
◇ 飛行機 ◇
見よ 今日も かの蒼空に
飛行機の高く飛べるを
給仕づとめの少年が
たまに非番の日曜日
肺病やみの母親と
たった二人の家にゐて
ひとりせっせとリイダアの
独学をする眼の疲れ
・
・
・
見よ、今日も、かの蒼空に
飛行機の高く飛べるを
-石川啄木-
見よ 今日も かの蒼空に
飛行機の高く飛べるを
給仕づとめの少年が
たまに非番の日曜日
肺病やみの母親と
たった二人の家にゐて
ひとりせっせとリイダアの
独学をする眼の疲れ
・
・
・
見よ、今日も、かの蒼空に
飛行機の高く飛べるを
-石川啄木-
26歳の若さでこの世を去った石川啄木。「一握の砂」「悲しき玩具」など、若いころ、彼の歌が好きでよく読んだ。彼の歌には深い悲しみに溢れた歌が多い。そして母の歌も・・・♪
♪
たわむれに母を背負いて
そのあまり軽きに泣きて
三歩あゆまず
たわむれに母を背負いて
そのあまり軽きに泣きて
三歩あゆまず
東洋大学が募った第21回「現代学生百人一首」の入選作品の中にも、母親や父親を詠んだ歌が数多くある。
◇
おはようと
確かに聞こえた母の声
現実を告げる指輪の遺品
◇
「大丈夫」
とにじむ涙をかくす母
もっと私を頼っていいよ
◇
「はよ起きや!」
「わかってるわ、うるさいな!」
ほんまは毎朝感謝してます
◇
「受験費用心配しなくて良いから」と
父のメールに
涙こらえる
◇
我が実家は、父から兄が受け継いだ電気店。その一角に、母が始めた雑貨や日用品、お菓子などの店舗がある。ドアを開けるといつも母がいた。慶弔事用の熨斗袋も扱っていた。
母の通夜の日、急いだので熨斗袋も用意できなかった。店でわけてもらおうと、ドアを開け思わず呼びそうになった。「お母さん!」と。母が死んで一番悲しい瞬間だった。十数年前のことである。