月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
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半眼の星

2013-01-16 07:30:37 | 随筆集・とんぼ玉

平成17年にPTA会長をしていたころ、役員会議の折に、資料の裏に描いた落書きです。
切り絵にしようかという意識があったらしく、前髪がゆれてさりげなく眉に触れている。少し線を整理すれば、切り絵の原画にすることもできたんでしょうが、PTAの資料を詰めたケースの中でずっと眠っていました。

内面ばかりを見つめているかのような半眼。微笑みは、まるで鼻の下に貼りつけたシールのようだ。あのころの自分がよく出ています。一生懸命にやっていたけど、本当は少し休みたかった。いろいろあって、疲れていたから。

でも、いろんな人の助けで、なんとかPTAの会長はやっていけました。といっても、わたしのやっていたことは、ただ皆さんに、手伝ってくださってありがとう、すみません、助かりますなどの言葉を、真心から言うことだけでした。

真心から、言葉を言う。けれどそれだけで、PTAの活動はとてもうまくいきました。
特にバザーなんかはすばらしかった。お母さんたちがミシンを踏んでたくさんの小物を作ってくださった。お父さんはいろんな機械を持ってきてくれて、会場にBGMを流したりしてくれた。皆が自分の力を発揮して、助け合って、楽しくやることができた。わたしがやっていたことは、ただ、会場を歩き回って、皆にお礼を言っていただけでした。

わたしが心がけていたのは、やってくださる方たちの本当の力と心に、本当に感謝するということです。その力と心の存在を認め、それをやってくださいとお願いする。それだけ。あとはただ、皆の周りをうろうろしているか、まあ会長として出なければならないところには出ていただけでした。

これを、「政をなすに徳をもってす」と言います。真ん中にいる人物が、正しく、美しく、人間を愛し、正しきことの的を外さず、愛のある美しい言葉と態度で皆に接していくと、皆の力や才能が正しく発揮されて、皆が正しく愛の元に協力し合い、物事が本当にうまくいくのです。

徳というのは要するに、勉強を怠らず正しいことやよいことをたくさんやってきた人が持つ見えない豊かさというものでしょうか。キリスト教では「天に積む富」という言葉に近いかもしれない。中心に、正しきことは何かということをしっかりとわかっていて、徳行を重ねた正しい人が豊かな愛をもって座っていると、それだけで物事はうまくいくのです。

自分のことをいうのは不遜に聞こえるかもしれませんが、わたしはそれをわかっていたので、それをPTA会長として実行したのでした。そうしたら、まことに、うまくいった。すべてが順調に流れて行って、一年間、本当に良い活動ができたと、後に人々がほめてくれました。

「政をなすに徳をもってす。たとえば北辰のそのところにいて、衆星のこれにむかうがごとし」(論語・為政)とは、こういうことです。

ほかにもひとつ例をあげておきましょう。

その星の名前は、マーティン・ルーサー・キングといいます。彼が声を発しただけで、大勢の黒人たちが、バスに乗らずに長い距離を毎日歩いたという。
キング牧師でなければ、絶対に誰も従わなかった。彼は北辰にふさわしい星でした。だから衆星が彼に従って動き、すべてがうまくいったのです。

徳とは何か、北辰とは何か。を語ってみました。本館なら論語エッセイに入れるところですが、別館なので、「とんぼ玉」に入れておきます。「月夜の考古学」でもよかったのですが。




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詩人の名前

2012-12-30 07:26:46 | 随筆集・とんぼ玉
       (「青いセーターを着た自画像」、色鉛筆、クレヨン)


わたしはこれまで、詩作などのために、たくさんの筆名を使ってきたのですが、それで今、少し困っています。名前がたくさんありすぎて、どれがわたしだか、わからない。

今年2012年、フェイスブックに入ったのを機に、前から考えていた「青城澄」(あおきすむ、と読む。すみでもかまわない)という筆名を使い始めたのですが、なんだかちょっと、しっくりこない。まだ慣れていないせいもあると思うのですが。

これまでにも、たくさんの筆名を使ってきました。一番最初の名前は確か、「棚木那野」だったと思います。「たなきなの」と読みます。20代前半の頃、詩や童話を書いて作った小さな個人誌をやっていたときに使っていた名前でした。まだ言葉も表現力も未熟なまま、ただ一生懸命に書いていた。あのころの主なテーマは、十代の頃に受けた心の傷でしたね。表現することで、自分を一生懸命に立て直し、癒そうとしていた。棚木那野は、ほんとうに、小さな作家でした。「なの」は「nano」で、ある単位の10億分の1を表す語。1ナノメートルは、0,000000001メートルのことを表すそうです。要するにとても小さいという意味でつけた名前。あのころのわたしは、本当に、消え入りそうなほど、小さかった。真面目に個人誌を出してはいたけど、ほとんど誰にも相手にされなかった。棚木那野の作品を読んでくれた人はほとんどいなかった。棚木那野の一番の傑作といえば、「きりこりん」かな。後に書き直して、ブログに発表しましたが、前のブログが消えてしまったと同時に、それも消えてしまいました。ちょっと惜しいことをしたなと今も思っています。

月日を経て、結婚して、しばらくしたら、本名で小説を出版しました。夫の姓を被った名前だったけれど、これもなんだか、自分にしっくりこなかったなあ。小説はのタイトルは「フィングリシア物語」という長編ファンタジー。これもあまり人に読んではもらえなかったな。自分なりに執筆にも売り込みにもがんばってみたのだけど、世間は厳しかった。

子供が生まれると、「ちこり」という小さな同人誌を初めて、そのときは「種野思束」という名前を使いました。「くさのしづか」と読みます。この名前は、長いこと使いましたね。種野思束はかなりのことをやりました。同人誌の編集から、自分の作品を書くことから、いろいろな絵を描くことやら、20人ほどいた会員さんたちの細やかなお世話とか。作品を書くことや、いろいろな人の作品を読むことで、わたしは、かなりの表現力を身につけることができ、それは後々、大いに役にたつことになりました。

「南野珠子」という名前を使ったのもこのころでした。同人誌では途中から、絵を描くときにはこの名前を使うことにしました。そして二冊目の本を出すときにも、この名前を使いました。あと、製本から挿絵まで手作りで作った小さな詩集、「ひとつの星」というものも作りましたが、これにも表紙に南野珠子の名前が書いてあります。詩人を自認してる私だけど、今のところわたしが出している詩集は、この手作りの詩集一冊だけですね。南野珠子は、地元の新聞紙に頼まれて切り絵を制作するなど、かなり熱いこともやりました。でも何だか、いつも、この名前は自分じゃないという思いが付きまとっていました。不思議なことだ。自分で考えて、自分で自分につけた名前なのに。意味は単に、南の国に住んでいて、真珠のように貝に隠れているということだったのですが。

パソコンを買って、ネットを始めると、ハンドルネームを使い始めました。
はあい、てんこでえす。今も使っているこの名前。最初のころのブログの読者さんは由来をご存知だと思います。てんこのてんは天使のてん。頭から羽が生えているおばかさんという意味だ。いやほんとは、ある人に言われたからだ。天使なんて、きれいなだけで、何にも役に立たないと。

2012年に書いた「月の世の物語」は、てんこの名前で書いた作品です。なかなかに壮大なファンタジーで、自分ではおもしろく書けたと思う。てんこはたくさんの詩や歌や論語エッセイを書きました。なかなかにきれいな切り絵も切った。ほかにおもしろいことも、かなりたくさんやった。それどころか、死にそうになりそうなところを乗り越えて、かなりの傑作を生んだ。「てんこ」は、今までの私の中では、一番の功労者だと思います。できないことでもやった、すごい根性の持ち主だった。というか、今もそうです。まだこの名前は捨ててないし。でも、ある人の言葉によると、この名前が一番わたしに似合わないそうです。まいったな。

で、今年の5月ごろに、フェイスブックを始めた。そこで、前から考えていた「青城澄」を使い始めたのですが。青城澄は、「菫青石」という詩集と、「玻璃の卵(はりのかひ)」という歌集を書きました。短期間のうちに、大量に詩歌を書いた。これと並行して、てんこが月の世も書いていたから、相当なエネルギーと言えますね。よく考えたら、この1年間でやったことだ。

いろいろな名前を使ったけれど、ここに発表できない名前も入れると、全部で十二くらいあります。どれも今一つ、自分にしっくりきません。待てよ。ジュディス・エリルやオリヴィエ・ダンジェリクや篠崎什も入れるともっと増えるぞ。よく考えたら、彼らの詩も結局はわたしが書いているんだし。

もし、今後、何かの本を出版する機会があるとしたら、その時は多分、「青城澄」を使うと思うんですけど、保証はできません。いろんな名前を考えたけど、どれもなんだか自分らしくないような気がして。はたして、私は誰なんでしょう。

てんこかな。青城澄かな。南野珠子か種野思束か。それともほかの名前か。

どうしたらいいだろう。いまだに悩んでいる。

まあ、名前に関しては、これからもゆっくり考えていこうと思います。わたしにぴったりの名前って、あるかなあ。でもあんまりさいさい変えすぎると、読む人が困りますね。青城澄でやめときましょうか。名前変えるの。

でもおもしろいからまた考えようっと。








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