ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

幸せの始まりは

2011-02-11 12:21:13 | さ行
バレンタインなんだから
こういう映画
もっと公開すればいいのに。


「幸せの始まりは」68点★★★


人生をスポーツに賭けてきた
プロソフトボール選手の
リサ(リース・ウィザースプーン)。

典型的な体育会系女子のリサは
いままで付き合ってきた男も
みな体育会系。

いまのボーイフレンドは
いいヤツではあるけど
脳天気なメジャーリーガー、
マティ(オーウェン・ウィルソン)だ。


そんなある日
31歳になったリサは
年齢を理由にチームを解雇されてしまう。


人生の岐路に立たされた
彼女の前に

これまた父親(ジャック・ニコルソン)のせいで
人生最悪のときを迎えた
文化系男子ジョージ(ポール・ラッド)が現れて――?


「愛と追憶の日々」(83年)
「恋愛小説家」(97年)
「スパングリッシュ 太陽の国から来たママのこと」(2004年)←これ好きだったな~

などなど
良質な恋愛映画といえば、の
ジェームズ・L・ブルックス監督最新作。



アラサーのヒロインが
人生の転機と
二人の男の間で揺れるという
いまどきな素材とテーマですね。


でも
体育会系のラブコメヒロインって
珍しいかもしれない。

思いつくのは
サンドラ・ブロックくらい?

目のつけどころがおもしろいのと
ヒロインにベタつき感がないのが気持ちよく

セリフも軽妙で笑わせてくれます。


ただ
ちょっと展開がもたつくし
テンポもどこかスロー。

無駄な芝居も多い気がしてしまった。



やはり監督70歳だからか?
題材よりも
年齢層上めな感じがするんだよなあ。


監督の盟友である
ジャック・ニコルソンの出演も
ポイントになるはず……なのに

逆にちょっと浮いた状態に。


それにJ・ニコルソン
若干、滑舌悪いような印象があって
気になりました。

73歳?まだまだだよねえ。


でもまあ
本作の一番の弱点は
魅力的な男が出てこないこと!


リース・ウィザースプーンの
サバサバした感じはいいんだけど
なんつうか
サザエさんでいう
花沢さんキャラ?(笑)

相対する男がみな
ダメ弟キャラに見えてしまって
全く頼りないんだもん。


「いやん、どっちの彼にする?!」という
ドキドキ感の欠落が
ラブコメとしては
つらいところでした。


★2/11から全国で公開中。

「幸せの始まりは」公式サイト
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洋菓子店コアンドル

2011-02-09 17:25:47 | や行
ヘイ告白します。
ケーキ見たさに、観ました。


「洋菓子店コアンドル」40点★



鹿児島から婚約者を追いかけて
上京してきたなつめ(蒼井優)は

彼氏が働いていた
洋菓子店コアンドルを訪ねる。

だが
オーナー(戸田恵子)に
あっさり「彼なら辞めたわよ」と言われ
路頭に迷ってしまう。


「……なら私、ここで働かせてもらえませんかね?!」

実はなつめは
鹿児島のケーキ屋の娘だったのだ。

なつめはオーナーや
スタッフのマリコ(江口のりこ)、さらに

コアンドルの常連で
元・パティシエ、いまはスイーツ評論家である
十村(江口洋介)の前で
自信たっぷりに
ケーキを試作してみせるのだが――?



バレンタインデー直前公開ということで
甘いもん欲しさで見ましたが

まあオモチャみたいな作りでした。


とにかく話が甘過ぎる!


田舎のケーキ屋の娘が
男を追って上京。

いきなり有名そうな洋菓子店でバイト。

しかも居心地良さそうな
店の二階に住み込み

光熱費も払わず
たいした修業もせずに
バイト代はしっかりゲットって……

ありえねえだろ?!(失笑)


特に困り果てたのが
先輩をアンタ呼ばわりし

あろうことか舌打ちまでする
主人公なつめの傍若無人さ。

「女の子版『寅さん』を目指した」と
監督がインタビューで言ってますが

いやぁ
そんな愛くるしいもんじゃないす。


誰か一発殴ったれ!つう感じ。


しかも先輩、江口のりこですよ?
ありえねえ、ありえねえ。

さらに江口洋介氏、
元・天才パティシエにしては
ケーキの食べ方が雑で汚い!


そんなこんなで
主人公がしっかり立ってすらいないのに

過去を背負ったパティシエの苦悩だの
老婦人の“最後の一葉”的ケーキだの
盛り込んだってダメですよう。


なーんて
これだけ憤怒しながら
ケーキの画だけで見続けてしまう

自分のいやしんぼうぶりに
一番あ然としましたわ。

ケーキは間違いなく
おいしそうでした。

えーい、サービスでいくつか載せちゃえ。






しかしこの映画
「白夜行」の深川監督作なんですねえ。

76年生まれ。
若いなぁ。。。


★2/11から全国で公開。

「洋菓子店コアンドル」公式サイト
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ジーン・ワルツ

2011-02-07 19:50:45 | さ行
「チーム・バチスタ」海堂尊原作の
医療ドラマです。

「ジーン・ワルツ」61点★★☆


大学病院に勤める
曾根崎理恵(菅野美穂)は
産婦人科医であり、遺伝子のスペシャリスト。


理恵はしばしば
日本では認められていない
代理母出産を擁護する発言をし
大学内で目をつけられていた。


准教授の清川(田辺誠一)は
そんな理恵を気にかけている。


そのころ
理恵は院長代理を務めるクリニックで
4人の患者を抱えていた。


障害のある子を妊娠した女性(白石美帆)、
安易な中絶を望むギャル(桐谷美玲)、

不妊治療の末ようやく妊娠がかなった
39歳の女性(南果歩)。

そして55歳の妊婦(風吹ジュン)。


そんななか
理恵が代理母出産に
手を染めているとの噂が立ち始め――?



一人の産婦人科医の
医療過誤事件から始まるこの話。

産婦人科医の抱える問題や窮状、
さらに代理母出産と

重いテーマをエンタテイメントで魅せるという
海堂氏ならではの作品でした。


特に後半、
出産というタダでさえ切羽詰まる状況に

たたみかけるように困難が降りかかる展開は
あまりの修羅場加減に
盛り上がります(笑)。


ただ
番長のような素人にもなんとなく
いぶかしがられてしまうほど

穴ボコだらけなのが気になる。


代理母出産は
もっと大変そうだし

冒頭の医療過誤での
不当逮捕はどうなったの?

そもそも
肝心の○○をいつ採取したのか――?とかねえ。


そう思いつつ
障害を持った胎児のエピソードのくだりでは
素直に泣かされたりもして。


番長にもちゃんと
人間らしい一面があるんですよ。


それに
菅野美穂演じる理恵が

「代理母出産を禁止する現状は
“偶然にも”何の問題なく
生まれてきた人たちが作ったシステム」と
いうのにはまったく同感。


自分と異なる人、または
弱者の立場と視点で
ものを見られない社会はサイテーですからね。


ということで
娯楽としてはこのくらいの
描写が限度なのかもしれませんが

もう少しじっくり
話を聞いてもいい問題に思えました。


★2/5から全国で公開中。

「ジーン・ワルツ」公式サイト
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ティーンエイジ・パパラッチ

2011-02-06 21:09:35 | た行
番長のなかで
パリス・ヒルトン株が
グーンと上がった作品。

「ティーンエイジ・パパラッチ」76点★★★★


実在する13歳のパパラッチ少年
ドキュメンタリーです。


監督、主演は
「プラダを着た悪魔」でアン・ハサウェイの
恋人役として知られる
俳優エイドリアン・グレニアー。


彼があるとき
自分を追いかけるパパラッチのなかに

少年、オースティンを見つけて
興味を持ったのが
この映画のはじまり。


エイドリアンは自分がセレブという
特権を生かして
オースティン少年に接近、
彼を逆取材することに成功する。


そして
なぜ少年が
パパラッチをするのかを追いながら

なぜ人々はゴシップを欲するのか、
そうした現代社会の人間心理をも
解き明かそうとするんです。


なかなか、おもしろいですよ。


まず、このオースティン少年が
ネタとして希有。

両親が離婚してる彼は
パパラッチ稼業に
「やっと自分の居場所を見つけたんだ」と
目を輝かせ


「なぜパパラッチをやるのか?稼ぐためだよ」
なんていうんですが
騙されてはいけません(笑)。


彼には離婚はしてても
裕福な家庭と

理解ある両親のサポートがある。


そしてなにより
彼のルックスが最大の武器なんですねえ。


桃色のほっぺに金髪、
ニキビひとつないすべすべの肌。


そんな少年が巨大な望遠レンズを抱えて
一生懸命、走る様は
なるほど、目をひきますわ。


大人たちに可愛がられる術も
心得ていて

パパラッチ仲間だけでなく
取材される側にも
ちゃっかり一目おかれてたりする。


その代表が
パリス・ヒルトンです。


エイドリアン監督は
その人脈を生かして

彼女やマット・デイモン、
ウーピー・ゴールドバーグ(久々に見た!)など
パパラッチされる側にも
しっかりインタビューを実践。


する側、される側の主張を盛り込み
とても公平です。


まあセレブのみなさんは
「やつらがどれだけ迷惑でウザいか」と
吐露するわけですが(笑)


そのなかでパリスが
「ウザいけど私の商売
それで成り立ってるから」
言うのが意外でした。

そのとおりなんだけど
なんだ、わかってるんじゃん。

なかなか切れるね、おネエさん。


ただドキュメンタリーは
取材する側される側は
どんな題材でも
距離の取り方が難しいもの。


この場合は特に相手が幼いだけに
どんどん微妙なことになっていく。


そこに作品として
どうケリをつけるのか?

相当に悩んだところだと思うけど
エイドリアン氏は
収束のしかたも誠実だと思いました。


最後に流れる
レディー・ガガの「パパラッチ」にも
ウケたし。


プレスの表紙もセンスいい。
印画紙の箱だよコレ!
イルフォードの!懐かしい!



★2/5から新宿バルト9ほかで公開中。

「ティーンエイジ・パパラッチ」公式サイト
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再会の食卓

2011-02-05 13:44:39 | さ行
この女優さん
母方のおばあちゃんに似てるんですよ。

「ラストエンペラー」のときから
思ってた。

そしていま母にも似てる気が……(笑)


「再会の食卓」74点★★★☆


上海に暮らす
初老の婦人ユィアー(リサ・ルー)のもとに
一通の手紙がきた。

それは40年前に生き別れた
元夫からのもの。


兵士として台湾に渡った夫と
上海に残ったユィアーは
その後、中国と台湾の交流断絶で
別れ別れになったままだったのだ。


交流が復活したいま
彼は上海に帰ってくるという。

しかしユィアーには
すでに新しい夫や子ども、孫もいた。

子どもたちは反対するが
心の優しい現夫は
元夫を客人として招き
心のこもった料理でもてなすという。


そしてついに再会のときがやってきた――。



最初はもう
中国版「ナビィの恋」かと思いましたよ。

あまりにお人好しな夫と
「ええ?」という展開に
見る気失せそうになりましたが(苦笑)

そこからの展開がユーモラスで
魅せられました。


笑ってほろ苦く
やがて悲しき人生噺かな、という趣ですね。

2010年のベルリン国際映画祭銀熊賞
受賞してます。


監督のワン・チュエンアンは
1965年生まれ。

ジャ・ジャンクーらとともに
注目されている中国第六世代だそうですが


老年を描いてもしっくりくる
落ち着きと

軽やかさを持ち合わせてて
次作も楽しみです。


この映画では
家族の象徴となる“食卓”が
重要な要素となるので


ご想像どおり
そこに並ぶ上海家庭料理の数々が
大変、美味そうです!


リサ・ルーがグイッとやるのは
白酒(パイチュウ)だったかなあれ。


観た帰りは
もちろん、中華!


★2/5からTOHOシネマズシャンテ、Bunkamura ル・シネマで公開中。ほか全国順次公開。

「再会の食卓」公式サイト
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