ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ライアーゲーム -再生-

2012-03-03 22:15:05 | あ行

前回は「よく考えるなあ」と
意外に感心したんですけどねえ。

「ライアーゲーム -再生-」38点★★☆


大学を卒業したばかりの篠宮 優(多部未華子)のもとに
いきなり1通の招待状と、現金1億円が届く。

それは人を騙すことで、自分の金を増やす
「ライアーゲーム」の招待状だった。

優は大学の教授、秋山(松田翔太)に助けを求める。

そして二人は否応なく
ライアーゲームに参加することになるが――?!


戸田恵梨香主演の前作から2年後、
新たなゲームが始まるところから物語はスタート。


前回は「こういう話作る人って、よく頭がカタカタとまわるよなあ」と感心したけど、
今回のネタはうーん、ちょっと物足りなかった。

ネタは「イス取りゲーム」というゲームで
会場内にあるイスを探して座り、座れなかった人は脱落……というもの。

しかし、ただイス取るんじゃダメで勝利には作戦が必要――という展開は
「ああ、自分じゃ考えられないな」と
確かに思わされるんだけど

正直、2時間引っ張れるほど見栄えのする話じゃない。

なので、間が長すぎ。

ゲームに参加する豪華キャストたちの
奇抜な服装と、過剰な芝居は了解済みなんですが、
それでも芝居がしつこく感じてしまう。

まあ一番の厳しさは
ヒロインの多部未華子に華が無さすぎなことでしょうかねえ
(え、それを言っちゃう?!苦笑)

前作と同様、松田翔太の存在感はピカイチで
まさに彼がいないと成り立たないけど、

それでも彼だけで211分引っ張るのはキツイわな。

さらに作品のオチの方向性も
「このご時世だし、まあ、ね」とは思うんですが
こういう映画に、観客はそんなものを求めてきているのだろうか。

★3/3(土)から全国で公開。

「ライアーゲーム -再生-」公式サイト
コメント (5)
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アリラン

2012-03-02 23:23:45 | あ行

キム・ギドク監督、3年ぶりの新作。
ちょっと「監督失格」(平野勝之監督)との
相似点を感じました。


「アリラン」68点★★★☆


オダギリジョーが出演した「悲夢」(08年)の
撮影中に起きたある出来事から
映画を撮れなくなってしまったキム・ギドク監督。

そんな彼が山小屋にこもって暮らす自分の姿を
ドキュメントした“自己治療映画”です。


雪積もる山小屋の中に
テントを張って独り暮らし、

炊飯器でご飯を炊いて
キムチと一緒にモシャモシャ食べる。

夜になると誰かがドアをノックするのだが、
何度見に行っても誰もいない……。

そんな暮らしを自分で撮影し、
自ら「キム・ギドク、お前は何をしている?」と問いかけ、独り語りする。


「撮りたいけど撮れない。しかし撮らずにはいられない」
そんな狂おしいまでの作家の業が
なんとか彼を生かしているのだとわかる。

そしてそこにある
自尊心、なにより強烈な自己愛には
わかっていながら失笑してしまう。


彼の状態は明らかに躁鬱で、
カメラを回せるようになるまでは
相当に苦しんだらしい。

「撮ることで幸せになれるかもしれない……」

そう自分を奮い立たせ、自分自身に話し続ける姿は、
応援したくもあり、
しかし強烈な自己愛に、正直鼻白みもする。


しかしながら
その強烈な自我は
時間が経つと思ったより、心に残っているんですね。

なんでもないオヤジ(自分)を撮っているのに
ちゃんと鑑賞に堪える“美”があるのは
さすがキム・ギドクという感じもするし。


中学に行かずに工場で働いたという彼が、
自分でエスプレッソマシンを作ってしまうのには驚きました。


★3/3(土)からシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。

「アリラン」公式サイト
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父の初七日

2012-03-01 23:18:52 | た行

台湾のお葬式の不思議を
ユーモラスに描く、ほんわかコメディ。

映画「父の初七日」69点★★★☆


台北で働くアメイ(ワン・リーウェン)は
父の訃報を聞き、故郷の田舎町に帰省する。

50代の若さで亡くなった父に茫然としながらも
アメイは兄タージ(チェン・ジャーシャン)とともに
葬儀の喪主となる。


叔父で道士のアイー(ウ-・ポンフォン)の指示のもと
台湾式のお葬式が始まるが、

そのすべてがアメイには驚きの連続で――?!


冒頭からスッチャカミャージックが軽快に流れ、
湿っぽさなく愉快爽快。

なぜか梶芽衣子の昭和歌謡曲が、
歌詞とマッチするいいタイミングで流れたりして
笑いを誘います。

主人公のアメイはオアシスの大久保似、
葬式を仕切る道士は板尾創路似だったりと、
日本人にはなんか親しみがある感じもいい。


台湾のお葬式は
紙のお金を燃やしたり、泣き女がいたり
独特の形式があることは他の映画で知ってましたが、

紙製のお家や家電を焼いたり
親族は泣けと言われたら
どんな状況でもすぐに泣かないといけない……など、
いろんな儀式があることに驚きました。

原作は共同監督も務めた若手女性作家エッセイ・リウの
体験談に基づいており、

主人公が昔ながらの葬儀を通して感じる
戸惑いやびっくりが
異国の我々にもしっくりきて
「へえ~~」と一緒に驚き、感心できるのがいい。


どこの国でも葬式は
やってみないとわかんない経験らしいですからね。

終始コミカルな調子のなかで
娘の父との思い出に
ちょっとしんみり、ホロリもしました。

台湾のアカデミー賞にあたる賞7部門にノミネートされ
台湾全土でロングランヒットしたそうです。


★3/3から東京写真美術館ホール、銀座シネパトスほか全国順次公開。

「父の初七日」公式サイト
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