ワシね、この映画は
SFだと断言しますハイ。
「ニーチェの馬」80点★★★★
「倫敦から来た男」も強烈だった
鬼才タル・ベーラ監督の新作です。
暴風が吹き荒れる荒れた大地に
一軒の石造りの家がある。
そこに暮らすのは、老いた農夫とその娘と、
疲れ果てた馬一頭。
彼らは毎朝起きて、服を着て(当たり前なんだけどさ)
ジャガイモをゆでて食べる。
そんな毎日の繰り返しを、
カメラは静かに映し出すのだが――。
タル・ベーラ作品は美しすぎて
正直、常に睡魔との闘い(苦笑)。
本作は154分、さすがにビビったけど
寝ないで見入りました!
この映画はいい!
“ニーチェの馬”というタイトルの意味は
最初のナレーションで説明されるけど、
まあちょっとした謎かけで、
別に小難しい話じゃないんです。
モノクロームの美しい映像で
ファーストシーンから「ドキン」とさせるのは
「倫敦から~」と同じ。
その後、ものすごい長回しで
老いた父親と娘のつましい暮らしを、延々と映すんです。
風が異常なほどに荒れ狂うなか
娘は毎朝ひたすら足をふんばって井戸から水をくみ、
疲れ果てた馬は動こうとしない。
そんな日々を6日間映し出すんですねえ。
いつの時代かもわからないし、
何の説明もない。
ギコギコともの悲しいバイオリンが
単調なメロディーを奏で続け、
すべてが不安で、謎めいて、それでも美しい。
ここからは推測というか
ネタバレとかではないんですが、
一日ずつ日にちを刻んでいった途中で、
ワシは
「あ、もしかしてこれって世界が終わったあとなん?」と思いました。
この風と舞う黒いちりは
もしや死の灰か……?!とかね。
特に
猛暑やら豪雪やらおかしくなっている昨今、
この映画には
人類への警告と審判、という気配を肌で感じさせる凄みがある。
そう、SFなんですよこれ。
おなじみ『週刊朝日』ツウの一見で
お話を伺った写真家・広川泰士さんも
やっぱり同じく「SFじゃない?」っておっしゃってたんで
そう受け取るかたも多いようですね。
陽も射さず、風のゴーゴー吹く日には
これからも永劫に、
この映画のことを思い出すだろうなと。
それだけ心に刻まれたってことです。
にしても。
タル・ベーラ監督、
これが新作にして最後の作品だそうです。
まあ最後の……っていうのはホントのところわかりません。
オルミ監督も宮崎駿監督も、みんな言うけど作ってくれたし!
それに最後にして欲しくないし!
てか、監督カッコよすぎだよね(笑)
★2/11(土)からシアター・イメージフォーラムで公開。ほか全国順次公開。
「ニーチェの馬」公式サイト