月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
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ネメシス

2016-01-08 04:44:35 | 詩集・空の切り絵・別館

死霊の谷から
ネメシスが立ち上がる
法則の鳥よ
復讐せよ
幾万の女を汚し 殺し
焼きつくした男を
永遠の双子の姉が支配する
無女の奈落に突き落とせ

闇が男の男となり
その男を千人で犯すだろう
体中の穴という穴が膣になり
火のような棒を
突きとおされるだろう
あらゆる侮辱を
糞のように浴びせかけられるだろう

死ね
と踏まれながら言われるだろう
殺せ
とゆでられながら言われるだろう
嘲笑がヒルのように吸い付き
苦い舌に目玉をなめられるだろう
愚か者め

お ろ か も の め え え え

死霊の谷から
ネメシスが立ち上がる
法則の翼よ
愚か者の棒を引きちぎれ
ないほうがよいものは
ないほうがよい
それは永遠に必要のないものだ
無女の地獄を思い知るがよい

死霊の谷から
ネメシスが
飛び上がる



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2015-12-13 03:30:51 | 詩集・空の切り絵・別館

夜がある
太陽はなく
闇空に星もない

花も咲かず
鳥も鳴かず
水はない
魚もない

あるものは
虚無の寂寥と泥をまぜた
黒い大地ばかり

愛は遠く
記憶の中に小鳥のように住む
あのときああしていればよかったと
後悔は石のように胸を閉ざす

疲労を着物のようにまとい
何をするでもなく
氷のように動かない
耳鳴りが蝉のように
頭の中を吹きすさいでいる

神よ
にんげんは
もうだめなのですか

わたしたちは
失敗したのですか

夜がある
何もない夜の中で
針のような思考が心を刺す

わたしたちは
失敗したのですか




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2015-12-06 04:51:37 | 詩集・空の切り絵・別館

普通の幸せで作った
小さいけれど素敵な家が
消えてゆくのです
絶対に幸せになれるって
一生懸命頑張って作った
きれいな家が
まるで足がついているかのように
わたしから逃げて行くのです

そんな贅沢は言わなかったのに
ただ夫がいて子供がいて
そんなにお金が無くても幸せな
普通の人になりたかったのです
それなのに わたしだけ
家に嫌われて
家がわたしから逃げて行くのです

鬼が来て わたしの首をつかんで
馬鹿に教えてやるって言いながら
わたしをどこかに引っ張ってゆくのです
おまえは悪いことをしたのだ
おまえは生まれる前に
他人からすべてを盗んで
自分の幸せな人生をつくって
そのプログラム通りに生きようとしていたのだ
だがそうはいかぬ

盗んだものを返し
本当の人生に戻るのだ
おまえは奴隷のようにこき使われるだろう
日々の食べ物にも困るだろう
子供にすら嫌われて
二度と会いたくないと言われるだろう
なにもかもは 自分がしたことが
正当に帰って来たからだと思え
もう馬鹿の馬鹿は通用せぬ

鬼はわたしをかつぎながら
人間が住むところではない
汚いところへわたしをつれてゆく
嫌だと言っても放してくれない
こんなことになるなんていやだ
こんなことになるなんて

ああ わたしの家
あんなに一生懸命にがんばったのに
わたしの わたしの家
あんなに 幸せだったのに



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ごめんなさい

2015-11-08 04:01:34 | 詩集・空の切り絵・別館

自分以外の人間に
なりたかったんです

だっておれは馬鹿で
何しても失敗ばかりで
ろくなもんじゃねえから
あいつのほうがカッコよくって
一度でいいから
あいつになりてえって
ほんで
あいつから皮盗んで
あいつの皮被って
生きてたんだよ

なんにもないんだよ
おれ
なんにもない
馬鹿ばっかりで 他人の皮被って
他人の人生ばかり生きて来たもんだから
おれのもんは何もないの
そんなおれがいやで
おれはまた誰かの皮盗んで
そいつの皮でそいつの人生生きて
何やったって 何やったって
馬鹿ばかりで なにもないのに
おれはそればっかりで
ほんまの自分は生きたことないのよ

馬鹿になるばっかりだって
わかってるのに またそれやったら
とうとう神さまが ブザーを鳴らして
もう終わりだって言うんだよ
おれね
もう二度と 人生もらえないんだよ
馬鹿ばかりで生きて
人を苦しめたり殺したり
そんなことばかりしてきたら
とうとう
地球の人生二度と生きることができなくなったんだよ

あふれるほどいる馬鹿に
おれ 言ってやるよ
もう二度と おまえら
地球人に生まれることできねえから
ほんとなんだよ これ
嘘とずるで 人の皮と人生盗んで
悪いことばかりやってたら
とうとう神様が言ったんだよ
もうだめだって

自分が いやだったんです
もっとちがう いいやつになりたかったんです
でもそれやると
おれは馬鹿になって
馬鹿になった自分がまたいやになって
また馬鹿やって
永遠にそれ繰り返すのかって
だれかに言われたことあるけど

もうやろうにも
二度とできなくなるまでやりました
何にもありません
神さま ごめんなさい
今さらだけど
ごめんなさい



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砂に

2015-11-01 04:11:25 | 詩集・空の切り絵・別館

重い記憶の箱を
引きずりながら
わたしは
砂の中に溶けてゆくのです

あんなことなど
しなければよかった
あんなことなど

重い後悔を
影のように引きずりながら
わたしは
氷のような砂に
自ら溶けてゆくのです

思い出したくない記憶を
完全に忘れ去るには
自分自身を消すしかないからです

(どうして殺した)

(何をやろうとした)

恥ずかしいことを
影の部屋でたくさんしました
犬の毛皮を剥いで
女をいじめるように
鍋の中で煮殺しました
馬鹿でした

なんであんなことをしたのか
なんで
なんで
ただ それが
愛が 欲しかったからだとは
絶対に言えない自分が
重すぎて

わたしは 砂に
溶けてゆくのです
永遠に いなくなりたいのです
もう二度と こんな自分はいやなのです



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女の子がいない

2015-10-28 04:08:48 | 詩集・空の切り絵・別館

愛してるっていえばよかったのに
負けるのが嫌で
馬鹿にしてばかりいたら
とうとう女の子が
ひとりもいなくなったんだよ

そしたら俺
なんにもできなくなっていたの
いっぱしにすげえことできる奴だって
自分のことそう思ってたんだけど
女の子が逃げて行ったら
何にもできない自分がいたの

みんな みんな
女の子がやってくれてたんだよ
おれの顔をつぶさないように
影から細かなことをみんなやってくれてたんだよ
それがなくなったら
何にもできないただの馬鹿になったおれがいた

いやだって言ったんだよ
おまえなんかいやだって
ブスだし 馬鹿だからって
ずっと馬鹿にしてたんだよ
そしたら女の子みんなが
おれのことなんかいやだって言って
みんな行っちまった

おれはどうすればいいんだ
馬鹿みたいに
女の子がいない 女の子がいない
いないと困るんだ
どうにかしてくれって
おろおろするばかり
女の子がみんな おれのためにしてくれてたこと
やっとわかったときには
もう何もかも遅い

あんなやつら 
どこにでもいるって思ってたんだよ
雀みたいにたくさんいるから
べつにいなくなってもかまわないって
思ってたんだよ
でも あいつらでなきゃだめなんだよ
おれの馬鹿なところ
知っててたすけてくれてたのは
あいつらだったから
でも

帰って来てくれなんて
言えるもんか
言ったら俺 もうおしまいだ
あんなブスに頭下げるなんてこと
できるわけないじゃないか
だけど

女の子がいない
女の子がいない
どこにも いない

どうすればいいんだ



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上っ面

2015-10-06 04:02:12 | 詩集・空の切り絵・別館

上っ面だけなのに
おれたちの幸せは
みんな 上っ面だけなのに
真実の幸福が
一つでもあったら
おれたち困るんだよ

いやだ いやだ
馬鹿みたいなやつになるのはいやだ
親切の振りして
いろんなことやったのに
それぜんぶ嘘だって
ばれるのはいやなんだ
絶対 おれたちのほうが
本物にならないと
やばいんだよ

だっておれたち
いろんなことしたんだ
人にばれたら恥ずかしいこと
すごくいっぱいやったんだよ
そうしないと
幸せになれないからさ
幸せになるために
ものすごく努力したんだよ
それなのに

本物の幸せは
そんなものじゃないって
みんなが気づいたら
おれたちどうすりゃいいの
おれたち 後は何もなくなる
あんなに苦労して
幸せになったのに
がんばって がんばって
人がうらやましいっていうような
すごくいいやつになったのに

上っ面だけなのに
上っ面だけなのに
それ以外は何もないのに
それをぶっ壊されたら
俺たち何もないのよ

あんなの嘘ばっかりだって言われて
みんなに馬鹿にされるんだよ



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すんまへん

2015-10-02 04:30:39 | 詩集・空の切り絵・別館

あほやから
こないなことになるんや
うそでずるいことして
まっとうなお人を突き落として
自分の方ばかりええことにして
そんなことばっかり
してきよったもんやけん
えらいことになってしもて

さるがばななみつけたみたいに
ええもんひろたて
ばかみたいによろこんで
ちょうしにのってやっとったら
あしもとがずるってすべって
ふかい ふかあい
黒い谷底に
ずどんと落ちたんよ

もう戻れへん
昔の自分には
もう帰れへん
昔の家には

ええもんになりとおて
うそばっかりついて
馬鹿ばっかりやんよったら
こないなことになります
ねばこい油みたいな
真っ暗闇の寒い寒いところで
ひいひい ひいひい
いいながら
つらい つらいて
泣きながら
ずっとそこにおらんならん

かみさま たすけてくれ
ていうても
かみさまも 怒ってはるから
何もきいてくれへんの

すんまへん すんまへんて
今さら あやまっても
誰も聞いてくれんのよ




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馬鹿

2015-09-14 04:36:58 | 詩集・空の切り絵・別館

幸せになれるはずなんだよ
ぜんぶ つらいことは
みんなにやらせて
おれはさぼってて
適当なときに
やつらがつくった収穫を
全部盗んで
おれのものにしちまえば
絶対おれのほうが幸せになれるはずなんだ

ずっとそれだけでやってきた
馬鹿みたいに勉強したり
痛い思いして苦労して偉いことをやったり
そんなのはいやだったから
みんなほかのやつにやらせて
おれは楽して
ひとさまのもん盗んで
いいもんになってたの

じ ん る い は
核兵器じゃなくて
窃盗で滅んだんだよ
馬鹿みたいだ

他人がうらやましくて
ねたましくて
しょうがなくて
他人のもんぜんぶ欲しくて
いろんな馬鹿なことやって
結局は すべてが馬鹿になって
ひっくりかえった馬の腹みたいに
おれたちがしてきたこと
すべて みんなに見られたの

馬鹿がなにやってきたか
ぜんぶにばれて
もういいわけできない
がんばっておれをなんとかしようと
いろいろやってくれてた
そんなやつも ぜんぶむこうにいって
おれはとうとう ひとりぼっちになって
なんにもなくなって

からっぽだ

すんごい 幸せになるはずだったのに
偉いやつになって
すごいやつになって
ぜんぶがおれに従うような
そんなやつになれるって…

それ全部嘘だったからだよって
言われても 今更
どうしたらいいかわからない
教えてくれなんて
ばかみたいなことも 言えなくて
どうしたらいいんだって
自分に言ったら
どっかから
馬鹿じゃねえのって
あほが言う声がする

馬鹿はやめたらいいんじゃないの?

ぜんぶ馬鹿だそんなの




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2015-09-07 05:20:44 | 詩集・空の切り絵・別館

人の世の中は
嘘とずると金ばっかりで
どうにかなるとか
そういうことばっかりで
生きてきて
とうとう全部のことを
それだけにしちまったら
人間全部 馬鹿になった

人間 馬鹿ばっかりになったら
難しいことが何もできなくて
一体どうしたらいいんだと
そればっかりで 苦しくて
まだ 嘘とずると金だけで
やろうとすると
頭が分解しちまうみたいに
痛くって 痛くって
死にそうになるんだよ

人間 どうしたらいい
馬鹿ばっかりで どうしたらいい
だれか助けてくれって
言っても もうだれもいない
だって 賢いやつはみんな
馬鹿が嫉妬して
殺しちまったからさ

天使が やってきて
ストップウォッチをカチリと鳴らす
さあ人間よ 競争だ
だれが一番早く
馬鹿を片付けられる

一斉にみんな
立ち上がって
急いで家に帰って
嘘とずると金を洗い流し始めた
でも あんまりに汚くて
どんでもない糞にまみれているもんだから
だれもできなくて

天使は三分でストップウォッチを止めて
仕方のないやつらだ
今回は われわれがやってやろう
と言って 飛んで行った

人間たちは ほっとした
すると 電信柱のてっぺんにいた鴉が
「あほか」と 鳴いた



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