスイセンの花も咲いていたのだけど、スイセンはいつも気難しくて、なかなかいい顔で写ってくれないのです。だからしょうかいできないんですけれど。
スイセンと言えば、去年までうちの庭に咲いてくれていた黄水仙が、今年はなぜか咲いてくれませんでした。花は、不思議だ。いつの間にか来てくれて、いつの間にかいなくなってしまった黄水仙。とてもきれいだったけれど、とても悲しそうだった。いなくなったのは、どうしてだろう。
理由は知りたいけれど、尋ねないでおこう。スイセンはきっと、秘密にしておきたいだろう。



うちの庭のオトメツバキです。今回はとてもきれいな、やさしい顔で写ってくれました。まだすこし、悲哀に濡れているようだけど、ああ、明るい光が見える。そんな感じです。



これは、いつもいくスーパーで売っていた、ピンクのマーガレット。いつも、売り物を、黙って写させてもらってます。何も言わないお店の人に感謝。
キク科の花は、みなしゃんとしているけれど、この花はピンクだから、とてもかわいいですね。でもやっぱり、菊らしい何かがあるな。何か、わたしに問いかけてきているようだ。



サクラソウのつぼみです。花はちょろちょろと咲いていたけれど、まだつぼみが多かった。咲くのは、もうちょっと先。
やさしくて、暖かいサクラソウが咲くと、庭の隅に光と笑いが集まったようになる。早く咲いてくれないだろうか。

春はもうすぐ。来月の末あたりには、ナノハナが咲いてくれるかな。毎年楽しみです。その次はサクラか。梅はどうだろう。スーパーで売っていた枝垂れの梅は、もう咲いていたけれど。

ああ。春を思うと、さすがに冬は少し、淋しいですね。時の玉を数えながら、待ちましょう。春。

いつか会えますよ。




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アケルナル

2013-01-30 05:10:11 | 詩集・瑠璃の籠

月の岩戸で どれくらいの月日を過ごしたのか
わからないが
いつの間にか 定期的に
岩戸の中を散歩するのが 習慣になった

朝 起きて
夢の中に見た風の言葉など
歌にして書くと
筆をおいて 扉を開け
空気のきれいな和室の中に入っていく
ふすまを開けるたびに
部屋が違う
時々窓があって 外をのぞくと
小さな庭が見える
赤い鯉の泳いでいる池や
白砂を敷いた向こうに
一群れの青竹など見えることもある
でも 庭に降りることのできるふすまや扉はないようだ

今日もそうして 岩戸の中を歩いていると
おや どこからか 笛の音が聞こえる
わたしは その音に 何か胸に染むようなものを感じて
その笛を追いかけて 歩き出した
ふすまを開けるたびに 笛の音が近くなる
まるで 笛の音がわたしを引き寄せているようだ

さて わたしが
まるで銀砂をすきまぜたような
きれいな紙のふすまを開けると
そこには いかにも古い様式の 板の間があった
磨きこまれて光ってはいるが どう見ても
床板は何千年と年を経た古いものにしか見えない
真向かいに 一段高いところがあって
それを御簾が下がって隠している
目を細めてよく見ると その向こうに人影が見える
御簾の向こうの人影は まるで童子のように小さくて
笛はその人影が吹いているようなのだ

ああ とわたしは思った
あれがだれなのか わかったからだ
「そうだ わたしの ふるさとは…」
と わたしが言ったそのときだった
紺色のふすまが上からいっぺんに落ちてきて
その瞬間 わたしは頭をどこかに吸い込まれるように
気を失ってしまった

気付いた時には 元の部屋にいて
ぼんやりと文机の前に座っていた
プロキオンが盛んに鳴いている

向こうに行ってはならないといったでしょう

声がしたので 振り向くと
そこに朱いすみれの姿をしたベテルギウスがいた

あなたはまだ 向こう側に行ってはならないのです

わたしは いつの間に と言いかけると
ベテルギウスは 本当につらそうな顔をして
目を閉じて 言うのだった

あなたのことを もっとも心配してくれている方が
来て下さったのです
それであなたは 
紺のふすまを超えてしまいそうになったのです

ああ あれは だれだったろう
わたしは 記憶の中をまさぐって
御簾の向こうの人影を探した
でもあれがだれなのか どうしてもわからない
ただ 悲哀を帯びた笛の調べだけは 思い出すことができた
それとそっくり同じ調べを
プロキオンが歌ってくれたから

闇路を照らせ 闇路を照らせ プロキオン
かなたの星にゆくために
かなたの星が来るために

わたしがうたうと
ベテルギウスは朱いままに凍って
花がついにしぼんでしまったかのような
細く冷たい息を吐いた



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コカブ

2013-01-29 06:58:39 | 詩集・瑠璃の籠

プロキオンが 盛んにちるちると鳴いて
何やらいつもと様子が違う
あわてて籠のところへいって
どうしたのと問いかけると 
窓の向こうから声がした

籠の戸をあけてやってください
しばしの間 こいぬの宮に帰ると言っています

見ると窓の外にまた星がいる
その星をどこかで見たことがある
それもとてもなつかしいと感じながら
わたしは籠の戸を開けた
プロキオンは ちると鳴いて
籠から出てゆき 途端に鳩のように大きくなって
いっぺんに空の向こうに帰ってしまった
かわりに訪ねてきた星が中に入ってきて 言った

大丈夫 すぐに帰ってきますから
お宮で仕事があるのですよ
わたしはコカブと申します
こぐまの宮からきました

ああ とわたしは何かに気付いたかのように言った
だが 何に気付いたのか皆目わからない
わかったような気がしたのだが
コカブはくすりと小さく笑って言った

今わからないのは仕方ありません
でもあなたは わたしをよくしっています
あなたはポラリスとはとても仲良しでしたから
ポラリスとは近いわたしを よく知っているのです

わたしはそれを聞いて 何やら少し胸が痛むような気がした
思い出したら つらいことがあるような気がした
コカブはそれに気づいて 風のような魔法の歌を歌ってくれた
そうすると 壊れてもろくなったわたしの心臓が
気持ちの良い薬で固められて 少し強くなったような気がする

あなたは思い悩むことはありません
すべて わたしたちはやっていますから
今は何も考えなくていいのです
ポラリスは あなたを愛していると伝えてくれと
言っていました
愛していると

ああ とわたしは言った
涙が流れるような気がしたが 流れなかった
それは誰かが わたしの感情の回路に
必要以上の情量が流れないように
ブロックしているからだと わたしはある時期から気付いている
あまり大きな情動を起こしてしまうと
わたしの心はとても困ることになるらしい

わたしはコカブに言った
昔 ひとりぼっちだったとき
隣で寝ていたわたしの子供が寝言で
愛してるよ と言ったことがありました
わたしはそれを ああ 見えない誰かが
子供の寝言を使って わたしに言ってくれたのだと思いました
わたしはうれしくて 涙が出た

知っています とコカブは言った
だからあなたは 繰り返し
地上の友に手紙を書き
愛していると書くのですね

はい そうです
わたしたちは 友
彼とわたしは かけ離れているが
同じ仲間
あの魔法の言葉が 彼にはどうしても必要だと
思ったのです

コカブは微笑みながら沈黙し
しばしの間 わたしを優しさで包んでくれた

ポラリスは動けませんから
代わりにわたしがきたのですが
その方がよかったろうな
もしポラリスがきてしまったら
あなたはいっぺんに故郷を思い出して
帰ってしまうかもしれない

そうなのですか とわたしは言った

ええ とコカブは答えた
そして言った
ああその言い方 あなたらしい
いつもあなたは そんな感じでいうのです
ああ そうなのですか と
なつかしい 姿は違っても
あなたは あなただ

そうなのですか とわたしは言った
そしてつい 笑ってしまった
そうなのです わたしはいつも そんな感じに言います

コカブはただ 優しく微笑んでわたしを見つめていた
その瞳は ずっと昔から知っている人を見ているような感じだった
でも今の私には それ以上のことに気付くことができない

窓の向こうから ちる とプロキオンの声がして
白いこいぬの星が窓から入ってきた
そして何も言わずに籠に入って 自分で籠の戸を閉めた

やあ 帰ってきた
さて これでわたしの仕事も終わりです
プロキオンがいない間 あなたを一人ぼっちにしないようにと
言われていたので では

そういって帰っていこうとするコカブに
わたしは思わず言った

ああそうだ 
ポラリスに 言ってください
愛していると とても とても 愛していると

するとコカブは目を細めて笑い
もちろん と言って窓の向こうに飛んで行ってしまった

籠の戸の留め金を 一応閉めながら 
わたしはプロキオンに言った
ほんとうはあなた 出ようと思えばいつでも自分で出られるんだね
それなのに 籠の中にじっとして
わたしといっしょにいてくれるんだね

ああ わたしのまわりは今 愛でいっぱいだ
だれだったろう ポラリス
きっといつか 思い出せるに違いない



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ミンタカ

2013-01-28 07:37:30 | 詩集・瑠璃の籠

草原の風に吹かれたいと思った
静かな岩戸の中も 確かに良いが
わたしは何かをもとめて 壁のドアを開けた
何度か 簡素な和室を通り
ふすまをくぐりながら
岩戸の中を走って行ったのだ

そんなに速く 走ってはいけません

誰かの声がして わたしは走るのをやめた
そこは青い畳をしいた四畳半ほどの和室で
床の間があり オオバコの絵を描いた
きれいな掛軸が飾ってある

オオバコの絵など珍しいと思って
わたしが近寄っていくと
声はそのオオバコの中から聞こえていたのだ
オオバコは緑の葉の陰をきらりと光らせて言った

わたしはミンタカ 
そんなに速く走ってはいけません
あなたの心臓と足は今 
そういうことができる状況ではないのです

そうなのですか とわたしは驚いて言った

ミンタカは 絵の中のオオバコの葉の裏から出てきて
何か魔法のような歌を歌った
そうするとわたしの足がすっと伸びた
心臓の奥で 何かがもぞりと動く気配がする
わたしはようやく 走っているうちに
自分の足が歪んでいたことに気付いた
心臓のほうにもきっと 何かしかけがあって
わたしが走ったことで どこかがずれてしまったのだろう

助けて下さってありがとう と
わたしがいうと ミンタカは
とてもつらそうな 顔をして言うのだった
ずいぶんと ずいぶんと 苦しかったのですね
あなたは 昔は そんな人ではなかった
そんな 小さなかわいい人では

そうですね とわたしは言った
遠い昔の記憶が 潮騒の音のように
脳髄の中で騒ぐ
昔は こんなではなかった 確かに

草原を 走りたいと思ったものですから
岩戸の中もよいけれど
青草のにおいのする 風を浴びたくて
わたしがそういうと ミンタカは微笑んで
掛け軸の中のオオバコの葉を裏返し
小さな緑色の飴を取り出した

これを口に入れてください
しばしの間 草原のにおいにつつまれましょう
ついでに あなたの喉に住んでいる
悪い虫も逃げてゆきますから

わたしは ありがとうと言ってそれを受け取った
緑の飴を口の中にいると
オオバコの青くてきついにおいがする
それとともに 青い野の香りがわたしをつつんで
目をつぶるとなぜだか わたしはどこまでもひろがる
緑の野の中に一人立っているのだった
風が吹く 喉の中を何かトカゲのようなものが動いて
苦しみ喘ぎながら ため息といっしょに外に出ていくのがわかった
ミンタカが言った

最後のともしびを消さないために
わたしたちはすべてのことをやります
あなたの願いをかなえるために

わたしは目を開けた 
心がしばししびれて動かなくて
頬を涙がたっぷりと濡らしているのに
気付くのに数分かかった
ミンタカはもういなかった
あのオオバコの掛け軸も
わたしはいつしか
プロキオンのいる小部屋に戻っていた
手の中には 三つの緑の飴があった



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アルフェラッツ

2013-01-27 07:53:12 | 詩集・瑠璃の籠

月の岩戸は静かだが
よく星が訪ねてきてくれるので
さびしいと思う時間は
あまりない
プロキオンは いつもそばにいてくれるし

さてある日 わたしはまた
誰か星が訪ねてきてくれるのかなと
小窓から空を見上げていた
星は来るたびに 何か薬になるものをくれたり
魔法のようなことをしていってくれるので
それはわたしの楽しみの一つでもあったのだ

わたしは今 自分の心や体が
一体どんなことになっているのかを
ほとんど知らずにいる
誰も わたしにそれを言いたがらないので
たぶんそれは 相当に深刻なことになっているか とにかく
大変なことにはなっているのだろう

今日は星は来ないのかなと思って
窓から離れて振り向いたら
おやそこに 星がいた
いつの間に来たのですかと
驚いて言ったら 星は
自分はアルフェラッツというと名乗った
そして 氷の小惑星を砕いて作ったという
虹色に透き通った氷砂糖を一袋 わたしにくれるのだ

どういう効き目があるのかは 言えません
でもこの氷砂糖をなめていると
あなたの病気は相当に良い方向に向いていきますから

そういうとアルフェラッツは 大仰にため息をつくのだ
そして あきれてものも言えないと
とても不快だというように 目をゆがめて
わたしから目をそらすのだった

アルフェラッツはいう
わたしは地球創造活動に積極的には参加していませんが
腹立たしい感情は抱いている なぜ
あなたが そんな目に合わねばならないのか
なぜ それでもあなたはいきなさるのか

わたしはアルフェラッツの顔を見ながら
まるで氷砂糖のように
少々角ばった声で言うのだった

もう わたししかいませんから
最後まで残ってしまったものの
責任というものでしょうか
それとも貧乏くじか どちらにしろ
ゆくなという 神の声を聞いたことはありません

アルフェラッツは苦しそうに顔をそむけ
細いため息を吐いた

わたしは 神を信じてゆくしかありません

わたしがそういうと
アルフェラッツは棘を秘めた目でわたしを見つめ
たまらぬというように言うのだった
なぜあなたは 人類を愛するために
そこまでやれるのか 

わたしはそれをきかれて とうとう
年貢を納めなければいけないと 思った
熱いものが胸からあふれかけたが
誰かが冷水をかぶせたかのように情感の炎は消えてゆき
わたしは小さな涙を目に感じながら静かに言ったのだ

ああ そうです
いいわけはしません
ほんとうに おろかなことといって
かまいません
わたしは 愛しているのです 人類を
どんなことをしても たすけてやりたいのです

アルフェラッツは黙った
しかし 怒っていた
何かを 決して許さないという顔をしていた
それが何なのか わたしにはわかった
彼も昔 似たような顔でわたしを見つめたことがあった

あなたは あまりにも素直に
愛を愛しすぎる

アルフェラッツは言った
わたしは微笑みながら目をつむり
もう何も言えなかった

プロキオンが ちると鳴いた
そして目を開けた時
もうアルフェラッツはいなかった




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スピカ

2013-01-26 07:42:12 | 詩集・瑠璃の籠

月の岩戸は暖かい
いつも春のようだ
わたしは薄手の上着を着ているが
それも時々 必要ないときがある
上着を脱ぐと
ひとつふたつ オナモミが付いているときがある
わたしが黙ってそれをとると
プロキオンがネズミのように
ちゅうと鳴く

今日はとても暖かいので
書き物をやめて 
岩戸の中を散歩することにした
わたしは最近 誰かが
細ったわたしの骨を透明な力の棒で
補強してくれているのに気付いた
胸の中にある気持ちも ずいぶんと傷んで
ところどころ砕けているのだが
それも丁寧につくろったり
不思議な光る樹脂のようなもので
崩れているところをしっかり固めてくれている

すっかり溶けてなくなった指にも
細い百合のつぼみのような
白い義指がつけてある
それはまことによくできていて
ちゃんと私の意志に従って正確に動いてくれる

まるでさいぼうぐのようだなあ
などと思いながら
わたしは岩戸の中を探検する
ふすまを開けるたびに 新しい部屋に出会う
見覚えのある同じ部屋に入ることなど
めったにない
一体ここには
いくつ部屋があるのだろう
とにかくどこにいっても
空気だけは爽やかで
半分以上つぶれてしまったわたしの肺が
少しずつ 風船のように膨らんでくる

もうそろそろ帰ろうかと思いつつ
またふすまを開けると
なんとそこには 金柑の木の畑があった
星が一つ 木の上でくるくると回りながら光っていて
不思議な歌を歌っている
その歌を聞いていると思わず引き込まれるように
わたしは金柑の林の中に入ってしまった
甘酸い香りの空気が 肺の中に入ってきて
それはわたしの肺の中の
朽ちてしまった傷の深みに入ってきて
まるで蝶々が踊るように傷をやさしく撫でてくれる

少し痛い気もするが 空気を吸うのが
また少し楽になって わたしはまた
自分がひどい病気だったのだと ようやく気付くのだった

ああ きてくださいましたか

星はわたしを見て言った
そして自分はスピカであると名乗った
スピカというとなんとなく女性のような名前だが
その声は明るく強く すがすがしい若い男のような声だった

香りだけでも だいぶ楽になるでしょう
実が完熟したら 干して煎じて
お茶にして持っていきますから
毎日飲んでください
だんだんとよくなってきますから

わたしは ありがとうと言う言葉しか言えない
どうしてそんなに
みなが親切にしてくれるのだろうと
問うてしまうと みなが困るような気がして

わたしがしばらくの間
金柑の木の間を 香りに包まれながら歩いていると
ちるちるとプロキオンが呼ぶ声がしてきた
わたしはまた 深くスピカに礼を言って
その部屋を出た



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翼の人魚

2013-01-25 07:26:59 | 月夜の考古学

これも古い。確か描いたときは、結婚して間もなくの頃だったと思いますが。いやちがうかな。結婚する前だったか。とにかく、小さな紙に、水彩色鉛筆で描いたイラストです。ほかにもこのころ描いた小さい同様のイラストがあって、そのうちこれを含めた2枚のイラストを、同人誌の試作品として作った「ちこり0号」という小冊子に使いました。

その「ちこり0号」には1994年1月発行と書いてある。表紙には子供を抱いた母親のカットが書かれているので、たぶんこの冊子を出したのは、子供を産んでからだと思うんですが、この絵を描いたときはたぶん、子供は産んでなかったと思います。うっすらとした記憶ですが。

かなりうまく描けたので、とっておいたのを、小冊子に使ったのでしょう。小さな詩が添えてありました。
こういうのです。

   *

 輪転

朝まだき
草々の先に露が灯る
くりかえし絶え間なく
消えまた現れながら
夜の網膜の中に燃え続ける
永遠の幻

一枚の
心臓に止めた絵葉書が
あわせ鏡のように
不意に己の中にすべりこむ
割れてしまった記憶の向こうに
永遠が待っている

草々の夢

種々の夢

どこかで赤ん坊が
眠りながら笑う

   *

表紙カットには「kusano」のサインがありますが、編集後記には本名が添えてある。そろそろ何かをせねばならないと思って、おずおずと始めたような感がある。世間に遠慮しながら。

このころの詩を読むと、もう今の私がすでに表れている。傷つきながらも、必死に自分の足で立っていた。誰も知らなかったろう。あのころの私が何を考えていたか。それはもやもやとした霧の向こうに隠れていたが、まるで非現実的なことで、とてもできそうにないことだと思いながら、なぜか、自分にはできると感じていた。そのために、何かを学ばねばと思っていた。

で、今の自分がある。しかし、このころは、まさか、こうなるとは、夢にも思っていませんでした。




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星に願いを

2013-01-24 07:25:42 | 月夜の考古学

瞳ひらいて 見上げる星に
あなたの願い 語ろう
信じてごらん 淋しい胸に
悦び満ちる 日が来ると
独り 生きるだけと
背中向けて いかないで
耳を澄まして 星は待ってる
あなたの 夢の ことばを

砂に埋もれた 小石のように
なくした心 探すよ
時の向こうで 再び会える
その日が来ると 信じてる
どんな つらい日々も
耐えてゆこう ほほえんで
歩き続ける あなたの中で
星はいつしか 光るよ


  *

ちこり十七号(1999年11月発行)に種野しづか名で載せた詩です。(同人誌では、「種野しづか」と「種野思束」をなんとなく場合によって使い分けていました。)
有名な曲に合わせて歌える替え歌を作ることは結構好きで、これもその一つ。メロディはもちろん、ディズニーの名曲「星に願いを」(WHEN YOU WISH UPON A STAR)です。

このほかに、サイモン&ガーファンクルのサウンド・オブ・サイレンスにも詩を付けたのですが、それはメモ用紙にさらさらと書いて、そのままどこかへなくしてしまい、消えてしまいました。なかなかにうまくできた詩だったんですが。今思うと残念なことをした。

記憶によると、確かもう一つだけ、替え歌を作った覚えがあります。「日向」と同じメロディに合わせて歌える歌。あれもけっこう気にいってたのだけど、確か同人誌のどれかに埋もれているはずだ。

発掘できたら、またここで発表したいと思います。

なお、写真はもちろん「ちこり」17号の表紙。表紙に切り絵を使ったのはこの号が初めてなのですが、ちょっと子供に落書きされてます。ほかにこれと同じ号がみつからなかったので、見苦しい点はどうかご容赦を。


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コル・カロリ

2013-01-23 07:23:04 | 詩集・瑠璃の籠

月の岩戸の中はとても静かだ
ひとりでいることは心地よい
プロキオンは 必要のないときには
決して鳴かない
きっと 今のわたしには静けさが必要だと
考えているのだろう

などということを思っていたら
何かしらにぎやかな歌が聞こえる
ずいぶんと楽しそうだと
小窓を振り向いたら
一つの星がもう中に入ってきていた
星はさもおかしそうに言ったものだ

やあ チャールズの心臓が
ダイアナのところにやってきた

星は この冗談が
言いたくてたまらなかったらしい
自分で言って 自分で笑っていた
ついでに冗談の解説もしてくれた
星の名は コル・カロリといい
それは「チャールズの心臓」という意味なのだそうだ
そしてダイアナは月の女神だから
月の岩戸に住むわたしのことを言うのだという

ああそういえば わたしは女性だった
ひとりでいると うっかり忘れそうになる
コル・カロリは小さな首飾りをもってきてくれた
それは透き通った小さな石を編んで作ったもので
もっているだけで わたしの傷んだ骨にきくという

わたしが礼を言って受け取ると
コル・カロリはうれしそうに言った
女性に贈り物をするというのはいいですねえ
きょうはじめて 
あなたのこの世の仮の姿を見たけれど
ほんとうにかわいいな
なにかしてあげたくなるなあ
いえね わたしはあなたの
本当の姿を知っているけれど
そんなに小さくてかわいくないんですよ
こんなにかわいいあなたなんて 信じられない
ほんとに信じられない

コル・カロリはおしゃべりだ
わたしは 何度もかわいいといわれるのを
少し不快に感じたが なんとなく 
何かがわかるような気がしたので いった

そういうあなたは まったくかわらない

いやまったく とコル・カロリは笑いながら言った

女性というものは いいものだ
と コル・カロリは言った

なんでも いいことをしてあげたくなる
それだけで 幸せになる
女性もまた いいことをしてくれますからねえ
とはいいつつも あなたは
ちっとも女性らしくない女性ですが

よくおわかり とわたしは言った

チャールズも ダイアナを
もっと大事にすればよかったのに
そうすればいいことがたくさん
おこったのに

コル・カロリが ふと声を低くして言ったので
わたしは深くうなずき
まったくそのとおり と言った

にんげんのおとこに
教えてあげたいことがありますよ
おとこがなんとかやっていけるのは
女性がすべてを愛で許してくれているからだと

コル・カロリは言った
そして悲しげな微笑みを見せた

彼は岩戸にいる間
ずっとわたしに楽しい思いをさせてくれた
冗談をたくさん言って
わたしのいろんなところをほめてくれて
あいしている だいすきだと
言ってくれた
本当に まるで恋人のように

プロキオンがいなければ
彼はわたしを抱きしめさえしかねなかった

おかげで 彼がいなくなると
岩戸は急にさみしくなった
するとプロキオンが静かに歌いだした

ああ こうして
みなが わたしをだいじにしてくれる
ということは わたしは今
そうとう大変なことになっているのだな



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フェクダ

2013-01-22 07:34:37 | 詩集・瑠璃の籠

瑠璃の籠の中のプロキオンも
たまには外に出してやらねばと
今日は籠の戸を開けてやってみた
けれどもプロキオンは別にかまわないという感じで
いつまでも籠の中で
ちるちると歌っている

別に気をつかわなくてもかまいませんよ
星は籠の中でじっとしていることなど
平気ですから
そりゃもう ポラリスのように
何千年とじっとしていられますから

近くで声がした
見ると窓の向こうにまた星がいて
静かな光を風に揺らしながら
小窓に近づいてくる

フェクダと申します
おおぐまの宮で働いております

言いながらフェクダは
するりと小窓から岩戸の中に入ってきた
そしてわたしに
白い光で織り上げたような
それはきれいなレースのショールを渡すのだった

それをかぶっていると
冷たい胸が温められて
痛い病気がだんだんとよくなってきますから

フェクダはいう
わたしは病気なのですか?
と問い返してみると
フェクダは少し悲しい目で笑いながら言った
ええ とても重い病気なのですよ
でもわからないでいいですから
あなたは なにもわからなくて

そのとき 遠くで
何か 雷でも落ちたような
どん という激しい音がした
なんでしょう?とわたしが問うと
フェクダはまた言った
あなたは なにもわからなくていいですから

でも 何かがおきたのではないですか
あんな音がするときは たいてい…
わたしがいいかけると フェクダは
困ったような顔をしつつ 少し口調を冷やかにして
言うのだった

口で言うだけでは わからないやつもいますから

ああ なるほど
わたしは合点がいって 少し胸が悲哀にぬれた
フェクダは優しく微笑んで
自分の光でわたしの胸の悲哀をぬぐってくれた
そしてわたしに どんな傷もつけないように
声や言葉に気を付けて
ほんとうにやさしく言ってくれるのだった

あなたは わからなくていいですから
まだなにも わからなくていいですから


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