月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
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ルナ・5

2013-02-28 05:54:42 | 詩集・瑠璃の籠


子よ

あなたの もとへゆく

わたしは

だれがとめようと
あなたのもとへゆく

あいしている

わが子よ

あいしている

あいしている

あいしている

あなたと ともにいる
いつも

子よ

あなたは わたしの
子だ

わたしは あなたの
母だ

ゆく

どこまでも
あなたを照らすために

わたしは

ルナ



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ソル・3

2013-02-27 07:00:30 | 詩集・瑠璃の籠


人類よ 遠く離れても
わたしはくる
あなたがたに 会うために
必ずくる

たとえ もう二度と
会えないほどの
遠い彼方に 離れていったとしても
わたしは
かならず
あなたに
会いに来る

会いに来る

あなたを 愛している

必ず
会いに来る

ひとびとよ
あいしている



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ルナ・4

2013-02-26 05:59:43 | 詩集・瑠璃の籠


青空の 白き雲にかすみ 月が飛ぶ
月が飛ぶ 細き月飛ぶ
愛の傷 かくのごときかと
月が飛ぶ

たらす血は 赤きにあらず
涙のごとく すきとほる
甘にがき 飴のにほひする
肉桂の香り混じるは
何の故か
我は知らぬ たれも知らぬ
月も知らぬ
ああ
月が 飛ぶ

月が 飛ぶ

くすのきが
たおれる




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ウェヌス

2013-02-25 05:45:27 | 詩集・瑠璃の籠


すべての かなしみは 
よろこび

すべての くるしみは
やすらぎ

すべての すべての
す べ て の
いたみは あい

わたしの なは あい
ゆえに すべてを ゆるします

あなたが あなた ゆえに

すべては わたしの
ゆるしのもと

あなたが おこなった

あい

あ い

あ   い

わ た し は
ウェヌス

すべてを あいの なかに
いだきます




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コル・スコルピイ

2013-02-24 06:58:49 | 詩集・瑠璃の籠



赤い心臓を 胸に宿し
なにをわたしに秘めると
あなたは尋ねる
こたえることなどないと
わかっていながら



はるかにも 来た道を
ふりかえりもせず
あなたはゆく
めしいのようだ
見ているくせに なにも見ない
そうとも

おお

毒を秘めた 冗談を
水あめに溶かして 降らそう
人よ 大喜びで浴びよ
すべては おまえたちのなしたこと
それを
わが手にて清めるために
わたしの毒はある



蒼い悲しみで なぜわたしを見つめる
すべての ものが
自分と
同じ心でいると 思っているのか
愚かな

お ろ か な

テラァ…

地球よ おまえが
自分に不似合いなほど
美しい妻を得ていることに 
いつ
気付く

ルナ

いつ 夫に愛想をつかす


コル・スコルピイ
さそりの 心臓

余のまたの名を
アンタレスと いう



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アリオト

2013-02-23 06:43:14 | 詩集・瑠璃の籠

その日わたしは
ぼんやりと 岩戸の中を巡っていた
和室をいくつも通りながら
なんとなく またあのサンルームに出会えはしないかと
けれど いくつふすまを開いても
あのサンルームには出会えなかった

海が見たいと思ったのだが
それはどうやらあきらめるより仕方がないようだ
わたしの心は 自動的に向きを変え
ほかの楽しみを見つけようと 視線を動かす
ある和室に きれいな芥子の花を描いた絵があった
わたしはその絵に近寄り しばしの間絵に見入った
ああ 美しい絵だ
これは人間が描いたものではない
それはすぐにわかった

人間の描く絵もとてもすばらしいが
人間にはまだ描けないものを
この画家は描いている
人間にはまだ見えるはずのないものを
描いている

気に入っていただけましたか

と 後ろから声がした
ふりむくとやはり そこに星がいる
星はアリオトだと 名乗った
わたしはアリオトに挨拶をし
これはあなたが描かれたのですかと 尋ねた
アリオトは笑いながら 静かに
そうです と言った

わたしは言った
すばらしいですね
この芥子は 愛のためにとてもいいことをしている
この花が咲いているだけで 人間はとても助かる
そして

ええ そう とアリオトは言った
この絵を見るだけで 芥子はあなたを明るい愛に導いてくれます
暗い子宮に沈んでいた心臓を 光の中に呼び戻してくれる
そうすれば あなたの胸の心もとてもよいことになっていく

ああ わかります
とわたしは言った
その絵の中の芥子を見るだけで
わたしの心は まるで水底に倒れていた船が
ゆっくりと浮かび上がってくるかのように
次第に軽くなってくるのだ

それでわたしはまた 自分がどういう病気だったのか
わかるというわけなのだが

わたしは ずいぶんと傷んでいるのですね
わたしが言うと アリオトは目を閉じ
微笑みを変えずに言った
深く考えるのはやめましょう せめて今は
あなたは何もわからなくてよいのです
この絵は さしあげます
プロキオンのそばの壁に飾っておくといい
きっとよいことが起こるでしょう

ありがとう とわたしは言い
遠慮なく絵を受け取った
アリオトは しばしわたしを
愛おしそうに見つめ かすかに吐息を唇から漏らした
悲哀を暖かく燃やして 彼は一層深い愛でわたしを包んでくれた
わたしはその顔を見て やっと気づいた
アリオトの片目が 白翡翠と土耳古玉で作った義眼であることに

ああ あなたも
わたしは言った
アリオトは静かに答えた
だれでも 地球を目指す星は
多少なりともこうなるもの
すぐに治ります
だがこの義眼が少し おもしろいことをするものですから
わたしはそれが気に入って しばらくつけているつもりなのです

おもしろいことと 申しますと?
わたしは絵を抱きしめながらアリオトの顔を見つめた
するとアリオトは 義眼ではない方の目を閉じ
義眼の目をぱちぱちとまばたかせた
すると目の奥から 魚の歌うような快い玉水の音が聞こえてくる
それはきれいな澄んだ音で 
耳の奥までしみとおって それはわたしの記憶の中から
一筋の歌を呼び出してくるのだった

あかき実を 鳥にあたえよ たかそらの…

銀の小星の 雨と降る世に

わたしが歌うと アリオトが 下の句を継いだ

わたしは絵を大切に抱いて アリオトに深く礼を言って頭を下げた
アリオトは微笑んで 静かに姿を消した

小部屋に戻ると わたしは絵を プロキオンのそばの壁に飾った
殺風景な部屋に 花畑ができたように
何やら部屋の中が明るく 暖かくなった
絵の中で かすかに芥子が揺れた

わたしは思った
始まるのだ もう
いや
始まっているのだ

すべての星が 降ってくる
すべての 星が

ひとびとよ 愛するひとびとよ
あなたがたのために わたしたちは来る
何度でも 何度傷つこうとも

目を閉じると わたしの瞼の裏で
不思議なアリオトの義眼が
小さな星のように くるくると回りながら
青く光っていた




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ソル・2

2013-02-22 04:46:13 | 詩集・瑠璃の籠

ひとびとよ わたしは 幸福だ
わたしは 永遠に 幸福なのだ
なぜなら今 わたしは
そういうものに なっているからだ

ゆえに あなたたちが
不幸になるとは 考えられない
それは あり得ない
なぜならば
あなたたちが 幸福でなければ
わたしは 幸福ではないからだ

わたしは 幸福である
ゆえに あなたたちも 幸福である
必ず 信じなさい

愛している 愛している
深く 愛している



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ホゥプ

2013-02-21 04:28:38 | 詩集・瑠璃の籠

こちらは 宇宙ステーション
こちらは 宇宙ステーション
地球が 見えます
青い 地球が

じんるいの 星が

こちらは 宇宙ステーション
宇宙 ステーション
硝子の 翼に
人類を のせて
希望を 運びます
はるかな 希望を
どこへ

どこへ?

こちらは うちゅう すてーしょん
じんるいの きぼうを のせて
飛びます
はるかな 空を

じんるいの きぼうを

ホゥプ

hope

じんるいの きぼうを

明日へ は こ ぶ

わたしの 名は
きぼう

き ぼ う

こちらは 宇宙ステーション




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トラペジウム

2013-02-20 05:50:58 | 詩集・瑠璃の籠

岩戸の中に ひとり
こいぬの星と 暮らしていると
季節というものは あまりわからない
ただ時々 小窓から吹く風が
木々や雨や花の香りを運んでくる

わたしはそんな香りを玉にして
帳面に静かに歌を書く
紙の上をすべる筆の音が
さらさらと 静けさにはいこんでいく
わたしは書くことに夢中になっていたので
最初はその気配に全く気付かなかった
プロキオンが 妙な鳴き方をしていることには
なんとなく気付いていたが

急に激しい雨の音が聞こえた
すぐ近くで ぱらぱらと激しく
あられの落ちるような音がする
それと同時に甘くまぶしい光も感じた
わたしは紙の上を走る筆を
無理矢理止めて
ふりかえらずにいられなかった

雨が 雨が降っている
光の雨が 小部屋の中に
白い石英の粒のような星が
無数に小部屋の中に降り
ぱらぱらと鳴りながら歌っていた

星が降る
星が降る
雨のように
星が降る
すべての星が やってくる

テッラ!

地球よ おどろけ
すべての星が
あなたに向かい 降ってくる!!

星の雨は 交響楽のように
繰り返し歌いながら
小部屋を光で埋めていく
わたしは驚いている暇はない

真実を見なければならない

わたしは背中の筋肉に力をこめた
見えない翼が動くのを感じた
そうとも わたしは飛べる
このときのために わたしの翼はある

魂は岩戸を出て
翼とともに上昇していく
星の正体を見極めるために
わたしはまっすぐに
天に向かって飛んだ

空の奥で 光の塊のように
寄り集い 歌っている星々が見えた
ああ
トラペジウム!

すべての 星が!!

わたしの目が 燃える炎のように叫び
真実を見抜いた
そのときのわたしは
女神ではなかった



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プロキシマ

2013-02-19 04:54:01 | 詩集・瑠璃の籠

その日わたしは 琴を弾いていた
ひさしぶりに 小さな貝の形をした琴を
やわらかな音が
棘に傷んだ わたしの心臓を
静かに癒してくれる

どれくらいの日々を ここにいるのか
わからないが 以前と比べると
ずいぶんと 心も体もよくなっているような気がした

プロキオンが ち と鳴いた
冷えた風を感じて わたしは小窓を振り向いた
するとそこに やはり星がいる
一瞬 わたしはぞくりとして
思わず 手から琴を取り落した

星は 小部屋の中に立ち
冷たい目で わたしを見下ろしていた
手には 氷の刃を持ち
静かな青い炎の竜を
蛇のように 腕に巻いている

なぜ あなたがここに
と わたしは震える声で言った
たしか あなたは

わたしは言いかけたが
星は手振りで わたしに
ものを言うなと 言った

わたしは だまりこんだ
氷のように 静かに
彼には
従わなければいけないからだ

星は しばしの間
静かに わたしを見ていた
棘の刺さった わたしの心臓も
添え木をつけられた わたしの骨も
静かに 透いて見ていた
そして わたしが
決して見られたくはないと
深く隠していた 頭の奥の
赤い珠玉をも見た

そして すべてを見抜いた後
彼は 氷の冷たい息を吐き
かすかに 刃を揺らした

何か 自分をしばっていた硬い鎖が
ふと切れたような気がして
わたしは胸が楽になって ほっと息をついた
安堵が わたしの口をゆるめる

あなたが あなたも
ゆかれるのですか

そういうわたしの言葉に
言葉で答えるひとではない
彼は静かに 背を向け
小窓の向こうに消えていった

プ ロ キ シ マ

彼の声が
わたしにその名を教えてくれた

破壊の 天使



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