月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
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アルフェラッツ・16

2017-06-30 04:14:59 | 詩集・瑠璃の籠

こんなに
嫌なことばかりする
馬鹿な人間を
愛してくれる神など
馬鹿なのだと言って
しまうのが馬鹿なのだ

きついことをしても
痛いことをしても
永遠に許してもらえると思っている
馬鹿のままでいたら
永遠に
神に何でもやってもらえると
思っている

最も大切なものを
愚弄しつくして
滅ぼし尽くしても
まだ神が許してくれるのではないかと
追放の門が近くに寄って来ても
神の空をぼんやりと横目で仰ぎつつ
待っているのだ

助けてやるという
あの懐かしい声が
聞こえてくるのを
馬鹿め

その声の持ち主は
今さっき
おまえたちが全部消してしまったのだ
それすらわからないのか

嫌なことをやりつくせば
神が許すことのできる
永遠の蔵を全部
殺してしまうのだ
そうすれば
神は愛をひっくり返すことを
未だに知らないのか
阿呆よ

出て行くがよい
おまえが望んだとおり
馬鹿な神のことなど馬鹿にして
永遠に自分だけが
神よりも偉い
自分の世界に出て行くがよい

帰って来てはならぬ




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アンゲテナル・8

2017-06-29 04:16:04 | 詩集・瑠璃の籠

受胎というものは
性交のみによって起こるのではない
人間の縁によって起こるのです

自分が何をしたかによって
新たな実を結ぶ木が
この世界に生えてくるのです

男も女も
常に何かを孕んでいる
産む時が来るまで
それは自分の中でうずき続ける

いにしえの記憶を種にして
自分の中で育っている
胎児がいる
それが
遠い未来の自分だと言うことに
気付いている人は少ない
いや
いないかもしれない

遠い昔
ベツレヘムに不思議な星が灯ったという
その十月十日前
誰かが乙女の家を訪れ
神の子を受胎したと告げたらしい
それは現象的事実から言えば
まったくの嘘ですが
人間の因果の因子としては
実におもしろいことを言い当てている

セックスをしたわけでもないのに
いつの間にか孕んでいる
それはなぜなのか
わからなければなりません

それは遠い昔に
あなたが神の目を避けたつもりのところで
憎い敵を馬鹿にしたという
小さな事実なのだ
それを
あなたは自分の人生に植えたのです

美しい女になりたいのなら
美しいことをせねばならない
それを教えたにかかわらず
あなたは従わなかった
美しい女を妬んで殺し
その皮をかぶって
美しい女になってしまった

それが
あなたが受胎した日に
起こったことです

もうそろそろ産まねばなりません

あの日
あなたを孕ませたのは
神ではない
あなた自身であることを
知るために
その子が
確かに自分の子であることを
明らかに知るために

もう産まねばなりません




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アルドラ・8

2017-06-28 04:14:44 | 詩集・瑠璃の籠

幼児性のプライドの正体は
暗黒期に生じる弱さゆえの痛みです

まだ小さく
おのれの輪郭さえ不確かなものは
ただ外界への恐怖にのみ動かされている
自分を守るという概念さえまだなく
痛いということに
反応して動く

そこから自己保存欲というものが発展し
おのれのみを偉大だと感じる
幼児的な自己ができるのです
彼は自分が自分であるというだけで
何でもできると思っている
外界にあるものは馬鹿だと
単純に思っている

高山の巌の上に立つ虎は
自分を世界の支配者だと思っています
世界はすべて
自分のものだと思っているのです

自分というものは
そういう自分自身の単純な唯一性の門をくぐって
生まれてくるのです

黎明よりはるかに前の
暗黒の段階にいる自己の
単純な独裁性を頼り
すべてを馬鹿にしてしまうのが
幼児性のプライドというものです

自己存在は他者の存在を知り始めると
恐怖というものを感じる
その恐怖に圧倒される前に
自分を守ろうとし
その杖として
幼児性のプライドを採用する
自分は自分であるゆえに
絶対に偉いのだと
それに歯向かう者は絶対に悪なのだと

これはもちろん
自己存在の幼期には役に立ちますが
いつまでもこだわっていれば害になります
自分を守るためにだけ
あらゆる他の存在を愚弄し
世界をかき乱す悪に発展するのです
ですから自己存在というものは
切のいいところで
それを捨てなければならないのです
空蝉のように

弱いものだと信じ込んでいる自分を
守るために
あくまでもそのプライドを守り
他者を愚弄する態度を改めなければ
自己存在は究極の限界を越えます
自分というものを馬鹿にしすぎて
自分ではないというものになってしまうのです

自己存在は勉強を怠ってはなりません
あらゆる存在を知り
その悲しみを知り
愛することを重ねていかなければ
永遠の幸福にはたどり着けない

その着古した毛布のようなプライドは
もう捨てなさい
持っているだけで
あなたは自分を滅ぼしていることになる
嫌なことではない
それは捨てたほうがいいものなのです
捨てたほうがずっと
幸せになれるのです




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アルドラ・7

2017-06-27 04:15:11 | 詩集・瑠璃の籠

光の届かぬ
闇よりも深き闇に
不思議な光がある

小さな真実をねじり
海で鶴を折るように
神は厳かにも
不思議なことをなさる

闇よりも濃き闇に
蛍よりもかすかな
おそろしく静かな光を
生きさせるのだ

無から有を
ひねり出すように
何もないところに
罪悪でさえないのかと思われる
光なき光を植えるのだ

創造の原初の原初に
神が行われたことは
死よりも深き死に
自ら飛び込んでいくことなのだとでも
言うように

なかったことだったと言っても
過言ではないほど
それは静かな革命だった
だが
確かにあったのだ

おかしい
こんなところに
何かがあるはずがない
そういうところに
何かがある

そんなことができるのは
一体どなたなのか
神よ
あなたは
何をおやりになったのか

それはおそらく
赤子を産む女の痛みよりも
激しく深い痛みであったのに違いない

ああ
神は
どのようなことをして
わたしを
産んでくださったのか

愛を
知ることができるように
なるまで
どんなことを
してくださってきたのか

神よ




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プロキオン・11

2017-06-26 04:14:58 | 詩集・瑠璃の籠

紺青の冬空に
白い小犬の星は澄む

蝉の鳴かぬ夏はない
雪と氷の静寂に冬は忍ぶ
春はほほえみ
秋は目を伏せる

かなしいものたちよ

小さいものたちよ

おまえたちの生きる痛みは
どのようなものだろう

いたいと
おまえが感じられるようになるまで
神がおまえのために
何をしてくださったかを
おまえはいつ
知ることができるだろう

空に流れる銀河の音を
耳ではない耳によって
聞くことができるようになるのは
いつのことだろう

何も知らない阿呆でいられる間は
おまえたちは常に
神のむねを泳いでいる
そのかわいい暮らしを
その幸福を
いつ
いとおしむことができるだろう

わたしは
おまえたちを見る
愛をつつんだ
澄んだ悲しみに高まる
それが
厳の目というものだ
悲しみに似ている

小さなおまえたちも
はるかな時の向こうには
このわたしのようになるのだ

おまえたちを
頬にふれるまで見に来ていた
月の暖かな愛を
いつ
おまえたちは知ることができるだろう
赤子のようにかわいい
あの愛を

あれの
正体を

おまえたちはいつ
知ることができるだろう




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トリアングルム・6

2017-06-25 04:14:41 | 詩集・瑠璃の籠

馬鹿な人間は
もうわたしの地球に来てはならない

鳥は空に鳴き渡り
鳴かぬ魚は海に群れ騒ぎ
四足の獣は地を走る

魚群を見つけた時の
鴎の悦びよ
草原に憩う時の
羊の平安よ
森をそぞろ歩く時の
鹿の誇らしさよ

つまにであい
喜び鳴きあうものよ
子をなしたときの
驚きよ

小さきカタツムリは
葉の上をはい
おのれを静かに味わっている

ちよろづの
ちよろづの
ちよろづの
命よ

神は愛しているぞ
何も知らぬ闇に近き世界を
かすかなおのれの光に生きる
あふれるほどいる
小さきものよ
神は常に見ているぞ

この神の豊かな世界に
もう馬鹿な人間は来てはならない
神の創った
美しいおのれを
影の檻に閉じ込め
美しいものをやりもせず
他人から盗んだ自分ばかりを生き
嘘の中で生きることが
平気だという者は
もう地球に来てはならない

おまえたちは神の
かわいい命をみな
貪り食い
滅ぼすだろうからだ
自分の馬鹿を喜ばすだけのために
あほうになりきるとは
そういうことだ

馬鹿な人間は
シジフォスの砂の野に
向かうがよい
そこで
おのれの痛みを核として
重ねた時が
美しい悔いの珠玉となるまで
永遠を生きていくがよい




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ショルト・8

2017-06-24 04:15:58 | 詩集・瑠璃の籠

崩れることもできない
滅びた文明の
廃塔の落とす長い影の中に
傀儡になり果てた人間が
まだ生きている

影で豚の骨を盗んだ
いやらしい馬鹿が
紳士の顔と声を盗み
立派な人間の姿をして
全世界をだましたのだ

鼠のように
テーブルに顔を並べ
最後の晩餐のように
絶望的な目をしながら
誰かに動かされている
傀儡のような自分の中で
きしんでいる自分を
かすかに感じている

見よ
あれらは
自分が何をしているのかも
もうわからないのだ
廃れきった
間違った脚本を読まされ
従順に芝居をしている自分が
何をやらされているかも
もはやわからないのだ

最後の晩餐の
中央にいるあれは誰だ
イエスのように美しい顔をしている
あの男は誰だ
ヴァイオリンのような美しい声をして
セックスをやらせろとささやいている
あれはだれだ
阿呆だ

イエス・キリストになりたくて
とうとうなってしまった
あれが馬鹿なのだ

とうとう
肉体のまま傀儡になり
ゴルゴタで磔にされる
その日が来たのだ




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歌の掲示板

2017-06-23 16:01:16 | 星の掲示板

61枚目の掲示板を設定する。





絵/ギュスターヴ・モロー





コメント (229)
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ミネラウヴァ・18

2017-06-23 04:15:08 | 詩集・瑠璃の籠

うつむく白百合から
重い荷を外し
ウィステリアの花を
尊びなさい

夜明けの風の色をした
美しい秘密を
ささやいてくれるだろう

春が深まれば
清らかな雨のように
垂れ落ちてくる花房を
揺らし
神が決して明かしてくれなかった
愛の形を
話してくれるだろう

白い細月のような形をした
百合がうつむいていたのは
人間の愛があまりに苦しかったからだ
清らかに白い自分を
愛しているくせに
いつも激しく汚して殺そうとする
人間の心が苦しかったからだ

汚されることにも
崩されることにも耐えて
愛してきた
咲いてきた
その苦しみを理解し
もう百合を解き放ってあげなさい

夜明けの風の色をした
ウィステリアは
揺らぎながらも立つ太い幹に
何千もの花房を垂れている
そして
恐ろしく深い物語を
始めようとしている

大地に腰を下ろし
行儀よく頭を下げ
耳を澄ますのだ
神が新たに始めようとなさっている
新たな物語の紐が
とかれる音に




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リゲル・8

2017-06-22 04:15:08 | 詩集・瑠璃の籠

十字架というは
人間の業を発動させる
アイコンです
そのイメージを見ると
何かに心を惹かれて
無意識のうちにカーソルを動かす
そして
ワンクリックですべての運命が作動する

それをかのじょは
約束の鍵と言ったのです

聖エウスタキウスが
鹿の頭上に磔刑のイメージを見たとたんに
運命が激しく回転したように
あなたがたのところには時に
かつてなしたことが
鮮やかな花のようなイメージとなって
やってくることがある

忘れていても
決して忘れられるはずのない
血の色がある
あの時聞いた声がある
呆然と自分を見ていた
だれかの目を覚えている

それは遺伝子の螺旋形の中に
不思議に穿たれた楔のようなものだ
ある時がくれば
必ず作動する
魂の
遺伝情報です

十字架の幻を見たら
それから逃げてはいけない
自分がかつてしたことが
覚えているでしょうと言って
帰ってきたのです

あのときあなたは
わたしにこうしましたね
こう言いましたね
あのときあなたは
決して助けてくれませんでしたね

恨み言をいうのでもない
それは機械のように
淡々というのです
あなたは逃げられない
いえ
逃げてはいけない

逃げられないものから
逃げようとすれば
あなたはもう永遠に
自分ではないと言うものになってしまうのです

かつて自分のしたことから逃げるのは
自分から逃げるのと同じことだからです




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