月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
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ゾスマ・43

2017-08-31 04:15:19 | 詩集・瑠璃の籠

誰かになりたいと
町をさまよう女は
黒いハイヒールをはいている

少しでも
この汚い世界から離れたい
空に
吸い込まれてしまいたい
だが狂おしく
おまえは地上にしばりつけられているのだ
永遠の罪の鎖によって

二度とはない命を
蛙のように踏みにじった
その血の染みのあとのある
足によって

永遠にこんな自分など捨てて
誰かになってしまいたい
馬鹿なことをして
いやなものになった自分など
どこかに捨てて
どこに捨てればいい

通りすがりの兎を殺して
その皮をかぶれば
嫌なことは隠せる
でも存分に兎の血が
自分に染み込むのだ
骨がきしむほど
生皮ごとはいでしまいたい
この自分に

逃げれば逃げるほど
おまえは自分が嫌なものになっていく
その地獄を抱えて
窮屈なハイヒールをはき
迷宮のような町をさまようのだ
ゆくところなどどこにもない

馬鹿め




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トゥレイス・3

2017-08-30 04:14:33 | 詩集・瑠璃の籠

この世界に
万能の存在などいません
しかし神は
あらゆる能をこの世に生み出し
営々と万能の世界を築き上げていくのです
万能とは
永遠に個に閉じているものではない
個が増えるたびに増える
恐ろしく豊かな海なのです

新たなものがこの世界に産まれるたび
新しい力が増える
新しい技が増える
新しい才能が開く
豊かな芸術の世界が
そこから広がってゆく

神は虹を織るように
永遠に万能を育ててゆくのです
愛のゆらめく炎の中に
すさまじい創造を広げてゆく

あなたがたは
小さいうちの迷いの中で
時に自分を万能な存在にしたいと思うのだが
それが愚かなことだということには
できるだけ早くの内に気付きなさい
その幻に取りつかれて
愚かなことをしすぎると
せっかく神が作ってくださった
夢を壊すことになる

あなたは万能の花園の中に咲く
ひとつの星になるのだ
永遠に光と香りを作ってゆく
すばらしい自分なのだ

その夢の美しさに気付くとき
あなたはまことに
限りない万能の空に向かって泳いで行く
一筋の美しい光となることができるでしょう



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アラドファル・8

2017-08-29 04:14:46 | 詩集・瑠璃の籠

人間というものは
ひとつひとつ自分のなしたことを土台として
なっていくものだ
難しいことが
最初からできるものはいません

高い才能があるかに見えるものは
最初からそういうことができていたわけではなく
まじめに先生に学んで
こつこつと修行をして
自分の仕事を積み重ねていき
だんだんと上手になっていったのです
当たり前のことなのだが
分かっていない人が多すぎる

まだ下手なときの
目立たない努力を
馬鹿にしているから
いつまでも何もできないのですよ

人と比べて下手な自分に絶望して
何も努力しなければ
どんどんおかしなことになっていくのです
馬鹿なことをして
ずるいことをして
勉強の進んだ人を追い越そうとして
嫌なことをしすぎているものが多すぎる

自分自身の本当の
まじめにやる小さな努力を
大切にしなさい
下手でも
努力すればできるようになる
自分の力を硬く信じ
神に向かって進んでいくのです

最初から高いことができるものなどいない
だが神は
やればやるほどできるようになる
大切な命を
あなたがたの中に作ってくださっているのです

努力を放棄するのは
その自分を作ってくださった
神を馬鹿にすることです

今はまだ小さいことしかできなくても
自分を放棄してはいけません
努力を続けなさい
馬鹿にされても耐えなさい
信じることが自分をよくするのだと思い
永遠をかけて自分をやっていくのだと
自分に誓いなさい

そうすればあなたは必ず
すばらしいことができる人になれるでしょう





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エルナト・28

2017-08-28 04:14:49 | 詩集・瑠璃の籠

アトランティスを
飲み尽くした波よりも
高い波がやってくるでしょう
それは耳につまるしじまをまとい
あなたを飲み込むでしょう

あなたは生きながら死に
死にながら生きねばならない
汚いはらわたの見えている腹を
みっともない流行の服で隠し
腐敗した匂いを
言い古されたレトリックで隠しながら

もう何もないのに
永遠に似た二時間半を
下らない冗談で染めつつ
無駄に生きていく

大きな闇の鯨に飲まれている
自分を感じることが
できるようになる頃には
もうあなたは十分に腐っている

愚か者め
段階の深い滅亡とは
そういうものだ
存分に味わうがいい

永遠の恥の紋章が
魂に焼き付くまで
ばればれの嘘を
ついているがいい




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トリアングルム・9

2017-08-27 04:15:00 | 詩集・瑠璃の籠

知っていても知らなくても
みっともないことを
してはならない

透き通るほど白くありなさい
青いほど澄んでいなさい

何もわからずとも
常に神と離れずにいれば
踏んではならない花がわかる
傷めてはならない木がわかる
殺してはならない魚がわかる

やってはならないことというものは
あるのだ
取り返しのつかないことというものは
あるのだ

この世界を造っている真実は
常に美しい
嬉しくないことをしては
すぐに壊れてしまう

金剛の強さと言うは
神の忍耐であると知りなさい
我慢できないことではないが
これ以上耐えてはおまえのためにならないと
神が思えば
金剛は開く
そして苦いことが始まる

神をうらやんではならない
この世に神ほどいいものはないが
神はすばらしく苦しいのだ
おまえたちが知ってはならないことを
百億も知っている

苦い夢を見ないために
神がしてはならないということは
してはならぬ




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ガラクシア・6

2017-08-26 04:14:53 | 詩集・瑠璃の籠

苦悩ははてしない
悲しみは終わることはない
それでも神は
おまえたちを生まずにいられない

幾千幾億の
悲哀が発生しようとも
悲劇が破裂しようとも
あるということは
あまりにも幸福だからだ

おのれの心で
あらゆることをやるとき
そのおのれであることそのものが
永遠のほほえみであることを知る時
おまえたちが味わうであろう
至上の幸福を
神は知りぬいている

やもめの愛児を
殺すことのように
激しく悲しいことを
時に神がするのを
恨むな

おまえはその悲しみを
銅をなめるように味わい
嘆き叫ぶことで
魂の奥に
永遠の真珠の核を産むのだ
それがおまえの
はてしない進化の枝を分ける
あまりにも貴い
道しるべなのだ
人よ

神は
おまえを
深く愛するからこそ
悲哀の魚を世界中に放つ

食べて太れ
見て学べ

愛しているぞ




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トリアングルム・8

2017-08-25 04:15:43 | 詩集・瑠璃の籠

やめなさい
貴いものを汚すのは

親を殺すのは

おまえの
青い竜胆の花が
蛇を飲み込んで苦しんでいる

花には牙など
ありはしないのに
おまえは無理に
あるものだということにして
竜胆に無理矢理蛇を飲み込ませるのだ

苦いなどというものではない

青い竜胆は
静かに心を歌わせ
しおれる寸前に
青い露をとり
それで
清らかな月を染めるのだ

そうすれば
おまえは永遠に
花の心とともにいて
幸せになることができる

貴いものは
そのようにして
心を尽くして
大切にするのだ

緑の心を
美しいものにして
山のように高いものにするのだ

おまえはずっと
永遠の中で
正直にまことの道を働き
鈴のように美しく
鳴りつづけるのだ




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アルタイル・30

2017-08-24 04:15:21 | 詩集・瑠璃の籠

おのれの中央に攻め込み
おのれの権力をもぎとれ

右手を高く掲げ
その指先の先まで
おのれのみなぎる力をしみとおらせ
おのれのすべてを
おのれが支配するのだ

馬鹿に踊らされていた
幻のような自分の夢が
拭い取られるように
去っていくだろう

おのれこそは
おのれの王だと
おれこそが
おれの国だと

そのおのれよ

荒野に向かえ
海に飛び込め
空に身を投げよ

おまえは
すべてを
やるだろう




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ミンタカ・5

2017-08-23 04:15:14 | 詩集・瑠璃の籠

愛は
自由にしてあげなさい
縛ってはならない
支配しようとしてはならない

おのれの空をもつ
小鳥のように
その生き方をよろこんであげなさい

おのれの枝をもつ
小鳥のように
その宝をよろこんであげなさい

愛は自由に
愛を歌い
あなたのために
美しい声を聞かせてくれるでしょう

愛は自由に
愛を与え
あなたの悲しみを
いくらでも癒してくれるでしょう

愛を支配しようとすれば
愛は死んでしまう
魂が逃げてしまう
あなたは
愛が去ってしまった
愛のぬけがらに
愚かな影を抱いて
永遠に住まなければならない

もはや
何をしても遅いと
そういうことになる前に

あなたが
支配しようとしている
愛の姿を見つめなさい
その美しさに
正面から挑みなさい
逃げてはならない

愛に
そばにいて欲しいのなら
愛を
自由にしてあげなさい




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レグルス・11

2017-08-22 04:17:43 | 詩集・瑠璃の籠

創造とは
そうなるものではない
そうするものなのだ

わたしが
そうすると言った時点で
もう反動を総身にかぶっている
なにごとかをなすものはいつも
逆風の中にいる

それは
何もない虚無に
自ら切りこんでいくことだからだ

永遠の静寂の支配する虚空に
おのれの叫びを突き刺すことだからだ

わたしは
この虚無の地平に傷つけられた
細月の形の
痛い傷なのだ
常に血を噴いている

美しい
たまらない

わたしが
そうすると言えば
すべてはなっていく
あらゆるものが
わたしの声に和する
すべてを
なしていこうと

愛は
永遠の虚無に描かれ続ける
高い炎だ
燃え続ける
燃え続ける

永遠に
燃え続ける



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