しみた。いい映画だった。
「サラの鍵」80点★★★★
1942年、パリ。
フランス警察によるユダヤ人一斉検挙が行われたその日、
ユダヤ人の少女サラ(メリュジーヌ・マヤンス)は
両親とともに、収容所に連行されてしまう。
が、彼女には決して言えない秘密があった。
納戸に弟を隠して、鍵をかけたのだ。
「すぐに戻ってくる」と約束して……。
そして現代のパリ。
ジェーナリストのジュリア(クリスティン・スコット・トーマス)は
雑誌で1942年の事件の特集記事を書くことになり、
思わぬことから、
サラの物語を知ることになる。
それは実は自分にとっても
無関係ではない出来事だった――?!
悲しい話ではあるけれど、
見てよかったとつくづく思えた1本です。
映画「黄色い星の子供たち」でも描かれた
1942年の事件がベースで、
「ナチス映画」は悲劇的という
先入観もあると思うけれど、
そう思わないで、まず見て欲しいなあと思うんです。
意外に鑑賞後感が、想像と違うと思うから。
本作のうまい点は、現代に比重を置き、
1942年の事件へと時代を交差させていくところ。
この交差が絶妙なので、
まずミステリーとしてのおもしろさがある。
サラがどんな運命を辿ったのか?
観客はジュリアとともに
その謎を紐解いていくことになり、
これがけっこう意外な展開を見せたりする。
また
現代を生きるジュリアの抱えている問題や、
日常にリアリティがあるので
サラの物語が単なる「昔ばなし」でなく、
我々の時代と地続きにあった現実なんだ、ということを
ズシンと感じさせてくれるんですねえ。
あらゆる過去は確実に、
いまを生きる“自分”と同じ線上にあったんだ、という
当たり前でも、意外に実感できてないことを、
改めて
ハッと気づかせてもらった感じでした。
原作は全世界300万部のベストセラー小説だそうで、
そもそもの骨格が非常にしっかりしているんですね。
過去を掘り返すことは、必ずしもいい結果をもたらさないかもしれない。
それでも悲劇で死んだ「顔のない人々」に
顔を与える作業は尊いもの。
ジュリアの行動を見ながら
強くそう思いました。
本作の意味は
まさにそこにあると思います。
★12/17(土)から銀座テアトルシネマ、新宿武蔵野館で公開。ほか全国順次公開。
「サラの鍵」公式サイト