歩くたんぽぽ

たんぽぽは根っこの太いたくましい花なんです。

滑稽と無駄に溢れた愉快な日々

2014年02月22日 | 日記
今日の文章は2日間の出来事をたらたらと書いているだけなので予めご了承願いたい。

昨夜のことである。
夕飯をつくっていると、同居人K(夏目漱石の『こころ』の真似ではありません)から電話がきた。
弱々しい声で「やばいから風呂熱々でためといてくれ。」
そういえば前日から具合が悪いと言っていたななんて思いながら、指示通り風呂のお湯をためた。

しかし待てども待てども彼は帰ってこない。
ピンポーンとインターフォンがなりきっとKだと思って急いでドアを開けると、
「すいません、お荷物です。住所が違ったのでよろしくお願いしますね。」
といった感じでお茶目な笑顔を浮かべながら郵便局のおじさんが顔を出した。
母が住所を間違えたようだった。
無駄な手間が私とおじさんの間に笑顔をつくってくれたみたいだ。

そして電話から一時間と30分ほど経ってやっとKは帰ってきた。
家に入るやいなや真っ赤な顔で倒れ込んだ。
確かにとても具合が悪そうなので、とにかく熱を測ると体温計が一向にピピピとならない。
壊れたか、ボタンを押し忘れたか、いずれにせよこれはだめだと思い体温計を出したらなんと39.5度!
体温計はまだ一生懸命熱を測っていたようだ。
こんなに高い数字は私が中学校のスキー合宿で40度を出したとき以来に見る。

そんな熱なのにKは風呂に入ると言い張る。
お風呂は時間が経って冷めていたので熱いお湯を足すことにした。
そうすると当たり前だけどざばんざばんとお湯が溢れていくのだった。
なんじゃこれ。

元々偏頭痛持ちのKは、体調を崩すと基本的に頭痛も併発する。
しかもその頭痛のレベルたるや、ひどい時は倒れたり泡を吹いたりするほどなのだ。
一回CTスキャンで診てもらったが特に悪いところは見当たらなかった。
今回も頭痛がひどいようで、隣の台所で食器をカチャッとならすだけでも呻いた。
物音一つならしてはいけないのだから、さすがにこちらも緊張し始める。
何かに気を張っていれば他の何かを取りこぼしびっくりするほど大きな音を立ててしまう。
そして反射的に「ごめん!」と響くほどの大きな声を出してしまうのだ。
私は日常の中でこんなにも音を出していたのか。

Kは動けないどころか今度は喉が痛くて喋れないときた。
もうお風呂どころではないので、とにかく無理矢理布団で寝かした。
お湯がもったいないので私が入ろうと思いお湯の具合を見に行くと、また時間が経ってぬるくなっていた。
なんだろうね、その時の変な気分。

そして真夜中、冷蔵庫にまともなものが入っていなかったのでポカリスウェット等を買いにコンビニへ。
寒いし歩くと遠いから初めは車で行こうと思ったのだが、シートベルトをしてエンジンをかけてハンドルを回すのが面倒だったので歩いて行くことに。
寒い中とぼとぼと歩く自分、白く象られた息、背中を丸めて首をすくめるとひどい猫背だ。
すれ違う人の影も寒さでみんな猫背なもんだからそうだよなと一人で共感。
冷たい空気のおかげで頭が冴え、口からでまかせみたいな詩が思い浮かんでは消え浮かんでは消えた。
時間がかかろうが歩くのは楽しい。

インフルエンザという可能性が大きかったので、今日は朝一で病院に行ってきた。
ペーパードライバーだが最近少しづつ感覚を取り戻しつつある。
それでも駐車はほとんど経験のない私に対し、声がでかくてせっかちな警備のおじさんが交通整備の一環で指示してくるという構図。
「あの人いやだよ~怖いよ~」と弱気な独り言。
私はまだ運転に自信がないので運転中は非常に気が小さい。
しかしよく考えると彼は声がでかくて忙しないけれど、来る車来る車を気にしながら不慣れな私に細かく指示をしてくれていた。
お金を払うときにお礼を言うと笑ってくれた。

あまり病院で待たせるのはかわいそうだと思い早めに行ったが、それでも私たちが着いた頃には待合室はご老人で溢れていた。
どうか今日だけは病院をたまり場にする方々がいませんようにと都合良く祈るばかり。
Kが高熱だというと割合早く通してくれた。
そんな柔軟性を病院が持っているのだなぁと感心したが、すぐにそりゃそうだろうと思い改める。
それでも所要2時間はしょうがない。

待ってる間付近に座る患者たちの会話が耳に入ってくる。
80代の夫婦の妻の方が顎にマスクをかけゴホゴホ咳をするものだから旦那が
「ほらちゃんとマスクしなさい!咳してるんだからちゃんとマスクしなきゃ、ほらちゃんと!」とマスクを上にあげた。
妻はそれに大人しく従い、二人は一件を落着させた。
今度は隣に座ったおじいさんと30代くらいのスーツの男性。
30代の男性は紙を見ながら笑って「おじいちゃんこの数字ダメじゃん。また怒られるよ。」
するとおじいちゃんも笑いながら「違うよ、これでも良くなったんだから。」
なんて仲良しなんだこの二人は。

その間Kはずっと高熱者専用待合室で贅沢に椅子を3つほど使ってぐったり倒れ込んでいる。
通りかかる人々は一様に一瞬彼を見てからすぐに目線をそらす。
今日だけは許してやってくださいな。

やっと診察が終わって結果を聞くと予想に反して扁桃炎だと言う。
インフルエンザではなかったのでとりあえずはよしとしよう。

病院を出るとさっきの警備員が続々入ってくる車に相変わらずの大きな声で何か叫んでいる。
すれ違い様に「お気をつけて」と言われたので「あ、はい」と会釈した。
あのおじさんいい感じだ。

そしてやっと家に帰ってきた!
8時半に出たのが11時になってしまった。
Kの希望を聞くために彼や此れやと質問すると、なにやらKからスースー聞こえてくる。
喉が痛くていよいよ声が出せなくなったのだ。
しょうがないから筆談をすることにした。
そして力の出ない手で文字を書きはじめた。
だけど文字がなかなか解読出来ない。
力を振り絞り真剣な顔で文字を書くK、しかし綴られるのはくねくねと不安定でよぼよぼの字。
なんか大変そうだなぁと他人事的視点が入った瞬間私の内から抑えられない笑いがこみ上げてきた。
「ごめん、ごめん」と言いながら口を抑えて笑いをこらえようとするのだけど笑いが止まらない。
そういえば昨日からほとんど笑ってなかったな。
ある種の緊張が解け、堰を切ったようにドドドーっとね。
Kは私につられるように笑い出し、二人でケタケタとお腹を抱えて笑った。
そうすると昨日からのいろんな小さな出来事を思い出したのだった。


話はこれで終わり。
振り返れば私たちは意味も分からず笑い、面倒があるたびに立ち止まり、滑稽と無駄に溢れた愉快な日々を送っている。
コメント
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