とりビーな毎日

中年おやじの映画鑑賞メインの趣味の記録です

「ワース 命の値段」(ネタバレ注意)

2023-02-24 23:59:00 | 映画
911同時多発テロの犠牲者へ補償金を分配する国家的プロジェクトに挑んだ弁護士ケン・ファインバーグの実話に基づく話。
この事件を担当するまでのケン・ファインバーグは、実直かつ品行方正な実務家といった風情で、ルールに則って、取引としてこの難題をまとめようとする。
しかし、犠牲者の個人的な事情は様々で、一律の計算式による補償額の算出や、法律に則った受取人の選定に異議が殺到する。
この難局をケン・ファインバーグと彼のスタッフがどう乗り越えたか。
ケン・ファインバーグ自身の成長物語でもある。

人間の命の平等さと、人が一生に稼ぐ金額が大きく異なることの間に立たされる話と思ったが、そうではなかった。
資本主義社会に生きている人は、全員、そんなことはわかっているのだ。
本作品で描かれているのは、個人の事情を無視して、全員を一律に処理しようとしていると受け取られたことへの反発であった。

そのことに、ケン・ファインバーグは最初は気が付かなかったが、偶然、夫の消防士を亡くした女性と面会して、気付くことになる。
答えは現場にあったのだ。
犠牲者の個別の事情を聴かない方針を転換し、極力、個人の思いを聴く方針に転換する。

犠牲者が求めていたのは、少しでも多くの補償金ではなくて、納得できる金額の補償金であり、そのために最善が尽くされているかだった。

物語を通してみると、最初からその答えにたどり着けなかったことで、議論が尽くされ、苦労して得た答えだったことが貴重だった。
その過程での、ケン・ファインバーグやスタッフの苦悩と歓喜が、エンターテインメントになっていたのが、素晴らしい。

マイケル・キートンはじめ、ベテラン俳優たちの人間味ある演技にも味があった。

点数は、9点(10点満点)。

タイトル:ワース 命の値段
原題:Worth
製作年:2020年
製作国:アメリカ
配給:ロングライド
監督:Sara Colangelo
主演:Michael Keaton
他出演者:Stanley Tucci、Amy Ryan、Tate Donovan、Talia Balsam、Laura Benanti、Marc Maron
上映時間:118分



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