今日はこのシーズンにちなんで、「クリスマス」映画について。僕の趣味ですので、「シザーハンズ」や「ホーム・アローン」は出て来ません。今回はテーマがテーマなので、古い映画も並んでいますが、機会があればご覧頂きたい作品ばかりです。
クリスマスと言えば、僕の頭に最初に浮かぶのは何といっても「サンタクロース」。そのサンタクロースといえば、「34丁目の奇跡 / Miracle on 34 th Street 」です。1947年版と、リメイクの93年版、どちらでも見て下さい。デパートの客寄せのサンタクロースに選ばれた男が、「私は本当のサンタクロースなのです」と言い出した事から巻き起こる大騒動。あまりの本物さ加減に商売仇の店から訴えられ、裁判となります。サンタクロースの実在を証明するという、アメリカ人なら知らない人がいない名作です。ニューヨーク・ロケを初めて本格的に行った作品で、クリスマスシーズンのニューヨークは、こういう街だということを知りました。47年のオリジナルは、オスカーでは脚本賞、脚色賞を獲っており、ストーリーの良さは保証します。
そして古い、古過ぎると言われても、名作なのは「素晴らしき哉、人生! / It’s a Wonderful Life !」。(1946年)名匠フランク・キャプラ監督が、アメリカの良心、ジェームズ・スチュアートと組んだクリスマス映画。野心と活力に溢れた若者ジョージは、いつか世界で活躍することを夢見ていたが、生来の善良さ故に人助けをせずにはいられず、自分の夢が叶わない。クリスマス・イブ、ついに膨大な負債を抱え込み、自殺しようとする彼の前に二級天使が現れ、実際には存在しない家族や友人の人生の縮図を幻で見せ、生きる勇気を与えるという大人のメルヘンです。人間が主役で、人間の心の美しさを描いた映画であるのが、この2本の特徴です。
サンタの次にクリスマスと言えばクリスマスツリーですが、その名も「クリスマスツリー / L' ARBRE DE NOEL」(1968年)。監督テレンス・ヤング、主演ウィリアム・ホールデンなのですが、実はこれ、なぜかフランス映画だったんですね。米軍機の放射能を浴び、白血病で半年の命のパスカル少年とW・ホールデン扮する父親との心温まる交流をセンチメンタルにうたい上げた感動作。見た方は大抵、涙を流したハズです。最近は見ることも難しくなりましたが、昔はこのシーズン、毎年テレビで再放送していました。
この映画も忘れられないのが、定番ともいえる「ホワイト・クリスマス / White Christmas 」(1954)。パラマウントの新方式映画ヴィスタビジョンの第1回作品でもありました。主題歌ホワイト・クリスマスは、1942年の映画「スイング・ホテル(Holiday Inn)」で使われると、その年だけでも500万枚もの大ヒットとなりました。そのリメイクがこの作品です。
第二次世界大戦後、恩人のデイヴィスとコンビ組んで、大成功を収めた人気歌手のウォレス。戦友の姉妹と知り合った二人はバーモントでクリスマス休暇を取るが、彼らが泊まった山荘ホテルのオーナーが戦時中の恩師ウェイバリー将軍だった。雪が降らずに山荘の経営が悪化していることを知った二人は、お客を集めるために山荘でのショウを企画する。ビング・クロスビーとダニー・ケイの二大ミュージカル・スター共演による、心温まるクリスマスのストーリー。
僕はクリスマスといえば、日本でもツリーを飾り、ケーキを食べてプレゼントがもらえるのだから、本場アメリカでは豪華なパーティだらけのお祭りなのだろうと大昔は思っていましたが、この映画を見て知りました。クリスマスは、実は家族で静かに過ごす時間であるということを。だからクリスマスになると、日本の若者のように、ホイホイ外出することはアメリカではありません。(時代、世代と共に変わって来てはいます)日本とアメリカでは宗教が根底にあるクリスマスか、そうでないクリスマスであるかという大きな違いがあるだけに、商売オンリーの日本のクリスマスとアメリカのクリスマスは本当に別のモノです。
ここまで古いクリスマス映画ばかり紹介しましたが(素晴らしいものは仕方がない)、ちょっと新しい映画では、「ジングル・オール・ザ・ウェイ / Jingle All the Way」(1996)が面白かったです。愛する息子の信頼を勝ち取るため、クリスマス・プレゼント用の人形探しに奔走する父親の奮戦ぶりを描いたコメディ。ファミリー映画の手練たちによるアイディアいっぱいのギャグや、主演のアーノルド・シュワルツェネッガーとド派手なSFXシーンが笑いを誘う。監督は実際にトイ・コレクターだそうです。
そして最後にご紹介するのは、僕が最も大好きなクリスマス映画です。それは「クリスマス・キャロル」。原作の「A Christmas Carol 」は、イギリスの作家ディケンズの中編小説。1843年刊。その後数年にわたって発表された5編の『クリスマス物語集』の第一作。主人公スクルージは人情のかけらもない、けちん坊の守銭奴だが、クリスマスの前夜に、もと共同で事業をやっていた男の幽霊に会い、自分の過去、現在、未来の姿を見せられた結果、己の罪を悔い改めて人間らしい心を取り戻すというストーリー。子供の頃、偶然テレビで見て以来大好きになりました。いろんな俳優がいろんなクリスマス・キャロルに出演していますし、ミュージカルもあればドラマもありますから、お好きなものを1本ご覧になればいいと思います。キャロルとは、元々世俗的な共同体の「祝歌」という意味です。さて数ある「クリスマス・キャロル」の中で、僕が最も大好きな1本は、最もスクルージじいさんが憎たらしい1本です。
主演があの「パットン大戦車軍団」で、鬼将軍を演じたジョージ・C・スコットなのです!そりゃあ憎たらしいケチぶりで、それだけに楽しめます。
ディズニーの映画もありますが、「クリスマス・キャロル」の現代版リメイクとも言うべき、「3人のゴースト / SCROOGED」(1988年)も推薦です。主演はビル・マーレー。下っ端の使い走りから、あっという間にテレビ・ネットワークの社長にまでなった人物ですが、その性格は意地悪で、思いやりがなく、心が狭く、他人を傷つけて笑っている。まさに現代版スクルージ。クリスマス・イブの夜、そんな彼の前に3人のゴーストが現れ、過去・現在・未来の彼自身の姿を見せつける。これも面白かったです。
考えてみれば、僕もここ10年、クリスマスもお正月も人並みに楽しんだことがありません。数年前までは元旦のたった1日だけが休みで、364日働いていました。今年の年末年始は、忙しくても心の「余裕」だけは失わず、素敵なことが起こらないかな・・・と期待して過ごしたいですね。