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ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ドント・ブリーズ

2016-12-12 21:30:27 | た行

20年に1本の恐怖作品――!と話題のホラー。
確かに・・・怖っ!


「ドント・ブリーズ」71点★★★★


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ティーンエイジャーのロッキー(ジェーン・レヴィ)は
生活能力のない母親と、すさんだ街から
幼い妹を連れて逃げ出すために

友人2人と組んで
留守宅に忍び込み、小さな強盗を繰り返していた。

あるとき3人は、
盲目の老人が一人で暮らす家に強盗に入る。

だが、その老人は
どんな音も聞き逃さない
超人的な能力を持っていた――!


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オープニングからして後を引くうまさ。


「ブレアウィッチ」系はさすがにもうダメなワシですが
(へっぴりですみません・・・
これはあの系統というより
バイオハザード的怖さというか。(ゲームのイメージね)

なので“幽霊もの”が苦手でも
大丈夫です。

なにがバイオハザードかって
盲目の主人公オヤジの
ゾンビのような不死身っぷり。

そして家の中の狭い通路を曲がると
そこに・・・!的なゲームアクションっぽい怖さ。

そこから逃げ出そうとするヒロインは
まるでミラ・ジョヴォヴィッチ・・・。
おっかない犬も出てくるし。


でも
こうした作品がホラーエリアを越えて話題になるのは
やっぱり中身の濃さにある。

本作では
強盗に押し入る側であるヒロインの家庭事情などをしっかり描き
犯行の必然性をアピールし(そんなものあっちゃいけないんだけどさ

さらに押し入った先の老人が超ヤバかった!という展開で
どっちが被害者で加害者か
見る人の心理を逆転させ、巧みに操るんですね。


タール(コールタールっていうのかしら)を使うなど
古典ミステリー小説を思わせる要素があったりするところも
ちょっとニヤリでした。


★12/16(金)からTOHOシネマズ みゆき座ほか全国で公開。

「ドント・ブリーズ」公式サイト
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ヒッチコック/トリュフォー

2016-12-09 23:23:25 | は行

これは、勉強になる!

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「ヒッチコック/トリュフォー」73点★★★★


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1962年、若き新鋭監督、フランソワ・トリュフォーからのオファーで実現した
ヒッチコックへのロングインタビュー。

それがバイブル本『映画術 ヒッチコック/トリュフォー』(晶文社)となり
多くの映画人に影響を与えてから、はや50年。

この映画は
そのときの二人の50時間にわたるインタビューテープと写真、
そしてヒッチコックに影響を受けた10人の監督へのインタビューから
「ヒッチコックの映画術」を改めて探ろうと
まとめられたドキュメンタリーです。



まさに
「勉強になる!」の一言で
超・濃い!

ヒッチコックの「へえ!」な経歴や
幼いころ留置所に入れられた体験が
“恐怖”のもとになっているとか

俳優とのコミニュケーションの取り方とか
びっくりするほど名言の山でおもしろいし

なにより
30歳年下のトリュフォーに話しかける
サスペンスの神の、めちゃくちゃ優しい口調にびっくりしました。
なんか聞いていて、胸熱くなった。


さらにデビッド・フィンチャー、スコセッシ監督など
10人のそうそうたる監督たちが登場し
「ヒッチコック」体験や、好きな映画を語るのも見どころ。

リチャード・リンクレイター監督や
ウェス・アンダーソン監督が登場したのは
ちょっと意外だったし
それぞれ「好きな映画」がビミョーに違うのもおもしろい。

日本からは黒沢清監督が登場もしていて
「なるほど!」と思いました。

映画好きは必見だし
「むか~しに見たけれど・・・」という人、「名前だけは・・・」という人も
絶対に、見たくなると思いますよ。


この和田誠さんのイラストのチラシもいいね!


ちなみに。
来週発売の『週刊朝日』に、映画をもとにした「ヒッチコックを楽しむヒント」記事を書きました。
監督インタビューも載ってます~。


★12/10(土)から新宿シネマカリテほか全国順次公開。

「ヒッチコック/トリュフォー」公式サイト
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ミス・シェパードをお手本に

2016-12-06 23:58:57 | あ行

いや、改めて考えると
アラン・ベネットっていい人だなあ。


「ミス・シェパードをお手本に」68点★★★☆


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ロンドン、カムデンに引っ越してきた
劇作家のアラン・ベネット(アレックス・ジェニングス)は
通りに駐車された黄色いバンを目にする。

中には年老いた女性(マギー・スミス)が
一人で住んでいた。

近所の住民によると彼女は元修道女で
ミス・シェパード、と呼ばれているらしい。

彼女は
さまざまな家の前にバンを停めて暮らしていたが

そのうちにベネットの
家の前までやってきて――?!


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路上に停めた車で生活する
謎の“レディ”、ミス・シェパードの物語。

彼女を自分の家の前に15年間も(!)いさせてあげた
劇作家アラン・ベネットの
実体験を元にした舞台劇の映画化です。

舞台版でも主役を演じたマギー・スミスが
同じくミス・シェパードを演じています。
ちなみに日本では黒柳徹子さんがこの役を演じたそう。


ベネット氏と、その分身が「ミス・シェパードを語る」という作りで
語りが主流な点が
映画として少々単調ではあるけれど

気むずかし屋で、愛想もないのに
教養があり、なぜかフランス語に堪能だったりするミス・シェパードという人物は

確かに“謎”に満ちていて
題材としておもしろい。

ベネット氏は彼女が亡くなってから
わかった事実に基づいて、この物語を書いたということなので

人に歴史あり、ですねえ。

そして
強烈な匂いを放つ、気むずかし屋のホームレス女性を
それとなく見守り、距離を持ちつつ、受け入れていた
町の人々の理解と寛容さが
こんな時代にとても刺さる。

それがこの映画の一番の収穫だと感じました。

そういう優しさを、少しだけでも学びたいなと。
まあ、とても同じようにはできないけどね。

だって
15年も、目と鼻の先に彼女がいるなんて(!)
たとえ、これで戯曲が書けたとしても
普通できるもんじゃない。

ベネット氏が一番すごいですなあ。


★12/10(土)からシネスイッチ銀座ほか全国順次公開。

「ミス・シェパードをお手本に」公式サイト

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ノーマ東京 世界一のレストランが日本にやって来た

2016-12-05 20:21:55 | な行

行ってみたかった・・・けど
お一人様、約7万円ですって!

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「ノーマ東京 世界一のレストランが日本にやって来た」69点★★★★


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「世界のベストレストラン50」の1位に4度も輝いた
デンマーク・コペンハーゲンのレストラン「ノーマ」。

今年4月に公開された
「ノーマ、世界を変える料理」
初めて
カリスマシェフ、レネ・レゼピ氏を知り
そのすごさを知ったワシですが

なんと
2015年の5週間のみ、東京で「ノーマ」がオープンしていたんですね。
その試みを追うドキュメンタリーです。


前の「ノーマ」を観た方は見るべし、です。
(監督は別の人だけど)


今回はやはり舞台が日本!ってことで
食材探しも興味津々だし、

数時間かかる蜆(シジミ)の殻むきや、山にアリを取りに行くとか
話には聞いていたけれど、こうやっているのか――!
実際を見ると、味の想像をしやすい。

それに
今回はかなりスタッフがクローズアップされ、
より「世界一のレストランの内情がわかる」のが見どころでしょうか。


レネ氏はスタッフに家族のように仲間のように、友のように
フレンドリーに接するんだけど
当然ながら味や仕事ぶりにはめちゃくちゃシビアで
厳しくビシビシと言う。

仕事をする上で
このバランスって、けっこう難しくないですか?

それをこなしていく彼の立ち振る舞いには
ビジネスシーンでの学びも多い気がします。


スタッフの“レネ評価”が聞けるのもおもしろいしね。


ただ、映画の構成がちょっと不親切かなと思う。

映画では出店15日前のレネ氏来日からオープンするまでが
カウントダウンされていくので
日本での食材探しがいつ頃の事なのか、時間軸がはっきりしないんですよ。

実際は2014年から準備は始まっていたそうで、
そこは伝えたほうが親切だったのでは?と思った。

しかし一度は食べてみたいなー。


★12/10(土)からヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAで公開。ほか全国順次公開。

「ノーマ東京 世界一のレストランが日本にやって来た」公式サイト
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