日本にまだ「プロモーター」という言葉が定着していなかった頃、キョードーもウドーも無かった時代、海外アーティストを日本に呼び、興行を打つ人のことを「呼び屋」と言いました。
その呼び屋の中でも、最も有名で伝説的な人が、ビートルズのコンサートを手掛け、キョードーもウドーにも影響力を持った永島達司さんで、この本は彼の生涯を詳しく描いたものです。
また、永島氏以外にも業界でその名の知れた人々の、彼らが手掛けた仕事が紹介されています。
ビートルズに興味がなくても、海外アーティストの来日コンサートはどうやって開催されるのか?
そもそもプロモーターとは、どういう仕事なのか?
数多くの興味深いエピソードが満載です。
一流ミュージシャンの公演よりも、リンボーダンスで大成功したり、モハメッド・アリの試合を開催するよりも、人類猿・オリバーくんを呼んだ方がひと財産作れたり。儲かる興行とは、ネームバリューではなく、誰もが考えつかない奇想天外なアイデアから生まれることを、この本から学ぶことが出来ます。
更に忘れてはいけないのは、一流ミュージシャンやモハメッド・アリのギャラは目の玉が飛び出ますが、リンボーダンスの踊り手やオリバーくんのギャラは安いということ!
どんな大物を呼んでも、お客が入らなければ何度でも夜逃げをしなくていけない。そして、呼び屋は消えて行きました。今では興行は、広告代理店や新聞社、会場サイドの人々、更には商社という企業に仕切られ、僕ら観客は大人の都合で吊り上がる高額な値段でチケットを買わされる。座席も選べない。
考えたらお客無視の興行に、今の世の中で僕らは一喜一憂しているのです。せめて興行とはどのように成り立っているかくらいは知っておいて損はありません。ぜひ、ご一読をオススメ致します。
コロナ禍でエンタメ業界は壊滅等と言われますが、こういう機会にお客も賢くなり、これまでの業界の在り方を変えて行くくらいでないと、お客はいつまでもカモにされてしまいます。ヤクザと呼ばれた人たちが仕切っていた頃の方が、僕は興行が庶民のものだったような気がしてなりません。今は、余りにも実力も無い人たちが、芸能人だスターだのと呼ばれていい気になり過ぎています。プロと素人の境界線が見えません。
長らく見なくなった本物のショービジネスを観たい。そういう人は、こういう本に大いに学ぶことがあると思います。