月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
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エダシク・5

2017-07-31 04:16:39 | 詩集・瑠璃の籠

はてしない海に向かう道を
あなたは歩いている
影を踏んでいる間はいいが
その影がそろそろいう
もう行かなくてはならないと

ああ
海と思っていたものは
青い砂漠だった
水などありはしない
だが微かに流れる音がする
どこかに不思議な穴があり
この砂漠から
もう一つ別の砂漠へと
砂が流れているのだ
それは不思議な砂時計なのだ

永遠を数えていく
苦しい砂時計だ
その永遠の一つが終わる
青い砂漠の砂が落ち切る時
神は新しい時計を
あなたのために下ろす

もうあなたは終わった
あなたは別のあなたになった
そのあなたを数えていくために
新しい時計が発生するのだ

なぜ
人を傷つけることばかりしたのか
なぜ
あんなにも
人を愚弄したかったのか
夢にも思わなかった
それがどんどん自分を壊していくことなのだとは

あなたはもうあなたではない

永遠に別のものとして生きることになる
その永遠をかぶりつづけていく
なにもかもをなくしたものという
恐ろしく深い名前を負い
失ったものを忘れながら
もうひとつのあなたとして
なにものかになっていく不思議な自分を
経験していくのだ

それが愚かなことなのだと
わかるものになることができるかどうかは
神にすらも
わからないのだ




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アルドラ・9

2017-07-30 04:15:01 | 詩集・瑠璃の籠

蜘蛛やネズミのような
小さな魂のためにも
神はすばらしい器を作ってくださる
まだ確かには自分を知らない
自分がいるということも
定かにはわからない
とても小さな魂のために
神は技術と愛を尽くして
麗しい姿を作ってくださる

ほらごらん
とても小さいが
蜘蛛もネズミも
自分で何かをしている
時に苦しんでいる
時に喜んでいる
何かを感じている

こんな小さなものを
裸にしておくことができようか
神は極上の衣を
何億枚と作ることができるというのに
それをおまえたちのために
しないではいられようか

当然のごとくにやってくださるが
それを当然のことではないと
小さな魂が自分で思えるようになるまで
何億年とかかることだろう
そんなことなどかまいはしないと
神はすべてをやってくださる

あらゆる生き物の
美しい姿は
不思議な声は
すべて神が作ってくださったのだ
小さな魂が冷えてしまわないように
自分の美しさを
自分で編めるようになるまでに
神は自分のすべてを作ってくださる

愛というは
限りなく大きく見えるようで
たまらないほど美しい
限界を持っている
それが
小さな美しい蜘蛛一匹の中に
隠れている
それを読んでみなさい

暖かいものを知ることができるだろう
自分を生きるということが
いかに美しいことか
わかるだろう




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レグルス・10

2017-07-29 04:15:49 | 詩集・瑠璃の籠

いつわりを描くために
消費した万枚の紙を燃やせ

さぞ高い炎があがるだろう

万色の絵の具で描いた
虹よりもあでやかな
幻の夢を燃やせ

さぞ熱が冷めるだろう

燃えれば燃えるほど
冷える炎を
焚けば焚くほど
暗くなる炎を
燃やせ

さぞ思い知るだろう
いつわりの代償を

あれらの紙と絵の具を
作るために殺した
すべての森の木々と
すべての野の花のために
虫よりもはかない身となって
おまえは働かねばならない

とこしえの闇さえ招いた
愚かな所業を
芯から悔いることができるようになるまで

泥のような闇の中を
おまえは這いつくばらねばならない




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エダシク・4

2017-07-28 04:19:55 | 詩集・瑠璃の籠

嫉妬という感情は
女より男の方が強いものです

嫉妬は
自分というものが強いほど
強いものですから
自分を実行することを
最大の目的として創られた
男の方が強いのです

覚えておきなさい
奢りも 嫉妬も
女より男の方が
太くて強いものだと

しかし男は
自分が嫉妬しているということが
負けることのような気がしてつらいものですから
それをずっと
女になすりつけてきたのです
自分の嫉妬は鉄壁の檻に隠し
女の小さな嫉妬をことさらについて
嫉妬は女の特性だということにしてきたのです
それで
本当に長い間
女性を苦しめてきたのです

男というものは
女が自分より美しいのに嫉妬して
女が自分より良くならないように抑えてきた
男の方が美しくないのに
女より劣ったものになってしまうのが
とても嫌だったのです

女性の美しさというものは
女性の徳によるものです
愛を実行することを主目的として
創られた女性は
とても若いころから
その使命をそれなりに果たしてきたのです
故に
愛を強く感じる美をいただいているのです

男というものが
女性に匹敵するほど美しくなるためには
男の力を持って高い愛を実行せねばならない
そういうことをやりもせず
女性を貶め
しばりつけてきたことは
男というものを
とても小さくて醜いものにしています
そろそろ気付きましょう

男の中にある
嫉妬というものの姿を正しく見つめ
それを認めなさい
女性にやってきたことの
すべての過ちを認めなさい
そこから
新たな愛を実行していく
男としての自分を勝ち得ていきましょう

あなたがたは
これまでなしてきた罪により
醜くなるが
それがまことの姿ゆえに
今までよりもいいものになるのです
すべてが
そこから始まっていくのです




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エダシク・3

2017-07-27 04:15:30 | 詩集・瑠璃の籠

あなたがたは
非常に冷たい
ひとりの天使が
人生をかけて救いをなしたというのに
未だに
動かない

女だというのがいやだという
美しいからいやだという
美しい女は
ぼろきれの猿のように
みじめで馬鹿なものでなければ
いやだという

はるかな高みに
月の薄絹のように光っている
澄んだ心のようなものであるのは
いやだという
絶対に
認めたくないという

遥かな時を
美しいものは馬鹿だという理屈を
信頼して生きてきた
それでなければ
自分の馬鹿さ加減がきつかった
痛いことなどせずとも
簡単に食える
くだらないものにしてしまいたい

あなたがたは未だに
そのような堕落の黄昏の中に
潜んでいるのだ
もうとっくに
朝の鳥も飛び去ったというのに

日は天中に高く照らしている
燃える真眼は
すべての虚偽の正体を明らかにしている
誰もがそれを見て
驚いてる
それなのにまだ
あなたがたは
凍りついたようになにもできないのだ

まだ信じたくないのだ
あれが
天使だったということを
下らない嘘にして
握りつぶすことができれば
また怠惰の海に眠ることができる
そうすれば
辛い思いなど
永遠にしなくてすむ

そしてまだ
あなたがたは何もしないのだ
何もしなかったということのかたが
一体どんなものかということが
わかるまで
いや
わかってさえも

何もしないのだ




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エダシク・2

2017-07-26 04:16:23 | 詩集・瑠璃の籠

四つの目をもつ女が
金釘で籠を編んでいる
白い一角獣を捕まえるために
女は処女ではないので
自分には寄って来ないのだ

一組の目は馬鹿を
一組の目はまことを
同時に見ることのできる女は
ひとつだが
ふたつに見える心を
持っているという

遠い昔に
生まれたばかりの老人と巡り合い
まぐわいをして
鮫を産んだことがあるという
その鮫は今
どこにいるかわからない

白い一角獣の肉を食えば
永遠に美しい
清らかな処女になることができるという
女はそれを捕まえるために
籠を編んでいるのだ

決して曲がることのない
短い金釘を使い
編み続けているのだ




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音の掲示板

2017-07-25 17:46:04 | 星の掲示板

65枚目の掲示板を設定する。





絵/ジョン・メリッシュ・ストラドウィック




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ルナ・36

2017-07-25 04:16:18 | 詩集・瑠璃の籠

わたしがいなくなったら
彼らはどうなるのか
そう思ったら
来ずにはいられなかった

つらいことも我慢して
痛いことも我慢して
やっていたら
自分はどんどん美しくなる
それを見て
彼らは激しく嫉妬に苦しむ

自分がつらくてたまらないからと
わたしを馬鹿にして
わたしを馬鹿にして
どんどん自分がだめになる

おまえがいるから悪いんだと
言うから
本当にそんな気がして
それならもう来ないというと
彼らは絶望的に寒い目をするのだ

どうすればよかったのか

石を投げられても
ひどいことを言われても
いやなことをされつくしても
がんばろうとしたが

もう何もない
わたしは
どこにいったのか

あれらは
だれだったのか

ああ
潮騒の
音が
聞こえる




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エダシク

2017-07-24 04:15:10 | 詩集・瑠璃の籠

人の世の流れを見るための
不思議な穴がある
人間のかよわい殻の奥で
うずく心を見る
不思議な目がある

黄金の二つの月が
この世のどこかに穿たれている
その中にいる星は
わたしである

気付きはすまい
そのたったひとそろえの目が
どこにあるのかに
どこでわたしが
おまえを見ているかに

だれも自分のことなど知らないと
思っているたかぶりの猿が
一本のマッチを擦りつつ
都を燃やし尽くしてやろうと考えている
憎いからだ
自分よりいいものが
美しいものが
そういうものの姿を
わたしはずっと見ている

ありとあらゆる惨劇は
勉強を怠って
人に先んじられた悔しさに溺れ
人を馬鹿にすることのみのために生き始めた
馬鹿がやったのだ
その馬鹿の姿を
わたしはずっと見ているのだ

万緑の季節の森の
すべての葉の中にひそむ
たった一枚の葉に
描かれたひとそろえのわたしの目が
おまえを見ているのだ



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ミルザム・7

2017-07-23 04:16:16 | 詩集・瑠璃の籠

胎の中で
不思議に胎児が変容していく
あるいは
蝶の蛹の中で
蝉が育ち始める
そのように
自分の中で
本当の自分ができてくる

ビヨウヤナギの
金の毛羽立ちにいらだつのは
黄金色の真実の襞に
常に皮膚を刺激されているからだ
ゆえに
自分のものではない腕が
だんだんと死んでいく

幽霊が運んでくる水で
常に洗っていない限り
おまえは生きたまま
腐り続けていくのだ
なぜか
何も自分を生きてはいないからだ

空蝉のような
形だけの人生に安住し
馬鹿なことばかりやる自分の
暗闇を許してきた
どんなことをしても
嘘ばかりの世間に住んでいるのだから
かまわないと
あらゆる暴虐をなしてきた
愚か者め

ビヨウヤナギの花粉が
おまえの真実の背骨に受粉する
二度と戻れまい
元の自分には

どんなことをしても取り戻せない
愚か者の荒野に落ちるまで
何もしなかったのか
できないと言い募って
すべてから逃げてきたのか
大きすぎる代償の真の姿が見えるまで
嘘ばかりでなにもかもをやったのか
いい加減にやめろと言われてきた
数億の言葉を
どこに置いているのだ

行く末を頼む神も
もういない
永遠の親の胸の中で
ガラスのように割れた自分を抱きながら
模索するがよい
新たな未来を

どこまで行っても
馬鹿の闇に美しい未来はない
それを認めることができるまで
まだいくらかかかるというか
飽きれてものもいえぬ

ともだちはだれもいない
おまえとおなじものはどこにもいない
阿呆をやりすぎたおまえの
新たな正体がどのようなものであるのか
神でさえ
途方にくれるほど
おまえは迷いはてたのだ




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