よくできたミステリーではあります。
「灼熱の魂」76点★★★☆
それはあまりにも突然で
奇妙な出来事だった。
カナダ人の双子の姉弟ジャンヌとシモンの母親ナワルが
ある日、プールサイドで原因不明の放心状態になり、
亡くなってしまったのだ。
さらに母は姉弟に
二通の手紙を残していた。
それは彼女らの兄と父に宛てた手紙。
彼らを探し出し、手紙を渡して欲しいというのが
母の遺言だった。
兄の存在など知らず、しかも
父は死んだと聞かされていた姉弟は困惑するが、
それでも姉ジャンヌは
母が生まれた中東の国を訪ねることに。
だが母の人生と足跡を辿るうちに
恐るべき真実が明らかになる――。
アカデミー賞外国語賞ノミネート作品で
評論家筋にも非常に評価の高い作品。
母親の足跡を探偵か記者のごとく追う姉が、
次第に驚愕の事実を明らかにしていく……という
番長も好きなタイプのヒューマンミステリーで
冒頭から緊張をはらむ謎めいたシーンが多く
ハラハラ。
1970年代に母が生きた時代の中東と、
現代を生きる姉弟の追跡が
交互に混じり合う構成もうまく、
131分、確かに惹き付けられました。
ただ、見終わってみると
ちょっと
「作りすぎ」かなという気もしなくもない。
結局は
「人間、知らなくてもいいことがある」じゃないか?なんて(笑)
その一因は、
母親ナワルが生まれ育ち、すべての根源となった場所を
「中東のある国」として
はっきりとは特定していないことにある気がする。
まあキリスト教徒とイスラム教徒の対立、などがあるので
おのずとわかる部分もあるんですが、
こうした場所は
昨今、非常に注目されているし
現在進行形の状況でもあるし、
内部からの問題提起的作品も多いから
リアリスティックが求められていると思うんですよね。
そこをぼかすと、なんとなく
「そういうことの起こりそうな国」という
対岸の火事的、他人事感が生まれちゃって
題材と乖離した
モヤモヤが残る。
せっかくこういうネタを扱った
重厚なミステリーなんだから、
そこもキッチリ詰めるべきだったのでは、と
ちょっと思っちゃいました。
「M:i」とかの娯楽作なら
そんなふうには思わないんで、
まあそれだけシリアスにも見られる
質の高いエンターテインメントということですけどね。
★12/17(土)からTOHOシネマズシャンテほか全国順次公開。
「灼熱の魂」公式サイト