ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

死刑弁護人

2012-07-02 23:22:50 | さ行

問題を深く考える
“もと”にはなりました。

「死刑弁護人」57点★★★


和歌山カレー事件、オウム事件、光市母子殺害事件などで
死刑となった被告の弁護を務め、

「悪魔の弁護人」などとも呼ばれる
安田好弘弁護士のドキュメンタリー。


難しい題材なんで、
はじめからハードルが高いとは思います。

だってワシも死刑廃止を訴え、
引き延ばしのために裁判を欠席する彼らを
苦々しく思ってたから。

法的制度上ではわかっていても、
「なぜ、悪人を庇うのか」という幼稚な感覚が
どうしてもぬぐえないんですわ。

カレー事件の林被告のように
えん罪の可能性が少しでもあればまた話は違うんですけど
正直言って、オウム裁判や光市母子殺害事件の少年を弁護する動機を
素直に受け入れるのは難しい。


ただこれを観て
「彼らが、なぜそれをしたか」の理由が
少しわかったような気はします。

映画では
安田氏が古くは学生運動に身を投じ
弁護士として最初に手がけたのが山谷での労働者の不当逮捕だった……など、
その正義感の背景が描かれるんですね。

「時間をかけて新事実を見つけることが、正当な裁判」であり
被告が「生きて償う方法もある」という彼の主張を
聞くことはできました。

さらに「検察とはでっちあげるもの」という事実が
明白になったいま、
両者の言い分に耳を傾けるフェアさは、
必要とされているのは確かです。


ただね、それでもね
「もし自分の家族が殺されても死刑廃止か」と問われた安田氏の返答には、
さあ、どうなんだろうとやっぱり思っちゃったり。


さらに
ドキュメンタリーとしては、正直ストレートすぎて
おもしろみにかけるところは残念でした。

それでも
知らなきゃどうしようもないことを
ちゃんと考える“基本のき”を与えてくれる作品です。


★6/30(土)からポレポレ東中野、名古屋シネマテークほか全国順次公開。

「死刑弁護人」公式サイト
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする